説明

製品熱殺菌度を考慮した制御装置および方法

【課題】リアルタイムに木目細かく製品の熱殺菌度を得て、製品毎または小さな製品群毎に熱殺菌度を把握できるとともに、過殺菌或いは殺菌不足の製品が生じた場合に、大きなロット単位ではなくて対象の製品群だけを容易に見分けることができるパストライザの制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】パストライザの制御装置8は、製品搬送コンベヤ2による製品1の搬送位置情報を細分化して符号化する位置情報符号化手段3を設け、かつ、製品1の熱殺菌条件を測定する測定手段16a〜16fを設けて、位置情報符号化手段3によって検出した製品1の搬送位置情報の信号と測定手段16a〜16fによって測定した製品1の熱殺菌条件の信号を取り込み、制御プログラムで細分化した製品搬送位置毎の製品1の熱殺菌条件を積算する等により、殺菌ゾーン内を通した製品1の熱殺菌度を演算できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等を充填済の容器(以下製品と称する)を搬送中に製品を加熱または冷却処理する温度処理装置に関するもので、特に、製品を順次高温に加熱し、製品温度が設定温度に維持された後、順次常温まで冷却させるパストライザ(高温殺菌処理装置)の制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パストライザは製品を連続搬送中に、前段で昇温用温水、中段で熱殺菌用高温水、後段で冷却用温水を製品にシャワーするものが提案されている。(特許文献1)
また、パストライザで高温殺菌処理された製品が十分熱殺菌されているかどうかを判断するために、連続搬送中の製品群の中に製品とともに温水および高温水のシャワーを受けながら搬送されるトラベリングサーモメータ等を入れておいて、該トラベリングサーモメータ等に記録されているデータを分析評価する方法が提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭59−33398号公報(第1図)
【特許文献2】特開昭61−262624号公報(第1〜3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1によれば、パストライザは、前段のゾーンに昇温用温水ノズル、中段のゾーンに熱殺菌用高温水ノズル、後段のゾーンに冷却用温水ノズルを配置し、製品を連続搬送中に、温水および高温水を製品にシャワーして、前段のゾーンで製品を順次加熱し、中段のゾーンの高温水シャワー領域で所定の高温まで上げて所定時間の熱殺菌をしてから、後段のゾーンで冷却用温水のシャワーにより順次常温まで冷却するとしている。
しかしながら、前記特許文献1のパストライザでは、製品の熱殺菌までは言及されているが、製品の熱殺菌度を演算して製品の品質管理を行うパストライザの制御装置または方法の技術は開示されていない。
【0005】
また、前記特許文献2によれば、温度記憶集積カセット(トラベリングサーモメータに相当)を製品とともに連続殺菌機内で搬送させ、製品の殺菌終了後に殺菌機内から取り出して、温度記憶集積カセットに集積された温度計測値をもとに製品の温度履歴から製品の熱殺菌度を評価するとしている。
しかしながら、前記特許文献2の温度記憶集積カセットでは、製品のロット毎の熱殺菌度を評価しているので、リアルタイムに熱殺菌度を把握できず、また、過殺菌または殺菌不足となった場合等においては、対象のロットの全ての製品を排除しなければならず、大きな無駄が生じるとともに多大な手間がかかるという恐れがある。
【0006】
本発明は、製品を連続搬送中に、製品を熱殺菌処理するパストライザの制御装置および方法において、熱殺菌される製品の熱殺菌度を、製品が殺菌ゾーン内の細分化した搬送位置毎に熱水のシャワーを受けた熱殺菌時間を測定できるようにして、前記細分化した製品搬送位置毎の熱殺菌時間、前記熱水のシャワーの温度等のデータを制御装置に取り込み、制御装置でこれらのデータを基に制御プログラムにより熱殺菌度の演算をして、リアルタイムに木目細かく製品の熱殺菌度を得ることができる制御装置および方法、さらに、大きなロット毎ではなく製品毎または小さな製品群毎に熱殺菌度を把握できる制御装置および方法を提供するとともに、過殺菌或いは殺菌不足の製品が生じた場合に、過殺菌或いは殺菌不足の対象となる製品がどれであるかの信号を出力して、大きなロット単位ではなくて対象の製品群だけを容易に見分けることができる制御装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1)第1の手段のパストライザの制御装置は、製品を連続搬送中に殺菌ゾーンで熱殺菌するパストライザの制御装置において、製品搬送コンベヤによる前記製品の搬送位置情報を細分化して符号化する位置情報符号化手段を設け、かつ、前記製品の熱殺菌条件を測定する測定手段を設けて、前記位置情報符号化手段によって検出した前記製品の搬送位置情報の信号と前記測定手段によって測定した前記製品の熱殺菌条件の信号を取り込み、制御プログラムで前記細分化した製品搬送位置毎の製品の熱殺菌条件を積算する等により、前記殺菌ゾーン内を通した製品の熱殺菌度を演算できるようにしたことを特徴とする。
