説明

製袋包装機

【課題】 内容物やゴミなどの噛み込みが発生しても、所望の加圧力(シール圧)が得られる製袋包装機を提供する。
【解決手段】 筒状のフィルムを挟む一対のシールジョー25a,25bを開閉することでフィルムFbの流れ方向に対して横方向に帯状にシールして包装された商品を生産する製袋包装機に関する。シールジョー25a,25bを開閉駆動するために正逆回転するモータと、モータの駆動力をシールジョー25a,25bに伝達し、シール時にシール圧を増大させるリンク機構と、モータの駆動を制御するためのモータドライバとを備え、シール時における一対のシールジョー25a,25bの間の間隙Δの大きさに応じて、シール時におけるモータの回転トルクを制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるピロー型に包装を行う製袋包装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製袋包装機のシールジョーにごみ等が付着すると、シール圧が変化してシール不良の原因となる。そのため、従来より、シールジョーとリンク機構との間にスプリングを設け、所定量を越える加圧力を当該スプリングによって吸収することにより、一定の加圧力を得る方法が採用されている。
【0003】
しかし、スプリングを用いて加圧力を制御する方法では、加圧力を変更するには、スプリングの予圧変更やスプリング自体の交換を行う必要があり、煩雑である。特に、多品種少量生産時の段取替が頻繁となった場合には、その都度、機械の調整を行う必要があり作業の煩雑さが問題となる。
【0004】
一方、設計上、幾何的に求まるリンク機構のトグルが効く状態に基づき、リンク駆動用のモータの回転トルクと加圧力との関係を一義的に求め、モータのトルク制御によって一定の加圧力を得る方法が提案されている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平5−000110号
【特許文献2】特公平8−025542号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータのトルク制御を行う方法では、たとえば、シールジョー間に内容物が挟まった場合や、シールジョーの表面にゴミが付着している場合、あるいは、製袋するフィルムの厚みが異なる場合には、設計上想定していたモータのトルクと実際に必要なトルクとが異なる。そのため、これがシール不良の原因となる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、内容物やゴミなどの噛み込みが発生しても、所望の加圧力(シール圧)が得られる製袋包装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の製袋包装機は、フィルムの流れ方向に沿った端部同士を縦シール装置でシールしてフィルムを筒状に成形し、該筒状に成形したフィルム内に内容物が充填された後に前記筒状のフィルムを挟む一対のシールジョーを開閉することで前記フィルムの流れ方向に対して横方向に帯状にシールして包装された商品を生産する製袋包装機において、前記シールジョーを開閉駆動するために正逆回転するモータと、前記モータの駆動力を前記シールジョーに伝達し、前記シールジョーによるシール時にシール圧を増大させるリンク機構と、前記モータの駆動を制御するためのモータドライバとを備え、前記シール時における前記一対のシールジョーの間の間隙の大きさに応じて、当該シール時における前記モータの回転トルクを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
シールジョーが開いた状態において、モータが正回転してリンク機構を介してシールジョーが閉方向にスライド移動し、やがて、シールジョーが概ね閉じると、シールジョーの移動速度が「0」または「0」に近づいて、これにより、シールジョーによるシール(溶着)が行われる。
このシール時に、一対のシールジョーの間の間隙が予め想定した程度の通常時は、リンク機構による力の増幅が図られて、所定のシール圧が得られる。一方、前記間隙が予め想定した値よりも大きいと、リンク機構による力の増幅が不十分となるので、モータの回転トルクを前記通常時よりも大きくするように制御する。
