説明

製剤、当該製剤を用いたワクチンの投与方法及びイオントフォレーシス装置

【課題】製剤、当該製剤を用いたワクチンの投与方法及びイオントフォレーシス装置に関し、非侵襲的に皮膚から投与し、免疫を獲得するための方法、及び装置を提供する。
【解決手段】製剤は、支持体24と、前記支持体上に形成され皮膚との直接の接触を避けるために絶縁体23で一部が保護された電極21と、前記電極上に形成されワクチンを含有するワクチン含有層22とを有する。ワクチンの投与方法は、該製剤を電極として用いて、イオントフォレーシスによりワクチンを投与する。イオントフォレーシス装置は、該製剤を電極として用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤、当該製剤を用いたワクチンの投与方法及びイオントフォレーシス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオントフォレーシスは、生体に有用なイオン性の薬剤などの成分を、所謂電気泳動を利用して生体に浸透させる方法であり、イオン浸透療法、イオン導入方法などとも呼ばれ、主に全身性の薬物の投与に用いられている。
【0003】
イオントフォレーシス装置は一般に薬効成分(生理活性物質)がプラス又はマイナスのイオン(薬剤イオン)に解離する薬剤液を保持する作用極構造体と、作用極構造体の対極の役割を有する非作用構造体を備えており、これら両構造体を生体(ヒト又は哺乳動物)の皮膚に当接させた状態で、作用極構造体に薬剤イオンと同一極性の電圧を電源装置より印加することによって薬剤イオンが生体内へ投与される(非特許文献1)。まれに両方の極に生理活性物質を含ませ、両極とも作用構造体とすることもある。イオントフォレーシスは一般には単位面積あたり1mA以下の低い電流を流し、痛みを伴うほどのではないが、皮膚に赤みを帯びるなどの電気による皮膚反応を生じることがある。
【0004】
一方、ワクチンは感染症の予防に用いられているものが主であるが、ヒトなどの動物に接種して感染症の予防に用いる医薬品で、一般に毒性を無くしたか、あるいは弱めた病原体から作られ、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、以後感染症にかかりにくくするためのものである。ワクチンとしては、大別すると生ワクチンと不活化ワクチンとが存在する。生ワクチンは毒性を弱めた微生物やウイルスを使用し、液性免疫のみならず細胞免疫も獲得できるため、一般に不活化ワクチンに比べて獲得免疫力が強く免疫持続期間も長い。これらの例としてはBCG、経口生ポリオワクチン、痘苗、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、麻疹・風疹混合ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、黄熱ワクチン、ロタウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、麻疹・風疹・おたふく混合ワクチン、MMRV( 麻疹・風疹・おたふく・水痘)などがある。
【0005】
一方、不活化ワクチンは死ワクチンとも呼ばれる。狭義の不活化ワクチンは化学処理などにより死んだウイルス、細菌、リケッチアを使用する。これらと同様の効果を示すことから、抗原部分のみを培養したものを含めて不活化ワクチンと称されることもある。不活性ワクチンは、生ワクチンより副反応が少ないが、液性免疫しか獲得できずその分免疫の続く期間が短いことがあり、このため複数回接種が必要なものが多い。これらの例としてはインフルエンザウイルスワクチン、狂犬病ワクチン、コレラワクチン、三種混合(DPT)ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチン)、二種混合(DT)ワクチン(ジフテリア・破傷風混合ワクチン)、日本脳炎ワクチン、百日咳ワクチン、23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン、A型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、多価蛋白結合肺炎球菌ワクチン、炭疽菌ワクチン、不活化ポリオワクチン、髄膜炎菌ワクチン、腸チフスワクチン、ダニ媒介脳炎ワクチン、インフルエンザ桿菌b型ワクチン、A型肝炎ワクチン、ジフテリア・破傷風混合ワクチン、新型・不活化経口コレラワクチン、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどが使用されている。
【0006】
また、肺炎球菌ワクチンなどのように蛋白ではない抗原を用いるワクチンや免疫活性の弱い抗原では、抗原(ハプテン)部分だけでは免疫を惹起できないことがあるため、別の蛋白と抗原を結合させるなどの工夫がされている。
【0007】
最近では、経口ワクチンや経皮ワクチン、経膣ワクチン、経直腸ワクチン、経鼻ワクチン、経肺ワクチンなど、注射とは異なる新たな投与経路を用いたワクチンの開発に伴い、ワクチンはウイルスやバクテリアなどの外来病原因子に対する予防用というこれまでの概念からその応用範囲を広げ、多発性硬化症や重症筋無力症などの自己免疫疾患、癌、痴呆症、高血圧、高脂血症などのすでに罹患した疾患の慢性化予防や非感染性の疾患に対する治療用として開発されるようになってきている。
【0008】
