説明

製作後の屈折力調節が可能なレンズ

【課題】手術後の屈折力調節が可能なレンズを提供すること。
【解決手段】本発明は手術後の屈折力調節が可能なレンズに関する。一般に、本発明レンズは(i)第1のポリマーマトリックスおよび(ii)そこに分散され、刺激誘起重合できる、屈折変調組成物、を含む。レンズの少なくとも1部分が適切な刺激にさらされるとき、屈折変調組成物は第2のポリマーマトリックスを形成する。第2のポリマーマトリックスの量および位置は、その屈折率を変えることにより、および/またはその形状を変更することにより、レンズの屈折力のようなレンズ特性を調節することができる。本発明のレンズは、それぞれデータ記憶手段および医用レンズ、特に眼内レンズ、のような、エレクトロニクスおよび医学分野において、数多くの用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
およそ2百万の白内障(cataract)外科処置が毎年、米国で実施されている。処置は、白内障の結晶性水晶体を除去するために前方水晶体被膜(anterior lens capsule)を切開すること、そしてその場所に眼内レンズを移植することを含むのが通常である。移植レンズの屈折力(power)は、患者が付加的な矯正手段(たとえば、眼鏡もしくはコンタクトレンズ)なしにみることができるように(目の長さ、および角膜の弯曲についての手術前の測定にもとづいて)選択される。不幸にも、測定における誤差、および/または変わりやすいレンズの配置および創傷治癒によりこの処置を受ける全患者の約半数は外科手術後に矯正なしには最適の視力を有さない。BrandserらのActa Ophthalmol Scand 75 : 162〜165 (1997);OshikaらのJ.Cotaract Refract Surg 24:509〜514(1998)。いったん移植されると、従来の眼内レンズは調節され得ないのが通常であるので、通常、患者は、異なる屈折力のもう1つのレンズで移植レンズを置換すること、または眼鏡もしくはコンタクトレンズのような追加の矯正レンズを用いるに従うことのどちらかを選択しなければならない。利益は前者の危険を上まわらないのが通常であるので、前者はほとんどなされない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
移植およびつづく創傷治癒の後に屈折力が調節されうる眼内レンズは白内障外科手術に関連した手術後の屈折誤差についての理想的な解決策であろう。さらに、このようなレンズはもっと広範な用途を有し、近視、遠視および乱視のようなもっと典型的な状態を矯正するのに用いられうる。角膜を新しい形にするためにレーザーを用いるLASIKのような外科的処置も利用することができるけれども、軽〜中度の近視および遠視が容易に処置されうるにすぎない。対照的に、眼内レンズは、自然の眼の屈折誤差を矯正するための眼鏡もしくはコンタクトレンズのような作用をし、どんな患者の眼にも移植されうる。移植レンズの屈折力は調節されうるので、測定の不ぞろいおよび/または変わりやすいレンズ配置および創傷治癒による手術後の屈折誤差は、うまくその場で適合させられうる。
【課題を解決するための手段】
【0003】
要約
本発明は、光学素子、特に医用レンズ、ならびにその使用方法に関する。一般的に、本発明のレンズは、(i)第1のポリマーマトリックスおよび(ii)そこに分散された刺激誘起重合ができる屈折変調組成物を含む。1つの態様において、レンズの少なくとも1部分が適切な刺激にさらされると、屈折変調組成物は第2のポリマーマトリックスを生成し、その生成はレンズの屈折力を改変する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】中心を照射され、ついで調節されたレンズ屈折力を「固定する」ためにレンズ全体を照射する本発明のレンズの概略図である。
【図2】種々の量の照射にさらされた後に屈折率を定量するために用いられるプリズム照射処理を示す。
【図3A】本発明IOLのフィルター処理されていない波紋のある縞パターンを示す。2つのRonchiルーリング間の角度は12°に設定され、第1および第2の波紋のあるパターンの置換距離は4.92mmである。
【図3B】本発明IOLのフィルター処理されていない波紋のある縞パターンを示す。2つのRonchiルーリング間の角度は12°に設置され、第1および第2の波紋のあるパターンの置換距離は4.92mmである。
【図4】本発明IOLのロンキーグラムである。Ronchiパターンはレンズの2.6mm中央領域に相当する。
【図5】第2のポリマーマトリックス形成がレンズの形状を変えることによりレンズの性質を変調する第2のメカニズムを示す概略図である。
【図6A】レーザー処理前のIOLのRonchiインターフェログラムを示す。
【図6B】レーザー処理後のIOLのRonchiインターフェログラムを示し、眼内のレンズ屈折力の約+8.6ジオプトリの変化を表わす。交互の明暗の帯の間隔はレンズ屈折力に比例する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
好適な態様の詳細な説明
本発明は製作後の屈折力調節が可能な光学素子(たとえば、レンズおよびプリズム)に関する。特に、本発明はその屈折力が眼に移植の後にその場で調節されうる眼内レンズに関する。
【0006】
本発明の光学素子は、第1のポリマーマトリックスおよびそこに分散された屈折変調組成物を含む。第1のポリマーマトリックスは光学素子の骨格を形成し、多くの材料の性質についての責任をもつのが通常である。屈折変調組成物(「RMC」)は単一化合物もしくは化合物の組み合わせであってもよく、刺激誘起重合、好適には光重合ができる。ここで使用されるように、「重合」(“polymerization”)という用語は、屈折変調組成物の少なくとも1つの成分が反応して、同様の成分もしくは異なる成分と少なくとも1つの共有結合もしくは物理的結合を形成する反応をいう。第1のポリマーマトリックスおよび屈折変調組成物の本体は光学素子の最終用途に依存する。しかし、一般に、第1のポリマーマトリックスおよび屈折変調組成物は、屈折変調組成物を含む成分が第1のポリマーマトリックス中に拡散できるように選ばれる。別な言い方をすると、ゆるい第1のポリマーマトリックスは比較的大きいRMC成分と対をなす傾向にあり、そして堅い第1のポリマーマトリックスは比較的小さいRMC成分と対をなす傾向にある。
【0007】
適切なエネルギー源(たとえば、熱もしくは光)にさらされると、屈折変調組成物は光学素子のさらされた領域に第2のポリマーマトリックスを形成するのが一般である。第2のポリマーマトリックスの存在は、光学素子のこの部分の物質特性を変え、屈折能力を変調する。一般に、第2のポリマーマトリックスの形成は光学素子の作用された部分の屈折率を増加させるのが通常である。さらされた後に、さらされていない領域の屈折変調組成物は時間とともにさらされた領域に移行する。さらされた領域へのRMC移行量は時間依存性であり、正確に制御されうる。もし十分な時間があれば、RMC成分は再び平衡に達し、光学素子(すなわち、第1のポリマーマトリックスであり、さらされた領域を含む)にわたって再分配される。その領域がエネルギー源に再びさらされるとき、その領域(RMC組成物が再び平衡化されていたら比較的少ない)に移行した屈折変調組成物(「RMC」)は重合して第2のポリマーマトリックスの形成をさらに増加させる。この工程(適切な時間をおくことによりさらすと拡散が生じる)は、光学素子のさらされた領域が所望の特性(たとえば、屈折力、屈折率もしくは形状)に達するまでくり返されうる。この点で、全光学素子は、さらされた領域の外側にある残りのRMC成分を重合することにより所望のレンズ特性を「固定する」(“lock−in”)ために、エネルギー源にさらされ、ついでその成分はさらされた領域に移行することができる。すなわち、自由に拡散することができるRMC成分はもはや利用できないので、エネルギー源に光学素子をつづいてさらすことは、もはや屈折力を変え得ない。図1は1つの本発明の態様を例示し、屈折率変調(したがってレンズ屈折力変調)はついで固定される。
【0008】
第1のポリマーマトリックスは、光学素子として作用する共有結合的もしくは物理的に結合された構造であり、第1のポリマーマトリックス組成物(「FPMC」)から形成される。一般に、第1のポリマーマトリックス組成物は、重合の際に第1のポリマーマトリックスを形成する1つもしくはそれより多いモノマーを含む。第1のポリマーマトリックス組成物は、重合反応を変調し、または光学素子のいかなる性質をも改良する、いくつもの配合補助物を任意に含みうる。適切なFPMCモノマーの例はアクリル、メタクリレート、ホスファゼン、シロキサン、ビニル、ホモポリマーおよびそれらのコポリマーを含む。ここで用いられるように、「モノマー」は一緒に結合されて、そのくり返し単位を含むポリマーを形成することができるいかなる単位(ホモポリマーもしくはコポリマーでありうる)も意味する。もしFPMCモノマーがコポリマーであると、それは同一型のモノマー(たとえば2つの異なるシロキサン)からなっていてもよく、または異なる型のモノマー(たとえば、シロキサンおよびアクリル)からなっていてもよい。
