説明

製品パネルの連続製造方法、検出システム及び検出方法

【課題】 貼合精度が高い製品パネルを連続的に製造することができる製品パネルの連続製造方法を提供する。
【解決手段】 本方法は、シート状偏光フィルムのフィルム前端部を矩形パネルとの貼合位置に近づけてフィルム前端部を検出し、検出されたフィルム前端部の位置の情報に基づいてシート状偏光フィルムと矩形パネルとを位置合せし、シート状偏光フィルムと矩形パネルとを貼り合せることを含む。フィルム前端部を検出するために、シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光をフィルム前端部に向かって照射し、光が照射された領域を撮像して画像を取得し、フィルム前端部の像と該フィルム前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいてフィルム前端部を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼合位置に連続的に送られてくる矩形パネルにシート状偏光フィルムを順に貼り合わせる製品パネルの連続製造方法に関する。特に、本発明は、シート状偏光フィルムと矩形パネルとを貼り合わせる際の位置合わせの基準となるシート状偏光フィルムの前端部の検出を容易にした製品パネルの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示パネル等の製品パネルの製造においては、製品パネルの製造工程の外で連続ウェブ状偏光フィルムから予め切り出されたシート状偏光フィルムが、製品パネルの製造工程に持ち込まれ、製品パネルの製造工程に別途持ち込まれた矩形パネルと貼り合わされる。
【0003】
こうした製造方法に対して、連続ウェブ状セパレータフィルムに粘着層を介して積層された複数のシート状偏光フィルムのうち、欠点の存在しない正常なシートのみを、粘着層と共に連続ウェブ状セパレータフィルムから順次剥離し、粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する装置及び方法が提案されている。こうした製品パネルの連続製造装置及び方法は、例えば特許文献1(特許第4377964号)に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の製品パネルの連続製造においては、連続ウェブ状セパレータフィルムと連続ウェブ状偏光フィルムとが積層された積層体のロールが用いられる。このロールから繰り出された積層体の連続ウェブ状偏光フィルムに、予め行われた欠点検査の結果に基づいて決定された位置に横方向の切込線が入れられることによって、連続ウェブ状セパレータフィルム上にシート状偏光フィルムが形成される。切込線は、積層体のロールに予め入れられていてもよい。シート状偏光フィルムは、連続ウェブ状セパレータフィルムによって矩形パネルとの貼合位置の近くまで搬送される(このように、連続ウェブ状セパレータフィルムは、シート状偏光フィルムを搬送するキャリアとしての機能を持つことから、以下「連続ウェブ状キャリアフィルム」という)。本明細書においては、「貼合位置」は、シート状偏光フィルムのフィルム前端部と矩形パネルのパネル前端部との貼り合わせが開始される位置である。一方で、矩形パネルも貼合位置の近くまで搬送される。貼合位置の近くまで搬送されたシート状偏光フィルムが、正常な(すなわち欠点のない)シート状偏光フィルムである場合には、その位置の情報に基づいて、矩形パネルの位置が補正される。正常なシート状偏光フィルムは、剥離手段によって連続ウェブ状キャリアフィルムから剥離される。シート状偏光フィルムは剥離されながら貼合位置まで搬送され、貼合ローラ等の貼合手段を用いて矩形パネルと貼り合わされる。正常なシート状偏光フィルムの位置の情報に基づいて矩形パネルの位置を補正することを、シート状偏光フィルムと矩形パネルとの「位置合わせ」という。
【0005】
正常なシート状偏光フィルムと矩形パネルとの位置合わせは、概略以下のように行われる。まず、貼り合わされることになるシート状偏光フィルムのフィルム前端部(すなわち、横方向の切込線が入れられた部分)が剥離手段上に到達したときに、シート状偏光フィルムの面に略垂直な方向に配置された光源からフィルム前端部に光が照射され、照射された部分が例えばCCDカメラ等の画像取得手段によって撮像される。フィルム前端部には、室内光又は自然光が照射されるようにしてもよい。次に、撮像された画像内においてフィルム前端部が検出され、その位置が計算される。検出された前端部の位置の情報に基づいて、矩形パネルの搬送方向及び横断方向の位置、並びに、中心線又は横方向端部と搬送方向との間の角度が補正される。
【0006】
一方、近年、液晶表示パネル等の製品パネルは、小型化、薄型化及び軽量化が進んでおり、それに伴って表示領域周辺の狭小化、すなわち狭額縁化が進んでいる。狭額縁化を実現するために、矩形パネルと偏光フィルムとの貼合精度は、より高いものが求められている。
【0007】
ところが、従来の製品パネルの連続製造装置及び方法においては、今後ますます要求が高まることが予想される高い貼合精度が得られにくいという欠点があった。従来の製品パネルの連続製造装置及び方法においては、シート状偏光フィルムのフィルム前端部が剥離手段の上に存在するときにフィルム前端部の検出が行われ、シート状偏光フィルムが剥離手段によって連続ウェブ状キャリアフィルムから徐々に剥離されながら、フィルム前端部が貼合位置まで搬送される。一方、矩形パネルは、検出されたフィルム前端部の位置の情報に基づいて位置が補正された後、貼合位置まで搬送される。この搬送の過程で、シート状偏光フィルムの搬送量には、剥離の際にフィルムに及ぼされる力や搬送時の張力変動などに起因するばらつきが生じる。従って、フィルム前端部及びパネル前端部が貼合位置に到達したときには、シート状偏光フィルムの位置は、位置合わせによって得られた本来あるべき位置から変動が生じ、その結果、シート状偏光フィルムと矩形パネルとの貼りずれが発生することになる。現時点では、シート状偏光フィルムのこうした搬送量を正確に調整することは困難であるため、従来の製品パネルの連続製造装置及び方法では、狭額縁化に要求される高い水準の貼合精度が得られにくい。
【0008】
偏光フィルムと基板との貼り合わせの位置ずれを検出する方法については、例えば特許文献2(特開2007−212939号公報)に記載されている。しかし、特許文献2に記載の技術は、偏光フィルムが基板上に貼り合わされた後にフィルムと基板との位置ずれを検出するためのものである。偏光フィルムは約200〜300μm程度の厚みしかないため、フィルムの端部を検出しようとして光を照射したときには、特許文献2に記載の技術では、偏光フィルム及び基板と光源との位置関係にかかわらず必然的に基板の端部や回路パターン等にも光が照射され、これらの端部からの散乱光が外乱光として検出されることは避けられない。従って、フィルム端部以外の部分からの散乱光により、フィルム端部の検出が難しいことが予想される。このように、特許文献2に記載の技術は、製品パネルを連続的に製造する技術に適用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4377964号明細書
