説明

製パン練り込み用乳化油脂組成物

【課題】特に乳化剤を使用せずとも、練りこんだパン生地に冷凍耐性を付与することができ、生地物性を悪化させることなく、もっちり感としとり感を併せ持ち、老化しにくいパンを得ることができる製パン練り込み用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】DEが2〜9であるデキストリンを水相中に、水相基準で12〜50質量%含有することを特徴とする製パン練り込み用乳化油脂組成物。該製パン練り込み用乳化油脂組成物において、水分含量は10〜65質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練りこんだパン生地に冷凍耐性を付与することができ、生地物性を悪化させることなく食感(ソフト性、もっちり感、しとり感)が良好なパンを得ることができる製パン練り込み用乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パンに求められる食感としては、ソフト性はもちろんであるが、最近では、もっちり感やしとり感なども求められている。
また、計画生産の要望や、最近の焼きたてパン志向から、冷凍生地の需要も活発である。
ここで、ソフトでしとり感のあるパンを得るには、基本的にはあらかじめ少量の小麦粉を水に溶いたバッターを醗酵させてから使用する液種法を用いるか、水分を多く配合したパン生地を使用すればよい。しかしこのような方法で得られるパン生地はべたついた物性になり、丸めや成型時に扱いにくい等、生地物性が悪化してしまう問題があった。また、得られたパンは、確かにソフトでしっとりとしているが、ねちゃついた食感になってしまう問題もあった。
【0003】
また、ソフトでもっちりした食感のパンを得るには、基本的にはあらかじめ使用する澱粉の一部を糊化して添加する湯種法を用いるか、あるいは糊化澱粉や増粘多糖類を添加したパン生地を使用すればよい。しかし、このような方法で得られるパン生地は伸展性の劣る生地になり、丸めや成型時に扱いにくい等、生地物性が悪化してしまう問題があった。また、得られたパンは、確かにソフトでもっちりとしているが、しとり感に欠ける食感になってしまう問題もあった。
【0004】
一方、冷凍耐性のあるパン生地を得るためには、基本的には冷凍によるグルテンの損傷を抑制するために、活性グルテンをあらかじめ多く添加するか、アスコルビン酸等の生地酸化剤成分を多く添加すればよい。しかし、このような方法で得られるパン生地は伸展性の劣る生地になり、丸めや成型時に扱いにくい等、生地物性が悪化してしまう問題があった。また、得られたパンは、確かに体積は良好であるが、表面にナシ肌が発生してしまう問題もあった。
【0005】
尚、製パン時の生地物性の改良やパンの食感改良、冷凍生地の改良については、乳化剤、増粘安定剤、酵素等、様々な製パン改良成分を用いた研究がなされており、それらの成分を単独であるいは組み合わせて使用することで、生地物性とパンの食感の両方を改善する製パン改良剤組成物や冷凍生地改良剤が、多種紹介されている。なかでも、マーガリンやショートニング等の油脂組成物中に各種製パン改良成分を含有させた製パン練り込み用油脂組成物は、パン生地混捏時の最終段階で生地に添加することにより、生地のグルテン形成に影響を与えることなく各種製パン改良成分をパン生地に添加可能な点で有利であることから、各種提案されている。
【0006】
例えば、トランス型不飽和脂肪酸モノグリセリドと糊料を含有する油中水型乳化物(例えば特許文献1参照)、水和された乳化剤及び糊料を含有する油中水型乳化物(例えば特許文献2参照)、糊化膨潤した澱粉粒が分散した油脂組成物(例えば特許文献3参照)、油相中にプロピレングリコール脂肪酸エステルとモノグリセリドを含有する油脂組成物(例えば特許文献4参照)、油相中にジアセチル酒石酸モノグリセリドとモノグリセリドを含有する油脂組成物(例えば特許文献5参照)等が提案されている。
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2の油中水型乳化物は、生地物性の改良効果が低く、得られたパンもソフトではあるがもっちり感はなく、しとり感もやや不足する問題があり、更に、水分含量の低いパンでは糊料由来の口溶けが顕れる場合があった。特許文献3の油脂組成物を用いたパン生地は伸展性が低下しやすく、また得られたパンはもっちりした食感を有するがしとり感がやや不足するパンとなってしまうという問題があった。特許文献4の油脂組成物を用いたパンは、生地物性の改良効果が低く、また得られたパンはソフトではあるがもっちり感が不足するという問題があった。特許文献5の油脂組成物を用いたパンは体積増加によるソフト性向上効果はあるが、もっちり感がなく、しとり感もやや劣るという問題があった。
【0008】
また、もっちりした食感のパンを得る方法として、α化小麦粉または/およびα化小麦澱粉およびマルト−ス類を使用する方法(例えば特許文献6参照)、小麦粉100部に対して糯粉5〜30部及び増粘多糖類0.2〜2.0部を添加する方法(例えば特許文献7参照)が提案されている。
しかし、特許文献6や7に記載の方法では、パン生地の伸展性が乏しく、また得られたパンはもっちりした食感を有するがしとり感に乏しいパンとなってしまうという問題があった。
また、特許文献6や7に記載の方法は、改良成分の添加量が多くないと有効ではないため、改良成分を油脂組成物の形態でパン生地に添加することは極めて困難であり、そのため、グルテンの形成を阻害することなく、パン生地を得ることができないという問題もあった。
【0009】
このように従来は、もっちり感としとり感は相反する食感と考えられていたため、ソフト性に加え、もっちり感としとり感を併せ持つパンは得られておらず、まして、上記食感のパンを、生地物性を悪化させることなく得るための製パン練り込み用油脂組成物は得られていなかった。
また、上記特許文献1〜4、7には、冷凍生地に使用する記載がなく、特許文献6には冷凍生地に使用した場合の効果の記載がなく、特許文献5には冷凍生地の改良に有効であることは記載されているが、該文献は特定の乳化剤の冷凍耐性効果の劣化防止に関する発明であり、食感の改良をするものではなかった。
