説明

複写帳票及びその製造方法

【課題】 ノーカーボン用紙を用いた複写帳票において、発色剤層の任意の位置で、発色する色調を適宜変化させることができ、多色の発色を可能とする複写帳票を提供し、またその複写帳票を容易に製造することが可能となる複写帳票の製造方法を提供する。
【解決手段】 基材4の裏面に第1の発色剤層6、第1の目止め層7、第2の発色剤層8を順に設けたノーカーボン上用紙2と、基材5の表面に顕色剤層11を設けたノーカーボン下用紙3を、ノーカーボン上用紙2の第2の発色剤層8と、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11が接するように重ね合わせた複写帳票1において、第1の目止め層7及び第2の発色剤層8が、レーザ照射により切削除去可能であることを特徴とする複写帳票1の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票に関し、さらに詳しくは基材の裏面に第1の発色剤層、第1の目止め層、第2の発色剤層を順に設けたノーカーボン上用紙と、基材の表面に顕色剤層を設けたノーカーボン下用紙を、重ね合わせて、所定の領域の顕色剤層が多色の発色が可能となる複写帳票及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本紙の他に、控えが必要な各種帳票に対して、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票が使用されている。一般的な複写機構として、ノーカーボン用紙は顕色剤が塗工された基材と、カプセル化された染料が塗工された面を対面させ、カプセル塗工面の反対より、圧力を加えることにより、カプセルが破壊されて、カプセル内にあった電子供与性ロイコ染料が、電子受容性顕色剤と反応し、発色する機構となっている。
【0003】
上記ノーカーボン用紙は一般的に、上用紙(トップ紙)、中用紙(ミドル紙)、下用紙(ボトム紙)の3種類があり、その組み合わせにて使用される。(特許文献1参照)上用紙は、基材の下面に発色剤層が設けられており、中用紙は基材の上面に顕色剤層が、基材の下面に発色剤層が設けられており、下用紙は基材の上面に顕色剤層が設けられている。一般的に、上記の顕色剤層で発色する色相はミドル紙あるいはボトム紙の単位で、1色のものである。
【0004】
ノーカーボン用紙を用いた帳票類として、例えば、ノーカーボントップ紙の発色剤層と、ノーカーボンミドル紙の発色剤層の発色剤を、異なる色で発色するものにする、また一つの発色剤層を、異なる色の発色剤を混合したものから形成することが、特許文献2に記載されている。また、ノーカーボン用紙の発色剤層(発色剤内包マイクロカプセル層)を、発色色調の異なる発色剤層の領域で区分する(塗り分ける)ことが、特許文献3に記載されている。
【0005】
しかし、上記のいずれのものは、ノーカーボン用紙の発色する色調を多種にすることができるが、予め決められた条件(固定条件)の色相で発色するもので、発色剤層の任意の位置で、発色する色調を適宜変化させることができないものである。多色の複写帳票として、使用する制限が加わり、実用性に欠ける問題があった。
【0006】
また、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票で上用紙の発色剤マイクロカプセル層を、レーザ照射により、削り取られた所定形状の複写不能部が施されることが、特許文献4に記載されている。このような発色剤マイクロカプセル層をレーザ照射により削り取る方法では、複写帳票の多色の発色を実現できるものではない。
【特許文献1】特開2006−95700号公報
【特許文献2】実開昭62−43772号公報
【特許文献3】特開平6−183182号公報
【特許文献4】特許第3701098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、ノーカーボン用紙を用いた複写帳票において、発色剤層の任意の位置で、発色する色調を適宜変化させることができ、多色の発色を可能とする複写帳票を提供し、またその複写帳票を容易に製造することが可能となる複写帳票の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、基材の裏面に第1の発色剤層、第1の目止め層、第2の発色剤層を順に設けたノーカーボン上用紙と、基材の表面に顕色剤層を設けたノーカーボン下用紙を、ノーカーボン上用紙の第2の発色剤層と、ノーカーボン下用紙の顕色剤層が接するように重ね合わせた複写帳票において、第1の目止め層及び第2の発色剤層が、レーザ照射により切削除去可能であることを特徴とする複写帳票に関するものである。これにより、本発明の複写帳票は、ノーカーボン下用紙に、第1の発色剤層による発色と、第2の発色剤層による2色の発色が可能となる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載する第2の発色剤層の上に、第2の目止め層、第3の発色剤層を順に設け、第2の目止め層及び第3の発色剤層が、レーザ照射により切削除去可能であることを特徴とする請求項1に記載する複写帳票に関するものである。これにより、上記の複写帳票は、ノーカーボン下用紙に、第1の発色剤層による発色と、第2の発色剤層による発色、さらに第3の発色剤層による発色の3色の複写による発色が可能となり、より多色が実現でき、より実用性が向上する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の複写帳票の製造方法であって、前記のノーカーボン上用紙の基材の裏面における第2の発色剤層、あるいは第3の発色剤層の所定領域に、レーザを照射して、第1の目止め層と第2の発色剤層、及び/または第2の目止め層と第3の発色剤層を削り取った後に、第1の発色剤層、第2の発色剤層による2色、あるいは第1の発色剤層、第2の発色剤層及び第3の発色剤層による3色が、発色可能に、ノーカーボン上用紙とノーカーボン下用紙を重ね合わせることを特徴とする複写帳票の製造方法に関するものである。この製造方法により、第1の発色剤層による発色と、第2の発色剤層による発色の2色が実現でき、あるいは第1の発色剤層、第2の発色剤層、第3の発色剤層による3色が、発色可能となる複写帳票を容易に作製できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複写帳票によれば、発色剤層の任意の位置で、発色する色調を適宜変化させることができ、多色の発色が可能となる。また、本発明の複写帳票の製造方法によれば、容易に上記の複写帳票を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。ノーカーボント上用紙2と、ノーカーボン下用紙3の2枚セットの複写帳票1であり、ノーカーボン上用紙2は基材4の裏面に第1の発色剤層6、第1の目止め層7、第2の発色剤層8が順に設けていて、領域Aの部分で、第1の目止め層7及び第2の発色剤層8は、レーザ照射により削り取られた切削部12を有する。また領域Bの部分で、第2の発色剤層8が、レーザ照射により削り取られた切削部12を有する。また領域Cの部分で、第1の目止め層7及び第2の発色剤層8は、レーザ照射により削り取られた切削部12を有する。さらに、領域Dの部分は、レーザ照射を行なわない。
【0013】
上記の部分的にレーザ照射による切削部を形成したノーカーボン上用紙2と、基材5の上に顕色剤層11を設けたノーカーボン下用紙3とを、ノーカーボン上用紙2の第2の発色剤層8と、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11が接するように重ね合わせた複写帳票1である。この複写帳票1では、領域Aと領域Cで、ノーカーボン上用紙2側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、第1の発色剤層による発色(第1の発色)が顕れ、ノーカーボン上用紙2の基材4に記録された情報が複写される。それは、上記のように、領域Aと領域Cで第1の目止め層7及び第2の発色剤層8が、レーザ照射により削り取られて、第1の発色剤層6が露出して、顕色剤層11と反応して発色するからである。
【0014】
また、領域Bでは、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、発色は生じない。それは、上記のように、領域Bで第2の発色剤層8のみが、レーザ照射により削り取られて、第1の目止め層7が露出して、第1の発色剤層6と顕色剤層11と反応しないからである。さらに、領域Dでは、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、第2の発色剤層による発色(第2の発色)が顕れ、ノーカーボン上用紙2の基材4に記録された情報が複写される。それは、上記のように、領域Dではレーザ照射がされないので、全く削り取られることなく、元の状態のままで、第2の発色剤層8と、顕色剤層11と反応して発色するからである。このように、図1の複写帳票1は、第1の発色と第2の発色による2色の発色と、発色しない部分(未発色)を具現するものである。
【0015】
また図2は、本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。ノーカーボント上用紙2と、ノーカーボン下用紙3の2枚セットの複写帳票1であり、ノーカーボン上用紙2は基材4の裏面に第1の発色剤層6、第1の目止め層7、第2の発色剤層8、第2の目止め層9、第3の発色剤層10が順に設けていて、領域Eの部分で、第1の目止め層7、第2の発色剤層8、第2の目止め層9、第3の発色剤層10の積層部分は、レーザ照射により削り取られた切削部13を有する。また領域Fの部分は、レーザ照射がされないので、全く削り取られていない。領域G及び領域Iの部分では、第2の目止め層9及び第3の発色剤層10が、レーザ照射により削り取られた切削部13を有する。また領域Hの部分で、第3の発色剤層10は、レーザ照射により削り取られた切削部13を有する。
【0016】
上記の部分的にレーザ照射による切削部を形成したノーカーボン上用紙2と、基材5の上に顕色剤層11を設けたノーカーボン下用紙3とを、ノーカーボン上用紙2の第3の発色剤層10と、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11が接するように重ね合わせた複写帳票1である。この複写帳票1では、領域Eで、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、第1の発色剤層による発色(第1の発色)が顕れ、ノーカーボン上用紙2の基材4に記録された情報が複写される。それは、上記のように、領域Eで第1の目止め層7、第2の発色剤層8、第2の目止め層9及び第3の発色剤層10が、レーザ照射により削り取られて、第1の発色剤層6が露出して、顕色剤層11と反応して発色するからである。
【0017】
領域Fでは、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、第3の発色剤層による発色(第3の発色)が顕れ、ノーカーボン上用紙2の基材4に記録された情報が複写される。それは、上記のように、領域Fではレーザ照射がされないので、全く削り取られることなく、元の状態のままで、第3の発色剤層10と、顕色剤層11と反応して発色するからである。領域G及び領域Iで、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、第2の発色剤層による発色(第2の発色)が顕れ、ノーカーボン上用紙2の基材4に記録された情報が複写される。それは、上記のように、領域G及び領域Iで第2の目止め層9及び第3の発色剤層10が、レーザ照射により削り取られて、第2の発色剤層8が露出して、顕色剤層11と反応して発色するからである。
【0018】
また領域Hでは、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字により、ノーカーボン下用紙3の顕色剤層11で、発色は生じない。それは、上記のように、領域Hで第3の発色剤層10のみが、レーザ照射により削り取られて、第2の目止め層9が露出して、第1の発色剤層6及び第2の発色層8が、顕色剤層11と反応しないからである。このように、図2の複写帳票1は、第1の発色、第2の発色及び第3の発色による3色の発色と、発色しない部分(未発色)を具現するものである。
【0019】
図1、2では図示しなかったが,ノーカーボン上用紙、ノーカーボン下用紙の表面に、記入枠、記入上の注意書き、宣伝広告の文書や画像などの印刷を施しておくことができる。また、レーザ照射のための検知マークを上記の用紙表面に印刷して、上記の第1の発色、第2の発色、第3の発色による発色箇所と、発色しない箇所(未発色)の位置を正確に合わせることが好ましい。また、図示したものに限らず、例えば、ノーカーボント上用紙2と、ノーカーボン下用紙3の2枚セットの複写帳票を示したが、基材の一方の面に顕色剤層を設け、かつ該基材の他方の面に、発色剤層を設けたノーカーボン中用紙を、ノーカーボン上用紙と、ノーカーボン下用紙との間に、挿入して、3枚以上がセットした複写帳票とすることができる。尚、上記のノーカーボン中用紙は、特許請求の範囲で規定したノーカーボン下用紙の要件を満足させることができ、ノーカーボン中用紙においても、多色の発色が可能となる。
【0020】
図1、2に示した複写帳票1は、ノーカーボン上用紙、ノーカーボン下用紙が重なる順番を示したものであるが、実際は、それらのノーカーボンの各紙が、糊付け、ホチキス留めなどされて、帳票として各ノーカーボン紙が脱落しないように、丁合されるものである。
【0021】
上記のレーザ照射のための検知マークに関し、該マークを読み取り、発色剤層、目止め層の所定領域に、位置を合わせて、レーザを照射して、発色剤層、目止め層を削り取って、切削部を形成する。この検知マークの形状や色等の形態は、検知器によって検知可能であればよく、限定されるものではない。形状では、例えば、四角形でも、あるいは丸形やバーコードや、十字線等が挙げられる。
【0022】
図3に検知マークの1実施例を平面図で、示した。4つの検知マーク52、53、54、55を読み取って、それらのマークを四隅にして、発色剤層、目止め層における切削部12(13)を形成することができる。検知マークの色は、検知器で検知可能であればよく、例えば光透過型検知器であれば、隠蔽性の高い銀色、黒色等が挙げられ、光反射型検知器であれば、光反射性の高い金属光沢の色調や黒色等が挙げられる。但し、第1の発色箇所、第2の発色箇所、第3の発色による発色箇所を区分けして、レーザ照射の箇所及びレーザ照射する強度を指定して、決められた位置で指定の発色をさせるには、第1の発色箇所、第2の発色箇所、第3の発色箇所毎に、異なる形状、または異なる色の検知マークを形成することが好ましい。
【0023】
検知器は、発光素子から発せられた光が、ノーカーボン紙に設けられた検知マークによって反射し、その反射光を受光素子で検知することによって、検知マークの位置が検知される。このような検知マークを光反射型センサーで検知できるが、それに限定されず、ノーカーボン紙の一方の側に有する発光素子から、検知マークに対して光を発して、その光の透過光をノーカーボン紙の他方の側に有する受光素子で検知する、透過型センサーを利用することも可能である。
【0024】
上記の検知マークや、地紋、パターン等、任意の文字や画像等を、グラビア印刷等の凹版印刷、オフセット方式等の平版印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等で、ノーカーボン紙の表面に、印刷して形成することができる。
【0025】
図4に示すような複写帳票の製造装置60を用いた製造方法により、上記の複写帳票を作製することができる。給紙部42に、基材の裏面に第1の発色剤層、第1の目止め層、第2の発色剤層を順に設けたノーカーボン上用紙2が巻取りで取り付けられ、その巻取りからノーカーボン上用紙2が繰り出されて、そのノーカーボン上用紙3の表面に有する検知マークを、検知器43にて読み取り、位置合わせを行なって、レーザ加工装置30でノーカーボン上用紙2の裏面の第2の発色剤層に、レーザを照射して、第2の発色剤層、第1の目止め層を削り取って、所定の大きさ、位置で、切削部を形成する。(切削部は図1に示すように形成した。)
【0026】
図示はしていないが、検知器43にて検出したマークの信号を利用して、コントローラを経由して、レーザ加工装置30で第2の発色剤層の所定領域に、位置を合わせて、レーザ照射する。これにより、第2の発色剤層や第1の目止め層の所定領域が、切削削除される。その切削部には、第2の発色剤層、第1の目止め層が削り取られて、下に位置していた第1の発色剤層、あるいは第1の目止め層が露出した状態になる。その切削部が形成されたノーカーボン上用紙2が搬送されて、給紙41の巻取りから、基材の表面に顕色剤層を設けたノーカーボン下用紙3が供給されて、ノーカーボン上用紙2と重なる。その際、ノーカーボン上用紙の発色剤層側と、ノーカーボン下用紙の顕色剤層が接するように重ね合う条件である。
【0027】
上記のノーカーボン上用紙とノーカーボン下用紙とが重なった状態で搬送され、シートカット機45により、切断されて、排紙部44に複写帳票が排出されていく。その排出されたものが、本発明の複写帳票である。
【0028】
本発明の複写帳票を構成する各層について、以下に詳細に説明する。
(基材)
ノーカーボン紙のノーカーボン上用紙、ノーカーボン下用紙の各基材4、5としては、顕色剤層を保持し、また発色剤層、目止め層を保持し、複写帳票の取扱い性を維持できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等の紙類、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート等の各種合成樹脂のプラスチックシート、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、あるいは基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(いわゆる合成紙)を、基材として使用することができる。
【0029】
またノーカーボン上用紙の基材の表面には、ドットインパクト記録、手書き等で、印字記録するため、その記録方式に適した用紙が用いられる。例えば、ドットインパクト記録用インキを定着しやすい用紙、筆記性を有する用紙などが挙げられる。基材の厚みは、通常3〜300μm程度であり、本発明においては、取扱い適性、レーザ照射適性等を考慮し、20〜175μm程度のものを用いるのが好ましい。
【0030】
(顕色剤層)
ノーカーボン紙のノーカーボン下用紙、あるいはノーカーボン中用紙の基材表面に顕色剤層11が形成されるが、その顕色剤層としては、従来から使用されている電子受容性のフェノール性水酸基あるいはアルコール性の水酸基を有する有機化合物などの顕色剤に、スターチやポリビニルアルコール等のバインダー成分を加え、必要に応じて、溶媒を加え、調整した塗液を、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター等の通常の塗布装置にて、基材上に塗布して形成することができる。顕色剤層の塗工量は、乾燥固形分で1〜20g/m2、好ましくは、2〜10g/m2である。顕色剤層の塗液を塗布する以前に、スーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等に通紙して、基材表面を加圧平滑化仕上げすることにより、塗布された顕色剤層の表面も平滑になるので、発色剤による発色濃度が均一になり、好ましい。
【0031】
(発色剤層)
ノーカーボン紙のノーカーボン上用紙、また必要に応じてノーカーボン下用紙の各基材裏面に発色剤層が形成される。ノーカーボン下用紙の基材裏面に発色剤層を形成すれば、ノーカーボン中用紙として、ノーカーボン上用紙とノーカーボン下用紙の間に挿入して、3枚以上の複写帳票にすることができる。その発色剤層としては、例えば、マイクロカプセル中に、上記で説明した顕色剤と接触したときに発色する発色剤がオイルに溶解されて、封入されているマイクロカプセルをバインダー成分に分散させて、形成することができる。本発明で使用する発色剤は、圧力によりカプセルが破れて発色剤オイルがマイクロカプセルの外に出て、顕色剤に移行することにより発色する、感圧性の発色剤である。
【0032】
その発色剤としては、電子供与性のロイコ染料が使用され、例えば、CVL(クリスタルバイオレットラクトン)、BLMB(ベンゾイルロイコメチレンブルー)などの青系発色剤、フルオラン系化合物などの黒系発色剤などが挙げられる。オイルとしては、アルキルナフタレン、ジアリールエタン、アルキル化ビフェニール、水添ターフェニルなどが挙げられる。また感圧性発色剤は、1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。このような発色剤を、界面重合法、インサイチュ法、相分離法、コアセルベーション法等のカプセル化方法で生成した発色剤内包マイクロカプセルに、ポリビニルアルコール、スターチ、天然ゴムラテックス等のバインダー成分、さらに必要に応じてデンプン粉、タルク等のカプセル保護剤、溶媒等を混合して得た塗液を、基材上に塗布して形成される。
【0033】
本発明のノーカーボン上用紙は、第1の発色剤層と第2の発色層を、第1の目止め層を間にして、基材裏面に有する構成であり、また上記第2の発色層の上に、第2の目止め層、第3の発色剤層を順に設けた構成をとることができ、その第1、第2、第3の各発色剤層に用いられる発色剤は、互いに異なる色調を有したものが使用される。例えば、第1の発色剤層による発色(第1の発色)を赤色とし、第2の発色剤層による発色(第2の発色)を青色とし、第3の発色剤層による発色(第3の発色)を黒色とすることが挙げられ、適宜それらの発色色調は適宜変更することができる。
【0034】
発色剤層は、上記に説明した材料を含む塗液を、上記顕色剤層の塗布条件と同様にして、基材上に形成することができる。発色剤層の塗工量は、乾燥固形分で1.5〜10g/m2、好ましくは2〜5g/m2である。発色剤層の塗液を塗布する以前に、スーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等に通紙して、基材表面を加圧平滑化仕上げすることも可能である。
【0035】
(目止め層)
本発明の複写帳票におけるノーカーボン上用紙の第1の発色剤層、あるいは第2の発色剤層などの上に、目止め層を設ける。第1の目止め層、第2の目止め層と、形成する位置関係が異なるので、区別した名称にしているが、いずれの目止め層も構成する材料、厚さは同様に選択することができる。ノーカーボン上用紙における第1の発色剤層と第2の発色剤層、必要に応じて更に第3の発色剤層の各発色剤層が混ざらないように、目止め層が機能している。図1、2で示したように,ノーカーボン上用紙の基材裏面側で、レーザ照射により切削除去されて、露出した各発色剤層に対応する発色の色調が、顕色剤層で複写された画像として再現されるようにしている。
【0036】
図1を参照して説明すると、領域Bでは、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字すると、第1の目止め層7を設けているので、第1の発色剤層6のカプセルが破壊されて、オイルに溶解した発色剤が、顕色剤層11に浸透、移行して、顕色剤と反応して発色してしまうことを防止できるものである。また、領域Dでは、ノーカーボン上用紙2の基材4側から筆記、あるいは加圧印字すると、第1の目止め層7を設けているので、第1の発色剤層6のカプセルが破壊されて、オイルに溶解した発色剤が、顕色剤層11に浸透、移行して、顕色剤と反応して発色してしまうことを防止して、第2の発色剤層8のカプセルが破壊されて、オイルに溶解した発色剤が、顕色剤層11に浸透、移行して、顕色剤と反応して、第2の発色剤層による特有の色で発色できるものである。したがって、目止め層は、オイルに溶解した発色剤が、顕色剤層に浸透、移行しないように、均質な所定の厚さを有した膜であれば、目止め層を構成する材料は、限定されるものでない。
【0037】
例えば、ポリビニルアルコール、澱粉等の水溶性高分子を主成分とする材料で構成する、あるいは熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂により、加熱や電子線照射により、それらの樹脂を硬化させて、目止め層を形成することができる。上記の中でも紫外線硬化性樹脂を主成分とした目止め層を用いることが、実用し易く、好ましい。目止め層は、従来公知のグラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法により、顕色剤層の上に、乾燥状態で塗布量が2〜20g/m2程度で、形成することができる。
【0038】
(複写帳票の製造方法)
以下に、本発明の複写帳票の製造方法について、説明する。本発明の複写帳票の製造方法は、基材の裏面に第1の発色剤層、第1の目止め層、第2の発色剤層を順に設けたノーカーボン上用紙と、基材の表面に顕色剤層を設けたノーカーボン下用紙を、ノーカーボン上用紙の第2の発色剤層と、ノーカーボン下用紙の顕色剤層が接するように重ね合わせた複写帳票の製造方法において、前記のノーカーボン上用紙の基材の裏面における第2の発色剤層、あるいは第3の発色剤層の所定領域に、レーザを照射して、第1の目止め層と第2の発色剤層、及び/または第2の目止め層と第3の発色剤層を削り取った後に、第1の発色剤層、第2の発色剤層による2色、あるいは第1の発色剤層、第2の発色剤層及び第3の発色剤層による3色が、発色可能に、ノーカーボン上用紙とノーカーボン下用紙を重ね合わせることを特徴とするものである。つまり、ノーカーボン上用紙と、ノーカーボン下用紙とを重ね合わせる際、例えば基材/第1の発色剤層/第1の目止め層/第2の発色剤層の積層条件のノーカーボン上用紙の第2の発色剤層側に、レーザを照射して、第2の発色剤層、第1の目止め層を削り取った後に、露出した発色剤層と、顕色剤層(ノーカーボン下用紙の顕色剤層である)との反応により、発色可能に重ね合わせることを特徴とするものである。
【0039】
本発明におけるレーザ照射により切削する手段は、すなわちレーザ加工手段は、レーザ光として、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、ルビーレーザなどを用い、特にYAGレーザは、波長が短く、微小なスポットに集光できるため、より微細な加工が可能であり、好ましく用いられる。本発明で、レーザ照射とレーザ光照射の用語を用いているが、「レーザ」と「レーザ光」は同じ意味であり、両者の用語の違いはない。
【0040】
本発明で使用するレーザ加工手段の例を、説明すると、まず、レンズによりレーザ光を集光して、ノーカーボン上用紙の発色剤層の面へ照射する。その際に、レーザ光の照射時間または、レーザ出力値(レーザ光の強度×照射面積)を変化させることにより、削り取る深さ、すなわち切削する深さを調整することができる。本発明では、レーザ照射により、発色剤層、目止め層を削り取り、図1、2で示すように、第1の発色剤層、第2の発色剤層、第1ないし第2の目止め層が露出させる状態とする。よって、上記の削り取る深さは、発色剤層、目止め層の厚さに一致させるものである。レーザ光の強度として、例えば、100W〜600Wで調整でき、また照射面積は直径で50μm〜800μmで使用することができる。このように、簡単に、精度が高く、再現性良く、加工部分に非接触で、発色剤層、目止め層の切削加工ができる。
【0041】
レーザ照射面積を変化させる例として、照射面積を大きくする場合、以下のようにして行なうことができる。図5に示すような装置を使用して行なえ、レーザ光源31と、該レーザ光源31から出射されるレーザ光32の光束と同軸に配設されたレンズ33と、該レンズ33の光軸34上に配設されたレーザ光32を光軸34から離す方向に反射する第1の反射体35aと第1の反射体35aによって反射されるレーザ光32をノーカーボン上用紙の発色剤層面36に照射するように配設された第2の反射体35bとから構成された光路変換部35から構成されている。
【0042】
レーザ光源31から出射されるレーザ光32は、エネルギー密度を集中させるためにレンズ33で集光され、第1の反射体35a及び第2の反射体35bにより反射され、レンズ33の焦点40の位置において、レーザ光32が最も細くなり、再び広がり、照射面である発色剤層面36に照射される。
【0043】
第1の反射体35a及び第2の反射体35bとから構成された光路変換部35は、レンズ33の光軸34を回転軸とし回転する。それにより、照射面36に照射されたレーザ光32が光軸34を中心に走査され、レーザ光の照射面の照射領域が拡大され、結果、照射面積を大きくすることができる。
【0044】
また、レーザ照射により、切削された発色剤層(目止め層)のカスは、ブロア装置に接続したダクトなどを利用して、吸引されて外に排出することができる。このように、ノーカーボン上用紙などの表面に、切削された発色剤層などの成分が転移付着することがなく、さらに加工部分に応力がかからず、バリや歪みが生じない。上記のレーザ加工手段は、約0.9〜11μmの赤外線領域のレーザ光線を使用することが好ましく、レーザ光を照射された部分は、加熱されることになる。レーザ光を照射された部分は、局所的に加熱され、その部分の融点を越えた状態の液相時に、その部分を吹き飛ばすことにより切削され、レーザ加工が行われる。
【0045】
レーザ加工装置は、図6に、その一例を示すように、レーザヘッド21と加工光学系(レンズ)22と、レーザ電源23とから構成されるレーザ発振器20、被加工物であるノーカーボン上用紙2を搭載し、水平面内(XY平面内)に移動可能なXYテーブル24、レーザヘッド21と加工光学系(レンズ)22を上下方向(Z軸方向)に移動させるZテーブル25、XYテーブル24の水平面内の移動動作とZテーブル25の上下方向の移動動作とレーザ発振器20の発振動作とを自動または手動で制御するメインコントローラ26を備えたレーザ加工装置30である。
【0046】
上記のようなレーザ加工装置のメインコントローラ及び図示してはいないが、ノーカーボン上用紙2に設けた検知マークを、検知器で読み取った信号を、レーザ加工装置のメインコントローラに送る等して、制御することにより、発色剤層の切削する量、さらに切削する位置を変化させて、図1〜2に示すような切削部12、13を形成できる。上記の切削する位置を変化するには、例えば、上記で説明した装置の光路変換部35の位置を調整すればよい。また、図6には示さなかったが、ノーカーボン上用紙に検知マークを設け、その検知マークをレーザ照射の開始検知信号、あるいは終了検知信号として利用し、さらに加工する位置を移動して調整するために、ノーカーボン上用紙の搬送を制御するための手段を併用することが好ましい。
【0047】
特に、ノーカーボン上用紙が枚葉のシートではなく、長尺の連続シートの場合、該連続シートにレーザ照射を連続的に行なう際、レーザヘッドの下のノーカーボン上用紙を設置させる水平台で、加工後のノーカーボン上用紙を搬送して、次の加工対象のノーカーボン上用紙を水平台の加工位置に移動して用意できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示す複写帳票の断面図である。
【図3】検知マークの1実施例を示す平面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す複写帳票の製造方法を示す概略図である。
【図5】レーザ照射面積を大きくする場合に、使用する装置を説明する概略図である。
【図6】レーザ加工装置の1例である構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 複写帳票
2 ノーカーボン上用紙
3 ノーカーボン下用紙
4、5 基材
6 第1の発色剤層
7 第1の目止め層
8 第2の発色剤層
9 第2の目止め層
10 第3の発色剤層
11 顕色剤層
12、13 切削部
20 レーザ発振器
21 レーザヘッド
22 加工光学系(レンズ)
23 レーザ電源
24 XYテーブル
25 Zテーブル
26 メインコントローラ
30 レーザ加工装置
31 レーザ光源
32 レーザ光
33 レンズ
34 光軸
35a 第1の反射体
35b 第2の反射体
35 光路変換部
36 発色剤層面(照射面)
40 焦点
41、42 給紙部
43 検知器
44 排紙部
45 シートカット機
52、53、54、55 検知マーク
60 複写帳票の製造装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の裏面に第1の発色剤層、第1の目止め層、第2の発色剤層を順に設けたノーカーボン上用紙と、基材の表面に顕色剤層を設けたノーカーボン下用紙を、ノーカーボン上用紙の第2の発色剤層と、ノーカーボン下用紙の顕色剤層が接するように重ね合わせた複写帳票において、第1の目止め層及び第2の発色剤層が、レーザ照射により切削除去可能であることを特徴とする複写帳票。
【請求項2】
前記の第2の発色剤層の上に、第2の目止め層、第3の発色剤層を順に設け、第2の目止め層及び第3の発色剤層が、レーザ照射により切削除去可能であることを特徴とする請求項1に記載する複写帳票。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複写帳票の製造方法であって、前記のノーカーボン上用紙の基材の裏面における第2の発色剤層、あるいは第3の発色剤層の所定領域に、レーザを照射して、第1の目止め層と第2の発色剤層、及び/または第2の目止め層と第3の発色剤層を削り取った後に、第1の発色剤層、第2の発色剤層による2色、あるいは第1の発色剤層、第2の発色剤層及び第3の発色剤層による3色が、発色可能に、ノーカーボン上用紙とノーカーボン下用紙を重ね合わせることを特徴とする複写帳票の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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