説明

製紙用シームフェルトの掛け入れ用具及び掛け入れ方法

【課題】有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ後に、フェルトの両端部を接合するのに先だって、フェルトの両端部を仮接合具により仮止めする際の作業性を高めることができるようにする。
【解決手段】有端のフェルト1を製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部1a・1bを接合するために用いられる掛け入れ用具を、フェルトの前端部1aに取り付けられるシート体3と、このシート体に連結される索体2とを有し、この索体が、シート体の前端部3aに予め連結された第1の連結部21と、この第1の連結部より後側の位置でシート体に予め連結された第2の連結部22とを備えたものとし、第1の連結部を切り離すことで、フェルトの前端部を索体に保持させた状態のままで、第2の連結部の連結位置より前側のシート体の部分を後方に折り返すことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合するために用いられる掛け入れ用具及び掛け入れ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェルトを製紙機に掛け入れる際の作業性を向上させるため、フェルトの走行経路、いわゆるフェルトランに有端のフェルトを引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシームフェルトが広く普及している。この種のシームフェルトでは、基布を構成する経糸の折り返しにより丈方向の端部に形成されたループを、互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わせ、これにより形成された共通孔に芯線を通して両端部を接合する構成が一般的である。
【0003】
このようなシームフェルトの接合は緻密な手作業となるため、フェルトの端部が安定しない状態で行うのは非常に難しい。そこで、スライド式のファスナを備えた仮接合具を予めフェルトの端部に縫い付けておき、フェルトの引き込みが終了したところで、ファスナを掛けることで、フェルトの両端部を仮止めする手法が採用されている。
【0004】
ところが、この仮接合具をフェルトの端部に予め設けておくと、フェルトを製紙機内に引き込む際に、仮接合具が、製紙機内のロールなどの部品を傷付けたり、あるいは製紙機内の部品に引っかかって引き込み作業が中断されるおそれがある。また、端部接合用のループが、製紙機内の部品との接触により損傷を受けるおそれがある。そこで、従来、フェルトの端部を覆うようにシート体を取り付ける技術が知られている(特許文献1・2参照)。
【0005】
また、フェルトの前端部を覆うカバー部の前側に略二等辺三角形状をなす先導部を設け、この先導部の前端に1本の牽引ロープを連結するようにした技術が知られている(特許文献3・4参照)。この構成では、作業者が複数の牽引ロープを均一に引き込む煩わしさがなく、さらに牽引ロープの牽引力が先導部により幅方向に均一に分散されるため、引き込み時のフェルトの斜行を抑えて、引き込み作業を円滑に進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3261005号公報
【特許文献2】特開2001−279592号公報
【特許文献3】特許第4153205号公報
【特許文献4】特表2003−514131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、フェルトの前端部に取り付けられるシート体は、ファスナを掛ける仮止め作業の邪魔になり、特に幅広のフェルトではシート体も長尺なものとなるため、仮止め作業の作業性を低下させる原因となる。そこで、仮止め作業に先だってフェルトからシート体を取り外すと都合が良いが、フェルトはシート体を介して牽引ロープに保持されているため、フェルトからシート体を取り外すと、フェルトを保持するものがなくなり、フェルトが不安定になる。ここで、仮止め作業が床面上で行われる場合には特に問題とならないが、仮止め作業が高所で行われる場合には、シート体を取り外すことでフェルトが落下するおそれがあり、何らかの対策が必要になる。
【0008】
そこで、従来は、シート体を取り外す前に、フェルトの両耳部をロープを介して製紙機内に設けられた手すり等の適宜な部材と連結して、フェルトの落下を防止するようにしていた。しかしながら、このような応急的な処置では、ロープの固定位置がずれ易く、またロープが外れ易い。このため、ロープがずれたり外れたりしないように注意しながら作業を進める必要があり、作業を効率良く進めることができないという問題があった。
【0009】
また、このような問題は、フェルトの後端部においても同様に生じる。すなわち、フェルトの後端部にも、端部接合用のループや仮接合具を保護する目的でシート体が設けられており、このシート体は、フェルトが巻き付けられる芯体に連結用ロープを介して連結され、フェルトがシート体を介して連結用ロープに保持される状態となっているため、フェルトからシート体を取り外すと、フェルトを保持するものがなくなるため、フェルトが不安定になる。
