説明

製造装置の運転状態監視装置、製造装置の運転状態監視方法、製造装置の運転状態監視プログラム、および、プログラム記録媒体

【課題】定期作業を行う時期を判定するための閾値を的確に設定する。
【解決手段】マクロ撮像装置2で撮像されたマクロ撮像画像が、定期作業としてのメンテナンス直後の製造装置6で加工処理された処理品のマクロ撮像画像である場合には、閾値設定部13によって、データベース3のメンテ直後画像登録部9に登録されている「メンテナンス直後の過去事例」から取得マクロ撮像画像に最も類似した「過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」を検索し、この検索された「過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」に添付された類似度を、メンテナンス時期判定用の閾値として閾値格納部14に格納する。こうして、製造装置6に対してメンテナンスを行う毎にメンテナンス時期判定用の閾値を設定更新することにより、画像の傾向が逐次変化するようなマクロ撮像画像を用いる場合であっても、メンテナンス時期判定用の閾値を的確に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製造装置の運転状態の変化を監視する製造装置の運転状態監視装置、製造装置の運転状態監視方法、製造装置の運転状態監視プログラム、および、プログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の製造工程においては、洗浄,成膜,レジスト塗布,露光,現像,エッチング等の工程を繰り返して行うことによって、所望の半導体装置を形成する。
【0003】
上記製造工程において、基板面内位置に処理ムラや異物付着等の異常が生ずると、パターンの線幅不良やピンホール等の不良が発生する原因となる。そのため、上記製造工程では、基板上における上記異常の有無を検査することが一般的となっている。上記検査のうち、一般に基板面内の処理ムラなど比較的広い面積に発生する異常を検査対象とする検査は、マクロ検査と呼ばれる。また、半導体基板上のパターン異常等の微小な対象を検査するための検査は、ミクロ検査と呼ばれる。
【0004】
上記ミクロ検査では、正常な回路パターンの画像と検査対象の回路パターンの画像とを比較することによって、欠陥を検出することができる。
【0005】
例えば、特開2003‐21605号公報(特許文献1)に開示された「パターン検査方法及び装置」では、製造品である基板に光あるいは荷電粒子を照射してディジタル画像を得、得られたディジタル画像を同一のパターンであることが期待できるディジタル画像と複数の検査方法で比較することによって、回路パターンに異常がないかを検査するようにしている。このパターン検査方法を用いることによって、同一基板上に複数の同一パターンがある製造品のパターン異常を検査することが可能になる。
【0006】
また、検査対象である製造品の画像を、良品と判定される製造品の画像からなる参照画像と比較することにより、検査対象である製造品の欠陥を検出する検査方法がある。このような検査方法として、特願2004‐38885号公報(特許文献2)に開示された「画像特徴学習型欠陥検出方法、欠陥検出装置及び欠陥検出プログラム」がある。この特許文献2では、検査対象と参照画像との輝度差を用いて、製造品の異常を検査するようにしている。この欠陥検出方法を用いることによって、正常パターンと異なるパターンとなっているパターン異常、あるいは、良品と判定される基板との輝度差が大きな異常基板を、検出することが可能になる。
【0007】
これに対して、上記マクロ検査では、良品と判定される製造品の画像からなる参照画像を用いることなく、1枚の基板画像からコントラストの異なる領域や特定のテクスチャを持つ領域を異常として検出することが多い。なぜなら、マクロ検査画像は、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉によって画像の傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホール等によって画像の傾向が逐次変化するため、正常な製造装置で処理された正常な基板であっても基板毎にマクロ検査画像の傾向が異なる。したがって、上記ミクロ検査と同様の方法による異常検出が困難なためである。
【0008】
ところで、上記パターン異常や製造品の異常が発生した場合には、製造装置あるいは処理炉のオーバーホールが必要となる。ところが、オーバーホールには多大な労力を要すると共に、装置の稼働率を低下させることから、頻繁にオーバーホールを行うことは現実的でない。そのため、装置のオーバーホールを行う回数は、必要最小限にする必要がある。
【0009】
しかしながら、上述したように、マクロ検査では画像の傾向が逐次変化しているため、予め定めた基準で欠陥を検出すると、過検出および未検出が多発するため、どのタイミングで装置のオーバーホールを行うかを適切に判断することは、困難である。
【0010】
そこで、例えば、得られたマクロ検査画像を各製造装置毎に且つ製造日時順に並べ、画像の変化している様子を定量的に表す(例えば、画像の類似度として算出する)ことによって、製造装置の運転状態を監視する方法が考えられる。
【0011】
ところが、その場合には、定量的に表された運転状態がどの程度の値になると、製造装置の状態が悪化してメンテナンスが必要になったと判断したらよいか、の閾値(判断基準)を定めることは、容易ではないという問題がある。その理由は、装置個々に、運転状態の変化の仕方が異なり、メンテナンスを実施した直後の装置の状態もメンテナンスの仕方や程度によって同一とはならないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003‐21605号公報
【特許文献2】特願2004‐38885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明の課題は、製造装置の運転状態を監視して、メンテナンス等の定期作業を行う時期を判定するための閾値を的確に設定することが可能な製造装置の運転状態監視装置、製造装置の運転状態監視方法、製造装置の運転状態監視プログラム、および、プログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、第1の発明の製造装置の運転状態監視装置は、
製造装置で加工処理が行われた処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量を取得する特徴量取得部と、
上記製造装置に対する過去の定期作業毎に、夫々の上記定期作業の直後に上記特徴量取得部によって取得された上記特徴量に、この特徴量と、当該定期作業の次の定期作業の直前に上記特徴量取得部によって取得された上記特徴量との類似性を表す類似情報を添付したものが、定期作業直後の特徴量の過去事例として登録されている過去事例登録部と、
上記特徴量取得部によって取得された上記特徴量である取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、上記過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している上記特徴量を含む上記過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている上記類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定する閾値設定部と、
上記閾値設定部で設定された定期作業時期判定用の閾値を格納する閾値格納部と、
上記特徴量取得部によって順次取得される上記特徴量と基準特徴量との類似性を表す類似情報を監視することによって上記製造装置の運転状態を監視し、上記類似情報と上記定期作業時期判定用の閾値とに基づいて、上記製造装置に対する定期作業時期を判定する定期作業判定部と
