説明

製剤

【課題】分散剤が脱着しないように、液/液又は固/液界面でポリマー分散剤を不可逆的に結合することにより、乳濁液及び粒子分散液の頑健性を強化するための新たな手段を提供する。
【解決手段】固体粒子又は液滴の不連続相を液体連続相中に含んでなる分散液であって、前記連続相に可溶性のセグメント、及び、前記連続相に不溶性のセグメントを含んでなる、ポリマー分散剤と、前記不連続相の前記固体粒子又は液滴の周囲に、前記ポリマー分散剤の架橋結合によって形成されるネットワークとを更に含んでなり、前記架橋結合が、前記連続相に可溶性の前記セグメント間に存在する、分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子分散液及び乳濁液に関し、特に、粒子分散液及び乳濁液の安定化のための反応性ポリマー分散剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子分散液及び乳濁液は、多数の用途に広く用いられており、使用時に所望の効果を送達し得る安定な製剤を製造するために、相当な努力が費やされている。粒子分散液及び乳濁液は通常、界面活性剤(surface active agents or surfactants)によって安定化される。界面活性剤は、分散相と連続相との界面に物理吸着されることにより、個々の分散体(dispersed bodies)の分離を維持する。しかしながら、物理吸着された界面活性剤は、他の界面活性化合物による競合的脱着(competitive desorption)や、製剤に加わる条件、例えば温度サイクルや電解質濃度等によって、転位してしまう場合がある。分散系の製剤頑健性を改善するための選択肢や手段の開発が常に求められている。
【0003】
頑健な製剤を調製する上で直面する別の課題として、分散相の粒子のサイズ又は形状の増大が挙げられる。化学物質(特に農薬)の中には、連続相の液状媒体に対して僅かな溶解性しか示さないものがある。これによって、新たな分散相結晶の生成や、本来の分散相結晶の成長を招く。これらの現象は何れも、結晶のサイズ又は形状を、処方製品を使用するのに有害なものにしてしまう。分散相から液体連続相に進入してその中を移動する物質の量は、分散相と連続相との界面に吸着されない界面活性剤が存在すると、増加することが知られている。このプロセスはオストワルド熟成(Ostwald ripening)として知られている。乳濁液では、これは結晶形成を招くよりも、むしろ液滴サイズの増大を招く。
米国特許第6262152号公報(特許文献1)、国際公開第WO02/100525号公報(特許文献2)、及び国際公開第WO2004/052099号公報(特許文献3)(これら各々の内容は引用により本明細書に組み込まれる)には、連続相中に分散される液滴又は固体粒子に吸着されるポリマー分散剤分子を化学的に架橋結合することによって、特定の分散液又は乳濁液の製剤頑健性が強化され得ることが開示されている。これらの開示では、連続相に不溶性のポリマーセグメント上に存在する官能基を介して架橋される、両親媒性のポリマーを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US6262152
【特許文献2】WO02/100525
【特許文献3】WO2004/052099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分散剤が脱着しないように、液/液又は固/液界面でポリマー分散剤を不可逆的に結合することにより、乳濁液及び粒子分散液の頑健性を強化するための、もう1つの手段を提供する。本発明者等は、驚くべきことに、連続相に可溶性のポリマーセグメント上に存在する官能基を介して、こうしたポリマー分散剤を架橋することが可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、固体粒子又は液滴の不連続相を液体連続相中に含んでなる分散液であって、前記連続相に可溶性のセグメント、及び、前記連続相に不溶性のセグメントを含んでなる、ポリマー分散剤と、前記不連続相の前記固体粒子又は液滴の周囲に、前記ポリマー分散剤の架橋結合によって形成されるネットワークとを更に含んでなり、前記架橋結合が、前記連続相に可溶性の前記セグメント間に存在する、分散液を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の固体粒子又は液滴の平均径は、1000μm(マイクロメートル)から0.1μmまでの範囲にあることが好ましい。より好ましくは100μmから0.5μmまでの範囲、更に好ましくは5.0μmから1.0μmまでの範囲である。
【0008】
「固体粒子(solid particules)」という語には、マイクロカプセルが含まれる。これはレザボア構造であってもマトリックス構造であってもよい。マトリックス(matrix)構造は「固体粒子」である。レザボア(reservoir)構造は、内部が空洞の固体シェルを有し、通常はその内部に液体を含有するものである。
【0009】
本発明の分散液は、その連続相が水性であることが好ましい。ここで「水性(aqueous)」という語は、連続相の50重量%超が水であることをいう。農薬製剤は水性連続相中に有機溶媒を含有していてもよい。例えば、凍結防止剤としてプロピレングリコールが加えられていてもよい。
【0010】
環境によっては、連続相は非水性であることが好ましい。
【0011】
