説明

製版処理廃液のリサイクル方法

【課題】自動現像機の現像浴や水洗浴等に堆積物の蓄積による汚れが少なく、長時間連続的に製版処理した場合においても、析出物の発生が抑制され、容易に洗浄が可能であり、且つ、得られた再生水は再利用が可能である製版処理廃液のリサイクル方法を提供する。
【解決手段】感光性平版印刷版の製版処理廃液を、蒸発濃縮装置中で加熱し、発生した水蒸気と製版処理廃液中に含まれる溶解成分とに分離し、分離された水蒸気を凝縮して再生水とする現像処理システムであって、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む現像補充液を、現像浴に補充し、且つ、発生する製版処理廃液を容量基準で、1/2.5〜1/5(=濃縮後の製版処理廃液/濃縮前の製版処理廃液)の範囲に濃縮し、再生水を現像補充液の希釈水またはリンス水の少なくとも一方に使用する製版処理廃液のリサイクル方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性平版印刷版の製版処理廃液のリサイクル方法に関し、特に有機溶剤を含む現像補充液を補充し、且つ、発生する製版処理廃液を濃縮し、得られた再生水を再利用する製版処理廃液のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光性平版印刷版原版を自動現像機で現像処理する場合は、処理や経時で失われる成分の濃度やpHを一定に保ち、現像液の性能を維持するために現像補充液を各工程の現像液に供給する手段が採られている。このような補充を行っても、現像液の性能が許容限度外になるような場合には、現像液の全てが廃棄処分される。製版処理廃液はアルカリ性が強い為、近年、公害規制の強化により、廃液をそのまま下水道に流すことは実質的に不可能で、製版業者が自ら廃液処理設備を設置するか、廃液処理業者に処理を委託する等により廃液を処理することが必要である。
しかし、廃液処理業者に委託する方法では、委託までの間に廃液を貯蔵するために多大なスペースが必要となるし、またコスト的にもきわめて高価である。また、廃液処理設備の設置は、設置に必要な初期投資が極めて大きく、整備するのにかなり広大な場所を必要とする等の問題を有している。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1では廃液貯蔵タンクに温風を吹き込み濃縮する方法が、特許文献2では処理廃液を中和し、凝集剤を添加して凝集成分を凝集させる技術が提案されている。
特許文献1の技術では、蒸発量が多くないので、製版処理廃液を濃縮するのに長時間を必要とする。そのため廃液量減少の効果は充分ではない。また、蒸発した水分の処理について検討されていない。
特許文献2の技術では、凝集剤を必要とするため廃液の処理にコストがかかるという問題があった。また、ポリマーを含有する製版処理廃液の場合、蒸発釜内に残った固形物が飴状で蒸発釜の壁面に付着し、汚れやすく、また廃液処理装置の配管が詰まり易い問題があった。
また、製版処理廃液の排出量を削減することができ、製版処理廃液の処理過程で生じる水を容易に再利用できる平版印刷版製版処理廃液削減装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
一方、平版印刷版の現像処理廃液の問題に対する平版印刷版の現像液処方の観点から、非還元糖、および塩基を含む現像液が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−341535号公報
【特許文献2】特開平2−157084号公報
【特許文献3】特許第4774124号公報
【特許文献4】特開2011−90282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、自動現像機の現像浴や水洗浴等に堆積物の蓄積による汚れの発生が抑制され、設備のメンテナンス性に優れ、長時間連続的に製版処理した場合においても、析出物の発生が抑制され、容易に洗浄が可能であり、且つ、得られた再生水は再利用が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない製版処理廃液のリサイクル方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 自動現像機において、感光性平版印刷版用現像液を用いて感光性平版印刷版の製版処理を行った際に排出される製版処理廃液のリサイクル方法であって、
沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む現像補充液を、希釈しないか又は質量基準で10倍量以内の水で希釈して自動現像機の現像浴に補充すること、前記自動現像機において、感光性平版印刷版の製版処理を行った際に発生する製版処理廃液を容量基準で、1/2.5〜1/5(=濃縮後の製版処理廃液/濃縮前の製版処理廃液)の範囲となるように蒸発濃縮装置で蒸発濃縮し、水蒸気と溶解成分とに分離すること、分離された水蒸気を前記蒸発濃縮装置より導出し、冷却手段中で凝縮して再生水とすること、得られた再生水を前記自動現像機における現像補充液の希釈水及びリンス水の少なくとも一方に使用すること、を含む感光性平版印刷版の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0008】
<2> 前記現像補充液が、さらに、界面活性剤を0.5質量%〜10質量%の範囲で含む現像補充液である<1>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<3> 前記界面活性剤が、下記一般式(I−A)で表される化合物及び下記一般式(I−B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオン性界面活性剤を含む、<2>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(前記一般式(I−A)中、Rは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;pは0,1又は2を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;mは1〜100の整数を表す。mが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい;Mは、Na、K、LiまたはNHを表す。
前記一般式(I−B)中、Rは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;qは0,1又は2を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;nは1〜100の整数を表す。nが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい;Mは、Na、K、LiまたはNHを表す。)
<4> 前記界面活性剤が、下記一般式(II−A)で表される化合物及び下記一般式(II−B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含む、<2>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0011】
【化2】

