説明

複合ケーブル

【課題】 効率よく接続作業を実行させ得る複合ケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の複合ケーブル1は、互いに平行に配される複数本の光ファイバ11と、複数本の光ファイバ11を被覆する充実の被覆層12と、被覆層12の周囲に配置される緩衝材13と、複数本の光ファイバ11と平行に配され、少なくとも2本の電線を撚り合わせた撚り線21と、前記複数本の光ファイバ11と緩衝材13及び撚り線21を囲う筒状のシース30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく接続作業を実行させ得る複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の伝送を行う光ファイバと、電気信号や電力の伝送を行う電線とが組み合わされた複合ケーブルが知られている。このような複合ケーブルは、産業機械や、映像機器等に用いられており、例えば、複合ケーブルが映像機器に用いられる場合、画像情報等の大容量の信号が光ファイバにより伝送され、音声やテキスト情報等が電線により伝送される。
【0003】
このような複合ケーブルとして、下記特許文献1に記載されたものがある。この複合ケーブルでは、導体上に絶縁被覆を有する電線を撚り合わせた撚線と、複数本の光ファイバとが互いに平行に配置され、それら電線及び光ファイバが充実の被覆部材によって一括して被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−272417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1の複合ケーブルにおける撚線は、複数本の電線を撚り合わせた状態で充実の被覆部材により被覆されているため、電線間に充実の被覆部材が入り込んでいる場合が多い。したがって、複合ケーブルにおける端部の被覆部材から電線を露出させて端子等に接続する際に、電線をばらすことが困難であり、作業効率が悪くなるといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、効率よく接続作業を実行させ得る複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の複合ケーブルは、互いに平行に配される複数本の光ファイバと、前記複数本の光ファイバを被覆する充実の被覆層と、前記被覆層の周囲に配置される緩衝材と、前記複数本の光ファイバと平行に配され、少なくとも2本の電線を撚り合わせた撚り線と、前記緩衝材及び前記撚り線を囲う筒状のシースとを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような複合ケーブルによれば、筒状のシース内部の空間に撚り線が配置しているため、複合ケーブルにおける端部のシースから撚り線を露出する際に、その撚り線をばらし易くすることができる。
また、シース内部の空間に、電線よりも剛性の弱い複数本の光ファイバも配置することになるが、これら光ファイバは、互いに平行に配された状態で充実の被覆層により被覆されている。このため、各光ファイバは、シース内部の空間を充実にしなくても、互いの位置関係を維持しながら保護された状態で、シース内部の空間に配置することになる。したがって、各光ファイバをばらすことなく1つのユニットとして、複合ケーブルにおける端部のシースから簡易に露出させることができる。
さらに、被覆層の周囲には緩衝材が配置されているため、光ファイバの強度を高めることができる。このような緩衝材は、シース内部の空間に配置しているため、当該空間が充実である場合に比べてより一段と簡易に、緩衝材をシースから露出させることができる。
こうして、効率よく接続作業を実行させ得る複合ケーブルが実現される。
なお、光ファイバを撚り合わせていないため、その撚り合わせに起因する歪みを回避できる分だけ光ファイバの伝送損失を低減できる。また、複数本の光ファイバは互いに平行に配され、撚り線は光ファイバと平行に配されているため、撚り線と光ファイバとの高さ方向のばらつきを低減することができ、同一面上に配列される端子等に対して容易に接続することが可能となる。
【0009】
また、前記緩衝材は、前記被覆層を挟んで、前記複数本の光ファイバが配される方向とは直交する方向に対向する一対の板状樹脂部材からなることが好ましい。
【0010】
このような複合ケーブルによれば、複合ケーブルに外力が加わったとしても、当該光ファイバに歪む力が働くことを一対の板状樹脂部材によって抑制することができる。
【0011】
また、前記光ファイバと前記緩衝材、及び前記撚り線は、テープで巻かれていることが好ましい。
【0012】
このような複合ケーブルによれば、緩衝材及び撚り線を囲うように筒状のシースを成型する際に、そのシースの材料が緩衝材及び撚り線に入り込むことをテープにより防止することができる。
【0013】
また、前記光ファイバと前記緩衝材、及び前記撚り線は、それぞれ個別にテープで巻かれていることが好ましい。
【0014】
