説明

製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法

【課題】 燐を含有する製鋼スラグの製銑工程及び製鋼工程へのリサイクルに当り、該スラグから燐及び鉄を安価に回収するとともに、回収した燐及び鉄を資源として活用する。
【解決手段】 本発明のスラグからの鉄及び燐の回収方法は、燐を含有する製鋼スラグを、該製鋼スラグの塩基度(CaO/SiO2)と還元処理温度Tとの関係が下記の(1)式を満足するように調整して炭素を含有する還元剤を用いて還元処理し、還元鉄を回収すると共にスラグに含有される燐の20質量%以上を気相へ還元除去する第1の工程と、還元処理によって燐含有量が低下したスラグを製銑工程又は製鋼工程でのCaO源としてリサイクルする第2の工程と、回収した還元鉄を製銑工程又は製鋼工程での鉄源としてリサイクルする第3の工程と、気相へ還元除去した燐を排ガス処理系統で回収して燐酸資源原料とする第4の工程と、を有する。 還元処理温度T(℃)≧200×(スラグの塩基度)+1050 …(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼精錬工程において発生する溶銑の脱燐スラグや転炉脱炭精錬スラグなどの燐を含有する製鋼スラグから鉄及び燐を回収し、鉄及び燐の回収された製鋼スラグを製銑工程または製鋼工程にリサイクルするとともに、回収した鉄及び燐を資源として有効活用するための、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石の成分に起因して、高炉で溶製される溶銑(「高炉溶銑」とも呼ぶ)には燐(P)が含有される。燐は鋼材にとって有害成分であるので、従来から、鉄鋼製品の材料特性向上のために、製鋼工程において脱燐処理が行われている。この脱燐処理においては、溶銑中或いは溶鋼中の燐は、一般的に、酸素ガスや酸化鉄などの酸素源によって酸化されてP25となり、その後、生成したP25がCaOを主成分とするスラグ中へと固定されることによって除去されている。溶銑中或いは溶鋼中の燐を酸素ガスによって酸化する際には鉄も酸化され、酸素源として酸化鉄を使用しない場合であっても、スラグ中には鉄も酸化鉄の形態で含有される。
【0003】
ところで、燐鉱石の枯渇問題や、中国、アメリカなどの燐鉱石の囲い込みのために、燐資源が高騰しており、鉄鋼精錬工程において発生する製鋼スラグ中の燐が貴重な燐資源として見直されている。しかしながら、高炉から出銑される溶銑の燐濃度は0.1質量%程度であるため、従来の一般的な溶銑の予備脱燐処理や転炉脱炭精錬で生成される製鋼スラグ中のP25濃度は高々5質量%程度であり、燐酸資源としての活用先がほとんどなく、これらの製鋼スラグは、従来、路盤材などの土工用材料などとして鉄鋼製造工程の系外に排出されており、スラグ中の燐及び鉄は回収されることはなかった。尚、溶銑の予備脱燐処理とは、溶銑を転炉にて脱炭精錬する前に、予め溶銑中の燐を除去する処理のことである。
【0004】
近年、環境対策及び省資源の観点から、製鋼スラグのリサイクル使用を含めて、製鋼スラグの発生量を削減することが実施されている。例えば、予備脱燐処理された溶銑の転炉脱炭精錬において発生したスラグ(転炉脱炭精錬において発生するスラグを「転炉スラグ」という)を、造滓剤用のCaO源及び鉄源として、鉄鉱石の焼結工程を経て高炉にリサイクルすることや、溶銑予備処理工程のCaO源としてリサイクルすることなどが行われている。
【0005】
予備脱燐処理された溶銑(「脱燐溶銑」ともいう)、特に鉄鋼製品の燐濃度レベルまで予備脱燐処理された脱燐溶銑の転炉脱炭精錬において発生する転炉スラグは、燐をほとんど含有せず、このスラグを高炉へリサイクルすることに起因する溶銑の燐濃度の増加(ピックアップ)を危惧する必要はない。しかしながら、予備脱燐処理時に発生するスラグや、予備脱燐処理されていない溶銑(「通常溶銑」ともいう)或いは予備脱燐処理されていても脱燐処理後の燐濃度が鉄鋼製品の燐濃度レベルまで低下していない脱燐溶銑の転炉脱炭精錬で発生する転炉スラグのように、燐を含有するスラグでは、高炉に酸化物の形態でリサイクルされた燐が、高炉内で還元されて溶製される溶銑の燐含有量を増加させ、その結果、溶銑からの脱燐の負荷が増加するという悪循環に陥る。
【0006】
そこで、燐を含有する製鋼スラグのリサイクルについては、特に還元精錬を伴う工程へのリサイクルについては、溶銑での燐濃度のピックアップを防止するべく、製鋼スラグから燐を除去する方法或いは製鋼スラグ中の燐を回収する方法など、種々の提案がなされている。尚、予備脱燐処理などの酸化精錬へのリサイクルの場合にも、脱燐剤としての機能が既に燐を含有することから損なわれ、リサイクルされる量は限られる。
【0007】
