説明

製紙用フェルトおよびその製造方法

【課題】製紙用フェルトにおいては、表面性を向上させるために、繊度の小さなバット繊維を用いる方法が有るが、この方法のみでは、繊維の目付斑や絡み斑に依存する圧力の均一性を小さくすることは容易ではなかった。更に製紙用フェルトは製紙プロセスの段階によっては、表面性以外にも脱水性、汚れ防止性、脱毛防止性等が要求され、バット繊維の繊度を小さくすることは、製紙プロセスの段階によっては汚れが詰まり易くなる等の新たな課題を生じさせるおそれがあった。これらの欠点を生じさせずに、紙の表面性を向上させることができるように構成された製紙用フェルト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基布層1と、該基布層1にバット繊維がニードリングによって絡合一体化された表層2とを少なくとも備える製紙用フェルト10であって、前記表層の表面は、研磨された表面3とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布層にバット繊維層がニードリングにより一体化された製紙用フェルト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙用フェルトにおいては、基布層に所要の厚さのバット繊維層が積層一体化されているが、その表面にはバット繊維自体による比較的小さな凹凸や、バット繊維の目付斑やニードリング方法により発生する比較的大きな凹凸など、大小様々な凹凸が存在している。バット繊維層の表面の凹凸が顕著であると、製紙機上でプレスロールによりフェルトと一緒にプレスされる湿紙の表面性も低下することとなる。また、製紙用フェルト製造業者の間では、フェルトの表面性はその搾水性に大きな影響を与える事が知られており、フェルト表面の凹凸が大きいほどプレスロールによる加圧下の圧力状態が不均一になり、フェルトの搾水性能は低下する。このため、表面性を向上させること、すなわちバット繊維層の製紙面側表面の凹凸を少なく平滑なものとすることが求められている。
【0003】
一般的に表面性の評価には、JIS B0601で定義されている算術平均粗さRaなどの表面粗さパラメータが用いられていて、製紙用具においてもこれらのパラメータが適用されることがある(例えば、特許文献1 参照)。特許文献1において開示されているのは製紙用搬送ベルトであり、この表面は樹脂層であるために加圧されても表面の状態は大きく変化はしない。しかし、製紙用フェルトにおいては、フェルト表面は短い繊維であるバット繊維が絡み合った集合体であり、加圧されることでバット繊維が動き、フェルト表面のバット繊維の集合状態は変化する。従って、非加圧下の測定である算術平均粗さRaなどの表面粗さパラメータでは非加圧下でのフェルトの表面性を評価するともに、圧力の均一性などの加圧下で測定されるパラメータを併用することが好ましい。
【0004】
バット繊維層の表面を平滑にするには、例えば、繊度の小さなバット繊維を用いる方法が適用されている。バット繊維の繊度が小さくなることで、バット繊維の直径に起因する比較的小さな凹凸を減少し、また同じ重量のバット繊維を用いた時のバット繊維本数も増えるため、局所的な繊維状態に依存する表面粗さを小さくさせることができる。また、バット繊維層の表面を平滑にする他の方法としては、仕上げ加工時に製紙用フェルトをプレスして平面を形成する技術が開示されている。製紙用フェルトをプレスすることで表面の粗さおよび圧力の均一性を小さくさせることができる(例えば特許文献2〜5 参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3264461号
【特許文献2】特開2006−9188号公報
【特許文献3】特許第3360145号
【特許文献4】特表2007−532785号公報
【特許文献5】特許第2649044号
【特許文献6】特許第4064930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、繊度の小さなバット繊維を用いる方法のみでは繊維の目付斑や絡み斑に依存する圧力の均一性を小さくすることは容易ではなかった。更に製紙用フェルトは製紙プロセスの段階によっては、表面性以外にも脱水性、汚れ防止性、脱毛防止性等が要求され、バット繊維の繊度を小さくすることは、製紙プロセスの段階によっては汚れが詰まり易くなる等の新たな課題を生じさせるおそれがあった。
【0007】
また、バット繊維層のバット繊維は複雑に絡み合っているために、バット繊維層の表面には局所的な硬さのバラツキや目付斑を有する部分が存在している。仕上げ加工時に製紙用フェルトをプレスする場合、プレスの圧力はプレス後に製紙用フェルトの前記した種々の性能を損なわないように、一般的にプレス加工時の圧力は60kN/m以下に設定されており、かかる方法によっても局所的な硬さのバラツキや目付斑を完全に解消するには至らなかった。
【0008】
本発明は、このような発明者の知見に基づき案出されたものであり、その主な目的は、紙の表面性を向上させることができるように構成された製紙用フェルト及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、基布層と、該基布層にバット繊維がニードリングによって絡合一体化された表層とを少なくとも備える製紙用フェルトであって、前記表層の製紙面は、研磨された表面であることを特徴としている。