このような複合ケーブルによれば、撚り線がほどけることを抑止することができる。また、シース内部の空間に介在する撚り線と緩衝材との接触を回避して、緩衝材と撚り線とを保護することができる。したがって、複合ケーブルの信頼性を維持しながらも、効率よく接続作業を実行させることが可能となる。
【0015】
また、前記光ファイバと緩衝材、及び前記撚り線は、1つのテープで一括して巻かれていることが好ましい。
【0016】
このような複合ケーブルによれば、緩衝材及び撚り線をそれぞれ個別にテープで巻く場合に比べて、テープから緩衝材及び撚り線の双方を簡易に露出させることができる。
【0017】
また、前記光ファイバと前記一対の板状樹脂部材とに一括して螺旋状に巻かれる第1テープと、前記撚り線に螺旋状に巻かれる第2テープと、前記第1テープ及び前記第2テープに一括して螺旋状に巻かれる第3テープとを備え、前記第1テープ及び前記第2テープが巻かれる方向は、前記第3テープが巻かれる方向とは逆の方向とされることが好ましい。
【0018】
このような複合ケーブルによれば、第1テープ及び第2テープに働く力と、第3テープに働く力とが相反し、第1テープによって光ファイバが捻られたり、第2テープによって撚り線の撚りが解かれたりすることを抑制することができる。
【0019】
また、前記板状樹脂部材の幅は、前記複数本の光ファイバが配される方向における前記被覆層の幅と同程度であることが好ましい。
【0020】
このような複合ケーブルによれば、一対の板状樹脂部材をテープで一括して螺旋状に巻くとき、当該テープから板状樹脂部材に働く力によって板状樹脂部材の位置がずれることを防止することができる。
したがって、被覆層の端部から板状樹脂部材が突出した状態でテープに巻かれ、光ファイバに歪む力が働く状態で板状樹脂部材がテープで固定されることを回避することができる。また、一対の板状樹脂部材をテープで一括して螺旋状に巻かれた後に複合ケーブルに加わる外力によって板状樹脂部材の位置がずれ、光ファイバに歪む力が働く状態となることも抑制することができる。
これに加えて、板状樹脂部材の位置がずれて被覆層の端部から板状樹脂部材が突出し、その突出部分が撚り線をずらしてしまうことを抑制することもできる。
【0021】
また、前記一対の板状樹脂部材における外面間の距離は、前記撚り線の外接円の直径以上とされることが好ましい。
【0022】
このような複合ケーブルによれば、一対の板状樹脂部材における外面間の距離が撚り線の外接円の直径未満とされる場合に比べて、シースと板状樹脂部材との間の隙間を低減することができる。また、板状樹脂部材とシースとをテープを隔てて接触させることも可能となる。
したがって、複合ケーブルに加わる外力によって撚り線の一部が板状樹脂部材とシースとの間に入り込むことを抑止することができる。この結果、一対の板状樹脂部材における外面間の距離が撚り線の外接円の直径未満とされる場合に比べて、複合ファイバにおける平坦構造を強化することができる。
【0023】
また、前記撚り線は、前記充実の被覆層を基準として左右対称に配置されることが好ましい。
【0024】
このような複合ケーブルによれば、充実の被覆層を挟んで配置される撚り線同士の電磁的結合を抑制することができ、複合ケーブルの信頼性を向上できる。これに加えて、複合ケーブルでの強度の偏りが大幅に低減される。
ところで、複数本の光ファイバを基準として左右対称に配置されていない状態で、その複合ケーブルが屈曲された場合、その屈曲位置や屈曲方向によっては、光ファイバに対して、その光ファイバよりも剛性の強い電線から過度の力が働いてしまうことがある。
この点、複数本の光ファイバを基準として左右対称に電線が配置された場合、上述したように複合ケーブルでの強度の偏りが低減されるため、複合ケーブルの屈曲位置や屈曲方向にかかわらず、電線から光ファイバに過度の力が働くといったことが抑制される。したがって、複合ケーブルを柔軟に屈曲させて配置することが可能となる。
【0025】
また、前記シースの内壁と、前記撚り線及び前記緩衝材との間に介在される筒状の金属被覆材をさらに備えることが好ましい。
【0026】
このような複合ケーブルによれば、金属被覆材が、複合ケーブルの外側と内側とでの電磁的結合を抑制することができるため、外部からのノイズの吸収及び外部へのノイズの放出を大幅に抑制することができる。したがって、複合ケーブルを接続すべき場所での複合ケーブルの配置状態等の規制を緩和させることができ、より一段と接続作業の効率化を図ることができる。
これに加えて、撚り線から発生する高周波が金属被覆材に吸収される傾向が高くなるため、複数本の撚り線が互いに隣り合う状態で配置されている場合であっても、それら撚り線同士のクロストークを低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、効率よく接続作業を実行させ得る複合ケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。
【図2】図1の複合ケーブルと基板との接続の様子を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る複合ケーブルの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る複合ケーブル示す断面図である。図1に示すように、複合ケーブル1は、光ファイバユニット10と、4つの電線ユニット20と、シース30とを主な構成要素として備える。