を備えたことを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、上記特徴量取得部による取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、上記過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している上記特徴量を含む上記過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定するようにしている。したがって、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に、上記過去事例に基づいて定期作業時期判定用の閾値を設定更新することができる。
【0016】
その結果、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホールやメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような上記特徴量を用いる場合であっても、定期作業時期判定用の閾値を的確に設定することができる。
【0017】
すなわち、この発明によれば、的確に設定された上記定期作業時期判定用の閾値を用いることによって、上記製造装置に対する定期作業の時期を正しく判定することができるのである。
【0018】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記処理品が加工処理された際の上記製造装置からのプロセスデータが登録されるプロセスデータ登録部と、
上記プロセスデータ登録部に登録されている上記プロセスデータに基づいて、上記取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量であるか否かを判別する判別部と、
上記判別部で上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された上記取得特徴量を上記基準特徴量として設定する基準特徴量設定部と、
上記基準特徴量設定部で設定された基準特徴量を格納する基準特徴量格納部と
を備えている。
【0019】
この実施の形態によれば、上記判別部によって上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された取得特徴量を、上記基準特徴量設定部によって上記基準特徴量として設定するようにしている。したがって、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に、上記定期作業時期判定用の閾値に加えて、上記定期作業時期を判定する場合に用いる類似情報を得るための上記基準特徴量をも設定更新することができる。
【0020】
すなわち、この発明によれば、的確に設定された上記定期作業時期判定用の閾値と上記基準特徴量とを用いることによって、上記製造装置に対する定期作業の時期をさらに正しく判定することができる。
【0021】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記判別部で上記定期作業の直後に取得された特徴量ではないと判別された上記取得特徴量と、上記基準特徴量格納部に格納された上記基準特徴量との類似性を表す類似情報を算出する類似情報算出部
を備え、
上記定期作業判定部は、上記類似情報算出部で算出された類似情報が上記定期作業時期判定用の閾値に至った場合に、上記製造装置に対する定期作業の時期が到来したと判定するようになっている。
【0022】
この実施の形態によれば、上記定期作業判定部は、上記類似情報算出部で算出された類似情報が上記定期作業時期判定用の閾値に至った場合に、上記製造装置に対する定期作業の時期が到来したと判定するので、上記製造装置に対する定期作業の時期をさらに正しく判定することができる。
【0023】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記判別部で上記取得特徴量が上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された場合に、当該定期作業の一つ前の定期作業の直後に取得された特徴量に、上記類似情報算出部で算出された当該定期作業の直前に取得された特徴量に関する類似情報を添付したものを、上記過去事例として設定し、この設定された過去事例を上記過去事例登録部に追加登録する過去事例設定部と
を備えている。
【0024】
この実施の形態によれば、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に、上記過去事例登録部に上記定期作業直後の特徴量の過去事例を追加登録するので、上記過去事例登録部の登録内容を常に最新の状態に維持することができる。したがって、上記定期作業時期判定用の閾値をより的確に設定することができる。
【0025】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記定期作業判定部は、上記定期作業時期判定用の閾値を管理限界値とするシューハート管理図を用いて、上記製造装置の運転状態の監視および上記製造装置に対する定期作業時期の判定を行う。
【0026】
この実施の形態によれば、シューハート管理図を用いて、上記製造装置の運転状態の監視および上記製造装置に対する定期作業時期の判定を行うので、統計的に正確な定期作業時期の判定が可能になり、定期作業時期の過検出や未検出を抑制することができる。
【0027】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記製造装置に対する定期作業は、上記製造装置に対するメンテナンスである。
【0028】
この実施の形態によれば、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような上記特徴量を用いる場合であっても、上記製造装置に対するメンテナンスの時期を正しく判定することができる。したがって、多大な労力を要すると共に、装置の稼働率を低下させるメンテナンスの回数を、必要最小限にすることができる。
【0029】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量として、上記処理品の外観を撮像したマクロ撮像画像を用いる。
【0030】
この実施の形態によれば、上記処理品の特徴量として、上記処理品の外観のマクロ撮像画像を用いるので、簡単な方法によって上記製造装置の運転状態をより反映している特徴量を得ることができる。
【0031】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視装置では、
上記取得特徴量と上記基準特徴量との類似性を表す類似情報として類似度を用いる。
【0032】
この実施の形態によれば、上記取得特徴量と上記基準特徴量との類似性を具体的に且つ直感的に表すことができる。
【0033】
また、第2の発明の製造装置の運転状態監視方法は、
製造装置に対する過去の定期作業毎に、夫々の上記定期作業の直後に上記製造装置で加工処理が行われた処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量に、この特徴量と、当該定期作業の次の定期作業の直前に加工処理が行われた処理品の上記特徴量との類似性を表す類似情報を添付したものを、定期作業直後の特徴量の過去事例として過去事例登録部に登録しておき、
特徴量取得部によって取得された上記特徴量である取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、閾値設定部によって、上記過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している上記特徴量を含む上記過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている上記類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定し、