分散される物質の性状は本発明の範囲に大きな影響を与えるものではなく、分散相として好適な任意の固体又は液体を使用することができる。しかしながら、本発明の利点は、特定の分散相物質及び用途と特に関連している。例えば、本発明の分散液は、異なる分散物質を混合する必要がある製剤や、凝集、集塊、又は癒着に対する長期安定性が課題となる製剤に、とりわけ有用であると思われる。
【0012】
本発明の乳濁液に関して、分散相の液滴は、連続相の液体と混和しない液体を含んでなるが、更なる成分を含有していてもよい。更なる成分は、液体でもよく、分散相の液体中に溶解された個体でもよく、分散相の液体中に粒子として分散される固体でもよい。
【0013】
本発明は数々の商品に有用である。その例としては、これらに制限されるものではないが、農薬、生物活性化合物、被覆剤(塗料及びラッカー等)、着色剤(インク、染料及び顔料等)、化粧品(口紅、ファンデーション、マニキュア及び日焼け止め等)、調味料、香料、磁気及び光記録媒体(テープ及びディスク等)、並びに医薬の処方が挙げられる。
【0014】
本発明の分散液は、農薬を含んでなる、若しくは農薬を含んでなる液滴を含んでなる、固体粒子を有する農薬分散液であってもよい。この場合、分散相は、殺菌剤(bactericide)、肥料、又は植物成長調整剤、或いは特に、防カビ剤(fungicide)、除草剤、又は殺虫剤を含んでいてもよく。
【0015】
従って、好適な一態様によれば、本発明の分散液は農薬分散液である。
【0016】
農薬分散液は、必ずしも農薬活性成分を含んでいる必要はなく、農薬活性成分と併用されるアジュバントを含んでなるものであればよい。種々の機能の中でも、アジュバントは生物学的効率の改変、耐雨性(rainfastness)の向上、光分解の低減、或いは土壌移動性(soil mobility)の改変を行なうものが好ましい。
【0017】
更には、同一の連続相中に固体粒子及び液滴が分散されていてもよく、ここで、固体粒子がある農薬活性成分を含んでなるとともに、液滴が別の農薬活性成分を含んでなるものであってもよい。そのような製剤の一例として、水性乳化懸濁液(suspoemulsion)が挙げられる。本発明の利点がとりわけ顕著なのは、乳化懸濁液において、固体粒子及び液滴の双方を、凝集、軟凝集(flocculation)、集塊、又は貪食(engulfment)から安定化させるのに、同一のポリマー分散剤を用いる場合である。但し、ポリマー分散剤は、ある場合には架橋されるが、別の場合には架橋されない。例えば、固体粒子上のポリマー分散剤が架橋され、液滴上のポリマー分散剤が架橋されなくてもよく、その逆でもよい。同一のポリマー分散剤を使用することによって、不適合の問題を回避することが可能となる。同様に、不適合の問題を回避するために、同一のポリマー分散剤によって、2種以上の固体粒子(又は液滴)を連続相中に分散させることも可能である。
【0018】
異なる物質からなる固体粒子及び/又は油滴の混合物に関する本発明の範囲は、全ての分散体が本発明のポリマー分散剤によって安定化される場合に制限されるものではない。例えば、本発明に従って調製される分散液は、更に、従来の界面活性剤又は分散剤を用いて分散された固体粒子又は液滴を含んでいてもよい。当業者であれば、従来の界面活性剤又は分散剤のうち、この目的に好適なものを知っているであろう。
【0019】
固体粒子として分散され得る、又は水と混和しない有機溶媒中に溶解され得る、又は水と混和しない有機液体中に分散される農薬であれば、任意の農薬を本発明に使用できる。
【0020】
好適な農薬の例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【0021】
(a)除草剤としては、フルアジホップ、メソトリオン、フォメサフェン、トラルコキシジム、ナプロパミド、アミトラズ、プロパニル、シプロジニル、ピリメタニル、ジクロラン、テクナゼン、トクロホス−メチル、フラムプロップ−M、2,4−D、MCPA、メコプロップ、クロジナホップ−プロパルギル、シハロホップ−ブチル、ジクロホップ−メチル、ハロキシホップ、キザロホップ−P、インドール−3−イル酢酸、1−ナフチル酢酸、イソキサベン、テブタム、クロルタール−ジメチル、ベノミル、ベンフレセート、ジカンバ、ジクロベニル、ベナゾリン、トリアゾキシド、フルアズロン、テフルベンズロン、フェンメディファム、アセトクロール、アラクロール、メトラクロール、プレチラクロール、テニルクロール、アロキシジム、ブトロキシジム、クレトジム、シクロジム、セトキシジム、テプラロキシジム、ペンジメタリン、ジノテルブ、ビフェノックス、オキシフルオルフェン、アシフルオルフェン、フルオログリコフェン−エチル、ブロモキシニル、アイオキシニル、イマザメタベンズ−メチル、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、イマザピック、イマザモックス、フルミオキサジン、フルミクロラック−ペンチル、ピクロラム、アミドスルフロン、クロルスルフロン、ニコスルフロン、リムスルフロン、トリアスルフロン、トリアレート、ベブレート、プロスルホカルブ、モリネート、アトラジン、シマジン、シアナジン、アメトリン、プロメトリン、テルブチラジン、テルブトリン、スルコトリオン、イソプロツロン、リヌロン、フェヌロン、クロロトルロン、及びメトキシウロンが挙げられる。
【0022】