【0010】
前記構成によれば、研磨されたフェルト表層を有することで、繊度の小さいフェルトを用いることやフェルトを過大な圧力でプレスすることなく、フェルト表層の表面性を向上させることができる。また、前記構成にかかるフェルトは、表層に備えるバット繊維を適宜選択することによって、脱水性、汚れ防止性、脱毛防止性を損なうことなく、フェルト表層の表面性を向上させることができる。さらに、フェルトを研磨することで、バット繊維が研磨されて繊維を扁平化させ、繊維表面に微細な傷やバリを生じさせる。この繊維の扁平化や微細な傷やバリの形成は、繊維の表面積を増大させるため、フェルトの親水性を向上させるとともに湿紙への「なじみ」をも向上させることができる。
【0011】
前記構成は、前記研磨された表面の平均圧力0.1MPa下でのフェルト表面圧力分布の変動係数が0.25以下であり、かつ算術平均粗さRaが10〜38μmの範囲内とすることができる。
【0012】
研磨されたフェルト表面の評価には、加圧下のフェルト表面を評価することの出来る表面圧力分布の変動係数と、非加圧下のフェルト表面を評価することの出来る算術平均粗さを併用することが好適である。前記構成によれば、これら2つのパラメータを併用して前記範囲にフェルト表面を加工することで、製紙機上でフェルトが使用される状態でのフェルト表面性を正確に評価できるとともに、所望の表面状態を得ることができる。
【0013】
ここで、変動係数は、JISZ8101−1 1.15の定義に基づき、測定された表面の圧力分布の標準偏差を算出したのち、この標準偏差を圧力の平均値で割ったものである。この変動係数は、圧力分布のばらつきを相対的に表している。また、算術平均粗さはJIS B 0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」に定義されている。
【0014】
なお、フェルト表面の圧力測定時の圧力は、0.1MPaで行うことが最適である。その理由としては、次のようなことが挙げられる。すなわち、フェルトの圧力均一性は、主に基布層に起因する圧力均一性と、表バット層に起因する圧力均一性(=表面圧力均一性)に分けることができる。基布層に起因する圧力斑を軽減させるためには、基布設計の変更が必要となるが、基布設計を変更すると圧力均一性以外の他の性能も変化してしまう為、圧力均一性以外のフェルトに要求される性能を維持したまま圧力均一性のみを向上させることは困難である。それに対し表面研磨を行うことで、他のフェルトに要求される性能を維持したまま表面圧力均一性を向上させることができる。そして、基布層に起因する圧力斑は0.1MPa程度の圧力下では発生しない(測定されない)ために、0.1MPaの圧力測定によりフェルト表面圧力均一性のみを評価することが出来る。
【0015】
研磨されたフェルトの表面において、フェルト表面の圧力分布の変動係数は、好ましくは0.27以下、より好ましくは0.25以下とし、かつ、研磨された表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10〜45μm以下、より好ましくは10〜38μm以下とすることが好適である。この構成によれば、フェルト搾水性向上によるマシン操業効率を向上させるとともに、製紙機で生産される紙の表面性の向上をも実現させることが出来る。
【0016】
ただし、算術平均粗さを10μm未満としてしまうと、フェルトからロールへの湿紙の受け渡しもしくはフェルトからフェルトへの湿紙の受け渡しがスムーズに行われず、湿紙が受け渡し前のフェルトに付着したような状態となる「紙とられ」を生じさせるおそれがある。この「紙とられ」の発生を防止するため、前記構成は、フェルトが使用される場所の条件に対して、前記した変動係数、算術的表面粗さを実現して最適なフェルト表面になるように研磨の度合いを調整している。
【0017】
前記構成は、表層のバット繊維の平均繊度を17dtex以上かつ24dtex以下とすることが好適である。
【0018】
繊度は繊維の太さを表し、繊維の一定の長さに対する質量の割合で示される。ここで、平均繊度を17dtex以上としたのは、繊度が17dtex以下のバット繊維は、繊維が細いために繊維同士が絡みあう力、すなわち繊維1本の強度や繊維の引き抜き抵抗が弱く、研磨時の毛羽立ちや脱毛が多く発生し、研磨作業性が悪くなるおそれがあるためである。この研磨時に毛羽立ちや脱毛の発生が、製紙用フェルトについて表面研磨を行っても研磨の効果が十分に効果が得られないと考えられていた理由であり、それ故に、製紙用フェルト製造業者はフェルトの表面研磨を行ってこなかった。しかし本発明者は、研磨時の脱毛や毛羽立ちの発生原因について検討を重ね、フェルトの表面研磨を可能とし、フェルトに求められる他の要求性を犠牲にすることが無く、フェルトの表面粗さや表面圧力均一性を向上させることを可能としている。また、バット繊度が24dtex以上であると、フェルト表面の繊維同士の間隔が広くなりすぎるために、表面研磨により算術平均粗さや圧力分布の変動係数を十分に向上させることができない。しかし前記構成によれば、所望の表面性に研磨できるとともに、研磨作業性を向上させることができる。