【0012】
(前記一般式(II-A)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。
前記一般式 (II-B)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。)
<5> 前記蒸発濃縮装置が、前記製版処理廃液を減圧しながら加熱する減圧手段及び加熱手段を備える<1>〜<4>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0013】
<6> 前記加熱手段が、ヒートポンプを備え、前記ヒートポンプの放熱部で前記製版処理廃液を加熱して水蒸気を発生させるとともに、前記ヒートポンプの吸熱部で前記水蒸気を冷却する加熱手段である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<7> 蒸発濃縮により濃縮された前記製版処理廃液の濃縮物をポンプで加圧して、回収タンクに回収することを、さらに含む<1>〜<6>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0014】
<8> 前記製版処理廃液の濃縮が、容量基準で、1/3〜1/5の範囲となるように行われる<1>〜<7>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<9> 前記現像補充液中における沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤の含有率が5質量%〜20質量%である、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0015】
<10> 前記沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤が、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、プロピレングリコール、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びグリセリンからなる群より選択される1種以上である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<11> 前記沸点が100℃〜300℃の範囲内である有機溶剤が、ベンジルアルコール、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、及びN−エチルピロリドンからなる群より選択される1種以上である、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0016】
<12> 前記再生水の成分を分析し、その分析結果に応じて、前記再生水の中和を行うこと、及び前記再生水に新水を供給すること、から選択される1つ以上をさらに含む、<1>〜<11>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<13> 前記感光性平版印刷版がネガ型平版印刷版である、<1>〜<12>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0017】
<14> 前記ネガ型平版印刷版に用いられる感光性平版印刷版用現像液が、アルカリ金属の水酸化物と界面活性剤とを含有し、珪酸塩化合物を含有せず、pHが10〜12.5の範囲のアルカリ現像液である、<13>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<15> 前記感光性平版印刷版がポジ型平版印刷版である、<1>〜<12>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<16> 前記ポジ型平版印刷版に用いられる感光性平版印刷版用現像液が、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを含み、珪酸塩化合物を含有しないアルカリ現像液である、<15>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【0018】
本発明に係る製版処理廃液のリサイクル方法は、自動現像機の現像処理システムからの製版処理廃液のリサイクル方法である。本発明に係る製版処理廃液のリサイクル方法においては、現像補充液として沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む現像補充液を用い、且つ、発生する製版処理廃液を容量基準で、1/2.5〜1/5の範囲に蒸発濃縮する。即ち、本発明においては、感光性平版印刷版の製版処理を行った際に排出される製版処理廃液を、蒸発濃縮装置、例えば、蒸発釜を備えた蒸発濃縮装置中で加熱して蒸発濃縮し、水蒸気と溶解成分とに分離し、分離された前記水蒸気を冷却して再生水とすることで、得られた再生水は再利用が可能となる。このため、現像処理システムにおいて、自動現像機の現像浴や水洗浴等に堆積物の蓄積による汚れが少なく、容易に洗浄が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない製版処理廃液のリサイクル方法を提供することができる。
本発明の作用は明確ではないが、本発明においては、現像補充液中に沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を特定量含むために、現像補充液中に含まれる有機溶剤と水の沸点が大きく異なるので、製版処理廃液中に含まれる水の蒸発が比較的容易であり、水を主成分とする再生水が得られ易いことによるものと考えられる。また、現像により生じた平版印刷版の不要な感光性成分等は、濃縮後の製版処理廃液中に比較的高濃度で存在する有機溶剤に溶解し、濃縮後の製版処理廃液中で不溶解物の残渣とはなりにくいので、蒸発濃縮装置内部で固着することが少ないことによるものと考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自動現像機の現像浴や水洗浴等に堆積物の蓄積による汚れの発生が抑制され、設備のメンテナンス性に優れ、容易に洗浄が可能であり、長時間連続的に製版処理した場合においても、析出物の発生が抑制され、且つ、得られた再生水は再利用が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない製版処理廃液のリサイクル方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の製版処理廃液のリサイクル方法に係る装置のフローを示す概念図である。
【図2】従来の現像処理廃液の濃縮装置を有する現像処理装置のフローを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のリサイクル方法について詳細に説明する。
本発明の感光性平版印刷版の製版処理廃液のリサイクル方法は、自動現像機において、感光性平版印刷版用現像液を用いて感光性平版印刷版の製版処理を行った際に排出される製版処理廃液のリサイクル方法であって、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む現像補充液を、希釈しないか又は質量基準で10倍量以内の水で希釈して自動現像機の現像浴に補充すること、前記自動現像機において、感光性平版印刷版の製版処理を行った際に発生する製版処理廃液を容量基準で、1/2.5〜1/5(=濃縮後の製版処理廃液/濃縮前の製版処理廃液)の範囲となるように蒸発濃縮装置で蒸発濃縮し、水蒸気と溶解成分とに分離すること、分離された水蒸気を前記蒸発濃縮装置より導出し、冷却手段中で凝縮して再生水とすること、得られた再生水を前記自動現像機における現像補充液の希釈水及びリンス水の少なくとも一方に使用すること、を含む感光性平版印刷版の製版処理廃液のリサイクル方法である。
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の一例について説明する。
本実施形態においては、図1に示すように、現像処理廃液のリサイクル方法では、感光性平版印刷版の製版処理に伴って自動現像機10から排出される現像液の廃液を貯蔵する処理液の中間タンク20、該中間タンク20より送られた廃液を減圧下で加熱し、蒸発する水分と残留する濃縮物(スラリー)とに分離する廃液濃縮装置30、廃液濃縮装置30で水蒸気として分離された水分を導入し、冷却・凝結された再生水は再生水タンク50に導入される。また、廃液濃縮装置30で濃縮された廃液は廃液タンク40に回収される。廃液タンク40への濃縮された廃液の移送は、ポンプで加圧して行うことも好ましい。
本発明においては、既述のように、本システムにおいて、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む現像補充液を用いることにより、感光性平版印刷版の製版処理を行った際に発生する製版処理廃液の前記蒸発濃縮と再生水の生成が効率よく行われ、且つ、蒸発濃縮装置中の汚れの発生が抑制される。
【0023】
廃液を濃縮する蒸発濃縮装置30には、中間タンク20より送られた廃液を減圧下で加熱し、蒸発した水分と残留した濃縮物(スラリー)とに分離する蒸発釜(図示しない)と、蒸発釜で水蒸気として分離された水分を導入し、冷却・凝結して再生水とする冷却釜(図示しない)とを少なくとも具備する。
蒸発濃縮装置30には、本実施形態の如く蒸発釜内部と冷却釜内部との間で熱を移動させるヒートポンプユニットが設けられていることが好ましい。即ち、蒸発釜の加熱手段及び冷却釜の冷却手段としてヒートポンプを使用し、前記ヒートポンプの放熱部で前記製版処理廃液を加熱する一方、前記ヒートポンプの吸熱部で冷却釜の水蒸気を冷却することが好ましい。
【0024】
廃液の濃縮は、前記蒸発釜内部を減圧手段で減圧して、加熱濃縮する方法により行うことが、廃液の沸点を低下させ、大気圧下におけるよりも低い温度で廃液を蒸発濃縮させることができるという観点から好ましい。このため、蒸発濃縮装置30には加熱手段に加え、減圧手段を備えることが好ましい。減圧手段を用いることで、より低い温度で蒸発濃縮がより安全に行われるために、蒸発釜、廃液および廃液濃縮物が熱による影響を受けにくいという利点を有する。蒸発濃縮装置30に用いうる減圧手段としては、一般的な水封式や油回転式、ダイヤフラム式等の機械的真空ポンプ、油や水銀を用いた拡散ポンプ、多段ターボ圧縮機、往復圧縮機、ねじ圧縮機等の圧縮機、アスピレータが挙げられるが、この中ではアスピレータがメンテナンス性、コストの点で好ましく用いられる。
減圧条件としては、例えば、13332.2Pa(100mmHg)以下、好ましくは399.66Pa(30mmHg)以下となるまで減圧することが挙げられる。
【0025】
また、既述のように蒸発釜における加熱手段及び冷却釜の冷却手段としてヒートポンプを使用することも好ましい態様である。ヒートポンプの放熱部で製版処理廃液を加熱する一方、ヒートポンプの吸熱部で前記冷却釜中の水蒸気を冷却することができ、廃液の加熱濃縮をヒートポンプの発熱で行い、水蒸気の凝縮をヒートポンプの吸熱で行うため熱効率がよく、電熱器等の加熱手段を用いた場合に比較し、局所的に高熱とならない、より安全性が高い、二酸化炭素の排出量が減少するなどの利点を有する。
加熱条件は、水流ポンプや真空ポンプで得られやすい圧力である666.61Pa(5mmHg)〜13332.2Pa(100mmHg)に対応した温度域が選択される。具体的には、加熱温度は、例えば、20℃〜80℃の範囲であり、より好ましくは25℃〜45℃の範囲である。
減圧を行わずにより高温で蒸留し、濃縮を行うこともできるが、その場合には、より多くの電力を要する。従って、減圧することにより加熱温度を低くし、使用電力を抑制することができる。
この蒸発濃縮装置において、製版処理廃液を蒸発濃縮する工程では、製版処理廃液は、蒸発釜中で加熱手段により加熱されて、容量基準で1/2.5〜1/5となるように蒸発濃縮される。ここで、濃縮比が1/2.5未満であると処理すべき廃液量の減少が効果的に行われず、また、1/5を超えて濃縮した場合、蒸発濃縮装置30の蒸発釜内で濃縮された廃液に起因する固形物の析出が生じやすくなり、メンテナンス性が低下する懸念がある。
【0026】
また、本実施形態に係る現像処理廃液のリサイクル方法では、さらに、分離された再生水を一時貯蔵する再生水タンク50と、再生水の自動現像機10への供給を制御する蒸留再生水再利用装置60とを備える。蒸留再生水再利用装置60は、好ましくは、再生水を自動現像機10に供給する補充水タンク80と配管により連結され、さらに、配管内の圧力を測定する圧力計と、ポンプとを備える。
また、蒸留再生水再利用装置60は再生水の組成を分析する分析装置を備えていてもよい。分析装置により、再生水の成分を分析し、その成分に応じて、再生水の中和を行ってpHを調整したり、再生水に新水を供給したり、などの処理を行い、再生水の組成を調製するための各手段を有していてもよい。
回収された再生水は、蒸留再生水再利用装置60が備える圧力計で測定された圧力値に応じて、前記ポンプの駆動が制御され、ポンプの駆動による所定の圧力と量で前記補充水タンク80から前記自動現像装置10に供給される。自動現像機10には、現像補充液タンク70から現像補充液が供給される。
【0027】
このシステムで得られた再生水は、既述の有機溶剤を含有するため、自動現像機の現像補充液の希釈水、または、リンス水として用いるために適した組成を有するものである。このため、通常であれば、そのまま一般排水に放出し難い再生水であっても、本システムにより、好適にリサイクルが可能となった。
なお、リンス水とは、現像処理後、或いは、現像に引き続き行われる中和処理後の平版印刷版を洗浄し、平版印刷版表面に残存する各処理液を除去するために用いられる水を指す。
本実施形態においては、現像補充液は、希釈され自動現像機10の現像浴に供給される。図1に示すシステムでは、現像補充液タンク70からの供給量に応じて補充水タンク80から供給する再生水の量を制御して、自動現像機10内に配置された図示されない現像層内で所定倍率に現像補充液を希釈する態様を示すが、本発明はこの態様に限定されず、予め、現像補充液と再生水とを混合し、現像補充液を所定の倍率に希釈してから現像浴内に供給してもよい。なお、現像補充液の組成によっては、希釈せずにそのまま供給されてもよい。
【0028】
<現像補充液>
本明細書における現像補充液について説明する。
自動現像機10の現像浴内に最初に仕込んだ現像液は、感光性平版印刷版の処理により発生した溶出物により劣化する。また、現像液がアルカリ性であるため空気中の二酸化炭素の吸収に起因してpHが低下し劣化する。従って、自動現像機10において長期間連続的に現像処理を行うためには、通常、感光性平版印刷版の現像品質を維持するために、劣化を補償する現像補充液を間欠的にまたは連続的に補充する必要がある。
本明細書における「現像液」とは、特にことわりのない限りは、未処理の現像液を意味し、また、「現像補充液」とは、感光性平版印刷版の現像処理や二酸化炭素の吸収等に伴い劣化した現像浴中の現像液に補充する現像用補充液を意味する。
通常は、自動現像機10へ供給される現像補充液は、劣化した現像液の活性度を回復させるため、最初に現像浴に仕込んだ現像液と同じ活性度、言い換えれば、同一処方の組成物であるか、当初の現像液よりも高活性である必要がある。
【0029】
現像補充液の現像浴への導入方法としては、(1)当初用いた現像液よりも高活性の現像補充液と水とを一定量の割合で、それぞれ別々に現像浴に導入する方法、(2)当初用いた現像液よりも高活性の現像補充液と水とを一定量の割合で予め混合して希釈した後、現像浴に導入する方法、及び、(3)最初から一定濃度に調整された現像補充液をそのまま現像浴に導入する方法がある。
従来は、(1)又は(2)の方法において、発生する廃液量を少なくするため、できるだけ濃い濃度の(高活性の)現像補充液を少量添加することが行われている。しかしながら、現像補充液として高活性のものを使用すると、現像浴中の現像液の塩濃度が高くなるため、現像処理により発生した溶出物が析出を起こしやすくなる懸念が生じる。また、少量の添加では精密な制御が必要となる。
従来の方法では、現像補充液の添加量を増加させると、それに伴い処理すべき製版処理廃液の量が増加するという問題があった。これに対し、現像補充液と再生水を混合して得られる、当初用いた現像液と同じかそれ以上の現像活性度を有する希釈された現像補充液の濃度を、標準濃度(現像補充液+再生水の混合液の標準的な濃度、或いは、(3)の方法で用いられる希釈されない現像補充液の標準的な濃度)よりも低い濃度として、同一の活性を達成するために前記希釈現像補充液を標準補充量よりも多い量、現像浴に導入することにより、現像処理で溶出した溶出物が析出しにくくなる。通常は、低濃度の現像補充液を大量に添加することで活性を一定に維持しようとした場合、現像浴中において現像補充液由来の塩の濃度は低く抑えられ、析出物の発生を抑制しながら高品質の現像処理を継続することができるが、現像処理廃液量も多くなる。しかし、本発明の方法では、現像処理廃液から分離された再生水を自動現像機10へ供給し、再利用する。このため、本発明の方法によれば、従来法に比較して、現像補充液の供給量に対するシステム外に排出される現像処理廃液の割合を、現像補充液の供給量に対して飛躍的に低減させることができる。
【0030】
本発明における製版処理廃液は、濃縮度が、容量基準で、1/2.5〜1/5(=濃縮後の製版処理廃液/濃縮前の製版処理廃液)の範囲に濃縮されるが、1/3〜1/5の範囲に濃縮されることが好ましい。この範囲であると、濃縮釜の汚れが小さく、連続運転が長期にわたって可能である。また、得られた再生水は再利用が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない。本発明においては、濃縮度とは容量基準で、濃縮前の製版処理廃液の総容量を分母とし、濃縮後の製版処理廃液の総容量を分子とする分数の値で標準化して表す。
【0031】
再生水タンク50に貯留された再生水は、蒸留再生水再利用装置60を介して、補充水タンク80に送られる。現像補充液タンク70から現像補充液原液が自動現像機10に適宜送液される。
【0032】
本発明に好適に使用可能な製版処理廃液のリサイクル方法に係る装置の具体例としては、例えば、特許第4774124号公報に記載の平版印刷版製版処理廃液削減装置等、特開2011−90282号公報等に記載の廃液処理装置が挙げられる。
【0033】
以下に、本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において感光性平版印刷版の現像に用いる現像液、補充液、及び感光性平版印刷版について詳細に説明する。
【0034】
<現像液>
次に、本発明の現像処理廃液のリサイクル方法において、感光性平版印刷版の現像に好適に使用される平版印刷版用現像液について詳しく述べる。なお、本明細書中において、特にことわりのない限り、「現像液」とは、現像開始液(狭義の現像液)と現像補充液の両方を含む意味で用いられる。
本発明の平版印刷版用現像液としては、ネガ型現像液、ポジ型現像液の両方が使用可能であるが、ネガ型現像液がより好ましい。
また、本発明に用いられる現像液は、既述の現像補充液と同様に沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む。
以下に述べる現像液は既述のように現像補充液を包含するが、現像補充液を供給する場合には、先に述べたように、目的に応じてそのままの濃度で供給されてもよく、水で希釈されて供給されてもよい。希釈される場合、現像補充液に対して10倍量(質量換算)以内の水で希釈されることが好ましく、1倍量以上〜7倍量以下(質量換算)の水で希釈することがより好ましい。
【0035】
〔ネガ現像液〕
本明細書におけるネガ型現像液とは、ネガ型の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版の露光後の現像に使用される現像液を指す。
本発明の感光性平版印刷版の現像に用いられるネガ型現像液は、前記有機溶剤と、アルカリ金属の水酸化物と界面活性剤とを少なくとも含有し、珪酸塩化合物を含まないpH10〜12.5のアルカリ性現像液であることが好ましい。本発明に用いる好ましい現像液は、後述する特定のアニオン性界面活性剤を1.0質量%〜10質量%の範囲で含有し、かつpH10〜12.5である感光性平版印刷版用現像液である。
【0036】
(有機溶剤)
本発明においては、感光性平版印刷版の現像に用いる現像液・現像補充液としては、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含むことを要する。
現像液(現像補充液を包含する)に含まれる有機溶剤の沸点が、100℃より低いと揮発しやすく、300℃を越えるとより濃縮し難くなるので好ましくない。
現像液に含まれる好ましい有機溶剤の含有量としては、5質量%〜30質量%の範囲であり、より好ましくは5質量%〜20質量%の範囲であり、この範囲より少ないと製版処理廃液の濃縮過程で析出物が発生し、自動現像機の洗浄が必要となり、また、この範囲より多いと平版印刷版の画像部が侵され、得られた平版印刷版の耐刷性が劣化する。
【0037】
現像液が含む有機溶剤の種類としては、沸点が100℃〜300℃の範囲であれば、どのような有機溶剤であってもよいが、好ましくは、2−フェニルエタノール(沸点:219℃)、3−フェニル−1−プロパノール(沸点:238℃)、2−フェノキシエタノール(沸点:244〜255℃)、ベンジルアルコール(沸点:205℃)、シクロヘキサノール(沸点:161℃)、モノエタノールアミン(沸点:170℃)、ジエタノールアミン(沸点:268℃)、シクロヘキサノン(沸点:155℃)、エチルラクテート(沸点:155℃)、プロピレングリコール(沸点:187℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:205℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、N−エチルピロリドン(沸点:218℃)、グリセリン(沸点:290℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:124℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:145℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃)が挙げられ、特にベンジルアルコール、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンが好ましい。
【0038】
なお、後述するアルカリ剤のアミン類も、沸点が100℃〜300℃の範囲であれば、本発明における有機溶剤として取り扱う。
【0039】
(界面活性剤)
ネガ型現像液に含まれる界面活性剤は、アニオン界面活性剤または非イオン界面活性剤であることが好ましい。
ネガ型現像液において用いられる最適なアニオン界面活性剤は、下記一般式(I−A)及び一般式(I−B)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
好ましいネガ型現像液としては、下記一般式(I−A)、一般式(I−B)で表されるアニオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一種のアニオン性界面活性剤を1.0質量%〜10質量%の範囲で含有し、かつpH10〜12.5である感光性平版印刷版用現像液である。
【0040】
【化1】