(b)防カビ剤としては、アゾキシストロビン、トリフロキシストロビン、クレソキシムメチル、ファモキサドン、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、カルベンダジム、チアベンダゾール、ジメトモルフ、ビンクロゾリン、イプロジオン、ジチオカルバメート、イマザリル、プロクロラズ、フルキンコナゾール、エポキシコナゾール、フルトリアホール、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シブロコナゾール、ジフェノコナゾール、ヘキサコナゾール、パクロブトラゾール、プロピコナゾール、テブコナゾール、トリアジメホン、トリチコナゾール、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、マンコゼブ、メチラム、クロロタロニル、チラム、ジラム、カプタホル、カプタン、ホルペット、フルアジナム、フルトラニル、カルボキシン、メタラキシル、ブピリメート、エチリモール、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、メトミノストロビン、プロチオコナゾール、8−(2,6−ジエチル−4−メチル−フェニル)テトラヒドロピラゾロ[l,2−d][l,4,5]オキサジアゼピン−7,9−ジオン、及び2,2−ジメチル−プロピオン酸−8−(2,6−ジエチル−4−メチル−フェニル)−9−オキソ−1,2,4,5−テトラヒドロ−9H−ピラゾロ[1,2−d][1,4,5]−オキサジアゼピン−7−イルエステル等が挙げられる。
【0023】
(c)殺虫剤としては、アバメクチン、アセフェート、アセタミプリド、アクリナトリン、アラニカルブ、アルジカルブ、アレトリン、α−シペルメトリン、アミトラズ、アシュラム、アザジラクチン、アザメチホス、アジンホス−エチル、アジンホス−メチル、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、ベンスルタップ、β−シフルトリン、β−シペルメトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、ビオレスメトリン、ビストリフルロン、ボラックス(ホウ砂)、ブプロフェジン、ブロキシカルボキシム、カズサホス、カルバリル、カルボフラン、クロルプロファム、クロチアニジン、シフルトリン、シハロトリン、シプルメトリン、デルタメトリン、ジエトフェンカルブ、ジフルベンズロン、ジノテフラン、エマメクチン、エンドスルファン、フェノキシカルブ、フェンチオン、フェンバレレート、フィプロニル、ハルフェンプロックス、ヘプタクロル、ヒドラメチルノン、イミダクロプリド、イミプロトリン、イソプロカルブ、λ−シハロトリン、メタミドホス、メチオカルブ、メソミル、ニテンピラム、オメトエート、ペルメトリン、ピリミカーブ、ピリミホスメチル、プロポキスル、テブフェノジド、チアメトキサム、チオジカルブ、トリフルムロン、及びキシルイルカルブが挙げられる。
【0024】
ポリマー分散剤又は界面活性剤の組成及び調製法としては、多種多様なものが存在する。こうした物質の概説については、例えばPiirma、Polimeric Surfactants、Surfactant Science Series 42(Marcel Dekker, New York, 1992)のテキストに挙げられている。重要なポリマー分散剤の分類として、「両親媒性("amphipathic" or "amphiphilic")」と呼ばれるものが挙げられる。これは、ポリマー骨格に結合したペンダントポリマーアームを有する櫛型(comb-shaped)コポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。ポリマー分散剤の表面活性は、異なるポリマーセグメントの化学組成及び相対的サイズによって決定される。
【0025】
例えば、水性の系に使用されるブロックコポリマー界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド等の水溶性ポリマーのセグメントが、ポリプロピレンオキシド等の水不溶性ポリマーのセグメントに結合したものが挙げられる。一方、水性の系に使用される櫛型コポリマー界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド等の水溶性ポリマーのセグメントがペンダントアームとして、骨格であるポリメチルメタクリラート等の水不溶性ポリマーのセグメントに結合したものが挙げられる。
【0026】
界面に吸着されるポリマーの量が最大となるのは、ポリマー分散剤が、コロイド表面に吸着する強い傾向を有するとともに、連続相中でミセル化し、又は他の凝集体を形成する傾向を殆ど、或いは全く有さない場合である。
【0027】
本発明に使用されるポリマー分散剤は、連続相に可溶性のセグメントを1種のみ有し、このセグメントが架橋結合の機能に加えて、コロイド安定化の機能を提供してもよい。或いは、連続相に可溶性のセグメントが2種以上存在し、そのようなセグメントのうち1種が架橋結合の機能を提供し、もう1種のセグメントがコロイド安定化の機能を提供してもよい。こうしたポリマー分散剤において、架橋結合セグメント及びコロイド安定化セグメントの化学的性質は同一であってもよいが、異なっていることが好ましい。
【0028】
従って、本発明の好適な態様によれば、上述の分散液におけるポリマー分散剤が、前記連続相に可溶性の第2のセグメントを有し、当該第2の可溶性セグメントが、他の可溶性セグメントと化学的に異なっている。化学的性質が異なる場合、架橋結合を達成する機構は、特定の架橋結合セグメントの化学的性質に特有のものであってもよい。言い換えれば、コロイド安定化セグメントの架橋結合を生じさせる機構が存在しないように、化学的性質を選択すればよい。架橋結合セグメントの化学的性質とコロイド安定化セグメントの化学的性質とが類似している場合には、コロイド安定化セグメントの架橋結合が低レベルであって、コロイドの安定化に壊滅的な影響を与えない程度であれば許容される。特にこれが当てはまるのは、生成する架橋構造が、連続相中のセグメントの溶媒化を促進するような場合である。