定期作業判定部によって、上記特徴量取得部で順次取得される上記特徴量と基準特徴量との類似性を表す類似情報を監視することにより上記製造装置の運転状態を監視し、上記類似情報と上記定期作業時期判定用の閾値とに基づいて、上記製造装置に対する定期作業時期を判定する
ことを特徴としている。
【0034】
上記構成によれば、上記特徴量取得部による取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、上記過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している上記特徴量を含む上記過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定するようにしている。したがって、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に、上記過去事例に基づいて定期作業時期判定用の閾値を設定更新することができる。
【0035】
その結果、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホールやメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような上記特徴量を用いる場合であっても、定期作業時期判定用の閾値を的確に設定することができる。
【0036】
すなわち、この発明によれば、的確に設定された上記定期作業時期判定用の閾値を用いることによって、上記製造装置に対する定期作業の時期を正しく判定することができるのである。
【0037】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視方法では、
類似情報算出部によって、判別部で上記定期作業の直後に取得された特徴量ではないと判別された上記取得特徴量と上記基準特徴量との類似性を表す類似情報を算出し、
過去事例設定部によって、上記判別部で上記取得特徴量が上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された場合に、当該定期作業の一つ前の定期作業の直後に取得された特徴量に、上記類似情報算出部で算出された当該定期作業の直前に取得された特徴量に関する類似情報を添付したものを、上記過去事例として設定して上記過去事例登録部に追加登録する。
【0038】
この実施の形態によれば、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に、上記過去事例登録部に上記定期作業直後の特徴量の過去事例を追加登録するので、上記過去事例登録部の登録内容を常に最新の状態に維持することができる。したがって、上記定期作業時期判定用の閾値をより的確に設定することができる。
【0039】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視方法では、
上記製造装置の運転状態の監視および上記製造装置に対する定期作業時期の判定は、上記定期作業時期判定用の閾値を管理限界値とするシューハート管理図を用いて行う。
【0040】
この実施の形態によれば、シューハート管理図を用いて、上記製造装置の運転状態の監視および上記製造装置に対する定期作業時期の判定を行うので、統計的に正確な定期作業時期の判定が可能になり、定期作業時期の過検出や未検出を抑制することができる。
【0041】
また、1実施の形態の製造装置の運転状態監視方法では、
上記製造装置に対する定期作業は、上記製造装置に対するメンテナンスであり、
上記処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量として、上記処理品の外観を撮像したマクロ撮像画像を用いる。
【0042】
この実施の形態によれば、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような上記特徴量を用いる場合であっても、上記製造装置に対するメンテナンスの時期を正しく判定することができる。したがって、多大な労力を要すると共に、装置の稼働率を低下させるメンテナンスの回数を、必要最小限にすることができる。
【0043】
さらに、上記処理品の特徴量として、上記処理品の外観のマクロ撮像画像を用いているので、簡単な方法によって上記製造装置の運転状態をより反映している特徴量を得ることができる。
【0044】
また、第3の発明の製造装置の運転状態監視プログラムは、
コンピュータを
上記第1の発明の製造装置の運転状態監視装置における過去事例登録部,閾値設定部,閾値格納部および定期作業判定部
として機能させることを特徴としている。
【0045】
上記構成によれば、上記第1の発明の製造装置の運転状態監視装置の場合と同様に、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホールやメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような上記特徴量を用いる場合であっても、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に定期作業時期判定用の閾値を設定更新することによって、定期作業時期判定用の閾値を的確に設定することができる。したがって、上記製造装置に対する定期作業の時期を正しく判定することができる。
【0046】
また、第4の発明のコンピュータ読み出し可能なプログラム記録媒体は、
上記第3の発明の製造装置の運転状態監視プログラムが記録されたことを特徴としている。
【0047】
上記構成によれば、本プログラム記録媒体をコンピュータで読み出して実行することによって、上記第1の発明の製造装置の運転状態監視装置の場合と同様に、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホールやメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような上記特徴量を用いる場合であっても、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に定期作業時期判定用の閾値を設定更新することによって、定期作業時期判定用の閾値を的確に設定することができる。したがって、上記製造装置に対する定期作業の時期を正しく判定することができる。
【発明の効果】
【0048】
以上より明らかなように、第1の発明から第4の発明によれば、特徴量取得部による取得特徴量が、製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している特徴量を含む過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定するので、上記製造装置に対して定期作業を行う毎に、定期作業時期判定用の閾値を設定更新することができる。
【0049】
したがって、上記特徴量として、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等により傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホールやメンテナンス等によっても傾向が逐次変化するような特徴量を用いる場合であっても、上記定期作業時期判定用の閾値を的確に設定することができる。
【0050】
すなわち、第1の発明から第4の発明によれば、的確に設定された上記定期作業時期判定用の閾値を用いることによって、上記製造装置に対する定期作業の時期を正しく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の製造装置の運転状態監視装置における機能ブロック図である。