【0010】
また、略二等辺三角形状をなす先導部を備えたシート体では、丈方向寸法が大きくなるため、フェルトの前端部を仮止め作業位置に十分に引き寄せることができず、限られた作業スペースの中での仮止め作業が面倒になるという問題がある。一方、二等辺三角形の頂角に相当する先端部の角度を大きくすれば、先導部の丈方向寸法を小さくすることができるが、この場合、先導部に働く牽引力に応じてフェルトの耳部側に作用する内向きの力が大きくなり、フェルトが内側に引っ張られて変形するため、引き込みが安定せず、先導部としての機能が損なわれるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ後に、フェルトの両端部を接合するのに先だって、フェルトの両端部を仮接合具により仮止めする際の作業性を高めることができるように構成された製紙用シームフェルトの掛け入れ用具及び掛け入れ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明における製紙用シームフェルトの掛け入れ用具は、請求項1に示すとおり、有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合するために用いられる掛け入れ用具であって、フェルトの端部に取り付けられるシート体と、このシート体に連結される索体とを有し、この索体が、前記シート体の端部に予め連結される第1の連結部と、この第1の連結部より丈方向にずれた位置で前記シート体またはフェルトの端部に予め連結される第2の連結部とを備えたものとした。
【0013】
これによると、第1の連結部を切り離すことで、シート体における第1の連結部側の部分が自由になり、シート体が仮止め作業の邪魔とならないように、シート体を折り曲げたりあるいは取り外したりすることができるようになる。そして、第1の連結部を切り離しても、フェルトは、第2の連結部を介して索体に確実に保持されているため、フェルトが不安定になることを避けることができる。このため、仮止め作業の作業性を高めることができる。
【0014】
前記掛け入れ用具においては、請求項2に示すとおり、前記シート体が、フェルトの前端部に取り付けられるものであり、前記索体が、製紙機内の所定の走行経路にフェルトを引き込むためにフェルトの前端部を牽引するものであり、前記第1の連結部が、前記シート体の前端部に連結されると共に、前記第2の連結部が、前記第1の連結部より後側の位置で前記シート体に連結される構成とすることができる。
【0015】
これによると、第1の連結部を切り離すことで、フェルトの前端部を索体に保持させた状態のままで、シート体における第2の連結部の連結位置より前側の部分を後方に折り返すことができることから、フェルトの前端部を仮止め作業位置に引き寄せることができ、限られた作業スペースの中で仮止め作業を効率良く行うことができる。
【0016】
前記掛け入れ用具においては、請求項3に示すとおり、前記シート体が、略二等辺三角形状をなす先導部を有し、前記索体の第1の連結部が、前記先導部の前端部に連結されると共に、前記索体の第2の連結部が、前記先導部の後端部またはその丈方向の中間部に連結される構成とすることができる。
【0017】
これによると、丈方向寸法の大きな先導部を後方に折り返して、フェルトの前端部を仮止め作業位置に引き寄せることができる。
【0018】
前記掛け入れ用具においては、請求項4に示すとおり、前記シート体が、フェルトの後端部に取り付けられるものであり、前記索体が、フェルトが巻き付けられる芯体とフェルトの後端部を連結するものであり、前記第1の連結部が、前記シート体の後端部に連結されると共に、前記第2の連結部が、前記シート体の前側の位置でフェルトの後端部に連結される構成とすることができる。
【0019】
これによると、第1の連結部を切り離すことで、フェルトの後端部を索体に保持させた状態のままで、シート体をフェルトから取り外すことができることから、仮止め作業の作業性を高めることができる。
【0020】
また、本発明における製紙用シームフェルトの掛け入れ用具は、請求項5に示すとおり、有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合する掛け入れ方法であって、フェルトの端部に取り付けられるシート体と、このシート体に連結される索体とを有する掛け入れ用具を用い、前記索体が、前記シート体の端部に予め連結される第1の連結部と、この第1の連結部より丈方向にずれた位置で前記シート体に予め連結される第2の連結部とを備え、フェルトの引き込みが終了したところで前記第1の連結部を切り離して、フェルトの端部を前記索体に保持させた状態のままで、前記シート体における前記第1・第2の両連結部間の部分を折り返して、フェルトの端部を仮止め作業位置に引き寄せるようにしたものとした。
【0021】