【0029】
コロイドの安定化に影響を与えることなく、連続相に可溶性のセグメントの架橋結合を実現するポリマー構造は、幾つか存在する。例えば以下の構造は、液体連続相として水を用いる場合に、好適に使用される。
【0030】
・水溶性の架橋可能なポリマーが櫛型コポリマーに連結してなるセグメント。この櫛型コポリマーでは、骨格が水不溶性であり、ペンダントアームが水溶性となるか、或いは、骨格が水溶性であり、ペンダントアームが水不溶性となる。更に、架橋可能なポリマーセグメントが架橋結合を生じる一方で、水溶性ペンダントアーム又は水溶性骨格には架橋結合が生じないように、架橋結合の機構を選択する。
【0031】
・水不溶性セグメントに連結した水溶性の架橋可能なセグメントに、水溶性セグメントが連結したもの。更に、第1の水溶性セグメントには架橋結合が生じず、水不溶性セグメントに近接する第2の水溶性セグメントに架橋結合が限定されるように、架橋結合の機構を選択する。
【0032】
・架橋可能な水溶性セグメントに連結した水不溶性セグメントに、水溶性セグメントが連結したもの。更に、架橋可能な水溶性セグメントのみに架橋結合が生じるように、架橋結合の機構を選択する。
【0033】
・架橋可能な水溶性セグメントが水不溶性セグメントに連結したもの。これは、ジブロックコポリマー、或いは櫛型コポリマーであって、骨格が水不溶性且つペンダントアームが水溶性であるか、又は骨格が水溶性でペンダントアームが水不溶性であるものによって達成される。更に、分散相の固体粒子又は液滴の周囲に水膨張性(water-swollen)ヒドロゲルが形成され、これが癒着、集塊、凝集、或いは製剤性能の不良(poor formulation performance)を招くその他の事象を防止する上で十分な障壁として機能するように、架橋結合の機構を選択する。
【0034】
以上の例は、説明の目的のみで挙げたものである。当業者であれば、水溶性セグメントによる架橋結合に関する上述の基準を満たす他の構造を熟知しているであろうし、同様に、非水性連続相を有する分散液にも上述の教示を適用することが可能であろう。
【0035】
本発明に使用される両親媒性ポリマーを作製するためのアプローチは幾つか存在するが、主なアプローチとしては、予め作製されたポリマー系セグメントのカップリング、又は、制御された手法若しくは段階的な手法によるモノマーの重合が挙げられる。例えば、水性(aqueous based)連続相に使用されるブロックコポリマー分散剤は、(i)まずは水不溶性モノマー、次に水溶性モノマーを、制御下で段階的に重合する手法、若しくはこの製法の逆順となる手法、又は、(ii)予め形成された水不溶性ポリマー系セグメントと水溶性ポリマー系セグメントとをカップリングする手法によって、作製することができる。当業者であれば、これらのアプローチの各々に伴う種々の利点及び欠点について、熟知しているであろう。
【0036】
ポリマー分散剤は、複数種のビニルモノマーを有する両親媒性コポリマーであることが好ましい。これらのビニルモノマーは、重縮合又は開環重合の産物に連結されていてもよい。
【0037】
連続相に可溶性のポリマー分散剤のセグメントには、連続相に可溶性のモノマーに加えて、連続相に不溶性のモノマーが共重合されていてもよい。但し、そのセグメントの全体組成は、そのセグメントが連続相に可溶性となるようなものである必要がある。例えば、水性連続相に使用されるポリマー分散剤の場合、連続相に可溶性のセグメントは、メタクリル酸に加えて、メチルメタクリレートが共重合されたものであってもよいが、メタクリル酸のメチルメタクリレートに対する比率は、そのセグメントが使用pHにおいて水溶性となるように定める必要がある。
【0038】
ポリマー系セグメントに含有された場合に、そのポリマー系セグメントの水溶性を向上させ得るビニルモノマーの他の例としては、特に、アクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル及びメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート及びメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート及びメタクリレート、イタコン酸、オリゴ−又はポリ−エチレンオキサイドモノ−アクリレート又は−メタクリレート、マレイン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、ビニルピリジン、並びにビニルピロリジンが挙げられる。
【0039】
ポリマー系セグメントに含有された場合に、そのポリマー系セグメントの水溶性を低下させ得るビニルモノマーの他の例としては、特に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及び他のアクリル及びメタクリル酸のアルキルエステル、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、及び他のアクリル酸及びメタクリル酸のアリールエステル、ブタジエン、スチレン及びアルキル置換スチレン、酢酸ビニル、及び他のビニルアルコールのアルキル又はアリールエステル、塩化ビニル又は二塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0040】