このように、シール時のモータの回転トルクを制御することによって、前記シールジョーの間の間隙に拘わらず、所定のシール圧を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明においては、前記シール時において前記間隙に対応する物理量を検出する検出手段を更に備え、前記検出された物理量に基づいて、前記シール時の前記モータの回転トルクを制御する。 前記物理量としては、前記間隙に対応するシールジョー間の距離を検出してもよいが、以下に説明するモータやリンクの回転角を検出してもよい。
【0010】
すなわち、前記検出手段としては、たとえば、前記シール時において前記モータが停止したときの前記モータの実際の回転角を検出する検出手段を更に備え、前記検出手段で検出されたモータの回転角に基づいて、前記シール時の前記モータの回転トルクを制御するようにしてもよい。
【0011】
この場合、モータの回転角が所定の回転角であれば、通常の回転トルクが発生するようにモータを制御し、一方、たとえば、シールジョーの表面にゴミ等が付着していてモータの回転角が所定の回転角に至らないときは、通常よりも大きな回転トルクを発生させて所定のシール圧が得られるようにモータをトルク制御する。このように、モータの回転角に基づいて回転トルクを制御することで、シール時のモータの回転角に拘わらず、所定のシール圧が得られる。
【0012】
また、前記検出手段としては、たとえば、前記シール時における前記リンク機構のリンクの回転角を検出する検出手段を更に備え、前記検出手段で検出されたリンクの回転角に基づいて、シール時の前記モータの回転トルクを制御するようにしてもよい。
【0013】
リンク機構の回転中心の位置やリンクの長さは、各機物ごとに制作誤差が生じる。そのため、モータの回転角が所定の回転角であっても、前記シールジョー間の間隙が所定値とならないおそれがある。これに対し、リンクの実際の回転角に基づいてモータの回転トルクを制御することで、モータの回転角とリンクの回転角との関係に機物ごとの寸法誤差があっても、所定のシール圧が得られる。
【0014】
本発明においては、前記リンク機構の幾何学的な構造と、前記検出手段による検出結果に基づいて前記シール圧が所定値となるように演算するための演算式を記憶する記憶部を更に備え、前記演算式に基づいて前記シール圧が所定値となるように前記モータの回転トルクを制御するようにしてもよい。
このように、演算を行うことにより、テーブルに制御値を記憶させる手間が省ける。
【0015】
一方、本発明においては、前記検出手段による検出結果に応じて前記シール時のモータの回転トルクを制御するための制御値を記憶する記憶部を設け、前記記憶部から前記制御値を読み出して前記モータの回転トルクを制御するようにしてもよい。
【0016】
本発明においては、前記シールジョーが全開から概ね閉じるまでの第1期は前記モータが当該モータの回転速度を基準に制御され、一方、前記概ね閉じた後のシール時である第2期は前記モータが回転トルクを基準に制御され、前記閉じたシールジョーが全開に至る第3期は前記モータが前記回転速度を基準に制御されるのが好ましい。
このように、速度制御とトルク制御を併用することで、単位時間当たりの高い処理能力と、シールの信頼性の双方を実現することができる。
【0017】
この場合、前記シールジョーのシール時におけるモータの回転角の閾値を記憶する記憶部を更に備え、前記閾値まで前記モータが回転していない場合には前記シールジョーによるシール動作を停止し、一方、前記閾値以上に前記モータが回転している場合には、前記シール時にシール圧を付与するのが好ましい。
このように制御することにより、大きな異物が咬み込んだ場合にモータに過大なトルクが発生するのを回避できる。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」とあるのは、正面視でそれぞれ「手前側」、「奥側」、「右側」、「左側」を意味する。
【0019】
図1〜7は、実施例1を示す。
図1に示すように、本製袋包装機2は、上方から投入された内容物Mをフィルム(以下、「包材」という)Fbで包装して袋詰めの商品Bを製造するものである。