【0009】
1つの態様において、第1のポリマーマトリックスを形成する1つもしくはそれより多いモノマーは屈折変調組成物の存在下で重合および架橋される。もう1つの態様において第1のポリマーマトリックスを形成する重合性出発物質は屈折変調組成物の存在下に架橋される。どちらのシナリオでも、RMC成分は第1のポリマーマトリックスの形成と相溶することができるものでなければならず、妨害するものであってはならない。同様に、第2のポリマーマトリックスの形成も、存在する第1のポリマーマトリックスと相溶することができるものであるべきである。別の言い方をすると第1のポリマーマトリックスおよび第2のポリマーマトリックスは相分離すべきではなく、光学素子による光透過は影響を受けないべきである。
【0010】
前述のとおり、屈折変調組成物は:(i)第1のポリマーマトリックスと相溶することができる;(ii)第1のポリマーマトリックスの形成後に刺激誘起重合ができるままである;そして(iii)第1のポリマーマトリックス中で自由に拡散することができる、限りは、単一成分であっても多成分であってもよい。好適な態様において、刺激誘起重合は光誘起重合である。
【0011】
本発明の光学素子はエレクトロニクスおよびデータ記憶産業において多数の用途を有する。本発明のもう1つの用途は医用レンズとして、特に眼内レンズとしてである。
【0012】
一般に2つの種類の眼内レンズ(「IOL」)がある。第1の型の眼内レンズは眼の自然の水晶体を置換する。このような手順のもっとも一般的な理由は白内障である。第2の型の眼内レンズは永続的な矯正レンズとして現存するレンズおよび機能を補充する。この型のレンズ(レンズ豆形(phakic)眼内レンズといわれることがある)は眼のいかなる屈折誤差をも矯正するために前もしくは後眼房(anterior or posterior chamber)に移植される。理論的には、正常視(すなわち、無限遠の光線から網膜に完全な焦点を結ぶ)に要求されるどの型の眼内レンズも正確に測定されうる。しかし、実際には、角膜測定における誤差、および/または種々のレンズ配置ならびに創傷治癒により、IOL移植を受けている全患者の約半数のみが手術後に追加の矯正の必要なしに最良の可能な視力を有するにすぎないと算定される。従来技術のIOLは外科手術後の屈折力調節が不可能であるのが通常であるので、残りの患者は外部的レンズ(たとえば、眼鏡もしくはコンタクトレンズ)のような他の型の視力矯正または角膜外科手術に頼らなければならない。これらの型の追加的矯正手段に対する必要性は、本発明の眼内レンズの使用で対処される。
【0013】
本発明の眼内レンズは第1のポリマーマトリックスおよびそこに分散された屈折変調組成物を含む。第1のポリマーマトリックスおよび屈折変調組成物は上述のとおり、得られるレンズが生体適合性を有することが要求される。
【0014】
適切な第1のポリマーマトリックスの例は:ポリアルキルアクリレートおよびポリヒドロキシアルキルアクリレートのようなポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(「PHEMA」)、およびポリヒドロキシプロピルメタクリレート(「HPMA」)のようなポリメタクリレート;ポリスチレンおよびポリビニルピロリドン(「PNVP」)のようなポリビニル:ポリジメチルシロキサンのようなポリシロキサン;ポリホスファゼン、およびそれらのコポリマー、を含む。米国特許第4,260,725号明細書ならびにそこに引用される特許および文献(引用によりここにすべて組入れられる)は、第1のポリマーマトリックスを形成するために用いられうる適切なポリマーのもっと具体的な例を提供する。
【0015】
好適な態様において、第1のポリマーマトリックスは、比較的低いガラス転移温度(「Tg」)を有するのが通常であるので、得られるIOLは流体様および/またはエラストマーの挙動を示しやすく、そして1つ以上の重合性出発物質を架橋することにより形成されるのが一般であり、そこでは各重合性出発物質は少なくとも1つの架橋性基を含有する。適切な架橋性基の例は、水素化物、アセトキシ、アルコキシ、アミノ、無水物、アリルオキシ、カルボキシ、エノキシ、エポキシ、ハロゲン化物、イソシアノ、オレフィン、およびオキシムを含有するがこれらに限定されない。もっと好適な態様において、各重合性出発物質は末端モノマー(末端キャップともいわれる)を含有し、それらは重合性出発物質を含む1つ以上のモノマーと同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つの架橋性基を含む。すなわち、末端モノマーは重合性出発物質で始まり、そして終わり、その構造部分として少なくとも1つの架橋性基を含有する。本発明の実施のためには必要ではないが、重合性出発物質を架橋するメカニズムは、屈折変調組成物を含む成分の刺激誘起重合についてのメカニズムと異なるのが好ましい。たとえば、もし屈折変調組成物が光誘起重合により重合されるならば、重合性出発物質は、光誘起重合以外のメカニズムにより重合される架橋性基を有するのが好適である。
【0016】
第1のポリマーマトリックス形成のために特に好適な種類の重合性出発物質は、アセトキシ、アミノ、アルコキシ、ハロゲン化物、ヒドロキシおよびメルカプトからなる群より選ばれる架橋性基を含有する末端モノマーで末端をキャップしたポリシロキサン(「シリコーン」としても知られる)である。シリコーンIOLは可とう性(flexible)で折りたためる(foldable)ので、比較的小さい切開がIOL移植処置の間に用いられうる。特に好適な重合性出発物質の例はビス(ジアセトキシメチルシリル)−ポリジメチルシロキサン(ジアセトキシメチルシリル末端モノマーで末端をキャップしたポリジメチルシロキサンである)である。
【0017】
IOLの製作に用いられる屈折変調組成物は、生体適合性の追加要件を除けば上述のとおりである。屈折変調組成物は刺激誘起重合ができ、(i)第1のポリマーマトリックスと相溶することができる;(ii)第1のポリマーマトリックスの形成後に刺激誘起重合ができるままである;そして(iii)第1のポリマーマトリックス中で自由に拡散することができる、限りは単一成分であっても多成分であってもよい。一般に、第1のポリマーマトリックスの形成のために使用される同一型のモノマーは屈折変調組成物の成分として使用されうる。しかしながら、RMCモノマーは第1のポリマーマトリックス中に拡散することができるという要件のために、RMCモノマーは第1のポリマーマトリックスを形成するモノマーよりも小さい(すなわち、比較的小さい分子量を有する)傾向にあるのが通常である。1つ以上のモノマーに加えて、屈折変調組成物は第2のポリマーマトリックスの形成を容易にする開始剤および増感剤のような、他の成分を含有することができる。
【0018】
好適な態様において、刺激誘起重合は光重合である。すなわち、屈折変調組成物を含む1つ以上のモノマーは、光重合できる少なくとも1つの基をそれぞれ含有するのが好ましい。このような光重合性基の例は、アクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチベニル、およびビニルを含むが、これらに限定されない。もっと好適な態様において、屈折変調組成物は光開始剤(フリーラジカルを発生するのに使用される化合物)を、単独もしくは増感剤の存在下で含む。適切な光開始剤の例はアセトフェノン(たとえば置換ハロアセトフェノン、およびジエトキシアセトフェノン);2,4−ジクロロメチル−1,3,5−トリアジン;ベンゾインメチルエーテル;およびo−ベンゾイルオキシミノケトンを含む。適切な増感剤の例はp−(ジアルキルアミノ)アリールアルデヒド;N−アルキルインドリリデン;およびビス[p−(ジアルキルアミノ)ベンジリデン]ケトンを含む。
【0019】
可とう性および折りたためるIOLに対する好みのために、特に好適な種類のRMCモノマーは光重合性基を含む端末シロキサン部分を端末に有するポリシロキサンである。このようなモノマーの実例の表示は、
X−Y−X
であり、
ここでYはいくつものシロキサン単位から形成されるモノマー、ホモポリマーもしくはコポリマーであってもよいシロキサンであり、そしてXおよびXは同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して光重合性基を含む端末シロキサン部分である。Yの実例は
【0020】
【化1】