例えば、特許文献1には、クロム鉱石の溶融還元製錬工程と、該溶融還元製錬によって溶製された含クロム溶銑の転炉脱炭精錬工程との組み合わせによってステンレス溶鋼を溶製する際に、前記含クロム溶銑の脱燐処理により発生した脱燐スラグに炭材を加えて加熱し、脱燐スラグに気化脱燐処理を施し、気化脱燐処理後の脱燐スラグを前記溶融還元製錬工程にリサイクルする技術が開示されている。
【0008】
特許文献2には、燐を含有する溶融または半溶融状態の製錬スラグに炭材を添加して、減圧下で酸素を上吹きして、スラグ中の燐を気化除去する技術が開示されている。
【0009】
特許文献3には、溶融状態の高炉スラグと、溶融状態の転炉スラグとを混合し、この混合スラグ中に、炭素、珪素、マグネシウムの1種以上を添加すると同時に、酸素ガスを吹き込んで、混合スラグ中の燐酸化物を還元して燐蒸気とし、且つ、混合スラグ中の硫黄をSO2とし、これらを揮発させて燐及び硫黄の少ないスラグとし、このスラグを高炉または転炉にリサイクルする技術が開示されている。
【0010】
特許文献4には、脱燐スラグに炭材を添加し、1450℃以上1700℃未満に加熱してスラグ中の燐を溶銑側へ除去・回収し、脱燐スラグを再生する技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献5には、アルカリ金属炭酸塩を主成分とする造滓剤を用いた、溶銑または溶鋼の脱燐処理で生成する脱燐スラグを、水及び炭酸ガスで処理してアルカリ金属燐酸塩を含む抽出液を得て、該抽出液にカルシウム化合物を添加して、燐を燐酸カルシウムとして析出させて分離回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−143492号公報
【特許文献2】特開平9−316519号公報
【特許文献3】特開昭55−97408号公報
【特許文献4】特開2002−69526号公報
【特許文献5】特開昭56−22613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
【0014】
即ち、特許文献1では、脱燐スラグは、燐が気化脱燐により除去されてリサイクル可能となるが、気化脱燐した燐の回収には言及しておらず、燐資源の確保という観点からは効果的なリサイクル方法とはいえない。同様に、特許文献2でも、燐を資源として回収することができないうえに、減圧が必要であり設備費も高くなる。
【0015】
特許文献3では、燐含有スラグである転炉スラグに、転炉スラグとほぼ同量の高炉スラグを混合させているが、近年、高炉スラグは、廃棄物ではなく、土木・建築資材として利用価値の高い資源と位置づけられており、このような高炉スラグを転炉スラグの希釈用として使用することは経済的には不利である。
【0016】
特許文献4は、スラグ中の燐を溶銑側へ回収する段階までの開示はなされているものの、その後、溶銑中に回収・濃化した燐をどのように処理するかまでは言及していない。
【0017】
また、特許文献5は湿式処理であり、湿式処理の場合、処理に必要な薬品が高価であるのみならず、大掛かりな処理設備が必要であり、設備費及び運転費ともに高価となる。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、脱燐スラグや転炉スラグなどの燐を含有する製鋼スラグを製銑工程及び製鋼工程にリサイクルするにあたり、該スラグの含有する燐の溶銑及び溶鋼への影響を防止するべく、前記製鋼スラグから予め燐及び鉄を安価に回収するとともに、回収した燐及び鉄をそれぞれ資源として有効活用することのできる、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 転炉での溶銑の脱炭精錬において発生したスラグ及び溶銑の予備脱燐処理において発生したスラグのうちの少なくとも何れか1種の燐を含有する製鋼スラグを、該製鋼スラグの還元処理前の塩基度(=質量%CaO/質量%SiO2)と還元処理温度T(℃)との関係が下記の(1)式を満足する範囲内となるように調整して炭素を含有する還元剤を用いて還元処理して、還元鉄を回収するとともに前記製鋼スラグに含有される燐の20質量%以上を気相へ還元除去する第1の工程と、前記第1の工程の還元処理によって燐含有量が低下したスラグを製銑工程または製鋼工程でのCaO源としてリサイクルする第2の工程と、前記第1の工程で回収した還元鉄を製銑工程または製鋼工程での鉄源としてリサイクルする第3の工程と、前記第1の工程で気相へ還元除去した燐を、燐酸化物として排ガス処理系統で回収して燐酸資源原料とする第4の工程と、を有することを特徴とする、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
還元処理温度T(℃)≧200×(スラグの塩基度)+1050 …(1)