これによると、第1の連結部を切り離すことで、フェルトの端部を索体に保持させた状態のままで、シート体における第1・第2の両連結部間の部分を折り返すことができることから、フェルトの端部を仮止め作業位置に引き寄せることができ、限られた作業スペースの中で仮止め作業を効率良く行うことができる。
【0022】
また、本発明における製紙用シームフェルトの掛け入れ方法は、請求項6に示すとおり、有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合する掛け入れ方法であって、フェルトの端部に取り付けられるシート体と、このシート体に連結される索体とを有する掛け入れ用具を用い、前記索体が、前記シート体の端部に予め連結される第1の連結部と、この第1の連結部より丈方向にずれた位置でフェルトの端部に予め連結される第2の連結部とを備え、フェルトの引き込みが終了したところで前記第1の連結部を切り離して、フェルトの端部を前記索体に保持させた状態のままで、前記シート体をフェルトから取り外すようにしたものとした。
【0023】
これによると、第1の連結部を切り離すことで、フェルトの端部を索体に保持させた状態のままで、シート体をフェルトから取り外すことができることから、仮止め作業の作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明によれば、第1の連結部を切り離すことで、シート体における第1の連結部側の部分が自由になり、シート体が仮止め作業の邪魔とならないように、シート体を折り曲げたり、あるいは取り外したりすることができる。そして、第1の連結部を切り離しても、フェルトは、第2の連結部を介して索体に確実に保持されているため、フェルトが不安定になることを避けることができる。このため、仮止め作業の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による掛け入れ具を用いたフェルトの掛け入れ状況を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1に続く、フェルトの掛け入れ状況を示す模式的な斜視図である。
【図3】図2に示した端部接合の作業状態を示す模式的な断面図である。
【図4】図1に示したフェルトの前端部に取り付けられる第1の掛け入れ用具を示す模式的な平面図である。
【図5】図1に示したフェルトの後端部に取り付けられる第2の掛け入れ用具を示す模式的な平面図である。
【図6】引き込み終了から仮止め終了までの作業状態を段階的に示す模式的な断面図である。
【図7】図6に続く、作業状態を段階的に示す模式的な断面図である。
【図8】図4に示したフェルトの前端部に取り付けられる第1の掛け入れ用具の変形例を示す模式的な平面図である。
【図9】図4に示したフェルトの前端部に取り付けられる第1の掛け入れ用具の変形例を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
本発明による第1の掛け入れ用具は、図1(A)に示すように、有端のフェルト1の前端部1a側に取り付けられるものであって、製紙機M内の所定の走行経路にフェルト1を引き込むためにフェルト1の前端部1aを牽引する索体2と、この索体2及びフェルト1の前端部1aの間に介装されるシート体3と、索体2を巻き取る電動ウインチ4とを備えている。
【0028】
また、本発明による第2の掛け入れ用具は、図1(B)に示すように、フェルト1の後端部1b側に取り付けられるものであって、フェルト1が巻き付けられる芯体5と、この芯体5及びフェルト1の後端部1bを連結する索体6と、この索体6及びフェルト1の後端部1bの間に介装されるシート体7とを備えている。
【0029】
フェルト1を製紙機Mに掛け入れる作業は以下の手順で行われる。まず、図1(A)に示すように、芯体5に巻回された状態のフェルト1を、所定の引き入れ開始位置に設けられた図示しない架台に据え付ける。また牽引用の索体2を、製紙機M内の多数のロールRにより規定された走行経路(フェルトラン)中に通す。そして牽引用の索体2の一端をシート体3に連結すると共に、索体2の他端を電動ウインチ4に連結して、電動ウインチ4で索体2を巻き取る。これにより、図1(B)に示すように、索体2に牽引されてフェルト1が走行経路に引き込まれる。
【0030】
このようにしてフェルト1が製紙機M内に引き込まれると、次に、図2(A)に示すように、フェルト1の各端部1a・1bにそれぞれ設けられた仮接合具12のスライド式のファスナを掛けて、フェルト1の両端部1a・1bを仮止めする。そして、フェルト1の各端部1a・1bからシート体3・7を取り外した上で、図2(B)に示すように、フェルト1の両端部1a・1bが所定の接合作業位置にくるように移動させると共に、フェルト1に適度な張力が与えられるようにストレッチロールRsを調整する。
【0031】
これにより、図3に示すように、フェルト1の両端部1a・1bが山形状に突き合わせた状態となる。フェルト1の両端部1a・1bには、端部接合用のループ11が幅方向に列設されており、各端部1a・1bのループ11を互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わせてできた共通孔に接合用の芯線15を挿通することで両端部1a・1bが接合される。