(2)第2の手段のパストライザの制御装置は、前記位置情報符号化手段を前記製品搬送コンベヤの駆動系統に設けたエンコーダとしたことを特徴とする。
【0008】
(3)第3の手段のパストライザの制御方法は、製品を連続搬送中に殺菌ゾーンで熱殺菌するパストライザの制御方法において、製品搬送コンベヤによる前記製品の搬送位置情報を細分化して符号化するエンコーダ等の位置情報符号化手段によって検出した前記製品の搬送位置情報の信号と、前記製品の熱殺菌条件を測定する測定手段によって測定した前記製品の熱殺菌条件の信号を取り込み、制御プログラムで前記細分化した製品搬送位置毎の製品の熱殺菌条件を積算する等により、前記殺菌ゾーン内にいた製品の熱殺菌度を演算できるようにしたことを特徴とする。
(4)第4の手段のパストライザの制御方法は、前記第3の手段のパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件を、前記細分化した製品搬送位置毎に前記製品が受ける熱殺菌時間、または、熱殺菌温度並びに熱殺菌時間としたことを特徴とする。
(5)第5の手段のパストライザの制御方法は、前記第4の手段のパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件の前記熱殺菌温度を、前記製品が熱殺菌のために受ける熱水等のシャワーの温度としたことを特徴とする。
(6)第6の手段のパストライザの制御方法は、前記第4または第5の手段のパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件に、前記細分化した製品搬送位置毎に前記製品が熱殺菌のために受ける熱水等のシャワー受けの有無および該熱水等のシャワー受けの開始時間をさらに加えることを特徴とする。
【0009】
(7)第7の手段のパストライザの制御方法は、前記第3から第6の手段のいずれか一つのパストライザの制御方法において、前記細分化した製品搬送位置毎の熱殺菌条件を基にして、殺菌ゾーンの前端から順次後端に向けて前記細分化した製品搬送位置に相当する単位毎に加算しながら積算し、前記殺菌ゾーン内を通した製品の熱殺菌度を演算できるような制御プログラムにしたことを特徴とする。
(8)第8の手段のパストライザの制御方法は、前記第7の手段のパストライザの制御方法において、前記殺菌ゾーンを前記製品の搬送方向で制御上分割して、該分割した区分の前段の区分で前記熱殺菌条件の積算等の演算により得た熱殺菌度の最終データを次の区分の先頭データとして、該次の区分での前記製品の熱殺菌度を前記熱殺菌条件の積算等の演算で得るようにし、順次これを繰り返して殺菌ゾーン内全長に亘る熱殺菌度を演算で得ることができる制御プログラムにしたことを特徴とする。
【0010】
(9)第9の手段のパストライザの制御方法は、前記第3から第8の手段のいずれか一つのパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が殺菌途上で予め設定しておいた基準値以上となった場合或いは基準値以下となった場合に、殺菌ゾーンの下流側のシャワー等の熱殺菌手段の温度の変更或いはシャワー等の熱殺菌手段の停止をさせて、適正な熱殺菌度となるように制御することを特徴とする。
(10)第10の手段のパストライザの制御方法は、前記第3から第8の手段のいずれか一つのパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が殺菌途上で予め設定しておいた基準値以上となった場合或いは基準値以下となった場合に、前記製品搬送コンベヤの搬送速度を適宜高速或いは低速に変更して、適正な熱殺菌度となるように制御することを特徴とする。