【0041】
(前記一般式(I−A)中、Rは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;pは0,1又は2を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;mは1〜100の整数を表す。mが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい;Mは、Na、K、LiまたはNHを表す。
前記一般式(I−B)中、Rは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;qは0,1又は2を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;nは1〜100の整数を表す。nが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい;Mは、Na、K、LiまたはNHを表す。)
【0042】
本発明の好ましい実施態様において、上記一般式(I−A)及び一般式(I−B)中、R及びRの好ましい例としては、それぞれ−CH−、−CHCH−、または−CHCHCH−が挙げられ、より好ましい例としては−CHCH−が挙げられる。また、R及びRの好ましい例としては、CH、C、C、またはCが挙げられる。また、p及びqは0または1であることが好ましい。Y及びYはそれぞれ単結合であることが好ましい。また、n、及びmはそれぞれ1〜20の整数であることが好ましい。
【0043】
一般式(I−A)、または一般式(I−B)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
【0044】
【化2】

【0045】
現像液中におけるアニオン性界面活性剤の添加量は、現像液中に1質量%〜10質量%が適当であり、好ましくは2質量%〜10質量%を添加することが効果的である。ここでアニオン性界面活性剤の添加量が1質量%以上であれば、現像性および画像記録層(感光層)成分の溶解性が良好であり、10質量%以下とすることで印刷版の耐刷性が良好となる。
【0046】
本発明に係る現像液に使用されるその他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等の非ニオン界面活性剤が好ましく挙げられる。
【0047】
また、非イオン界面活性剤としては好ましくは、下記一般式(II-A)で表される界面活性剤、及び一般式(II-B)で表される界面活性剤が挙げられる。
【0048】
【化3】

【0049】
(前記一般式(II-A)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。
前記一般式 (II-B)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。)
【0050】
一般式(II−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。一般式(II−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ホリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
前記一般式(II−A)および一般式(II−B)で表される化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数(n)は、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数(m)は、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックの共重合体でもよい。
前記一般式(II−A)および一般式(II−B)で表される非イオン芳香族エーテル系界面活性剤は、単独または2種類以上を組み合わせて使用される。
下記に一般式(II−A)および一般式(II−B)で表される化合物の具体例を示す。なお、下記例示化合物「Y−5」におけるオキシエチレン繰り返し単位及びオキシプロピレン繰り返し単位は、ランダム結合、ブロック連結のいずれの態様をもとりうる。
【0052】
【化4】

【0053】
【化5】

【0054】
これらの非イオン界面活性剤は1種単独、もしくは複数種を組み合わせて使用することができる。また、これらの非イオン界面活性剤の現像液中における含有量は、有効成分換算で、0.5質量%〜10質量%の範囲で含むことが好ましく、3質量%〜10質量%の範囲で含むことがより好ましい。現像補充液における界面活性剤の含有量も同様である。
【0055】
(現像液に用いうるその他の成分)
現像液には2価金属に対するキレート剤を含有させてもよい。2価金属の例としては例えば、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。該2価の金属に対するキレート剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、及びカルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩;エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、並びに1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩などのアミノポリカルボン酸類;2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、2−ホスホノブタノン−2,3,4−トリカルボン酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、1−ホスホノエタン−1,2、2−トリカルボン酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩、並びにアミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、及びそのナトリウム塩などの有機ホスホン酸類が挙げられる。
このようなキレート剤の最適量は使用される水の硬度およびその使用量に応じて変化するが、一般的には、キレート剤の含有率は、使用時の現像液中に0.01質量%〜5質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜0.5質量%の範囲である。
【0056】
アニオン性界面活性剤を現像液に含有させると、発泡しやすくなる場合があるため、現像液にはさらに消泡剤を添加してもよい。消泡剤を添加する場合には、現像液に対して0.00001質量%以上添加することが好ましく、0.0001質量%〜0.5質量%程度添加することがより好ましい。
本発明の現像液に用いうる消泡剤としては、フッ素系消泡剤、シリコーン系消泡剤、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等が挙げられる。
【0057】
フッ素系消泡剤としては、下記式で表される化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等が挙げられる。
【0058】
【化6】

【0059】
(上記式中、RはH又はアルキル基、Rfはアルキル基のHの一部又は全部をFで置き換えたフッ化炭素基(アルキル基の炭素数5〜10程度)、XはCO又はSO、nは約1〜約10の整数を表す。)
上記フッ素系消泡剤の例のうち、HLB1〜9のフッ素系消泡剤、特にHLB1〜4のフッ素系消泡剤が好ましく用いられる。上記のフッ素系消泡剤はそのまま、あるいは水その他の溶媒等と混合した乳濁液の形で現像液に添加される。
【0060】
シリコーン系消泡剤としては、ジアルキルポリジオキサン、好ましくは下記に示すジメチルポリジオキサンをそのまま、あるいはO/W型乳濁液としたもの、
【0061】
【化7】

【0062】
下記に示すアルコキシポリ(エチレンオキシ)シロキサン、
【0063】
【化8】

【0064】
ジメチルポリジオキサンにカルボン酸基あるいはスルホン酸基を一部導入して変性したもの、あるいはこれらシリコーン化合物を一般に知られるアニオン界面活性剤と共に水と混合して乳濁液としたものを用いてもよい。
【0065】
アセチレンアルコールとは、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和アルコールである。また、アセチレングリコールとは、アルキンジオールとも呼ばれ、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和グリコールである。
より具体的には、以下の一般式(1)、(2)で示されるものがある。
【0066】
【化9】

【0067】
(一般式(1)中、Rは炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。)
【0068】
【化10】