【0019】
前記構成は、製紙用フェルトの密度を0.390g/cm以上とすることが好適である。密度が0.390g/cm以下の製紙用フェルトでは、繊維が十分に絡み合っていないために、研磨によって表層が毛羽立つおそれがある。表層の毛羽立ちは繊維の脱毛を生じやすくさせるため耐脱毛性を低下させるが、前記構成はかかる性能低下を抑制することができる。
【0020】
前記構成において、表層の前記バット繊維は、加熱処理により軟化・溶融する高分子材料である芯鞘型複合繊維からなるようにすることができる。ここで、芯鞘型複合繊維は、第1高分子材からなる芯部と、該芯部の少なくとも一部を被覆する前記第1高分子と異なる融点を持つ第2高分子材からなる鞘部とからなり、第2高分子材の融点温度は、前記第1高分子材の融点温度よりも低くすることができる。前記表層は、前記第1高分子の融点温度よりも低く、前記第2高分子の融点温度よりも高い温度に加熱され、続いて前記第2高分子の融点温度よりも低い温度に冷却された後に前記表面を研磨することによって形成することが好適である。
【0021】
前記構成は、融点の異なる2種類の高分子を芯部と鞘部に適用した芯鞘型複合繊維をバット繊維に適用している。この構成では、鞘部の高分子は芯部の高分子と比べ低い融点とされているため、表層を芯部の融点よりも低く、鞘部の融点よりも高い温度環境に置くことで、芯部を維持したまま、鞘部を溶融させることができる。
【0022】
前記構成によれば、研磨加工前に鞘部の第2高分子材を一度溶融することで、バット繊維同士の絡み合いによる結合が弱い場合においても研磨を効率的に行うことができるようになり、所望のフェルト表面性を実現することが可能となる。また、研磨加工後に鞘部を溶融させ、その後硬化させることで、バット繊維同士の結合が強固となり、フェルトが製紙機上で使用される際の表層のバット繊維が脱毛することを防止することができる。このように、鞘部を溶融させるタイミングについては、フェルトの使用条件、研磨加工の作業性等から判断し、研磨加工前や研磨加工前後に行ってもよい。
【0023】
前記芯鞘型複合繊維が適用された構成において、前記表層は、前記表面側に配された表外バット層と、該表外バット層の内側に配された表内バット層とからなり、前記表外バット層は、前記芯鞘型複合繊維からなるように構成することが好適である。この構成によれば、芯鞘型複合繊維を表層に配することで、高分子が溶融して硬化する領域を限定することができ、芯鞘型複合繊維以外のバット繊維の特性を活かしつつ、研磨性および脱毛防止性を向上させることができる。
【0024】
前記芯鞘型複合繊維が適用された構成において、前記表外バット繊維の平均繊度は、2.5dtex以上かつ17dtex以下であることが好適である。すなわち、前記した芯鞘型複合繊維が適用されない構成のように通常バット繊維でバット繊度が17dtex以下のような場合では、バット繊維同士の絡み合う力が弱いために効率的に研磨を行うことが難しいが、芯鞘型複合繊維を使用することでバット繊維同士の接合力を向上させることができる。そして、2.5dtex以上のバット繊維であればバット繊維同士の接合力を、研磨を行う上で十分なレベルまで向上させることができる。また前記のように、17dtex以上の通常バット繊維であれば芯鞘型複合繊維を用いずとも研磨を行うための十分なバット繊維同士の接合力を持つが、研磨作業性向上以外の理由で芯鞘型複合繊維をこのような繊度のバット繊維に混合し使用することは、研磨を行う上では問題にはならない。
【0025】
なお、樹脂加工フェルトに対して研磨加工することは、特許文献6に開示されている。フェルトを樹脂コーティングすることで、確かにバット繊維同士の接合力は向上し、表面研磨は可能になる。しかし、製紙用フェルトの寸法は最大で幅が10mを超し、長さ(ループ長)も15m以上、時には100m以上になるほどであり、このような大きな製品を研磨の目的だけで樹脂加工を行うことは、そのエネルギーコストと作業時間から考えて、非常に非効率的である。また、特許文献6に開示されているような水分散型樹脂の樹脂水溶液の粘度は非常に小さく、樹脂加工の際に毛細管現象により、バット繊維が密になっている部分に集まりやすい。このバット繊維が密になっている部分はそうでない部分に比べて硬く、圧縮され難い。そのような部分にさらに樹脂が多く付着してしまうと、その部分はさらに圧縮され難くなってしまう。そのような状態の従来技術にかかるフェルトを表面研磨しても、算術平均粗さは低減することはできるが、表面圧力均一性の向上はそれほど多くは望めない。
【0026】
また、このような樹脂液の集合による部分的な硬度上昇を避けるために樹脂液の粘度を高めてしまうと、通常樹脂加工フェルトの樹脂量はわずか数十g/mと少ないことから、樹脂をフェルト全体に均一に付着させることが難しくなってしまう。さらに、比較的高い粘度の樹脂液を均一に付着させるために樹脂加工に使用する樹脂量を増やしてしまうと、通気度の低下など、フェルトに求められる他の性能を低下してしまう結果となる。
【0027】
