説明

製紙汚泥の発酵処理方法及びその発酵処理物利用品

【課題】製紙汚泥の発酵処理において、発酵処理時間を短縮する新規な方法を提供する。
【解決手段】水分を85〜60%に脱水処理した製紙汚泥を、底方からの空気供給が可能で、且つ所定の断熱構造を備えた密閉型発酵容器内に収納し、容器底方からの大量の空気供給を行う共に、容器上方から強制排気を行い、汚泥を好気発酵させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙汚泥発酵処理方法及びその発酵処理物利用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙汚泥(パルプスラッジ等)は、乾燥焼却処理が一般的であるが、乾燥焼却処理は処理コストが高く、また再利用できる資源を無駄にするとの観点から、従前より発酵処理することが提案されている。
【0003】
特許文献1(特公昭57−35153号公報)には、パルプスラッジに20%程度の活性余剰汚泥を加え、水分を75%以下(実施例68%)に調製し、15日程度の好気発酵(一次発酵)を行い、更に20日以上の堆積静置による二次発酵を行ってコンポスト化を実現する手段が開示されている。
【0004】
また特許文献2(特開昭56−105799号公報)には、製紙スラッジを固形分濃度20〜40%(水分80〜60%)に脱水調整し、野積み堆肥方法を採用すると共に、野積み箇所の下方から空気吸引を行って好気発酵を促進させる処理方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭57−35153号公報。
【特許文献2】特開昭56−105799号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の製紙汚泥の処理においては、特許文献1記載の手段は、他の余剰活性汚泥を必要とし、発生場所の異なる廃棄物を集めるという煩雑さを備え、また一次発酵に2週間程度を要する。特許文献2記載の手段においても同様に一次発酵に2週間程度を要し、また吸引装置を構築している所定の固体設備を必要とする。
【0007】
そこで本発明は、何れの場所でも構築が容易である発酵装置を採用して、発酵時間を短縮した新規な製紙汚泥の処理方法及びその発酵処理物の利用品を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る製紙汚泥の発酵処理方法は、水分を85〜60%に脱水処理した製紙汚泥を、底方からの空気供給が可能で、且つ所定の断熱構造を備えた密閉型発酵容器内に収納し、容器底方からの大量の空気供給を行うと共に、容器上方から強制排気を行い、混合物を好気発酵させてなることを特徴とするものである。
【0009】
即ち発酵対象物である製紙汚泥を収納した密閉容器内へ空気供給並びに強制排気を行うことによって、微小ファイバーを多量に含んでいる製紙汚泥全体が、強制的に空気と接触させられることになり、短時間(7〜8日)で発酵を終了することになる。
【0010】
また本発明にかかる発酵処理物利用品は、前記発酵方法で処理された処理物を、所望形状に加圧成形乾燥して固形化したことを特徴とするものである。
【0011】
従って前記の発酵処理物利用品は、肥料、土壌改良材、路盤材などして使用できるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成は上記のとおりであり、製紙汚泥の密閉容器における強制給排気によって従前の発酵処理手段に比較して発酵処理時間を短縮でき、効率的な処理を実現し、しかも発酵装置は、発酵用容器と給排気ブロアーの組み合わせで、何所にでも容易に設置できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の発酵処理方法の実施形態について説明する。発酵処理に使用する発酵装置は、図1に例示するとおり、適宜な断熱構造(例えば木製やコンクリート製のような、内部の熱が外気に放出され難い構造であれば充分である趣旨)の密閉形式の発酵槽1と、発酵槽1内に配置する中蓋体2と、発酵槽1に被冠する密閉蓋体3を備えてなり、発酵槽1の内部には、通気口を多数穿設した二重底となる内底部4を設け、内底部4の下方空間に、送風ブロワー5を接続し、蓋体3に排気口並びに排気口に接続した排気ブロワー6を付設し、排気ブロワー6に脱臭部7を接続してなる。
【0014】
発酵処理は、前記発酵装置の発酵槽1に脱水処理した製紙汚泥(通常は水分含有率62〜67%であるが、脱水設備によって高含水率のものも存在し、法的規制としては施設外搬出には水分85%以下とすることが定められている)を収納し、強制給排気を行うものであるが、発酵槽1を幅1.2m、奥行き1.7m、高さ1.35mの1トン型とすると、送風ブロワー5で、発酵槽1に毎分160Lの常温空気を送り込み、更に排気ブロワーを毎分180Lの定格出力をもって強制排気を行って発酵槽1内を負圧状態として発酵処理を行う。
【0015】
前記の給排気を連続し、製紙汚泥の発酵状態を確認するために、発酵槽1の底面から15cm、45cm、75cmの位置に温度センサー8を配置し、その測定結果が図2の表のとおりである。
【0016】
測定結果から温度の下降が始まる7日目頃で一次発酵が終了するものと認められる。なお中蓋体2は、水分蒸発による処理対象物の減容に対して処理対象物の保温効果と、処理対象物の減容によって生ずる発酵槽1内部の上方空間における結露から処理対象物を保護する効果を有する。
【0017】
発酵終了物は水分57.8%(発酵前に69.2%)となり、そのまま或は粉砕・微細化した紙類、木材、無機物等を加え、所望の形状に加圧成形を行い、土壌改良材や路盤財として使用するものである。勿論肥料として使用することもできる。
【0018】
また更に前記発酵終了物を乾燥させ、製紙汚泥に添加して、本発明の発酵処理対象物に適応する水分調整材として使用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法の実施装置の説明図。
【図2】同製紙汚泥の発酵状態を示す温度経過表。
【符号の説明】
【0020】
1 発酵槽
2 中蓋体
3 密閉蓋体
4 内底部
5 送風ブロワー
6 排気ブロワー
7 脱臭部
8 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を85〜60%に脱水処理した製紙汚泥を、底方からの空気供給が可能で、且つ所定の断熱構造を備えた密閉型発酵容器内に収納し、容器底方からの大量の空気供給を行うと共に、容器上方から強制排気を行い、好気発酵させてなることを特徴とする製紙汚泥の発酵処理方法。
【請求項2】
供給空気を押す送風機の能力以上の吸引機を以って強制排気を行い、密閉型発酵容器内を負圧状態として好気発酵処理を行ってなる請求項1記載の製紙汚泥の発酵処理方法。
【請求項3】
容器内に収納した処理対象物に保温用の中蓋を被せてなる請求項1又は2記載の製紙汚泥の発酵処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の発酵処理方法で製出された発酵処理済み物を、そのまま或いは粉砕・微細化した紙類、木材、無機物等を加え、所望の形状に加圧成形乾燥して固形化したことを特徴とする発酵処理物利用品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−223977(P2006−223977A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39987(P2005−39987)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(500016763)
【Fターム(参考)】