説明

製紙白水の処理方法

【課題】白水中の有価成分を回収すると共に白水を清浄化して再利用することが出来る、製紙白水の処理方法を提供する。
【解決手段】製紙白水に凝集剤を添加し、凝集物を生成させて分離する製紙白水の処理方法であって、最初にカチオン性高分子凝集剤(A)を添加し、次いで、アニオン性高分子凝集剤(B)を添加し、更に、カチオン性高分子凝集剤(A)を添加する製紙白水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙白水の処理方法に関し、詳しくは、製紙工場で抄紙工程から排出される白水に凝集剤を添加する、製紙白水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白水には、填料として使用された各種の成分が有価成分として含まれている。それで、従来より、白水に各種の凝集剤を添加し、白水中の有価成分を凝集させて回収する方法が提案されている。例えば、特定組成のアクリル系カチオン性水溶性高分子を使用する方法(特許文献1)、特定構造のカチオン性水溶性高分子を使用する方法(特許文献2)、特定構造のカチオン性水溶性高分子と組み合せてカチオン性水溶性高分子を使用する方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−101992号公報
【特許文献2】特開平9−78482号公報
【特許文献3】特開2003−181466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、凝集性能は、フロック径、沈降性、上澄液濁などによって評価されるが、特に、上澄液濁は、有価成分の回収率および白水の清浄化(再利用)の指標として重要である。
【0005】
ところが、従来の方法では、凝集物生成後の上澄液濁度が必ずしも十分ではなく、有価成分の回収率および白水の清浄化(再利用)の点で満足のいくものではない。本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、白水中の有価成分を回収すると共に白水を清浄化して再利用することが出来る、製紙白水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、白水の凝集処理後の上澄液濁は、凝集剤の添加順序を含む特定の添加態様によって著しく影響されるとの知見を得た。
【0007】
本発明は、上記の知見を基に更に検討を重ねた結果完成されたものであり、その要旨は、製紙白水に凝集剤を添加し、凝集物を生成させて分離する製紙白水の処理方法であって、最初にカチオン性高分子凝集剤(A)を添加し、次いで、アニオン性高分子凝集剤(B)を添加し、更に、カチオン性高分子凝集剤(A)を添加することを特徴とする製紙白水の処理方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の処理方法によれば、前記の課題が達成されるが、近年の高級紙志向により、炭酸カルシウムに代えてタルクやクレイと言った高級填料が使用されている状況下にあって、本発明の工業的価値は顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
先ず、本発明で対象となる製紙白水について説明する。製紙白水は、製紙工場の抄紙工程から排出され、填料として使用された各種の成分(タルクやクレイ等)を有価成分として含んでいる。本発明は、pH値やSS分などが異なる各種の製紙白水に適用し得る。
【0011】
次に、本発明で使用する凝集剤について説明する。本発明の特徴は、カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤とを特定の態様で添加する点にあり、凝集剤の種類は必ずしも限定されず、従来公知の凝集剤の中から適宜選択し得るが、特に以下の凝集剤が推奨される。
【0012】
カチオン性高分子凝集剤(A):
下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体を構造単位として含む重合体、または当該カチオン性単量体と下記一般式(2)で表されるノニオン性単量体を構造単位として含む重合体。
【0013】
アニオン性高分子凝集剤(B):
下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体を構造単位として含む重合体、または当該アニオン性単量体と下記一般式(2)で表されるノニオン性単量体を構造単位として含む重合体。
【0014】
【化1】