【図2】図1に示す製造装置の運転状態監視装置によって行われる運転状態監視処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0053】
図1は、本実施の形態の製造装置の運転状態監視装置(以下、単に運転状態監視装置と言う)における機能的構成を示す機能ブロック図である。
【0054】
図1に示すように、本運転状態監視装置1は、半導体基板等の素材に何らかの加工処理を行う製造装置6の運転状態を監視する。そして、製造装置6がメンテナンス時期に至ったことを検知して告知するようにしている。
【0055】
本運転状態監視装置1は、上記製造装置6によって加工処理された処理品の外観を撮像するマクロ撮像装置2と、製造装置6からのプロセスデータとマクロ撮像装置2からの撮像画像とを記録しておくためのデータベース3と、上記プロセスデータおよび上記撮像画像等に基づいて製造装置6のメンテナンス時期を判定する判定装置4と、製造装置6の管理者にメンテナンス時期に至ったことを知らせるための表示部5と、を含んで構成されている。すなわち、本実施の形態では、製造装置6に対する上記定期作業を上記メンテナンスとし、上記運転状態を反映している「処理品の特徴量」を上記マクロ撮像画像としている。
【0056】
上記製造装置6とデータベース3、マクロ撮像装置2とデータベース3、判定装置4とデータベース3は、夫々LAN(Local Area Network)等によって接続されており、データの送受が可能になっている。尚、通信手段は上記LANに限定されるものではなく、データの送受が可能であればよい。
【0057】
上記製造装置6は、自身の装置番号,加工処理日時,処理品のシリアルID,加工処理を行う際の実施条件およびメンテナンス実施後処理回数等の情報を、プロセスデータとしてデータベース3に送出する。こうして、上記プロセスデータはデータベース3のプロセスデータ登録部7に登録される。尚、上記メンテナンス実施後処理回数は、製造装置6のメンテナンスが実施されてから何回目の加工処理であるかを表す情報である。
【0058】
上記マクロ撮像装置2は、全処理品に対して外観の撮像処理を行い、そのマクロ撮像画像をデータベース3に送出する。こうして、上記マクロ撮像画像は、処理品のシリアルIDと共にデータベース3の撮像画像登録部8に登録される。また、登録されたマクロ撮像画像は、上記シリアルIDを指定することによって検索することができる。このように、マクロ撮像装置2によるマクロ撮像画像を用いることによって、半導体検査として従来より行われているミクロ検査では検出が困難である異常、すなわち、大域的で低周波成分を有し、且つ継続して発生する異常を、補足することができるのである。
【0059】
尚、上記データベース3には、上述したプロセスデータ登録部7および撮像画像登録部8の他に、後に詳述するメンテ直後画像登録部9が設けられている。
【0060】
上記判定装置4は、製造装置6に対する直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像を基準画像として格納しておく基準画像格納部10と、データベース3の撮像画像登録部8に登録されている上記マクロ撮像画像と基準画像格納部10に格納されている上記基準画像との類似度を算出する類似度算出部11と、データベース3のプロセスデータ登録部7に登録されている上記プロセスデータに基づいて上記基準画像を設定する基準画像設定部12とを含んでいる。
【0061】
尚、上記基準画像設定部12は、上記プロセスデータに基づいて、撮像画像登録部8に最後に登録された上記マクロ撮像画像がメンテナンス直後のマクロ撮像画像であるか否かを判定し、メンテナンス直後のマクロ撮像画像である場合には、当該マクロ撮像画像を上記基準画像として設定する。そして、この設定された基準画像によって、基準画像格納部10の格納内容を更新する。さらに、基準画像設定部12は、メンテナンス直後のマクロ撮像画像と判定されたマクロ撮像画像を、データベース3のメンテ直後画像登録部9に過去事例として登録する。
【0062】
さらに、上記判定装置4は、データベース3のメンテ直後画像登録部9に登録されているメンテナンス直後のマクロ撮像画像の過去事例に基づいてメンテナンス時期判定用の閾値を設定する閾値設定部13と、閾値設定部13で設定された上記閾値を格納する閾値格納部14と、類似度算出部11で算出された類似度に基づいて製造装置6のメンテナンス時期を判定して表示部5に表示するメンテナンス判定部15と、類似度算出部11,基準画像設定部12,閾値設定部13およびメンテナンス判定部15の動作を制御する制御部16とを含んでいる。
【0063】
すなわち、本実施の形態においては、特許請求の範囲における上記特徴量取得部をマクロ撮像装置2で構成し、上記過去事例登録部をメンテ直後画像登録部9で構成し、上記基準特徴量設定部を基準画像設定部12で構成し、上記基準特徴量格納部を基準画像格納部10で構成し、上記定期作業判定部をメンテナンス判定部15で構成しているのである。
【0064】
このように、本運転状態監視装置1は、マクロ撮像装置2によって、製造装置6で加工処理された処理品のマクロ撮像を行う。そして、得られたマクロ撮像画像と、製造装置6に対する直近のメンテナンス直後の処理品のマクロ撮像画像(基準画像)との類似度を、類似度算出部11によって算出する。さらに、メンテナンス判定部15によって、上記算出された類似度が、閾値格納部14に格納された閾値を超えた(下回った)場合に、処理品の品質が一定基準を下回ったものとして、製造装置6がメンテナンス時期に至ったと判定するようにしている。
【0065】
その場合、上記閾値格納部14には、後に詳述するように、直近のメンテナンス直後の処理品のマクロ撮像画像である上記基準画像に最も類似した「メンテナンス直後のマクロ撮像画像の過去事例」に添付された類似度が、メンテナンス判定用の閾値として格納されている。したがって、画像の傾向が逐次変化するマクロ撮像画像における直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像に最も類似した過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像に基づいて、製造装置6のメンテナンス時期判定用の閾値を設定することができる。そのために、運転状態の変化の仕方が個々の製造装置6毎に異なり、メンテナンスを実施した直後の製造装置6の状態もメンテナンスの仕方や程度によって同一とはならない場合であっても、的確にメンテナンス判定用の閾値を設定することができるのである。
【0066】
ところで、上記機能的構成を有するデータベース3および判定装置4の具体的ハードウェア構成は、後述する各種の処理を実行するプログラムを含む各種プログラムを記憶するプログラムメモリ、各種情報を記憶するデータメモリ、インターネットおよび上記LAN等の通信ネットワークと接続する通信I/F、入力装置、出力装置、表示装置、外部記録媒体がセットされてこの外部記録媒体をアクセスする外部補助記憶装置、上記プログラムメモリ,データメモリ,通信I/F,入力装置,出力装置,表示装置および外部補助記憶装置等を制御して、興味空間の算出や提示情報の決定等を実行するCPU(中央演算処理装置)等で成る。
【0067】
すなわち、上記判定装置4における類似度算出部11,基準画像設定部12,閾値設定部13,メンテナンス判定部15および制御部16は上記CPUで実現され、基準画像格納部10および閾値格納部14とデータベース3とは上記データメモリや外部補助記憶装置で構成され、表示部5は上記出力装置や表示装置で構成されるのである。また、上記CPUは、上述した類似度算出部11,基準画像設定部12,閾値設定部13,メンテナンス判定部15および制御部16による本実施の形態に係る処理動作の他に、演算・判断処理,計時処理および入出力処理等の各種の処理動作をも行うようになっている。