一方、芯鞘型複合繊維の低融点部分が溶融した時の粘度は、これら水分散型樹脂の樹脂水溶液粘度に比べて非常に大きく、溶融時に大きく動くことは無い。また、繊維同士の接合力強化に用いられる低融点の前記第2高分子材は、バット繊維の鞘部として存在することから、少ない量の繊維接合力向上成分をフェルト表面全体に均一に分布させることが可能である。よって、表バット繊度が平均17dtex以下と比較的小さい場合において芯鞘型複合繊維を使用することは、他の要求性能を維持しつつ研磨効率を向上させ、優れた表面を持つフェルトを製造する上で有効である。このように、前記構成は、従来技術と比べて、コスト的にも、性能的にも優れている。
【0028】
前記構成において、前記表層は、20%以上かつ80%以下の前記芯鞘型複合繊維を含むようにすることができる。この構成によれば、表層のバット繊維の通気性を維持しつつ、バット繊維同士の接合力を向上させ研磨を効率的に行うことが可能となる。
【0029】
このような課題を解決するために、本発明は、基布層と、該基布層にバット繊維がニードリングによって絡合一体化された表層とを備える製紙用フェルトの製造方法であって、前記表層の製紙面が研磨されるように構成することができる。
【0030】
前記構成によれば、フェルト表層を研磨することで、繊度の小さいフェルトを用いることやフェルトを過大な圧力でプレスすることなく、フェルト表層の表面性を向上させる製紙用フェルトの製造方法を提供することができる。
【0031】
前記製造方法において、前記バット繊維は、加熱処理により軟化・溶融する高分子材料である芯鞘型複合繊維を含み、該芯鞘型複合繊維は、第1高分子材からなる芯部と、該芯部の少なくとも一部を被覆し、前記第1高分子の融点温度よりも低い融点温度を有する第2高分子材とからなる鞘部とからなるものとして、前記表層の製紙面が研磨される前に、前記第1高分子の融点温度よりも低く、前記第2高分子材の融点温度よりも高い温度で加熱、冷却されるように構成することもできる。
【0032】
前記構成において、研磨加工前に鞘部の第2高分子材を一度溶融することで、バット繊維同士の絡み合いによる結合が弱い場合においても研磨を効率的に行うことができるようになり、所望のフェルト表面性を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
このように本発明によれば、フェルト表層を研磨することで、繊度の小さいフェルトを用いることやフェルトを過度な圧力でプレスすることなく、フェルト表層の表面性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】従来技術にかかる比較例を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる実施例の研磨加工後のフェルト表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの研磨工程の一例を示す模式的な側面図である。
【図5】表面粗さの説明図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる実施例の研磨加工前における圧力測定フィルムの計測結果を示す図面代用写真である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる実施例の研磨加工後における圧力測定フィルムの計測結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明にかかる一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態にかかる製紙用フェルトの一例を示す模式的な断面図である。このフェルト10は、基布層1に表層となるバット繊維層2をニードリングにより積層一体化してなる複層構造をなしている。基布層1は、織機でモノフィラメント糸や、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り糸などを織った布を適用できるが、これに限定されず、多層の布、幅方向もしくは丈方向の糸のみで形成された布、樹脂シート等も適用することができる。
【0037】
バット繊維層2の基布層1と反対側の平面3は、湿紙(図示せず)が接触する側となっている。平面3の表面は、「紙とられ」を生じさせない所定の「算術平均粗さ」および「表面圧力分布の変動係数」となるように研磨加工されている。
【0038】
一方、図2の従来技術にかかる比較例を参照すると、比較例も基布層11にバット繊維層12をニードリングにより積層一体化してなる複層構造をなしている。しかしながら、バット繊維層12の基布層11と反対側の表面13は、ニードリングの際に生じた凹凸が残った状態となっている。このように表面13の凹凸が顕著であると、製紙機上でプレスロールによりフェルトと一緒にプレスされる湿紙の表面性も低下することとなる。また、フェルトの表面性はその搾水性に大きな影響を与え、フェルト表面の凹凸が大きいほどプレスロールによる加圧下の圧力状態が不均一になり、フェルトの搾水性能を低下させる。仕上げ加工時に製紙用フェルトをプレスして平面を形成した場合であっても、バット繊維層のバット繊維は複雑に絡み合っているために、バット繊維層の表面には局所的な硬さのバラツキや目付斑を有する部分が存在しており、このバラツキや斑は湿紙の表面性を低下させていた。