【0020】
全体構成:
製袋包装機2は、ロール支持部21、フォーマ22、プルダウンベルト機構23、縦シール装置24および横シール装置25などを備えている。
矢印aで示すように、ロール支持部21から繰り出された帯状の包材Faは、フォーマ22のセーラ22aおよびチューブ22bにより、左右両縁部が重ね合わされて筒状に形成された包材Fbになる。
プルダウンベルト機構23が、筒状の包材Fbを左右両側からチューブ部材22bに押し付けながら、矢印bで示すように下方へ搬送する。同時に、縦シール装置24が、前記筒状包材Fbの重ね合わせ部を長手方向(流れ方向)に縦シールを行う。
【0021】
前記筒状包材Fb内に内容物Mが投入された後、横シール装置25が筒状包材Fbを前後両側から挟み付けて、該筒状包材Fbの所定位置を幅方向に帯状に横シールを行うと共に、図示しないカッタ装置が該シール部分を切断して商品Bを作成する。
【0022】
横シール装置25:
図2および図3は、横シール装置25の概略平面図である。
図2及び図3に示すように、横シール装置25は前後一対、かつ、左右方向へ延びるシールジョー25a,25bを有している。シールジョー25a,25bは、移動機構40により、図2のように、シール時に互いに接近した近接状態と、図3の離反(開)状態との間を繰り返し移動される。
【0023】
各シールジョー25a,25bは、それぞれ、図示しないヒータを有している。シールジョー25a,25bは、前記近接状態に移動されることで、筒状包材Fbを挟み付け、前記ヒータが筒状包材Fbを互いに溶着する。
【0024】
移動機構40:
図2に示すように、横シール装置25は、前記移動機構40を搭載する架台30を有している。
前記架台30は、前後方向へ延びる左右一対のサイドフレーム31と、該サイドフレーム31を中央側および後ろ側で連結する連結部材32a,32bとを有している。架台30は、サイドフレーム31,31から左右の外方へ突設された4つのブラケット33を介して製袋包装機2のフレーム2aに支持されている。
【0025】
移動機構40は、一対の摺動ロッド41およびベース部材42a,43を備えている。摺動ロッド41は、各サイドフレーム31に沿って、前後方向に延設されている。摺動ロッド41は、サイドフレーム31に設けられた複数のガイド44を介して架台30に摺動自在に支持されている。摺動ロッド41の前後端には、それぞれベース部材42a,43が固定されており、摺動ロッド41およびベース部材42a,43により四角形の枠が形成されている。前側のベース部材42aには、前側シールジョー25aが後方に向って突設されている。
【0026】
一方、前記摺動ロッド41,41間には、摺動部材42bが架け渡されている。摺動部材42bは摺動ロッド41に嵌合するスライダ45を介して、摺動ロッド41に対してスライド自在に設けられている。摺動部材42bには後側シールジョー25bが前方に向って突設されている。
したがって、シールジョー25a,25bは、それぞれ、サイドフレーム31に対して前後方向に移動可能に設定されている。
なお、図を見易くするために、後側シールジョー25bおよびその駆動系の部材に網点を施している。
【0027】
リンク機構(往復スライダクランク機構):
シールジョー25a,25bは、以下に述べるリンク機構により、前後方向に往復移動される。
中央側の前記連結部材32aには、サーボモータ49bのギヤボックス49aが固定されている。該モータ49bの出力軸(図示せず)には、駆動軸46が連結されており、前記モータ49bの正逆回転により、前記駆動軸46が正逆方向に回転駆動される。
【0028】
前記駆動軸46には、クランク47の中央部が固定されている。クランク47の両端部には、それぞれ、連接棒48a,48bが回転可能に設けられている。前方の連接棒48bには摺動部材42bが点O1を中心に相対回転可能に接続されており、後方の連接棒48aには後側ベース部材43が相対回転可能に接続されている。
【0029】