【0069】
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、ただしa+bは0〜30の範囲である。)
一般式(2)中、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基などが挙げられる。
【0070】
アセチレンアルコール及びアセチレングリコールの更なる具体例として以下のものが挙げられる。
(1)プロパルギルアルコール
(2)プロパルギルカルビノール
(3)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール
(4)3−メチル−1−ブチン−3−オール
(5)3−メチル−1−ペンチン−3−オール
(6)1,4−ブチンジオール
(7)2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール
(8)3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール
(9)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール
(10)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの酸化エチレン付加物(下記の構造)
【0071】
【化11】

【0072】
(11)2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール
【0073】
これらのアセチレンアルコール、アセチレングリコールは市場で入手することができ、市販品として例えば Air Products and Chemicals Inc.の商品名サフィノール シリーズ、及び、日信化学株式会社製の商品名オルフィン シリーズなどが知られている。市販品の具体例としては、上記(3)としてサフィノール61、上記(4)としてオルフィンB、上記(5)としてオルフィンP、上記(7)としてオルフィンY、上記(8)としてサフィノール82、上記(9)としてサフィノール104、オルフィンAK−02、上記(10)としてサフィノール400シリーズ、上記(11)としてサフィノールDF−110(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0074】
また、ネガ型現像液には現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、及び無機酸のアルカリ金属塩類から選ばれる1種以上の化合物を加えてもよい。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウムなどを単独で用いてもよく、もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
【0075】
また、ネガ型現像液にはアルカリ剤として、たとえば第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、および同リチウムなどの無機アルカリ剤および、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤から選ばれる化合物を1種単独で、もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
【0076】
ネガ型現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下に示す成分を併用してもよい。併用可能な成分としては、例えば安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の有機溶剤;この他、キレート剤、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0077】
ネガ型現像液のpHは、10〜12.5であり、11〜12.5であるのが好ましい。また、ネガ型現像液の導電率xは2mS/cm<x<30mS/cmであることが好ましく、5mS/cm〜25mS/cmであるのがより好ましい。
【0078】
また、導電率を調整するため、導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。
【0079】
〔ポジ型現像液〕
本明細書におけるポジ型現像液とは、ポジ型の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版の露光後の現像に使用される現像液を指す。
本発明において感光性平版印刷版の現像に用いる現像液(現像補充液を包含する)としては、前記特定の有機溶剤以外の成分として、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分として含み、実質上、珪酸塩化合物を含有しないアルカリ現像液を用いることが好ましい。本発明では、このような現像液を以下、「非シリケート現像液」と称する。なお、ここで「実質上」とは不可避の不純物及び副生成物としての微量の珪酸塩化合物の存在を許容することを意味する。
【0080】
(有機溶剤)
以下詳述するポジ型現像液には、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む。これらの有機溶剤の例、好ましい例としては前記したネガ型現像液における有機溶剤が好ましい例も含めてそのまま適用できる。
【0081】
(非還元糖及び塩基)
従来の感光性平版印刷版の現像液として、最も一般的に使用されているのは、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸塩を含む水溶液である。その理由は珪酸塩の成分である酸化珪素SiOとアルカリ金属酸化物MOの比率(一般に[SiO]/[MO]のモル比で表す。)と濃度とによってある程度現像性の調節が可能とされるためである。また、ほとんど全てのポジ型感光性平版印刷版が現像にpH13前後の強アルカリを必要とし、珪酸塩がそのpH領域で良好な緩衝作用を示し、安定した現像ができるためである。
しかしながら、主成分である珪酸塩は、アルカリ性領域では安定であるが、中性ではゲル化、不溶化し、また蒸発乾固により析出するとフッ化水素酸のような強烈な酸にしか溶けなくなる欠点を持っている。このため、この製版処理廃液を濃縮する過程で珪酸塩が不溶化し析出してしまうので、濃縮液を別の容器に移液したり、濃縮処理を継続して実施したりするためには不溶化した珪酸塩を取り除く必要があり、濃縮装置のメンテナンス性が著しく低下する。
【0082】
これに対し、前記非シリケート現像液は、その主成分が、非還元糖から選ばれる少なくとも一つの化合物と、少なくとも一種の塩基からなる。非シリケート現像液は、そのpHはおよそ9.0〜13.5の範囲となるように調整され用いられる。このため、ポジ型現像液においても、既述のように珪酸塩化合物を含有しない非シリケート現像液を用いることが好ましい。
【0083】
かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、これらは何れも本発明に好適に用いられる。トレハロース型少糖類の例には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体の例としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールの例としてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)もまた好適に用いられる。これらの中で本発明の現像液に用いられる好ましい非還元糖は糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることから好ましい。
【0084】
これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1質量%〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、1質量%〜20質量%である。この範囲において十分な緩衝作用が得られ、且つ、この範囲の濃度において、高濃縮化が容易に行われ、原価が高くなるといった問題が生じない。
【0085】
尚、還元糖を塩基と組み合わせて使用した場合、経時的に褐色に変色し、pHも徐々に下がり、よって現像性が低下するという問題点がある。
【0086】
非還元糖に組み合わせる塩基としては、従来より知られているアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム、燐酸三アンモニウム、燐酸二ナトリウム、燐酸二カリウム、燐酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤を用いてもよい。
【0087】
これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で好ましいのは水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムである。その理由は、非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でpH調整が可能となるためである。また、燐酸三ナトリウム、燐酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0088】
なお、前記アルカリ剤のアミン類も、沸点が100℃〜300℃の範囲であれば、本発明における沸点が100℃〜300℃の有機溶剤に包含され、計算上、該有機溶剤の総含有量に含まれるものとして取り扱う。
【0089】
これらのアルカリ剤は、現像液のpHが9.0〜13.5の範囲になるように現像液中に含有され、その含有量は所望のpH、非還元糖の種類と添加量によって決められる。現像液のより好ましいpHの範囲は10.0〜13.2である。
【0090】
ポジ型現像液には更に、糖類以外の弱酸と強塩基からなるアルカリ性緩衝液を併用できる。かかる緩衝液に用いられる弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。このような弱酸としては、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION などに記載されているものから選ばれ、例えば2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(pKa 12.74)、トリフルオロエタノール(pKa 12.37)、トリクロロエタノール(pKa 12.24)などのアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(pKa 12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(pKa 12.05)などのアルデヒド類、サリチル酸(pKa 13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(pKa 13.84)、カテコール(pKa 12.6)、没食子酸(pKa 12.4)、スルホサリチル酸(pKa 11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(pKa 12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(pKa 11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(pKa 11.82)、ハイドロキノン(pKa 11.56)、ピロガロール(pKa 11.34)、o−クレゾール(pKa 10.33)、レゾルシノール(pKa 11.27)、p−クレゾール(pKa 10.27)、m−クレゾール(pKa 10.09)などのフェノール性水酸基を有する化合物、2−ブタノンオキシム(pKa 12.45)、アセトキシム(pKa 12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンジオキシム(pKa 12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(pKa 12.10)、ジメチルグリオキシム(pKa 11.9)、エタンジアミドジオキシム(pKa 11.37)、アセトフェノンオキシム(pKa11.35)などのオキシム類、アデノシン(pKa 12.56)、イノシン(pKa 12.5)、グアニン(pKa 12.3)、シトシン(pKa 12.2)、ヒポキサンチン(pKa 12.1)、キサンチン(pKa 12.9)などの核酸関連物質、ジエチルアミノメチルホスホン酸(pKa 12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(pKa 12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(pKa 12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(pKa 11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸−1−ヒドロキシ(pKa 11.52)、ベンズイミダゾール(pKa 12.86)、チオベンズアミド(pKa 12.8)、ピコリンチオアミド(pKa 12.55)、バルビツル酸(pKa 12.5)などの弱酸が挙げられる。
【0091】
これらの弱酸の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸である。これらの弱酸に組み合わせる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
上記の各種アルカリ剤は濃度および含有する化合物の組み合わせを選択することにより、pHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0093】
(界面活性剤)
ポジ型現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、先に現像補充液において説明した界面活性剤と同様に、種々の界面活性剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
【0094】
ポジ型現像液に用いられる界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0095】
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0096】
上記の界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。現像液中に0.5質量%〜10質量%、より好ましくは3質量%〜10質量%の範囲で含有される。
【0097】
界面活性剤の含有量が上記範囲において、蒸留工程で発泡して濃縮作業の安定性が損なわれることがなく、発泡に起因して設備が製版処理廃液で汚染され、自動現像機等のメンテナンスに手間がかかるといった問題の発生が抑制される。また、充分な現像性が得られ、現像液中に画像形成層由来の現像カスの発生も抑制され、界面活性剤の存在に起因する現像液の寿命の低下を生じ難い。
【0098】
(現像安定化剤)
本発明の現像液には、種々の現像安定化剤が用いられる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。
【0099】
(還元剤)
ポジ型現像液には更に還元剤を加えることができる。還元剤は印刷版の汚れを防止する。好ましい有機還元剤としては、ハイドロキノン、レゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち、汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。還元剤を用いる場合には、使用時の現像液に対して好ましくは、0.05質量%〜5質量%の範囲で含有される。
【0100】
(その他の添加剤)
ポジ型現像液には更に必要に応じて、更に公知の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、有機カルボン酸、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤および硬水軟化剤などが挙げられる。
【0101】
(水)
前述のネガ型現像液、ポジ型現像液の残余の成分は水である。本発明の現像液は現像原液の形で調製されてもよい。つまり、本発明の現像液を、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液として調製しておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度であることが適当である。
【0102】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(現像補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
現像液(現像補充液を含む)には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて既述のように種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。更に現像液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を含有させてもよい。
【0103】
<平版印刷版>
以下、本発明の製版処理廃液のリサイクル方法に好ましく適用できる平版印刷版について詳しく説明する。まずネガ型平版印刷版について説明し、次いでポジ型平版印刷版について説明する。
【0104】
〔ネガ型平版印刷版〕
本発明の製版処理廃液のリサイクル方法においては、以下に詳述するネガ型平版印刷版を使用することにより、効果が特に顕著になる。このため、ネガ型平版印刷版の使用が好ましい。ネガ型平版印刷版は、支持体上にネガ型感光性組成物を含有するネガ型画像記録層を有する。
すなわち、本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において処理される感光性平版印刷版原版のネガ型画像記録層を構成する好ましい感光性組成物としては、赤外線吸収剤、重合開始剤、エチレン性不飽和結合含有単量体、及びバインダーポリマーを含むいわゆる熱重合系またはサーマル重合系感光性組成物と、光重合開始系、光重合性組成物、バインダーポリマーを含有するいわゆる光重合系感光性組成物とが挙げられる。以下に、光重合系感光性組成物について説明する。
【0105】
[光重合系感光性組成物]
本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において処理される平版印刷版作製用のネガ型平版印刷版の画像記録層に用いられる感光性組成物の一例として挙げられる光重合系感光性組成物は、可視光線〜紫外線波長域の光に感応する光重合開始系、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物、及びバインダーポリマーを含む。
前記感光性組成物はアルミニウム板等の支持体上に塗布して感光層(画像記録層)を設け、感光性平版印刷版として用いることができる。このような感光性平版印刷版は、支持体上に画像記録層と、任意に保護層とを順次積層してなるものである。また、画像記録層及び任意に設けられる保護層に加え、さらに、任意に下塗り層等を設けてもよい。下塗り層を設ける場合には、これらの層を「順次積層する」とは、支持体上に、下塗り層、画像記録層、及び保護層がこの順に設けられることを指し、必要に応じて他の層を更に設けてもよい。例えば、ある実施形態では、下塗り層、保護層は必要に応じて設らける。また、目的に応じて他の層、例えば、中間層、バックコート層、等をさらに設けてもよい。
【0106】
(可視光線〜紫外線波長域の光に感応する光重合開始系)
可視光線〜紫外線波長域の光に感応する光重合開始系とは、可視光線〜紫外線波長域の光を吸収して、光重合を開始し得る化合物を含む系を意味する。より具体的には、可視光線〜紫外線波長域、好ましくは330nm〜700nmに極大吸収波長を有する増感色素と、光重合開始剤との組み合わせが挙げられる。光重合開始剤は2種以上の光重合開始剤を用いてもよい(併用系)。このような光重合開始系として、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の、増感色素(染料)と、光開始剤あるいは2種以上の光開始剤の併用系を適宜選択して用いることができる。
【0107】
400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG−YAGレーザーを光源とする場合にも、種々の光開始系が提案されており、例えば、米国特許第2,850,445号に記載のある種の光還元性染料、例えばローズベンガル、エオシン、エリスロシンなど、あるいは、染料と開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号、特開昭54−155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58−15503号)、ビイミダゾール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−1504号、特開昭59−140203号、特開昭59−189340号、特開昭62−174203号、特公昭62−1641号、米国特許第4766055号)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63−258903号、特開平2−63054号など)染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開昭64−13140号、特開昭64−13141号、特開昭64−13142号、特開昭64−13143号、特開昭64−13144号、特開昭64−17048号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、特開平1−138204号など)ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2−179643号、特開平2−244050号)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号、特開平4−219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8−334897号)等を挙げることができる。
【0108】
また、最近400nm〜410nmの波長のレーザー(バイオレットレーザー)が開発され、それに感応する450nm以下の波長に高感度を示す光重合開始系が開発されており、これらの光開始系も使用される。例えば、カチオン色素/ボレート系(特開平11−84647号公報)、メロシアニン色素/チタノセン系(特開2000−147763号公報)、カルバゾール型色素/チタノセン系(特開2001−42524号公報)等を挙げることができる。
【0109】
更に上記光開始系に必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物を加えることにより更に光開始能力が高められることが知られている。これらの光重合開始系の使用量は後述のエチレン性不飽和化合物100質量部に対し、0.05質量部〜100質量部、好ましくは0.1質量部〜70質量部、更に好ましくは0.2質量部〜50質量部の範囲で用いられる。
【0110】
(少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物)
少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物(以下エチレン性不飽和結合含有化合物とも呼ぶ)とは、感光性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。付加重合可能なエチレン性不飽和結合を含む化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
前記モノマーが脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルである場合、その具体例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、及びマレイン酸エステルが挙げられる。
アクリル酸エステルの例としては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0111】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメ
チロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等が挙げられる。
【0112】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0113】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物も挙げられる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレシビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0114】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0115】
CH=C(R)COOCHCH(R’)OH (A)
(ただし、RおよびR’はHあるいはCHを示す。)
【0116】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。
【0117】
(バインダーポリマー)
光重合系感光性組成物中のバインダーポリマー(高分子結合剤)としては、該画像記録層の皮膜形成剤としてだけでなく、アルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。
この様な有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開
昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。
【0118】
アルカリ水に可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体の別の例としては、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この外に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げる観点からは、アルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン及びエピクロロヒドリンのポリエーテル等も前記有機高分子重合体として有用である。
【0119】
また、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号に記載のポリウレタン樹脂も本発明の用途には有用である。
【0120】
これら高分子重合体の側鎖にラジカル反応性基を導入することにより、得られる硬化皮膜の強度を向上させることができる。ラジカル反応性基の例としては、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等の付加重合反応し得る官能基、及びメルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等の光照射によりラジカルになり得る官能基が挙げられる。上記付加重合反応し得る官能基は、アクリル基、メタクリル基、アリル基、又はスチリル基などのエチレン性不飽和結合基であることが特に好ましいが、アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、燐酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルフォン酸基、及びアンモニオ基から選ばれる官能基であることも有用である。
【0121】
上記画像記録層の現像性を維持するためには、バインダーポリマーは適当な分子量、酸価を有することが好ましく、重量平均分子量が5,000〜30万であり、酸価20〜200の高分子重合体が有効に使用される。
これらのバインダーポリマーは光重合系感光性組成物中に任意な量を混和させることができる。好ましくは10質量%〜90質量%、より好ましくは30質量%〜80質量%である。バインダーポリマーの含有量が上記範囲において、形成される画像強度等の点で好ましい結果を与える。また光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物とバインダーポリマーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2てあり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
【0122】
(その他の成分)
また、上記画像記録層においては、以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
更に画像記録層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。
【0123】
[熱重合系感光性組成物]
次に、熱重合系感光性組成物について説明する。熱重合系感光性組成物は通常、赤外線吸収剤、重合開始剤、エチレン性不飽和結合含有単量体、及びバインダーポリマーを含む。
【0124】
(赤外線吸収剤)
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤としては、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
【0125】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0126】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0127】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0128】
また、赤外線吸収剤の好ましい他の例としては、特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0129】
【化12】

