説明

製パン機能付き炊飯器

【課題】 低コストで取り扱いが簡単な製パン機能付き炊飯器を提供すること。
【解決手段】 炊飯機能と製パン機能の両方を備えた製パン機能付き炊飯器であって、内部に加熱室3が設けられ上部に開口を備えるとともに該開口を開閉する蓋体2が設けられた本体1と、加熱室内に着脱自在に取り付けられ上部に開口部を有する炊飯および製パン用の容器4と、蓋体に着脱自在に取り付けられる内蓋9と、容器の底部に回転自在に取り付けられた回転軸16と、回転軸の容器内に位置する端部に取り付けられた練り羽根17と、回転軸の容器外に位置する端部に係合部を介して取り付けられ、制御部によって駆動制御されるモータ19と、を備え、内蓋は、炊飯時には蓋体に取り付けることによって容器の開口部を閉鎖し、製パン時には蓋体から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯機能だけでなく製パン機能をも備えた製パン機能付き炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般家庭において製パン機によりパンを焼くことが行われている。この場合、専用の製パン機を購入することは経済的に負担になる。そこで、例えば、下記特許文献1では、炊飯器に製パン機能を備えた製パン機能付き炊飯器が開示されている。
【0003】
この従来技術は、上方が開口された容器のケース内に内釜と内釜の中に装着されるパンケースを備えたものである。そして、開口部には上蓋を設け、この上蓋の下には内蓋を設けて内釜を塞ぐようにしている。炊飯時には内釜だけを用い、製パン時には内釜内にパンケースを装着して用いるものである。パンケースには、その内部の底にパン生地捏ね工程において回転する捏ね羽根が設けられている。捏ね羽根は、パンケースの底面に挿通された回転軸に取付けられ、この回転軸は内釜の底面に回転自在に挿通された回転軸に係合される。そして内釜の回転軸は容器の底部に設置されたモータの回転軸に係合され、これにより、捏ね羽根はモータによって回転されるようになっている。
【0004】
同じく、製パン機能を備えた炊飯器の従来例としては、下記特許文献2で示すものがある。これは、誘導加熱コイルにより加熱される加熱室内に内釜を装着し、炊飯の際には内釜だけを用いることによって炊飯専用として使用し、製パンの際には内釜の内部にパンケースを装着することによって製パン専用として使用するものである。パンケースの底部には練り羽根が設けられ、本体シャーシに取り付けられたモータの回転軸にカップリング機構を介して連結されている。
【0005】
一方、従来の炊飯器は、下記特許文献3で示すように、吸水工程と、立上加熱工程と、沸騰維持工程と、むらし1工程と、追い炊き工程と、むらし2工程とを経て炊飯を行っている。この工程は、マイコンに予め設定されたプログラムに従うものである。
【特許文献1】特開平9−164074号公報(段落[0020]〜段落[0028])
【特許文献2】特開2004−261247号公報(段落[0018]〜段落[0028])
【特許文献3】特開2006−75654号公報(段落[0029]、段落[0043]、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2で示す従来技術の製パン機能を備えた炊飯器においては、製パン時に製パンのためのパンケースを内釜内に装着しなければならない。そのため、その都度、装着作業を行わなければならず取り扱いが面倒であり、しかもコスト的に不利であるという問題点があった。
【0007】
また、炊飯に際しては、上記特許文献3で示すように、多くの工程を経て自動的に炊き上げられるようになっているので、正確な温度、圧力の設定を行うために内釜を密封する内蓋を用いることが不可欠であった。そのために、炊飯器に製パン機能を簡単な構成で付加することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、すなわち、本発明は安価で取り扱いが簡単な製パン機能付き炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、炊飯機能と製パン機能の両方を備えた製パン機能付き炊飯器であって、内部に加熱室が設けられ上部に開口を備えるとともに該開口を開閉する蓋体が設けられた本体と、 前記本体の加熱室内に着脱自在に取り付けられ、上部に開口部を有する炊飯兼製パン両用の容器と、前記蓋体に着脱自在に取り付けられる内蓋と、前記容器の底部に回転自在に取り付けられた回転軸と、前記回転軸の前記容器内に位置する端部に取り付けられた練り羽根と、前記回転軸の前記容器外に位置する端部に係合部を介して取り付けられ、制御部によって駆動制御されるモータと、を備え、前記内蓋は、炊飯時には前記蓋体に取り付けられることによって前記容器の開口部を閉鎖し、製パン時には前記蓋体から取り外されることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記本体には前記内蓋の前記蓋体への取付け状態を検出する内蓋検出手段が設けられ、