【0068】
また、本実施の形態における上記類似度算出部11,基準画像設定部12,閾値設定部13,メンテナンス判定部15および制御部16の機能は、プログラム記録媒体に記録された製造装置の運転状態監視プログラム(以下、単に運転状態監視プログラムと言う)によって実現される。本実施の形態における上記プログラム記録媒体は、ROM(リード・オンリ・メモリ)でなるプログラムメディアである。または、上記外部補助記憶装置に装着されて読み出されるプログラムメディアであってもよい。尚、何れの場合においても、プログラムメディアから運転状態監視プログラムを読み出すプログラム読み出し手段は、上記プログラムメディアに直接アクセスして読み出す構成を有していてもよいし、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)に設けられたプログラム記憶エリア(図示せず)にダウンロードし、上記プログラム記憶エリアにアクセスして読み出す構成を有していてもよい。尚、上記プログラムメディアから上記RAMのプログラム記憶エリアにダウンロードするためのダウンロードプログラムは、予め本体装置に格納されているものとする。
【0069】
ここで、上記プログラムメディアとは、本体側と分離可能に構成され、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピーディスク,ハードディスク等の磁気ディスクやCD(コンパクトディスク)‐ROM,MO(光磁気)ディスク,MD(ミニディスク),DVD(ディジタル多用途ディスク)等の光ディスクのディスク系、IC(集積回路)カードや光カード等のカード系、マスクROM,EPROM(紫外線消去型ROM),EEPROM(電気的消去型ROM),フラッシュROM等の半導体メモリ系を含めた、固定的にプログラムを坦持する媒体である。
【0070】
また、本実施の形態における判定装置4は、インターネット等の通信ネットワークと通信I/Fを介して接続可能な構成を有している場合には、上記プログラムメディアは、通信ネットワークからのダウンロード等によって流動的にプログラムを坦持する媒体であっても差し支えない。尚、その場合における上記通信ネットワークからダウンロードするためのダウンロードプログラムは、予め本体装置に格納されているものとする。あるいは、別の記録媒体からインストールされるものとする。
【0071】
尚、上記記録媒体に記録されるものはプログラムのみに限定されるものではなく、データも記録することが可能である。
【0072】
以下、上記プログラム記録媒体に記録されている運転状態監視プログラムに従って、上記CPUで実現される類似度算出部11,基準画像設定部12,閾値設定部13,メンテナンス判定部15および制御部16と、上記データメモリや外部補助記憶装置で構成される基準画像格納部10,閾値格納部14およびデータベース3と、上記出力装置や表示装置で構成される表示部5とによって行われる運転状態監視処理動作について、詳細に説明する。
【0073】
尚、以下の説明においては、上記製造装置6は半導体製造装置であり、上記処理品は半導体基板であるとして、上記半導体製造装置のメンテナンス時期を判定する場合を例に挙げる。
【0074】
本実施の形態における運転状態監視装置1は、上記製造装置6による1回の加工処理毎に運転状態監視処理動作を繰り返し行う。その場合における1処理品に対する運転状態監視処理動作の内容は、図2に示すフローチャートの通りである。
【0075】
ステップS1で、上記制御部16によって、本運転状態監視装置1の運用開始時であるか否かが判別される。その結果、運用開始時であればステップS2に進み、そうでなければステップS3に進む。ステップS2で、上記制御部16によって、上記メンテナンス時期判定用の閾値の初期値が閾値格納部14に格納され、上記基準画像の初期画像が基準画像格納部10に格納される。ここで、上記初期値および上記初期画像として何を用いるかは特に限定するものではない。例えば、上記初期値としては、過去の経験から上記閾値としてよく取り得る値を用いる。また、上記初期画像としては、事前に用意した加工処理状態に不具合の無い半導体基板のマクロ撮像画像を用いる。何れにしても、上記初期値および上記初期画像は、本運転状態監視装置1が稼動して運転状態監視処理動作が実行されることによって、以下に説明するように適宜更新されて、最適な値や画像となるのである。
【0076】
ステップS3で、監視対象である上記製造装置6からデータベース3に対して1つの処理品(半導体基板)に関する上記プロセスデータが送出されて、データベース3のプロセスデータ登録部7に登録される。ステップS4で、マクロ撮像装置2によって、製造装置6によって加工処理された処理品の外観の撮像処理が行われ、得られたマクロ撮像画像がデータベース3に送出される。そして、当該マクロ撮像画像がデータベース3の撮像画像登録部8に登録される。こうして、1つの処理品に関する上記プロセスデータおよびマクロ撮像画像が取得される。
【0077】
ステップS5で、上記類似度算出部11によって、撮像画像登録部8に最後に登録されたマクロ撮像画像(以下、取得マクロ撮像画像と言う場合もある)と基準画像格納部10に格納されている基準画像とが読み出され、上記取得マクロ撮像画像と上記基準画像との類似度が算出される。ここで、上記2つの画像の類似度算出方法は特に限定するものではなく、従来から行われている例えば「画素値の平均を用いる方法」,「画素値のヒストグラムを用いる方法」,「相関係数を用いる方法」,「解像度を用いる方法」等の類似度算出方法を用いればよい。
【0078】
ステップS6で、上記基準画像設定部12によって、上記取得されたプロセスデータの上記メンテナンス実施後処理回数に基づいて、上記取得されたプロセスデータに関する処理品はメンテナンス直後の製造装置6によって加工処理されたものであるか否かが判別される。その結果、メンテナンス直後に加工処理されたものである場合にはステップS11に進み、そうでなければステップS7に進む。
【0079】
ステップS7で、上記メンテナンス判定部15によって、上記算出された取得マクロ撮像画像と上記基準画像との類似度が、以前に算出された類似度と共に製造装置6による処理日時順に配列されて、作業メモリ15aに格納される。そして、上記処理日時順に配列された類似度が表示部5に表示(プロット)される。ステップS8で、さらに、メンテナンス判定部15によって、最後に算出された取得マクロ撮像画像と上記基準画像との類似度が、閾値格納部14に格納されているメンテナンス時期判定用の閾値を下回るか否かが判別される。その結果、下回る場合にはステップS9に進み、そうでなければステップS10に進む。
【0080】
ステップS9で、さらに、メンテナンス判定部15によって、上記類似度が上記閾値を下回ったので製造装置6のメンテナンス時期に至ったと判断されて、表示部5のアラームランプを点灯するあるいは警報を発する等によって、製造装置6の管理者に製造装置6のメンテナンスを促す。こうして、1処理品に対する処理を終える。
【0081】
ステップS10で、次の処理品があるか否かが判別され、ある場合にはステップS3にリターンする。そして、上記ステップS6において、メンテナンス直後に処理されたものであると判別されるとステップS11に進む。一方、次の処理品がない場合には運転状態監視処理動作を終了する。
【0082】
ステップS11で、上記基準画像設定部12によって、上記ステップS4において登録されたマクロ撮像画像、つまり製造装置6に対して直近のメンテナンスが行われた直後に加工処理された処理品のマクロ撮像画像が、データベース3の撮像画像登録部8から読み出される。そして、この読み出された直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像(取得マクロ撮像画像)が上記基準画像として設定され、この設定された基準画像によって基準画像格納部10の格納内容が更新される。