【0032】
このようにフェルト1の両端部1a・1bを仮接合具12で仮止めすることで、ループ11をかみ合わせて芯線を挿通する接合作業を容易にすると共に、その接合作業が終了するまでにフェルト1が落下することを防止することができる。一方、図示するように、フェルト1の引き入れ開始位置はストレッチロールRsの近傍に設定され、このストレッチロールRsが高い位置にある場合や、フェルト1が掛け入れられるパート自体が高い位置にある場合(階上パート)には、仮接合具12による仮止めのために、フェルト1の各端部1a・1bからシート体3・7を取り外すと、フェルト1が落下するおそれがある。
【0033】
そこで、フェルト1の落下を防止するため、図2(A)に示すように、フェルト1の前端部1aを牽引用の索体2に保持させると共に、フェルト1の後端部1bを連結用の索体6に保持させた状態で、仮接合具12による仮止めが行われるように、本発明による掛け入れ用具が構成される。
【0034】
フェルト1の前端部1a側に取り付けられる第1の掛け入れ用具を構成するシート体3は、図4に示すように、フェルト1の前端部1aを保護するカバー部31と、このカバー部31と牽引用の索体2との間に介装される先導部32とを有している。カバー部31は、フェルト1の2面をそれぞれ覆う1対のカバーシート33を備えている。カバー部31の前端部31aには、鋼材などからなる帯板状の芯材34が幅方向に延設されている。
【0035】
先導部32は、略二等辺三角形状をなし、二等辺三角形の頂角にあたる前端部32aに牽引用の索体2が連結され、二等辺三角形の底辺にあたる後端部32bがカバー部31に連結される。この先導部32は、芯材34と協働して、フェルト1の前端部1aに作用する牽引力を幅方向に均一に分散させる機能を有しており、これによりフェルト1の前端部1aが部分的に引っ張られることで生じる損傷を抑えて、引き込み作業を円滑に進めることができる。
【0036】
先導部32においては、外周、すなわち二等辺三角形の各辺及び二等辺三角形の高さ方向に沿って補強ベルト35が設けられている。
【0037】
特にここでは、牽引用の索体2に、シート体3の前端部3aに連結された第1の連結部21と、この第1の連結部21より後側の位置でシート体3に連結された第2の連結部22とが設けられており、第1の連結部21を切り離すことで、図4(B)・図6(B)に示すように、シート体3を介してフェルト1の前端部1aを索体2に保持させた状態のままで、第2の連結部22の連結位置より前側のシート体3の部分を後方に折り返すことができるようになっている。
【0038】
具体的には、牽引用の索体2が、一端が電動ウインチ4に連結されると共に他端が先導部32の前端部32aに結合された主索体23と、この主索体23に一端が結合されると共に他端が先導部32の後端部32bに結合された副索体24とからなり、主索体23の後端が第1の連結部21となり、副索体24の後端が第2の連結部22となっており、主索体23における副索体24の結合位置より後側の部分を切断することで、先導部32を後方に折り返すことができる。
【0039】
なお、図示する例とは逆に、主索体23を先導部32の後端部32bに結合し、副索体24を先導部32の前端部32aに結合して、副索体24における主索体23との連結部分より後側を切断するようにしても良い。
【0040】
また、フェルト1とシート体3とは1対の連結具14を介して連結されており、この1対の連結具14は、連結用のループをかみ合わせて連結用の芯材を通すことで着脱自在に連結される構成のものであり、連結用の芯材を引き抜くことで1対の連結具14が離脱して、フェルト1からシート体3を取り外すことができる。
【0041】
フェルト1の後端部1b側に取り付けられる第2の掛け入れ用具を構成するシート体7は、図5に示すように、フェルト1の後端部1bを保護するカバー部71からなっている。カバー部71は、フェルト1の2面をそれぞれ覆う1対のカバーシート72を備えている。シート体7は、フェルト1の前端部1a側に取り付けられるシート体3と同様に、1対の連結具14を介してフェルト1に着脱自在に連結されている。
【0042】
特にここでは、図6に示すように、連結用の索体6に、シート体7の後端部7aに連結された第1の連結部61と、シート体7より前側の位置でフェルト1の後端部1bに連結された第2の連結部62とが設けられており、第1の連結部61を切り離すことで、フェルト1の後端部1bを索体6に保持させた状態のままで、シート体7をフェルト1から取り外すことができるようになっている。
【0043】
具体的には、連結用の索体6が、一端が芯体5に連結されると共に他端がシート体7の後端部7aに結合された主索体63と、この主索体63に一端が結合されると共に他端がフェルト1に結合された副索体64とからなり、主索体63の前端が第1の連結部61となり、副索体64の前端が第2の連結部62となっており、主索体63における副索体64の結合位置より前側の部分を切断することで、シート体7をフェルト1から取り外すことができる。