【0130】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0131】
【化13】

【0132】
一般式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。ここでXは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を表し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0133】
【化14】

【0134】
Xaは後述するZ1−と同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0135】
Ar及びArは互いに同じでも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基の例としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基の例としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、及び炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y及びYは互いに同じでも異なっていてもよく、それぞれ、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R及びRは、互いに同じでも異なっていてもよく、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基の例としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、及びスルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、互いに同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、R、R、R及びRは、それぞれ、好ましくは水素原子を示す。また、Z1−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ1−は必要ない。記録層塗布液の保存安定性から、Z1−が示すカウンターイオンの好ましい例は、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましい例は、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0136】
これらの赤外線吸収剤は、熱重合系感光性組成物を感光性平版印刷版に適用する場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型感光性平版印刷版を作製した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.5〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.6〜1.15の範囲である。
【0137】
(重合開始剤)
熱重合系感光性組成物は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させるための重合開始剤として、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤であるスルホニウム塩重合開始剤を含有する事が好ましい。
本発明においては、スルホニウム塩重合開始剤を前述した赤外線吸収剤と併用することで、赤外線レーザーを照射した際に赤外線吸収剤が発熱し、その熱によりラジカルを発生することができる。本発明においては、これらの組合せにより、高感度なヒートモード記録が可能となるため、このような組合せが好ましい。
【0138】
本発明において好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(I)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0139】
【化15】

【0140】
一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11−はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0141】
一般式(I)で表されるオニウム塩の具体例は、特開2006−220931号公報に記載の[OS−1]〜[OS−10]であるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
上記したものの他、特開2002−148790号公報、特開2002−148790号公報、特開2002−350207号公報、特開2002−6482号公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
【0143】
本発明においては、上記スルホニウム塩重合開始剤以外の開始剤を用いることもできる。特に、上記スルホニウム塩重合開始剤に加えて、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を併用することもできる。
他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、オニウム塩が高感度であり好ましい。
【0144】
本発明において好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(II)及び(III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【0145】
【化16】

【0146】
一般式(II)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z21−は前記一般式(I)におけるZ11−と同義の対イオンを表す。
【0147】
一般式(III)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z31−は前記一般式(I)におけるZ11−と同義の対イオンを表す。
【0148】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(II)、及び一般式(III)で示されるオニウム塩は、特開2006−220931号公報に記載の[OI−1]〜[OI−10]、[ON−1]〜[ON−5]などであるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
さらに、重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696公報に記載されたもの等を挙げることができる。
【0150】
なお、重合開始剤(ラジカル発生剤)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域
にすることにより、感光性平版印刷版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0151】
熱重合系感光性組成物における重合開始剤の総含有量は、全固形分中、0.1質量%〜50質量%、好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは1質量%〜20質量%である。含有量が0.1質量%以上とすることで良好な感度が得られ、また50質量%以下であれば、感光性平版印刷版に適用した際に印刷時に非画像部に汚れが発生する問題もない。
【0152】
熱重合系感光性組成物は、スルホニウム塩重合開始剤を重合開始剤として含むことが特に好ましく、スルホニウム塩重合開始剤1種のみを用いてもよいし、2種以上の重合開始剤(そのうち少なくとも1種はスルホニウム塩重合開始剤)を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、スルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤を併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合の含有量比(質量比)としては、スルホニウム塩重合開始剤の含有量/他の重合開始剤の含有量の比が、100/1〜100/50の範囲内にあることが好ましく、100/5〜100/25の範囲内にあることがより好ましい。
【0153】
(重合性化合物)
熱重合系感光性組成物に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物の具体例としては、前述の光重合系感光性組成物に記載した使用できるエチレン性不飽和結合含有化合物に使用可能なものが挙げられる。
【0154】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0155】
(バインダーポリマー)
熱重合系感光性組成物に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することが
することができる。中でも、本発明における熱重合系感光性組成物に用いられる好適なバインダーポリマーは、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーが挙げられる。以下、このポリマーを適宜、「特定バインダーポリマー」と称し、詳細に説明する。
【0156】
【化17】