ワクチンの接種方法としては、ポリオのような経口投与のものが存在する。また、数本の針を有するスタンプ式の投与方法で、比較的痛みの少ない接種方法として、BCGが知られている。
【0009】
また、イオントフォレーシスを用いたワクチンの接種方法として、イオントフォレーシスの一方の極にワクチン、もう一方の極に免疫活性を高めるためにアジュバンドを含有させた例が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−334292号公報
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス、76巻、341ページ、1987年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ワクチンの接種方法としては、上記ポリオによる経口投与方法以外は、ほとんどが侵襲的な注射による投与が一般的である。このようにポリオ以外はほとんどが侵襲的な投与方法で、感染などの危険性を伴う他、医療機関での投与が必須となるため、数回の投与を必要とするワクチンの投与としては簡便なものではなかった。また、発展途上国では注射によるワクチン投与は、消毒不十分な注射器注射針の再利用による感染が問題となっている。一方で、ワクチン開発が盛んな米国をはじめとした先進国においては、注射投与に技術を要するためバイオテロリズムや毒性の強いインフルエンザ、黄熱病などの致死性感染症の流行の際にワクチンの大規模投与を迅速に実施できないことが問題とされている。さらに、先進国、発展途上国共通の問題として医療従事者の針刺し事故による感染の問題があり、注射投与よりも簡便なワクチン投与方法の確立が望まれている。そこで、注射投与に代わる新たなワクチン投与方法として皮膚免疫を利用した非侵襲的で効果的なワクチン投与方法について研究がされてきた。
【0011】
しかしながら、皮膚は生体の最外殻をなし、バリアー性を有する角質層に覆われているためワクチンを貼付したのみでは、角質層を透過しにくく免疫応答を誘導しにくいのが現状である。またストリプトスキンと呼ばれる角質層を取り除いた皮膚にワクチンを投与しても免疫応答を誘導しにくいという問題点も有する。
【0012】
さらに、上記特許文献1には、イオントフォレーシスを用いて、ワクチンを投与する技術が開示されているが、抗原のみでは効果的な免疫応答を誘導できないことから、当該アジュバンドの使用を前提とするものであった。しかし、アジュバンドを使用した場合、アジュバンド由来の副作用の恐れもあることから、可能であれば、アジュバンドを使用することなしに、ワクチン投与することが望ましい。しかるに、これまでアジュバンドの使用なしに効果的な免疫応答を誘導できるイオントフォレーシスを用いたワクチン投与技術は存在しない。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、皮膚から非侵襲的にワクチンを投与し、アジュバンドを用いることなく皮膚免疫を利用し、生体内で免疫応答を誘導することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ワクチン投与の非侵襲的投与について検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0015】
すなわち、本発明の製剤は、支持体と、前記支持体上に形成され、皮膚との直接の接触を避けるために絶縁体で一部が保護された電極と、前記電極上に形成され、ワクチンを含有するワクチン含有層と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記ワクチンが、感染性又は非感染性の疾患を予防するためのワクチンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、ワクチンが、抗癌ワクチン、抗アルツハイマーワクチン、抗高脂血症ワクチン、抗高血圧ワクチンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記ワクチン含有層の薬液のpHを6以上とすることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記ワクチンには、キャリアー蛋白質を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の製剤のより好ましい実施態様において、前記キャリアー蛋白質が、動物蛋白質、植物蛋白質、又は糖蛋白質であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記キャリアー蛋白質が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、オボアルブミン(OVA)、牛血清アルブミン(BSA)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記ワクチンには、アルミニウム化合物、W/O型エマルション、O/W型エマルション、リポソーム、virosome、サポニン、サポニン含有物、MF59(スクアレンエマルション)、monophosphoryl lipid A(MPL)、易熱性エンテロトキシン、コレラトキシン、CpGモチーフオリゴヌクレオチド、サイトカイン、non-ionic block copolymerからなる群から選択される少なくとも1種のアジュバントを含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記ワクチンが、生ワクチン又は不活化ワクチンであることを特徴とする。