【特許文献2】特開2007−212939号公報
【特許文献3】特許第4644755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の連続製造においては、矩形パネルの位置を補正する基準となるシート状偏光フィルムのフィルム前端部の位置の情報を得るために、フィルム前端部の検出は、フィルム前端部が剥離手段の上に存在するときに行われていた。これは、剥離手段からの反射光によって、撮像された画像内においてフィルム前端部とフィルム前端部の背景すなわち剥離手段とのコントラスト差が大きくなるため、フィルム前端部が容易に検出されるからである。
【0011】
しかし、高い貼合精度を達成するためには、シート状偏光フィルムと矩形パネルとの位置合わせは、シート状偏光フィルムのフィルム前端部が貼合位置又は剥離手段から貼合位置までの間のできるだけ貼合位置に近い位置にあるときに行われることが好ましい。ところが、このような場合には、撮像された画像内におけるフィルム前端部の背景には他の部材が存在しないため、フィルム前端部と背景とのコントラスト差がなくなり、フィルム前端部の検出は極めて難しいという問題がある。フィルム前端部と背景とのコントラスト差がなくなると、フィルム前端部の検出ができなくなる恐れがある。また、フィルム前端部の検出ができたとしても、検出までに長い時間がかかる恐れがあり、その場合には、単位時間当たりの製品パネル製造数が減少し、製品パネルを連続的に製造する装置及び方法の優位性が低下することになる。
【0012】
本発明の目的は、貼合精度が高い製品パネルを連続的に製造することができる製品パネルの連続製造方法と、この方法に用いるのに適した、フィルムの端部を確実に検出するための検出システム及び検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、フィルム前端部を含むシート状偏光フィルムの一部がキャリアフィルムから剥離された後にフィルム前端部を検出する場合であっても、フィルム前端部を光らせることによって検出が容易になるという知見に基づいてなされたものである。
【0014】
第1の態様においては、本発明は、連続ウェブ状キャリアフィルムの一方の面に粘着層を介して積層された複数のシート状偏光フィルムを粘着層と共に連続ウェブ状キャリアフィルムから順次剥離し、貼合位置において粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する方法を提供する。本方法は、連続ウェブ状キャリアフィルムからシート状偏光フィルムの一部を剥離し、シート状偏光フィルムのフィルム前端部を矩形パネルとの貼合位置に近づけるステップと、フィルム前端部を検出するステップと、検出されたフィルム前端部の位置の情報に基づいてシート状偏光フィルムと矩形パネルとを位置合せするステップと、シート状偏光フィルムと矩形パネルとを貼り合せるステップと、を含む。フィルム前端部を検出するステップは、シート状偏光フィルムの粘着層とは反対の面の側において、シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、シート状偏光フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光をフィルム前端部に向かって照射するステップと、シート状偏光フィルムの光が照射された領域を撮像して、画像を取得するステップと、画像内に現れるフィルム前端部の像と該フィルム前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいて、フィルム前端部を識別するステップと、を含む。
【0015】
矩形パネルは、シート状偏光フィルムと矩形パネルとを位置合せするステップの後に貼合位置に搬送されても、シート状偏光フィルムと矩形パネルとを位置合せするステップの際に貼合位置に搬送されてもよい。
【0016】
本方法においては、光をフィルム前端部に向かって照射するステップにおいて、シート状偏光フィルムの送り方向に対して45°より小さい角度をなす光軸を持つ光をフィルム前端部に向かって照射することが好ましい。また、本方法においては、シート状偏光フィルムの粘着層とは反対の面の側から、光が照射された領域を撮像することが好ましい。
【0017】
フィルム前端部を識別するステップは、画像をシート状偏光フィルムの送り方向下流側に相当する方向から上流側に相当する方向に走査し、画像内の明部をフィルム前端部として識別することを含むことが好ましい。
【0018】
第2の態様においては、本発明は、貼合位置において粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する装置において用いられる、貼り合わせ前に剥離されたシート状偏光フィルムのフィルム前端部を検出するための検出システムを提供する。本システムは、シート状偏光フィルムの粘着層とは反対の面の側において、シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、シート状偏光フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光をフィルム前端部に向かって照射する、少なくとも1つの光源と、シート状偏光フィルムの光が照射された領域を撮像して画像を取得する少なくとも1つの画像取得手段と、画像内に現れるフィルム前端部の像と該前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいてフィルム前端部を識別するフィルム前端部識別手段と、を有する。
【0019】
本システムにおいては、光軸とシート状偏光フィルムの送り方向とは、45°より小さい角度をなすことが好ましい。また、本システムにおいては、画像取得手段は、シート状偏光フィルムの粘着層とは反対の面の側から、光が照射された領域を撮像することが好ましい。フィルム前端部識別手段は、画像をシート状偏光フィルムの送り方向下流側に相当する方向から上流側に相当する方向に走査し、画像内の明部をフィルム前端部として識別することが好ましい。
【0020】
第3の態様においては、本発明は、貼合位置において粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する装置において用いられる、貼り合わせ前に剥離されたシート状偏光フィルムのフィルム前端部を検出するための検出方法を提供する。本方法は、シート状偏光フィルムの粘着層とは反対の面の側において、シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、シート状偏光フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光をフィルム前端部に向かって照射するステップと、シート状偏光フィルムの光が照射された領域を撮像して画像を取得するステップと、画像内に現れるフィルム前端部の像と該前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいてフィルム前端部を識別するステップと、を含む。
【0021】