【0157】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは連結基を表し、Aは酸素原子又はNR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
【0158】
一般式(i)におけるRで表される連結基は、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される原子又は原子の集団から構成され、その置換基を除いた原子数が2〜30である連結基であってもよい。その具体例としては、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、及び置換アリーレン、並びにこれらから選択される2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造が挙げられる。
で表される連結基が鎖状構造である場合、当該鎖状構造の連結基の例としては、エチレン及び、プロピレンが挙げられる。また、上記等のアルキレンがエステル結合を介して複数連結されている構造もまた、好ましい連結基の一例である。
【0159】
この中でも、一般式(i)におけるRで表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、Rは、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
【0160】
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、Rは縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
【0161】
で表される連結基としては、更に、原子数が5〜10のものが好ましい。Rで表される連結基の構造は、その構造中にエステル結合を有する鎖状構造、又はその構造中に前記の如き環状構造を有する鎖状構造であることが好ましい。
【0162】
で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキ
ルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、
【0163】
カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0164】
熱重合系感光性組成物を感光性平版印刷版に適用する場合には、画像記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
【0165】
一般式(i)におけるAがNR−である場合のRは、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このRで表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0166】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
【0167】
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。Rが有してもよい置換基としては、Rが導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、Rの炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
一般式(i)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例としては、特開2006−220931号公報[0134]〜[0143]に記載の具体例であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
一般式(i)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における熱重合系感光性組成物に用いられる特定バインダーポリマーは、一般式(i)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1モル%〜99モル%、より好ましくは5モル%〜40モル%、更に好ましくは5モル%〜20モル%の範囲で含有される。
【0169】
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0170】
本発明における特定バインダーポリマーの重量平均分子量は、画像形成性や感光性平版印刷版の耐刷性の観点から適宜決定される。通常、分子量が高くなると、耐刷性は優れるが、画像形成性は劣化する傾向にある。逆に、低いと、画像形成性はよくなるが、耐刷性は低くなる。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
【0171】
本発明における熱重合系感光性組成物に用いられるバインダーポリマーは、特定バインダーポリマー単独であってもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1質量%〜60質量%、好ましくは1質量%〜40質量%、更に好ましくは1質量%〜20質量%の範囲で用いられる。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。
【0172】
熱重合系感光性組成物中での特定バインダーポリマー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meq/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
【0173】
(併用可能な他のバインダーポリマー)
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CHZ)=CH、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
【0174】
また、併用可能な他のバインダーポリマーは、更に、アルカリ可溶性基を有するものが好ましい。バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜3.0mmol、より好ましくは0.2mmol〜2.0mmol、最も好ましくは0.45mmol〜1.0mmolである。この含有量が、0.1mmol以上であることで現像時に析出して生じる現像カスが発生が抑制され、含有量が3.0mmol以下であることで、親水性が適切に保たれ、感光性平版印刷版に適用した際に耐刷性が低下することがない。
【0175】
感光性組成物には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
【0176】
(重合禁止剤)
本発明においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい
。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、全組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0177】
(着色剤)
更に、熱重合系感光性組成物には、その着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は、光重合系感光性組成物からなる層(画像記録層)の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。着色剤の具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料が挙げられる。着色剤としての染料及び顔料の添加量は全組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0178】
(その他の添加剤)
感光性組成物は、更に、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、画像記録層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を含んでもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、及びトリアセチルグリセリンが挙げられる。可塑剤は、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し、一般的に10質量%以下の範囲内の量で感光性組成物中に含有することができる。また、感光性組成物は、後述する感光性平版印刷版における膜強度(耐刷性)の向上を目的とした現像後の加熱・露光の効果を強化するためのUV開始剤や熱架橋剤等を含んでいてもよい。
【0179】
上述した熱重合系または光重合系感光性組成物は、以下に述べる感光性平版印刷版における画像記録層として好適に使用することができる。
【0180】
[感光性平版印刷版]
感光性平版印刷版原版は、支持体上に、画像記録層と、任意に保護層を順次積層してなるものであって、画像記録層が上述した感光性組成物を含む。かかる感光性平版印刷版は、上述した感光性組成物を含む画像記録層塗布液や、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かして、適当な支持体又は中間層上に塗布することにより製造することができる。
【0181】
〔画像記録層〕
画像記録層は、上述した感光性組成物、特に光重合系感光性組成物または熱重合系感光性組成物を含むネガ型画像記録層である。このような光重合系または熱重合性ネガ型画像記録層は、光または熱により重合開始剤が分解し、ラジカルを発生させ、この発生したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こすという機構を有する。これらの画像記録層を有する感光性平版印刷版は、300nm〜1,200nmの波長を有するレーザー光での直接描画での製版に特に好適であり、従来の感光性平版印刷版に比べ、高い耐刷性及び画像形成性を発現するという特徴を有する。
【0182】
前記画像記録層の被覆量は、主に、画像記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が充分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の主要な目的である走査露光用感光性平版印刷版としては、その被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m〜約10g/mの範囲が適当である。より好ましくは0.5g/m〜5g/mである。
【0183】
[支持体]
本発明の感光性平版印刷版の支持体は、親水性表面を有するアルミニウム支持体である。
アルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板であってもよく、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板をアルミニウム基板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来公知の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などに記載のアルミニウム板を適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム基板の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。アルミニウム基板には適宜必要に応じて後述の基板表面処理が施されてもよい。
【0184】
(粗面化処理)
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm〜400C/dmの範囲である。更に具体的には、0.1質量%〜50質量%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20℃〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm〜400C/dmの条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
【0185】
このように粗面化処理したアルミニウム基板は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1質量%〜50質量%、20℃〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50℃〜90℃の温度の15質量%〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の中心線平均粗さRaが0.2μm〜0.5μmであれば、特に方法条件は限定しない。
【0186】
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム基板には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分は、もちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30g/リットル〜500g/リットル、処理液温10℃〜70℃で、電流密度0.1A/m〜40A/mの範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5μm〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5μm〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5nm〜10nm、ポア密度が8×1015個/m〜2×1016個/mの範囲に入るように処理条件を選択することができる。
【0187】
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として好ましくは2mg/m〜40mg/m、より好ましくは4mg/m〜30mg/mで形成される。塗布量は蛍光X線分析法により測定できる。
【0188】
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が好ましくは1質量%〜30質量%、より好ましくは2質量%〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を、例えば、15℃〜80℃で0.5秒〜120秒浸漬することにより実施される。
【0189】
上記感光性平版印刷版には、画像記録層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、以下に挙げる各公報又は各明細書に記載のものを好適に適用することができる。
特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352824号、特開2001−209170号の各公報等が挙げられる。
【0190】
[保護層(オーバーコート層)]
上述した画像記録層の上に保護層を設けることが好ましい。保護層は、画像記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の画像記録層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。基本的には画像記録層を保護するために設けているが、画像記録層がラジカル重合性の画像形成機構を有する場合には酸素遮断層としての役割を持ち、高照度の赤外レーザで露光する場合はアブレーション防止層としての機能を果たす。
また、保護層に望まれる特性としては、上記以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。この様な保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0191】
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0192】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。
ポリビニルアルコールの具体例としては71%〜100%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0193】
感光性平版印刷版原版から平版印刷版を製版するために、本発明においては少なくとも、画像露光工程、現像工程、および水洗工程が行われる。
[熱重合系感光性平版印刷版原版の露光工程]
本発明の製版法における熱重合系感光性平版印刷版原版の露光工程は、光源としては、赤外線レーザが好適なものとして挙げられ、また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。
中でも、波長750nm〜1400nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。感光性平版印刷版に照射されるエネルギーは10mJ/cm〜300mJ/cmであることが好ましい。露光のエネルギーが上記好ましい範囲において画像記録層の硬化が充分に進行し、且つ、露光時の画像記録層におけるレーザーアブレーションが発生し難く、画像の損傷が抑制される。
【0194】
露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
【0195】
上記露光工程に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0196】
本発明においては、露光後すぐに現像処理を行ってもよいが、露光工程と現像工程の間に加熱処理(いわゆるプレヒート)を行ってもよい。この加熱処理の条件としては、温度60℃〜150℃の範囲において、5秒〜5分間とすることが好ましい。
本発明においては、熱重合系感光性組成物を用い、プレヒートすることなく露光後すぐに現像処理を行うことが好ましい。
現像は、図1の自動現像機10に、露光した平版印刷版を供給し、前記したネガ型現像液によって現像することによって行う。
【0197】
また、現像工程の前に、保護層を除去するプレ水洗を行ってもよい。プレ水洗には、例えば、水道水が用いられる。
【0198】
熱重合系感光性平版印刷版は、露光された後(又は、露光及び加熱工程を経た後)、上述した本発明の現像液により現像処理され、さらに本発明のアルミニウムイオンと水溶性キレート化合物刑性能を有するキレート剤を含有した水洗水で処理される。
【0199】
このようにして製版処理された感光性平版印刷版は、特開昭54−8002号公報、同55−115045号公報、同59−58431号公報等に記載されているように、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理されてもよい。感光性平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0200】
感光性平版印刷版の製版においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱、もしくは、全面露光を行うことが有効である。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200℃〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が上記範囲において充分な画像強化作用が得られ、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じ難い。
【0201】
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来公知のPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、プレートクリーナー:CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(いずれも商品名、富士フイルム株式会社製)等が挙げられる。
【0202】
[ポジ型平版印刷版]
また、本発明の製版処理廃液のリサイクル方法には、前述のネガ型平版印刷以外に、ポジ型平版印刷版も使用可能である。ポジ型平版印刷版は、支持体上に、アルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収染料を含み、さらに所望により溶解抑制剤などを含有する画像記録層を設けたものである。
以下に、その画像記録層の構成について説明する。
【0203】
(赤外線吸収染料)
本発明において、画像記録層に用いられる赤外線吸収染料は、赤外線を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収染料として知られる種々の染料を用いることができる。
【0204】
赤外線吸収染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザーでの利用に適する点で特に好ましい。
【0205】
本発明に使用可能な赤外線吸収染料としては、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができる。入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から波長800nmから1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0206】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば、特開平10−39509号公報の段落番号[0050]〜[0051]に記載のものを挙げることができる。
【0207】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、有機金属錯体(例えば、ジチオレート系錯体など)が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂との相互作用形成性の観点から、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料が好ましい。
【0208】
画像記録層の赤外線吸収染料の添加量は画像記録層の質量に対し、感度及び画像記録層の均一性の観点から、0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜50質量%、特に好ましくは0.1質量%〜30質量%である。
【0209】
(アルカリ可溶性樹脂)
画像記録層に使用されるアルカリ可溶性樹脂は、水不溶性且つアルカリ水可溶性の樹脂(以下、適宜、アルカリ可溶性高分子と称する)であって、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。したがって、平版印刷版原版の画像記録層は、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものである。
【0210】
画像記録層に使用されるアルカリ可溶性高分子は、従来公知のものであれば特に制限はないが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基のいずれかの官能基を分子中に有する高分子化合物であることが好ましい。なかでも(1)フしェノール性水酸基を分子中に有する高分子化合物が好ましい。
【0211】
さらに詳しくは特開2001−305722号公報の[0023]〜[0042]で示されている高分子が好ましく用いられる。
【0212】
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0213】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも1つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO2−と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
【0214】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に活性イミド基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
【0215】
アルカリ可溶性高分子が前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アルカリ可溶性が充分となり現像ラチチュードの向上効果が充分に達成されるように、アルカリ可溶性を付与するモノマーは10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。