【0010】
ここで、上記特許文献1、2、4、5を参照するとわかるように、パンのソフト化には乳化剤の効果が極めて高いことが知られているが、最近では乳化剤を使用しないでこれら文献に記載の油脂組成物を用いたパンと同様の効果を得ることも求められている。
しかし、上記特許文献3、6、7を参照するとわかるように、乳化剤を使用しないと、特にしとり感が不足し、また、老化しやすいパンになってしまう問題があった。
このように、特に乳化剤を使用せずとも、練りこんだパン生地に冷凍耐性を付与することができ、生地物性を悪化させることなく、もっちり感としとり感を併せ持ち、老化しにくいパンを得ることができる製パン練り込み用油脂組成物は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平03−236734号公報
【特許文献2】特開平04−144632号公報
【特許文献3】特開平08−224057号公報
【特許文献4】特開2007−267654号公報
【特許文献5】特開平05−219886号公報
【特許文献6】特開2003−180233号公報
【特許文献7】特開平10−113115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、特に乳化剤を使用せずとも、練りこんだパン生地に冷凍耐性を付与することができ、生地物性を悪化させることなく、もっちり感としとり感を併せ持ち、老化しにくいパンを得ることができる製パン練り込み用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定のデキストリンを水相に高濃度に含有させた乳化油脂組成物が、上述の従来技術の問題を解決可能であることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、DEが2〜9であるデキストリンを水相中に、水相基準で12〜50質量%含有することを特徴とする製パン練り込み用乳化油脂組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記製パン練り込み用乳化油脂組成物を使用したパン生地を提供するものである。
【0015】
更に、本発明は、上記パン生地を成形した後、加熱処理してなるパンを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を使用すると、特に乳化剤を使用せずとも、練りこんだパン生地に冷凍耐性を付与することができ、ソフト性に加え、もっちり感としとり感を併せ持ち、老化しにくいパンを、生地物性を悪化させることなく、安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物について詳細に説明する。
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、後述するように、油中水型乳化物であることが好ましい。このため、以下には、主に、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物が油中水型乳化物である場合について述べる。
先ず、本発明の必須成分であるデキストリンについて述べる。
本発明で使用することのできるデキストリンとしては、澱粉を酵素処理、熱処理、アルカリ処理、酸処理等の方法で低分子化したものであって、DEが2〜9のものであることが必要であるが、4〜8のものであることがより好ましい。尚、上記DEはウィルシュテッター・シューデル法による数値を使用する。
ここで、DEが2より小さいと、冷凍耐性を得ることができないことに加え、しとり感の乏しいパンになってしまう問題があることに加え、水相の粘度が高くなりすぎ、乳化油脂組成物の製造が困難となるおそれがある。一方、DEが9より大きいと、性質がオリゴ糖に近似するため、もっちりした食感のパンが得られない。
【0018】
尚、その重量平均分子量は、好ましくは3600〜1000000のものを使用することが好ましく、より好ましくは重量平均分子量5000〜50000のデキストリンを使用する。ここで、重量平均分子量が1000000を超えるデキストリンであると、水相への溶解が困難であることに加え、水相の粘度が高くなりすぎ、乳化油脂組成物の製造が困難となるおそれがある。一方、重量平均分子量が3600未満であると、性質がオリゴ糖に近似するため、もっちりした食感のパンが得られないおそれがある。
【0019】
また、上記デキストリンの起源となる澱粉の種類としては、じゃがいも、甘藷、とうもろこし、ワキシーコーン、タピオカ、うるち米、もち米などが挙げられるが、本発明では、ワキシーコーン、タピオカ、もち米のうちの1種又は2種以上の澱粉、特にワキシーコーンの澱粉を使用することが、単位分子量あたりの分岐数が多いデキストリンが得られることから、少量の添加量で得られるパンの改良効果が高いこと、更には、乳化剤を減じた、または乳化剤を添加しない油脂組成物の場合であっても良好な乳化安定性を保ち、保存性が良好である製パン練り込み用油中水型乳化油脂組成物を得られる点において好ましい。
【0020】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物における上記デキストリンの含有量は、固形分として、水相中に、水相基準で12〜50質量%、好ましくは18〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%である。上記デキストリンの含有量が12質量%未満では、本発明の効果を得ることができない。一方、50質量%超では、得られるパンがもっちり感が強すぎ、しとり感が薄れてしまうことに加え、製パン練り込み用乳化油脂組成物の保管中にデキストリンの結晶が析出してしまい、製パン練り込み用としての良好な物性が失われてしまうおそれがある。
尚、上記デキストリンの製パン練り込み用乳化油脂組成物中の含有量は、好ましくは3〜25質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。
【0021】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、上記デキストリンに加え、オリゴ糖を水相中に、水相基準で6〜25質量%含有することが好ましく、より好ましくは7〜20質量%、更に好ましくは8〜15質量%含有する。
【0022】
本発明で使用することのできるオリゴ糖としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、直鎖オリゴ糖、分岐オリゴ糖、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ビートオリゴ糖、寒天オリゴ糖(アガロオリゴ糖)、シアリルオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、カップリングシュガー、ニゲロオリゴ糖、パノースオリゴ糖、セロオリゴ糖、ペクチンオリゴ糖、レバンオリゴ糖、マンノオリゴ糖、環状オリゴ糖(シクロデキストリン)、還元澱粉糖、直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、ガラクトシルラクトース等を挙げることができ、これらのなかの1種又は2種以上を使用することができるが、なかでも、マルトオリゴ糖、ラフィノース、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖及び大豆オリゴ糖のうちの1種又は2種以上を使用することが好ましく、マルトオリゴ糖を使用することが特に好ましい。
【0023】
また、上記オリゴ糖は、しとり感が特に良好なパンが得られる点で、結合数3のオリゴ糖、すなわち三糖類の割合が10〜90質量%のオリゴ糖であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%のオリゴ糖、更に好ましくは40〜50質量%のオリゴ糖である。
尚、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物において、上記デキストリンと上記オリゴ糖を併用する場合、その合計した添加量は、水相中に、水相基準で好ましくは27〜70質量%、より好ましくは33〜45質量%である。
【0024】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物では、結合数が1〜7である糖類を水相中に、水相基準で6〜25質量%含有することが好ましく、より好ましくは8〜20質量%、更に好ましくは10〜20質量%含有する。
上記結合数が1〜7である糖類を上記範囲内とすることで、パン生地の伸展性を改善し、更には得られるパンのしとり感をより向上させることができることに加え、上記デキストリンの水相での溶解性を安定化させることができることから、製パン練り込み用乳化油脂組成物の保存安定性を向上させることもできる。
尚、市販のデキストリンには一般的に上記結合数の糖類が不純物として含まれるが、これについても上記結合数が1〜7である糖類の含有量に含めることとする。
【0025】
また、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物では、結合数1の糖類、すなわち単糖類があると、上記デキストリンの効果を抑制するため、水相中、1質量%以下(水相基準)とすることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下とする。
また、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物では、しとり感が特に良好なパンが得られる点で、結合数3の糖類、すなわち三糖類を、上記結合数が1〜7である糖類の合計量100質量部中の15〜90質量部含有することが好ましく、より好ましくは30〜60質量部、更に好ましくは30〜45質量部含有する。
【0026】
尚、結合数が1〜7である糖類の製パン練り込み用乳化油脂組成物中の含有量は、組成物基準で好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
また、本発明の練り込み用乳化油脂組成物では、結合数1〜7である糖類が、上記DEが2〜9であるデキストリン及び上記オリゴ糖の合計量100質量部あたり10〜60質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜50質量部、更に好ましくは30〜45質量部である。
【0027】
尚、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、乳化剤を含有しないことが好ましい。
乳化剤は、製パン時に少量の添加で、生地物性の改良、生地吸水量の調整、乳化安定性の向上、冷凍耐性付与、パンのボリューム向上、ソフト性付与、老化防止等さまざまな効果をもたらすため、従来、広く使用されていた。
しかし、最近では、天然志向や添加物使用量低下の要請等により、そのような乳化剤を使用せずとも同様の効果を得ることが求められる場面も多々存在する。
ここで、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、乳化剤を使用せずとも、良好な保存安定性を有し、また得られるパン生地の物性、得られるパンの品質も良好なものとすることができるため、乳化剤を添加する必要がないものである。
【0028】
尚、上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
【0029】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物で使用する油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明では、これらの中でも、ヨウ素価52〜70、好ましくはヨウ素価60〜70のパーム分別軟部油を70質量%、好ましくは100質量%含む油脂配合物をランダムエステル交換したエステル交換油脂を、その含有量が油脂中に50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%となるように使用することが望ましい。
