説明

製本方法及び製本装置

【課題】丁合した折丁の背に、ICタグのインレットを直接取り付ける。
【解決手段】製本装置1は、円状に移動する複数のクランプ4を有し、接着剤塗布装置5aと、インレット供給装置7と、接着剤塗布装置5bと、表紙供給部11と、をクランプ4の移動方向に対して、順に有する。製本装置1は、丁合された折丁3に、接着剤塗布装置5aにより第1の接着剤17aを塗布し、インレット供給装置7によりインレットテープ20を切断せずに供給し、接着剤塗布装置5bにより第2の接着剤17bを塗布する。その後、インレットテープ20は、クランプ4どうしが引っ張る力により切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを背に有する書籍の製本方法などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バーコードに代えて、非接触で情報の読み出しおよび書き込みが可能なICタグ(RFIDタグ、無線タグ、非接触IC,非接触ICタグなどと表現することもあるが、本明細書では総称して、「ICタグ」とする。)を商品に付して市場で必要なさまざまな情報の管理を可能にすることが提案されている。
【0003】
書籍においても、ICタグを取り付け、万引き防止機能を付与するのみならず、それらの流通や在庫・販売時点においても必要なさまざまな情報管理をすることが考えられている。そのため、書籍の販売段階でICタグを取り付ける煩を避け、製本の工程でICタグを取り付けることが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−249492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICタグに粘着剤を塗布し、ラベルとして書籍に貼着する際、剥離紙が廃棄され、環境面でもコスト面でも好ましくなく、問題となっている。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、丁合した折丁の背に、ICタグのインレットを直接取り付けることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、丁合した折丁の背に第1の接着剤を塗布する工程(a)と、ICタグのインレットを有するインレットテープを、切断せずに前記第1の接着剤の上に設ける工程(b)と、前記第1の接着剤と前記インレットテープの上に、第2の接着剤を塗布する工程(c)と、前記第1の接着剤と前記第2の接着剤に表紙を貼り付ける工程(d)と、を具備し、前記工程(c)と前記工程(d)の間に、前記丁合した折丁が弧状に搬送される際に、前記丁合した折丁が他の丁合した折丁に引っ張られ、前記インレットテープが切断されることを特徴とする製本方法である。
【0008】
第2の発明は、丁合した折丁を把持するクランプが周回運動する搬送機構と、前記丁合した折丁の背に第1の接着剤を塗布する第1の接着剤塗布装置と、フィルム上にICタグを有するテープを、切断せずに前記第1の接着剤の上に設けるICタグ供給装置と、前記第1の接着剤と前記テープの上に第2の接着剤を塗布する第2の接着剤塗布装置と、前記丁合した折丁の背に表紙を供給する表紙供給装置と、を備え、前記クランプが前記丁合した折丁を弧状に搬送する際に、前記丁合した折丁が他の丁合した折丁に引っ張られ、前記インレットテープが切断されることを特徴とする製本装置である。
【0009】
また、前記インレットテープが、前記丁合した折丁を把持するクランプ間の間隔と等しい間隔でインレットを有することが望ましく、前記インレットテープが、各インレット間にテープ長手方向に対して斜めのミシン目を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、丁合した折丁の背に、ICタグのインレットを直接取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は、本実施形態に係る製本装置1を示す図である。
図1(a)に示すとおり、製本装置1は、丁合した折丁の搬送機構として、周回運動する複数のクランプ4を有し、クランプ4の移動方向に対して、接着剤塗布装置5aと、インレット供給装置7と、接着剤塗布装置5bと、表紙供給部11とを順に有する。製本装置1は、丁合された折丁3を、クランプ4により把持し、図示した方向にクランプ4が移動する間に、丁合された折丁3に対して綴じ工程と表紙くるみ工程を行う。