(11)第11の手段のパストライザの制御方法は、前記第3から第10の手段のいずれか一つのパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が過殺菌或いは殺菌不足となった場合に、該過殺菌或いは殺菌不足になった対象製品がどれであるかの信号を出力できるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および3に係わる本発明は、製品を連続搬送中に殺菌ゾーンで熱殺菌するパストライザの制御装置または方法において、製品搬送コンベヤによる前記製品の搬送位置情報を細分化して符号化する位置情報符号化手段を設け、かつ、前記製品の熱殺菌条件を測定する測定手段を設けて、前記位置情報符号化手段によって検出した前記製品の搬送位置情報の信号と前記測定手段によって測定した前記製品の熱殺菌条件の信号を取り込み、制御プログラムで前記細分化した製品搬送位置毎の製品の熱殺菌条件を積算する等により、前記殺菌ゾーン内にいた製品の熱殺菌度を演算できる制御装置および方法にしたことにより、製品の熱殺菌度を、大きなロット毎ではなく、リアルタイムに木目細かく把握することができるという効果を有する。
請求項2に係わる本発明は、請求項1に記載するパストライザの制御装置において、前記位置情報符号化手段を前記製品搬送コンベヤの駆動系統に設けたエンコーダとしたことにより、このエンコーダにより細分化して符号化した回転量情報の検出から製品搬送コンベヤによる製品搬送位置情報を検出できるという効果を有する。
【0012】
請求項4に係わる本発明は、請求項3に記載するパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件を、前記細分化した製品搬送位置毎に前記製品が受ける熱殺菌時間、または、熱殺菌温度並びに熱殺菌時間としたことにより、所定殺菌温度以上の熱殺菌時間を積算する等の演算をして製品の熱殺菌度を得ることができるという効果を有する。
請求項5に係わる本発明は、請求項4に記載するパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件の前記熱殺菌温度を、前記製品が熱殺菌のために受ける熱水等のシャワーの温度としたことにより、殺菌途上で製品の熱殺菌度が過殺菌或いは殺菌不足になる恐れがある場合に、シャワー温度の変更等で適正な熱殺菌度とするように対応できるという効果を有する。
請求項6に係わる本発明は、請求項4または5に記載するパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件に、前記細分化した製品搬送位置毎に前記製品が熱殺菌のために受ける熱水等のシャワー受けの有無および該熱水等のシャワー受けの開始時間をさらに加えることにより、該熱水等のシャワー受けの有無および熱水等のシャワー受けの開始時間を加味して、製品の熱殺菌度をさらに木目細かく得ることができるという効果を有する。
【0013】
請求項7に係わる本発明は、請求項3から6のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記細分化した製品搬送位置毎の熱殺菌条件を基にして、殺菌ゾーンの前端から順次後端に向けて前記細分化した製品搬送位置に相当する単位毎に加算しながら積算し、前記殺菌ゾーン内にいた製品の熱殺菌度を演算で得ることができるという効果を有する。
請求項8に係わる本発明は、請求項7に記載するパストライザの制御方法において、前記殺菌ゾーンを前記製品の搬送方向で制御上分割して、該分割した区分での熱殺菌度の演算を前段の区分から最終段の区分まで順次これを繰り返して、殺菌ゾーン内全長に亘る熱殺菌度を演算で得る制御プログラムにしたことにより、製品の熱殺菌度を木目細かく演算で得ることができるという効果を有する。
【0014】
請求項9および10に係わる本発明は、請求項3から8のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が殺菌途上で予め設定しておいた基準値以上となった場合或いは基準値以下となった場合に、殺菌ゾーンの下流側のシャワー等の熱殺菌手段の温度の変更或いはシャワー等の熱殺菌手段の停止をさせるという対応処理で過殺菌或いは殺菌不足とならず、適正な熱殺菌度となるように制御できるという効果を有する。
請求項11に係わる本発明は、請求項3から10のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が過殺菌或いは殺菌不足となった場合に、該過殺菌或いは殺菌不足になった対象製品がどれであるかの信号を出力して、該過殺菌或いは殺菌不足の製品をパストライザの後工程でラインオフする等の制御ができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わる製品熱殺菌度を考慮した制御装置を組み込んだパストライザの模式図である。
【図2】図1のパストライザの各ノズル群の水温と製品の温度を示す線図である。