前記制御部は、前記内蓋検出手段の検出出力に基づき前記蓋体に前記内蓋が装着されていない場合に炊飯動作を行わないようにすることを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記制御部は、製パン時における少なくともパン生地練り工程時と、炊飯時とに、一定期間前記モータを回転させることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記制御部は、炊飯時において、前記容器内に水と米とを収容した状態で前記モータを駆動させることによって練り羽根を回転させ、洗米することを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項5に係る発明は、請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記制御部は、炊飯時における前記モータの回転動作を、少なくとも吸水工程の初期に行わせることによって練り羽根を回転させ、前記容器内の米と水を攪拌することを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項6に係る発明は、請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記制御部は、炊飯時における前記モータの回転動作を、少なくとも沸騰維持工程の初期に行わせることによって練り羽根を回転させ、前記容器内の米と水を攪拌することを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項7に係る発明は、請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記制御部は、炊飯時における前記モータの回転動作を、少なくとも炊飯完了後に行わせることによって炊飯されたご飯を混ぜることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項8に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記蓋体は、前記加熱室内を目視可能な窓を備え、該窓には透明板が備え付けられていることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項9に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記加熱室の底面には、前記容器を支持する台座を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項10に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記加熱室は、前記容器を電磁誘導加熱によって加熱する電磁誘導コイルを有し、前記モータと前記電磁誘導コイルとの間にはシールド板が配設されることを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項11に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記本体には、室温検出センサーが設けられ、
前記制御部は、前記室温検出センサーによって検出される室温の高低に応じて、製パン時におけるパン生地練り工程の時間と炊飯時における吸水工程の時間を調節することを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項12に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器に係り、前記本体には、前記容器が前記加熱室内に装着された際に前記容器に弾接する温度センサーが設けられ、
該温度センサーは、製パン兼炊飯両用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上述した解決手段により以下に述べるとおりの優れた効果を奏する。即ち、本願の請求項1に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、前記容器は前記加熱室内に着脱自在に設けられ、前記容器の開口部は前記内蓋によって選択的に塞ぐことが可能となり、前記練り羽根は前記モータと制御部とによって選択的に回転される。そのため、前記内蓋を付すことで容器を密封して炊飯を行うことができ、前記内蓋を取り外した状態で前記練り羽根を回転させて製パンを行うことができる。従って、前記容器を共通にして炊飯と製パンを行うことができるので、コスト的に有利である。また、前記容器を前記加熱室から取り外して洗浄作業、洗米を入れる作業などを行うことができるとともに、前記容器を加熱室に入れるだけで係合部を介して前記練り羽根と前記モータとの連結が行われるので、取り扱いが簡単である。
【0022】

また、本願の請求項2に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、内蓋検出手段を設けたことによって、蓋体に内蓋が取付けられているか否かを検出することが可能となる。そして、特に炊飯時に内蓋が取付けられていない場合には、炊飯動作が行えないようにすることによって、容器から高温の被炊飯物がふきこぼれて器機を損傷したりユーザを負傷させたりすることを防止できる。
【0023】