制御下での段階的重合は、本技術分野で公知の種々の方法により実施することができる。これらの方法はしばしば「リビング(living)」重合又は「制御(controlled)」重合と呼ばれ、従来の手法と比較して、分子量及び多分散指数(polydispersity index:重量平均分子量の数平均分子量に対する比)の制御性に優れている。これらの手法の例は、科学文献に記載されている。中でも、アニオン及びカチオン重合、並びに基移動重合には、厳しい反応条件が課せられ、極めて純度の高い試薬が必要となる。一方、リビングフリーラジカル重合は概して、求められる条件がより緩やかである。
【0041】
リビングフリーラジカル重合の方法としては、様々なものが知られている。例としては、ジスルフィド又はテトラフェニルエタン「イニファタ(iniferter)」の使用、ニトロキシド連鎖移動剤の使用、コバルト錯体連鎖移動剤の使用、遷移金属錯体を用いた原子移動ラジカル重合、並びに、硫黄含有有機化合物を用いたラジカル付加開裂移動重合が挙げられる。
【0042】
櫛型コポリマーは、骨格が単一のコポリマー系セグメントである限り、制御下での段階的反応で調製する必要はない。但し、2以上のセグメントからなる場合には、ブロックコポリマーについて上述した手順によって調製してもよい。櫛型コポリマーの調製は、(i)骨格セグメントからのペンダントアームセグメントのグラフト重合、(ii)予め作製されたペンダントアームセグメントの骨格セグメントへのカップリング、或いは、(iii)骨格セグメント用の適切なモノマーと、マクロモノマーとの統計共重合又はランダム共重合によって行なうことができる。ここで使用するマクロモノマーは、予め作製されたペンダントアームセグメントであって、適切な重合可能部位をその一末端基に有するものである。水溶性ペンダントアームを有する櫛型コポリマーを調製するのに好適なマクロモノマーの例としては、モノ−メトキシ−ポリエチレングリコール−モノ−メタクリレートが挙げられる。
【0043】
如何なる組成物についても、その好ましい調製方法は、試薬の性状や性質に応じて異なる。例えば、特定のモノマー間の反応性比によって、得られるコポリマー構造の範囲は制限される。また、ポリマー分散剤の分子量も、重要な要素の1つである。分子量が高過ぎると、ポリマー溶液の粘性が高過ぎて使用が困難となる一方で、分子量が低過ぎると、その化学組成が均質とならない。また、分子量分布が広過ぎると、その挙動が予測困難となる。当業者であれば、適切な分子量を有する所望のコポリマー構造を調製する上で、適切な材料及び条件を選択することが可能であろう。
【0044】
本発明に使用されるポリマー分散剤は、混和しない物質間の界面に物理吸着される、両親媒性の表面活性分子である。これらは架橋結合に先立ち、所望の分散液の調製法に応じて、適切な処理を施される。例えば、コロイド若しくはアトライターミル、トリプルロールミル、高速ローターステーターデバイス、又は高圧ホモジナイザーを用いて、固体粒子又は混和しない液体を液体連続相中に分散させてもよい。当業者であれば、所望の分散液を調製し、所望のサイズの固体粒子又は液滴を得るために適切な方法を、容易に選択することが可能であろう。
【0045】
架橋結合は、分散液中における粒子又は液滴の全体的なサイズを僅かに増加させる効果を有する場合があるが、たとえ存在する場合でも、その効果は通常は小さい。驚くべきことに、本発明者等は、分散液中の粒子又は液滴の平均サイズは、架橋結合後にも、通常は好ましい範囲内に十分留まっていることを見出した。ここでいう好ましい範囲とは、例えば約10ミクロン未満であり、より具体的には約5ミクロン未満である。
【0046】
架橋結合の前において、分散固体又は油滴[B]に対するポリマー分散剤[A]の重量比率(A:B)は、A1部に対してB400部(1:400)から、A1部に対してB5部(1:5)までの範囲、例えばA1部に対してB200部(1:200)から、A1部に対してB10部(1:10)までの範囲が好適である。より好適な範囲は、1:10から1:100、例えば1:20から1:75の範囲である。約1:50の比率が特に好適である。
【0047】
製剤時に使用するポリマー分散剤の量を必要最小限に留めることには、経済上明確な利点がある。更に本発明者等は、必要最小限の量を使用することにより、水相の内部における(in the body of the aqueous phase)架橋結合セグメントの反応によるポリマー分散剤の架橋を、最小限に抑えることができることを見出した。このような反応は、粒子又は滴の表面で生じる反応とは対照的に、非生産的であり、更には有害な可能性もある。
【0048】
本発明によれば、液体連続相に可溶性のポリマー系セグメントのうち、ポリマー分散剤内に位置する特定の反応性部位が、固体粒子又は油滴と連続相との界面で架橋され、ポリマー分散剤を不可逆的に結合させる。ここで、分散液の調製前又は調製後の何れかの時点で、連続相に架橋結合物質を加え、反応性部位と架橋結合物質との反応を行なわせてもよい。乳濁液の場合には、乳濁液の調製前に、架橋結合物質を不連続液相に加えてもよい。また、反応性部位は、前記連続相に可溶性のポリマー分散剤のセグメント内に含まれる、互いに同一の官能基と、或いは異なる官能基と反応してもよい。上述の架橋結合反応は何れも、自然に生じる反応であってもよいが、分散液の環境の変化によって誘発されるものであってもよい。環境の変化としては、これらに限定されるものではないが、pH又は温度の変化が挙げられる。分散液の調製完了前において、未熟な架橋結合や加水分解等の副反応が最小限となるように、適切な反応性部位及び架橋結合物質を選択すべきであり、当業者であれば容易にこれをなし得るであろう。