駆動軸46の回転により、クランク47が駆動軸46の周りに矢印c方向に回転されると、図3に示すように、連接棒48aが後側ベース部材43を前方へ引き寄せ、摺動ロッド41および前側ベース部材42aを介して前側シールジョー25aが前方に移動される。同時に、連接棒48bが摺動部材42bを後方に引き寄せ、後側シールジョー25bが後方に移動される。その結果、シールジョー25a,25bは、図2に示す近接状態から、図3に示す離反状態となる。
【0030】
一方、クランク47が駆動軸46の周りに逆方向(図2の矢印d方向)に回転されると、図2に示すように、連接棒48aが後側ベース部材43を後方に押し出し、摺動ロッド41を介して前側シールジョー25aが後方に移動される。同時に、連接棒48bが摺動部材42bを前方に押し出し、後側シールジョー25bが前方に移動される。その結果、シールジョー25a,25bは、図3に示す離反状態から、図2に示す近接状態となる。
【0031】
したがって、クランク47、連接棒48bおよび摺動部材(スライダ)42bと、クランク47、連接棒48aおよび後側ベース部材(スライダ)43とで構成される2組のリンク機構は、2組の往復スライダクランク機構を構成している。このリンク機構は、モータ49bの駆動力をシールジョー25a,25bに伝達し、該シールジョー25a,25bによるシール圧を増大させるトグルジョイントを構成している。
【0032】
図4は、近接状態の各状態におけるシールジョー25a,25bの正面断面図と、当該状態における前記リンク機構とを対応させた模式図である。なお、図4および図5の模式図では、後ろ側のリンク機構を例示している。
【0033】
図4(a)に示すように、設計上想定された通常時には、近接状態(シール時)におけるシールジョー25a,25b間に所定の隙間Δが生じ、クランク47が所定のクランク角(リンクの回転角)θとなる。ここで、クランク角θとは、駆動軸46の回転中心(力点)O2と前記点O1とを結んだ直線(基準線)Cと、クランク47とがなす角度である。
図4(b)に示す厚いフィルムを用いた場合や、図4(c)のシールジョー25a,25b間にゴミ等が付着した場合、図4(d)の内容物Mを噛み込んだ場合には、近接状態時におけるクランク角θが、図4(a)の通常時よりも大きくなる。
【0034】
ここで、本製袋包装機2のリンク機構は、前述のように往復スライダクランク機構からなるトグルジョイントを構成している。そのため、クランク47が回転してクランク角θの値が0に近づくに従い、スライダに加わる力(シール圧)が急激に増大する。
したがって、図4(b)〜図4(d)のように、クランク角θが所定値よりも若干でも大きい場合には、シール圧が著しく小さくなる。
【0035】
第1期〜第3期:
そこで、本製袋包装機2では、図6に示すように、モータ49bのトルクの制御をシールジョー25a,25bが全開(図3の離反状態)から概ね閉じる(図2)までの第1期、前記概ね閉じた後のシール時である第2期(近接状態)、閉じたシールジョー25a,25bが全開(図3)に至る第3期に分けて制御している。かかる第2期において、モータ49bは回転トルクを基準に制御され、第1期および第3期では、モータ49bは速度を基準に制御される。
【0036】
図6(a)〜(c)は、それぞれ、シールジョー25a,25bの移動速度とモータの回転トルクを経時的に表した表である。
図6(a)に示す通常時(図4(a))には、前記第2期において、所定のトルクでモータ49bが回転され、所定のシール圧でシールが行われる。
一方、図6(b)に示すように、厚いフィルムを用いた場合(図4(b))やゴミなどがシールジョー25a,25b間に付着した場合(図4(c))には、シール圧を所定の値に保つために、モータ49bの回転トルクを前記所定のトルクよりも大きくしている。
【0037】
第2期におけるトルク制御:
前記第2期において、本製袋包装機2では以下のように、モータ49bのトルク制御を行い、シールジョー25a,25bによるシール圧が概ね一定となるように制御される。
前記トルク制御は、クランク角θを検出し、当該クランク角θに基づいてモータ49bの回転トルクを制御することにより行われる。
すなわち、まず、エンコーダ等の検出手段を用いて前記クランク角θを検出し、当該クランク角θに基づいてシール圧を算出する。つぎに、前記算出されたシール圧が所定のシール圧になるように、駆動軸46の軸トルクを算出する。当該駆動軸46の軸トルクに基づき、モータ49bの回転トルクを算出して、モータ49bのトルク制御を行う。