【0021】
および
【0022】
【化2】

【0023】
を含み、
ここで:mおよびnは独立して各々整数であり、R,R,RおよびRは独立して各々水素、アルキル(1級、2級、3級、シクロ)、アリール、もしくはヘテロアリールである。好適な態様において、R,R,RおよびRはC〜C10アルキルもしくはフェニルである。比較的高いアリール含量を有するRMCモノマーは本発明レンズの屈折率の比較的大きい変化を生じることがわかったので、R,R,RおよびRの少なくとも1つはアリール、特にフェニルであるのが通常好適である。もっと好適な態様において、R,RおよびRは同一であり、メチル、エチルもしくはプロピルであり、そしてRはフェニルである。
【0024】
XおよびX(もしくはXおよびXはいかにRMCポリマーが示されるかに依存する)の実例は、それぞれ
【0025】
【化3】

【0026】
であり、
ここで:RおよびRは独立して各々、水素、アルキル、アリール、もしくはヘテロアリールであり;そしてZは光重合性基である。
【0027】
好適な態様において、RおよびRは独立して各々C〜C10アルキルもしくはフェニルであり、そしてZは光重合性基であり、アクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチベニルおよびビニルからなる群より選ばれる部分を含む。もっと好適な態様において、RおよびRはメチル、エチルもしくはプロピル、そしてZはアクリレートもしくはメタクリルレート部分を含む光重合性基である。
【0028】
特に好適な態様において、RMCモノマーは次の式
【0029】
【化4】

【0030】
であり、
ここでXおよびXは同一であり、そしてR,R,RおよびRは先に定義されたとおりである。RMCモノマーの実例は、末端をビニルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー;末端をメタクリロキシプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー;および末端をメタクリロキシプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサンを含む。
【0031】
いかなる適切な方法も使用されうるが、トリフル酸(triflic acid)の存在下での1つ以上の環状シロキサンの開環反応は本発明のRMCモノマーの1つの種類を製造する特に効率的な方法であることがわかった。簡単には、その方法は環状シロキサンを式
【0032】
【化5】