【0013】
クランプ4は、開閉可能な把持装置であり、丁合した折丁3を把持する。
【0014】
図1(b)は、図1(a)でのA方向から、製本装置1を観察する図である。図1(b)に示すとおり、と、丁合された折丁3は、まず接着剤塗布装置5aにより、後述する第1の接着剤17aを塗布される。その後、インレット供給装置7により、ベース基材27上に所定の間隔でインレット19を有するインレットテープ20が供給され、更に接着剤塗布装置5bにより第2の接着剤17bが塗布される。その後、表紙供給部11により、折丁3の背に表紙9が供給される。
【0015】
また、図1(c)に示すように、丁合した折丁3を図1(b)のB方向から観察すると、丁合した折丁3は背を下にしてクランプ4により把持されている。
【0016】
その後、表紙9を折丁3に接着させた後、三方裁ち工程に移行する。
【0017】
ベース基材27は、図1(a)、(b)に示すとおり、インレット供給装置7により丁合された折丁3の背に供給される際には、切断されない。第2の接着剤塗布装置5bにより第2の接着剤17bが塗布された後、表紙供給部11に移動する前にクランプ4が弧状に移動する際に、ベース基材27には引っ張る力が働き、後述するミシン目26に沿って、切断される。なお、切断後、ベース基材27は丁合された折丁3よりはみ出すことになるが、後の三方裁ち工程において裁たれるため、完成後の書籍からベース基材27がはみ出すことはない。
【0018】
表紙供給部11は、コンベアで表紙9を搬送し、所定の位置で表紙9の位置を上げ、接着剤17と接触させ、表紙9と折丁3とを接着剤17を間に挟んで固定する。
【0019】
図2(a)に示すように、接着剤塗布装置5は、接着剤17の入った容器に、折丁3の流れに平行した方向へ回転可能なローラー13とローラー14とを有する装置であり、丁合した折丁3の背に接着剤17を塗布する。
【0020】
接着剤17として、ホットメルト系の接着剤を用いることができ、接着剤17は約180℃に加熱され、軟化している。ローラー13とローラー14が回転することで表面に接着剤17が広がり、ローラー13とローラー14とに接する折丁3の背に塗布される。
【0021】
接着剤塗布装置5aは、丁合した折丁3どうしを固定するための第1の接着剤17aを供給するために設けられ、接着剤塗布装置5bは、丁合した折丁3と表紙9とを固定するための第2の接着剤17bを供給するために設けられる。そのため、第1の接着剤17aには粘度の低い浸透性の高い接着剤を用い、第2の接着剤17bには粘度の高い浸透性の低い接着剤を用いることが好ましい。
【0022】
なお、無線綴じを行う場合には、接着剤塗布装置5aにより接着剤が塗布される前に、折丁3の背を削るミリング工程を行う。また、あじろ綴じを行う場合には、折工程において、折丁3の背にスリット状の孔を開ける。
【0023】
インレット供給装置7は、インレット19を供給可能な装置であれば特に限定されないが、特に図2(a)に示すような構造を持ち、ジグザグ折りされたインレットテープ20をローラー29aにより送り出し、ローラー29bで方向を変え、インレットテープ20を折丁3の背に供給する。インレットテープ20は、折丁3へ供給される際にはベース基材27が切断されない。
【0024】
インレットテープ20は、ロール状の連続用紙でもよいが、ジグザグ折りされた連続用紙が好ましい。ジグザグ折りされた連続用紙を使用した場合、インレットテープ20の後端に次に使用するインレットテープ20をつなぐことができ、製本装置1を停止することなく、インレットテープ20の給紙切り替えが可能となる。
【0025】
インレット19は、図2(b)及び図2(c)に示すように、ベース基材27の上にアンテナ25を配設し、アンテナ25に電気的に接続したICチップ23と、ICチップ23とアンテナ25とを覆う表面層21とからなる。なお、図2(b)においては、表面層21を省略し、アンテナ25とICチップ23を観察できるようにインレット19を描いている。
【0026】