【0039】
本実施形態は図2に破線で示す研磨線14までバット繊維層12を研磨することで、図1に示す平面3を形成している。図3に研磨後のフェルト表面(平面3に相当)を示す電子顕微鏡写真を示す。図3を参照すると、湿紙に接するフェルト表面のバット繊維層が研磨され、フラットファイバーの繊維層に類似した状態となっている。しかしながら、フラットファイバー等の異形バット繊維を用いた場合、フェルト内部のバット層から異形繊維以外の通常バット繊維がニードリングによって湿紙と接触する表面に露出するおそれがあり、平面性を向上させることは困難であった。一方、本実施形態では表面の研磨加工はニードリング工程以降に実施されるため、ニードリングによる影響を受けないで表面性を向上させることができる。
【0040】
さらに、フェルトを研磨加工することで、図3に示すように、バット繊維が研磨されて繊維を扁平化させ、繊維表面に微細な傷やバリを生じさせている。この繊維の扁平化や微細な傷やバリの形成は、繊維の表面積を増大させるため、フェルトの親水性を向上させるとともに湿紙への「なじみ」をも向上させることができる。
【0041】
次に図4を参照して表面研磨加工の一例について説明する。フェルト10は、バット繊維層12(図2参照)が外側になるループ状にされて、一定の張力が負荷されるように所定間隔で設置された一対の搬送ロール21,21間に架けられている。搬送ロール21,21は時計方向に回転し、フェルト10を時計方向に回転させる。搬送ロール21,21の間には研磨ロール22が配されており、研磨ロール22はフェルト10のバット繊維層12(図2参照)に一定の圧力で当接するようにバット繊維層12を図4の上方へ付勢している。
【0042】
研磨ロール22には外表面に研磨布が備えられており、研磨ロールの幅はフェルト10の幅に合わせて適宜選択される。なお、研磨加工は研磨ロールを使用する場合に限定されず、研磨紙、研磨ベルト、研磨板等を適用することもできる。
【0043】
研磨ロール22はバット繊維層12と所定の圧力で当接した状態で時計方向に回転する。フェルト10も時計方向に回転していることから、研磨ロール22の研磨布とバット繊維層12(図2参照)とは対向するように当接してバット繊維層12が研磨される。図4の構成はバット繊維層12を付勢する圧力と研磨加工する時間とを適宜設定することで、図2に示すように表面13は研磨線14まで研磨され、図1に示すように研磨された平面3が形成される。このような研磨加工工程は、研磨によって発生したバット繊維のバリを一定方向に寝たような状態にさせるため、製紙工程においてフェルトの進行方向をバリが抑えられる方向に設定することで湿紙がフェルト表層のバリに引っ掛かり引きずられることを防止することができる。なお、このように研磨ロール22の研磨布とバット繊維層12(図2参照)とを対向するように研磨加工する工程は、少なくとも研磨加工工程の最終段階に設けるようにし、それ以前の研磨加工工程では特に両者が当接する方向を限定しない構成とすることもできる。
【0044】
本実施形態における研磨加工されたフェルト表面の評価には、加圧下のフェルト表面を評価することの出来る表面圧力分布の変動係数と、非加圧下のフェルト表面を評価することの出来る算術平均粗さを併用している。
【0045】
ここで、図5を参照して、小さな間隔で山、谷の起伏が続く表面状態である「表面粗さ」について簡単に説明する。「表面粗さ」は、JIS B 0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」に「算術平均粗さRa」として定義されている。
【0046】
図5(a)は、表面粗さ測定器(図示せず)によって計測された計測対象となるバット繊維層12の表面13(図2参照)の断面曲線の模式図である。図5(a)は、図2に示す表面性状を断面曲線として再現している。
【0047】
図5(a)の横軸をxとし、縦軸をzとすると、この断面曲線はZ(x)となる。「算術平均粗さRa」は、このZ(x)を評価長さLで積分したものを評価長さLで徐することで得ることができ、図5(b)に示す断面曲線となる。以下に説明する実施例では、JIS B 0601:2001に準拠した「算術平均粗さRa」を示している。
【0048】
一方、表面圧力分布の変動係数は、JISZ8101−1 1.15の定義に基づき、測定された表面の圧力分布の標準偏差を算出したのち、この標準偏差を圧力の平均値で割ったものである。この変動係数は、圧力分布のばらつきを相対的に表している。
【0049】
表面圧力分布の変動係数は、前記研磨された表面の圧力測定フィルムによって計測された圧力データを解析することで、簡単に得ることが出来る。例えば、圧力測定フィルム(微圧用プレスケール(4LW)0.05MPa−0.2MPa:富士フイルム社製)によって圧力斑を計測し、計測結果を圧力画像解析システム(富士フイルム社製:FPD−9210)のエクスポート機能を用いて各部分における圧力データを取り出し、このデータをMicrosoft社製EXCELにて統計処理することで、圧力分布の変動係数を得ることが可能となる。
【0050】