また、本願の請求項3に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、製パン時のパン生地練り工程時に練り羽根をモータによって回転させることによってパン生地を練ることができるだけでなく、炊飯時に同じく練り羽根をモータによって回転させることによって洗米、及び吸水、炊飯中の米と水、炊飯後のご飯をまぜることによって、洗米作業を容易に行えるだけでなく、吸水を均一に行い、炊飯中の温度分布を平均にすることができ、更に炊飯後のごはんが容器の内部までふっくらとなるように混ぜることができる。このように、練り羽根を製パンだけでなく炊飯にも使用することが可能となる。
【0024】
また、本願の請求項4に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、容器内に水と米を収容した状態で練り羽根を回転させることによって洗米作業を行う。これによって練り羽根を製パンだけでなく、洗米作業に使用でき、練り羽根を有効活用できる。さらに、容器に水と米を入れて手作業で洗米作業を行おうとすると、練り羽根が邪魔になってうまく洗米作業が行えなかったが、上記の方法で容易に且つ手をぬらさずに洗米作業を行うことができる。
【0025】
また、本願の請求項5に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、炊飯時の吸水工程初期に練り羽根を回転させる。これによって容器内の米への吸水を均一に行うことができるようになる。尚、この吸水工程中の練り羽根の回転動作は、低速で行うことが好ましく、吸水工程の後期には、吸水によって米がやわらかくなるためにさらに低速にするか、停止させることが好ましい。
【0026】
また、本願の請求項6に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、炊飯時の沸騰維持工程の初期に練り羽根を回転させる。これによって沸騰中の被炊飯物を均一に混ぜることができ、炊飯中の温度分布を平均にすることができる。
【0027】
また、本願の請求項7に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、炊飯時の炊飯完了後に練り羽根を回転させることによって高温状態の炊き上がったご飯を撹拌し、塊を生じないようにほぐし、ご飯をふっくらと炊き上げることができる。
【0028】
また、本願の請求項8に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、透明板を備えた窓を備え付けたことによって、製パン時に蓋体を開けることなく窓を通して容器内を目視することができるようになり、パンの焼き上がり状況を観察することができるようになる。
【0029】
また、本願の請求項9に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、加熱室内に入れられた容器は前記台座上に位置して安定に収まる。
【0030】
また、本願の請求項10に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、容器を加熱するための電磁誘導コイルで発生する磁束は、シールド板によってモータの方に漏洩しないようになり、モータを制御するための電子回路の動作を正常に行うことができるようになる。
【0031】
また、本願の請求項11に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、吸水工程の時間は、本体1に設けられた室温センサー(図示せず)によって検出される室温に基づいて自動調節される。即ち、室温が低い場合は吸水時間が長くなるように、室温が高い場合には吸水時間が短くなるように予めプログラムに設定された時間に調節される。さらに、製パン時にも、パン生地練り工程の時間を室温に基づいて自動調節することが可能となる。即ち、室温が低い場合には、練り時間を長くし、室温が高い場合には、練り時間を短くする。
【0032】
また、本願の請求項12に係る発明の製パン機能付き炊飯器によれば、炊飯用の温度センサーと製パン用の温度センサーを共用のものにすることで、センサーが一つでよくなり、センサーが複数の場合に比してコスト低減を図ることができるとともに、センサーの精度管理を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。なお、図1は実施例における製パン機能付き炊飯器の炊飯時における状態を示す断面図、図2は図1における内蓋の斜視図、図3は実施例における製パン機能付き炊飯器の制御回路部分を示すブロック図、図4は実施例における製パン機能付き炊飯器の炊飯での動作状態を示す特性図、図5は実施例における製パン機能付き炊飯器の製パン時における状態を示す断面図である。
【実施例】
【0034】
本発明の製パン機能付き炊飯器において、図1、図2に示された各符号は、1は本体、2は本体1の上部に設けた蓋体、3は本体1の内部に設置され上方が開口した加熱室、4は加熱室3に収納される鉄、ステンレスなどの磁性体からなる容器、5は容器4の開口部、6は蓋体2を本体1に回動自在に取り付けるための蝶番、7は蓋体2の中央部分に形成した窓、8は窓7に設けた透明板、9は内蓋を示すものである。更に、本体1には、室温を検出する室温センサー(図示せず)が設けられる。
【0035】