【図3】図1の制御装置の熱殺菌度演算プログラムを説明する模式図である。
【図4】第2の実施の形態の製品熱殺菌度を考慮した制御装置を組み込んだパストライザの模式図で、図1に相当する図ある。
【図5】第3の実施の形態の製品熱殺菌度を考慮した制御装置を組み込んだパストライザおよびその上下流のコンベヤを平面図で表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1から図3に基づいて説明する。
図1は、本発明に係わる製品熱殺菌度を考慮した制御装置を組み込んだパストライザの模式図である。
図2は、図1のパストライザの各ノズル群の水温と製品の温度を示す線図である。
図3は、図1の制御装置の熱殺菌度演算プログラムを説明する模式図である。
【0018】
図において、中身の液体が入った実入り容器1(以下製品1と称する)は、パストライザ10の上本体11と下本体12で囲われた筐体の中で、製品搬送コンベヤ2により矢印2aの方向に連続搬送され、上本体11に設置されたノズル群5a〜5fからの温水または高温水の散水(以下シャワーと称することもある)を受けて熱殺菌されるようになっている。
下本体12には、上流側のノズル群5aおよび5bからの温水の散水を受けて集める温水槽(以下槽と称する)4aおよび4b、中央部のノズル群5cおよび5dからの高温水(以下熱水と称することがある)の散水を受けて集める高温水槽(以下槽と称する)4cおよび4d、下流側のノズル群5eおよび5fからの冷却水の散水を受けて集める冷却用温水槽(以下槽と称する)4eおよび4fが配置されている。
【0019】
各槽4a〜4fの処理水は、それぞれ配管14a〜14fおよびポンプ13a〜13fを経由し、各ポンプ13a〜13fの出口配管15a、15b、15c、15d、15e、15fを経由してそれぞれノズル群5f、5e、5c、5d、5b、5aへ供給されるようになっている。また、出口配管15a〜15fにはそれぞれの配管内の水温(槽4a〜槽4fからの水温)を測定する温度センサ16a〜16fが備えられており、前記各ノズル群5f、5e、5c、5d、5b、5aから散水される処理水の温度は、それぞれ前記温度センサ16a〜16fで測定される。
【0020】
製品搬送コンベヤ2上を入口側から出口側に向かって搬送されていく製品1が前記シャワーを受けて熱処理されている温度と、各ノズル群5a〜5fからシャワーされる処理水の温度の関係を、1例として、図2を基に説明する。
ノズル群5a部の入口側に入った温度が約10℃の製品1は、ノズル群5aから散水される温度ta(約35℃)の温水のシャワーを受けて徐々に温められ、ノズル群5b部でノズル群5bから散水される温度tb(約50℃)の温水のシャワーを受けてさらに温められ、ノズル群5c部でノズル群5cから散水される温度tc(約70℃)の高温水のシャワーを受けて殺菌に必要な所定温度(熱殺菌に必要な最低温度の60℃以上)まで熱せられ、次いで、ノズル群5d部でノズル群5dから散水される温度td(約65℃)の高温水のシャワーを受けて所定温度(60℃以上)に保持をされた後に、ノズル群5e部でノズル群5eから散水される温度te(約50℃)の温水のシャワーを受けて所定温度(60℃以上)から徐々に冷却され、ノズル群5f部でノズル群5fから散水される温度tf(約35℃)の温水のシャワーを受けて約40℃まで冷却される。即ち、製品1は図示Tbの温度線図で昇温、熱殺菌および冷却処理される。ここでは製品1の熱殺菌手段を熱水のシャワーとしてある。
図示Tbの温度線図は、熱殺菌対象の製品の種類および容量、容器の表面積等の大きさおよび材質等の物性に応じて、予め熱計算、テスト等で求められて制御装置8に入力され、後述する演算の際に使用されるようになっている。
【0021】
前記製品搬送コンベヤ2は、駆動装置7により図示しない駆動系統で駆動される駆動軸21と従動軸22により製品1を搬送するようになっている。
また、駆動軸21はエンコーダの1種であるロータリーエンコーダ3と接続されていて、駆動軸21の回転量、即ち、製品搬送コンベヤ2上の製品1の搬送位置の情報が細分化され、符号化されて検出できるようになっている。
ここでは、製品1の搬送位置情報を細分化して符号化する位置情報符号化装置を、駆動軸21の回転角度情報を細分化して符号化するロータリーエンコーダとしたが、これに限らずリニア位置情報を細分化し、符号化するリニアエンコーダまたはリニアポテンショメータとすることもできるが、ここでは詳細な説明は省略する。
さらに、パストライザ10の入口部には、製品1の有無を検出する製品センサ6が備えられている。
【0022】