【0024】
本発明のワクチンの投与方法は、請求項1〜9項のいずれか1項に記載の製剤を電極として用いて、イオントフォレーシスによりワクチンを投与することを特徴とする。
【0025】
本発明のワクチンの投与方法の好ましい実施態様において、前記ワクチンを投与する際に、皮膚免疫シグナルを生じさせ、皮膚免疫の誘導を行うことを特徴とする。
【0026】
本発明のワクチンの投与方法の好ましい実施態様において、さらに、電気的刺激による皮膚免疫の誘導を行うことを特徴とする。
【0027】
本発明のワクチンの投与方法の好ましい実施態様において、最初のワクチン投与を、前記ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下で行うことを特徴とする。
【0028】
本発明のワクチンの投与方法の好ましい実施態様において、前記ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下で最初のワクチン投与を行った後、さらに2回目以降のワクチン投与を行うことを特徴とする。
【0029】
本発明のイオントフォレーシス装置は、請求項1〜6項のいずれか1項に記載の製剤を電極として用いることを特徴とする。
【0030】
また、本発明のイオントフォレーシス装置の好ましい実施態様において、前記製剤を、陰極側の電極として用いることを特徴とする。
【0031】
また、本発明のイオントフォレーシス装置の好ましい実施態様において、前記製剤を、陽極側と陰極側の両方の電極として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明のイオントフォレーシスによりワクチンを投与することにより、以下の効果が得られる。
【0033】
(1)ワクチンの投与は特に乳幼児期に多く行われるが、本発明の装置による投与によって、痛みに耐えにくい小児に対して苦痛を与えることなく、免疫を獲得することができる。
【0034】
(2)注射によるワクチン投与が困難である針に対する恐怖症がある患者のコンプライアンスを向上させることができる。
【0035】
(3)注射投与で起こる針刺し事故による医療従事者の感染症の危険性をなくすことができる。
【0036】
(4)免疫原性が弱く、複数回の投与が必要な抗原を含有するワクチンであっても、痛みを伴わないことから、簡便に投与し、容易に免疫応答を誘導することができる。
【0037】
(5)非侵襲的であるので、皮膚からの細菌等による感染を防止できる。
【0038】
(6)ワクチンを含むパッチを皮膚に貼付し、所定の装置から電圧を印加するだけなので、在宅でも投与が可能で、在宅のまま疾病予防が可能となる、などの効果が得られる。
【0039】
(7)従来は美容、疾病治療のために用いることが主だったイオントフォレーシスをワクチン投与に応用することにより、経皮的に免疫応答を誘導し、疾病の発現予防することが可能となる。
【0040】
(8)イオントフォレーシスによれば、抗原投与部位である皮膚近傍にターゲット細胞であるランゲルハンス細胞が豊富に存在しており、効率良く抗原を標的細胞に送達できることから他の投与経路に比べて抗原投与量を下げることができる。また、注射投与用ワクチンで必要とされる生産、輸送、消費までのcold chain(低温温度管理)が不要となることによるコスト低減、投与の簡便性向上による大規模ワクチン投与が可能となるなど有利な効果を奏する。
【0041】
以上のように、本発明によれば、イオントフォレーシスによりワクチンを皮膚から投与することにより、ワクチンの免疫応答能を高めることを可能とした。またワクチンの投与を非侵襲的に行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
高分子量の物質はイオントフォレーシスを用いたとしても薬効を得られる程の量は通常皮膚から吸収されないものの、本発明では高分子物質で比較的少量の吸収であっても、ワクチンであれば免疫活性を得るためには十分な量であり、また皮膚免疫を成立させるためには表皮層に存在する抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞への抗原送達で十分であり通常のペプチドなどの生理活性物質と異なり、全身系へ吸収が必要ないこと、さらにはイオントフォレーシスにより生じる電気による皮膚反応が皮膚免疫成立に対して補助的な役割を果たすのではないかと考え、鋭利検討を行った結果、イオントフォレーシスとワクチンの組み合わせが非侵襲的なワクチン投与方法と有効であることを見出した。
【0043】
すなわち、本発明の製剤は、支持体と、前記支持体上に形成され、皮膚との直接の接触を避けるために絶縁体で一部が保護された電極と、前記電極上に形成され、ワクチンを含有するワクチン含有層と、を有する。
【0044】
ここで、本発明の製剤の一例を図2を用いて説明すれば、以下のようである。図2に当てはめると、本発明の製剤は、支持体(24)と、前記支持体上に形成され、皮膚との直接の接触を避けるために絶縁体(23)で一部が保護された電極(21)と、前記電極上に形成され、ワクチンを含有するワクチン含有層(22)と、を有する。例えば、PETフィルムや発泡体などの合成高分子フィルムからなる支持体上(24)に端子部分が皮膚と直接接触しないように絶縁テープ(23)を施した電極(21)を粘着材等で固定し、電極上にワクチン含有層(22)を重ねることができる。支持体は、皮膚へ固定させる役割があれば、特に限定されるものではない。ワクチン含有層は、ワクチンを含有する溶液、薬液等を保持することが可能であれば、特に材質等に限定されるものではない。例えば、不織布などをワクチン含有層に利用することができる。また、絶縁体は、皮膚との直接の接触を避ける役割があれば、特に限定されるものではない。絶縁体は、電極の周囲を取り巻くように構成してもよく、デバイスとの接続様式によって直接接触を避けることが可能であれば、特に構成に限定されるものではない。従って、電極の全部を絶縁体で覆う必要は必ずしも無く、電極は、絶縁体で一部を保護されていれば足りる。リード線等は、図2中の電極のはみ出た部分に接続すれば足りる。好ましい実施態様において、電極層の電極材料が、白金、金、チタン、アルミ、カーボン、銀、銅、ニッケル、亜鉛、炭素などの電子導電体からなる電極、半導体電極、及び銀/塩化銀、塩化銀/塩化銀などの自己犠牲電極から少なくとも1種類が選択されることができる。安価に利用できるという観点から、電極としてはカーボンが望ましい。さらに望ましくは、機能面からpHの変化を生じさせないという観点から陽極側には銀を含むもの、陰極側には塩化銀を含むものが望ましいが、本発明は、これらに限定されるものではない。これらの電極は、板、シート、メッシュ、繊維を不定形に積層させたペーパー状物に成形加工されたものをそのまま使用することもできる。
【0045】
ワクチン含有層(成分保持部)についても特に限定されるものではないが、成分保持部としては、ワクチンを水等に溶解また一部溶解させたワクチン含有液を多孔質ポリマー、ガーゼなどに含浸させたものや、該液をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどを混合して得られるゲルを用いることができる。
【0046】
好ましい実施態様において、前記ワクチン含有層のpHを6以上とする。これは詳細なメカニズムは不明であるが、皮膚を、pH6以上で処理、好ましくはアルカリ処理、さらに好ましくは、pH7.5〜9.5で処理することで皮膚損傷シグナルが生じ、皮膚免疫の誘導が掛かっていることが考えられる。本発明の製剤の使用は、さらに、後述するように、イオントフォレーシスの電気的刺激による皮膚免疫誘導との相乗効果で予想以上のワクチン効果を奏する。
【0047】
また、本発明の製剤の好ましい実施態様において、前記ワクチンには、キャリアー蛋白質を含む。このようなキャリアー蛋白質としては、特に限定されるものではないが、動物蛋白質、植物蛋白質、又は糖蛋白質などを挙げることができる。例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、オボアルブミン(OVA))、牛血清アルブミン(BSA))からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0048】
ワクチンとキャリアー蛋白質との結合様式は特に限定されず、常法による。免疫原性が弱い抗原(それ単独では抗体を誘導できないもの)に対してはキャリア蛋白と呼ばれる免疫原性が高い蛋白質に抗原を結合させることでキャリア蛋白質に対する抗体を誘導するのと同時に目的の抗原に対する抗体を誘導する手法が一般的に用いられているので、本発明の製剤においても適用する事が可能である。キャリア蛋白質と抗原の結合は色々あるが、抗原を効率よく抗原提示細胞に送達させるという観点から、共有結合で結合させることが好ましい。結合形はグルタルアルデヒド、ジスルフィド結合などを介してもよい。
【0049】
また、前記ワクチンには、アルミニウム化合物、W/O型エマルション、O/W型エマルション、リポソーム、virosome、サポニン、サポニン含有物、MF59(スクアレンエマルション)、monophosphoryl lipid A(MPL)、易熱性エンテロトキシン、コレラトキシン、CpGモチーフオリゴヌクレオチド、サイトカイン、non-ionic block copolymerからなる群から選択される少なくとも1種のアジュバントを含んでもよい。
【0050】
また、本発明の製剤において使用可能なワクチンとしては、特に限定されるものではない。ワクチンとしては、感染性又は非感染性の疾患を予防するためのワクチンを挙げることができる。すなわち、一般には、ワクチンとは、ヒトなどの動物に接種して感染症の予防に用いる医薬品を意味するが、本明細書においては、前記感染症のほか、非感染症の疾患を予防するためのものをも含む広い概念で用いられる。これは、経口ワクチンや経皮ワクチン、経膣ワクチン、経直腸ワクチン、経鼻ワクチン、経肺ワクチンなど、注射とは異なる新たな投与経路を用いたワクチンの開発に伴い、ワクチンはウイルスやバクテリアなどの外来病原因子に対する予防用というこれまでの概念からその応用範囲を広げ、多発性硬化症や重症筋無力症などの自己免疫疾患、癌、痴呆症、高血圧、高脂血症などのすでに罹患した疾患の慢性化予防や非感染性の疾患に対する治療用として開発されるようになってきたことに伴う。
【0051】