【0044】
なお、図示する例とは逆に、主索体63をフェルト1に結合し、副索体64をシート体7の後端部7aに連結して、副索体64における主索体63との連結部分より前側を切断するようにしても良い。
【0045】
また、仮止め作業時には、フェルト1の落下を防止するためにフェルト1の後端部1bを安定に保持することができれば良く、第1・第2の2つの連結部61・62を有する構成を、全ての索体6に適用する必要はない。図5に示す例では、複数の連結用の索体6のうち、外側に位置する2本の索体6にのみ、第1・第2の2つの連結部61・62を有する構成が適用され、内側に位置する索体6は、シート体7にのみ連結されており、シート体7と共にフェルト1から取り外される。
【0046】
また、副索体64を、主索体63を介さずに芯体5に直接連結する構成も可能である。この場合、一端をフェルト1に予め結合すると共に他端を芯体5に予め連結しておく他、一端のみをフェルト1に予め結合しておき、引き込みが終了したところで、他端を芯体5に連結するようにしても良い。
【0047】
このように構成された第1・第2の掛け入れ用具においては、図1(B)に示すように、フェルト1の引き込みが終了すると、まず図6(A)に示すように、フェルト1の前端部1a側に取り付けられた牽引用の索体2の第1の連結部21を切り離す。これにより、図6(B)に示すように、先導部32を後方に折り返すことができ、これによりフェルト1の前端部1aを電動ウインチ4側の仮止め作業位置に引き寄せることができる。
【0048】
また、図6(A)に示すように、フェルト1の後端部1bに取り付けられた連結用の索体6の第1の連結部61を切り離す。またフェルト1とシート体7とを連結する1対の連結具14の芯材を引き抜いて1対の連結具14を離脱させる。これにより、図6(B)に示すように、シート体7をフェルト1から取り外すことができる。
【0049】
そして、フェルト1の前端部1a側では、図7(A)に示すように、カバー部31の一方のカバーシート33を捲ることで、スライド式のファスナ13が設けられた仮接合具12の先端側をフェルト1の後端部1b側に向けることができ、また、フェルト1の後端部1bでも、シート体7がないため、ファスナ13が設けられた仮接合具12の先端側をフェルト1の前端部1aに向けることができ、図7(B)に示すように、フェルト1の各端部1a・1bにそれぞれ設けられた仮接合具12のファスナ13を掛けて、フェルト1の両端部1a・1bを仮止めする。
【0050】
仮止め作業が終了すると、フェルト1とシート体3とを連結する1対の連結具14の芯材を引き抜いて1対の連結具14を離脱させて、フェルト1の前端部1aからシート体3を取り外す。
【0051】
このように第1の連結部21・61を切り離すことで、シート体3・7における第1の連結部21・61側の部分が自由になり、シート体3・7が仮止め作業の邪魔とならないように、シート体3・7を折り曲げたりあるいは取り外したりすることができる。そして、第1の連結部21・61を切り離しても、フェルト1は、第2の連結部22・62を介して索体2・6に確実に保持されているため、フェルトが不安定になることを避けることができる。このため、仮止め作業の作業性を高めることができる。
【0052】
なお、前記のように、牽引用の索体2をウインチやチェンブロックなどの牽引装置に連結して牽引する場合、その牽引装置に逆転防止構造があれば、特に索体を固定する必要がなく、作業を効率良く行うことができる。
【0053】
図4に示したフェルト1の前端部1aに取り付けられる第1の掛け入れ用具は、図8・図9に示すように、一部変更することも可能である。
【0054】
図8に示す例では、副索体24の幅方向の両側に、副索体24に一端が結合されると共に他端が先導部32の後端部32bに結合された一対の補助索体25が設けられ、副索体24の後端と一対の補助索体25の後端が第2の連結部22となり、牽引用の索体2に3つの第2の連結部22が設けられた構成となっている。この構成では、シート体3が3点で保持されるため、フェルト1の前端部1aをより一層安定して保持することができる。
【0055】
図9に示す例では、略二等辺三角形状をなす先導部32の丈方向中間位置に、幅方向に延びた補強ベルト36が設けられている。さらに、この補強ベルト36に沿って帯板状の芯材37が設けられている。索体2の第1の連結部21は、前記の例と同様に、シート体3の前端部3aに連結されているが、第2の連結部22は、補強ベルト36の位置でシート体3に連結されている。この構成では、第1の連結部21を切り離した際に先導部32において後方に折り返される部分が短くなるものの、第2の連結部22の位置での先導部32の幅が狭くなるため、フェルト1の前端部1aをより一層安定して保持することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前記の各例では、第1の連結部の切り離しを索体の切断で行うようにしており、この構成は、牽引に耐える強度を確保すると共に構造の簡略化を図る上で都合が良いが、第1の連結部に着脱自在な接合具を設けるようにしても良い。