【0030】
上記油脂の含有量は、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物中、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%である。上記油脂の含有量が20質量%未満では、パン生地に添加した際のパン生地への練りこまれやすさ(混合性)が悪化しやすいことに加え、得られるパン生地の伸展性が悪化することがあり、その場合、得られるパンの体積が減少し、また食感も悪化してしまうおそれがある。一方、90質量%超では、上記デキストリンの含有量が相対的に少なくなってしまうため、本発明の効果が得られないおそれがある。尚、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0031】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物の乳化形態は油中水型乳化物であっても水中油型乳化物であってもよいが、好ましくは油中水型乳化物とする。油中水型乳化物とすることで、パン生地への添加時に、上記デキストリンを、微細な高濃度のデキストリン水粒の形態で効率的に均質にパン生地中に分散させることが可能である。
【0032】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物における水分含有量は、好ましくは5〜65質量%、より好ましくは7〜19質量%である。水分含有量が、組成物中5質量%未満であると、上記デキストリンを安定的に配合することが困難になってしまうおそれがある。一方、水分含有量が、組成物中65質量%超であると、得られるパン生地が、べとつきやすく、得られるパンもねちゃついた食感になりやすい。尚、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物に、水分を含有する副原料を使用した場合は、上記水分含有量には、それらの副原料に含まれる水分も含めるものとする。
【0033】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物において、水相は、上記水分、上記デキストリン、必要に応じて副原料として用いられる上記糖類、及び上記乳化剤のうち水溶性のもの、更には、後述のその他の原料のうちの水溶性成分を含むものである。油相は、上記油脂、及び必要に応じて副原料として用いられる上記乳化剤のうち油脂溶性のもの、更には、後述のその他の原料のうちの油溶性成分を含むものである。本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物において、水相と油相との質量比率(前者:後者)は、10:90〜80:20であることが好ましく、15:85〜50:50であることが更に好ましい。
【0034】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、可塑性を有していることが好ましい。これは、通常、製パン時に油脂を添加するのはグルテン構造が生成してからであり、油脂が可塑性を有していると、そのグルテンをコーティングする形で補強することが可能であるためである。製パン練り込み用乳化油脂組成物が液状であると、潤滑油のように作用して生地がミキサーボウルの中で滑ってしまい、生地に入っていかないという問題もある。
【0035】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、必要に応じ一般の製パン練り込み用油中水型乳化油脂組成物に使用することのできる上述した各成分以外のその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、酵素、澱粉類、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記その他の原料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物中、合計で好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下となる範囲で使用する。
【0036】
次に、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物の好ましい製造方法について、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物が油中水型乳化物の場合に基づいて説明する。
先ず、油脂に、必要に応じその他の成分としての油溶性成分を添加して油相とする。一方、水に、上記デキストリン、並びに必要に応じて上記糖類及びその他の成分としての水溶性成分を添加して水相とする。上記デキストリン及び上記糖類を水に溶解する際は、先ず糖類を溶解してから、デキストリンを溶解する、2段階で溶解することが好ましい。これは、先にデキストリンを添加すると、水相の粘度が上昇しすぎて、糖類を均質に溶解させることができなくなる可能性があるためである。
【0037】
次に、上記油相を溶解し、そこへ上記水相を加え、混合乳化し予備乳化物を得る。そして次に、この予備乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、上記予備乳化物を冷却し、結晶化させて、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を得る。冷却の際には、好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
また、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0038】