【0216】
本発明においてアルカリ可溶性高分子が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、又は活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、重量平均分子量が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましい。更に好ましくは、重量平均分量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
【0217】
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であり、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0218】
これらアルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してよく、前記画像形成層全固形分中、30質量%〜99質量%、好ましくは40質量%〜95質量%、特に好ましくは50質量%〜90質量%の添加量で用いられる。画像形成層の耐久性と感度の両面から上記の含有量の範囲が適当である。
【0219】
なお、画像記録層には、溶解抑制剤を含むことが感度の観点から好ましい。溶解抑制剤としては特に限定されないが、4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール系化合物等が挙げられる。
【0220】
また、上記インヒビション(溶解性阻害)改善のための手段を講じた場合、感度の低下が生じるが、この場合、画像記録層にラクトン化合物を含ませることが有効である。露光部に現像液が浸透した際、現像液とこのラクトン化合物が反応し、これにより新たにカルボン酸化合物が発生し、露光部の溶解に寄与して感度が向上するものと考えられる。
【0221】
また、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点では、好ましい。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。
【0222】
他の添加剤としては、例えば、特開平7-92660号公報の[0024]〜[0027]で示されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報[0031]に記載されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。他の好ましい界面活性剤としては、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0059]で示されている化合物が好ましく挙げられる。
【0223】
[塗布量]
画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、皮膜特性及び耐刷性の観点から0.3g/m〜3.0g/mの塗布量で設けることができる。好ましくは0.5g/m〜2.5g/mであり、さらに好ましくは0.8g/m〜1.6g/mである。
【0224】
平版印刷版原版が有する画像記録層は、単層構造であってもよく、また、複数の記録層が積層されてなる重層構造を有していてもよい。重層構造の画像記録層としては、例えば、特開平11−218914号公報に記載されているような記録層が挙げられる。
【0225】
重層構造の画像記録層について説明する。重層構造の画像記録層は、少なくとも2層以上の重層構成であってもよい(以下便宜上、上側層と下側層とからなる2層の場合を説明する)。
【0226】
上側層と下側層を構成するアルカリ可溶性樹脂は、上記に説明したアルカリ可溶性樹脂を適用することができる。上側層は、下側層よりもアルカリに対する溶解性が低いものであるのが好ましい。
【0227】
また、赤外線吸収染料は、いずれかの層に含まれていればよく、また、双方に含まれていてもよい。これら赤外線吸収染料は各層において異なる赤外線吸収染料であってもよく、また各層に複数の化合物からなる赤外線吸収染料を用いてもよい。含有させる量としては、いずれの層に用いる場合にも、上記した通り、添加する層の全固形分に対して0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜50質量%、特に好ましくは0.1質量%〜30質量%の割合で添加することができる。複数の層に添加する場合は、添加量の合計が上記範囲になるように添加することが好ましい。
【0228】
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の[0068]に記載される種々の有機化合物が挙げられる。
【0229】
[支持体]
平版印刷版原版に使用される親水性支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物が挙げられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。中でも、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。
【0230】
支持体に用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0231】
アルミニウム板は各種の表面処理を施されて支持体が形成される。表面処理は、表面親水性の向上、画像記録層との密着性向上等の目的で行われ、表面粗面化処理、例えば、機械的粗面化、電気化学的粗面化、化学的粗面化処理がある。これらについては前述のネガ型平版印刷版の項で述べた支持体が使用できる。
【0232】
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
【0233】
さらに、必要により親水化処理が施される。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0234】
本発明で使用する平版印刷版原版は、支持体上に少なくとも前記した画像記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と画像記録層との間に下塗層を設けることができる。
【0235】
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が挙げられ、これらは2種以上混合して用いてもよい。
【0236】
下塗層の被覆量は耐刷性能の観点から、2mg/m〜200mg/mが適当であり、好ましくは5mg/m〜100mg/mである。
【0237】
上記のようにして作成された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、上記に詳述したアルカリ現像処理液を用いて現像処理を施される。
現像は、図1の自動現像機10に、露光した平版印刷版を供給することによって行う。
【0238】
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外線から赤外領域において発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
【実施例】
【0239】
以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、「部」、「%」は質量基準である。
まず、ネガ系印刷版を用いて実験した。
【0240】
〔実施例1〕
富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版である新聞CTP版LH−NN2と、富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版用現像液LP−DS(商品名;界面活性剤として前記例示化合物Y−1を10%、水酸化カリウムを1%を含有し、有機溶剤、及び珪酸塩化合物は含有しない)と、富士フイルム(株)製のLP−DRN(商品名;界面活性剤として前記例示化合物Y−1を10%、水酸化カリウムを5%を含有し、有機溶剤、及び珪酸塩化合物は含有しない)に有機溶剤ジエタノールアミン(沸点:268℃)を5%添加した現像補充液と、を用いて、G&J社製自動現像機Inter Platerとの組合せで、図1のシステムによって、5000版(500mm×400mm)相当の連続処理を行った。
現像の条件としては、現像液LP−DSは水で5倍(質量基準)に希釈して用いて、現像温度:25℃、pH:11.95、現像時間:24秒であり、現像廃液の濃縮条件としては、濃縮温度:30℃、圧力:30mmHgであり、冷却条件として、冷却温度5℃とした。なお、希釈後の現像液LP−DSには、界面活性剤として例示化合物Y−1を4%〜5%含み、有機溶剤の含有量は0.5%以下である。また、製版処理廃液の濃縮度は1/3とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液の2倍(質量基準)の再生水を用い、現像補充液と再生水を合わせた補充量が、処理された平版印刷版面積1mあたり90mlとなる量を用いた。
連続処理後の自動現像機の現像浴、及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
【0241】
〔実施例2〕
実施例1において用いた現像補充液に換えて、現像補充液として、富士フイルム(株)製のLP−DRNに溶剤ジエタノールアミン(沸点:268℃)を添加後の濃度が10%となるように添加した現像補充液を用いて、それ以外は実施例1と同様にして5000版(500mm×400mm)相当の連続処理を行った。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/3とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液の2倍(質量基準)の再生水を用い、現像補充液と再生水を合わせた補充量が、処理された平版印刷版面積1mあたり90mlとなる量を用いた。
連続処理後の自動現像機の現像浴及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
【0242】
〔比較例1〕
実施例1において、現像補充液として富士フイルム(株)製のLP−DRNに有機溶剤を添加することなくそのまま用いて、それ以外は実施例1と同様にして5000版(500mm×400mm)相当の連続処理を行った。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/3とした。
比較例1で用いた現像補充液は特定有機溶剤を含有しないため、製版処理液における画像記録層成分の溶解性が充分ではなく、連続処理後の自動現像機の現像浴及び水洗浴には多量の堆積物が認められ、汚れがあった。
【0243】
〔比較例2〕
実施例1において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のLP−DRNに溶剤ジエタノールアミンを2%添加した現像補充液を用いて、それ以外は実施例1と同様にして5000版(500mm×400mm)相当の連続処理を行った。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/3とし、再生水は現像補充液の希釈水、及びリンス水として用いた。
連続処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴には比較例1と同様に堆積物が認められ、汚れていた。
【0244】
〔比較例3〕
実施例1において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のLP−DRNに溶剤ジエタノールアミンを40%添加した現像補充液を用いて、それ以外は実施例1と同様にして5000版(500mm×400mm)相当の連続処理を行った。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/1.8であり、1/2.5まで到達しなかった。なお、再生水は現像補充液の希釈水、及びリンス水として用いた。
連続処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴の堆積物は少なかったが、現像時に画像の膜強度が劣化し、得られた平版印刷版は耐刷性が劣化した。
【0245】
〔比較例4〕
濃縮度を1/7にした以外は、比較例3と同様に実験を行った。
濃縮度1/7では、画像記録層成分が濃縮された凝集物が残存固着し、釜から取り出せなかった。
【0246】
〔比較例5〕
実施例1において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のLP−DRNに溶剤エタノールを5%添加した現像補充液を用いて、それ以外は実施例1と同様にして5000版(500mm×400mm)相当の連続処理を行った。製版処理廃液の濃縮度は1/3とした。
得られた再生水にはエタノールが混じり、アルコール臭が立ち込めて、再生水として使用できるものは得られなかった。
【0247】
〔実施例3〕
富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版である新聞CTP版HN−V(商品名)と、富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版用現像液HN−D(商品名、界面活性剤として前記例示化合物(1)を15%、水酸化カリウムを1%含有し、有機溶剤、及び珪酸塩化合物は含有しない)と、富士フイルム(株)製のHN−DR(商品名、界面活性剤として前記例示化合物(1)を8%、水酸化カリウムを5%含有し、有機溶剤、及び珪酸塩化合物は含有しない)に、有機溶剤ジエタノールアミン(沸点:268℃)を添加後の濃度が5%となるように添加した現像補充液と、を用いて、図1のシステムによって5000版(1100mm×400mm)相当の連続処理を行った。図1のシステム中の自動現像機としては、富士フイルム株式会社製自動現像機LP−1310NewsII、商品名)を用いた。現像の条件としては、現像液HN−Dは水で5倍(質量基準)に希釈して用いて、現像温度:30℃、pH:12.0、現像時間:12秒であり、現像廃液の濃縮条件としては、濃縮温度:30℃、圧力:30mmHgであり、冷却条件として、冷却温度5℃とした。なお、希釈後の現像液HN−Dは、界面活性剤として一般式(I−B)に包含される例示化合物(1)を4%含み、有機溶剤の含有率は0.5%以下である。また、製版処理廃液の濃縮度は1/3とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液の1.4倍量(質量基準)の再生水を用い、現像補充液と再生水を合わせた補充量が、処理された平版印刷版面積1mあたり60mlとなる量を用いた。
連続処理後の自動現像機の現像浴及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
【0248】
〔実施例4〕
現像補充液として、富士フイルム(株)製のHN−DR(商品名)に溶剤ジエタノールアミン(沸点:268℃)を添加後の濃度が10%となるように添加した現像補充液を用いて、それ以外は実施例3と同様にして5000版(1100mm×400mm)相当の連続処理を行った。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/3とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液の1.4倍量(質量基準)の再生水を用い、現像補充液と再生水を合わせた補充量が、処理された平版印刷版面積1mあたり60mlとなる量を用いた。
連続処理後の自動現像機の現像浴及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
【0249】
〔比較例6〕
現像補充液として富士フイルム(株)製のHN−DR(商品名)に有機溶剤を添加することなくそのまま用いて、それ以外は実施例1と同様にして5000版(1100mm×400mm)相当の連続処理を行った。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/3とした。
連続処理後の自動現像機の現像浴及び水洗浴には多量の堆積物が認められ、汚れがあった。
【0250】
次にポジ系印刷版を用いて実験した。
〔比較例7〕
富士フイルム(株)製サーマルポジCTP版XP−T(商品名)と、富士フイルム(株)製ポジ系現像液XP−D(商品名 D−ソルビトールカリウム塩を30% クエン酸カリウムを3%含有し、有機溶剤及び珪酸塩化合物を含有しない)と、現像補充液として富士フイルム(株)製XP−DR(商品名 D−ソルビトールカリウム塩を40%及び水酸化カリウムを10%含有し、有機溶剤及び珪酸塩化合物を含有しない)とを用いて、図1のシステムで、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理した。現像液XP−Dは新水を加えて9倍(質量基準)に希釈し、現像補充液XP−DRは再生水を含む新水にて7.5倍(質量基準)に希釈した。
この際、製版処理廃液の濃縮度は1/5とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液と再生水を合わせた補充量が処理された平版印刷版面積1mあたり100mlとなる量を用いた。図1のシステムにおける自動現像機としては、富士フイルム(株)製自動現像機LP−1310HII(商品名)を標準設定で用いた。現像の条件としては、現像温度:30℃、現像時間:14秒である。
比較例7で用いた現像補充液は、特定有機溶剤を含有しないため、製版処理廃液中の画像記録層成分の溶解性に劣り、1ヶ月間処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴、およびローラーには、感材成分が濃縮された凝集物が残存し、自現機タンクおよびローラーの擦り洗浄が必要であった。
【0251】
〔実施例5〕
比較例7において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のXP−DRに溶剤ベンジルアルコール(沸点:205℃)を添加後の濃度が5%となるように添加した現像補充液を用いて、それ以外は比較例7と同様にして、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理した。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/5とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液の6.5倍(質量基準)の再生水を用いた。
1ヶ月間処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴、ローラーへの、凝集物の残存は、比較例7に比べ半分以下に減少し、洗浄しやすくなった。
【0252】
〔実施例6〕
比較例7において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のXP−DRに溶剤ベンジルアルコール(沸点:205℃)を添加後の濃度が10%となるように添加した現像補
充液を用いて、それ以外は比較例7と同様にして、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理した。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/5とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として、現像補充液の6.5倍の再生水を用いた。
1ヶ月間処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴、ローラーへの、凝集物の残存は、比較例7に比べ半分以下に減少し、洗浄しやすくなった。
【0253】
〔比較例8〕
比較例7において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のXP−DRに溶剤ベンジルアルコール(沸点:205℃)を添加後の濃度が1%となるように添加した現像補充液を用いて、それ以外は比較例7と同様にして、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理した。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/5とした。
比較例8では、特定有機溶剤の含有量が本発明の範囲よりも少ないために、1ヶ月間処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴、ローラーへの、凝集物の残存は、比較例7と同レベルであり、洗浄性は比較例7と同じであった。
【0254】
〔比較例9〕
比較例7において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のXP−DRに溶剤ベンジルアルコール(沸点:205℃)を添加後の濃度が5%となるように添加した現像補充液を用いて、それ以外は比較例7と同様にして、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理した。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/2とした。
1ヶ月間処理したが、廃液量が多くなりすぎ、再生水のリサイクルの効果が小さい。
【0255】
〔比較例10〕
比較例7において、現像補充液として、富士フイルム(株)製のXP−DRに溶剤ベンジルアルコール(沸点:205℃)を添加後の濃度が5%となるように添加した現像補充液を用いて、それ以外は比較例7と同様にして、製版処理廃液の濃縮度を1/10にし、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理しようとしたが、濃縮釜中で析出が発生し、運転を中止した。
【0256】
〔比較例11〕
実施例5において、図1のシステムの代わりに、図2のシステムを用いて、それ以外は実施例5と同様にして、菊全サイズの版換算で5000版を1ヶ月間で処理した。この際、製版処理廃液の濃縮度は1/5とした。
得られた再生水にベンジルアルコールが混入しており、図1のシステムにおいて現像補充液の希釈用の再生水としては好適に使用されるものではあるが、BODが1000mg/Lと排水として許容される規制値を上回っているため、図2のシステムを用いた場合、再生水をそのまま下水に流すことはできなかった。
【符号の説明】
【0257】
10 自動現像機
20 中間タンク
30 廃液濃縮装置
40 廃液回収タンク
50 再生水タンク
60 蒸留再生水再利用装置
70 現像補充液タンク
80 補充水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動現像機において、感光性平版印刷版用現像液を用いて感光性平版印刷版の製版処理を行った際に排出される製版処理廃液のリサイクル方法であって、
沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を5質量%〜30質量%の範囲で含む現像補充液を、希釈しないか又は質量基準で10倍量以内の水で希釈して自動現像機の現像浴に補充すること、
前記自動現像機において、感光性平版印刷版の製版処理を行った際に発生する製版処理廃液を容量基準で、1/2.5〜1/5(=濃縮後の製版処理廃液/濃縮前の製版処理廃液)の範囲となるように蒸発濃縮装置で蒸発濃縮し、水蒸気と溶解成分とに分離すること、
分離された水蒸気を前記蒸発濃縮装置より導出し、冷却手段中で凝縮して再生水とすること、
得られた再生水を前記自動現像機における現像補充液の希釈水及びリンス水の少なくとも一方に使用すること、を含む
感光性平版印刷版の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項2】
前記現像補充液が、さらに、界面活性剤を0.5質量%〜10質量%の範囲で含む現像補充液である、請求項1に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、下記一般式(I−A)で表される化合物及び下記一般式(I−B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアニオン性界面活性剤を含む、請求項2に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【化1】