【0038】
駆動軸46の軸トルクの算出:
図5において、連接棒48b(48a)の角αと、クランク47に対する垂線と連接棒48bとがなす角βとは、それぞれ下記の(1),(2) 式で算出することができる。
sin α=r・sin θ/L ……(1)
β=π/2−θ−α ……(2)
α:前記基準線Cと連接棒48bとがなす角度
β:クランク47に対する垂線と連接棒48bとがなす角度
L:連接棒48bの長さ
r:クランク47の長さ
【0039】
この時、駆動軸46の軸トルクTに対するクランク接線方向の推力F、連接棒の軸方向の推力Pおよびシール圧Pxは、それぞれ以下の(3) 〜(5) で表される。
F=T/r ……(3)
P=F/cos β ……(4)
Px=P・cos α ……(5)
【0040】
上記式(1) から(5) までの関係式を用いることにより、所定のシール圧Pxを得るための駆動軸46の軸トルクTは、下記の(6) 式を用いて算出することができる。
T=Px・r・cos α/cos β ……(6)
したがって、上記(6) 式は、駆動軸46の軸トルクTはクランク角θの関数f(θ)であることが分かる。よって、クランク角θを検出することにより、所望するシールジョー25a,25bの加圧力Pxを得るための駆動軸46の軸トルクTを算出することができる。
【0041】
モータ49bのトルク制御:
当該算出された駆動軸46の軸トルクTに基づき、減速比などを加味した所定の演算を行うことにより、モータ49bの回転トルクが得られる。この回転トルクは、モータ49bの駆動電流と所定の相関関係(概ね比例)があるので、当該モータ49bへの駆動電流を制御することにより、所望する回転トルクが得られる。
したがって、第2期において、クランク角θを検出し、当該クランク角θに応じてモータ49bの回転トルクを制御することにより、シール圧を概ね一定に保つことができる。
【0042】
ところで、図4(d)に示すように、シールジョー25a,25b間に、たとえば、内容物Mなどの大きな異物の噛み込みが生じた場合には、クランク角θが大きくなる。かかる場合に、前述のトルク制御を行うとモータ49bに過大なトルクが発生する。そこで、本製袋包装機2では、クランク角θが所定の噛み込み閾値以上の場合には、シール動作を停止するように設定されている。
【0043】
機器構成:
図7に示すように、製袋包装機2は、該製袋包装機2を制御するコントロールユニット(制御手段)50を備えている。コントロールユニット50は、たとえば、マイコンからなり、コントロールユニット50には、タッチスクリーン56、プルダウンベルト機構23、縦シール装置24、横シール装置25およびエンコーダ28などが図示しないインターフェイスを介して接続されている。
【0044】
横シール装置25は、モータ49b、ロータリーエンコーダ29および該モータ49bの駆動を制御するためのモータドライバ26を備えている。モータドライバ26はロータリーエンコーダ29に接続されていると共に、コントロールユニット50に接続されている。ロータリーエンコーダ29は、モータ49bの回転軸の回転角の検出を行い、当該検出された角度を、モータドライバ26を介してコントロールユニット50に送る。一方、モータドライバ26は、モータ49bに供給する電流値を可変することで、モータ49bの回転トルクの大きさを制御することが可能である。
【0045】
エンコーダ28は、クランク角θの検出を行い、当該検出された角度をコントロールユニット50に送る。ここで、エンコーダ28は、シール時において、シールジョー25a,25b間の間隙に対する物理量を検出する検出手段の一例を構成している。
【0046】
コントロールユニット50は、CPU51およびメモリ(記憶手段)52を備えている。メモリ52には、演算式記憶部53、商品情報記憶部54および閾値記憶部55などが設けられている。
演算式記憶部53には、モータ49bの回転トルクを制御するための前記数式(1)〜(6)などが予め記憶されている。これらの数式は、前述したように、リンク機構の幾何学的な構造と、エンコーダ28による検出結果に基づいて、シールジョー25a,25bのシール圧が所定値となるように演算を行うための演算式である。
