説明

製膜装置及び製膜方法

【課題】基板における局所的な温度差を解消し、基板の割れや金属酸化膜のクラックを防止する金属酸化膜を生産する製膜装置を提供する。
【解決手段】基板の全面を加熱する主加熱手段1と、金属酸化物前躯体を含む溶液を霧化して液滴微粒子とする霧化部と、前記液滴微粒子を含むガスを前記基板の所定の領域に吹きつけるノズル4と、液滴微粒子を含む前記ガスを吹きつける前記所定の領域を選択的に加熱する補助加熱手段3を備る金属酸化膜を生産する製膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物前駆体を含む溶液から発生させた液滴微粒子を基板上に吹きつけて製膜する製膜装置ならびに製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液から金属酸化物膜を製膜する生産方法として、大気圧下で金属酸化物前駆体を含む溶液を液滴微粒子にして製膜する製膜方法がある。
【0003】
図5に特許文献1記載の金属酸化膜の製造装置を示す。特許文献1記載の金属酸化物膜の製造装置は、基材111を保持するステージ112と、上記基材111を加熱する加熱装置113と、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液114を霧化するスプレー装置115と、上記スプレー装置115に上記金属酸化物膜形成用溶液114を供給する金属酸化物膜形成用溶液供給装置116と、を備えた金属酸化物膜の製造装置である。この装置では、目的とする位置に金属酸化物膜形成用溶液を噴霧するために、ステージ112が移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−225738号公報(平成18年8月31日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の金属酸化物膜の製造装置では、スプレー装置115は、基材111の全面に対し一度に金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することができない。そのため、基材111の全面に金属酸化膜を形成する場合は、ステージ112を移動させて、複数回または連続的に噴霧する必要がある。
【0006】
これは、能力の小さなスプレー装置115を用いて、大きな基材111に金属酸化物膜を形成する場合や、複数の基材111に対し連続的に金属酸化物膜を形成する場合に有効な方法ではあるが、金属酸化物膜形成用溶液114の温度は、加熱装置113によって加熱された基材111の温度より低いため、基材111においては、噴霧された領域の温度が低下して、噴霧されていない領域より冷たくなる。このような、基材111における局所的な温度差は、基材111の歪みの原因となる。基材111の歪みは基材111の割れや金属酸化物膜の品質の低下やばらつきやクラックの原因となる。
【0007】
図6に、基材111に金属酸化物であるZnO膜を形成した時の基材111の温度変化を示す。図6は、基材111に熱電対(温度センサ)をセラミックボンドで固定して測定した温度を縦軸に、時間を横軸とするグラフである。なお、金属酸化物膜形成用溶液114を噴霧しながら、ステージ112を1mm/sの速度で移動させた。
【0008】
図6より、金属酸化物膜形成用溶液114が熱伝対に噴霧されている時に、温度が低下していることが確認された。温度の低下は、基材111の設定温度である500℃から最大で134℃であり、低下後の温度は366℃となった。
【0009】
さらに、形成したZnO膜に関し、断面SEM観察を行ったところ、ZnOの柱状結晶と粒状結晶とが混在した膜であり、品質が良くないことが判った。また、シート抵抗を四端子プローブ法により測定したところ、4.7×10Ω/sqであり、高品質のZnO柱状結晶膜と比較して、高抵抗であった。
【0010】
以上の問題に鑑み、本発明は、基板(特許文献1における基材111)における局所的な温度差を解消し、基板の割れや金属酸化膜(特許文献1における金属酸化物膜)のクラックを防止する製膜方法および製膜装置を提供することを目的とする。また、高品質の金属酸化膜を生産する製膜方法および製膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の製膜装置は、基板の全面を加熱する主加熱手段と、金属酸化物前躯体を含む溶液を霧化して液滴微粒子とする霧化部と、前記液滴微粒子を含むガスを前記基板の所定の領域に吹きつけるノズルと、を備えて、前記基板表面に金属酸化膜を生産する製膜装置であって、前記所定の領域を選択的に加熱する補助加熱手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記所定の領域は、前記液滴微粒子を含むガスを吹きつけることによって温度が低下する領域であることを特徴とする。