本方法においては、光をフィルム前端部に向かって照射するステップにおいて、シート状偏光フィルムの送り方向に対して45°より小さい角度をなす光軸を持つ光をフィルム前端部に向かって照射することが好ましい。また、本方法においては、シート状偏光フィルムの粘着層とは反対の面の側から光が照射された領域を撮像することが好ましい。フィルム前端部識別ステップは、画像をシート状偏光フィルムの送り方向下流側に相当する方向から上流側に相当する方向に走査し、画像内の明部をフィルム前端部として識別することを含むことが好ましい。
【0022】
本発明によれば、シート状偏光フィルムの一部が剥離手段によってキャリアフィルムから剥離され、フィルム前端部が貼合位置又は剥離手段と貼合位置との間の位置にあるときであっても、フィルム前端部の検出が容易になる。したがって、フィルム前端部の検出に要する時間を短くすることができ、単位時間当たりの製品パネル製造数を増大させることができる。また、フィルム前端部の検出が貼合位置又は貼合位置により近い位置で行われることにより、シート状偏光フィルムと矩形パネルとの位置合わせ後にシート状偏光フィルムが移動する必要が無くなるか又はその移動距離が短くなるため、貼り合わせの精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる製品パネル連続製造装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる製品パネル連続製造のための工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる、連続ウェブ状キャリアフィルム上にシート状偏光フィルムが形成されている状態を示す図である。
【図4】剥離手段上でフィルム前端部を検出するための従来の構成を示す概略図である。
【図5】図4に示される構成を用いて取得された画像の一例を示す写真である。
【図6】図4に示される構成を用いて、剥離手段より貼合位置に近い場所でフィルム前端部を検出しようとした場合の画像の一例を示す写真である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる、剥離手段より貼合位置に近い場所でフィルム前端部を検出するための構成を示す概略図である。
【図8A】光源の光軸とシート状偏光フィルムの送り方向とのなす角度を20°とした場合における、フィルム前端部を含むシート状偏光フィルムの一部の画像を示す写真である。
【図8B】光源の光軸とシート状偏光フィルムの送り方向とのなす角度を75°とした場合における、フィルム前端部を含むシート状偏光フィルムの一部の画像を示す写真である。
【図8C】光源の光軸とシート状偏光フィルムの送り方向とのなす角度を90°とした場合における、フィルム前端部を含むシート状偏光フィルムの一部の画像を示す写真である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる、フィルム前端部の検出からフィルム前端部を貼り合わせ基準位置に位置合わせするまでの処理を示すフロー図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかるフィルム前端部の検出方法を用いてフィルム前端部の位置を検出した場合における貼合精度の改善効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<本発明に係る製品パネルの連続製造装置及び方法の概要>
以下に、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る製品パネルの連続製造方法を実現するための装置を示す概略図であり、図2は、本発明に係る連続製造方法の工程フロー図である。図1に示される連続製造装置1は、図3に示されるシート状偏光フィルム10を貼合ステーションまで搬送するフィルム搬送装置100と、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとを貼り合わせる貼合装置200と、矩形パネルWを貼合位置まで搬送する矩形パネル搬送装置300と、フィルム搬送装置100、貼合装置200及び矩形パネル搬送装置300の全体の動作を制御する制御装置400とを含む。貼合ステーションに搬送されたシート状偏光フィルム10は、貼合位置において矩形パネルWに貼り合わされ、製造された製品パネルは、製品パネル搬送装置350によって連続製造装置1から搬出される。
【0025】
図1及び図2にしたがって、連続製造装置1の装置及び動作の概要を説明する。なお、本装置について、貼合ステーションにおいてシート状偏光フィルム10のフィルム前端部を検出するための構成及び方法以外の詳細については、本出願人の先願に係る特許文献1に詳細に記載されており、本出願に係る連続製造方法においても特許文献1に記載の構成及び方法と同様の構成及び方法を採用することができる。連続製造装置1のフィルム搬送装置100においては、連続ウェブ状キャリアフィルム14上に粘着層12を介して連続ウェブ状偏光フィルムが積層された積層体のロールが支架装置110に装着され、支架装置110に装着された積層体のロールから積層体が繰り出される。繰り出された積層体には、例えばコード化された切断位置情報が付与されており、切断位置情報は読取装置120によって読み取られる。切断位置は、積層体のロールの製造時に行われる欠点検査の結果に基づいて予め決定され、決定された切断位置は、切断位置情報としてコード化されて積層体に付与されていることが好ましい。次に、積層体は切断ステーションに搬送され、切断装置150によって切込線16が積層体に入れられる。切込線16は、読取装置120によって読み取られた切断位置情報に基づいて、図3に示されるように、連続ウェブ状キャリアフィルム14とは反対の側から積層体の搬送方向に対して横方向に入れられる。切込線16の深さは、連続ウェブ状キャリアフィルム14と粘着層12との界面に達する深さである。
【0026】
切断後の積層体の状態は、図3に示される。切断後の積層体は、連続ウェブ状キャリアフィルム14上に、切込線16によって区画された複数のシート状偏光フィルム10が粘着層12を介して積層された構造を有する。シート状偏光フィルム10は、通常、偏光子の両面に保護フィルムが積層されたものである。シート状偏光フィルム10には、必要に応じて粘着面を有する表面保護フィルム13が積層されていてもよい。
【0027】
形成された切込線16の位置は、切断位置確認装置160によって読み取られ、その結果に基づいて切断位置や切断角度のずれが補正されることが好ましい。なお、フィルムの切断及び貼り合わせの際には、アキュームローラを含む速度調整装置140によって、フィルム搬送の速度が調整されることが好ましい。切込線16が入れられた結果、連続ウェブ状キャリアフィルム14上には、粘着層12を介して、欠点のない正常なシート状偏光フィルムと欠点のある不良なシート状偏光フィルムとが積層されている状態となる。シート状偏光フィルム10は、連続ウェブ状キャリアフィルム14によって貼合ステーション200に向けて搬送される。欠点のあるシート状偏光フィルムは、不良シート排出機構(図示せず)を用いて、貼合ステーションに到達する前に、又は貼合ステーション内で、排出されることが好ましい。