(2) 前記第1の工程において、製鋼スラグとともにSiO2源を還元処理に供してスラグの塩基度を調整することを特徴とする、上記(1)に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
(3) 前記第4の工程において、燐酸化物を乾式排ガス処理系統の出側に設けたバグフィルターを用いて回収することを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
(4) 前記第2の工程におけるスラグのリサイクル先が、鉄鉱石の焼結工程または高炉での溶銑製造工程であることを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れか1項に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
(5) 前記第2の工程におけるスラグのリサイクル先が、製鋼精錬工程における溶銑の予備脱燐処理または転炉での溶銑の脱炭精錬であることを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れか1項に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
(6) 前記第1の工程で用いる製鋼スラグは、該製鋼スラグに混入していた金属鉄が還元処理前に磁気分離されたものであることを特徴とする、上記(1)ないし上記(5)の何れか1項に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶銑の予備脱燐処理時に発生する脱燐スラグ及び転炉での溶銑の脱炭精錬において発生する転炉スラグのうちの少なくとも何れか1種の燐を含有する製鋼スラグを製銑工程または製鋼工程へリサイクルするにあたり、前記製鋼スラグに含有される燐の20質量%以上が気相へ還元除去されるように条件を調整して製鋼スラグを還元処理し、製鋼スラグ中の鉄酸化物を還元鉄として回収するとともに、該還元鉄中に、気相へ還元除去されなかった製鋼スラグ中の燐酸化物を還元回収し、燐含有量の低下した製鋼スラグは製銑工程または製鋼工程におけるCaO源としてリサイクルし、一方、回収した還元鉄は製銑工程または製鋼工程における鉄源としてリサイクルし、更に、還元処理工程において気相側へ除去された燐は、排ガス処理系統において燐酸資源原料として回収するに十分な程度にまで燐酸化物が濃縮された状態で回収するので、溶銑の燐濃度を上昇させる或いは脱燐剤としての機能を損なうなどの弊害をもたらすことなく、燐を含有していた製鋼スラグの製銑工程または製鋼工程へのリサイクルが実現され、同時に、製鋼スラグに含有されていた鉄及び燐をそれぞれ資源として有効活用することが実現される。
【0021】
特に製鋼スラグの製銑工程へのリサイクルでは、鉄鉱石の焼結工程または高炉へのリサイクルによって高炉スラグの発生量が増加するが、微粉末状の高炉スラグは、セメントの混和材として使用することによって、スラグ中のCaO分などがセメントと同様のポゾラン反応を起こし、セメントの強度を発現させる。従来、セメント原料のCaO分は炭酸カルシウム(CaCO3)を焼成して製造しており、この焼成時に熱エネルギーを必要とするのみならずCO2ガスも発生するが、高炉スラグ微粉末をセメントに混ぜて高炉スラグセメント(「高炉セメント」と呼ぶ)とした場合には、高炉スラグ微粉末/普通ポルトランドセメントの混合比率に応じて、焼成エネルギー及びCO2ガスの発生量を低減可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明者らは、溶銑の予備脱燐処理時に発生する脱燐スラグや、転炉での溶銑の脱炭精錬において発生する転炉スラグなどの燐を含有する製鋼スラグ(「燐含有製鋼スラグ」とも呼ぶ)を、脱燐剤(P25を固定するためのCaO)や造滓剤としてのCaO源として製銑工程または製鋼工程でリサイクル使用するに際し、製鋼スラグに含有される燐は高炉の還元雰囲気下では還元されて溶銑に移行し、溶銑中の燐濃度が上昇することから、先ず、この製鋼スラグに含有される燐の、高炉から出銑される溶銑への影響を解消することを検討した。つまり、リサイクルする前に製鋼スラグから燐を除去する方法を検討した。
【0024】
燐含有製鋼スラグには、燐はP25なる酸化物で含有されており、また、一般的に製鋼スラグはCaO及びSiO2を主成分としており、燐は、カルシウム(Ca)及び珪素(Si)に比較して酸素との親和力が弱いことから、燐含有製鋼スラグを、炭素、珪素、アルミニウムなどで還元すれば、燐含有製鋼スラグ中のP25は容易に還元されることが分かった。この場合、燐含有製鋼スラグには、鉄がFeOやFe23の形態の酸化物(以下、まとめて「FeXO」と記す)で含有されており、これらの鉄酸化物は酸素との親和力が燐と同等であるので、燐含有製鋼スラグを、炭素、珪素、アルミニウムなどの還元剤で還元すると、同時に製鋼スラグ中のFeXOも還元される。