【0033】
の化合物とトリフル酸の存在下で接触させることを含み、ここでR,RおよびZは先に定義されたとおりである。環状シロキサンは環状のシロキサンモノマー、ホモポリマーもしくはコポリマーでありうる。あるいは、1つ以上の環状シロキサンが使用されうる。たとえば環状ジメチルシロキサンテトラマーおよび環状メチル−フェニルシロキサントリマーがトリフル酸の存在下でビス−メタクリロキシプロピルテトラメチルジシロキサンと接触され、特に好適なRMCモノマーである、末端をメタクリロキシプロピル−ジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマーを生成する。
【0034】
本発明のIOLは、分散された屈折変調組成物を含む1つ以上の成分を有する第1のポリマーマトリックスを生じる、いかなる適切な方法でも製作され得、そこでは屈折変調組成物は刺激誘起重合ができて、第2のポリマーマトリックスを形成する。一般に、本発明のIOLを製造する方法は本発明の光学素子を製造する方法と同一である。1つの態様において、その方法は、
第1のポリマーマトリックス組成物を屈折変調組成物と混合して反応混合物を形成すること;
その反応混合物を型に入れること;
第1のポリマーマトリックス組成物を重合して該光学素子を形成すること;ならびに
型から光学素子を取除くこと、
を含む。
【0035】
使用される型の種類は、製造される光学素子に依存する。たとえば、もし光学素子がプリズムであれば、プリズムの形状の型が使用される。同様に、もし光学素子が眼内レンズであれば、眼内レンズ型が使用される、等である。前述のとおり、第1のポリマーマトリックス組成物は第1のポリマーマトリックスを形成するために1つ以上のモノマーを含み、任意には、重合反応を調整し、もしくは光学素子の性質(光学的特性に関するかどうかを問わず)を改良する、いくつかの配合補助剤を含む。同様に、屈折変調組成物は第2のポリマーマトリックスを形成するために刺激誘起重合が一緒にできる1つ以上の成分を含む。可とう性で折りたためる眼内レンズは比較的小さな切開を可能にするのが通常であるので、第1のポリマーマトリックス組成物および屈折変調組成物は、本発明方法がIOLを製造するのに用いられるとき、ともに1つ以上のシリコーンにもとづく、もしくは低Tgアクリルモノマーを含むのが好ましい。
【0036】
本発明の眼内レンズの基本的な利点は、IOLの性質が眼内で移植後に調節されうることである。たとえば、不十分な角膜測定および/または変わりやすいレンズ配置ならびに創傷治癒による屈折力計算の誤差は外科手術後の外来患者の処置において調節されうる。
【0037】
IOL屈折率の変化に加えて、第2のポリマーマトリックスの刺激誘起形成は予測することができる態様でレンズ曲率を変更することによりIOL屈折力に影響を及ぼすことがわかった。その結果、眼の中に移植された後に、屈折力のようなIOL特性を調節するために双方のメカニズムが利用されうる。一般に、第1のポリマーマトリックスおよびそこに分散された屈折変調組成物を有する本発明IOLを実施する方法は:
(a)レンズの少なくとも1部分を刺激にさらし、それによりその刺激は屈折変調組成物の重合を誘起すること、
を含む。
【0038】
移植および創傷治癒後に、IOLの性質が調節される必要がなければ、さらされる部分は全レンズである。全レンズをさらすことは、移植レンズの現存する性質を固定する。
【0039】
しかし、屈折力のようなレンズ特性が調節される必要があれば、レンズの1部分のみ(全レンズよりやや少ない)がさらされる。1つの態様において本発明のIOLを実施する方法は、さらに:
(b)時間をおいて待つこと;ならびに
(c)レンズの1部分を刺激に再びさらすこと、
を含む。
【0040】
この手順は、さらされたレンズ部分内に屈折変調組成物のさらなる重合を誘起するのが通常である。段階(b)および(c)は、眼内レンズ(もしくは光学素子)が所望のレンズ特性に達するまで何度でもくり返されうる。この点で、方法は所望のレンズの性質を固定するために全レンズを刺激にさらす段階をさらに含みうる。
【0041】
レンズの性質が調節される必要がある、もう1つの態様において、本発明のIOLを実施する方法は:
(a)レンズの第1の部分を刺激にさらし、それによりその刺激は屈折変調組成物の重合を誘起すること;および
(b)レンズの第2の部分を刺激にさらすこと、
を含む。
【0042】
第1レンズ部分および第2レンズ部分はレンズの異なる領域を示すが、それらは重なっていてもよい。任意には、その方法は第1レンズ部および第2レンズ部分をさらす間に時間をあけることを含みうる。さらに、その方法は第1レンズ部分および/または第2レンズ部分を何度でも(さらす間に時間をあけてもあけなくても)再びさらすことをさらに含み得、またはレンズの追加部分(たとえば第3レンズ部分、第4レンズ部分等)をさらすこともさらに含み得る。いったん所望の性質に達すると、その方法は、所望のレンズ性質を固定するために全レンズを刺激にさらす段階をさらに含み得る。
【0043】
一般に、1つ以上のさらされた部分の位置は矯正される屈折誤差の種類に依存して変わる。たとえば1つの態様において、IOLのさらされた部分はレンズの中央領域である光学ゾーン(たとえば径が約4mmと約5mmの間)である。あるいは、1つ以上のさらされたレンズ部分はIOLの外側リムに沿っていてもよいし、特定のメリジアンに沿っていてもよい。好適な態様において、刺激は光である。もっと好適な態様において、光はレーザー源からである。
【0044】
要するに、本発明は、(i)第1のポリマーマトリックス、および(ii)そこに分散された、刺激誘起重合ができる屈折変調組成物、を含む新規な光学素子に関する。光学素子の少なくとも1部分が適切な刺激にさらされると、屈折変調組成物は第2のポリマーマトリックスを形成する。第2のポリマーマトリックスの量および位置は、その屈折率を変えることにより、および/またはその形状を変えることにより光学素子の屈折力のような性質を調節する。
【実施例】
【0045】
実施例1
(a)末端をジアセトキシメチルシランでキャップしたポリジメチルシロキサン(「PDMS」)(36000g/mol)、(b)末端をビニルジメチルシランでキャップしたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー(「DMDPS」)(15,500g/mol)、および(c)UV−光開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(「DMPA」)の、表1に示すような種々の量を含む物質が製造され、試験された。PDMSは第1のポリマーマトリックスを形成するモノマーであり、そしてDMDPSおよびDMPAは一緒に屈折変調組成物を構成する。
【0046】
【表1】

【0047】
簡単には、PMDS(Gelest DMS−D33;36000g/mol)、DMDPS(Gelest PDV−0325;3.0〜3.5mole%ジフェニル、15,500g/mol)、およびDMPA(Acros;DMDPSに対して1.5wt%)の適切な量が一緒にアルミニウムパン内で測定され、DMPAが溶解するまで、室温で手で混合され、気泡を除去するために2〜4分間5mtorrの圧力で脱気された。感光性プリズムは、プリズムの形状に接着透明テープで一緒に保持され、一端をシリコーンコークでシールされた、3つのガラススライドからつくられている型に得られたシリコーン組成物を注入することにより製作された。そのプリズムは〜5cmの長さであり、3つの辺の寸法はそれぞれ〜8mmである。プリズム中のPDMSは湿分硬化され、7日間室温で暗所で貯蔵され、得られた第1のポリマーマトリックスが非粘着性で、澄んだ透明であることを確実にした。
【0048】
光開始剤の量(1.5wt.%)は、光開始剤含量が変えられ、固定されたRMCモノマー含量25%であった従来の実験にもとづいた。最大の屈折率変調は、屈折率飽和が5wt.%で生じたのに、光開始剤1.5wt.%および2wt.%を含む組成物について観察された。
【0049】
実施例2
RMCモノマー合成
図式1に示されるように、商業的に入手することができる環状ジメチルシロキサンテトラマー(「D」)、環状メチルフェニルシロキサントリマー(「D′」が種々の割合でトリフル酸により開環され、そしてビス−メタクリロキシルプロピルテトラメチルジシロキサン(「MPS」)が1ポット合成で反応された。米国特許第4,260,725号明細書;Kunzler,J.F.のTrends in Polymer Science,4:52〜59(1996);KunzlerらのJ.Appl.Poly.Sci.,55:611〜619(1995);およびLaiらのJ.Poly.Sci.A.Poly.Chem.,33:1773〜1782(1995)。
【0050】
【化6】

【0051】
簡単には、適切な量のMPS、DおよびD′がガラスビン中で1.5〜2時間、撹拌された。適切量のトリフル酸が添加され、得られる混合物はもう20時間、室温で撹拌された。反応混合物はヘキサンで希釈され、炭酸水素ナトリウムの添加により(酸)中和され、そして無水硫酸ナトリウムの添加により乾燥された。ろ過およびヘキサンのロト蒸留の後にRMCモノマーは活性炭カラムによるさらなるろ過により精製された。RMCモノマーは5mtorrの圧力で、70〜80℃で12〜18時間乾燥された。
【0052】
フェニル、メチルおよび末端基の導入量が、内部標準テトラメチルシラン(「TMS」)なしで重水素化クロロホルム中で実施されたH−NMRスペクトルから計算された。合成されたいくつかのRMCモノマーの化学シフトの例は次のとおりである。5.58mole%フェニルを含む1000g/mole RMCモノマー(MPS 4.85g(12.5mmole);D′1.68g(4.1mmole);D5.98g(20.2mmole)およびトリフル酸108μl(1.21mmole)を反応させることにより製造される):δ=7.56〜7.57ppm(m,2H)芳香族、δ=7.32〜7.33ppm(m,3H)芳香族、δ=6.09ppm(d,2H)オレフィン、δ=5.53ppm(d,2H)オレフィン、δ=4.07〜4.10ppm(t,4H)−O−CCHCH−、δ=1.93ppm(s,6H)メタクリレートのメチル、δ=1.65〜1.71ppm(m,4H)−O−CHCH−、δ=0.54〜0.58ppm(m,4H)−O−CHCH−Si、δ=0.29〜0.30ppm(d,3H)C−Si−フェニル、δ=0.04〜0.08ppm(s,50H)主鎖の(CSi。
【0053】
5.26mole%のフェニルを含む2000g/mole RMCモノマー(MPS 2.32g(6.0mmole);D′1.94g(4.7mmole);D7.74g(26.1mmole);およびトリフル酸136μl(1.54mmole)を反応させることにより製造される):δ=7.54〜7.58ppm(m,4H)芳香族、δ=7.32〜7.34ppm(m,6H)芳香族、δ=6.09ppm(d,2H)オレフィン、δ=5.53ppm(d,2H)オレフィン、δ=4.08〜4.11ppm(t,4H)−O−CCHCH−、δ=1.94ppm(s,6H)メタクリレートのメチル、δ=1.67〜1.71ppm(m,4H)−O−CHCH−、δ=0.54〜0.59ppm(m,4H)−O−CHCH−Si、δ=0.29〜0.31ppm(m,6H)C−Si−フェニル、δ=0.04〜0.09ppm(s,112H)主鎖の(CSi。
【0054】
4.16mole%のフェニルを含む4000g/mole RMCモノマー(MPS 1.06g(2.74mmole);D′1.67g(4.1mmole);D9.28g(31.3mmole);およびトリフル酸157μl(1.77mmole)を反応させることにより製造される):δ=7.57〜7.60ppm(m,8H)芳香族、δ=7.32〜7.34ppm(m,12H)芳香族、δ=6.10ppm(d,2H)オレフィン、δ=5.54ppm(d,2H)オレフィン、δ=4.08〜4.12ppm(t,4H)−O−CCHCH−、δ=1.94ppm(s,6H)メタクリレートのメチル、δ=1.65〜1.74ppm(m,4H)−O−CHCH−、δ=0.55〜0.59ppm(m,4H)−O−CHCH−Si、δ=0.31ppm(m,11H)C−Si−フェニル、δ=0.07〜0.09ppm(s,272H)主鎖の(CSi。
【0055】
同様に、メチルフェニルシロキサン単位および末端のメチルアクリロキシプロピルジメチルシランのキャップなしで、ジメチルシロキサンポリマーを合成するために、MPSに対するDの比はD′を導入することなく変動された。
【0056】
分子量は、H−NMRおよびゲル浸透クロマトグラフィ(「GPC」)により計算された。絶対的な分子量は、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)標準を用いて普遍的な検量法で得られた。表2はトリフル酸開環重合により合成された、他のRMCモノマーの特徴を示す。
【0057】
【表2】

【0058】
10〜40wt%で、3〜6.2mole%のフェニル含量を有する分子量1000〜4000g/molのこれらのRMCモノマーは、シリコーンマトリックス中に導入されたとき、十分に混和しやすく、生体適合性であり、そして光学的に透明なプリズムおよびレンズを形成する。高いフェニル含量(4〜6mole%)および低い分子量(1000〜4000g/mol)を有するRMCモノマーは、表1で用いられるRMCモノマー(末端をビニルジメチルシランでキャップしたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー(「DMDPS」)(3〜3.5mole%ジフェニル含量、15500g/mol)と比較して、2.5倍の屈折率変化の増加、および3.5〜5.0倍の拡散速度の増加をもたらした。これらのRMCモノマーは:(a)末端をジアセトキシメチルシランでキャップしたポリジメチルシロキサン(「PDMS」)(36000g/mol)、(b)末端をメタクリロキシルプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、および(c)2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(「DMPA」)、を含む光学素子を製造するのに用いられた。成分(a)は第1のポリマーマトリックスを形成するモノマーであり、そして成分(b)および(c)は屈折変調組成物を構成することを注目されたい。
【0059】
実施例3
眼内レンズ(「IOL」)の製作
眼内の型がよく承認された標準にしたがって設計された。たとえば米国特許第5,762,836;5,141,678;および5,213,825号明細書を参照されたい。簡単には、型は曲率半径−6.46mmおよび/または−12.92mmをそれぞれ有する2つの平凹(plano−concave)表面を造られる。得られるレンズは径6.35mmであり、使用される凹レンズ表面の組み合わせに依存して0.64mm、0.98mmもしくは1.32mmの範囲にわたる厚みを有する。3つの可能な組み合わせの2つの異なる曲率半径を用いて、そしてIOL組成物についての称呼屈折率1.404を推測して、10.51D(空気中で62.09D)、15.75D(空気中で92.44D)、および20.95D(空気中で121.46D)の照射前(pre−irradiation)屈折力を有するレンズが製作された。
【0060】
実施例4
浸出(leaching)に対する組成物の安定性
3つのIOLが、60wt%のPDMSマトリックス中に配合された、30および10wt%のRMCモノマーBおよびDで製作された。PDMSを湿分硬化して第1のポリマーマトリックスを形成した後に、水性溶液中の遊離RMCモノマーの存在が次のように分析された。3つのレンズのうちの2つが340nmの光を用いて2分間、3回照射されたが、3つ目のものは全く照射されなかった。ついで照射されたレンズの1つは全レンズマトリックスを照射することにより固定された。すべての3つのレンズは1.0MのNaCl溶液中で3日間、機械的に振って撹拌された。ついでNaCl溶液はヘキサンにより抽出され、H−NMRで分析された。RMCモノマーによるピークはNMRスペクトルで何ら観察されなかった。これらの結果は、RMCモノマーが3つのすべての場合において水性相にマトリックスから浸出しなかったことを示す。末端をシリコーンRMCモノマーでキャップしたビニルに関する以前の研究は、1年以上も1.0MのNaCl溶液中に貯蔵された後でさえ同様の結果を示した。
【0061】
実施例5
ウサギの眼における毒物学的検討
本発明の消毒された、未照射および照射シリコーンIOL(実施例3で述べるように製作された)ならびに消毒された、商業的に利用することができるシリコーンIOLが、白皮(albino)イエウサギの眼に移植された。1週間その眼を臨床的に追跡した後に、ウサギは犠牲にされた。眼は摘出され、ホルマリン中に置かれ、組織病理学的に検討された。角膜の毒性、後眼域の炎症、もしくはレンズ毒性の他の兆候は何もみられない。
【0062】
実施例6
シリコーンプリズムの照射
プリズムの屈折率変化(n)および%正味屈折率変化(%n)の測定が容易なために、本発明配合物は照射および特徴づけのためにプリズムに成型された。プリズムは、(a)高MnのPDMS 90〜60wt%、(b)表2のRMCモノマー10〜40wt%、および光開始剤DMPA 0.75wt%(RMCモノマーに対して)を混合し、長さ5cmおよび各辺が8.0mmのプリズムの形状のガラス型に注入することにより製作された。プリズムにおけるシリコーン組成物は湿分硬化され、7日間、室温で暗所に貯蔵され、最終的なマトリックスが非粘着性で、澄んだ透明であることを確実にされた。
【0063】
各プリズムの長い辺の2つが黒い背景でおおわれたが、3つ目は四角形の窓(2.5mm×10mm)を有するアルミニウム板でつくられたフォトマスクでおおわれた。各プリズムは1000Wキセノン−水銀アーク灯からの1.2mW/cmの平行340nm光線(光開始剤の最大吸収)に、種々の時間でさらされた。ANSIガイドラインは、340nm光線を用いて10〜30000秒間、網膜をさらす最大許容露光(「MPE」)(maximum permissible exposure)は1000mJ/cmであることを示す。眼と皮膚の露光基準。American National Standard Z136.1:31〜42(1993)。1.2mW/cmの340nm光線を2分間の単一照射する強度は144mJ/cmに相当し、十分にANSIガイドラインの範囲内である。実際、3回の照射(432mJ/cm)に対する全強度さえも十分にANSIガイドラインの範囲内である。図2はプリズム照射手順を例示する。
【0064】
プリズムは(i)連続的な照射−既知の時間、1度の露光、ならびに(ii)「断音的」(“staccato”)照射−3回の短い露光で、その間に長い間隔をあける、の両方に供された。連続的照射の間に、屈折率の対照は架橋密度およびフェニル基mole%に依存するが、中断された照射においては、RMCモノマー拡散およびさらなる架橋も重要な役割を演じる。断音的照射の間、RMCモノマー重合は、各露光の間の伝播速度、ならびに露光と露光の間のRMCモノマーのない相互拡散の程度に依存する。シリコーンマトリックスにおけるオリゴマー(本発明の実施に用いられる1000g/mole RMCモノマーに類似する)の拡散係数の典型的な値は10−6〜10−7cm/sのオーダーである。すなわち、本発明のRMCモノマーは1mm(照射バンドのおおよそ半値幅)拡散するのに大体2.8〜28時間を要する。IOLにおける典型的な光学ゾーンの距離は約4〜約5mmにわたる。しかし、光学ゾーンの距離もこの範囲外でありうる。適切な露光後にプリズムは中圧水銀アーク炉を用いて6分間フォトマスクなしに(したがって全マトリックスを露光する)射照された。これは残りのシリコーンRMCモノマーを重合させ、したがってプリズムの屈折率をその場で「固定した」。特に、偏在した露光と「固定する」露光の組合された全露光は、なおANSIガイドラインの範囲内にある。
【0065】
実施例7
プリズム照射応答曲線
表2に示されるRMCモノマーから製作された本発明プリズムはマスクされ、1000Wキセノン−水銀アーク炉からの1.2mW/cmの340nm光線を用いて0.5,1,2,5および10分間、最初に露光された。プリズムの露光領域は印をつけられ、マスクが取りはずされ、そして屈折率変化が測定された。プリズムの屈折率変調はプリズムを通過するレーザー光の広がりの偏向(deflection)を観察することにより測定された。露光および非露光領域を通過する光線の偏向の差異が、屈折率変化(n)および屈折率の%変化(%n)を定量するために使用された。
【0066】
3時間後に、プリズムは以前に露光された領域と重複する窓で再びマスクされ、0.5,1,2および5分間、2回目照射をされた(したがって合計時間はそれぞれ1,2,4および10分間になる)。マスクが取りはずされ、屈折率変化が測定された。もう3時間後に、プリズムは0.5,1および2分間、3回目の露光をされ(したがって、合計時間1.5,3および6分間になる)、そして屈折率変化が測定された。予測されるように、%nは各露光後に各プリズムに対する露光時間とともに増加し、原形の照射量応答曲線が得られた。これらの結果にもとづいて、適切なRMCモノマー拡散は1000g/mole RMCモノマーについて約3時間で生じるようにみえる。
【0067】
RMCモノマーAを除くすべてのRMCモノマー(B〜F)は、それぞれの露光の前後に光学的に澄んだ、透明プリズムを生じさせた。たとえば、60wt% FPMCへの40wt%配合でRMCモノマーB,CおよびDについての最大%nはそれぞれ0.52%、0.63%および0.30%であり、それらは合計露光6分間に相当した(2分間の3回露光。RMCモノマーBについては3時間の間隔で、RMCモノマーCおよびDについては3日間の間隔にそれぞれ分離された。)。しかし、屈折率の最大変化(0.95%)を生じるけれども、RMCモノマーAから製作されたプリズム(60wt% FPMCに40wt%配合、そして合計露光6分間−2分間を、3時間の間隔で3回露光)は多少くもりを呈した。したがって、もしRMCモノマーAがIOLを製作するのに用いられると、RMCは40%より少ないRMCモノマーAを含有しなければならず、または%nは材料の光学的透明さが傷つけられる点より低くなるにちがいない。
【0068】
プリズムにおいて、RMCのAとCについて連続および断音的照射の間で比較することは、比較的低い%n値は、断音的照射を用いて観察されるのと比較して、連続照射に露光されたプリズムで生じることを示す。これらの結果に示されるように、露光間の間隔は(未露光から露光領域へのRMC拡散量に関連する)、本発明のポリマー組成物から得られる材料の屈折率を正確に変調するのに活用されうる。先に照射されたプリズム全体を中圧水銀灯に露光させることは、残りの自由なRMCを重合させ、屈折率対照を有効に固定した。光固定の前後の屈折率変化の測定は屈折率における、さらなる変調を示さなかった。
【0069】
実施例8
IOLの光学的特徴づけ
Talbotの干渉法(interferometry)およびRonchiテストが、照射前後のレンズに存在する一次光学収差(一次球面、コマ、乱視、視野曲率(field curvature)およびゆがみ)を、定性的および定量的に測定するため、ならびに光重合の際の屈折力変化を定量化するために使用された。
Tablotの干渉法において、試験用IOLは、IOLの焦点の外側に置かれ、第1の格子(grating)に関して既知の角度で回転される第2の格子を有する、2つのRonchiルーリング(ruling)の間に置かれる。第1のRonchiルーリング(P=300線/インチ)のオートイメージ(autoimage)を第2格子(P=150線/インチ)に重ねると、ある角度で傾斜した波紋のある縞(fringe)を生じる。1.第2の波紋のある縞パターンは試験用レンズから既知の距離をおいて光軸に沿って第2のRonchiルーリングの軸方向置換により構成される。第2の格子の置換は第1のRonchiルーリングのオートイメージの拡大を増大させ、観察された波紋のある縞パターンを新しい角度に回転させる。2.波紋のあるピッチ角度の知識はレンズの焦点長さの測定を式:
【0070】
【数1】

【0071】
により可能にする。
【0072】
この仕事へのTalbotの干渉法の適用法を示すために、空気中で測定された本発明の照射前のIOL(PDMS 60wt%、RMCモノマーB 30wt%、RMCモノマーD 10wt%、および2つのRMCモノマーに対してDMPA 0.75%)の1つの波紋のある縞パターンが図3に示される。各々の波紋のある縞は波紋のあるパターンの処理のために特に設計された最小の正方形と合ったアルゴリズムと適合した。2つのRonchiルーリングの間の角度は12°に設定され、第2のRonchiルーリング間の、第1および第2の波紋のある縞パターン間の置換は4.92mmであり、器具の光軸および90°での2つのRonchiルーリングとの交差で規定される直交配位に関して測定された、波紋のある縞のピッチ角度は、α=−33.2±0.30およびα=−52.7±0.40であった。これらの値を上記式に代入すると、焦点距離10.71±0.50mm(屈折力=93.77±4.6D)が得られる。
【0073】
本発明のIOL(製作から、もしくはRMC成分の刺激誘起重合から)の光学収差は「Ronchiテスト」を用いてモニターされ、それはTalbotの干渉計から第2のRonchiルーリングを除去すること、ならびに試験用IOLの通過後に第1のRonchiルーリングの拡大オートイメージを観察することを含む。試験用レンズの収差は、画像面でみられるときに、縞系の形状ひずみ(Ronchiルーリングで生じる)により明らかになる。ひずんだイメージの知識はレンズの収差を明らかにする。一般に、本発明の製作レンズは(照射処理の前後とも)、干渉縞の明確な、平行で、周期的間隔を示し、これは大部分の一次光学収差の不存在、高い光学的表面品質、バルクにおけるnの均一性、ならびに一定したレンズ屈折力を示す。図4はPDMS 60wt%、RMCモノマーB 30wt%、RMCモノマーD 10wt%、および2つのRMCモノマーに対して0.75%のDMPA、から製作された本発明の照射前IOLのロンキーグラム(Ronchigram)の例である。
【0074】
さらに単一のRonchiルーリングの使用も屈折された波面の収斂(convergence)の程度(すなわち屈折力)を測定するのに使用されうる。この測定において、試験用IOLは第1のRonchiルーリングに接触して置かれ、平行光線がRonchiルーリングおよびレンズに入射され、そして拡大されたオートイメージが観察スクリーン上に投影される。オートイメージの拡大は、投影された縞パターンの空間頻度を測定することにより、屈折波面の曲率を測定することを可能にする。これらの説明は次式:
【0075】
【数2】