すなわち、非感染性の疾患としては、多発性硬化症や重症筋無力症などの自己免疫疾患、癌、痴呆症、高血圧、高脂血症などを挙げることができる。非感染性の疾患としては、メタボリックシンドロームに代表される生活習慣病も含まれる。生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」をいい、代表的な病気としては、虫歯、歯周病、骨粗鬆症、アルコール性肝疾患、肥満症、痛風(高尿酸血症)、高血圧症、糖尿病、高脂血症、心臓病、脳卒中、がんなどがある。
【0052】
このように、本発明においては、これら非感染性の疾患を予防するためのワクチンも適用可能である。非感染性の疾患を予防するためのワクチンとしては、例えば、抗癌ワクチン、抗アルツハイマーワクチン、抗高脂血症ワクチン、抗高血圧ワクチンからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0053】
また、感染性の疾患を予防するためのワクチンとしては、例えば、BCG、経口生ポリオワクチン、痘苗、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、麻疹・風疹混合ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、黄熱ワクチン、ロタウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、麻疹・風疹・おたふく混合ワクチン、MMRV( 麻疹・風疹・おたふく・水痘)、インフルエンザウイルスワクチン、狂犬病ワクチン、コレラワクチン、三種混合(DPT)ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチン)、二種混合(DT)ワクチン(ジフテリア・破傷風混合ワクチン)、日本脳炎ワクチン、百日咳ワクチン、23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン、A型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、多価蛋白結合肺炎球菌ワクチン、炭疽菌ワクチン、不活化ポリオワクチン、髄膜炎菌ワクチン、腸チフスワクチン、ダニ媒介脳炎ワクチン、インフルエンザ桿菌b型ワクチン、A型肝炎ワクチン、ジフテリア・破傷風混合ワクチン、新型・不活化経口コレラワクチン、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、などの他、これらの抗原性を高めるために蛋白と抗原を結合させたものなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の製剤に使用可能なワクチンとして、炎症反応等の副作用の危険性が少ないという観点から、不活化ワクチンを挙げることができる。不活性ワクチンとして、インフルエンザ、旅行者下痢、ヘリコバクターピロリ、HIV、HCV、マラリア、ロタウイルス、コロナウイルス、炭疽菌、O157、黄熱病、西ナイル熱、デング熱等を挙げることができる。
【0054】
次に、本発明のワクチンの投与方法について説明すれば、以下のようである。すなわち、本発明のワクチンの投与方法は、上述した本発明の製剤を電極として用いて、イオントフォレーシスによりワクチンを投与することを特徴とする。上述した本発明の製剤を用いてイオントフォレーシスによりワクチンを投与することにより、アジュバント無しにワクチンを投与可能になることを本発明者らが見出したことによる。本発明の投与方法に用いる本発明の製剤については、上述の本発明の製剤の説明を、本発明のワクチンの投与方法についてそのまま適用することができる。イオントフォレーシスにより非侵襲的にワクチンを投与し、免疫を獲得することが可能である。
【0055】
本発明の好ましい態様において、前記ワクチンを投与する際に、皮膚免疫シグナルを生じさせ、皮膚免疫の誘導を行う。皮膚免疫シグナルを生じさせ、皮膚免疫の誘導を行うことについて、特に限定されるものではない。例えば、ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下での本発明の製剤の使用により、皮膚免疫の誘導を行う事が可能である。
【0056】
また、本発明のワクチン投与方法において、さらに、電気的刺激による皮膚免疫の誘導を行うことができる。電気的刺激、例えば、イオントフォレーシスの利用による皮膚免疫の誘導により、予想以上のワクチン効果を達成することができる。
【0057】
本発明のワクチンの投与方法の好ましい実施態様において、皮膚免疫の誘導を行うという観点から、最初のワクチン投与を、前記ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下で行う。一般に、初回のワクチン投与を、通常プライミング(初回刺激)といい、2回目以降の投与をブーストという。
【0058】
また、好ましい実施態様において、前記ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下で最初のワクチン投与を行った後、さらに2回目以降のワクチン投与を行う。なお、2回目以降のワクチン投与は、薬液等の諸条件について特に限定されるものではない。例えば、抗原等のみを投与してもよく、また、抗原等と共に、上述したキャリアー蛋白質と共に投与してもよく、既存のアジュバントと共に投与しても良い。抗原等と共に、キャリアー蛋白質及び既存のアジュバントを投与しても良い。
【0059】