内蓋9は蓋体2の内側に着脱自在に取り付けられる。また、この内蓋9は、蓋体2を本体1に対して閉じた際に、加熱室3に収納された容器4の開口部5を密閉状態に塞ぐ。そして、内蓋9を取り付けるための着脱機構は、蓋体2の内側に設けられた弾性材からなる係合用孔10と、内蓋9の上面に設けられた係合用突起11とから構成されている。
【0036】
蓋体2には、係合用孔10に近接してマイクロスイッチ25が設けられ、係合用孔10に係合用突起11が係合されているかどうかを検出する。これによって、蓋体2に内蓋9が取付けられているか否かを検出することが可能となる。尚、マイクロスイッチ25は、内蓋9が蓋体2に取付けられているか否かを検出できるものであればよく、マイクロスイッチに限定されるものではない。
【0037】
また、12は内蓋9に設けられた圧力弁であり、弁孔120とボール121とから構成されている。13は蓋体2の圧力弁12に対応する位置に形成された通気孔である。14は内蓋9の上面中央部に設けられたツマミ、15は内蓋9の縁に設けられ容器4の開口部5の縁に沿って密接させるためのパッキング部である。
【0038】
さらに、蓋体2の通気孔13には蒸気センサー24が設けられ、加熱室3から内蓋9の圧力弁12を介して通気孔13に流入する蒸気の温度を検出する。
【0039】
加熱室3は、容器4を収納する収納ケース30と、収納ケース30の外側面に配置された側面誘導加熱コイル31と、収納ケース30の底面の外側に配置された底面誘導加熱コイル32と、側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32との外側に配置された第一のシールド板33とによって構成されている。そして、側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32に通電すると、電磁誘導によって容器4が加熱される。
【0040】
また、16は容器4の底部中央を回転自在に貫通し、軸受け160によって支持された回転軸であり、17は回転軸16の容器4の内側に位置する一端に取り付けられた練り羽根であり、18は回転軸16の容器4の外側に位置する他端に取り付けられた第一の係合部である。
【0041】
さらに、19は炊飯器本体1の底部中央に設置されたモータであり、20はモータ19の回転軸に取り付けられ、前記第一の係合部18に係合する第二の係合部である。これら第一の係合部18と第二の係合部20は歯形面を有し、歯形面相互が噛合することによって接続されるようになっている。
【0042】
さらにまた、34はモータ19に外周に配した第二のシールド板であり、底面誘導加熱コイル32に対する電磁シールドとして働く。
【0043】
また、21は収納ケース30の底面内側に配置され、容器4を受ける耐熱性樹脂よりなる台座であり、22は容器4に接触するように収納ケース30の底部に配した炊飯温度センサーであり、23は同じく容器4に接触するように収納ケース30の底部に配した製パン温度センサーである。これらのセンサーは、容器4が加熱室3内部に収容された際に、容器4の底面に弾接する。
【0044】
尚、本実施例では、炊飯温度センサー22と製パン温度センサー23を、別体として説明したが、一体型のものまたは単一の温度センサーであってもよい。単一の温度センサーを使用する場合、この温度センサーは製パン時と炊飯時の両方に使用される。そして、温度センサーが一つでよいために部品数を少なくすることができ、コスト低減を図ることができる。また、後述するマイコンに製パン時と炊飯時それぞれに対応する温度検出レベルを設定しておけばよく、複数のセンサーを使用する場合に比してセンサーの精度を管理することが容易になる。
【0045】
容器4は加熱室3に着脱自在であって、加熱室3から取り出して洗浄したり洗米を入れたりする作業が可能となる。そして、容器4を加熱室3に入れると、第一の係合部18が第二の係合部20に係合し、モータ19の動力を練り羽根17に伝達することが可能となる。
【0046】
図3においては、40は所定の炊飯動作と製パン動作をプログラムされたマイコン、41は炊飯メニュー選択ボタン、42は炊飯スタートボタン、43はベーカリーメニュー選択ボタン、44は製パンスタートボタン、45はタイマーセット部、46はモータ19のモータ駆動回路、47は側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32の制御回路、48は炊き上がりや製パン完了などを報知する報知器、49はメニューの選択結果やタイマー設定時間などを表示する表示部である。
【0047】
炊飯メニュー選択ボタン41は、白米、玄米、おかゆ、保温等の選択を行う。ベーカリーメニュー選択ボタン43は、米粉、小麦粉、天然酵母、パン生地等の選択を行う。
【0048】
炊飯温度センサー22と製パン温度センサー23はマイコン40の入力側に接続されている。温度センサーが単一の場合には、その温度センサーの出力がマイコン40の入力側に接続される。
【0049】
マイコン40は、図4で示すように炊飯時に吸水、立ち上り、沸騰維持、むらし1、追い炊き、むらし2の工程を経て炊飯を行うプログラムが記憶されている。
【0050】
このプログラムにおいては、ユーザーのメニュー選択に基づいて、洗米時、吸水工程時、沸騰維持工程の開始時、および炊飯完了後におけるそれぞれ一定期間にモータ駆動回路46によってモータ19を作動させる。
【0051】