【0076】
により定量化される。
【0077】
ここでPはジオプトリ(diopter)で表わされるレンズの屈折力であり、Lはレンズから観察面までの距離、dは第1のRonchiルーリングの拡大された縞の間隔(fringe spacing)であり、そしてdはもとの格子間隔である。
【0078】
実施例9
本発明IOLの光重合からの屈折力変化
本発明のIOLは、実施例3に記載されるように製作され、PDMS 60wt%(n=1.404)、RMCモノマーB(n=1.4319)、30wt%、RMCモノマーD(n=1.4243)、ならびに2つのRMCモノマーの合計wt%に対して光開始剤DMPA 0.75wt%を含む。IOLは径1mmのフォトマスクを取付けられ、1000Wキセノン−水銀アーク灯からの340nm平行光線に、1.2mW/cmで2分間、露光された。ついで照射されたレンズは暗所に3時間置かれ、重合およびRMCモノマー拡散がなされた。IOLは前述の光線条件を用いて6分間、全体を連続的に露光することにより光で固定された。波紋のあるピッチ角度の測定につづいて、式1への代入は、未照射および照射ゾーンについて、それぞれ95.1±2.9D(f=10.52±0.32mm)および104.1±3.6D(f=9.61mm±0.32mm)の屈折力に帰した。
【0079】
屈折力増加の倍率は、0.6%の屈折率増加が日常的に得られたプリズム実験から予測されたよりも大きかった。もし屈折率の同様の増加がIOLで達成されると、屈折率の予測される変化は、1.4144〜1.4229である。レンズ屈折力(空気中)の計算における新たな屈折率(1.4229)を用い、そしてレンズの寸法は光重合の際に変化しないと仮定すると、レンズ屈折力96.71D(f=10.34mm)が計算された。この値は観察された屈折力104.1±3.6Dよりも小さいので、屈折力の追加された増加はもう1つのメカニズムからであるにちがいない。
【0080】
光重合されたIOLのさらなる検討は、最初の照射露光の後につづくRMCモノマー拡散はレンズの曲率半径の増加を導くことを示した。たとえば図5を参照されたい。未照射ゾーンから照射ゾーンへのRMCモノマーの移行はレンズの前および後表面の一方もしくは両方を膨潤させ、レンズの曲率半径を変化させる。両表面の曲率半径の7%減少が、レンズ屈折力の観察された増加を説明するのに十分であることが決定された。
【0081】
曲率半径の付随する変化がさらに検討された。上述と同一のIOLが製作された。IOLのRonchiインターフェログラムが図6a(左のインターフェログラム)に示される。Talbotの干渉計を用いて、レンズの焦点距離が、10.52±0.30mm(95.1D±2.8D)と実験的に測定された。ついでIOLは1mmのフォトマスクを取付けられ、1000Wキセノン−水銀アーク灯からの340nm平行光線に1.2mW/cmで2.5分間連続して照射された。前述のIOLと異なり、このレンズは照射後に3時間、固定されなかった。図6B(右のインターフェログラム)は照射後6日でとられたレンズのRonchiインターフェログラムである。2つの干渉パターンの間の最も明らかな特徴は、縞間隔の劇的な増大であり、これはレンズの屈折力の増加を示す。
【0082】
縞間隔の測定は、空気中で約+38ジオプトリの増加を示す(f≒7.5mm)。これは眼における約+8.6ジオプトリのオーダーの変化に相当する。白内障外科手術からの大部分の手術後の矯正は2ジオプトリ以内であるので、この実験は本発明のIOLの使用はかなり大きい治療の窓を可能にすることを示す。
【0083】
実施例10
フェニルを含有しないIOLの光重合検討
フェニルを含有しないRMCモノマーを含む本発明IOLが第2のポリマーマトリックスの形成からの膨潤をさらに検討するために製作された。このようなIOLの例は、PDMS 60wt%、RMCモノマーE 30wt%、RMCモノマーF 10wt%、および2つのRMCモノマーに対して0.75wt%のDMPAから製作された。得られるIOLの照射前の焦点距離は10.76mm(92.94±2.21D)であった。この実験において、光源はHe:Cdレーザーからの325nmレーザー線であった。径1mmのフォトマスクがレンズをおおって置かれ、325nmの0.75mW/cmの平行光線に2分間さらされた。ついでレンズは3時間、暗所に置かれた。実験的測定は、IOLの焦点距離が10.76mm±0.25mm(92.94D±2.21D)から8.07mm±0.74mm(123.92D±10.59D)に変化したこと、または空気中で+30.98D±10.82Dのジオプトリ変化、を示した。これらの変化を誘起させるのに必要な照射量はわずか0.09J/cmであり、ANSIの最大許容露光(「MPE」)水準1.0J/cmよりも十分に低い値である。
【0084】
実施例11
大気光線から可能なIOL変化のモニタリング
本発明IOLの光学的屈折力および品質が、取扱いおよび大気光条件はレンズの屈折力の望ましくない変化を生じないことを示すためにモニターされた。開放径1mmのフォトマスクが本発明のIOL(PDMS 60wt%、RMCモノマーE 30wt%、RMCモノマーF 10wt%、および2つのRMCモノマーに対して0.75wt%のDMPAを含む)の中央領域にわたって置かれ、96時間、連続した室内光にさらされ、そしてRonchiパターンの空間頻度ならびに波紋のある縞角度が24時間毎にモニターされた。波紋のある縞の方法を用いて、レンズ型から除去された直後に空気中で測定された、レンズの焦点距離は10.87±0.23mm(92.00D±1.98D)であり、大気室内光にさらされた96時間後には10.74mm±0.25mm(93.11D±2.22D)である。このように、測定の実験的不確実性内で、大気光線は屈折力の望ましくない変化を誘起しないことが示される。得られるRonchiパターンの比較は、空間的頻度もしくは干渉パターンの性質は何ら変化を示さず、室内光にさらすことは本発明IOLの屈折力もしくは品質に影響しないことを確認した。
【0085】
実施例12
照射されたIOLの処理における固定の効果
屈折力が照射により変調された本発明IOLが、固定処理がレンズ屈折力のさらなる変調を生じるかどうかをみるために試験された。PDMS 60wt%、RMCモノマーE 30wt%、RMCモノマーF 10wt%、および2つのRMCモノマーに対して0.75%のDMPAから製作されたIOLがHe:Cdレーザーからの325nmレーザー光線0.75mW/cmで2時間照射され、そして中圧水銀アーク灯に8分間さらされた。処理において、固定の前後のTalbotイメージの比較は、レンズ屈折力は変化しないままであることを示した。干渉縞の明確なコントラストは、本発明のレンズの光学的性質も影響されないままであることを示した。
【0086】
固定処理が十分であったか否かを測定するために、IOLは径1mmのフォトマスクを取付けられ、325レーザー線0.75mW/cmに2分間、2回目の露光をされた。前述と同様に、縞空間もしくはレンズの光学的性質における観察されうる変化は何らみられなかった。
【0087】
実施例13
固定から可能なIOL変化のモニタリング
移植されたIOLは手術後の屈折力調節を必要としないという状況が生じうる。このような場合に、IOLは、その特性が変化されないように固定されなければならない。固定処理が以前に未照射のIOLの屈折力の望ましくない変化を誘起するか否かを測定するために、本発明のIOL(PDMS 60wt%、RMCモノマーE 30wt%、RMCモノマーF 10wt%、および2つのRMCモノマーに対して0.75wt%のDMPAを含む)が全領域にわたって3回の2分間照射に供され、He:Cdレーザーからの325レーザー線0.75mW/cmを用いて3時間の間隔に分けて行なわれた。ロンキーグラムおよび波紋のある縞パターンが各々のつづきの照射の前後にとられた。レンズ型から除去した直後および3回目の2分間照射の後に空気中でとられた、本発明IOLの波紋のある縞パターンは、焦点距離がそれぞれ10.50mm±0.39mm(95.24D±3.69D)および10.12mm±0.39mm(93.28D±3.53D)であることを示す。これらの測定は、以前に未照射であるレンズを光固定することは屈折力の望ましくない変化を誘起しないことを示す。加えて、縞間隔もしくはRonchi縞の性質の識別することができる変化は何ら検出されず、屈折力は固定により変化しなかったことを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマーマトリックス、およびそこに分散された屈折変調組成物を含み、該屈折変調組成物は刺激誘起重合ができる、光学素子。
【請求項2】
該屈折変調組成物が光誘起重合できる、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
該光学素子がプリズムである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
該光学素子がレンズである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
該第1のポリマーマトリックス、およびそこに分散された屈折変調組成物を含み、その屈折変調組成物が光誘起重合できる、レンズ。
【請求項6】
該第1のポリマーマトリックスが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル、ポリシロキサン、およびホスファゼンからなる群から選ばれる、請求項5に記載のレンズ。
【請求項7】
該屈折変調組成物が、アクリレート、メタクリレート、ビニル、シロキサンおよびホスファジンから成る群から選択された組成物を含む、請求項5に記載のレンズ。
【請求項8】
該屈折変調組成物が、式
X−Y−X
のモノマー、
および光開始剤を含み
式中、Yは
【化1】