また、索体における第1・第2の各連結部の連結や、索体を構成する主索体と副索体との結合は縫合糸による縫合で行えば良く、この場合、第1の連結部の切り離しを縫合糸の抜き取りで行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる製紙用シームフェルトの掛け入れ用具及び掛け入れ方法は、有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ後に、フェルトの両端部を接合するのに先だって、フェルトの両端部を仮接合具により仮止めする際の作業性を高めることができる効果を有し、製紙機のプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトなどの製紙用シーム付きフェルトを製紙機へ掛け入れる際に採用される掛け入れ用具及び掛け入れ方法として有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 フェルト、1a 前端部、1b 後端部
2、6 索体
3 シート体、3a 前端部
4 電動ウインチ
5 芯体
7 シート体、7a 後端部
11 ループ
12 仮接合具
13 ファスナ
14 連結具
15 芯線
21、61 第1の連結部
22、62 第2の連結部
23、63 主索体
24、64 副索体
25 補助索体
31、71 カバー部
32 先導部、32a 前端部、32b 後端部
33、72 カバーシート
M 製紙機
R ロール、Rs ストレッチロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合するために用いられる掛け入れ用具であって、
フェルトの端部に取り付けられるシート体と、このシート体に連結される索体とを有し、
この索体が、前記シート体の端部に予め連結される第1の連結部と、この第1の連結部より丈方向にずれた位置で前記シート体またはフェルトの端部に予め連結される第2の連結部とを備えたことを特徴とする掛け入れ用具。
【請求項2】
前記シート体が、フェルトの前端部に取り付けられるものであり、
前記索体が、製紙機内の所定の走行経路にフェルトを引き込むためにフェルトの前端部を牽引するものであり、前記第1の連結部が、前記シート体の前端部に連結されると共に、前記第2の連結部が、前記第1の連結部より後側の位置で前記シート体に連結されることを特徴とする請求項1に記載の掛け入れ用具。
【請求項3】
前記シート体が、略二等辺三角形状をなす先導部を有し、
前記索体の第1の連結部が、前記先導部の前端部に連結されると共に、前記索体の第2の連結部が、前記先導部の後端部またはその丈方向の中間部に連結されることを特徴とする請求項2に記載の掛け入れ用具。
【請求項4】
前記シート体が、フェルトの後端部に取り付けられるものであり、
前記索体が、フェルトが巻き付けられる芯体とフェルトの後端部を連結するものであり、前記第1の連結部が、前記シート体の後端部に連結されると共に、前記第2の連結部が、前記シート体の前側の位置でフェルトの後端部に連結されることを特徴とする請求項1に記載の掛け入れ用具。
【請求項5】
有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合する掛け入れ方法であって、
フェルトの端部に取り付けられるシート体と、このシート体に連結される索体とを有する掛け入れ用具を用い、前記索体が、前記シート体の端部に予め連結される第1の連結部と、この第1の連結部より丈方向にずれた位置で前記シート体に予め連結される第2の連結部とを備え、フェルトの引き込みが終了したところで前記第1の連結部を切り離して、フェルトの端部を前記索体に保持させた状態のままで、前記シート体における前記第1・第2の両連結部間の部分を折り返して、フェルトの端部を仮止め作業位置に引き寄せるようにしたことを特徴とする掛け入れ方法。
【請求項6】
有端のフェルトを製紙機内の所定の走行経路に引き込んだ上でフェルトの両端部を接合する掛け入れ方法であって、
フェルトの端部に取り付けられるシート体と、このシート体に連結される索体とを有する掛け入れ用具を用い、前記索体が、前記シート体の端部に予め連結される第1の連結部と、この第1の連結部より丈方向にずれた位置でフェルトの端部に予め連結される第2の連結部とを備え、フェルトの引き込みが終了したところで前記第1の連結部を切り離して、フェルトの端部を前記索体に保持させた状態のままで、前記シート体をフェルトから取り外すようにしたことを特徴とする掛け入れ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−275670(P2010−275670A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130692(P2009−130692)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】