【0013】
また、前記補助加熱手段は、輻射によって前記基板に熱を伝えることを特徴とする。
【0014】
また、前記ノズルの開口部がスリット状であることを特徴とする。
【0015】
また、前記ノズル及びまたは前記基板を走査する走査手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の製膜方法は、基板表面に金属酸化膜を生産する製膜方法であって、主加熱手段を用いて前記基板の全面を加熱するステップと、金属酸化物前躯体を含む溶液を霧化して液滴微粒子とするステップと、前記液滴微粒子を含むガスを前記基板の所定の領域に吹きつけ、補助加熱手段を用いて前記所定の領域を加熱するステップと、を備え、前記所定の領域は、前記主加熱手段ならびに前記補助加熱手段によって重畳して加熱されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板における局所的な温度差を解消し、基板の割れや金属酸化膜のクラックを防止することができる。また、均一かつ高品質の金属酸化膜を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る本実施例の製膜装置に係る斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る本実施例の製膜装置に係る側方断面図である。
【図3】本実施の形態に係る基板の温度を示すグラフである。
【図4】本実施の形態に係る基板の温度を示すグラフである。
【図5】従来技術に係る金属酸化膜の製造装置である。
【図6】従来技術に係る基板の温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態である製膜装置及び製膜方法について、以下に詳細に説明する。
【0020】
図1に、本実施の形態に係る製膜装置の斜視図を示す。本実施の形態の製膜装置は、主加熱手段として、ホットプレート1を備える。ホットプレート1は、基板2を載置し、載置された基板2全面を加熱する。
【0021】
主加熱手段は、基板全面を均一な温度に加熱する手段であることが好ましい。均一な温度であれば、基板が熱変形を起こし、反り、たわみまたは割れを引き起こすことが無い。基板上方から液滴微粒子を含むガスを吹きつける場合、主加熱手段は、液滴微粒子と干渉しないよう、基板2下方から加熱する形態が望ましい。基板2下方には、基板2を載置するための載置台が必要であるので、載置台としても使用可能なホットプレート1を主加熱手段として用いて、伝導によって基板2を加熱することが望ましい。また、基板2が吸収して発熱する電磁波を照射する手段を主加熱手段として用いても良い。具体的には、基板2が金属系である場合は1〜2μm、樹脂系である場合は2〜4μm、ガラス系である場合は2〜12μm、セラミック系である場合は3〜5μmの波長を有する赤外線を照射する手段が好適である。
【0022】
基板2は、金属、セラミックス、樹脂、ガラスのいずれでも良い。基板2は、金属酸化物膜の加熱焼成まで耐熱性があり、変形や割れが生じない材料であれば良い。
【0023】
基板2の温度としては、金属酸化物膜前駆体が焼成されて金属酸化物となる温度であることが求められる。具体的には200℃〜700℃であり、好ましくは250℃〜600℃である。250℃以上であれば、前駆体材料の焼成が十分で膜質の高い膜を焼成することができる。600℃以下であれば、基板2の加熱熱に要する加熱源の消費エネルギーを小さくすることができるため、ランニングコストを押さえることができる。また、耐熱性の低い素材を用いることができる。
【0024】
金属酸化物前駆体材料である溶液8は、金属源、溶媒、添加剤からなる溶液材料である。金属源としては溶媒に溶解する材料であればよく、金属錯体や金属塩が用いられる。金属原料は、Mg、Ca、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、P、As、Sb、Se、Teから一つ以上選ばれる元素を含む。錯体は、前記金属に有機系配位子材料が配位したものである。配位子はエチレンジアミン、ビピリジン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントトラミン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン四酢酸イオン、ジメチルグリオキシマト、グリシナト、アセチルアセトナート、トリフェニルホスフィン、シクロペンタジエニル等が挙げられる。金属塩は、前記金属の酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物等が挙げられる。溶媒は前記金属元素を溶解するものであれば特に制限はない。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、2種類以上を混合してもよい。添加剤として、金属原料の溶解促進剤、配位子、酸化剤、還元剤、pH調整剤、表面張力調整剤、粘度調整剤を含んでも良い。