また、本発明のイオントフォレーシス装置は、上述した本発明の製剤を電極として用いることを特徴とする。本発明のイオントフォレーシス装置において使用される本発明の製剤ついては、上述の本発明の製剤の説明をそのまま適用することができる。
【0060】
ここで、イオントフォレーシスについて簡単に説明すれば、イオントフォレーシスとは、生体に有用なイオン性成分を、電気泳動を利用して生体へ浸透させるものを意味する。図1に投与の一例を示す。皮膚(13)上に陽極電極(11)および陰極電極(12)を貼付し、電源装置(14)より電圧を印加し、電流を流す。このとき生理活性物質がプラスに帯電するのであれば陽極側に含有させ、マイナスに帯電するのであれば陰極に含有させる。ワクチンのようにアミノ酸やタンパク質からなる両性化合物では溶解させる溶液のpHを調整することによってプラスにもマイナスにも帯電させることができ、それによって陽極または陰極、あるいは両方の極に含有させることが可能である。
【0061】
上述した本発明の製剤を電極として適用するには、例えば、ワクチン含有イオントフォレーシス製剤を陽極電極または陰極電極またはその両電極として、図1に例示したように皮膚上に適用することが可能である。
【0062】
なお、一般にワクチンは高分子量化合物であるため、Na、Ag+、Cl、H+、OHなど低分子量化合物に比べ、電気的な移動に寄与する割合が少ない(輸率が小さい)。そのため、電極から通電により生じるイオン(Ag+、Cl、H+、OH等)とワクチンの混合をさけ、ワクチンに対する輸率を低下させないために電極とワクチン含有層の間にイオン交換膜やイオン交換樹脂を含有することができる。また生体側から取り出される生体対イオン(生体内に存在するイオンであって、導入すべき成分のイオンとは反対導電型に帯電したイオン)、特に移動度が大きい生体対イオン(例えば、NaやClなど)が主として放出されるが、当該放出を抑制し、輸率を向上させるために、イオン交換膜やイオン交換樹脂を皮膚とワクチン含有層に介して導入すべき成分を投与してもよい。
【0063】
以上のように、本発明の製剤を用いたイオントフォレーシスによるワクチンの投与によれば、アジュバントを使用しなくてもワクチンを投与可能となる。アジュバントを使用しなくてもワクチン投与可能な理由については、本発明の製剤によれば、外的な刺激がアジュバント効果に相当していることが挙げられる。すなわち、経皮免疫は他の投与経路に比べて免疫誘導活性が弱いことが問題であり、そのためアジュバントを用いることが必要である。一方、イオントフォレーシスを用いた場合、その電気的刺激が外的危険シグナルとなって免疫賦活に働いていると考えられる。アジュバントの種類は大きく分けて5種類に分類されるが、その中で外的な刺激、danger signal、(例えば、上述のアルカリ性に薬剤を調整するなど)に相当するアジュバント効果をもたらしていると予測される。
【0064】
すなわち、本発明によれば、外的な刺激、例えば、アルカリ側のpHでの薬液調整などによって、皮膚損傷シグナルを生じ、皮膚免疫の誘導を引き出し、さらに、イオントフォレーシスによる電気的刺激による皮膚免疫誘導との相乗効果によって、アジュバントの使用無しに、予想以上のワクチン投与効果を達成可能としている。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0066】
実施例1
まず、イオントフォレーシス+ワクチンを適用した場合について、本発明の効果について調べた。
【0067】
<投与、血液採取>
マウス(Balb/cマウス、4週令、雌)の背部及び腹部をバリカンで注意深く損傷させないように除毛し、さらに市販の脱毛剤(エピラット:カネボウ)を用いてワクチン投与部位を完全に除毛した。図2に示したように、銀/塩化銀電極(21)の一部を絶縁テープ(23)で保護し、支持体(24)上へ重ね、さらにその上に不織布(22 面積3.14cm2)を重ねた。この製剤の不織布部分に処方1に示したワクチン溶液を200μL適用し、これを陽極電極とした。また処方2に示したワクチン溶液を図2の製剤に200μL適用し、これを陰極電極とした。陽極電極、陰極電極を腹部及び背部にそれぞれ貼付し、電源装置(V1002:フレサイスゲージ)より、定電流1.57mAを30分間通電した。投与1週間後に尾静脈より採血し、血液を遠心分離し、血清を得た。この血清中の抗SSV抗体をELISA法により測定した。この投与、採血、測定を1サイクルとして、2週間に1サイクルの頻度で4週間行った。
【0068】
<定量>
ELISAによる抗体産生量の測定を行った。各マウスから各血液試料を採取し、その後、マウス血清中の抗体量を以下の手順に従い、ELISA法により測定した。なお、以下において、OVA-SSVとは、オボアルブミンと配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチドとの複合体を意味する。OVA-SSVは、下記の手順を参照して合成した。
【0069】
すなわち、抗原物質を人為的に合成する場合には、例えば、ペプチド固相合成法、ペプチド液相合成法等の公知のペプチド合成技術を使用することが可能である。また、抗原物質と、担体とを結合する手法として、抗原物質の免疫原性を妨げない限り特に限定されないが、例えば、EDC(Ethylenedichloride)、DCC(dicyclohexyl carbodiimide)、DIC(1,3-diisopropyl carbodiimide)等の脱水縮合剤、グルタルアルデヒド、マレイミド、マレイミドベンゾイルオキシコハク酸等の架橋剤、PEG、リンカーペプチド等のリンカーを用いて、抗原物質と、担体とを結合させる手法が挙げられる。抗原物質と上記担体とはカルボジイミドまたはグルタルアルデヒドを介して結合してもよい。ペプチドと担体との結合法の製造方法は、例えば、「ペプチド合成の基礎と実験」泉屋 信夫他著、丸善株式会社)に記載の方法を参照することができる。このように常法を用いて抗原物質を合成した。