【0028】
積層体の別の形態として、連続製造装置1に装着される積層体のロールには、予め切込線16が形成されたものを用いてもよい。この場合には、連続製造装置1は、図1に示される装置から読取装置120及び切断ステーションが除かれた構造とすることができる。この形態の場合には、積層体のロールから繰り出された積層体は、図3に示される構造を有する。
【0029】
シート状偏光フィルム10のうち正常なシート状偏光フィルムは、次に、貼合装置200を用いて、矩形パネル搬送装置300によって貼合ステーションに搬送されてきた矩形パネルWと貼り合わされる。連続ウェブ状キャリアフィルム14と共に貼合ステーションに搬送されたシート状偏光フィルム10は、剥離手段201の鋭角的に形成された前端部によって連続ウェブ状キャリアフィルム14のみの進行方向をシート状偏光フィルム10の送り方向(以下、「送り方向」という)とは概ね逆の方向に反転させることにより、粘着層12と共に連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離される。剥離されたシート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aは、貼合装置200の離間した1対の貼合ローラ202の間の貼合位置、又は、剥離手段と貼合位置との間のいずれかの位置まで、搬送される。搬送されたシート状偏光フィルム10は、フィルム前端部10aの位置が検出される。検出が剥離手段201と貼合位置との間のいずれかの位置で行われた場合には、フィルム前端部10aは、検出後にさらに貼合位置まで搬送される。
【0030】
一方、矩形パネルWは、矩形パネル搬送装置300によって貼合ステーションに搬送されるが、その過程で、検出されたフィルム前端部10aの位置の情報に基づいて、その位置が補正される(すなわち、シート状偏光フィルムと矩形パネルとが「位置合わせ」される)。位置合わせ後、矩形パネルWの前端部は、貼合ローラ202の間の貼合位置に搬送される。矩形パネルWは、位置合わせの際に貼合位置まで搬送され、位置合わせが終了した時点で前端部が貼合位置に配置されているようにしてもよい。次に、貼合ローラ202が閉じ、閉じた貼合ローラ202間をシート状偏光フィルム10と矩形パネルWとが貼り合わされながら前進することによって、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの貼り合わせが完了する。シート状偏光フィルム10が剥離された連続ウェブ状キャリアフィルム14は、巻取装置170によって巻き取られる。
【0031】
<位置合わせ方法の概要>
シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとは、貼り合わせの前に位置合わせが行われる。位置合わせ方法の概要は、以下のとおりである。なお、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの位置合わせ方法の詳細については、本出願人の先願に係る特許文献3に詳細に記載されており、本出願に係る連続製造方法においても特許文献3に記載の方法と同様の方法を採用することができる。まず、フィルム前端部10aを含むシート状偏光フィルム10の一部が、剥離手段201によって連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離される。剥離後、フィルム前端部10aが貼合位置又は剥離手段201から貼合位置まで間のいずれかの位置に到達したときに、光源204からフィルム前端部10aに向かって光が照射される。光が照射されたシート状偏光フィルム10の部分又はその一部が、例えばCCDカメラ等の画像取得手段203によって撮像される。製品パネルの狭額縁化のためにより高い貼合精度が求められていることを考慮すると、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aの検出は、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aが貼合位置に到達したときに行われることがより好ましい。撮像された画像に基づいて、フィルム前端部10aが検出され、検出されたフィルム前端部10aの位置が計算される。貼合ステーションの前のいずれかの位置にシート状偏光フィルム10の側端部を撮像する画像取得手段180を設けて、撮像された画像に基づいて、シート状偏光フィルム10のフィルム側端部を検出し、フィルム側端部の位置を計算するようにしてもよい。
【0032】
画像取得手段203の画像内には、予め、フィルム基準位置、すなわち、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの位置合わせのためのフィルムの基準位置が定められている。フィルム基準位置は、シート状偏光フィルム10が本来搬送されるべき方向を表す基準線上にシート状偏光フィルム10が配置されたときにシート状偏光フィルム10を位置決めするためのものである。フィルム前端部の検出位置に到達したシート状偏光フィルム10は、計算されたフィルム前端部及び側端部の位置に基づいて、フィルム基準位置に対する角度のずれ量と、フィルム基準位置からの送り方向及び横断方向のずれ量とが、求められる。矩形パネルWについても、別途、矩形パネルWに設けられたアライメント・マークに基づいてパネル基準位置(すなわち、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの位置合わせのためのパネルの基準位置)との間のずれが計算される。矩形パネルWの位置は、求められたシート状偏光フィルム10のずれ量に基づいて補正される。
【0033】
矩形パネルWの位置が補正された後、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとは貼り合わされる。フィルム前端部10aの検出が剥離手段201と貼合位置との間のいずれかの位置で行われる実施形態の場合には、シート状偏光フィルム10は、貼合位置までさらに搬送され、貼り合わせ基準位置、すなわち、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの貼合位置における基準位置に位置合わせされる。矩形パネルWもまた、貼合位置まで搬送され、貼り合わせ基準位置に位置合わせされる。フィルム前端部10aの検出が貼合位置で行われる場合には、その位置に基づいて矩形パネルWが貼合位置まで搬送され、貼り合わせ基準位置に位置合わせされる。この場合には、フィルム基準位置と貼り合わせ基準位置とは同じ位置となる。次いで、位置合わせされたシート状偏光フィルム10と矩形パネルWは、貼合ローラ202によって貼り合わされる。
【0034】
この位置合わせ方法から、位置合わせの精度を向上させるためには、位置合わせの基準となるフィルム前端部の位置を正確に検出することが極めて重要であることが理解できる。
【0035】
<従来のフィルム前端部検出方法と貼合精度向上における問題点>