商品情報記憶部54には、商品Bの生産に必要な種々の値からなる商品情報が、商品毎に予め記憶されている。閾値記憶部55には、予め設定された前記噛み込み閾値が記憶されている。
【0047】
包装動作:
本システムが起動すると、CPU51が演算式記憶部53および閾値記憶部55から演算式および噛み込み閾値を読み出す。一方、作業員が所定の操作を行い生産する商品の選択等を行うと、CPU51が商品情報記憶部54から当該商品の生産に必要な商品情報を読み出し、商品Bの生産が開始される。
【0048】
図1に示す製袋包装機2の筒状包材Fb内に内容物Mが投入されと、プルダウンベルト機構23(図1)が前記袋長分、筒状包材Fbを下方に移動させる。
その後、シール工程が開始される。図2のシールジョー25a,25bが互いに閉方向に移動され、内容物Mが投入された筒状包材Fbがシールされると共に切り離され、商品1が生産される。同時に、筒状包材Fbの下端部には、新たな底部が形成される。
【0049】
一方、前記筒状包材Fbの下方への移動により、ロール支持部21から帯状包材Faが引き出され、セーラ22aを介してチューブ22bに巻き付けられて筒状に成形される。該筒状に成形された帯状包材Fa(筒状包材Fb)の重ね合わせ部は縦シール装置24によって長手方向にシールされ、新たな筒状包材Fbが形成される。
【0050】
第1期:
ここで、前記シール工程において、図3に示すシールジョー25a,25bの離反状態から、図2に示す近接状態までの第1期には、図6(a)に示すように、CPU51がモータ49bの速度制御を行う。すなわち、所定のトリガーでモータ49bに一定の電流を流して、モータ49bが所定の回転速度に至るまでモータ49bが加速される(0〜T1)。その後、モータ49bを定速運転させ、クランク47が所定の回転角まで回転(T1〜T2)すると、モータ49bに逆方向の回転トルクを発生させてモータ49bを停止(T2〜T3)させることで、概ね一定の閉じた位置で25a,25bを停止させる。
【0051】
第2期:
第2期では、モータ49bが一定の前期トルクで所定の微小時間(T3〜T4)若干回転し、シールジョー25a,25bで筒状包材Fbを挟む。その後、エンコーダ28からの検出値に基づき、前述したトルク制御が行なわれる(T4〜T5)。
【0052】
トルク制御;
すなわち、図7のCPU51がエンコーダ28からの検出値に基づき、図5のクランク角θを算出する。CPU51は、この算出した角度に基づき、演算式記憶部53から読み出した前述の数式(1)〜(6)を用いて、所定のシール圧を得るための駆動軸46の軸トルクTを算出する。つぎに、CPU51は、前記算出された軸トルクTに基づき、当該軸トルクTを発生させるためのモータ49bの回転トルクを減速比等から算出する。CPU51は、モータドライバ26に当該回転トルクに対応する電流値をモータ49bに供給させる。その結果、モータ49bが当該回転トルクで駆動されることにより、概ね一定のシール圧が得られる。
【0053】
たとえば、図4(a)に示す通常時においては、図4(e)に示す前記クランク角θが設計上想定された概ね一定の値となるため、図6(a)に示す前記トルク制御時(T4〜T5)の回転トルクは、概ね一定の後期トルクとなる。一方、図4(b)、(c)に示すように、たとえば、厚いフィルムを用いた場合や、ゴミ等が付着した場合には、図4(f)に示すクランク角θが大きくなるため、図6(b)に示すように、トルク制御時(T4〜T5)の回転トルクは前記通常時の後期トルクよりも大きな値となる。
【0054】
なお、CPU51は、閾値記憶部55から読み出した噛み込み閾値と、クランク角θとを比較し、クランク角θが当該閾値よりも大きな場合(閾値までモータ49bが回転していない場合)には、図4(d),(g)に示すように、大きな異物の噛み込みが生じたと判断して、モータ49bに過大なトルクが発生するのを防止するために、シール動作を停止させる。
【0055】
第3期:
その後、図2に示す近接状態から図3に示す離反状態に至るまでの第3期では、図6(a),(b)に示すように、CPU51が再びモータ49bに対して速度制御を行う。