また、マイコン40は製パン時にパン材料を練り混ぜてパン生地を生成する混練り工程と、パン生地を発酵させる発酵工程と、発酵完了後にパン生地を焼き上げる焼成処理工程とを経て製パンを実施するプログラムが設定されている。
【0052】
発酵工程の完了は、パン生地が膨張して所定の高さに至ったことを光学的に検出する手段(図示せず)を用いて検出する。焼成処理工程の制御は製パン温度センサー23の検出出力によって行われる。
【0053】
次に、上述した本発明の実施例による製パン機能付き炊飯器の動作を説明する。白米による炊飯を行う場合は、図1に示すように、先ず容器4に洗米を入れる。そして、内蓋9を、係合用突起11を係合用孔10に挿入することにより蓋体2に取り付け、蓋体2を本体1に対して閉じる。その結果、内蓋9に取り付けられたパッキング部15が容器4の縁に密着し、開口部5を塞ぐことになる。
【0054】
このとき、蓋体2に設けられているマイクロスイッチ25によって蓋体2に内蓋9が装着されているか否かが検出される。そして、内蓋9が装着されている場合には、下記の炊飯動作を行うことができるようにするとともに、内蓋9が装着されていないときには、下記の炊飯動作が行えないようにされる。或いは、内蓋9が装着されていないときには、その旨を本体前面部に設けられた表示部49に表示してもよいし、下記の炊飯動作を行うようユーザが操作をした際に報知器48によって警告を促すようにしてもよい。
【0055】
これにより、炊飯時に内蓋9がないときにふきこぼれが起き、器機を損傷することを防止できる。
【0056】
また、本発明では、ユーザの選択によって、洗う前の米と水を容器3に入れ、容器4を本体1の加熱室3に装着し、次いでマイコン40に設定されたプログラムを動作させることによってモータ19を駆動し、練り羽根17を回転させて米を洗うことができる。次いでユーザは容器3内のとぎ汁を交換し、上記作業を繰り返すことによって洗米を行う。こうすることによって、容器3内に米を入れて手作業で洗米をする場合に練り羽根17が邪魔になってうまく洗米が行えなかったが、練り羽根を用いて手をぬらさずに効果的に洗米作業を行うことが可能となる。
【0057】
この洗米作業の際に、容器4を加熱室3内に装着すると、第一の係合部18と第二の係合部20が係合することによって、容易にモータ19と練り羽根17が連結される。
【0058】
その後、ユーザは炊飯メニュー選択ボタン41を操作することによって炊飯の種類(ここでは白米)を選択し、炊飯スタートボタン42を操作して炊飯を開始させる。マイコン40は、白米の選定と炊飯の開始の指示に基づいて制御回路47に指令を与える。制御回路47は、側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32への通電を制御する。加熱室3内の容器4は側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32とにより生成される交番磁束によって発熱する。また、モータ駆動回路46は、モータ19の駆動を制御する。
【0059】
製パン機能付き炊飯器は、マイコン40に予め設定されたプログラムによって吸水工程に入り、容器4は一定温度に維持される。吸水工程の時間は、本体1に設けられた室温センサー(図示せず)によって検出される室温に基づいて自動調節される。即ち、室温が低い場合は吸水時間が長くなるように、室温が高い場合には吸水時間が短くなるように予めプログラムに設定された時間に調節される。
【0060】
吸水工程中に、マイコン40は、ユーザが選択した炊飯プログラムに基づいてモータ駆動回路46に指令を与えてモータ19を駆動し、練り羽根17を回転させる。これによって吸水中の米と水とが攪拌され、容器4内の米への吸水が均一になり、吸水時間を短くすることができる。
【0061】
尚、この吸水工程中の練り羽根の回転動作は、低速で行うことが好ましく、吸水工程の後期には、吸水によって米がやわらかくなるためにさらに低速にするか、停止させることが好ましい。
【0062】
次いで、容器4の温度を上昇させることによって立ち上り工程へ移り、蒸気センサー24によって検出される蒸気温度が所定温度に達するか、所定時間経過するに次いで沸騰維持工程へと至るように制御される。
【0063】
ユーザの選択した炊飯プログラムに基づき、沸騰維持工程の開始後の一定期間、マイコン40はモータ駆動回路46によりモータ19を作動させる。モータ19の回転力は第一の係合部18と第二の係合部20との係合により回転軸16に伝達され、これによって練り羽根17が回転して容器4内の米を撹拌する。これにより、米の温度分布が均一化される。
【0064】
沸騰維持工程が終了すると、マイコン40は予め設定されたプログラムによってむらし工程1、追い炊き工程、むらし工程2を経て炊飯を完了するように制御を行う。
【0065】
更に、ユーザの選択した炊飯プログラムに基づき、マイコン40は、炊飯完了後直ちにモータ駆動回路46によりモータ19を一定期間だけ作動させる。モータ19が回転すると、練り羽根17が回転し、高温状態の炊き上がったご飯が撹拌される。この撹拌によってご飯は塊を生じないようにほぐされる。
【0066】
尚、容器4内の圧力は、内蓋9により密封されているので上昇するが、所定の値以上にならないように圧力弁12によって調節されている。
【0067】