なお、フェルト表面の圧力測定時の圧力は、0.1MPaで行うことが最適である。すなわち、フェルトの圧力均一性は、主に基布層に起因する圧力均一性と、表バット層に起因する圧力均一性(=表面圧力均一性)に分けることができるが、基布層に起因する圧力斑は0.1MPa程度の圧力下では発生しない(測定されない)ために、0.1MPaの圧力測定によりフェルト表面圧力均一性のみを評価することができる。
【実施例1】
【0051】
次に本実施形態の実施例1について説明する。実施例1は経糸と緯糸とを織機で織ることで形成された基布層に、表層となるポリアミド合成繊維であるナイロンのバット繊維をニードリングしている。実施例1−1,1−2と参考例1−1〜1−4の繊維の材質、繊度を表1に示している。ここで実施例1−1,1−2の繊度は17dtex以上かつ24dtex以下となっている。参考例1−1,1−2は繊度24dtex以上のバット繊維層であり、参考例1−3,1−4は繊度17dtex以下のバット繊維層である。なお、実施例1−2および参考例1−1では、繊度の異なる2種類の繊維によってバット繊維層を形成する構成としている。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例および参考例は、図4に示す研磨加工がされており、図2に示すニードリングされた後の「粗さ」および不均一な圧力分布が残っている状態から、図1に示す表面が研磨された状態となっている。研磨加工前後の実施例および参考例について、フェルトの物性となる密度、研磨量、研磨前後の通気度を測定した結果を表2に示す。なお、実施例及び参考例のフェルトは、それぞれが使用される条件に合わせて、10〜60kN/mのそれぞれ異なった圧力にて、プレス加工が研磨加工前に行われている。
【0054】
【表2】

【0055】
表2を参照すると、実施例および参考例とも研磨加工前後で通気度の大きな変化は見られない。このように本実施例および参考例における研磨加工は、加工に供された実施例および参考例のバット繊維自体の通気特性を変えるものではない。実施例1−1,1−2および参考例1−1〜1−4の密度は0.390g/cm以上であり、また、両者とも研磨後のフェルト表面において毛羽立ち等は見られていない。
【0056】
表3に、実施例および参考例について、研磨加工前後の表面圧力分布変動係数の測定値と研磨加工前後の測定値の差(百分率)とを示す。表4に、実施例および参考例について、研磨加工前後の算術平均粗さRaの測定値と研磨加工前後の測定値の差(百分率)とを示す。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
表3を参照すると、「表面圧力分布の変動係数」は、実施例、参考例とも低下し、すなわち研磨加工前よりも均一な圧力分布が実現されている。実施例1−1,1−2および参考例1−2,1−3,1−4を参照すると、表面圧力分布の変動係数(JISZ8101−1)が0.25以下となるように研磨されている。このように、研磨加工はフェルト表面の不均一な圧力分布を減少させることができる。また、百分率として示した研磨加工前後の測定値の差については、実施例は参考例と比べて大きくなっており、不均一な圧力分布を減少させる研磨加工の効果が高いことを示している。しかしながら、参考例であっても、参考例1−2、1−3、1−4は研磨加工により圧力分布の変動係数が15%以上低下しており、例えば参考例1−2は27dtexのバット繊度を使用しているが研磨加工により17dtexのバットを使用した実施例1−1の研磨前の圧力分布よりも優れた表面圧力分布とすることができ、実用上は有用である。これらのことからフェルトが使用される上では、研磨加工により表面圧力分布の変動係数を15%以上減少させることが好ましく、更には実施例1−1や1−2のように22%以上減少させることが特に好ましいということを示している。
【0060】
次に、表4を参照して算術平均粗さRaを見ると、実施例では研磨された表面の算術平均粗さRa10〜38μmの範囲に含まれ、参考例1−2〜1−4では10〜45μmの範囲に含まれている。研磨された表面の算術平均粗さRaは、フェルト搾水性向上によるマシン操業効率を向上させるとともに、製紙機で生産される紙の表面性の向上をも実現させるために、好ましくは10〜45μm以下、より好ましくは10〜38μm以下とすることが好適である。このように本発明によれば、参考例1−2〜1−4であってもフェルト搾水性向上によるマシン操業効率の向上と、製紙機で生産される紙の表面性の向上とを実現させることが出来る。
【0061】
また、研磨加工前後の測定値の差を見ると、実施例は参考例と比べると研磨加工前後での算術平均粗さの減少が25%以上もあり非常に大きいことが分かる。一方、参考例の1-3や1-4のように、繊度が小さい場合には、研磨作業性が悪く、特に参考例1−4では研磨によって粗さが減少する効果が得られなかった。
【0062】
実施例の研磨加工前後における圧力測定フィルムの計測結果をそれぞれ図6と図7に示す。圧力測定フィルムは、加圧された部分が発色するものであり、圧力が高ければ濃く、圧力が低ければ薄く発色し、加圧されない部分は発色しない。研磨加工前である図6の表面性状と研磨加工後である図7の表面性状とを比較すると、図6の研磨加工前では白色や色の薄い部分が多く見られるとともにニードリングの経筋も見られる。一方、図7の研磨加工後では一部色の薄い部分はあるものの、白色の部分はなく、全体がほぼ一様に発色した状況が見られ、ニードリングの経筋も見られない。