【0031】
光ファイバユニット10は、4本の光ファイバ11、被覆層12、緩衝材13、及び、第1テープ14を有する構成とされる。
【0032】
光ファイバ11は、光を伝播する部材であり、コアCRと、コアCRの外周面を被覆するクラッドCLとからなる。クラッドCLの屈折率は、コアCRを通じて光が伝播するようコアCRの屈折率よりも低くされている。このような4本の光ファイバ11は、光ファイバ11の長手方向に沿って互いに接触する状態で並べられて配置される。また、各光ファイバ11の長手方向に垂直となる同一面内での断面の中心は、直線上にある状態とされる。
【0033】
被覆層12は、光ファイバ同士が接触する部位以外の各光ファイバ11の外周を充実の状態で被覆する樹脂製の層である。この被覆層12の形成手法には、例えば、ダイスポットのダイスニップル口に複数本の光ファイバを並列に送入し、それら光ファイバにダイスポット内で未硬化樹脂をコーティングした後に硬化させるといった手法がある。なお、被覆層12の樹脂の種類としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいは、シリコン等を挙げることができる。
【0034】
緩衝材13は、光ファイバ11の強度を高めるために被覆層12の周囲に配置される部材である。本実施形態の場合、緩衝材13は、複数の繊維からなり、被覆層12の全周に配置される。この繊維の材料は、特に限定されないが、例えばアラミド繊維等を挙げることができる。
【0035】
第1テープ14は、緩衝材13の外周に巻かれる絶縁性のテープである。この第1テープ14は、緩衝材13の外周に対して螺旋状に巻かれていても良く、光ファイバ11の長手方向に沿って縦添えに巻かれていても良い。また、第1テープ14における被覆層12側の面には、接着剤が塗布されていても良い。
【0036】
4つの電線ユニット20は、それぞれ、撚り線21及び第2テープ22を有する構成とされる。撚り線21は、2本の電線21A及び21Bを組として撚り合わしたものであり、光ファイバ11の長手方向に沿って、光ファイバユニット10を基準として左右対称に配置される。これら撚り線21の長手方向に垂直となる同一面内での断面の中心は、当該面内での各光ファイバ11の断面の中心を通る直線上にある状態とされる。
【0037】
なお、電線21A及び21Bは、導線CNと、その導線CNの外周を被覆する絶縁層BLとからなり、導線CNの材料は、導体であれば特に限定されないが、例えば、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム等の金属を挙げることができる。絶縁層BLの材料としては、難燃性、耐水性、絶縁性等に優れた特性を有する材料が望ましい。このような材料は、例えば、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体又はエチレンアクリル酸エチル共重合体などのエチレン系材料や、それとポリプロピレン、エチレンプロピレンゴム、スチレン系エラストマなどのポリオレフィンをブレンドした複合樹脂をベースに、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物又はリン酸エステルを添加してなるものやフッ素樹脂を挙げることができる。
【0038】
第2テープ22は、撚り線21の外周に巻かれる樹脂、或いは、金属のテープである。この第2テープ22を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができ、金属としては、アルミニウム、銅等を挙げることができる。
【0039】
このような第2テープ22は、撚り線21の外周に対して螺旋状に巻かれていても良く、光ファイバ11の長手方向に沿って縦添えに巻かれていても良い。また、第2テープ22の撚り線21側の面には、接着剤が塗布されていても良い。
【0040】
なお、第2テープ22が螺旋状に巻かれる場合、その巻かれる方向は、撚り線21が撚られる方向とは逆方向とされるほうが良い。このようにすれば、撚り線21が位置ずれしようとする方向と、第2テープ22が位置ずれしようとする方向とが、相反することになる。このため、第2撚り線21の位置ずれが大きくなりすぎてしまうことや、撚り線21の位置ずれが元に戻らなくなることを抑止することができる。
【0041】
シース30は、光ファイバユニット10及び電線ユニット20を囲う絶縁性の筒状部材であり、例えば押し出し成型によって形成される。このシース30の材料としては、電線21A及び21Bの絶縁層BLと同様の材料を挙げることができる。
【0042】
このような複合ケーブル1によれば、撚り線21により電力や電気信号を伝送することができると共に、光ファイバ11により光信号を伝送することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の複合ケーブル1では、4本の光ファイバ11と、2本の電線21A及び21Bを撚り合わせた4つの撚り線21とが、シース30の空間内に配置される。
【0044】