【0049】
架橋結合反応としては、液体連続相に可溶性のセグメントにおけるポリマー分散剤中に存在する反応性部位の間に、共有結合か非共有結合かによらず強固な結合を形成し得る簡易な化学反応であれば、如何なる反応であってもよい。好適な反応としては、分散液のコロイド安定性や分散液の何れかの成分の化学安定性に対して有害と思われる、高温等の条件を必要としない反応が挙げられる。架橋結合物質を使用する場合には、当該物質は少なくとも2つの反応性基の官能性を有していなければならないことは明らかであるが、より多くの反応性基を有していてもよい。ポリマー分散剤又は架橋結合物質における反応性部位に好適な官能基の例としては、アルデヒド又はケトンと反応し得る1級アミン;アセトアセトキシ基、無水物、アジリジン、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、エポキシド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、N−メチロール基、及びビニル基と反応し得る1級又は2級アミン;アルキル又はアリールハロゲン化物と反応し得る1級、2級、又は3級アミン;無水物、アジリジン、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、エポキシド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、又はN−メチロール基と反応し得る水酸基;不安定エステル(labile esters)との間でエステル交換反応を生じ得る水酸基;アセトアセトキシ基、無水物、アジリジン、カルボン酸、エポキシド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、及びN−メチロール基と反応し得る、或いは還元されてジスルフィドとなり得るチオール基;1級又は2級アミン、アジリジン、カルボジイミド、エポキシド、水酸基、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、N−メチロール、及びチオール基と反応し得るカルボン酸;1級又は2級アミン、水酸、N−メチロール、及びチオール基と反応し得るカルボン酸ハロゲン化物又は酸無水物;水の存在下で互いに反応し得るシロキサン等のケイ素含有基(silicon based groups);1級又は2級アミン又はヒドラジンと反応し得るアルデヒド又はケトン基、又は、1級又は2級アミン又はフリーラジカルと反応し得るビニル基が挙げられる。
【0050】
架橋結合に使用し得る非共有結合の例としては、カルシウム、マグネシウム、又はアルミニウム等の2価又は3価の金属イオンとカルボン酸基との使用;銅、銀、ニッケル、又は鉄等の遷移金属と適切なリガンドとの使用;又は、ホウ酸と水酸基との結合やビグアニジンとカルボン酸との結合等の強い水素結合、又はタンパク質間に生じるような多重水素結合が挙げられる。
【0051】
反応によっては、触媒を使用することにより、架橋が生じる速度を向上させることができる。使用可能な触媒の例としては、アミンとカルボン酸との反応促進のためのN−ヒドロキシスクシンイミドの使用、水酸基とカルボン酸との反応促進のためのカルボジイミドの使用、エポキシドの反応促進のための酸条件の使用、又は、イソシアネートの反応促進のための3級アミンの使用が挙げられる。以上に挙げた例は、ポリマー分散剤を架橋するために使用される化学作用に関して、本発明の範囲を限定するものではない。唯一の条件は、架橋結合反応に関与する官能基が、分散液の液体連続相に可溶性のポリマーセグメントに存在するという点である。
【0052】
液体連続相に可溶性のポリマー分散剤のセグメントに存在する架橋結合官能基は、カルボン酸であることが好ましく、それらは2以上のアジリジン官能基を有する架橋結合物質によって架橋されることが好ましい。
【実施例】
【0053】
本発明について、以下の非限定的な実施例により説明する。以下の実施例は、農薬の水中分散液の調製に好適な、両親媒性ポリマー分散剤の調製について例示するものである。この両親媒性ポリマー分散剤は、水溶性ポリマーセグメント中に存在する官能基を介して架橋されていてもよい。
【0054】
使用した原料と、表に示す略称は、以下の通りである。n−ブチルアクリレート[BA](Sigma-Aldrich社製);2,3−ジヒドロキシプロピル メタクリレート[DHPMA](Rohm GMBH社製);2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート[DMAEMA](Sigma-Aldrich社製);メタクリル酸[MAA](Sigma-Aldrich社製); メチルアクリレート[MA](Sigma-Aldrich社製); メチルメタクリレート[MMA](Sigma-Aldrich社製);N−ヒドロキシスクシンイミドメタクリレート[NHSMA](Angew. Chem. Int. Ed. 1972, 11, 1103 に記載の Batz et al. の方法に従い調製);モノ−メトキシポリ(エチレングリコール)モノ−メタクリレート(分子量約1000g/モル[PEGMA1]又は2000g/モル[PEGMA2]、それぞれ商品名BISOMER(登録商標)S10W及びS20W(英国Degussa社製)、凍結乾燥により水を除去)。特に別記しない限り、分量は全て重量部で示す。