すなわち、モータ49bを逆回転させて、該モータ49bが所定の回転速度に至るまでモータ49bが加速される(T5〜T6)。その後、モータ49bを定速運転させ、クランク47が所定の回転角まで回転(T6〜T7)すると、モータ49bに正方向の回転トルクを発生させてモータ49bを停止させる(T7〜T8)。
【実施例2】
【0056】
前述の実施例1では、エンコーダ28によりクランク角θを検出し、当該クランク角θに基づいてモータ49bの回転トルクを算出したが、本実施例2では、エンコーダ28を設けていない。すなわち、ロータリーエンコーダ29で検出されたモータ49bの実際の回転角θMからクランク角θを算出し、当該算出されたクランク角θから前述の演算式を用いて、モータ49bの回転トルクを算出する。
【0057】
このように、クランク角θを検出するエンコーダ28を必ずしも設ける必要はない。しかし、移動機構40の製造上の機械的な誤差等により、モータ49bを所定の回転角で停止させてもクランク角θが小さくまたは大きくなる場合がある。これに対し、前記実施例1では、モータの回転角θMに基づいてクランク角θを算出するのではなく、クランク角θ自体を検出して、モータ49bの回転トルクを制御するので、移動機構40に製造上の機械的な誤差が生じても一定のシール圧を得ることができる。
【0058】
すなわち、前記実施例1においては、前記連接棒48bやクランク47が短い場合には、前記通常時のクランク角θが小さな値となるので、前記モータ49bの後期トルクが小さな値となり、一方、前記連接棒48bやクランク47が長い場合には、前記通常時のクランク角θが大きな値となるので、前記モータ49bの後期トルクが大きな値となって、移動機構40に製造上の機械的誤差が生じても、概ね一定のシール圧が得られる。
【実施例3】
【0059】
図8は実施例3を示す。
図8(a)に示すように、本実施例では、実施例1で説明した演算式記憶部53の代わりに、制御値記憶部57が設けられている。
図8(b)に示すように、制御値記憶部57には、前記クランク角θと、モータ49bの回転トルクを制御するための制御値とが、予め互いに関連付けられてされている。前記制御値は、たとえば、モータ49bの回転トルクに対応する電流値からなる。
その他の構成は実施例1と同様であり、その説明および図示を省略する。
【0060】
前述の実施例1では、演算式を用いて、シール圧が所定値となるようにモータ49bの回転トルクを制御した。これに対し、本実施例3では、エンコーダ28がクランク角θを検出すると、CPU51が、当該クランク角θに関連付けられたモータ49bの制御値を制御値記憶部57から読み出す。CPU51は、モータドライバ26を介して、モータ49bに当該制御値に対応する電流を流すことで、トルク制御を行いシール圧を一定にする。
【0061】
なお、本実施例3において、制御値記憶部57に、モータの回転角θMと制御値とを、予め関連付けて記憶させてもよい。かかる場合には、ロータリーエンコーダ29が検出したモータの回転角θMに基づいて、トルク制御が行われる。
【0062】
なお、クランク角θやモータの回転角θMの検出を行う代わりに、シール時においてシールジョー25a,25b間の間隙に対応する物理量を検出する別の検出手段を設けてもよい。かかる検出手段としては、たとえば、前記シールジョー25a,25b間の距離を測定する測距センサを用いることができる。前記検出された間隙に対応する距離に基づき、モータ49bの回転トルクの制御を行う。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本製袋包装機は、いわゆるピロー型に袋詰めされる商品の製造に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1にかかる製袋包装機を示す概略側面図である。
【図2】同横シール装置のシール状態を示す概略平面図である。
【図3】同横シール装置の開放状態を示す概略平面図である。
【図4】近接状態におけるシールジョーの正面断面図と、当該状態におけるリンク機構の模式図である。
【図5】リンク機構の模式図である。
【図6】シールジョーの移動速度とモータの回転トルクの関係を示す図である。
【図7】同製袋包装機の概略構成図である。