ここで、従来行われていた、剥離手段上でのフィルム前端部の検出方法について説明する。図4は、剥離手段201上でフィルム前端部10aを検出する従来の構成600の構成を示す概略図である。従来の構成600においては、連続ウェブ状キャリアフィルム14上のシート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aが剥離手段201上に来たとき(すなわち、フィルム前端部10aが連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離される前)に、フィルム前端部10aを含む所定の領域に向けて光源Lから光が照射される。光は、自然光又は室内光であってもよい。また、光は常時照射されていてもよい。従来の構成600においては、光源Lは、フィルム表面に対して略垂直な方向に配置されており、従って、光は、フィルム表面に対して略垂直な方向から照射される。光が照射された領域は、CCDカメラなどの画像取得手段203によって撮像され、撮像された領域の画像が取得される。取得された画像は、画像内の輝度に基づいて二値化される。
【0036】
図5は、こうして取得された二値化前の画像の一例を示す写真である。図5において、剥離手段先端R部は、Rに沿ってこの部分を通過する連続ウェブ状キャリアフィルム14が巻取装置170(図1)によって送り方向とは概ね反対方向に引っ張られる際に、シート状偏光フィルム10及び粘着層12が連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離されるように機能する部分である。図5から、偏光フィルム10の一部が、剥離手段先端R部の手前の剥離手段201上に存在している状態が分かる。画像内において、シート状偏光フィルム10は黒く、剥離手段201の表面は白く写るため、シート状偏光フィルム10と剥離手段201の表面とのコントラスト差が大きい。従って、この画像が二値化されたときには、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部は容易に検出することができる。
【0037】
ところが、このように剥離手段201の上でフィルム前端部10aを検出するようにした場合には、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの貼合精度が低下することになる。これは、以下の理由による。すなわち、剥離手段201上でフィルム前端部10aを検出する構成の場合には、フィルム前端部10aの検出後、検出された前端部10aの位置が算出され、その位置の情報に基づいて矩形パネルWの位置が補正される。次いで、フィルム前端部10aが連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離されて貼合位置に搬送され、それに同期して矩形パネルWも貼合位置に搬送される。剥離手段201の前端部から貼合位置までの距離は、通常約10mm〜約50mmであるが、シート状偏光フィルム10がこの距離を搬送される過程で、剥離の際の力や搬送時の張力変動などによって搬送量にばらつきが生じる。従って、フィルム前端部10a及びパネル前端部Waが貼合位置に到達したときに、シート状偏光フィルム10の位置は、位置合わせによって得られた本来貼り合わせが開始されるべき位置から変位し、その結果、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの貼りずれが発生することになる。現時点では、この搬送量のばらつきを正確に調整することは困難であるため、従来の製品パネルの連続製造装置及び方法では、狭額縁化に要求される高い水準の貼合精度が得られにくい。
【0038】
従って、貼合精度を向上させるためには、フィルム前端部10aが剥離手段201によって連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離された後、貼合位置又は貼合位置にできるだけ近い位置に到達したときに、フィルム前端部10aの検出が行われることが好ましい。しかし、従来の構成では、フィルム前端部10aが剥離手段201と貼合位置との間にあるときには、図6に示されるように、撮像領域においてシート状偏光フィルム10の背景には他の部材が存在しないため、フィルム前端部10aと背景とが区別できず、フィルム前端部10aを検出することが極めて難しいという問題がある。
【0039】
<本発明に係るフィルム前端部検出のための構成及び検出の方法>
本発明においては、図7に示される構成700を採用することにより、貼合位置又は剥離手段201と貼合位置との間でシート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aを容易に検出することができる。図7(a)は、本発明に係る連続製造方法及びフィルム前端部検出方法を実現するための構成700における各部材の位置関係を模式的に表す斜視図であり、図7(b)は、構成700を送り方向に対して横方向から見た模式図である。また図9は、フィルム前端部10aの検出から、フィルム前端部10aを貼り合わせ基準位置に位置合わせするまでの処理フローを示す。
【0040】
構成700において、シート状偏光フィルム10は、剥離手段201によって連続ウェブ状キャリアフィルム14から剥離された後、貼合位置又は剥離手段201と貼合位置との間のいずれかの位置まで搬送され、そこでフィルム前端部10aが検出される。フィルム前端部10aが、検出位置、すなわち貼合位置又は剥離手段201と貼合位置との間のいずれかの位置に到達すると、光源204からフィルム前端部10aに向けて光が照射される。フィルム前端部10aの検出位置を貼合位置とするか、又は剥離手段と貼合位置との間のいずれかの位置とするかについては、製品パネルに要求される貼合精度に応じて、連続製造装置1の運転開始前に事前に設定される。
【0041】
図7(b)に示されるように、光源204は、シート状偏光フィルム10の連続ウェブ状キャリアフィルム14とは反対側の面において、シート状偏光フィルム10の送り方向に対して貼合位置より上流側に配置され、より好ましくは、剥離手段201の前端部より上流側に配置される。また、光源204から照射される光の光軸と、シート状偏光フィルム10の表面(すなわち、フィルムの送り方向)との間の角度θは、鋭角に設定される。角度θは、45°より小さい角度であることがより好ましい。
【0042】
本発明は、シート状偏光フィルム10の送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光源204からの光がシート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aに照射されると、フィルム前端部10aにおいて光が散乱する現象を利用している。この散乱光は、画像取得手段203によって撮影された画像内において他の部分と比べて強い光として捉えられるため、前端部10aの検出が容易になる。この散乱光は、切込線16を形成する際にウェブ状偏光フィルム10に生じた切断部分のバリや荒れによって、光源204からの光がフィルム前端部10aにおいて乱反射すること、及び、光源204からフィルム内部に入った光が、複数のフィルムの積層体であるシート状偏光フィルム10の内部において、例えば保護フィルムと偏光子との界面などで反射しながらフィルム前端部10aに向かい、その光がフィルム前端部10aから漏れること、によって生じると考えられる。