【0070】
まず、ヒストンH1溶液(20μg/mL、Roche社製)またはOVA-SSV溶液(OVA-SSV;0.387mg/mL、溶媒:0.02Mリン酸緩衝液、0.9%NaCl、pH8.0)を0.1M NaHCO3(pH9.3)溶液を用いて調製した。次に、得られた溶液をそれぞれ、96穴プレートの各ウエルに50μLずつ添加し、室温にて1時間放置した。次に、PBSTで各ウエルを3回洗浄した後、PBS溶液(3%milk、1%BSA含有PBS溶液)150μLを各ウエルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。次に、PBSTで各ウエルを3回洗浄した後、PBSTで1000倍希釈したマウス血清50μLをウエルに添加し、室温で1時間放置した。次に、PBSTで各ウエルを3回洗浄した後、PBSTで2000〜4000倍希釈した、ペルオキシターゼラベル化マウスIgG(SIGMA社製)50μLをウエルに添加し、室温で1時間放置した。次に、PBSTで各ウエルを3回洗浄した後、発色基質としてABTS(2,2’―azino-bis[3-ethylbenzoline-6-sulfonate]、SIBMA社製)を添加し、30〜60分インキュベートした。その後、各ウエルの吸光度を、Multiscan
Ascent(thermo
Labsystems社製、波長405nm)により測定した。
【0071】
この結果、各群の試験開始から25日目の時点における、血清サンプルの吸光度の平均値±標準誤差は、図3に示される通りであった。
【0072】
測定サンプルの吸光度の平均値±標準誤差は、免疫寛容誘導ワクチン用抗原ペプチドとKLHとの複合体を用いた場合0.524±0.146であった。免疫寛容誘導ワクチン用抗原ペプチドとKLHとの複合体を用いてイオントフォレーシス投与した場合の抗体の産生量は、同じ組成のワクチン溶液を貼付した場合と比較して高いことが確認された。また、具体的に、抗アルツハイマー用の抗原(図4のAβsewuence)、抗高脂血症用の抗原(図5のCETP sequence)、抗高血圧用の抗原(図6のAngio II sequence)を用いた場合についても調べた。図4〜6から明らかなように、いずれも抗原がない場合と比較して、予想以上のワクチン効果を奏していることが判明した。
【0073】
以上の結果、イオントフォレーシスの電気的刺激による皮膚免疫誘導と、皮膚損傷シグナルによる皮膚免疫誘導との相乗効果によって、予想以上のワクチン効果を奏することが判明した。また、皮膚のアルカリ処理+イオントフォレシスによってランゲルハンス細胞が活性化されることも判明した。
【0074】
比較例1
次に、実施例1と同じ組成を単に貼った場合の効果について調べた。
【0075】
<投与>
マウス(Balb/cマウス、4週令、雌)の背部及び腹部をバリカンで注意深く損傷させないように除毛し、さらに市販の脱毛剤(エピラット:カネボウ)を用いてワクチン投与部位を完全に除毛した。図2に示した銀/塩化銀電極、支持対、不織布(面積3.14cm2)からなる製剤の不織布部分に処方1に示したワクチン溶液を200μL適用した。この製剤を腹部及び背部に貼付した。投与1週間後に尾静脈より採血し、血液を遠心分離し、血清を得た。この血清中の抗○IgG抗体(○は抗原により異なる。)をELISA法により測定した。この投与、採血、測定を1サイクルとして、2週間に1サイクルの頻度で6〜10週間行った。
【0076】
<定量>
ELISAにより行った。
【0077】
その結果、実施例1と同じ組成のものを単に貼っても、ワクチン投与の効果がないことが判明した。
【0078】
比較例2
次に、テープストリッピングしたマウスに対して、実施例1と同じ組成のものを貼付した場合の効果について調べた。
【0079】
<投与>
マウス(Balb/cマウス、4週令、雌)の背部及び腹部をバリカンで注意深く損傷させないように除毛し、さらに市販の脱毛剤(エピラット:カネボウ)を用いてワクチン投与部位を完全に除毛した。腹部および背部にセロハンテープを20回貼付、剥離を繰り返し、角質層を取り除き、ストリプトスキンとした。ここに比較例1と同様の製剤を貼付した。投与1週間後に尾静脈より採血し、血液を遠心分離し、血清を得た。この血清中の抗○IgG抗体(○は抗原により異なる。)をELISA法により測定した。この投与、採血、測定を1サイクルとして、2週間に1サイクルの頻度で6〜10週間行った。
【0080】
<定量>
ELISAにより行った。
【0081】
その結果、実施例1と同じ組成のものを単に貼っても、ワクチン投与の効果がないことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の製剤、当該製剤を用いたイオントフォレーシスによる投与方法及び装置は、非侵襲的、安全かつ簡便、効果的であり、広く生物化学、生化学、医学、薬学分野における研究指針を提供するものとして極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の一実施態様によるイオントフォレーシス装置の概略を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施態様による製剤を示す図である。