【0025】
また、本実施の形態の製膜装置は、霧化部として、底面に超音波振動子(本多電子製)9を装着したボトル7を備える。霧化部は、溶液を霧化して、ノズルから吐出することが可能な液滴微粒子とする手段である。霧化する方法の1つとして超音波霧化法がある。超音波霧化法は、溶液8を入れたボトル7の底部に超音波振動子9を装着し駆動させることで微小な液滴を発生させる方法である。このときの液滴の大きさは、溶媒の種類にもよるが、振動子9の周波数によって決まる。振動子9の周波数が10kHzの場合は80μm、100kHzの場合は20μm、1MHzの場合5μm程度の液滴微粒子が発生する。この液滴微粒子の大きさは自重による沈降の影響を受けない程度の大きさがよいため、1MHz以上の高周波を用いて5μm以下の液滴を形成することが好ましい。超音波霧化法以外にも液体に圧力を印加して液滴微粒子とするスプレー法等、液滴微粒子を発生させる方法であれば、特に限りはない。
【0026】
また、液滴微粒子を運搬する手段として、配管5およびガス供給口6を備える。ガス供給口6は、ボトル7の上部に設けられた開口であり、図示しないキャリアガス供給手段が接続される。配管5はボトル7およびノズル4を繋ぐ管である。
【0027】
配管5はSUS、Al、樹脂材料から選択され、適宜温度制御されても良い。発生した液滴微粒子は配管5を通じてノズル4に運搬される。液滴微粒子は、圧縮空気、酸素、窒素、水素、溶媒ガスなどのキャリアガスのガスフローに伴って運搬しても良い。キャリアガスの流量は、ノズル4の噴出し口形状によって適宜設定する。ノズル4から噴出される流速は0.1〜10m/sが好ましい。キャリアガスの流速が0.1m/s以上であれば、加熱されている基板2からの上昇気流に逆らって基板2表面に到達することができる。また、10m/s以下であれば、基板2上で跳ね返り飛散してしまうことがなく、基板2表面での滞留時間が長くなり、基板2表面で膜成長することができる。
【0028】
また、ノズル4は、300×2mmのスリット状の開口部を有する。ノズル4は、基板2の一部所定の領域に対して液滴を含むキャリアガスを吹きつけるように配置される。
【0029】
ノズル4の開口部は基板と対向して設置され、基板2の所定の領域に対し均一に液滴微粒子を吹きつけることができる。基板2の所定の領域に対し均一に膜を形成するためには、ノズル4は基板2の一辺の長さと同程度の長さをもつスリット状の開口部であることが好ましいが、スポット状の開口部を複数個配列してもよい。ノズル4の開口部と基板2とのギャップは、1〜10mmになることが好ましい。ギャップが1mm以上であれば、加熱されている基板からの対流伝熱によってノズル4筐体が加熱されることがない。また、ギャップが10mm以下であれば、ノズル4から噴出されたガスが周囲に広がらないので、液滴微粒子が確実に基板に到達する。
【0030】
補助加熱手段は、ノズル4から吐出された液滴微粒子との干渉を防止するため、基板2から遠隔して設置して輻射によって基板2を熱を伝える形態が好ましい。具体的には、赤外線を照射するランプヒータや、レーザ光を照射するレーザ発振器等が好適である。補助加熱手段が選択的に加熱する領域は、ガスの吹きつけによって温度が低下する領域とする。たとえば、ノズル4が基板のある一辺と同等の長さの長尺スリット形状である場合、該ノズル4からの吹き出し方向を直線的に延長して基板2表面に投影した領域を補助加熱手段が選択的に加熱する領域として設定すればよい。また、該ノズル4からの吹き出し方向を直線的に延長して基板2表面に投影した領域が矩形である場合、補助加熱手段として、ライン状の赤外線ランプヒータや赤外線レーザが好適である。補助加熱手段がランプヒータである場合、ランプ周辺に反射板を設置して集光することで任意の形状に照射領域を変更することができる。また、補助加熱手段がレーザである場合、長尺ライン状のレーザやスポット状のレーザを、アパーチャーやビームエキスパンダーなどの光学系によって照射形状を変更しても良い。矩形状以外の領域に照射する場合でも適宜の形状に集光することができるので、任意の形状に照射領域を変更することができる。
【0031】
図2に、本実施例の製膜装置に係る側方断面図を示す。ホットプレート1は、裏面に発熱するカートリッジヒータ11を備える。
【0032】