本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、山形食パン、角型食パン、コッペパン、バラエティブレッド、ロールパン、菓子パン、スイートロール、デニッシュ・ペストリー、バンズ、ブリオッシュ、マフィン、ベイグル、スコーン、イングリッシュマフィン、ドーナツ、ピザ、蒸しパン、ワッフル等の各種パン生地に用いることができる。
【0039】
また、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物は、上記パン生地の冷凍生地に使用すると、従来よりも優れた性質を有した冷凍生地を得ることができる。即ち、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を使用した冷凍生地は、解凍後も生地ダレを起こしにくく、且つ、該冷凍生地から得られたパンは、従来の酸化剤等の生地改良成分を使用しなくても体積、風味が良好で、内相、外相とも良好となる。また、これらの冷凍生地は、冷凍耐性に優れ、冷凍期間が2ヶ月程度にまで達しても焼成後の品質のバラツキを少なくできる。
【0040】
次に、本発明のパン生地について述べる。
本発明のパン生地は、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を使用したパン生地である。本発明のパン生地における製パン練り込み用乳化油脂組成物の使用量は、従来の製パン練り込み用油中水型乳化油脂組成物と同様であり、パンの種類によっても異なるが、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜20質量部である。
【0041】
上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
【0042】
小麦粉以外の穀粉類を使用する場合、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンをあわせた合計量に対し、タンパク質含量が好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜18質量%となる量である。
【0043】
本発明のパン生地においては、必要に応じ、一般の製パン材料として使用することのできるその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
【0044】
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、水については、上記澱粉類100質量部に対して、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料については、上記澱粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。尚、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、上記の水には、その他の原料に含まれる水分も含めるものとする。
【0045】
また、上記本発明のパン生地は冷凍生地とすることができる。
冷凍の段階は特に制限されず、生地玉冷凍生地、成形冷凍生地、ホイロ済み冷凍生地等の各種の段階の冷凍生地とすることができるが、成形冷凍生地であることが好ましい。
【0046】
次に、本発明のパン生地の製造方法について説明する。
本発明のパン生地は、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を生地に練り込むことにより、製造することができる。
本発明のパン生地の製造方法としては、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等、従来製パン法として使用されるあらゆる製パン法を採ることができる。尚、本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン練り込み用乳化油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込むことにより製造することができるが、本捏生地に練り込むことが好ましい。
また、得られた本発明のパン生地は、上述のように冷凍保存することも可能である。
【0047】
次に、本発明のパンについて述べる。
本発明のパンは、上記の本発明のパン生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱処理することにより得ることができる。
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
上記加熱処理としては、焼成、蒸し、フライ等を挙げることができる。これらのうちの2種以上の加熱処理を併用してもよい。
また、得られた本発明のパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等によって制限されるものではない。
【0049】
〔実施例1〕
<製パン練り込み用乳化油脂組成物の製造>
パームスーパーオレイン(ヨウ素価65)のランダムエステル交換油脂95質量部及びパームステアリン5質量部を均一に混合した混合油脂80質量部を完全に溶解した油相を60℃に保温した。
一方、水12質量部に、DE=8、重量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン(結合数1〜7の糖類含量17質量%、単糖含量0.5質量%、三糖類含量3質量%)6質量部、マルトオリゴ糖(商品名「ピュアトース」:サンエイ糖化株式会社製、結合数1〜7の糖類含量100質量%、単糖含量1.7質量%、三糖類含量46質量%)2質量部を、添加、溶解し、水相を得た。
上記油相に上記水相を添加し、予備乳化液を製造した後、90℃にて1分間、蒸気を用いて殺菌処理し、次いでコンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物1を得た。
【0050】
〔実施例2〕
マルトオリゴ糖を無添加とし、水を12質量部から14質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物2を得た。