【0063】
本実施例によれば、フェルト表層を研磨することで、繊度の小さいフェルトを用いることやフェルトを過大な圧力でプレスすることなく、フェルト表層の表面性を向上させることができる。また、前記構成にかかるフェルトは、表層に備えるバット繊維を適宜選択することによって、脱水性、汚れ防止性、脱毛防止性を損なうことなく、フェルト表層の表面性を向上させることができる。さらに、フェルトを研磨することは、バット繊維が研磨されて繊維を扁平化させ、繊維表面に微細な傷やバリを生じさせる。この繊維の扁平化や微細な傷やバリの形成は、繊維の表面積を増大させるため、フェルトの親水性を向上させるとともに湿紙への「なじみ」をも向上させることができる。
【0064】
次に、研磨加工によるフェルト表面平滑性向上とフェルト圧力均一性向上がもたらす搾水性向上効果を確認するために、搾水試験を行った。搾水試験は、次の方法で行った。すなわち、予め水分を調整し重量が測定された湿紙とアルミ板をプレス入口にてフェルト上に置き、プレスを通過させ、湿紙受けに入った湿紙の重量を測定する。そして湿紙のプレス前後での湿紙重量変化より、プレスおける搾水量を計算し、フェルト間の搾水性を比較する。この搾水試験を、実施例1の研磨前後のサンプルを用いて行った。試験は、フェルト走行速度200m/分、フェルト水分500±25g/m、湿紙坪量50±2.5g/m、プレス前湿紙水分60±1.0%の条件で行った。なお、試験はサンプル数n=20の条件で行い、その平均値で搾水性の比較を行った。
【0065】
結果を表5に示す。表5を参照すると、研磨後のサンプルは研磨前のサンプルに比べて1.5%多く搾水しており、研磨加工によりフェルト表面平滑性と加圧均一性が向上することで、搾水性を向上させることができる。
【0066】
【表5】

【実施例2】
【0067】
次に本実施形態の実施例2について説明する。実施例2は経糸と緯糸とを織機で織ることで形成された基布層に、表層となる通常のナイロン(表中単に「ナイロン」という)と芯鞘型複合繊維(表中単に「芯鞘」という)とからなるバット繊維をニードリングしている。実施例2では繊度の異なるバット繊維がニードリングされた2種類のサンプルを供した。実施例2の繊維の材質、繊度を表6に示している。ここで実施例2の繊度は2.5dtex以上かつ17dtex以下の範囲となっている。また、実施例2は、20%以上かつ80%以下の前記芯鞘型複合繊維を含む構成としている。なお、実施例2−2はバット原料3が表外バット層となっている。
【0068】
【表6】

【0069】
芯鞘型複合繊維は、融点の異なる2種類の高分子が芯部と鞘部に適用されている。鞘部の高分子は芯部の高分子と比べ低い融点とされているため、表層を芯部の融点よりも低く、鞘部の融点よりも高い温度環境に置くことで、芯部を維持したまま、鞘部を溶融させることができる。例えば、芯部には高融点(200℃以上)ポリアミド合成繊維を、鞘部には低融点(140℃〜160℃)ポリアミド合成繊維を適用することができる。
【0070】
この構成では、表層を研磨加工後に鞘部を溶融させ、その後硬化させることで、バット繊維同士の結合を強固とするとともに表層を硬化させることができるため、表層のバット繊維が脱毛することを防止する。なお、鞘部を溶融させるタイミングについては、フェルトの使用条件、研磨加工の作業性等から判断し、前記した研磨加工後に限定されることなく、研磨加工前や研磨加工前後に行ってもよい。すなわち、研磨前に鞘部の第2高分子材を一度溶融させることで、バット繊維同士の絡み合う力が弱い場合においても研磨を効率的に行うことができるようになり、所望のフェルト表面性を実現することが可能となる。
【0071】
実施例2は、実施例1と同様に図4に示す研磨加工がされ、図2に示すニードリングされた後の「粗さ」、不均一な圧力分布が残っている状態から、図1に示す表面が研磨された状態となる。研磨加工前後の実施例について、フェルトの物性となる密度、研磨量、研磨前後の通気度を測定した結果を表7に示す。
【0072】
【表7】

【0073】
表7を参照すると、実施例2は研磨加工前後で通気度の大きな変化は見られない。このように本実施例における研磨加工は、加工に供された実施例のバット繊維自体の通気特性を変えるものではない。実施例の密度は0.390g/cm以上であり、研磨後のフェルト表面において毛羽立ち等は見られていない。
【0074】
表8に、研磨加工前後の表面圧力分布変動係数の測定値と研磨加工前後の測定値の差を百分率および算術平均粗さRaの測定値と研磨加工前後の測定値の差(百分率)を示す。
【0075】
【表8】

【0076】
表8を参照すると、表面圧力分布の変動係数は低下しており、表面圧力分布の変動係数(JISZ8101−1)が0.25以下となるように研磨することができる。このように、研磨加工はフェルト表面の不均一な圧力分布を減少させることができる。また、実施例の百分率として示した研磨加工前後の測定値の差は表3で示した参考例と比べて大きくなっており、実施例では不均一な圧力分布を減少させる研磨加工の効果が高いことを示している。
【0077】