また、ホットプレート1および基板2を覆うようにチャンバーカバー10が設けられる。チャンバーカバー10は、基板2の保温し、かつ塵等から基板2を保護する。チャンバーカバー10の上面には開口部があり、上面の開口部を通じて、液滴微粒子を含むキャリアガスの吹きつけおよびハロゲンランプ3による加熱が行なわれる。または、チャンバーカバー10の側面には、基板2の搬入・搬出を行なうための開口が2つ設けられている。
【0033】
また、図2に示すように、チャンバーカバー10内に2つ以上の基板が同時に搬入されも良い。
【0034】
なお、ノズル及び/または基板を走査しても良い。基板2は図示しない走査手段であるロボシリンダ(アイエイアイ製)によって、水平方向に搬送可能である。ノズル4及び/または基板2を走査しつつ、断続的または連続的に液滴微粒子を吹きつけることによって、基板2全面に金属酸化膜を形成することができる。走査対象は、ノズル4、基板2のどちらか一方でも両方でもよく、走査軸は基板面内方向において一軸または二軸のいずれであってもよい。ノズル4を走査する場合、補助加熱手段も同期して走査することで、常に基板2温度の低下がなく、高品質な金属酸化膜を均一に形成することが可能である。
【0035】
次に、ハロゲンランプ3が加熱する基板2の領域の設定方法について、説明する。
【0036】
まず、液滴微粒子を含むキャリアガスを吹きつけずに、ホットプレート1のみによって基板2を加熱して、基板2の温度T[K]を測定する。測定は基板1にセラミックボンドで固定した熱電対によって行なう。温度Tを時間t[s]で微分して求める温度上昇速度ΔT[K/s]は、温度Tが低いほど速く、高いほど遅い。温度上昇速度ΔTは、温度Tを引数とする関数ΔT(T)として表現できる。
【0037】
図3は、補助加熱手段による加熱を行わない場合の基板2の温度Tを示すグラフである。温度Tは、ホットプレート1によって基板2を加熱して設定温度にしたのちに、基板2を一定速度sで一方向に移動させつつ、液滴微粒子を含むキャリアガスを吹きつけて金属酸化膜を形成する時の基板2の表面温度を測定して求める。温度Tには図3に示すようにキャリアガスの吹きつけによる温度低下が観察される。温度Tは時間tを引数とする関数T(t)である。
【0038】
図3のグラフは、基板2を一定速度sで所定の方向に移動させた時のグラフであるから、ノズル4の位置を基準位置する熱伝対の相対位置xは、x=tsという式によって表現することができる。t=x/sであるから、温度T(t)の時間tにx/sを代入して、温度T(x/s)とすれば、位置xに対応する温度Tを求めることができる。
【0039】
また、温度Tを時間tで微分して温度低下速度ΔT(t)[K/s]を求める。温度低下速度ΔTも、温度低下速度ΔT(x/s)と変形することにより、位置xに対応する温度低下速度ΔTを求める式となる。
【0040】
上記に説明した関数より、液滴微粒子を含むキャリアガスの吹きつけによる温度変化ΔTは、式1の通りである。
【0041】
【数1】

【0042】
式1において、ΔTが負となる位置xの範囲は、キャリアガスを吹きつけによって温度が低下する範囲を示す。図3においては、温度Tが低下を開始する時刻tから温度が再上昇を開始する時刻tまでの時間帯dに対応する位置xがキャリアガスの吹きつけによって温度が低下した範囲である。従って、時間帯dに対応する位置xに対して、ハロゲンランプ3によって赤外線を照射すれば良い。
【0043】
また、ΔTが負となる位置xの範囲において、ΔTの絶対値|ΔT|は、キャリアガスを吹きつけによる温度低下量を示す。従って、温度低下量に比例する照度の赤外線を基板2に照射して、温度低下量に比例する熱量を基板2に付与すれば良い。
【0044】
本実施例によれば、液滴微粒子を含むキャリアガスが吹きつけられた領域の温度低下が補助加熱によって補償されるので、キャリアガスが吹きつけられた領域の温度は、吹きつけられていない領域とほぼ同じとなる。これにより、基板2における局所的な温度差が解消され、基板2の割れや金属酸化膜のクラックを防止することができる。また、透過率、抵抗率、密着性等に優れた均一かつ高品質の金属酸化膜を得ることが出来る。
【0045】
また、ノズル4を走査して大型基板に製膜する場合にも、ノズル4の走査に関わらず、基板2の局所的温度差をなくすことが出来るので、大型基板に対しても均一かつ高品質の金属酸化膜を製膜することができる。
【実施例1】
【0046】
以下、本実施の形態の製膜装置を用いて長さ300mmのガラス基板上にZnO膜を形成する製膜方法について説明する。
【0047】
まず初めに、金属酸化物膜前駆体溶液として、亜鉛アセチルアセトナートの0.1Mメタノール溶液に、溶解促進剤として酢酸を5vol%添加した溶液8をボトル7に入れる。
【0048】
次に、ホットプレート1に基板1を載置する。
【0049】
次に、ホットプレート1が、基板2を500℃になるまで加熱する。
【0050】
次に、超音波振動子9を2.4MHzで動作させ、ボトル7内に液滴微粒子を発生させる。
【0051】
次に、ガス導入口6からボトル7に30リットル/分の流量でキャリアガスとしてN2ガスを導入する。キャリアガスは液滴微粒子と混合した状態で配管5を通過し、ノズル4の開口部より吐出され、基板2の所定の領域に吹きつけられる。
【0052】
同時に、斜め方向から集光型ライン状ハロゲンランプ3を照射して、基板2の所定の領域を加熱する。
【0053】
また、基板2をホットプレート1ごとロボシリンダによって1mm/sの速度で走査する。
【0054】
図4は、基板2上に設けた測定点における温度を縦軸、時間軸を横軸とするグラフである。温度の測定は、基板上の測定点に熱電対をセラミックボンドで固定して測定した。測定結果から、液滴微粒子を含むキャリアガスを吹きつけても、基板2の温度変化は、設定温度の3.4%未満であることが判った。また、基板2の割れは発生せず、形成したZnO膜にクラックは発生しなかった。
【0055】
形成したZnO膜を段差計(Veeco製)にて測定したところ、基板全面に平均200nmの膜が均一に製膜されていることが確認できた。また、断面SEM観察を行ったところ、基板界面からZnOの柱状結晶が一様に成長しており、従来技術と比較して均一かつ高品質であることが確認できた。シート抵抗を四端子プローブ法により測定したところ、3.5×10Ω/sqであり、従来技術より低抵抗であることが確認できた。
【0056】
なお、図4に係る測定結果をTとして、ΔTを算出し、算出されたΔTに比例して、ハロゲンランプ3によって照射する照度の増減を行なってもよい。これにより、さらに基板2の局所的な温度変化を小さくすることができ、高品質の金属酸化膜を形成することができる。
【0057】
また、金属酸化膜が所定以上の速度で形成される範囲をハロゲンランプ3による照射領域としても設定しても良い。また、金属酸化膜が所定以上の速度で形成される範囲から所定の距離以下の距離にある範囲をハロゲンランプ3による照射領域としても設定しても良い。これらの場合、ハロゲンランプ3による照射領域の設定が簡易である。
【0058】
また、ノズル4より吹き出されるキャリアガスの吹き出し方向を直線的に延長して基板2表面に投影した範囲をハロゲンランプ3による照射領域としても設定しても良い。前記投影した範囲から所定の距離以下の距離にある範囲をハロゲンランプ3による照射領域としても設定しても良い。これらの場合、ハロゲンランプ3による照射範囲の設定が簡易である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る金属酸化膜は、液晶ディスプレイ、太陽電池等の電子デバイスにおける導電膜、半導体膜、絶縁膜として用いることが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1 ホットプレート
2 基板
3 ハロゲンランプ
4 ノズル
7 ボトル
8 溶液
9 超音波振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の全面を加熱する主加熱手段と、
金属酸化物前躯体を含む溶液を霧化して液滴微粒子とする霧化部と、
前記液滴微粒子を含むガスを前記基板の所定の領域に吹きつけるノズルと、
を備えて、
前記基板表面に金属酸化膜を生産する製膜装置であって、
前記所定の領域を選択的に加熱する補助加熱手段を備えることを特徴とする製膜装置。
【請求項2】
前記所定の領域は、前記液滴微粒子を含むガスを吹きつけることによって温度が低下する領域であることを特徴とする請求項1記載の製膜装置
【請求項3】
前記補助加熱手段は、輻射によって前記基板に熱を伝えることを特徴とする請求項1記載の製膜装置。
【請求項4】
前記ノズルの開口部がスリット状であることを特徴とする請求項1記載の製膜装置。
【請求項5】
前記ノズル及びまたは前記基板を走査することを特徴とする請求項1記載の製膜装置。
【請求項6】
基板表面に金属酸化膜を生産する製膜方法であって、
主加熱手段を用いて前記基板の全面を加熱するステップと、
金属酸化物前躯体を含む溶液を霧化して液滴微粒子とするステップと、
前記液滴微粒子を含むガスを前記基板の所定の領域に吹きつけ、
補助加熱手段を用いて前記所定の領域を加熱するステップと、
を備え、
前記所定の領域は、前記主加熱手段ならびに前記補助加熱手段によって重畳して加熱されることを特徴とする製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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