前記ロータリーエンコーダ3による細分化し、符号化した回転量の検出信号、製品センサ6による製品1の有無の検出信号、ポンプ13a〜13fの運転の有無、温度センサ16a〜16fによる処理水温度の測定信号は制御装置8に送られ、ポンプ13a〜13fは制御装置8によって駆動制御されるようになっている。
さらに、制御装置8は、時計機能および後述する製品1の熱殺菌度等を演算できる制御プログラムを内蔵しており、製品1の熱殺菌度等を出力できるようになっている。
なお、各槽4a〜4fの処理水は、前記温度センサ16a〜16fの温度測定で所定の温度より低い場合には、図示しないスチーム配管およびスチーム供給弁により対象の槽にスチームが供給され、所定の温度より高い場合には、図示しない冷却水配管および冷却水供給弁により対象の槽に冷却水が供給されて所定の温度に調節されるようになっており、前記スチーム供給弁および冷却水供給弁も制御装置8からの指令で開閉されるようになっているが、図示および詳細な説明は省略する。
【0023】
次に、本実施の形態に係わる熱殺菌度を考慮した制御装置および方法の作用を説明する。
製品1は、図示しない前工程からパストライザ10に送り込まれる際、入口部の製品センサ6により製品の有無が検出されて、検出信号が制御装置8に送信される。
また、製品1は、パストライザ10内で駆動装置7により駆動される製品搬送コンベヤ2によって矢印2aの方向に搬送され、制御装置8に送信されたロータリーエンコーダ3の細分化し、符号化した回転量検出信号を基に、制御装置8によって製品1の前記製品センサ6で検出されてからの搬送量、即ち、製品搬送コンベヤ2上の製品1の搬送位置が演算により算出される。
【0024】
製品1の熱殺菌度Pは、製品1が熱殺菌を受けている温度T、時間tの関数、即ち、P=f(T、t)で表されるが、1例として、製品1の熱殺菌に必要な最低温度を60℃とすると、60℃以上(60℃から60℃強)の所定温度で所定時間経過することにより所定の熱殺菌度が得られる。即ち、図2の図示Psから図示Peの時間が熱殺菌度を示すことになる。従って、大凡のゾーン区分として、ノズル群5c部〜ノズル群5d部を熱殺菌ゾーンとすると、ノズル群5a部〜ノズル群5b部は熱殺菌温度になるまでの予備加熱ゾーン、ノズル群5e部〜ノズル群5f部は製品1を所定温度まで冷却する冷却ゾーンとなる。
前記制御装置8は、予め入力されている温度線図Tbと該制御装置8で算出している製品1の搬送位置から、前記PsおよびPeの位置を割り出す。
ここでは、前記制御装置8は図示Psを熱殺菌のための高温水のシャワー開始と制御上認識している。
【0025】
ここで、製品1の熱殺菌度演算プログラムの概要を、図3を基に、説明する。図3の(1)、(2)、(3)はそれぞれノズル群5c部、ノズル群5d部、ノズル群5e部での熱殺菌度演算プログラムの概要を説明する図であり、各ノズル群に対応する槽の長さ相当(図ではそれぞれ4c槽長さ相当、4d槽長さ相当、4e槽長さ相当で示している)を、ロータリーエンコーダ3の細分化分割でN分割してある。1例として、槽長さを1.2mとしてN=60分割にした場合、1分割は20mmとなり、製品搬送コンベヤ2のコンベヤ速度を1m/分とすると前記1分割は1秒相当となる。
【0026】
図3の(1)において、データ1A列、データ1B列、データ1C列、データ1D列、データ1E列は、それぞれ熱殺菌時間積算データ、製品(容器)有無データ、シャワー開始データ、熱殺菌単位データ(シャワー受けの有無=ポンプ運転の有無)、熱殺菌加算データを示しており、データ1A列、データ1B列およびデータ1C列はシフトデータとして、図示横軸の右方向へ1秒毎にシフトするようになっている。
また、データ1B列は製品有りの時1、製品無しの時0とし、データ1C列のシャワー開始は前記Psの位置を示し、データ1D列はシャワー時1、シャワー停止時0とする。ここで、データ1D列のシャワー時1はデータ1C列のシャワー開始後に有効である。
【0027】
上記定義を基に、1秒ごとにデータ1B列とデータ1D列の積をデータ1E列のデータに入れ、1秒ごとにデータ1A列とデータ1E列の和を算出してデータ1A列の次の1秒後のデータとする。このようにして、データ1A列は1秒ごとに加算されて行って最終データは1ANとなる。
また、データ1B列も1秒毎にシフトされて最終データは1BNとなる。
【0028】
次に、図3の(2)において、データ2A列〜データ2E列は、(1)の場合での説明と同様になっている。
ここで、データ2A列とデータ2B列は、初期データとしてそれぞれ前記図3の(1)の最終データ1ANとデータ1BNが書込まれ、最終データがそれぞれ2AN、2BNとなる。
【0029】