ベース基材27としては、樹脂フィルムや紙基材を用いることができる。樹脂フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET‐G(テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルフイド)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体)、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタンなどの素材が使用される。また、紙基材としては、上質紙、コート紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、ラテックスやメラミン含浸紙などが使用できる。また、表面層21にも、同様の素材が使用される。
【0027】
アンテナ25は、ベース基材27上にパターン形成されたアルミニウムや銅などの金属の膜からなる、平面コイル状またはダイポール型のアンテナである。アンテナ25は、アルミ箔(厚さ10〜50μm)をエッチングして形成されるか、導電性インキを印刷して形成される。ICチップ23はアンテナ25に、接続されている。
【0028】
インレットテープ20としては、図3に示すようなインレットテープ20a、20bを用いることができる。インレットテープ20aは、図3(a)に示すような構造を持ち、ベース基材27はインレットテープ20と同じ長さであり、ベース基材27上に複数のインレット19を有する。
インレットテープ20aのベース基材27は、所定の間隔ごとにミシン目26aを有している。インレットテープ20aは、ミシン目26aに沿って折り畳まれ、ジグザグ折りされてインレット供給装置7に設置され、インレット供給装置7より丁合した折丁3の背に供給された後は、ミシン目26aに沿って切断される。
【0029】
ベース基材27には、強度に問題のない程度に孔や切目を設け、第1の接着剤17aと第2の接着剤17bとがより一体化しやすいようにすることが好ましい。
【0030】
インレットテープ20bは、図3(b)に示すように、ミシン目26bが、インレットテープ20bの長軸方向に対して斜めに設けられている。そのため、インレットテープ20bをインレット供給装置7に設置する際、ミシン目26bに沿って折り畳まれ、ジグザグ折りされたインレットテープ20bにおいて、高さのあるICチップ23が他のICチップ23と重ならず、ICチップ23に対して過大な加重がかかることを防ぐことができ、ICチップ23の故障を防ぐことができる。
【0031】
なお、ミシン目26bのインレットシート20bの長軸方向に対する傾きを、一定回数ごとに反対にし、折り畳んだインレットテープ20bの占める面積を減らすことが可能である。また、前記傾きを、徐々に変化させることで、折り畳んだインレットテープ20bを環状や渦状に巻かせることも可能である。
【0032】
なお、インレットテープ20a、20bのインレット19の配置間隔は、クランプ4の間隔と等しい。つまり、ラインに流れる丁合した折丁3の間隔と等しい。そのため、丁合した折丁3の最初に決めた箇所と同じ箇所に、インレット19が供給されることとなる。また、インレットテープ20a、20bのミシン目26a、26bの間隔も、クランプ4の間隔と等しい。
【0033】
また、ミシン目26の強度は、第2の接着剤塗布装置5bにおけるローラー13b、14bにより巻き込む力より強く、クランプ4により引きちぎられる際に、接着剤17のずれなどの生じる強度より弱く設定する。
【0034】
図4(a)〜(e)を用いて、丁合された折丁3を中心に、製本装置1による製本工程を説明する。
図4(a)に示すように、丁合された折丁3の背には、接着剤塗布装置5aにより、第1の接着剤17aが塗布される。その後、図4(b)に示すように、第1の接着剤17aの上に、インレット供給装置7によりベース基材27とインレット19からなるインレットテープ20を設置する。この際、第1の接着剤17aは熱を失っておらず、軟化しているため、インレットテープ20は第1の接着剤17aにより折丁3に固定される。
【0035】
その後、図4(c)に示すように、接着剤塗布装置5bにより、第1の接着剤17aとインレット19とベース基材27との上に第2の接着剤17bを塗布する。第1の接着剤17aと第2の接着剤17bは、インレット19をはさんで一体化する。その後、図4(d)に示すように、ベース基材27には引っ張る力が働き、ミシン目26に沿って切断される。
【0036】