【0051】
〔実施例3〕
マルトオリゴ糖に代えて上白糖(結合数1〜7の糖類含量99質量%、単糖含量1質量%、三糖類含量0質量%)を使用した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物3を得た。
【0052】
〔実施例4〕
デキストリンを6質量部から4質量部とし、マルトオリゴ糖を2質量部から4質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物4を得た。
【0053】
〔実施例5〕
デキストリンを6質量部から4質量部とし、水を12質量部から14質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物5を得た。
【0054】
〔実施例6〕
デキストリンの種類を、DE=4、重量平均分子量8500のワキシーコーン由来のデキストリン(結合数1〜7の糖類含量5質量%、単糖含量0.1質量%、三糖類含量0.8質量%)に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物6を得た。
【0055】
〔比較例1〕
デキストリンを無添加とし、マルトオリゴ糖を2質量部から8質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である比較例の製パン練り込み用乳化油脂組成物7を得た。
【0056】
〔比較例2〕
デキストリンを6質量部から2質量部とし、マルトオリゴ糖を2質量部から6質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である実施例の製パン練り込み用乳化油脂組成物8を得た。
【0057】
〔比較例3〕
デキストリンに代えて、ワキシーコーン由来の糊化でんぷん(DE=1)に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である比較例の製パン練り込み用乳化油脂組成物9を得た。
【0058】
〔比較例4〕
デキストリンの種類を、DE=11、重量平均分子量=17000のタピオカ由来のデキストリン(結合数1〜7の糖類含量30質量%、単糖含量0.5質量%、三糖類含量5.5質量%)に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、可塑性を有する油中水型乳化物である比較例の製パン練り込み用乳化油脂組成物10を得た。
【0059】
〔比較例5〕
パームスーパーオレイン(ヨウ素価65)のランダムエステル交換油脂95質量部及びパームステアリン5質量部を均一に混合した混合油脂87質量部にグリセリンモノステアリン酸エステル1質量部を添加し、完全に溶解した油相を60℃に保温した。ここに水12質量部からなる水相を添加し、予備乳化液を製造した後、90℃にて1分間、蒸気を用いて殺菌処理し、次いでコンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油中水型乳化物である比較例の製パン練り込み用乳化油脂組成物11を得た。
【0060】
得られた製パン練り込み用油中水型乳化油脂組成物1〜11の、(1)水相中のDE2〜9のデキストリン含量(水相基準)、(2)組成物中のDE2〜9のデキストリン含量、(3)水相中のオリゴ糖含量(水相基準)、(4)組成物中のオリゴ糖含量、(5)水相中のデキストリン及びオリゴ糖の合計した含量(水相基準)、(6)水相中の結合数1〜7の糖類含量(水相基準)、(7)デキストリン及びオリゴ糖の合計した含量100質量部あたりの結合数1〜7の糖類含量、(8)結合数1〜7の糖類100質量部中の三糖類含量、(9)水相中単糖含量(水相基準)について、表1に記載する。
【0061】
【表1】

【0062】
<プルマン型食パンの製造試験>
上記<製パン練り込み用乳化油脂組成物の製造>で得られた製パン練り込み用乳化油脂組成物1〜11を用いて、下記に示す配合及び製法によりプルマン型食パンを製造し、分割・丸目時の生地作業性、得られた食パンの体積、20℃にて2日保管後の風味並びに食感(ソフト性、しとり感及びもっちり感)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。その結果を表2に示す。
【0063】
[プルマン型食パンの配合・製法]
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製、タンパク質含量11.8%及び灰分0.37%)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、強力粉(商品名「イーグル」:日本製粉製)30質量部、上白糖5質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.5質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。ここで、製パン練り込み用乳化油脂組成物8質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
【0064】
[評価基準]
・生地作業性
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
○:良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか、又は、やや伸展性が悪く、若干劣る作業性であった。
×:べとつきがあるか、又は、伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
・外観(体積)
◎:体積が大きく、細い均一なホワイトラインを有し、上面の4隅の角もしっかり出たプルマンブレッドであった。
○:体積が大きく、ホワイトラインを有し、上面の4隅の角もしっかり出たプルマンブレッドであった。
△:体積がやや小さく、明瞭なホワイトラインがなく、上面の4隅の角も丸いプルマンブレッドであった。
×:体積が小さいため、上面が平らにならず、曲面であるプルマンブレッドであった。
・風味