【0083】
ステップS12で、上記閾値設定部13によって、データベース3のメンテ直後画像登録部9に登録されている「メンテナンス直後の過去事例」における「過去のメンテナンス直後に撮像されたマクロ撮像画像の総て」と、上記ステップS11において基準画像格納部10に格納された基準画像、つまり直近のメンテナンスが行われた直後のマクロ撮像画像との類似度が算出され、最も類似度の高い過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像が検索される。
【0084】
ここで、上記「メンテナンス直後の過去事例」とは、製造装置6に対する「過去のメンテナンス直後に撮像されたマクロ撮像画像」と「当該メンテナンスの直後のマクロ撮像画像と当該メンテナンスの次のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像との類似度」との対で成る複数の過去のメンテナンスに関する画像情報である。
【0085】
ステップS13で、さらに、上記閾値設定部13によって、上記検索された「過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」に添付されている「当該メンテナンスの直後のマクロ撮像画像と当該メンテナンスの次のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像との類似度」が、製造装置6に対する次のメンテナンス時期を判定するための閾値として設定される。そして、この新たに設定された閾値によって、閾値格納部14の格納内容が更新される。
【0086】
ステップS14で、上記基準画像設定部12によって、データベース3の撮像画像登録部8に登録されている直近のメンテナンスの一つ前のメンテナンスの直後のマクロ撮像画像が読み出される。さらに、上記ステップS7においてメンテナンス判定部15の作業メモリ15aに処理日時順に配列されて格納された類似度のうちから、最後に格納された類似度が読み出される。そして、上記読み出された「一つ前のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」が、上記読み出された「直近のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像に関する類似度」が添付されて、データベース3のメンテ直後画像登録部9に「メンテナンス直後の過去事例」の1つとして登録される。
【0087】
尚、上記ステップS14においては、上述したように、「一つ前のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」に「直近のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像に関する類似度」を添付して、1つの完成された「メンテナンス直後の過去事例」を作成するようにしている。しかしながら、必ずしもこのステップで完成された「メンテナンス直後の過去事例」を作成する必要はなく、添付されるべき類似度が空欄の状態で「直近のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像」のみをメンテ直後画像登録部9に登録すると共に、「直近のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像に関する類似度」を、既にメンテ直後画像登録部9に登録されている「一つ前のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」における空欄となっている類似度の欄に書き込むようにしても構わない。そうすることによって、撮像画像登録部8に登録しておくマクロ撮像画像の数を少なくすることができる。
【0088】
ここで、上記「添付」とは、「互いに関連付けられて異なる領域に格納される」ことも含む概念である。
【0089】
そうした後、上記ステップS10において次の処理品があるか否かが判別され、ある場合にはステップS3にリターンする一方、次の処理品がない場合には運転状態監視処理動作を終了する。
【0090】
こうして、次の上記素材(半導体基板)に対する加工処理まで待機状態となる。そして、次の上記素材に対する加工処理が開始されると、運転状態監視処理動作がスタートし、ステップS2がスキップされる。
【0091】
すなわち、本実施の形態においては、特許請求の範囲における上記判別部を、上記運転状態監視処理のフローチャートにおける上記ステップS6で構成し、上記過去事例設定部は上記ステップS14で構成しているのである。
【0092】
以上のごとく、本実施の形態における運転状態監視装置1においては、上記基準画像設定部12によって、製造装置6に対する直近のメンテナンスが行われた直後の処理品のマクロ撮像画像を基準画像として基準画像格納部10に格納しておく。そして、製造装置6によって加工処理が行われる毎に、マクロ撮像装置2によって処理品のマクロ撮像画像が撮像され、類似度算出部11によって、上記撮像されたマクロ撮像画像と上記基準画像との類似度が算出される。
【0093】
この状態において、上記撮像されたマクロ撮像画像がメンテナンス直後の製造装置6で加工処理された処理品のマクロ撮像画像である場合には、閾値設定部13によって、データベース3のメンテ直後画像登録部9に登録されている「メンテナンス直後の過去事例」の中から直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像に最も類似している過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像を検索し、この検索された「過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」に添付されている「当該メンテナンスの直後のマクロ撮像画像と当該メンテナンスの次のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像との類似度」を、メンテナンス時期判定用の閾値として閾値格納部14に格納する。
【0094】
そして、上記類似度算出部11によって上記撮像されたマクロ撮像画像と上記基準画像との類似度を算出する毎に、メンテナンス判定部15によって、上記算出された類似度と閾値格納部14に格納されているメンテナンス時期判定用の閾値とが比較され、上記類似度が上記閾値を下回った場合に製造装置6のメンテナンス時期に至ったと判断するようにしている。
【0095】
このように、本実施の形態においては、メンテナンス直後に処理された処理品のマクロ撮像画像を取得する毎に、この取得された直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像に最も類似した過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像を検索し、この検索された「過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像」に添付されている(対応付けられている)「当該メンテナンスの直後のマクロ撮像画像と当該メンテナンスの次のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像との類似度」を、次のメンテナンス時期を判定するための閾値として設定するようにしている。
【0096】
換言すれば、直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像に最も類似した過去のメンテナンス直後のマクロ撮像画像を検索することよって、直近のメンテナンス時と同様の傾向を示している過去のメンテナンスの直後のマクロ撮像画像を得、そのマクロ撮像画像に添付されている(対応付けられている)類似度を、次のメンテナンス時期判定用の閾値として設定するのである。