さらに、所望の時刻に炊飯を行いたいときには、タイマーセット部45を用いて炊飯時刻のセットを行う。
【0068】
次に、図5を参照して、小麦粉を用いて製パンを行う場合について説明する。まず、容器4内に小麦粉、水、イースト菌などのパン材料を入れて蓋体2を閉める。この際、蓋体2には図5で示すように内蓋9を取り付けない。内蓋9が蓋体2に取付けられている場合、マイクロスイッチ25がそれを検出し、下記の製パン動作を行えないようにする。或いは、表示部49に蓋体2を取り外すことを促す旨を表示させるようにしてもよい。
【0069】
その後、ユーザはベーカリーメニュー選択ボタン43を操作することによってパン材料の種類(ここでは小麦粉)を選択し、製パンスタートボタン44を操作して製パンを開始させる。材料の選定と製パン開始の指示に基づいてマイコン40は、モータ制御回路46によりモータ19を作動させるように制御する。
【0070】
混練り工程では、モータ19によって練り羽根17が回転し、パン材料が練り混ぜられパン生地が生成される。
【0071】
尚、製パン時のパン生地練り工程の時間は、本体1に設けられた室温センサー(図示せず)の検出出力に基づいて、自動調節される。即ち、室温が低い場合には、練り時間は長くされ、室温が高い場合には、練り時間は短くされる。
【0072】
混練り工程が終了すると、マイコン40に予め設定されたプログラムに従い、モータ19は回転を停止し、次の発酵処理工程が開始される。発酵処理工程では、側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32に通電することによって容器4が一定温度に保温され、パン生地の発酵を促す。パン生地が発酵して所定の高さまで達すると、マイコン40はプログラムに従ってパン生地を焼き上げる焼成処理工程へと移行し、自動的にパンを焼きあげる。
【0073】
容器4は内蓋9によって閉じられていないため、蓋体2に設けられた窓7の透明板8を通して容器4内のパンの焼き上がり状況を見ることができる。
【0074】
側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32の外面には第一のシールド板33が配置されているが、容器4の加熱時に側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32とから発生する磁束は第一のシールド板33によって本体1の外部へ漏洩しないように遮蔽される。これによって、漏洩磁束による外部の各種電子機器への悪影響を防止できる。
【0075】
モータ19の周囲には第二のシールド板34が配置されているが、側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32からの漏洩磁束を遮蔽し、モータ19に付加された回転制御用の電子回路が正常に動作するのを促進する。特に、モータ19は底面誘導加熱コイル32に接近しているので、第二のシールド板34は、底面誘導加熱コイル32から発生する磁束を遮断する。
【0076】
上述した本発明の実施例によれば、製パン機能付き炊飯器における容器4は加熱室3内に着脱自在に設けられる。そのため、容器4は加熱室3から取り出して洗浄、洗米を入れる作業を行うことができる。また、容器4の開口部5は内蓋9によって選択的に塞ぐことができる。特に、炊飯時には内蓋9を取り付け、製パン時には内蓋9から取り外して使用するだけでよく、炊飯も製パンも共通の容器4で行うことができる。
【0077】
また、容器4を加熱室3内に入れると、第一の係合部18と第二の係合部20が係合することによって容器4内の練り羽根17がモータ19に連結される。そして、このモータ19は、マイコン40によって製パン時におけるパン生地練り工程と、炊飯時における洗米作業、吸水工程、沸騰維持工程開始時の一定期間、および炊飯完了後の一定期間にそれぞれユーザが選択した炊飯プログラムに基づいて回転するように制御される。
【0078】
そのため、練り羽根17は、製パン時にパン生地を練るだけでなく、炊飯時洗米に使用できる。また吸水工程時に米と水を攪拌することによって吸水が均一に行われるようにし、吸水時間を短くすることができる。また、沸騰開始時にも回転することにより、洗米を撹拌して温度分布の均一化を図ることができる。更に、練り羽根17は炊飯の完了後に回転することにより炊き上がったご飯を撹拌し塊を生じないようほぐすことができる。
【0079】
また、容器4は加熱室3内で台座21によって支持されているため、安定した状態で収容される。また、容器4と加熱室3の底面との間には、台座21によって空間が形成され、第一の係合部18と第二の係合部20との係合手段、炊飯温度センサー22、製パン温度センサー23を収容することができる。
【0080】
また、製パン時には内蓋9を取り外すことによって、窓7を通して容器4の内部を目視することができる。その結果、パンの焼き上がり状況を、蓋体2を開くことなく観察することが可能となる。
【0081】
また、本発明の実施例においては、加熱室3は側面誘導加熱コイル31と底面誘導加熱コイル32から発生する磁束による誘導加熱によって容器4を加熱する構成としたが、本発明はこれに限定されることなく発熱用ヒータ、ガスなどによる加熱手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例における製パン機能付き炊飯器の炊飯時の状態を示す断面図である。