(前記一般式(I−A)中、Rは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;pは0,1又は2を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;mは1〜100の整数を表す。mが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい;Mは、Na、K、LiまたはNHを表す。
前記一般式(I−B)中、Rは、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;qは0,1又は2を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;nは1〜100の整数を表す。nが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい;Mは、Na、K、LiまたはNHを表す。)
【請求項4】
前記界面活性剤が、下記一般式(II−A)で表される化合物及び下記一般式(II−B)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含む、請求項2に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【化2】


(前記一般式(II-A)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。
前記一般式 (II-B)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。)
【請求項5】
前記蒸発濃縮装置が、該蒸発濃縮装置内を減圧する減圧手段と、加熱手段とを備え、前記製版処理廃液を減圧しながら加熱する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項6】
前記加熱手段が、ヒートポンプを備え、前記ヒートポンプの放熱部で前記製版処理廃液を加熱して水蒸気を発生させるとともに、前記ヒートポンプの吸熱部で前記水蒸気を冷却する加熱手段である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項7】
蒸発濃縮により濃縮された前記製版処理廃液の濃縮物をポンプで加圧して、回収タンクに回収することを、さらに含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項8】
前記製版処理廃液の濃縮が、容量基準で、1/3〜1/5の範囲となるように行われる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項9】
前記現像補充液中における沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤の含有率が5質量%〜20質量%である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項10】
前記沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤が、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、プロピレングリコール、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びグリセリンからなる群より選択される1種以上である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項11】
前記沸点が100℃〜300℃の範囲内である有機溶剤が、ベンジルアルコール、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、及びN−エチルピロリドンからなる群より選択される1種以上である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項12】
前記再生水の成分を分析し、その分析結果に応じて、前記再生水の中和を行うこと、及び前記再生水に新水を供給すること、から選択される1つ以上をさらに含む、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項13】
前記感光性平版印刷版がネガ型平版印刷版である、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項14】
前記ネガ型平版印刷版に用いられる感光性平版印刷版用現像液が、アルカリ金属の水酸化物と界面活性剤とを含有し、珪酸塩化合物を含有せず、pHが10〜12.5の範囲のアルカリ現像液である、請求項13に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項15】
前記感光性平版印刷版がポジ型平版印刷版である、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
【請求項16】
前記ポジ型平版印刷版に用いられる感光性平版印刷版用現像液が、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを含み、珪酸塩化合物を含有しないアルカリ現像液である、請求項15に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate