説明

複写帳票及びその製造方法

【課題】 ノーカーボン用紙を用いた複写帳票において、ノーカーボンミドル紙における顕色剤層の発色汚れを防止できる複写帳票を提供し、また複写帳票を製造する工程で、ノーカーボンミドル紙の巻取り状態で、顕色剤層が発色するトラブルを防止できる複写帳票の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1の基材6の裏面に発色剤層7を設けたノーカーボントップ紙2と、第2の基材8の表面に顕色剤層9を設け、前記第2の基材8の裏面に発色剤層11を設けたノーカーボンミドル紙A(3)を、ノーカーボントップ紙2の発色剤層7と、ノーカーボンミドル紙A(3)の顕色剤層9が接するように重ね合わせた複写帳票1において、ノーカーボンミドル紙A(3)の顕色剤層9の上に、レーザ照射により切削除去可能な目止め層10が設けられていることを特徴とする複写帳票1の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票に関し、さらに詳しくは基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボントップ紙と、基材の表面に顕色剤層を設け、さらに基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙を重ね合わせて、所定の領域の顕色剤層が発色可能となる複写帳票及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本紙の他に、控えが必要な各種帳票に対して、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票が使用されている。一般的な複写機構として、ノーカーボン用紙は顕色剤が塗工された基材と、カプセル化された染料が塗工された面を対面させ、カプセル塗工面の反対より、圧力を加えることにより、カプセルが破壊されて、カプセル内にあった電子供与性ロイコ染料が、電子受容性顕色剤と反応し、発色する機構となっている。
【0003】
上記ノーカーボン用紙は一般的に、上用紙(トップ紙)、中用紙(ミドル紙)、下用紙(ボトム紙)の3種類があり、その組み合わせにて使用される。(特許文献1参照)上用紙は、基材の下面に発色剤層が設けられており、中用紙は基材の上面に顕色剤層が、基材の下面に発色剤層が設けられており、下用紙は基材の上面に顕色剤層が設けられている。一般的に、ロール状態の中用紙は、発色剤層と顕色剤層が接触しているため、巻き圧が強い場合や、外圧がかかった場合に、カプセルが破壊され電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤面が反応し、発色してしまう問題があった。
【0004】
また、近年、製品の複雑化から、様々な工程を経て製品が製造されることが多くなり、各工程で、上記に説明した巻き取り状で、電子受容性顕色剤層の発色による問題が顕在化している。例えば、発色剤層に接触式の印刷方式で絵柄を形成すると、カプセルが破壊され、デリバリで巻き取る際に、電子供与性ロイコ染料が電子受容性顕色剤層と反応し、発色汚れとなる。
【0005】
従来、ノーカーボン用紙で発色させない技術として、電子受容性顕色剤層に対し、減感剤と呼ばれる電子供与性のインキを印刷し、反応させることにより、電子供与性ロイコ染料が接触しても反応しないようにする技術が知られている。(特許文献2参照)しかし、この場合、一旦、減感剤を印刷すると、元に戻らないため、工程内のみでは発色させたくないが、製品としては発色させたい部分には、使用できない問題があった。
【0006】
また、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票で、下用紙に複写された情報の改ざん等の偽造防止の目的で、下用紙の顕色剤をレーザ照射により、選択的に削り取って、所定形状の複写不能部を形成することが、特許文献3に記載されている。このような顕色剤層をレーザ照射により削り取る方法では、一旦、顕色剤層を削り取ってしまうと、元の発色する状態に戻らないので、上記の工程中の巻取り状で、顕色剤層が発色して汚れる対策としては、採用できないものである。
【特許文献1】特開2006−95700号公報
【特許文献2】実公平2−42464号公報
【特許文献3】特許第3701099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票において、ノーカーボンミドル紙における顕色剤層の発色汚れを防止できる複写帳票を提供し、また複写帳票を製造する工程で、ノーカーボンミドル紙の巻取り状態で、顕色剤層が発色するトラブルを防止できる複写帳票の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、第1の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボントップ紙と、第2の基材の表面に顕色剤層を設け、前記第2の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙Aを、ノーカーボントップ紙の発色剤層と、ノーカーボンミドル紙Aの顕色剤層が接するように重ね合わせた複写帳票において、ノーカーボンミドル紙Aの顕色剤層の上に、レーザ照射により切削除去可能な目止め層が設けられていることを特徴とする複写帳票に関するものである。これにより、ノーカーボンミドル紙における顕色剤層の発色汚れを防止できる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載するノーカーボンミドル紙Aの発色剤層と接するように、第3の基材の表面に顕色剤層を設け、前記第3の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙Bの顕色剤層を重ね合わせた複写帳票で、ノーカーボンミドル紙Bの顕色剤層の上に、レーザ照射により切削除去可能な目止め層が設けられていることを特徴とする複写帳票に関するものである。これにより、複写枚数が増加して、より実用性が向上する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の顕色剤層と前記の目止め層との間に、印刷層を設けたことを特徴とする複写帳票に関するものである。これにより、ノーカーボンミドル紙に、発色剤層と顕色剤層との反応による発色だけでなく、印刷層が施されているので、より情報量が多くなり、実用性が高まる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の複写帳票の製造方法であって、前記の目止め層の所定領域に、レーザを照射して、目止め層を削り取った後に、前記の削り取った領域に対応する発色剤層と顕色剤層との反応により、発色可能に重ね合わせることを特徴とする複写帳票の製造方法に関するものである。これにより、複写帳票を製造する工程で、ノーカーボンミドル紙の巻取り状態で、顕色剤層が発色するトラブルを防止できることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複写帳票によれば、ノーカーボンミドル紙における顕色剤層の発色汚れを防止できる。また、本発明の複写帳票の製造方法によれば、複写帳票を製造する工程で、ノーカーボンミドル紙の巻取り状態で、顕色剤層が発色するトラブルを防止できることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。
ノーカーボントップ紙2、ノーカーボンミドル紙A(3)、ノーカーボンボトム紙4の3枚セットの複写帳票1であり、ノーカーボントップ紙2は第1の基材(6)の裏面に発色剤層7が設けられている。ノーカーボンミドル紙A(3)は第2の基材(8)の表面に顕色剤層9、目止め層10を順に設け、その第1の基材(8)の裏面に発色剤層11を設け、目止め層10は、レーザ照射により、所定の領域が削り取られた切削部18が形成されている。
【0014】
その切削部18では、ノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)側から筆記を行なう、あるいはインパクトプリンターで加圧による印字を行なうと、ノーカーボントップ紙2の発色剤層7に含有する発色剤を封じ込めたマイクロカプセルが破壊して、切削部18で露出した顕色剤層9と反応して発色する。つまり上記のノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)側からの筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボンミドル紙A(3)の切削部18の顕色剤層9が発色して、ノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)に記録された情報が複写される。
【0015】
上記のノーカーボンミドル紙A(3)の下に、第4の基材(12)の表面に顕色剤層13を設けたノーカーボンボトム紙4が配置され、上記のノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)側からの筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボンボトム紙4の顕色剤層13が発色して、ノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)に記録された情報が複写される。
【0016】
また図2は、本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。ノーカーボントップ紙2、ノーカーボンミドル紙A(3)、ノーカーボンミドル紙B(5)、ノーカーボンボトム紙4の4枚セットの複写帳票1であり、図1で示した複写帳票のノーカーボンミドル紙A(3)とノーカーボンボトム紙4との間に、ノーカーボンミドル紙B(5)が追加されて、挿入された形態である。ノーカーボンミドル紙B(5)は第3の基材(14)の表面に、顕色剤層15、目止め層16を順に積層し、第3の基材(14)の裏面に発色剤層17を設けた構成で、その目止め層16には、レーザ照射により、削り取られた切削部19が形成されている。
【0017】
その切削部19では、ノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)側から筆記を行なう、あるいはインパクトプリンターで加圧による印字を行なうと、ノーカーボントップ紙2の発色剤層7に含有する発色剤を封じ込めたマイクロカプセルが破壊して、切削部18で露出した顕色剤層9と反応して発色する。さらに、上記の筆記あるいは印字の圧力により、ノーカーボンミドル紙A(3)の発色剤層11に含有する発色剤を封じ込めたマイクロカプセルが破壊して、切削部19で露出した顕色剤層15と反応して発色する。つまり上記のノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)側からの筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボンミドル紙B(5)の切削部19の顕色剤層15が発色して、ノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)に記録された情報が複写される。
【0018】
上記のノーカーボンミドル紙B(5)の下に、第4の基材(12)の表面に顕色剤層13を設けたノーカーボンボトム紙4が配置され、上記のノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)側からの筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボンボトム紙4の顕色剤層13が発色して、ノーカーボントップ紙2の第1の基材(6)に記録された情報が複写される。
【0019】
図3は、本発明の1実施例を示す複写帳票の概略の断面図であり、図1に示した複写帳票のノーカーボンミドル紙A(3)の顕色剤層9と目止め層10との間に、印刷層50を設け、さらに、ノーカーボンボトム紙4の顕色剤層13の上に、印刷層51を設け、それぞれの印刷層は、複写された発色情報とは別の情報、例えば、記入枠、記入上の注意書きなどを例示することができる。
【0020】
図1〜3に示した複写帳票1は、ノーカーボントップ紙、ノーカーボンミドル紙、ノーカーボンボトム紙が重なる順番を示したものであるが、実際は、それらのノーカーボンの各紙が、糊付け、ホチキス留めなどされて、帳票として各ノーカーボン紙が脱落しないように、丁合されるものである。
【0021】
図4に示すような複写帳票の製造装置60を用いた製造方法により、上記の複写帳票を作製することができる。給紙部42に、基材の表面に顕色剤層、目止め層を順に設け、その基材裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙A(3)が巻取りで取り付けられ、その巻取りからノーカーボンミドル紙A(3)が繰り出されて、レーザ加工装置30でノーカーボンミドル紙A(3)の表面の目止め層に、レーザを照射して、目止め層を削り取って、所定の大きさ、位置で、切削部を形成する。その切削部には、目止め層が削り取られて、下に位置していた顕色剤層が露出した状態になる。その切削部が形成されたノーカーボンミドル紙A(3)が搬送されて、給紙41の巻取りから、ノーカーボントップ紙2が供給されて、ノーカーボンミドル紙A(3)と重なる。その際、ノーカーボントップ紙の発色剤層と、ノーカーボンミドル紙Aの目止め層が接するように重ね合う条件である。
【0022】
上記のノーカーボントップ紙とノーカーボンミドル紙Aとが重なった状態で搬送され、給紙43の巻取りから、ノーカーボンボトム紙4が供給されて、ノーカーボンミドル紙A(3)の発色剤層と、ノーカーボンボトム紙4の顕色剤層とが接するように、両者のノーカーボン紙が重なる。そのノーカーボン紙の3枚が重なり合った条件で、搬送され、シートカット機45により、切断されて、排紙部44に複写帳票が排出されていく。その排出されたものが、本発明の複写帳票である。
【0023】
本発明の複写帳票を構成する各層について、以下に詳細に説明する。
(基材)
ノーカーボン紙のノーカーボントップ紙、ノーカーボンミドル紙、ノーカーボンボトム紙の各基材6、8、12、14としては、顕色剤層を保持し、また発色剤層、目止め層を保持し、複写帳票の取扱い性を維持できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等の紙類、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート等の各種合成樹脂のプラスチックシート、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、あるいは基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(いわゆる合成紙)を、基材として使用することができる。
【0024】
またノーカーボントップ紙の基材の表面には、ドットインパクト記録、手書き等で、印字記録するため、その記録方式に適した用紙が用いられる。例えば、ドットインパクト記録用インキを定着しやすい用紙、筆記性を有する用紙などが挙げられる。基材の厚みは、通常3〜300μm程度であり、本発明においては、取扱い適性、レーザ照射適性等を考慮し、20〜175μm程度のものを用いるのが好ましい。
【0025】
(顕色剤層)
ノーカーボン紙のノーカーボンミドル紙、ノーカーボンボトム紙の各基材表面に顕色剤層が形成されるが、その顕色剤層としては、従来から使用されている電子受容性のフェノール性水酸基あるいはアルコール性の水酸基を有する有機化合物などの顕色剤に、スターチやポリビニルアルコール等のバインダー成分を加え、必要に応じて、溶媒を加え、調整した塗液を、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター等の通常の塗布装置にて、基材上に塗布して形成することができる。顕色剤層の塗工量は、乾燥固形分で1〜20g/m2、好ましくは、2〜10g/m2である。顕色剤層の塗液を塗布する以前に、スーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等に通紙して、基材表面を加圧平滑化仕上げすることにより、塗布された顕色剤層の表面も平滑になるので、発色剤による発色濃度が均一になり、好ましい。
【0026】
(発色剤層)
ノーカーボン紙のノーカーボントップ紙、ノーカーボンミドル紙の各基材裏面に発色剤層が形成されるが、その発色剤層としては、例えば、マイクロカプセル中に、上記で説明した顕色剤と接触したときに発色する発色剤がオイルに溶解されて、封入されているマイクロカプセルをバインダー成分に分散させて、形成することができる。本発明で使用する発色剤は、圧力によりカプセルが破れて発色剤オイルがマイクロカプセルの外に出て、顕色剤に移行することにより発色する、感圧性の発色剤である。
【0027】
その発色剤としては、電子供与性のロイコ染料が使用され、例えば、CVL(クリスタルバイオレットラクトン)、BLMB(ベンゾイルロイコメチレンブルー)などの青系発色剤、フルオラン系化合物などの黒系発色剤などが挙げられる。オイルとしては、アルキルナフタレン、ジアリールエタン、アルキル化ビフェニール、水添ターフェニルなどが挙げられる。また感圧性発色剤は、1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。このような発色剤を、界面重合法、インサイチュ法、相分離法、コアセルベーション法等のカプセル化方法で生成した発色剤内包マイクロカプセルに、ポリビニルアルコール、スターチ、天然ゴムラテックス等のバインダー成分、さらに必要に応じてデンプン粉、タルク等のカプセル保護剤、溶媒等を混合して得た塗液を、基材上に塗布して形成される。
【0028】
発色剤層は、上記に説明した材料を含む塗液を、上記顕色剤層の塗布条件と同様にして、基材上に形成することができる。発色剤層の塗工量は、乾燥固形分で1.5〜10g/m2、好ましくは2〜5g/m2である。発色剤層の塗液を塗布する以前に、スーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等に通紙して、基材表面を加圧平滑化仕上げすることも可能である。
【0029】
(目止め層)
本発明の複写帳票におけるノーカーボンミドル紙の顕色剤層の上に、目止め層を設けることが必須である。ノーカーボンミドル紙が製造工程中の巻取り状態で、巻き圧が強い場合や、外圧がかかった場合に、その目止め層は、発色剤層のカプセルが破壊されて、オイルに溶解した発色剤が、顕色剤層に浸透、移行して、顕色剤と反応して発色してしまうことを防止するものである。したがって、目止め層は、オイルに溶解した発色剤が、顕色剤層に浸透、移行しないように、均質な所定の厚さを有した膜であれば、目止め層を構成する材料は、限定されるものでない。
【0030】
例えば、ポリビニルアルコール、澱粉等の水溶性高分子を主成分とする材料で構成する、あるいは熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂により、加熱や電子線照射により、それらの樹脂を硬化させて、目止め層を形成することができる。上記の中でも紫外線硬化性樹脂を主成分とした目止め層を用いることが、実用し易く、好ましい。目止め層は、従来公知のグラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法により、顕色剤層の上に、乾燥状態で塗布量が2〜20g/m2程度で、形成することができる。
【0031】
(複写帳票の製造方法)
以下に、本発明の複写帳票の製造方法について、説明する。 本発明の複写帳票の製造方法は、第2の基材の表面に顕色剤層、目止め層を順に設け、前記第2の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙と、第1の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボントップ紙とを、ノーカーボントップ紙の発色剤層と、ノーカーボンミドル紙の顕色剤層が接するように重ね合わせた複写帳票の製造方法において、前記のノーカーボンミドル紙の目止め層の所定領域に、レーザを照射して、目止め層を削り取った後に、前記の削り取った領域に対応する発色剤層と顕色剤層との反応により、発色可能に重ね合わせることを特徴とするものである。つまり、ノーカーボントップ紙と、ノーカーボンボトム紙とを重ね合わせる際、目止め層/顕色剤層/第2の基材/発色剤層の積層条件のノーカーボンミドル紙の目止め層に、レーザを照射して、目止め層を削り取った後に、ノーカーボントップ紙の発色剤層と、ノーカーボンミドル紙の顕色剤層が接するように重ね合わせることを特徴とするものである。
【0032】
本発明におけるレーザ照射により目止め層を切削する手段は、すなわちレーザ加工手段は、レーザ光として、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、ルビーレーザなどを用い、特にYAGレーザは、波長が短く、微小なスポットに集光できるため、より微細な加工が可能であり、好ましく用いられる。本発明で、レーザ照射とレーザ光照射の用語を用いているが、「レーザ」と「レーザ光」は同じ意味であり、両者の用語の違いはない。
【0033】
本発明で使用するレーザ加工手段の例を、説明すると、まず、レンズによりレーザ光を集光して、ノーカーボンミドル紙の目止め層の面へ照射する。その際に、レーザ光の照射時間または、レーザ出力値(レーザ光の強度×照射面積)を変化させることにより、削り取る深さ、すなわち切削する深さを調整することができる。本発明では、レーザ照射により、目止め層を削り取り、図1、2で示すように、切削部には目止め層が無い状態とし、かつ顕色剤層を残存させる状態とする。よって、上記の削り取る深さは、目止め層の厚さに一致させるものである。レーザ光の強度として、例えば、100W〜600Wで調整でき、また照射面積は直径で50μm〜800μmで使用することができる。このように、簡単に、精度が高く、再現性良く、加工部分に非接触で、目止め層の切削加工ができる。
【0034】
レーザ照射面積を変化する例として、照射面積を大きくする場合、以下のようにして行なうことができる。図5に示すような装置を使用して行なえ、レーザ光源31と、該レーザ光源31から出射されるレーザ光32の光束と同軸に配設されたレンズ33と、該レンズ33の光軸34上に配設されたレーザ光32を光軸34から離す方向に反射する第1の反射体35aと第1の反射体35aによって反射されるレーザ光32をノーカーボンミドル紙の目止め層面36に照射するように配設された第2の反射体35bとから構成された光路変換部35から構成されている。
【0035】
レーザ光源31から出射されるレーザ光32は、エネルギー密度を集中させるためにレンズ33で集光され、第1の反射体35a及び第2の反射体35bにより反射され、レンズ33の焦点40の位置において、レーザ光32が最も細くなり、再び広がり、照射面である目止め層面36に照射される。
【0036】
第1の反射体35a及び第2の反射体35bとから構成された光路変換部35は、レンズ33の光軸34を回転軸とし回転する。それにより、照射面36に照射されたレーザ光32が光軸34を中心に走査され、レーザ光の照射面の照射領域が拡大され、結果、照射面積を大きくすることができる。
【0037】
また、レーザ照射により、切削された目止め層のカスは、ブロア装置に接続したダクトなどを利用して、吸引されて外に排出することができる。このように、ノーカーボンミドル紙などの表面に、切削された目止め層の成分が転移付着することがなく、さらに加工部分に応力がかからず、バリや歪みが生じない。上記のレーザ加工手段は、約0.9〜11μmの赤外線領域のレーザ光線を使用することが好ましく、レーザ光を照射された部分は、加熱されることになる。レーザ光を照射された部分は、局所的に加熱され、その部分の融点を越えた状態の液相時に、その部分を吹き飛ばすことにより切削され、レーザ加工が行われる。
【0038】
レーザ加工装置は、図6に、その一例を示すように、レーザヘッド21と加工光学系(レンズ)22と、レーザ電源23とから構成されるレーザ発振器20、被加工物であるノーカーボンミドル紙3、5を搭載し、水平面内(XY平面内)に移動可能なXYテーブル24、レーザヘッド21と加工光学系(レンズ)22を上下方向(Z軸方向)に移動させるZテーブル25、XYテーブル24の水平面内の移動動作とZテーブル25の上下方向の移動動作とレーザ発振器20の発振動作とを自動または手動で制御するメインコントローラ26を備えたレーザ加工装置30である。
【0039】
上記のようなレーザ加工装置のメインコントローラの制御により、目止め層の切削する量、さらに切削する位置を変化させて、図1〜3に示すような切削部18、19を形成できる。上記の切削する位置を変化するには、例えば、上記で説明した装置の光路変換部35の位置を調整すればよい。また、図6には示さなかったが、ノーカーボンミドル紙に検知マークを設け、その検知マークをレーザ照射の開始検知信号として利用し、さらに加工する位置を移動して調整するために、ノーカーボンミドル紙の搬送を制御するための手段を併用することが好ましい。特に、ノーカーボンミドル紙が枚葉のシートではなく、長尺の連続シートの場合、該連続シートにレーザ照射を連続的に行なう際、レーザヘッドの下のノーカーボンミドル紙を設置させる水平台で、加工後のノーカーボンミドル紙を搬送して、次の加工対象のノーカーボンミドル紙を水平台の加工位置に用意できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。
【図3】本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す複写帳票の製造方法を示す概略図である。
【図5】レーザ照射面積を大きくする場合に、使用する装置を説明する概略図である。
【図6】レーザ加工装置の1例である構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1 複写帳票
2 ノーカーボントップ紙
3 ノーカーボンミドル紙A
4 ノーカーボンボトム紙
5 ノーカーボンミドル紙B
6 第1の基材
7、11、17 発色剤層
8 第2の基材
9、13、15 顕色剤層
10、16 目止め層
12 第4の基材
14 第3の基材
18、19 切削部
20 レーザ発振器
21 レーザヘッド
22 加工光学系(レンズ)
23 レーザ電源
24 XYテーブル
25 Zテーブル
26 メインコントローラ
30 レーザ加工装置
31 レーザ光源
32 レーザ光
33 レンズ
34 光軸
35a 第1の反射体
35b 第2の反射体
35 光路変換部
36 粘着剤層面(照射面)
40 焦点
41、42、43 給紙部
44 排紙部
45 シートカット機
50、51 印刷層
60 複写帳票の製造装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボントップ紙と、第2の基材の表面に顕色剤層を設け、前記第2の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙Aを、ノーカーボントップ紙の発色剤層と、ノーカーボンミドル紙Aの顕色剤層が接するように重ね合わせた複写帳票において、ノーカーボンミドル紙Aの顕色剤層の上に、レーザ照射により切削除去可能な目止め層が設けられていることを特徴とする複写帳票。
【請求項2】
前記のノーカーボンミドル紙Aの発色剤層と接するように、第3の基材の表面に顕色剤層を設け、前記第3の基材の裏面に発色剤層を設けたノーカーボンミドル紙Bの顕色剤層を重ね合わせた複写帳票で、ノーカーボンミドル紙Bの顕色剤層の上に、レーザ照射により切削除去可能な目止め層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載する複写帳票。
【請求項3】
前記の顕色剤層と前記の目止め層との間に、印刷層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載する複写帳票。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の複写帳票の製造方法であって、前記の目止め層の所定領域に、レーザを照射して、目止め層を削り取った後に、前記の削り取った領域に対応する発色剤層と顕色剤層との反応により、発色可能に重ね合わせることを特徴とする複写帳票の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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