【0055】
実施例A1−A22
これらのポリマー分散剤は、Haddleton et al.(Macromolecules, 1997, 30, 2190-2193)の方法に従い、原子移動ラジカル重合によって調製した。個々のポリマーセグメントは逐次(コ)モノマー付加によって構成した。使用した(コ)モノマーのバッチの組成を下記表1に示す。
【0056】
原子移動ラジカル重合の開始剤は、最初のバッチの一部として加えた。これを表1に示す。使用した開始剤は、エチル−2−ブロモ−イソ−ブチレート[E2BiB](Sigma-Aldrich社製)、Jankova et al.(Macromolecules, 1998, 31, 538-541)の方法に従い調製された、分子量約2000g/モルのポリ(エチレングリコール)由来マクロ開始剤[PEG−Br]、又はビス−フェノール由来ジブロミド[BPDB]の何れかである。これらの製造手順を以下に記す。
【0057】
4,4’−イソプロピリデンジフェニルビス−2−ブロモ−2−メチルプロピオネートの調製
【0058】
1部の4,4’−イソプロピリデンジフェノールを8.7部のトルエン中に含むスラリーに対し、乾燥窒素ガスを1時間吹き付けて脱酸素した。1.06部のトリエチルアミンをスラリーに加えたところ、透明な溶液を得た。この反応混合物を0℃に冷却した後、2.4部の2−ブロモイソブチリルブロミドを滴下により90分かけて加え、続いて反応混合物を攪拌しながら20℃で24時間放置した。生じた沈殿を濾過によって除去し、残る明るい茶色の溶液を真空下で濃縮し、茶色個体を得た。これをメタノールで再結晶化し、白色の薄片状の生成物を得た。
【0059】
重合の完了後、本技術分野の常法によってポリマーを単離した。A1−A15については、活性化した塩基性アルミナのカラムに溶液を通過させて銅塩を除去し、石油エーテル(60−80℃)中で沈殿させて単離した。A16−A18については、ポリマー溶液を含水水酸化アンモニウム(NHSMAモノマーに対して1.2モル等量)で処理してカルボン酸基を脱保護し、アセトン中−79℃で沈殿させることによりポリマーを単離した。A19−A22については、活性化した塩基性アルミナのカラムにポリマー溶液を通過させて銅塩を除去し、溶媒を真空下で除去した。続いて、ポリマーを水にpH10(NaOHを添加)で溶解させ、20℃で24時間攪拌し、カルボン酸基を脱保護した。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例A23−30
これらのポリマー分散剤は、まず、触媒による連鎖移動重合によってマクロモノマー「アーム」セグメントを調製し、次に、これをモノマーと共重合あっせて「骨格」セグメントを形成することにより調製した。連鎖移動触媒としては、Haddleton et al.によりJournal of Polymer Science Part A - Polymer Chemistry 2001, 39(14), 2378に記載された、ビス(メタノール)−ビス(ジメチルグリオキシメート−ジフルオロボロン)コバルト(II)[CoBF]を用いた。重合開始剤としては、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル[V−65]、アゾビス(2−イソプロピル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールジヒドロクロリド)[VA−044]、及びジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)[V601](何れもWako GMBH(ノイス、DE)社製)を使用した。
【0062】
実施例 A23
熱電対、還流冷却器、天井型攪拌器、及び、反応の過程を通じて不活性雰囲気を維持するための窒素取込口を備えたジャケット付反応器にポーション1を入れ、窒素ガスを1時間吹き付けて脱酸素した後、還流温度(92℃)に加熱した。予め脱酸素されたポーション2を反応器に加え、ポーション2の入っていた容器を脱酸素されたポーション3で濯ぎ、これも反応器に加えた。反応混合物を還流温度に維持しながら、脱酸素されたポーション4及び5を、2台の流量制御ポンプを用いて同時に反応器に加えた。ポーション4の最初の52.9%は90分かけて加え、残りの47.1%は240分かけて加えた。ポーション5については、最初の67.5%は120分かけて加え、残りの32.5%は120分かけて加えた。ポーション4及び5の全量を加えた後、反応混合物を還流温度に更に45分維持してから、環境温度に冷却した。溶媒を真空下で除去し、黄色/橙色の粘性の油状生成物を得た。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例A24
熱電対、還流冷却器、天井型攪拌器、及び、反応の過程を通じて不活性雰囲気を維持するための窒素取込口を備えたジャケット付反応器にポーション1を入れ、窒素ガスを2時間吹き付けて脱酸素した後、55℃に加熱した。ポーション2を加え、得られた水溶液に予め脱酸素されたポーション3を、流量制御ポンプを用いて流速8.5ml/分で、53分かけて供給した。反応を55℃で更に2時間維持した後、溶媒を真空下で除去し、白色の固体状の生成物を得た。
【0065】
【表3】

【0066】
実施例A25