Xは
【化2】

そしてX
【化3】

であり、ここで:
mおよびnはそれぞれ独立した整数であり、そしてR,R,R,R,RおよびRは、水素、アルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選ばれ;そしてZは光重合することができる基である、請求項5に記載のレンズ。
【請求項9】
該第1のポリマーマトリックスがポリシロキサンを含む、請求項6に記載のレンズ。
【請求項10】
該第1のポリマーマトリックスがポリアクリレートを含む、請求項6に記載のレンズ。
【請求項11】
,R,R,R,RおよびRが、それぞれ独立してC〜C10アルキルもしくはフェニルであり、Zがアクリレート、アリルオキシ、シンナモイル、メタクリレート、スチベニルおよびビニルからなる群から選ばれる部分を含む、請求項8に記載のレンズ。
【請求項12】
,R,R,RおよびRが、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選ばれ、そしてRがフェニルである、請求項11に記載のレンズ。
【請求項13】
該モノマーが(i)末端をビニルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー、(ii)末端をメタクリロキシプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー、または(iii)末端をメタクリロキシプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサンであり、そして該光開始剤が2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンである、請求項11に記載のレンズ。
【請求項14】
ポリシロキサンマトリックスおよびそこに分散された屈折変調組成物を含み、その屈折変調組成物が光誘起重合できる、眼内レンズ。
【請求項15】
該ポリシロキサンマトリックスが、末端をジアセトキシメチルシランでキャップしたポリジメチルシロキサンである、請求項14に記載の眼内レンズ。
【請求項16】
該屈折変調組成物が、末端をビニルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン・コポリマー;末端をメタクリロキシプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン・コポリマー;または末端をメタクリロキシプロピルジメチルシラン基でキャップしたジメチルシロキサン;および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを含む、請求項14に記載の眼内レンズ。
【請求項17】
屈折変調組成物が分散されている光学素子を供給する方法であり:
(a)光学素子の少なくとも1部を刺激にさらし、それにより該刺激が該屈折変調組成物の重合を誘起することを含む、方法。
【請求項18】
該光学素子がプリズムまたはレンズである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該さらされた部分が該全光学素子に相当する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
(b)時間をおいて待つこと;および
(c)該光学素子の1部分を刺激に再びさらして、該部分内で該屈折変調組成物のさらなる重合を誘起することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
段階(b)および(c)を繰り返すことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該全光学素子を該刺激にさらすことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
屈折変調組成物が眼内レンズ中に分散され、そして眼の中に移植されている眼内レンズの供給方法であり:
(a)該レンズの少なくとも1部分を光源にさらし、それにより光源は屈折変調組成物の重合を誘起することを含む、方法。
【請求項24】
該さらされた部分が該全眼内レンズに相当する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(b)時間をおいて待つこと;および
(c)該レンズの1部分を該光源に再びさらして、該部分内に屈折変調組成物のさらなる重合を誘起すること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
段階(b)および(c)を繰り返すことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
該全レンズを該光源にさらすことをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
該さらされた部分が該レンズの光学ゾーンである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
該さらされた部分が該レンズの外側のへりである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
該さらされた部分が該レンズのメリジアンに沿っている請求項23に記載の方法。
【請求項31】
屈折変調組成物が眼内レンズ中に分散され、そして眼の中に移植されている眼内レンズの供給方法であり:
(a)該レンズの第1の部分を光源にさらし、それにより該光源が屈折変調組成物の重合を誘起すること、そして
(b)レンズの第2の部分を光源にさらすこと、
を含む、方法。
【請求項32】
該レンズの第3の部分を光源にさらすことをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
該全レンズを該光源にさらすことをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
第1のポリマーマトリックス組成物を屈折変調組成物と混合して反応混合物を生成すること;
反応混合物を型に入れること;
第1のポリマーマトリックス組成物を重合させて、第1のポリマーマトリックスを生成させ、そこに屈折変調組成物を分散させること;および
型から光学素子を取り除くこと、
を含む、光学素子の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−34091(P2011−34091A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−209882(P2010−209882)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【分割の表示】特願2000−593264(P2000−593264)の分割
【原出願日】平成11年10月13日(1999.10.13)
【出願人】(399129696)カリフォルニア・インスティテュート・オブ・テクノロジー (11)
【氏名又は名称原語表記】CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】