次に、図3の(3)において、データ3A列〜データ3E列は、前記(1)および(2)の場合での説明と同様になっており、データ3A列とデータ3B列は、初期データとしてそれぞれ前記図3の(2)の最終データ2ANとデータ2BNが書込まれ、最終データがそれぞれ3AN、3BNとなる。
【0030】
上記説明のように、熱殺菌時間積算データを製品1の熱殺菌度として演算し、該熱殺菌度が制御上で予め決めておいた設定値になった時に該当する製品1は所定の適正な熱殺菌がなされたことになる。
なお、演算した製品1の熱殺菌度は、制御装置8から出力することによりリアルタイムに把握することができる。
【0031】
また、殺菌ゾーン内の途中の位置での熱殺菌時間積算データを基に以降の熱殺菌度を予測演算し、適正な熱殺菌度にするために必要な以降のシャワーの温度を制御装置8で演算して、該当する槽に図示しないスチームまたは冷却水の開閉弁を開くことにより該当する槽の水温を調節して以降のシャワーを行い、製品1の熱殺菌度を適正なものとすることができる。即ち、製品1が過殺菌となる恐れが生じたら以降のノズル群のシャワーの温度を所定量低下させ、製品1が殺菌不足となる恐れが生じたら以降のノズル群のシャワーの温度を所定量上昇させて、製品1の熱殺菌度を適正なものとすることができる。
【0032】
なお、上記説明では、ノズル群5c部〜ノズル群5e部でのデータ列についての説明をしたが、ノズル群5a部、ノズル群5b部、ノズル群5f部についても、同様に熱処理時間積算データ等のデータを書込むことができるようにして、製品1が所定温度に昇温するまでの履歴或いは所定温度からの冷却履歴も記録できる。この場合、各ノズル群でのシャワー温度にどれだけの時間の散水を受けたかによって、予め設定しておいた条件を基に所定温度に昇温するまでの履歴或いは所定温度からの冷却履歴を把握できるが、この制御プログラムも前記説明と類似しており、重複する内容となるので、詳細な説明は省略する。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を図4によって説明する。
図4は、第2の実施の形態の製品熱殺菌度を考慮した制御装置を組み込んだパストライザの模式図で、図1に相当する図ある。
図4において、第1の実施の形態と同じ構造のものは同じ記号を記してあり、重複する説明は省略する。
【0034】
図において、パストライザ10aの制御装置8aは、ロータリーエンコーダ3による細分化し、符号化した回転量の検出信号、製品センサ6による製品1の有無の検出信号、ポンプ13a〜13fの駆動制御入出力信号、温度センサ16a〜16fによる処理水温度の入力信号、熱殺菌度の出力信号に加えて、駆動装置7aへの駆動制御出力信号が出力されるようになっている。ここで、駆動軸21は駆動装置7aにより図示しない駆動系統で駆動されるようになっている。
【0035】
次に、第2の実施の形態に係わる熱殺菌度を考慮した制御装置および方法の作用を説明する。
パストライザ10aの後工程が停止した場合等において、製品搬送コンベヤ2が短時間停止した場合、製品搬送コンベヤ2上のノズル群5cおよびノズル群5dからの高温水のシャワーを受けている製品1は、製品搬送コンベヤ2の停止時間分だけ余分に60℃以上(60℃から60℃強)の温度に維持されてしまうことになる。この場合、製品搬送コンベヤ2を定常状態よりも速い速度で駆動して、ノズル群5cおよびノズル群5dからの高温水のシャワーを受けている製品1を、ノズル群5c部およびノズル群5d部から早くノズル群5e部およびノズル群5f部の方へ移動させることによって、製品1が過殺菌となって品質低下となることを防ぐことができる。
【0036】
前記製品搬送コンベヤ2の停止により、前記ロータリーエンコーダ3による細分化し、符号化した回転量の検出信号の変化が停止すると、制御装置8aは製品搬送コンベヤ2が停止したと判断して、制御装置8aが前記製品搬送コンベヤ2の停止時間分も加味して演算した製品1の熱殺菌度積算データを基に、適正な熱殺菌度とするように運転復帰後の製品搬送コンベヤ2の搬送速度の変更を駆動装置7aに出力する。
運転復帰直後は製品1の過殺菌を防止するために製品搬送コンベヤ2の搬送速度は定常状態よりも速い速度とするが、この速い速度のために上記過殺菌防止対象製品よりも上流側の製品は逆に熱殺菌不足となる恐れが生じるので、過殺菌の恐れがある製品1を速く出した後の製品搬送コンベヤ2の搬送速度は以降若干遅くするというように制御装置8aから駆動装置7aに駆動制御信号が出力されて、製品1の熱殺菌度が適正な許容範囲内になるように運転される。
この場合、ノズル群5a、ノズル群5bで受けた温水の温度、時間を基に、加温時間積算データ等が制御装置8aで演算され、該データも考慮して製品搬送コンベヤ2の搬送速度が制御装置8aによって自動的に決定されるが、詳細な説明は省略する。