【図2】図1における内蓋の斜視図である。
【図3】本発明の実施例における製パン機能付き炊飯器の制御回路部分を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例における製パン機能付き炊飯器の炊飯時における動作状態を示す特性図である。
【図5】本発明の実施例における製パン機能付き炊飯器の製パン時の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 本体
2 蓋体
3 加熱室
4 容器
7 窓
8 透明板
9 内蓋
14 ツマミ
16 回転軸
17 練り羽根
19 モータ
21 台座
34 第二のシールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯機能と製パン機能の両方を備えた製パン機能付き炊飯器であって、
内部に加熱室が設けられ上部に開口を備えるとともに該開口を開閉する蓋体が設けられた本体と、前記本体の加熱室内に着脱自在に取り付けられ、上部に開口部を有する炊飯兼製パン両用の容器と、前記蓋体に着脱自在に取り付けられる内蓋と、前記容器の底部に回転自在に取り付けられた回転軸と、前記回転軸の前記容器内に位置する端部に取り付けられた練り羽根と、前記回転軸の前記容器外に位置する端部に係合部を介して取り付けられ、制御部によって駆動制御されるモータと、を備え、前記内蓋は、炊飯時には前記蓋体に取り付けられることによって前記容器の開口部を閉鎖し、製パン時には前記蓋体から取り外されることを特徴とする製パン機能付き炊飯器。
【請求項2】
前記本体には前記内蓋の前記蓋体への取付け状態を検出する内蓋検出手段が設けられ、前記制御部は、前記内蓋検出手段の検出出力に基づき前記蓋体に前記内蓋が装着されていない場合に炊飯動作を行わないようにすることを特徴とする請求項1に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項3】
前記制御部は、製パン時における少なくともパン生地練り工程時と、炊飯時とに、一定期間前記モータを回転させることを特徴とする請求項1に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項4】
前記制御部は、炊飯時において、前記容器内に水と米とを収容した状態で前記モータを駆動させることによって練り羽根を回転させ、洗米することを特徴とする請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項5】
前記制御部は、炊飯時における前記モータの回転動作を、少なくとも吸水工程の初期に行わせることによって練り羽根を回転させ、前記容器内の米と水を攪拌することを特徴とする請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項6】
前記制御部は、炊飯時における前記モータの回転動作を、少なくとも沸騰維持工程の初期に行わせることによって練り羽根を回転させ、前記容器内の米と水を攪拌することを特徴とする請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項7】
前記制御部は、炊飯時における前記モータの回転動作を、少なくとも炊飯完了後に行わせることによって炊飯されたご飯を混ぜることを特徴とする請求項3に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項8】
前記蓋体は、前記加熱室内を目視可能な窓を備え、該窓には透明板が備え付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項9】
前記加熱室の底面には、前記容器を支持する台座を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項10】
前記加熱室は、前記容器を電磁誘導加熱によって加熱する電磁誘導コイルを有し、前記モータと前記電磁誘導コイルとの間にはシールド板が配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項11】
前記本体には、室温検出センサーが設けられ、前記制御部は、前記室温検出センサーによって検出される室温の高低に応じて、製パン時におけるパン生地練り工程の時間と炊飯時における吸水工程の時間を調節することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器。
【請求項12】
前記本体には、前記容器が前記加熱室内に装着された際に前記容器に弾接する温度センサーが設けられ、
該温度センサーは、製パン兼炊飯両用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製パン機能付き炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−18122(P2008−18122A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193712(P2006−193712)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】