【0043】
散乱光の強度は、光源204の光軸と送り方向とのなす角度θが小さくなるほど強くなる。本発明者らは、この現象は、以下の3つの理由によるものと考えている。1つには、角度θが小さくなるほどシート状偏光フィルム10に直接照射される光の量が少なくなるため、散乱光によって光っているフィルム前端部10aと他の部分とのコントラストが大きくなることである。次に、角度θが小さくなるにつれて、光源204からみたバリや荒れの見かけの大きさが大きくなるため、より光が散乱しやすくなることである。最後に、角度θが小さくなるにつれて、シート状偏光フィルム10の内部に入ってシート状偏光フィルム10内で内部反射する光の量が多くなり、フィルム前端部10aから漏れる光が多くなることである。
【0044】
光源204を貼合位置の下流側ではなく上流側に配置する主な理由として、以下の点が挙げられる。第一に、光源204を貼合位置の下流側に配置した場合、照射された光が貼合ロール202によって反射され、この反射光の影響により、撮像領域内におけるフィルム前端部10aと他の部分とのコントラストが低下し、前端部10aの検出が困難になる。また、照射される光の光軸とフィルムの送り方向との間の角度θは、上述のとおり小さいほど好ましいが、貼合位置の下流側には製品パネルの搬送路が存在するため、角度θは、光源204を貼合位置の上流側に配置した場合より大きくせざるを得ない。角度θを大きくすると、画像取得手段203とフィルム前端部10aとを結ぶ線と、光源204からの照射光の光軸との間の角度が小さくなるため、画像取得手段203に入射するフィルムからの反射光量が多くなり、その結果、撮像領域内におけるフィルム前端部10aのコントラストがさらに低下する。第二に、光源204を貼合位置の上流側に配置することにより、上述したようなシート状偏光フィルム10内部における反射光のフィルム前端部10aからの漏れによって、フィルム前端部10aによる散乱光がより強くなる。
【0045】
図8A〜図8Cは、角度θが小さいほど、撮像領域内において捉えられるフィルム前端部からの散乱光と周囲の部分とのコントラストが大きくなることを示すための実験によって得られた写真である。これらの写真は、フィルム前端部と光源との距離を500mm、シート状偏光フィルムの面と光源の光軸との角度を20°(図8A)、75°(図8B)及び90°(図8C)とし、光源からフィルム前端部に向かって50cdの光を照射して、フィルム面に対して垂直な方向に設置したカメラによってフィルム前端部を含むフィルムの一部を撮影したものである。図8A〜図8Cから、角度θが小さくなるほど、フィルム前端部の輝度が増し、フィルム前端部と周囲とのコントラストが大きくなることが分かる。図8Aに示される角度20°の場合には、フィルム前端部のみが光っていることが分かる。
【0046】
光源204の種類は、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aに対して照射された光によって画像取得手段203がフィルム前端部10aを撮像できる限り特に限定されるものではなく、LED光源、白熱電球光源、HID光源などの任意の光源を用いることができる。光源204の数は特に限定されるものではないが、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部の2つの角部を照射できるように、少なくとも2つの光源204が配置されることが好ましい。
【0047】
画像取得手段203は、特に限定されるものではなく、CCDカメラなどの汎用の撮像装置を用いることができる。画像取得手段203は、シート状偏光フィルム10の連続ウェブ状キャリアフィルム14とは反対の面の側に配置され、好ましくは、送り方向に対して略垂直な方向から、光が照射された領域を撮像する。画像取得手段203の数は、限定されるものではないが、光源204の数と同じであることが好ましく、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部の2つの角部を撮像できるように、少なくとも2つの画像取得手段203が配置されることが好ましい。
【0048】
画像取得手段203によって取得された画像は、フィルム前端部識別手段205に出力され、画像の解析が行われる。フィルム前端部識別手段205は、情報処理装置401内に設けられることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば画像取得手段203と共に1つの装置内に設けてもよい。フィルム前端部識別手段205は、取得された画像を白と黒のみを用いた二値化画像に変換する画像解析方法を用いるが、画像解析方法はこれに限定されるものではなく、画像内の明部と暗部とを精度よく識別できる方法であればよい。二値化は、画像内の各々のピクセルの明るさを求め、その明るさがある一定の閾値より大きければそのピクセルを白とし、小さければ黒とすることによって、行われる。従って、本発明においては、取得された画像内において、フィルム前端部10aが白色として表現されることになる。
【0049】
本発明においては、フィルム前端部10aの検出が、貼合位置で行われる場合であっても、剥離手段201から貼合位置までの間で行われる場合であっても、矩形パネルWは、少なくともフィルム前端部10aの検出が終了するまで所定の位置に待機しているように設定される。貼合精度の向上の観点から、シート状偏光フィルム10も矩形パネルWも、貼り合わせ開始までの搬送停止の回数が少なく、位置合わせの位置から貼合位置までの搬送距離ができるだけ短いことが好ましい。従って、矩形パネルWは、その前端部が貼合位置にできるだけ近い位置で待機することが好ましい。一方で、矩形パネルWの前端部の位置が貼合位置に近づくほど、フィルム前端部10aと矩形パネルWの前端部とが近接し、最悪の場合には、フィルム前端部10aと矩形パネルWの前端部とが接触することもあり得る。
【0050】
従って、本発明においては、矩形パネルWは、フィルム前端部10aの検出が終了するまで、矩形パネルWの前端部が、フィルム前端部10aの検出のために搬送が停止したシート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aにできるだけ近く、かつ、フィルム前端部10aと矩形パネルWの前端部とが接触しない、位置に待機する。矩形パネルWは、図7(b)に示されるように構成700を横方向から見たときに、矩形パネルWの前端部と剥離手段201の前端部とを結ぶ直線が矩形パネルWの表面に対して垂直になる位置より上流側で待機することが好ましく、矩形パネルWの前端部と剥離手段201の前端部とを結ぶ直線が矩形パネルWの表面に対して垂直になる位置で待機することがより好ましい。
【0051】
矩形パネルWの位置は、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aの検出が開始するときと終了するときとで異なっていても良い。この場合には、矩形パネルWは、フィルム前端部10aの検出中に搬送され、検出終了時点で、矩形パネルWの前端部と剥離手段201の前端部とを結ぶ直線が矩形パネルWの表面に対して垂直になる位置に待機していることになる。
【0052】
次に、図9を用いて、フィルム前端部10aの検出から、フィルム前端部10aの貼り合わせ基準位置への位置合わせ完了までの処理を説明する。まず、シート状偏光フィルム10のフィルム前端部10aが検出位置の近くに到達すると、シート状偏光フィルム10の搬送が一旦停止され、光源204からフィルム前端部10aに向けて光が照射される(図9のs1)。光は、光源204から常時、検出位置に向けて照射されていてもよい。次いで、フィルム前端部10aが撮像範囲に入るように、シート状偏光フィルム10を前進させる(図9のs2)。これは、当該シート状偏光フィルム10の前のシート状偏光フィルム10と矩形パネルWとが貼り合わされた後、当該シート状偏光フィルム10の計算上のフィルム前端部の位置からフィルム基準位置までの距離を算出し、その分だけシート状偏光フィルム10を前進させることによって行われる。
【0053】
次に、画像取得手段203によって、フィルム前端部10aを含むシート状偏光フィルム10の一部が撮像される(図9のs3)。撮像範囲の大きさ及び位置は特に限定されるものではなく、フィルム前端部10aの検出に必要な大きさ及び位置であればよい。撮像位置は、フィルム前端部10aの2つの角部とすることが好ましい。撮像範囲の大きさは、シート状偏光フィルム10を撮像範囲に捉えるための時間と精度とを考慮して適宜決定される。撮像された画像は、フィルム前端部識別手段205に出力される。
【0054】
フィルム前端部識別手段205は、受け取った画像からフィルム前端部10aを検出する(図9のs4)。まず、フィルム前端部識別手段205は、画像を受け取った取得した画像を白と黒のみを用いた二値化画像に変換する。二値化は、画像内の各々のピクセルの明るさを求め、その明るさが、適宜設定される一定の閾値より大きければそのピクセルを白とし、小さければ黒とすることによって、行われる。フィルム前端部識別手段205は、二値化された画像内を走査し、明部として捉えられる直線をフィルム前端部10として認識する。本発明の一実施形態においては、二値化された画像内において、シート状偏光フィルム10の送り方向下流側から上流側に向かって走査することが好ましい。これは、画像内においてシート状偏光フィルム10の送り方向下流側には背景に部材が存在しないので下流側は確実に他の部分より暗く、より暗い部分から走査を開始することによって、明部すなわちフィルム前端部をより確実に検出するためである。
【0055】
画像内においてフィルム前端部10aが検出されると、フィルム前端部10aの位置が求められる(図9のs5)。フィルム前端部10aの位置は、上述されたように画像取得手段203によって撮像された画像内において直線上の明部として捉えられたフィルム前端部10aの位置と、画像内に予め設定されたフィルム基準位置との距離を算出することによって求められる。
【0056】
フィルム前端部10aの位置が計算されると、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの位置合わせが貼合位置より前で行われる場合には、予め設定された貼り合わせ基準位置と、検出されたフィルム前端部10aの位置との差が求められ、その差分だけシート状偏光フィルム10を前進させる(図9のs6)。シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの位置合わせが貼合位置で行われる場合には、この処理は不要となる。
【0057】
図10は、本発明に係るフィルム前端部の検出方法を用いた場合における、シート状偏光フィルムと矩形パネルとの貼合精度の改善効果を示す実験結果である。図10(a)のグラフの縦軸は、矩形パネルと貼り合わされるべき設計上の位置(グラフの縦軸における「0」)からのシート状偏光フィルムのずれ量を「貼合精度」として示している。横軸は、測定したサンプルのサンプル番号である。
【0058】
図10(a)において「改善前」として示されるグラフは、剥離手段上でフィルム前端部を検出する従来の構成600(図4)を用いてフィルム前端部の位置を検出し、それに基づいて偏光フィルムと矩形パネルとを貼り合わせた場合における、各々のサンプルの貼合精度のデータを示すものである。一方、「改善後」として示されるグラフは、貼合位置においてフィルム前端部を検出する構成700を用いてフィルム前端部の位置を検出し、それに基づいて偏光フィルムと矩形パネルとを貼り合わせた場合における、各々のサンプルの貼合精度のデータを示すものである。図10(a)のグラフにおける凡例3、4、7、8は、図10(b)に示されるようにシート状偏光フィルムの送り方向にみて前方の端部(3及び4の位置)及び後方の端部(8及び7の位置)における、送り方向の設計上の位置からのずれ量のデータを示す。
【0059】
図10のグラフから、剥離手段上でフィルム前端部を検出する従来の構成を用いた場合には、貼合精度は最大で±約1.0mmであったが、本発明にかかる貼合位置においてフィルム前端部を検出する構成を用いた場合には、貼合精度は±約0.5mmの範囲内に収まっていることがわかる。また、図10には、シート状偏光フィルムの送り方向にみて側方の端部(1、2、5、6の位置)における、横方向の設計上の位置からのずれ量のデータも示している。この結果から、本発明にかかる構成を用いることにより、シート状偏光フィルムの送り方向に対して横方向の貼合精度も大きく改善していることがわかる。これは以下の理由による。すなわち、シート状偏光フィルム10と矩形パネルWとの間で角度のずれが生じているときには、矩形パネルWは、シート状偏光フィルム10との位置合わせ処理において角度が補正される。このような場合には、矩形パネルWは、位置合わせ後に、例えばその長辺方向に対してある角度(補正された角度)を保ったまま搬送方向に進んで貼合位置に到達することになるため、フィルム前端部10aにおけるずれ量が大きいほど、横方向(すなわち矩形パネルWの短辺方向)のずれ量も大きくなる。したがって、フィルム前端部における貼合精度が向上してずれ量が小さくなることによって、横方向の貼合精度も向上することになる。図10における横方向の改善後として示されるグラフは、このことを表している。
【符号の説明】
【0060】
1 連続製造装置
10 シート状偏光フィルム
10a フィルム前端部
12 粘着層
13 粘着面を有する表面保護フィルム
14 連続ウェブ状キャリアフィルム
16 切込線
100 フィルム搬送装置
110 支架装置
120 読取装置
150 切断装置
160 切断位置確認装置
170 巻取装置
200 貼合装置
201 剥離手段
202 貼合ローラ
203 画像取得手段
204 光源
300 矩形パネル搬送装置
350 製品パネル搬送装置
400 制御装置
600 従来の構成
700 本発明に係る構成


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続ウェブ状キャリアフィルムの一方の面に粘着層を介して積層された複数のシート状偏光フィルムを前記粘着層と共に前記連続ウェブ状キャリアフィルムから順次剥離し、貼合位置において前記粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する方法であって、