次に、算術平均粗さRaを見ると、研磨された表面の算術平均粗さRa10〜38μmの範囲に含まれている。このように本実施例は、フェルト搾水性向上によるマシン操業効率の向上と、製紙機で生産される紙の表面性の向上とを実現させることが出来る。また、本実施例では、研磨前後で粗さが顕著に減少していることが分かる。前記した参考例1−4では研磨前後において粗さの変化はほとんど無かったが、芯鞘型複合繊維が適用された実施例では粗さの減少を実現できた。
【0078】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。本発明は、明細書および図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。例えば、バット繊維の研磨加工をする前に、表層の繊維にポリビニルアルコールのり、デンプンのり等の水溶性高分子接着剤を塗布し、研磨後に接着剤を除去することもできる。かかる手順によって、表層を固定化することで研磨加工を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる製紙用フェルトは、紙の表面性を向上させることができる効果を有し、複層構造をなす基布層の表面又は表裏両面にバット繊維層が一体化された製紙用フェルト、特に抄紙機のプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトなどとして有用である。
【符号の説明】
【0080】
1,11 基布層
2,12 バット繊維層
3 平面
10 フェルト
13 表面
21 搬送ロール
22 研磨ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布層と、該基布層にバット繊維がニードリングによって絡合一体化された表層とを少なくとも備える製紙用フェルトであって、
前記表層の製紙面は、研磨された表面であることを特徴とする製紙用フェルト。
【請求項2】
前記研磨された表面の平均圧力0.1MPa下でのフェルト表面圧力分布の変動係数が0.25以下であり、かつ算術平均粗さRaが10〜38μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項3】
前記表層の前記バット繊維の平均繊度は、17dtex以上かつ24dtex以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製紙用フェルト。
【請求項4】
前記製紙用フェルトの密度は、0.390g/cm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項5】
前記表層の前記バット繊維は、加熱処理により軟化・溶融する高分子材料である芯鞘型複合繊維を含み、
該芯鞘型複合繊維は、第1高分子材からなる芯部と、該芯部の少なくとも一部を被覆し、前記第1高分子と異なる第2高分子材とからなる鞘部とからなり、
前記第2高分子材の融点温度は、前記第1高分子材の融点温度よりも低いことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項4のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項6】
前記表層は、前記表面側に配された表外バット層と、該表外バット層の内側に配された表内バット層とからなり、
前記表外バット層は、前記芯鞘型複合繊維を含むことを特徴とする請求項5に記載の製紙用フェルト。
【請求項7】
前記表外バット繊維の平均繊度は、2.5dtex以上かつ17dtex以下であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の製紙用フェルト。
【請求項8】
前記表層は、20%以上かつ80%以下の前記芯鞘型複合繊維を含むことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の製紙用フェルト。
【請求項9】
基布層と、該基布層にバット繊維がニードリングによって絡合一体化された表層とを備える製紙用フェルトの製造方法であって、
前記表層の製紙面が研磨されることを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
【請求項10】
前記バット繊維は、加熱処理により軟化・溶融する高分子材料である芯鞘型複合繊維を含み、
該芯鞘型複合繊維は、第1高分子材からなる芯部と、該芯部の少なくとも一部を被覆し、前記第1高分子の融点温度よりも低い融点温度を有する第2高分子材とからなる鞘部とからなり、
前記表層の製紙面が研磨される前に、前記第1高分子の融点温度よりも低く、前記第2高分子材の融点温度よりも高い温度で加熱、冷却されることを特徴とする請求項9に記載の製紙用フェルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−162910(P2011−162910A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26583(P2010−26583)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】