【0015】
[式(1)中、Xは酸素原子またはNHを示し、Yは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、RおよびRは各々同一または異なって、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、またはベンジル基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、Z−はアニオン基を示す。式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Aは水素原子またはカチオン基を示す。]
【0016】
一般式(1)で表されるカチオン性単量体の代表例としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系カチオン性単量体などが挙げられ、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩や硫酸塩などの3級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物などのハロゲン化アルキル付加物や塩化ベンジル等のハロゲン化アリール付加物などの4級塩などが挙げられる。また、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の塩酸塩や硫酸塩などの3級塩;ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物などのハロゲン化アルキル付加物や塩化ベンジル付加物などのハロゲン化アリール付加物などの4級塩も挙げられる。これらの中では、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩が好ましい。
【0017】
一般式(2)で表されるノニオン性単量体としては、アクリルアミド又はメタクリルアミドが挙げられが、特に、アクリルアミドが好ましい。
【0018】
カチオン性高分子凝集剤(A)がカチオン性単量体とノニオン性単量体とを構造単位として含む重合体である場合、両者の重比率は、通常、カチオン性単量体/ノニオン性単量体=10/90〜90/10であり、好ましくは20/80〜70/30である。
【0019】
アニオン性高分子凝集剤(B)は、前記一般式(3)で表されるアニオン性単量体を構造単位として含む重合体、または当該アニオン性単量体と前記一般式(2)で表されるノニオン性単量体を構造単位として含む重合体である。
【0020】
一般式(3)で表されるアニオン性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、これらの塩が挙げられるが、特に、メタクリル酸および/またはその塩が好ましい。
【0021】
アニオン性高分子凝集剤(B)がアニオン性単量体とノニオン性単量体を構造単位として含む重合体である場合、両者の重比率は、通常、アニオン性単量体/ノニオン性単量体=10/90〜70/30であり、好ましくは20/80〜60/40である。
【0022】
カチオン性高分子凝集剤(A)及びアニオン性高分子凝集剤(B)は、何れも、実質的に公知の重合体であり、従って、公知の重合法で容易に得ることが出来る。カチオン性高分子凝集剤(A)の重量平均分子量は、通常100万〜1000万、好ましくは300万〜800万である。アニオン性高分子凝集剤(B)の重量平均分子量は、通常500万〜2000万、好ましくは800万〜1600万である。
【0023】
本発明においては、製紙白水に凝集剤を添加するに際し、最初にカチオン性高分子凝集剤(A)を添加し、次いで、アニオン性高分子凝集剤(B)を添加し、更に、カチオン性高分子凝集剤(A)を添加することが重要である。
【0024】
上記の多段添加の方法としては、複数槽設置し、各凝集剤をそれぞれ別々の槽に添加して機械攪拌する方法、同一の槽に添加位置をずらして添加して機械攪拌する方法、廃水ラインに添加してライン混合する場合は位置をずらして添加する方法などが考えられる。
【0025】
凝集剤の添加量は、白水の種類、SS、濁度等の水質により変動するが、カチオン性高分子凝集剤(A)の添加量は、通常0.1〜10ppm、好ましくは1〜3ppm、アニオン性高分子凝集剤(B)の添加量は、通常0.1〜10ppm、好ましくは1〜3ppmである。また、多段添加の際の間隔(攪拌混合時間)は例えば30秒〜5分程度である。生成した凝集の分離は、常法に従って、浮上処理、沈殿処理、ろ過処理の等の方法で行うことが出来る。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例によって更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例において採用した各測定方法は次の通りである。
【0027】
(1)フロック径:
凝集フロックのフロック径は、目視により全体の平均を測定した。
【0028】
(2)沈降時間:
高分子凝集剤の所定量を添加し、所定時間攪拌混合した後に攪拌を停止する。そして、生成した凝集フロックが500mlのビーカーの底に沈降する迄の時間を測定した。
【0029】
(3)上澄液濁度(SS):
濁度は、JIS K 0101に基づき測定した。
【0030】
なお、SSは、フロック粒径、沈降時間を測定した後、2分間静置し、表面から3cmの深さより処理水を採取して測定した。
【0031】
実施例1:
製紙白水として、pH6.9の高灰分白水を使用した。カチオン性高分子凝集剤(A)及びアニオン性高分子凝集剤(B)として、表1に記載のものを使用した。
【0032】
【表1】

【0033】
先ず、ビーカーに白水500mlを採取し、カチオン性高分子凝集剤(A)1ppmを添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した。次いで、アニオン性高分子凝集剤(B)1.5ppmを添加し、上記と同様に攪拌、混合し、更に、カチオン性高分子凝集剤(A)1ppmを添加し、上記と同様に攪拌、混合した。そして、前記の各項目(1)〜(3)測定し、その結果を表2に示す。
【0034】
実施例2〜13及び比較例1〜3:
実施例1において、第1段凝集剤、第2段凝集剤、第3段凝集剤の種類と添加量を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0035】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙白水に凝集剤を添加し、凝集物を生成させて分離する製紙白水の処理方法であって、最初にカチオン性高分子凝集剤(A)を添加し、次いで、アニオン性高分子凝集剤(B)を添加し、更に、カチオン性高分子凝集剤(A)を添加することを特徴とする製紙白水の処理方法。
【請求項2】
以下に規定するカチオン性高分子凝集剤(A)とアニオン性高分子凝集剤(B)とを使用する請求項1に記載の処理方法。
カチオン性高分子凝集剤(A):
下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体を構造単位として含む重合体、または当該カチオン性単量体と下記一般式(2)で表されるノニオン性単量体を構造単位として含む重合体。
アニオン性高分子凝集剤(B):
下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体を構造単位として含む重合体、または当該アニオン性単量体と下記一般式(2)で表されるノニオン性単量体を構造単位として含む重合体。
【化1】

[式(1)中、Xは酸素原子またはNHを示し、Yは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、RおよびRは各々同一または異なって、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、またはベンジル基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基を示し、Z−はアニオン基を示す。式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Aは水素原子またはカチオン基を示す。]
【請求項3】
前記カチオン性高分子凝集剤(A)が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩を構造単位として含む重合体、またはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩とアクリルアミドを構造単位として含む重合体から成り、前記アニオン性高分子凝集剤(B)が、アクリル酸および/またはアクリル酸塩を構造単位として含む重合体、またはアクリル酸および/またはアクリル酸塩とアクリルアミドを構造単位として含む重合体から成る請求項2記載の処理方法。

【公開番号】特開2013−86013(P2013−86013A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228011(P2011−228011)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】