【図8】本発明の実施例3にかかる製袋包装機を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0065】
2:製袋包装機
24:縦シール装置
25a,25b:シールジョー
26:モータドライバ
28,29:エンコーダ(検出手段)
42b:摺動部材(リンク機構の一部)
43:後側ベース部材(リンク機構の一部)
47:クランク(リンク機構の一部)
48b:連接棒(リンク機構の一部)
49b:モータ
53:演算式記憶部
55:閾値記憶部
57:制御値記憶部
B:商品
Fa:帯状の包材(フィルム)
Fb:筒状包材(フィルム)
M:内容物
θ:クランク角
Δ:間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの流れ方向に沿った端部同士を縦シール装置でシールしてフィルムを筒状に成形し、該筒状に成形したフィルム内に内容物が充填された後に前記筒状のフィルムを挟む一対のシールジョーを開閉することで前記フィルムの流れ方向に対して横方向に帯状にシールして包装された商品を生産する製袋包装機において、
前記シールジョーを開閉駆動するために正逆回転するモータと、
前記モータの駆動力を前記シールジョーに伝達し、前記シールジョーによるシール時にシール圧を増大させるリンク機構と、
前記モータの駆動を制御するためのモータドライバとを備え、
前記シール時における前記一対のシールジョーの間の間隙の大きさに応じて、当該シール時における前記モータの回転トルクを制御するようにした製袋包装機。
【請求項2】
請求項1において、前記シール時において前記間隙に対応する物理量を検出する検出手段を更に備え、前記検出された物理量に基づいて、前記シール時の前記モータの回転トルクを制御するようにした製袋包装機。
【請求項3】
請求項1において、前記シール時において前記モータが停止したときの前記モータの実際の回転角を検出する検出手段を更に備え、前記検出手段で検出されたモータの回転角に基づいて、前記シール時の前記モータの回転トルクを制御するようにした製袋包装機。
【請求項4】
請求項1において、前記シール時における前記リンク機構のリンクの回転角を検出する検出手段を更に備え、前記検出手段で検出されたリンクの回転角に基づいて、前記シール時の前記モータの回転トルクを制御するようにした製袋包装機。
【請求項5】
請求項2、3もしくは4において、前記リンク機構の幾何学的な構造と前記検出手段による検出結果に基づいて、前記シール圧が所定値となるように演算するための演算式を記憶する記憶部を更に備え、前記演算式に基づいて前記シール圧が所定値となるように前記モータの回転トルクを制御するようにした製袋包装機。
【請求項6】
請求項2、3もしくは4において、前記検出手段による検出結果に応じて前記シール時のモータの回転トルクを制御するための制御値を記憶する記憶部を更に備え、前記記憶部から前記制御値を読み出して前記シール時の前記モータの回転トルクを制御するようにした製袋包装機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項において、前記シールジョーが全開から概ね閉じるまでの第1期は前記モータが当該モータの回転速度を基準に制御され、一方、前記概ね閉じた後のシール時である第2期は前記モータが前記回転トルクを基準に制御され、前記閉じたシールジョーが全開に至る第3期は前記モータが前記回転速度を基準に制御される製袋包装機。
【請求項8】
請求項7において、前記シールジョーの閉時におけるモータの回転角の閾値を記憶する記憶部を更に備え、
前記第2期において、前記閾値まで前記モータが回転していない場合には前記シールジョーによるシール動作を停止し、
一方、前記第2期において、前記閾値以上に前記モータが回転している場合には、前記シールジョーに前記シール圧を付与するようにした製袋包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−193176(P2006−193176A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5880(P2005−5880)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】