◎:極めて良好
○:良好
△:エグ味がありムレ臭がある
×:エグ味がありムレ臭が激しい
【0065】
・食感(ソフト性)
◎:極めて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(しとり感)
◎:極めて良好
○:良好
△:ややぱさついた感じである
×:乾いた食感である
・食感(もっちり感)
◎:極めて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
【0066】
【表2】


【0067】
<バターロールの製造試験>
上記<製パン練り込み用乳化油脂組成物の製造>で得られた製パン練り込み用乳化油脂組成物1〜11を用いて、下記に示す配合及び製法によりバターロール生地の成形冷凍生地を得た。得られた成形冷凍生地を、−20℃の冷凍庫で保管した。20日後、0℃の冷蔵庫に移庫し、12時間かけて解凍した。次いで、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してバターロールを得た。解凍後の生地だれの状態、得られたバターロールの外観、20℃にて2日保管後の食感(ソフト性、しとり感及びもっちり感)、及び内相について、下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表3に示した。
【0068】
[バターロールの配合・製法]
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製、タンパク質含量11.8%及び灰分0.37%)90質量部、薄力粉(商品名「ハート」:日本製粉製)10質量部、生イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖12質量部、食塩1.2質量部、脱脂粉乳3質量部、全卵(正味)15質量部及び水45質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で5分ミキシングした。ここで、製パン練り込み用乳化油脂組成物15質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、バターロール生地を得た。得られたバターロール生地の捏ね上げ温度は27℃であった。このバターロール生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、90分間醗酵を行なった。40gに分割し、次いで、ベンチタイムを20分とった後、手成形でバターロール成形し、20分間の−40℃の急速冷凍を行い、バターロール生地の成形冷凍生地とした。
【0069】
[評価基準]
・解凍後の生地だれの状態
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好であった。
○:良好であった。
△:ややべとつきが感じられる。
×:べとつきがあり不良。
・外観(体積・表面)
◎:体積が大きく、ナシ肌もみられず良好な外観であった。
○:体積が大きいが、若干のナシ肌が見られた。
△:体積がやや小さく、明瞭なナシ肌が見られた。
×:体積が小さく、顕著なナシ肌が見られた。
【0070】
・食感(ソフト性)
◎:極めて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(しとり感)
◎:極めて良好
○:良好
△:ややぱさついた感じである
×:乾いた食感である
・食感(もっちり感)
◎:極めて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
【0071】
・内相
◎:膜が薄く均一なすだちであり、極めて良好である。
○:良好である。
△:膜がやや厚く、やや不均一なすだちである。
×:膜が厚く、不均一なすだちであり、不良である。
【0072】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
DEが2〜9であるデキストリンを水相中に、水相基準で12〜50質量%含有することを特徴とする製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項2】
更にオリゴ糖を水相中に、水相基準で6〜25質量%含有することを特徴とする請求項1記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項3】
上記オリゴ糖における結合数3のオリゴ糖の割合が10〜90質量%であることを特徴とする請求項2記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項4】
結合数が1〜7である糖類を水相中に、水相基準で6〜25質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項5】
結合数1〜7である糖類が、上記DEが2〜9であるデキストリン及び上記オリゴ糖の合計量100質量部あたり10〜60質量部であることを特徴とする請求項2又は3記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項6】
乳化剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項7】
水分含量が10〜65質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項8】
冷凍生地用であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製パン練り込み用乳化油脂組成物を使用したパン生地。
【請求項10】
請求項9記載のパン生地を成形した後、加熱処理してなるパン。

【公開番号】特開2013−102745(P2013−102745A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250424(P2011−250424)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】