【0097】
したがって、同一種類の製造装置であっても号機や処理炉等によって画像の傾向が異なり、また、共通部材の経時変化やオーバーホールやメンテナンス等によって画像の傾向が逐次変化するようなマクロ撮像画像を用いる場合であっても、製造装置6に対してメンテナンスを行う毎にメンテナンス時期判定用の閾値を設定更新することによって、メンテナンス時期判定用の閾値を的確に設定することができるのである。
【0098】
さらに、上記基準画像設定部12によって、「直近のメンテナンスの一つ前のメンテナンスの直後に加工処理された処理品のマクロ撮像画像」に「この一つ前のメンテナンス直後のマクロ撮像画像と直近のメンテナンスの直前のマクロ撮像画像との類似度」を添付したものを、データベース3のメンテ直後画像登録部9に上記「メンテナンス直後の過去事例」の1つとして登録するようにしている。したがって、メンテ直後画像登録部9の登録内容を常に最新の状態に維持することができ、上記メンテナンス時期判定用の閾値をより的確に設定することができる。
【0099】
さらに、上記基準画像設定部12によって、直近のメンテナンス直後のマクロ撮像画像と判別された取得マクロ撮像画像を、上記基準画像として設定するようにしている。したがって、製造装置6に対してメンテナンスを行う毎に、上記メンテナンス時期判定用の閾値に加えて、メンテナンス時期を判定する場合に用いる上記類似度を得るための上記基準画像をも設定更新することができる。その結果、的確に設定された上記メンテナンス時期判定用の閾値と上記基準画像とを用いることによって、製造装置6に対するメンテナンスの時期をさらに正しく判定することができる。
【0100】
尚、上記実施の形態においては、図2に示す運転状態監視処理のフローチャートの上記ステップS8および上記ステップS9において、単に、上記算出された類似度が上記メンテナンス時期判定用の閾値を下回ると、表示部5のアラームランプを点灯するあるいは警報を発するようにしている。ところが、その場合には、一度だけ突発的に上記算出された類似度が上記メンテナンス時期判定用の閾値を下回って、以後は上記閾値を上回る状態が続くような場合にも製造装置6のメンテナンス時期に至ったと判断されることなり、過検出となる。そこで、シューハート管理図の手法を用いて製造装置6のメンテナンス時期に至ったか否かの判断を行うことによって、より統計的に正確なメンテナンス時期の判断が可能になる。
【0101】
上記シューハート管理図の手法を用いる場合には、下側管理限界(LCL)として閾値設定部13で設定されたメンテナンス時期判定用の閾値を用い、上側管理限界(UCL)は設定しない。そして、例えば、図2に示すメンテナンス時期判定処理のフローチャートの上記ステップS7においては、上記ステップS5において上記類似度算出部11によって算出された取得マクロ撮像画像と上記基準画像との類似度を、製造装置6による処理日時順に配列して表示部5に表示する際に、下側管理限界線、中心線、上記下側管理限界線と上記中心線との間を上記中心線に沿って三つの領域に分けた領域A,B,Cも同時に表示する。
【0102】
さらに、上記ステップS8においては、上記ステップS7において上記処理日時順に配列された類似度が、例えば「JIS Z 9021:1998」に規定されている安定状態の八つの判定ルールの何れかを逸脱したか否かを判別する。そして、逸脱したと判別された場合に、上記ステップS9において製造装置6のメンテナンス時期に至ったと判断して、表示部5のアラームランプを点灯するあるいは警報を発するようにすればよい。
【0103】
こうすることによって、上述したようなメンテナンス時期の過検出を無くし、より正確にメンテナンス時期を判断することが可能になる。
【0104】
また、上記実施の形態においては、上記メンテナンス時期判定用の閾値として、マクロ撮像装置2によって撮像されたマクロ撮像画像と上記基準画像との類似度を用いている。しかしながら、この発明は「類似度」に限定されるものではなく、両画像の類似性(逆に言えば相違性)を表すことができる「相違度」あるいは「一致度」等を用いることも可能である。
【0105】
但し、上記「相違度」を用いる場合には、図2に示す運転状態監視処理のフローチャートの上記ステップS5においては上記取得マクロ撮像画像と上記基準画像との相違度を算出し、上記ステップS8におけるメンテナンス時期の判断では、上記算出された相違度が上記閾値(相違度)を上回るか否かを判別することになる。
【0106】
また、上記実施の形態においては、上記製造装置6の運転状態を監視する際に用いられる製造装置6の運転状態を反映するような処理品の特徴量として、処理品表面のマクロ撮像画像を用いている。しかしながら、この発明は「マクロ撮像画像」に限定されるものではなく、製造装置6の運転状態を反映している「膜厚の分布」や「反射率の分布」や「屈折率の分布」等を用いることも可能である。さらに、処理品表面の特徴のみならず、「電気特性検査結果の分布」や「X線透過率分布(X線画像やCT(Computerized Tomography)像)」や「透磁率分布」や「処理後ある時間から一定時間経過までの測定値や取得画像の変動」等によって得られる処理品内部の特徴量を用いることも可能である。処理品内部の特徴量を用いれば、例えば金属の時効処理のように処理品の内部で反応が進み、処理品の表面観察では捉えることができないような特徴量を捉えることが可能になる。
【0107】
さらに、上記処理品の特徴量は画像データのような2次元データに限定されるものではない。例えば、細かな3次元領域毎のデータで構成される立体的なデータや、所定の時間内におけるデータの変化等の経時変化を含むデータであっても差し支えない。あるいは、単一の数値で表現される1次元データであっても、複数の数値で表現される多次元データであってもよい。
【0108】
また、上記実施の形態においては、上記製造装置6に対して行われる定期作業として、「メンテナンス」を例示している。しかしながら、この発明は「メンテナンス」に限定されるものではなく、「レシピの変更」や「機種変更に伴う製造装置6の設定変更」や「オーバーホール」や「製造装置6の部材交換」であっても構わない。
【0109】
また、上記実施の形態においては、上記製造装置6として「半導体製造装置」を例示している。しかしながら、この発明は「半導体製造装置」に限定されるものではなく、処理品の特徴量に製造装置の運転状態が反映されるような加工処理を行う製造装置であればよい。例えば一般的な組立装置,表面処理装置および洗浄装置等であれば、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1…運転状態監視装置、
2…マクロ撮像装置、
3…データベース、
4…判定装置、
5…表示部、
6…製造装置、
7…プロセスデータ登録部、
8…撮像画像登録部、
9…メンテ直後画像登録部、
10…基準画像格納部、
11…類似度算出部、
12…基準画像設定部、
13…閾値設定部、
14…閾値格納部、
15…メンテナンス判定部、
16…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置で加工処理が行われた処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量を取得する特徴量取得部と、
上記製造装置に対する過去の定期作業毎に、夫々の上記定期作業の直後に上記特徴量取得部によって取得された上記特徴量に、この特徴量と、当該定期作業の次の定期作業の直前に上記特徴量取得部によって取得された上記特徴量との類似性を表す類似情報を添付したものが、定期作業直後の特徴量の過去事例として登録されている過去事例登録部と、