【0025】
しかし、燐は鉄中への溶解度が高く、還元により生成した燐は、還元により生成した鉄に迅速に溶解し、燐濃度の高い還元鉄が生成される。本発明の目的の1つは、燐含有製鋼スラグから燐を除去して燐含有量の低い製鋼スラグに改質することであるが、他の1つの目的としては、生成する還元鉄を鉄源として有効利用することがある。還元鉄を製銑工程や製鋼工程で利用することを考えた場合、還元鉄中の燐濃度が低いほど、製鋼工程での脱燐負荷が軽減されることから、還元鉄中の燐濃度は低いことが望ましい。
【0026】
そこで本発明者らは、還元鉄中の燐濃度を低減すべく鋭意研究・検討を重ねた。その結果、製鋼スラグから還元除去される燐を還元鉄に溶解させずに、気相側へ直接除去することで、還元鉄中の燐濃度の上昇が抑制されることを知見し、製鋼スラグから還元除去される燐を気相側へ直接除去する方法を検討した。
【0027】
燐含有製鋼スラグから燐を除去し、改質した低燐スラグを製銑工程などにリサイクルする場合、燐の影響を軽微にするためには、燐含有製鋼スラグ中の燐の70質量%程度以上を除去することが望まれる。また、燐含有製鋼スラグに含有される燐の70質量%程度を還元処理によって除去することは比較的容易である。そこで、還元処理による燐含有製鋼スラグからの燐の除去率を70%と設定して検討した。
【0028】
例えば、T.Fe濃度(T.Fe:スラグ中の全ての鉄酸化物の鉄分の合計値)=25質量%、P濃度=0.8質量%の製鋼スラグ1トンを還元処理した場合には、還元鉄が理論的計算上250kg生成する。スラグからの燐の除去率を70%とすると、還元により生成する燐は、5.6kg(=1トン×0.8質量%×70%)となる。この5.6kgの燐が全て還元鉄へ溶解した場合には、還元鉄中の燐濃度はおよそ2.2質量%となる。一般的な高炉溶銑の燐濃度は0.1質量%程度であることから、前記還元鉄中の燐濃度は高炉溶銑の20倍以上となる。このような燐濃度の高い還元鉄を鉄源としてリサイクルした場合には、当然、製鋼工程における脱燐負荷が増大し、製造コストが上昇する。
【0029】
しかし、燐含有製鋼スラグから除去される70%の燐のうちの20%を気相へ除去でき、残りの50%のみが還元鉄へ溶解する場合には、還元鉄中の燐濃度はおよそ1.6質量%程度に低減し、製鋼工程での脱燐負荷を軽減することが可能となる。このように、還元処理において気相側への燐の除去率を向上させることは大きなメリットを有する。
【0030】
そこで、本発明者らは、気相側への燐の除去率を向上させる条件を実験によって検証し、その結果、スラグの塩基度に応じて還元処理温度を設定することにより、燐の気相への除去率を20質量%以上に確保できることを見出した。以下に、このような条件に至った研究推移を説明する。尚、本発明において、スラグの塩基度はスラグ中のCaO濃度とSiO2濃度との比(質量%CaO/質量%SiO2)で定義される。
【0031】
製鋼スラグ中のFeXOやP25を炭素で還元する場合、熱力学的安定度の関係から、先にFeXOが還元され、その後にP25が還元される。この時のメカニズムを詳述すると、以下のようになる。
[順1]:FeXOが炭素で還元されてFeが生成する。この時のFeは微粒鉄である。
[順2]:微粒鉄に炭素が浸炭して銑鉄となり、還元鉄の融点が下がり溶融銑鉄となる。
[順3]:溶融銑鉄は流動・凝集して、スラグ相と分離する。
【0032】
即ち、[順1]が終了した段階では、スラグ相内に多数の微粒鉄が混在している状態であり、この時にP25の還元が開始されると、還元された燐の近くに微粒鉄が存在することになることから、燐が直ちに微粒鉄に溶解してしまう。逆に言うと、[順2]の微粒鉄への浸炭を促進させて、素早く溶融銑鉄を凝集させてスラグ相と分離させることができれば、つまり、迅速に[順3]に移行させることができれば、還元された燐の近くには鉄が存在しなくなるので、還元された燐は気相側へ除去されると考えられる。この考えに沿って実証実験を行った。
【0033】
その結果、以下の重要なポイントを見出した。
A:浸炭を促進するには処理温度を高くすることが有効。
B:処理温度が高い方が、還元銑鉄が溶解し溶融銑鉄となって凝集しやすい。
C:スラグが軟化溶融状態にあるほど、溶融銑鉄が凝集しやすい(スラグが溶融銑鉄の凝集を阻害しない)。
D:スラグの塩基度に応じて処理温度を調整することでスラグの軟化溶融状態を制御できる。つまり、スラグの塩基度が高い場合には、処理温度を高くする必要がある。
【0034】
これらA〜Dのポイントを踏まえて実験を重ねた結果、燐含有製鋼スラグに含有される燐の気相への除去率を20質量%以上とする条件は、下記の(1)式であることを本発明者らは見出した。
還元処理温度T(℃)≧200×(スラグの塩基度)+1050 …(1)
(1)式にしたがい、スラグの塩基度に応じて還元処理温度Tを制御することで、燐含有製鋼スラグに含有される燐の20質量%以上を気相側へ除去した状態で還元鉄を得ることができる。
【0035】
但し、スラグ塩基度=4.0の場合には、還元処理温度Tを1850℃以上に制御する必要があるが、還元処理温度Tが1850℃以上の高温プロセスは耐火物への負荷などを考慮すると経済的に成り立ちにくい。せいぜい、還元処理温度Tが1650℃以上となるスラグ塩基度=3.0程度が現実的な還元処理プロセスであり、より望ましくは、還元処理温度Tを1500℃以下にすることができるスラグ塩基度=2.2以下の条件である。一方、還元後のスラグを製銑工程へリサイクルする場合、スラグ塩基度が高炉スラグの塩基度よりも低くなると、製銑工程におけるフラックス使用量増大に伴う高炉スラグ発生量の増加を招き、高炉操業でのデメリットが増加する。従って、一般的な高炉スラグの塩基度(=0.8)よりも高い塩基度での還元処理が望ましい。
【0036】
一般的な転炉スラグの塩基度は3〜4程度であるが、転炉スラグを還元処理する際に還元処理温度Tを低下させるために、処理対象のスラグの塩基度を低下させたい場合には、転炉スラグにSiO2源を混合して還元処理に供すればよいことも分かった。SiO2源としては、珪石や塩基度の低いスラグ、太陽電池の製造工程で発生するSiスラッジなどが挙げられる。特に、溶銑の予備脱燐処理時に発生する脱燐スラグ(「予備脱燐スラグ」ともいう)は塩基度が1.2〜2.5程度であり、しかも、燐を含有するスラグであることから混合しても燐濃度が低下することはなく(回収する燐量が減少しない)、従って、予備脱燐スラグを転炉スラグの塩基度調整材として使用することが好ましい。
【0037】
更に本発明者らは、燐資源の回収について検討・研究を行った。気相へ除去された燐は主にCOガスを含むガス中でP2ガスやP4ガスといった形態をとる。乾式排ガス処理装置で、COガスは二次燃焼処理によりCO2ガスとなるが、この際にP2ガスやP4ガスといった燐系のガスも酸化され、その後、ガス温度の低下に伴い、最終的にはP25のような燐酸化物になることが熱力学的に推察される。
【0038】
本発明者らは、還元実験装置の乾式排ガス処理装置の出側にバグフィルターを設置して、燐酸化物の捕捉を試みた。その結果、バグフィルターからは排ガス中に物理的に飛散したスラグとともに、燐酸化物であるP25が確認できた。上述した(1)式の条件を満たす還元処理条件の場合、バグフィルターで捕捉された飛灰のP25濃度は、何れも20質量%を超える高い濃度であった。このような高P25濃度であれば燐酸資源として回収・利用する価値を見出すことができる。
【0039】
本発明は、これらの試験結果に基づいてなされたものであり、本発明に係る製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法は、転炉での溶銑の脱炭精錬において発生したスラグ及び溶銑の予備脱燐処理において発生したスラグのうちの少なくとも何れか1種の燐を含有する製鋼スラグを、該製鋼スラグの還元処理前の塩基度と還元処理温度Tとの関係が上記の(1)式を満足する範囲内となるように調整して炭素を含有する還元剤を用いて還元処理して、還元鉄を回収するとともに前記製鋼スラグに含有される燐の20質量%以上を気相へ還元除去する第1の工程と、前記第1の工程の還元処理によって燐含有量が低下したスラグを製銑工程または製鋼工程でのCaO源としてリサイクルする第2の工程と、前記第1の工程で回収した還元鉄を製銑工程または製鋼工程での鉄源としてリサイクルする第3の工程と、前記第1の工程で気相へ還元除去した燐を、燐酸化物として排ガス処理系統で回収して燐酸資源原料とする第4の工程と、を有することを特徴とする。ここで、炭素を含有する還元剤としては、コークス、石炭、木炭、チャーなどを使用する。
【0040】
上記還元処理工程によって、鉄酸化物及び燐酸化物の含有量が低下した製鋼スラグのリサイクル方法としては、鉄鉱石の焼結工程におけるCaO源(造滓剤)として利用し、その後、高炉での溶銑製造工程で装入原料として使用する方法以外に、高炉での溶銑製造工程でのCaO系の造滓剤として直接使用する方法、または、高炉溶銑の予備脱燐処理におけるCaO系脱燐剤として使用する方法、或いは、転炉での溶銑の脱炭精錬工程における造滓剤として使用する方法、更には、高炉溶銑の脱硫処理におけるCaO系脱硫剤として使用する方法などが、好適な例として挙げられる。これ以外の工程であっても、製鉄所における製銑工程及び製鋼工程の生石灰(CaO)を使用している工程である限り、生石灰の代替として使用可能である。
【0041】
尚、発生する転炉スラグの全量を本発明の還元処理工程に供しても構わないが、溶銑の予備脱燐処理において転炉スラグを利用することは省資源の観点からも有効であり、従って、発生した転炉スラグの一部を溶銑の予備脱燐処理におけるCaO源(CaO系脱燐剤)として使用し、この転炉スラグの残部を、本発明の還元処理工程に供することが好ましい。また、上記の還元処理調査実験は、ロータリーキルン型の処理容器で行ったが、処理容器としては、製鋼スラグに熱を与えて還元処理できるものであればどのようなものでも構わない。ロータリーキルンの他には、例えば、アーク加熱方式の電気炉や、バーナー或いは酸素による加熱装置を有する転炉や鍋型の処理容器、誘導加熱炉、RHF形式の処理容器などが挙げられる。
【0042】
また、本発明者らは、還元処理に供する燐含有製鋼スラグに混入する金属鉄分を事前に取り除いてから還元処理することが、燐の気相への除去に関して、より効果的であることを見出した。先に述べたように、還元された燐は、鉄への溶解度が高いため、燐の近傍に鉄が存在すると直ちに鉄へ溶解し、燐含有鉄となる。しかし事前処理によって金属鉄を除去しておくことで、還元によって生成する鉄量を減らすことができるため、還元により生成した燐が、還元鉄へ溶解する確率を減らすことができる。
【0043】
転炉スラグや予備脱燐スラグには金属鉄がおよそ5〜15質量%程度混入しているが、これらを全て事前処理で取り除くことができればよいが、全てを事前処理で除去しきる必要はなく、例えば、燐含有製鋼スラグに混入する金属鉄の50%程度を除去できれば燐の気相への除去率が向上する。事前の金属鉄分離には、磁力を用いた分離や、鉄とスラグの比重差を利用した遠心気流分離など、スラグの形状や処理量に応じて適切なプロセスを選択すればよい。
【0044】
以上説明したように、上記構成の本発明によれば、溶銑の予備脱燐処理時に発生する脱燐スラグ及び転炉での溶銑の脱炭精錬において発生する転炉スラグのうちの少なくとも何れか1種の燐を含有する製鋼スラグを製銑工程または製鋼工程へリサイクルするにあたり、前記製鋼スラグに含有される燐の20質量%以上が気相へ還元除去されるように条件を調整して製鋼スラグを還元処理し、製鋼スラグ中の鉄酸化物を還元鉄として回収するとともに、該還元鉄中に、気相へ還元除去されなかった製鋼スラグ中の燐酸化物を還元回収し、燐含有量の低下した製鋼スラグは製銑工程または製鋼工程におけるCaO源としてリサイクルし、一方、回収した還元鉄は製銑工程または製鋼工程における鉄源としてリサイクルし、更に、還元処理工程において気相側へ除去された燐は、排ガス処理系統において燐酸資源原料として回収するに十分な程度にまで燐酸化物が濃縮された状態で回収するので、溶銑の燐濃度を上昇させる或いは脱燐剤としての機能を損なうなどの弊害をもたらすことなく、燐を含有していた製鋼スラグの製銑工程または製鋼工程へのリサイクルが実現され、同時に、製鋼スラグに含有されていた鉄及び燐をそれぞれ資源として有効活用することが実現される。
【0045】
尚、予め鉄鋼製品の燐濃度レベルまで予備脱燐処理が施された溶銑の脱炭精錬時に発生する転炉スラグも、燐の含有量はゼロではなく燐を含有する。従って、この転炉スラグにも本発明を適用することは可能であるが、当該スラグは燐の含有量が低く、そのまま高炉などにリサイクルしても、燐の影響は無視することができ、本発明を適用することにより却ってコスト上昇を招く恐れがある。従って、本発明で対象とする、「燐を含有する製鋼スラグ」とは、その製鋼スラグを高炉などにリサイクルすると溶銑または溶鋼の燐濃度が上昇し、通常の操業に対してコスト上昇を発生させる濃度以上の燐を含有する製鋼スラグである。
【実施例1】
【0046】
高炉から出銑された高炉溶銑をトピードカーで受銑し、トピードカーに収容された高炉溶銑に脱珪処理及び予備脱燐処理を施し、その後、高炉溶銑を溶銑鍋に移し替え、溶銑鍋内の高炉溶銑に機械攪拌式脱硫装置により脱硫処理を施し、この脱硫処理終了後の高炉溶銑を転炉に装入して転炉にて脱炭精錬を施し、かくして、高炉溶銑から溶鋼を溶製する製銑−製鋼工程において本発明を適用した。高炉での出銑から転炉脱炭精錬終了までの高炉溶銑及び溶鋼の化学成分の例を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、脱珪、脱燐後の高炉溶銑には0.050質量%の燐が含有されており、鉄鋼製品の燐濃度レベル(0.015質量%以下)に比較して高く、この高炉溶銑を用いた転炉脱炭精錬により発生する転炉スラグには、0.8質量%程度の燐(P25で1.8質量%程度)が含有される。この転炉スラグを鉄鉱石の焼結工程でのCaO源として使用すると、高炉溶銑の燐の濃化が発生する。そこで、この転炉スラグに本発明を適用する試験を実施した。
【0049】