その後、図4(e)に示すように、丁合された折丁3は、第1の接着剤17a、インレット19、ベース基材27、第2の接着剤17bをはさんで、表紙9が取り付けられる。表紙9は、接着剤17により折丁3に固定される。なお、図4(c)〜(e)において、インレット19とベース基材27が露出するように描いているが、実際は接着剤17に覆われており、外からは視認が困難である。また、接着剤17とインレット19、丁合された折丁3の大きさは、図面により限定されるものではない。特に、通常は、ベース基材27の幅は、丁合した折丁3の厚みよりも細くなる。
【0037】
本実施の形態によれば、インレット19を書籍に直接固定することが可能であり、剥離紙を用いる必要が無く、低コストである。
【0038】
また、本実施の形態によれば、インレット19は、第1の接着剤17a、第2の接着剤17bにより一体化されており、古紙リサイクル工程において、インレット19は、接着剤17にくるまれて除去され、再生後の紙にインレット19の破片が含まれることがない。
【0039】
また、本実施の形態によれば、インレット供給装置7は、インレット19を丁合した折丁3に供給する際にインレットテープ20を切断する必要が無いため、インレット供給装置7の構造は簡素化される。
【0040】
また、本実施の形態によれば、丁合された折丁3が第2の接着剤塗布装置5bを通過する際、ベース基材27は隣接する丁合された折丁3と接続されているため、インレットテープ20が第2の接着剤塗布装置5bのローラー13b、14bに巻き込まれることがない。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかる製本装置などの好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施の形態に係る製本装置1を示す図。
【図2】本実施の形態に係るインレット供給装置7を示す図。
【図3】本実施の形態に係るインレットテープ20の他の実施形態を説明する図。
【図4】本実施の形態に係る製本装置1による製本工程を説明する図。
【符号の説明】
【0043】
1………製本装置
3………丁合した折丁
4………クランプ
5………接着剤塗布装置
7………インレット供給装置
9………表紙
11………表紙供給部
13………ローラー
14………ローラー
17………接着剤
19………インレット
20………インレットテープ
21………表面層
23………ICチップ
25………アンテナ
27………ベース基材
29………ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丁合した折丁の背に第1の接着剤を塗布する工程(a)と、
ICタグのインレットを有するインレットテープを、切断せずに前記第1の接着剤の上に設ける工程(b)と、
前記第1の接着剤と前記インレットテープの上に、第2の接着剤を塗布する工程(c)と、
前記第1の接着剤と前記第2の接着剤に表紙を貼り付ける工程(d)と、
を具備し、
前記工程(c)と前記工程(d)の間に、前記丁合した折丁が弧状に搬送される際に、前記丁合した折丁が他の丁合した折丁に引っ張られ、前記インレットテープが切断されることを特徴とする製本方法。
【請求項2】
丁合した折丁を把持するクランプが周回運動する搬送機構と、
前記丁合した折丁の背に第1の接着剤を塗布する第1の接着剤塗布装置と、
フィルム上にICタグを有するテープを、切断せずに前記第1の接着剤の上に設けるICタグ供給装置と、
前記第1の接着剤と前記テープの上に第2の接着剤を塗布する第2の接着剤塗布装置と、
前記丁合した折丁の背に表紙を供給する表紙供給装置と、
を備え、
前記クランプが前記丁合した折丁を弧状に搬送する際に、前記丁合した折丁が他の丁合した折丁に引っ張られ、前記インレットテープが切断されることを特徴とする製本装置。
【請求項3】
前記インレットテープが、前記丁合した折丁を把持するクランプ間の間隔と等しい間隔でインレットを有することを特徴とする請求項2記載の製本装置。
【請求項4】
前記インレットテープが、各インレット間にテープ長手方向に対して斜めのミシン目を有することを特徴とする請求項3記載の製本装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269378(P2009−269378A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124425(P2008−124425)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)