【0037】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を図5によって説明する。
図5は、第3の実施の形態の製品熱殺菌度を考慮した制御装置を組み込んだパストライザおよびその上下流のコンベヤを平面図で表した模式図である。
図5において、第1および第2の実施の形態と同じ構造のものは同じ記号を記してあり、重複する説明は省略する。
【0038】
図において、製品1は、入口コンベヤ31により上流から矢印31aの方向へ搬送されてパストライザ10bに供給され、パストライザ10bで矢印2aの方向に搬送されながら熱殺菌された後、出口コンベヤ32により下流側へ、定常時は矢印32aの方向へ搬送されるようになっている。
該出口コンベヤ32には、図示のように、バイパスコンベヤ33が隣接して配置されていて、必要により制御装置8bからの指令によって、駆動装置34dの駆動により支点35を揺動中心としてその先端が位置34bから位置34cへ矢印34aの方向に揺動する製品搬送方向変更ガイド34によって、製品1をバイパスコンベヤ33へ矢印33aのように排出することができるようになっている。
【0039】
また、パストライザ10bの制御装置8bは、ロータリーエンコーダ3による細分化し、符号化した回転量の検出信号、製品センサ6による製品1の有無の検出信号、ポンプ13a〜13fの駆動制御入出力信号、温度センサ16a〜16fによる処理水温度の入力信号、熱殺菌度の出力信号に加えて、駆動装置34dへの駆動制御出力信号が出力されるようになっている。
パストライザ10bの製品搬送コンベヤ2、製品センサ6、ロータリーエンコーダ3等については前記パストライザ10および10aと同様の構造であるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
次いで、第3の実施の形態に係わる製品熱殺菌度を考慮した制御装置および方法の作用を説明する。
パストライザ10bの後工程が停止した場合等において、製品搬送コンベヤ2が長時間停止した場合、製品搬送コンベヤ2上のノズル群5cおよびノズル群5dからの高温水のシャワーを受けている製品1は、製品搬送コンベヤ2上で長時間60℃以上(60℃から60℃強)の温度に維持されてしまい、過殺菌となってしまうことがある。
この場合、前記ロータリーエンコーダ3の長時間停止の検出信号により、制御装置8bは製品搬送コンベヤ2が長時間停止したとして、前記製品搬送コンベヤ2の停止時間分も加味して演算した製品1の熱殺菌度積算データを基に、製品1が過殺菌になってしまったと判断し、該過殺菌対象の製品1がどれであるかの信号を出力することができる。
前記過殺菌の製品1が出口コンベヤ32に搬送されて製品搬送方向変更ガイド34部に達すると、制御装置8bからの指令により駆動装置34dが作動し、製品搬送方向変更ガイド34が支点35を揺動中心としてその先端が図示34bから図示34cへ揺動して、過殺菌となった製品1をバイパスコンベヤ33の方向へ自動的に排出する。
【0041】
上記説明では、製品1が過殺菌となった場合について説明してきたが、製品1がシャワー温度不足等で殺菌不足となった場合についても、上記説明と同様に、殺菌不足対象の製品1がどれであるかの信号を出力することができる。前記殺菌不足となった製品1は対象製品だけをバイパスコンベヤ33の方向へ自動的に排出することができ、従来のように、過殺菌或いは殺菌不足となった場合に多くの適正な熱殺菌度の製品を含めたロットごとの多量の製品を排出してしまうということを避けることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 製品
2 製品搬送コンベヤ
3 ロータリーエンコーダ
4a〜4f 槽
5a〜5f ノズル群
6 製品センサ
7、7a 駆動装置
8、8a、8b 制御装置
10、10a、10b パストライザ
13a〜13f ポンプ
16a〜16f 温度センサ
32 出口コンベヤ
33 バイパスコンベヤ
34 製品搬送方向変更ガイド
34d 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料等を充填済の容器(以下製品と称する)を連続搬送中に殺菌ゾーンで熱殺菌するパストライザの制御装置において、製品搬送コンベヤによる前記製品の搬送位置情報を細分化して符号化する位置情報符号化手段を設け、かつ、前記製品の熱殺菌条件を測定する測定手段を設けて、前記位置情報符号化手段によって検出した前記製品の搬送位置情報の信号と前記測定手段によって測定した前記製品の熱殺菌条件の信号を取り込み、制御プログラムで前記細分化した製品搬送位置毎の製品の熱殺菌条件を積算する等により、前記殺菌ゾーン内を通した製品の熱殺菌度を演算できるようにしたことを特徴とするパストライザの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載するパストライザの制御装置において、前記位置情報符号化手段を前記製品搬送コンベヤの駆動系統に設けたエンコーダとしたことを特徴とするパストライザの制御装置。