前記連続ウェブ状キャリアフィルムから前記シート状偏光フィルムの一部を剥離し、前記シート状偏光フィルムのフィルム前端部を矩形パネルとの貼合位置に近づけるステップと、
前記シート状偏光フィルムの前記粘着層とは反対の面の側において、前記シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、前記シート状偏光フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光を前記フィルム前端部に向かって照射するステップと、
前記シート状偏光フィルムの光が照射された領域を撮像して、画像を取得するステップと、
前記画像内に現れる前記フィルム前端部の像と該フィルム前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいて、前記フィルム前端部を識別するステップと、
識別された前記フィルム前端部の位置の情報に基づいて、前記シート状偏光フィルムと前記矩形パネルとを位置合せするステップと、
前記シート状偏光フィルムと前記矩形パネルとを貼り合せるステップと、
を含むことを特徴とする製品パネルの連続製造方法。
【請求項2】
前記矩形パネルは、前記シート状偏光フィルムと前記矩形パネルとを位置合せするステップの後に前記貼合位置に搬送される
ことを特徴とする、請求項1に記載の製品パネルの連続製造方法。
【請求項3】
前記矩形パネルは、前記シート状偏光フィルムと前記矩形パネルとを位置合せするステップの際に前記貼合位置に搬送されることを特徴とする、請求項1に記載の製品パネルの連続製造方法。
【請求項4】
光を前記フィルム前端部に向かって照射するステップにおいて、前記シート状偏光フィルムの送り方向に対して45°より小さい角度をなす光軸を持つ光を前記フィルム前端部に向かって照射することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の製品パネルの連続製造方法。
【請求項5】
前記シート状偏光フィルムの前記粘着層とは反対の面の側から、光が照射された領域を撮像することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の製品パネルの連続製造方法。
【請求項6】
フィルム前端部を識別するステップは、前記画像を前記シート状偏光フィルムの送り方向下流側に相当する方向から上流側に相当する方向に走査し、前記画像内の明部を前記フィルム前端部として識別することを含むことを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の製品パネルの連続製造方法。
【請求項7】
連続ウェブ状キャリアフィルムの一方の面に粘着層を介して積層された複数のシート状偏光フィルムを前記粘着層と共に前記連続ウェブ状キャリアフィルムから順次剥離し、貼合位置において前記粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する装置において用いられる、貼り合わせ前に剥離された前記シート状偏光フィルムのフィルム前端部を検出するための検出システムであって、
前記シート状偏光フィルムの前記粘着層とは反対の面の側において、前記シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、前記シート状偏光フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光を前記フィルム前端部に向かって照射する、少なくとも1つの光源と、
前記シート状偏光フィルムの前記光が照射された領域を撮像して、画像を取得する、少なくとも1つの画像取得手段と、
前記画像内に現れる前記フィルム前端部の像と該前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいて、前記フィルム前端部を識別する、フィルム前端部識別手段と、
を有することを特徴とする検出システム。
【請求項8】
前記光軸と前記シート状偏光フィルムの送り方向とは、45°より小さい角度をなすことを特徴とする、請求項6に記載の検出システム。
【請求項9】
前記画像取得手段は、前記シート状偏光フィルムの前記粘着層とは反対の面の側から、光が照射された領域を撮像することを特徴とする、請求項6に記載の検出システム。
【請求項10】
フィルム前端部識別手段は、前記画像を前記シート状偏光フィルムの送り方向下流側に相当する方向から上流側に相当する方向に走査し、前記画像内の明部を前記フィルム前端部として識別することを特徴とする、請求項6に記載の検出システム。
【請求項11】
連続ウェブ状キャリアフィルムの一方の面に接着層を介して積層された複数のシート状偏光フィルムを前記粘着層と共に前記連続ウェブ状キャリアフィルムから順次剥離し、貼合位置において前記粘着層によって矩形パネルと貼り合わせて製品パネルを連続的に製造する装置において用いられる、貼り合わせ前に剥離された前記シート状偏光フィルムのフィルム前端部を検出するための検出方法であって、
前記シート状偏光フィルムの前記粘着層とは反対の面の側において、前記シート状偏光フィルムの送り方向の上流側から、前記シート状偏光フィルムの送り方向に対して鋭角をなす光軸を持つ光を前記フィルム前端部に向かって照射するステップと、
前記シート状偏光フィルムの前記光が照射された領域を撮像して、画像を取得するステップと、
前記画像内に現れる前記フィルム前端部の像と該前端部以外の部分の像との輝度の差に基づいて、前記前端部を識別するステップと、
を含むことを特徴とする検出方法。
【請求項12】
光を前記フィルム前端部に向かって照射するステップにおいて、前記シート状偏光フィルムの送り方向に対して45°より小さい角度をなす光軸を持つ光を前記フィルム前端部に向かって照射することを特徴とする、請求項11に記載の検出方法。
【請求項13】
前記シート状偏光フィルムの前記粘着層とは反対の面の側から、光が照射された領域を撮像することを特徴とする、請求項11に記載の検出方法。
【請求項14】
フィルム前端部識別ステップは、前記画像を前記シート状偏光フィルムの送り方向下流側に相当する方向から上流側に相当する方向に走査し、前記画像内の明部を前記フィルム前端部として識別することを含むことを特徴とする、請求項11に記載の製品パネルの連続製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公開番号】特開2013−50475(P2013−50475A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186708(P2011−186708)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【特許番号】特許第5022507号(P5022507)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】