【図3】図3は、各群の試験開始から25日目の時点における、血清サンプルの吸光度の平均値±標準誤差を示す。
【図4】図4は、抗アルツハイマー用の抗原を用いた場合のワクチン効果を示す図である。(a)は抗原なしの場合、(b)はKLH-Aβを投与した場合をそれぞれ示す。
【図5】図5は、抗高脂血症用の抗原を用いた場合のワクチン効果を示す図である。(a)は抗原なしの場合、(b)はKLH-CETPを投与した場合をそれぞれ示す。
【図6】図6は、抗高血圧用の抗原を用いた場合のワクチン効果を示す図である。(a)は抗原なしの場合、(b)はKLH-AngioIIを投与した場合をそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体上に形成され、皮膚との直接の接触を避けるために絶縁体で一部が保護された電極と、前記電極上に形成され、ワクチンを含有するワクチン含有層と、を有する製剤。
【請求項2】
前記ワクチンが、感染性又は非感染性の疾患を予防するためのワクチンであることを特徴とする請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記非感染性の疾患を予防するためのワクチンが、抗癌ワクチン、抗アルツハイマーワクチン、抗高脂血症ワクチン、抗高血圧ワクチンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2記載の製剤。
【請求項4】
前記ワクチン含有層の薬液のpHを6以上とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記ワクチンには、キャリアー蛋白質を含む請求項1〜4項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記キャリアー蛋白質が、動物蛋白質、植物蛋白質、又は糖蛋白質である請求項5記載の製剤。
【請求項7】
前記キャリアー蛋白質が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、オボアルブミン(OVA)、牛血清アルブミン(BSA)からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
前記ワクチンには、アルミニウム化合物、W/O型エマルション、O/W型エマルション、リポソーム、virosome、サポニン、サポニン含有物、MF59(スクアレンエマルション)、monophosphoryl lipid A(MPL)、易熱性エンテロトキシン、コレラトキシン、CpGモチーフオリゴヌクレオチド、サイトカイン、non-ionic block copolymerからなる群から選択される少なくとも1種のアジュバントを含む請求項1〜7項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ワクチンが、生ワクチン又は不活化ワクチンである請求項1〜8項のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
請求項1〜9項のいずれか1項に記載の製剤を電極として用いて、イオントフォレーシスによりワクチンを投与するワクチンの投与方法。
【請求項11】
前記ワクチンを投与する際に、皮膚免疫シグナルを生じさせ、皮膚免疫の誘導を行う請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに、電気的刺激による皮膚免疫の誘導を行う請求項10項又は11項に記載の方法。
【請求項13】
最初のワクチン投与を、前記ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下で行う請求項10〜12項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ワクチン含有層の薬液のpH6以上の条件下で最初のワクチン投与を行った後、さらに2回目以降のワクチン投与を行う請求項10〜13項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜9項のいずれか1項に記載の製剤を電極として用いるイオントフォレーシス装置。
【請求項16】
前記製剤を、陰極側の電極として用いる請求項15記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項17】
前記製剤を、陽極側と陰極側の両方の電極として用いる請求項15記載のイオントフォレーシス装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−284176(P2010−284176A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260501(P2007−260501)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(505331926)アマテラスファーマ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】