200トンの転炉スラグ(塩基度=3.0)と、塩基度調整材としての珪石と、還元剤としてのコークスとを、加熱バーナーを備えたロータリーキルンに装入し、バーナーによって転炉スラグ、珪石及びコークスを加熱して転炉スラグの還元処理を実施した。投入コークスの量は100kg/t−スラグとし、ロータリーキルンの運転温度は、転炉スラグと珪石とを混合した後の混合物(均一に混合すると仮定)の塩基度(計算値)に基づいて(1)式により還元処理温度Tを求め、求めた還元処理温度T以上の温度に設定した。また、比較のために、求めた還元処理温度Tよりも低い温度で還元処理する試験も実施した。ロータリーキルンの出側には、乾式排ガス処理設備を設け、その最終部位に飛灰回収用のバグフィルターを備えている。表2に、試験条件並びに試験結果を示す。
【0050】
【表2】

【0051】
還元処理温度Tが(1)式の条件を満たす本発明例1〜8においては、還元後のスラグの燐濃度は0.19〜0.27質量%に低減しており、回収した還元鉄は48〜50トン、回収した還元鉄中の燐濃度は1.51〜1.70質量%であった。転炉スラグ中の燐のうちで気相へ除去された燐の割合は20〜28質量%であり、また、回収した飛灰中のP25濃度は何れの条件においても20質量%を超えていた。回収した飛灰は、燐酸資源原料として利用することができた。
【0052】
一方、還元処理温度Tが(1)式の条件を満たさない比較例1〜8は、還元後のスラグの燐濃度は0.20〜0.28質量%に低減しているものの、回収した還元鉄は48〜50トンで、回収した還元鉄中の燐濃度は2.13〜2.29質量%であり、本発明例に比較して高かった。転炉スラグ中の燐のうちで気相へ除去された燐の割合は2〜8質量%であり、本発明例に比して低位であった。回収した飛灰中のP25濃度も10質量%を下回る水準であった。
【0053】
本発明例1〜8において、還元処理後のスラグを鉄鉱石の焼結工程において造滓剤用のCaO源として使用し、製造した焼結鉱を鉄源として高炉に装入し、高炉溶銑を製造した。溶製された高炉溶銑の燐濃度は0.1質量%程度で、製鋼スラグのリサイクルによる燐濃度の上昇はほとんど見られなかった。またリサイクルを行った際の高炉スラグを用いて高炉スラグセメントを製造したが、従来と品質が同等であり、なんら問題はなく、従来と同様にセメント製造の省エネルギー化が可能となった。
【0054】
また、本発明例1〜8において、還元処理後のスラグを製鋼工程における精錬用のCaO源としても用いたが、なんら問題なく精錬操業を行うことができた。回収した48〜50トンの還元鉄は、おおよそ4等分し、それぞれを300トンの高炉溶銑に混合し(混合後の溶銑中燐濃度:0.16質量%)、混合後の溶銑に対して予備脱燐処理を実施した。予備脱燐処理後の溶銑中燐濃度は0.09質量%程度であり、次工程の転炉脱炭精錬では通常の高炉溶銑を用いた場合と同等の品質レベルの溶鋼を得ることができた。
【0055】
表2には記載しなかったが、塩基度調整材として、珪石の代わりにSiスラッジや、製鉄所内で発生する塩基度=1程度の低塩基度スラグを用いたが、なんら問題なく還元処理を行うことができた。また、転炉スラグのみならず、予備脱燐スラグを還元処理に供した場合にもなんら問題なく、本発明の効果を享受することが可能であった。
【0056】
本発明例1〜8に対して、上記製鋼工程において発生する転炉スラグをそのまま焼結鉱のCaO源としてリサイクルした場合には、高炉から出銑される溶銑の燐濃度が高くなり、その後の製鋼工程におけるCaO系の造滓剤や酸素源の原単位が増加し、発生スラグ量が1.5倍になるとともに、生産性が20%低下した。
【実施例2】
【0057】
200トンの転炉スラグ(塩基度=3.0)と、塩基度調整材としての珪石と、還元剤としてのコークスとを、加熱バーナーを備えたロータリーキルンに装入し、バーナーによって転炉スラグ、珪石及びコークスを加熱して転炉スラグの還元処理を実施した。使用した転炉スラグは、混入していた5〜15質量%の金属鉄を事前に回転ドラム式の磁気分離機で2質量%以下まで除去したものである。磁着物である金属鉄は製鋼精錬工程において鉄源として再利用した。投入コークスの量は100kg/t−スラグとし、ロータリーキルンの運転温度は、転炉スラグと珪石とを混合した後の混合物の塩基度(計算値)に基づいて(1)式により還元処理温度Tを求め、求めた還元処理温度T以上の温度に設定した。実施例1と同様に、乾式排ガス処理設備のバグフィルターで飛灰を回収した。表3に、試験条件並びに試験結果を示す。
【0058】
【表3】

【0059】