上記特徴量取得部によって取得された上記特徴量である取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、上記過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している上記特徴量を含む上記過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている上記類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定する閾値設定部と、
上記閾値設定部で設定された定期作業時期判定用の閾値を格納する閾値格納部と、
上記特徴量取得部によって順次取得される上記特徴量と基準特徴量との類似性を表す類似情報を監視することによって上記製造装置の運転状態を監視し、上記類似情報と上記定期作業時期判定用の閾値とに基づいて、上記製造装置に対する定期作業時期を判定する定期作業判定部と
を備えたことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記処理品が加工処理された際の上記製造装置からのプロセスデータが登録されるプロセスデータ登録部と、
上記プロセスデータ登録部に登録されている上記プロセスデータに基づいて、上記取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量であるか否かを判別する判別部と、
上記判別部で上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された上記取得特徴量を上記基準特徴量として設定する基準特徴量設定部と、
上記基準特徴量設定部で設定された基準特徴量を格納する基準特徴量格納部と
を備えたことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記判別部で上記定期作業の直後に取得された特徴量ではないと判別された上記取得特徴量と、上記基準特徴量格納部に格納された上記基準特徴量との類似性を表す類似情報を算出する類似情報算出部
を備え、
上記定期作業判定部は、上記類似情報算出部で算出された類似情報が上記定期作業時期判定用の閾値に至った場合に、上記製造装置に対する定期作業の時期が到来したと判定するようになっている
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記判別部で上記取得特徴量が上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された場合に、当該定期作業の一つ前の定期作業の直後に取得された特徴量に、上記類似情報算出部で算出された当該定期作業の直前に取得された特徴量に関する類似情報を添付したものを、上記過去事例として設定し、この設定された過去事例を上記過去事例登録部に追加登録する過去事例設定部と
を備えたことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一つに記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記定期作業判定部は、上記定期作業時期判定用の閾値を管理限界値とするシューハート管理図を用いて、上記製造装置の運転状態の監視および上記製造装置に対する定期作業時期の判定を行う
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一つに記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記製造装置に対する定期作業は、上記製造装置に対するメンテナンスである
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一つに記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量として、上記処理品の外観を撮像したマクロ撮像画像を用いる
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一つに記載の製造装置の運転状態監視装置において、
上記取得特徴量と上記基準特徴量との類似性を表す類似情報として、類似度を用いる
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視装置。
【請求項9】
製造装置に対する過去の定期作業毎に、夫々の上記定期作業の直後に上記製造装置で加工処理が行われた処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量に、この特徴量と、当該定期作業の次の定期作業の直前に加工処理が行われた処理品の上記特徴量との類似性を表す類似情報を添付したものを、定期作業直後の特徴量の過去事例として過去事例登録部に登録しておき、
特徴量取得部によって取得された上記特徴量である取得特徴量が、上記製造装置に対する定期作業の直後に取得された特徴量である場合に、閾値設定部によって、上記過去事例登録部から当該取得特徴量に最も類似している上記特徴量を含む上記過去事例を検索し、この検索された過去事例に含まれている上記類似情報を、定期作業時期判定用の閾値として設定し、
定期作業判定部によって、上記特徴量取得部で順次取得される上記特徴量と基準特徴量との類似性を表す類似情報を監視することにより上記製造装置の運転状態を監視し、上記類似情報と上記定期作業時期判定用の閾値とに基づいて、上記製造装置に対する定期作業時期を判定する
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造装置の運転状態監視方法において、
類似情報算出部によって、判別部で上記定期作業の直後に取得された特徴量ではないと判別された上記取得特徴量と上記基準特徴量との類似性を表す類似情報を算出し、
過去事例設定部によって、上記判別部で上記取得特徴量が上記定期作業の直後に取得された特徴量であると判別された場合に、当該定期作業の一つ前の定期作業の直後に取得された特徴量に、上記類似情報算出部で算出された当該定期作業の直前に取得された特徴量に関する類似情報を添付したものを、上記過去事例として設定して上記過去事例登録部に追加登録する
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視方法。
【請求項11】
請求項9あるいは請求項10に記載の製造装置の運転状態監視方法において、
上記製造装置の運転状態の監視および上記製造装置に対する定期作業時期の判定は、上記定期作業時期判定用の閾値を管理限界値とするシューハート管理図を用いて行う
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11の何れか一つに記載の製造装置の運転状態監視方法において、
上記製造装置に対する定期作業は、上記製造装置に対するメンテナンスであり、
上記処理品の特徴量であって、上記製造装置の運転状態を反映している特徴量として、上記処理品の外観を撮像したマクロ撮像画像を用いる
ことを特徴とする製造装置の運転状態監視方法。
【請求項13】
コンピュータを
請求項1における過去事例登録部,閾値設定部,閾値格納部および定期作業判定部
として機能させることを特徴とする製造装置の運転状態監視プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の製造装置の運転状態監視プログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータ読み出し可能なプログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107885(P2012−107885A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254873(P2010−254873)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】