熱電対、還流冷却器、天井型攪拌器、及び、反応の過程を通じて不活性雰囲気を維持するための窒素取込口を備えたジャケット付反応器にポーション1を入れ、窒素ガスを1時間吹き付けて脱酸素した後、還流温度(87℃)に加熱した。予め脱酸素されたポーション2を反応器に加え、ポーション2の入っていた容器を脱酸素されたポーション3で濯ぎ、これも反応器に加えた。反応混合物を還流温度に維持しながら、脱酸素されたポーション4及び5を、2台の流量制御ポンプを用いて同時に反応器に加えた。ポーション4の最初の54.8%は90分かけて加え、残りの45.2%は240分かけて加えた。ポーション5については、最初の67%は120分かけて加え、残りの33%は120分かけて加えた。ポーション4及び5の全量を加えた後、反応混合物を還流温度に更に45分維持してから、環境温度に冷却した。溶媒を真空下で除去し、白色の固体状の生成物を得た。
【0067】
【表4】

【0068】
実施例A26−A30
実施例A23−A25において触媒による連鎖移動重合により調製したマクロモノマーを用いた櫛型ポリマー分散剤の調製を表2に示す。何れの調製でも、窒素取込口、ゴム隔膜、及びマグネチック攪拌バーを設けた密閉試験管内で、開始剤、モノマー、及びマクロモノマーを溶媒に溶解させた。窒素ガスを針から30分吹き付けて、溶液を脱酸素した。続いて、溶液を70℃に72時間加熱した。A26−A28については、溶媒を真空下で除去することによりポリマーを単離した。A29及びA30については、ジクロロメタン中で沈殿させることによりポリマーを単離した。
【0069】
【表5】

【0070】
実施例B1−B27
表3中の実施例は、農薬活性成分の水性懸濁液の調製における、両親媒性ポリマー分散剤の使用について例示するものである。
【0071】
分散液の調製は、1部のポリマー分散剤[上述の実施例A1−A30の何れかで調製されたもの]と、0.1部の非イオン性湿潤剤(Uniqema Ltd社製SYNPERONIC(登録商標)A7)とを、48.9部の脱イオン水に入れ、更に50部のクロロタロニル(2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ベンゼンジカルボニトリル)を加えることにより行なった。ジルコニア製粉ビーズを加え、分散液を機械により30分揺動した。各分散液の評価は、Malvern Instruments社製Mastersizer(登録商標)2000レーザー光散乱装置による粒子サイズの測定、外観の観察、及び、光学顕微鏡を用いた綿状沈殿の検査により行なった。各サンプルの体積中央サイズを以下の表3に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
実施例C1−C14
これらの実施例は、[連続相に可溶性のポリマーセグメント中に存在する反応性部位を介して]架橋結合されたポリマー分散剤によって、架橋結合を有さない同一のポリマー分散剤を用いた場合と比べて、固体粒子の表面から分散剤が転位し難くなり、より安定な分散液が得られることを示すものである。
【0074】
架橋結合化合物の溶液を実施例B由来の分散液に加えた。C1については、ビス−(ヨードエトキシ)エタン[BIEE](Sigma Aldrich社製)のアセトン(1部に対し9部)溶液1部を、分散液9部にpH9で加え、C2−C14については、三官能性アジリジン架橋剤の水(1部に対し9部)溶液1部を、分散液9部にpH7で加えた。使用した三官能性アジリジンは、CX-100(NeoResins(ヴァールヴァイク、NL)社製)及びXAMA-2(Flevo Chemie(ハルダーヴァイク、NL)社製)であった。次いで、分散液を回転床(roller-bed)によって20℃で16時間攪拌してから、脱イオン水(分散液1部に対し水9部)で希釈し、アセトンを加えて安定化ポリマーの脱着を行なった。表4は、2種の分散液に同量のアセトンを加えた試験を比較したものである。即ち、一方は上述したように架橋剤を加えた分散液、そして他方は架橋剤を加えなかった分散液である。
【0075】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子又は液滴の不連続相を液体連続相中に含んでなる分散液であって、
前記連続相に可溶性のセグメント、及び、前記連続相に不溶性のセグメントを含んでなる、ポリマー分散剤と、
前記不連続相の前記固体粒子又は液滴の周囲に、前記ポリマー分散剤の架橋結合によって形成されるネットワークとを更に含んでなり、
前記架橋結合が、前記連続相に可溶性の前記セグメント間に存在する、分散液。
【請求項2】
前記ポリマー分散剤が、前記連続相に可溶性の第2のセグメントを有し、当該第2の可溶性セグメントが、請求項1の可溶性セグメントとは化学的に異なるものである、請求項1記載の分散液。
【請求項3】
前記連続相が水性(aqueous-based)である請求項1又は請求項2に記載の分散液。
【請求項4】
前記分散液が農薬分散液である、請求項1、2、又は3に記載の分散液。
【請求項5】
前記不連続相が、農薬を含んでなる固体粒子である、請求項4に記載の分散液。
【請求項6】
前記不連続相が、農薬を含んでなる液滴である、請求項4に記載の分散液。

【公開番号】特開2013−67628(P2013−67628A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−247523(P2012−247523)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2008−501396(P2008−501396)の分割
【原出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】