【請求項3】
飲料等を充填済の容器(以下製品と称する)を連続搬送中に殺菌ゾーンで熱殺菌するパストライザの制御方法において、製品搬送コンベヤによる前記製品の搬送位置情報を細分化して符号化するエンコーダ等の位置情報符号化手段によって検出した前記製品の搬送位置情報の信号と、前記製品の熱殺菌条件を測定する測定手段によって測定した前記製品の熱殺菌条件の信号を取り込み、制御プログラムで前記細分化した製品搬送位置毎の製品の熱殺菌条件を積算する等により、前記殺菌ゾーン内にいた製品の熱殺菌度を演算できるようにしたことを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載するパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件を、前記細分化した製品搬送位置毎に前記製品が受ける熱殺菌時間、または、熱殺菌温度並びに熱殺菌時間としたことを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載するパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件の前記熱殺菌温度を、前記製品が熱殺菌のために受ける熱水等のシャワーの温度としたことを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載するパストライザの制御方法において、前記熱殺菌条件に、前記細分化した製品搬送位置毎に前記製品が熱殺菌のために受ける熱水等のシャワー受けの有無および該熱水等のシャワー受けの開始時間をさらに加えることを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記細分化した製品搬送位置毎の熱殺菌条件を基にして、殺菌ゾーンの前端から順次後端に向けて前記細分化した製品搬送位置に相当する単位毎に加算しながら積算し、前記殺菌ゾーン内を通した製品の熱殺菌度を演算できるような制御プログラムにしたことを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載するパストライザの制御方法において、前記殺菌ゾーンを前記製品の搬送方向で制御上分割して、該分割した区分の前段の区分で前記熱殺菌条件の積算等の演算により得た熱殺菌度の最終データを次の区分の先頭データとして、該次の区分での前記製品の熱殺菌度を前記熱殺菌条件の積算等の演算で得るようにし、順次これを繰り返して殺菌ゾーン内全長に亘る熱殺菌度を演算で得ることができる制御プログラムにしたことを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が殺菌途上で予め設定しておいた基準値以上となった場合或いは基準値以下となった場合に、殺菌ゾーンの下流側のシャワー等の熱殺菌手段の温度の変更或いはシャワー等の熱殺菌手段の停止をさせて、適正な熱殺菌度となるように制御することを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項10】
請求項3から8のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が殺菌途上で予め設定しておいた基準値以上となった場合或いは基準値以下となった場合に、前記製品搬送コンベヤの搬送速度を適宜高速或いは低速に変更して、適正な熱殺菌度となるように制御することを特徴とするパストライザの制御方法。
【請求項11】
請求項3から10のいずれか一項に記載するパストライザの制御方法において、前記演算で得た前記製品の熱殺菌度が過殺菌或いは殺菌不足となった場合に、該過殺菌或いは殺菌不足になった対象製品がどれであるかの信号を出力できるように制御することを特徴とするパストライザの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46389(P2011−46389A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194727(P2009−194727)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】