試験条件は表2の本発明例1〜8に準じ、異なる点は還元処理の前に転炉スラグから金属鉄を除去したことのみである。本発明例9〜16は、還元後のスラグの燐濃度は0.18〜0.26質量%であり、回収した還元鉄は37〜45トンであった。事前に金属鉄を回収している分、回収した還元鉄量は本発明例1〜8より少なくなった。回収した還元鉄中の燐濃度は1.35〜1.67質量%であり、本発明例1〜8よりも更に燐濃度を低減することができた。製鋼スラグ中の燐のうち気相へ除去された燐の割合は、33〜39質量%であり、本発明例1〜8よりも高位であった。回収飛灰中のP25濃度も本発明例1〜8よりも高い値であった。
【0060】
実施例1と同様に、還元処理後のスラグを鉄鉱石の焼結工程において造滓剤用のCaO源として使用し、高炉溶銑を製造した。溶製された高炉溶銑の燐濃度は0.1質量%程度で、何ら問題がなかった。またリサイクルを行った際の高炉スラグを用いて高炉スラグ微粉末及び高炉スラグセメントを製造したが、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」の品質規格を満足しており、JIS R 5211「高炉セメント」の強度などの特性も従来と同等でなんら問題はなく、従来と同様にセメント製造の省エネルギー化が可能となった。
【0061】
また、実施例1と同様に、還元処理後のスラグを製鋼工程で使用することや、Siスラッジや塩基度の低いスラグを珪石代替として利用すること、更には、予備脱燐スラグを還元処理に供することも何ら問題はなかった。
【0062】
本発明例9〜16に対して、上記製鋼工程において発生する転炉スラグをそのまま焼結鉱のCaO源としてリサイクルした場合には、高炉から出銑される溶銑の燐濃度が高くなり、その後の製鋼工程におけるCaO系の造滓剤や酸素源の原単位が増加し、発生スラグ量が1.5倍になるとともに、生産性が20%低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉での溶銑の脱炭精錬において発生したスラグ及び溶銑の予備脱燐処理において発生したスラグのうちの少なくとも何れか1種の燐を含有する製鋼スラグを、該製鋼スラグの還元処理前の塩基度(=質量%CaO/質量%SiO2)と還元処理温度T(℃)との関係が下記の(1)式を満足する範囲内となるように調整して炭素を含有する還元剤を用いて還元処理して、還元鉄を回収するとともに前記製鋼スラグに含有される燐の20質量%以上を気相へ還元除去する第1の工程と、
前記第1の工程の還元処理によって燐含有量が低下したスラグを製銑工程または製鋼工程でのCaO源としてリサイクルする第2の工程と、
前記第1の工程で回収した還元鉄を製銑工程または製鋼工程での鉄源としてリサイクルする第3の工程と、
前記第1の工程で気相へ還元除去した燐を、燐酸化物として排ガス処理系統で回収して燐酸資源原料とする第4の工程と、
を有することを特徴とする、製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
還元処理温度T(℃)≧200×(スラグの塩基度)+1050 …(1)
【請求項2】
前記第1の工程において、製鋼スラグとともにSiO2源を還元処理に供してスラグの塩基度を調整することを特徴とする、請求項1に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
【請求項3】
前記第4の工程において、燐酸化物を乾式排ガス処理系統の出側に設けたバグフィルターを用いて回収することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
【請求項4】
前記第2の工程におけるスラグのリサイクル先が、鉄鉱石の焼結工程または高炉での溶銑製造工程であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
【請求項5】
前記第2の工程におけるスラグのリサイクル先が、製鋼精錬工程における溶銑の予備脱燐処理または転炉での溶銑の脱炭精錬であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。
【請求項6】
前記第1の工程で用いる製鋼スラグは、該製鋼スラグに混入していた金属鉄が還元処理前に磁気分離されたものであることを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の製鋼スラグからの鉄及び燐の回収方法。

【公開番号】特開2012−219298(P2012−219298A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84390(P2011−84390)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究(事前研究)/製鋼スラグ資源化技術のためのリン分離回収に関する事前研究」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】