このような複合ケーブル1によれば、図2に示すように、複合ケーブル1における端部のシース30から撚り線21を露出する際に、その撚り線21をばらし易くすることができる。こうして、効率よく接続作業を実行させ得る複合ケーブル1が実現される。なお、この図2では、理解用意のため、被覆層12、緩衝材13、第1テープ14、及び、第2テープ22は省略している。
【0045】
また、本実施形態の複合ケーブル1では、シース30内部の空間に、撚り線21(電線21A及び21B)よりも剛性の弱い4本の光ファイバ11も配置しているが、これら光ファイバ11は、互いに平行に配された状態で充実の被覆層12により被覆されている。このため、各光ファイバ11は、シース30内部の空間を充実にしなくても、互いの位置関係を維持しながら保護された状態で、シース30内部の空間に配置することになる。したがって、本実施形態の複合ケーブル1では、各光ファイバ11をばらすことなく1つのユニットとして、複合ケーブル1端部のシース30から簡易に露出させることができ、より一段と効率よく接続作業を実行させることが可能となる。
【0046】
さらに、本実施形態の被覆層12の周囲には複数の繊維からなる緩衝材13が配置されているため、光ファイバ11の強度を高めることができる。
【0047】
このような複数の繊維からなる緩衝材13が、上記特許文献1のように充実の被覆部材によって被覆されていた場合、それら繊維の隙間には充実の被覆部材が入り込んでいることが多い。したがって、複合ケーブル1端部の被覆部材から緩衝材13を露出させることが困難となる。これに対し、本実施形態の緩衝材13は、上述したように、シース30内部の空間に配置しているため、当該空間が充実である場合に比べてより一段と簡易に、緩衝材13をシースから露出させることができる。したがって、本実施形態の複合ケーブル1によれば、より一段と効率よく接続作業を実行させることが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態の複合ケーブル1では、4本の光ファイバ11が撚り合わせていない状態にあるため、その撚り合わせに起因する歪みを回避できる分だけ光ファイバ11の伝送損失を低減できる。また、複数本の光ファイバ11は互いに平行に配され、4つの撚り線21は光ファイバ11と平行に配されているため、撚り線21と光ファイバ11との高さ方向のばらつきを低減することができる。
【0049】
これに加えて、4つの撚り線21同士の高さ方向のばらつきも低減することができる。したがって、基板BAの一面に配列される端子TRに対して容易に接続することが可能となる。特に、基板BAの一面に沿って複合ケーブル1を配置した状態で、その一面に配列される端子TRに光ファイバ11及び撚り線21(電線21A及び21B)を接続する場合がある。このような場合、複合ケーブル1端部から露出される光ファイバ11及び撚り線21と、端子TR上に配置すべき図示しない半田パッドとが略直線状に位置合わせ可能となる。このため、複合ケーブル1から半田パッドに加わる力を低減でき、この結果、半田の耐久性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態の複合ケーブル1では、光ファイバユニット10を基準として左右対称に撚り線21が配置されているため、光ファイバユニット10を挟んで配置される撚り線21同士の電磁的結合を抑制することができ、複合ケーブルの信頼性を向上できる。これに加えて、複合ケーブル1での強度の偏りが大幅に低減される。
【0051】
ところで、光ファイバユニット10を基準として左右対称に配置されていない状態で、その複合ケーブル1が屈曲された場合、その屈曲位置や屈曲方向によっては、光ファイバ11に対して、その光ファイバ11よりも剛性の強い撚り線21(電線21A及び21B)から過度の力が働いてしまうことがある。しかし、光ファイバユニット10を基準として左右対称に撚り線21が配置される複合ケーブルによれば、上述したように複合ケーブル1での強度の偏りが低減される。このため、複合ケーブル1の屈曲位置や屈曲方向にかかわらず、撚り線21から光ファイバ11に過度の力が働くといったことが抑制される。したがって、複合ケーブル1を柔軟に屈曲させて配置することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図3は、本発明の第2実施形態に係る複合ケーブルを示す断面図である。
【0053】
図3に示すように、本実施形態の複合ケーブル2は、第1実施形態の緩衝材13に巻かれる第1テープ14と、撚り線21に巻かれる第2テープ22とを省略している点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。また、本実施形態の複合ケーブル2は、緩衝材13及び撚り線21が1つの第3テープ35で一括して巻かれている点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。
【0054】
この第3テープ35は、第2テープ22と同様に、撚り線21の外周に対して螺旋状に巻かれていても良く、光ファイバ11の長手方向に沿って縦添えに巻かれていても良い。第3テープ35が螺旋状に巻かれる場合、その巻かれる方向は、上述したように、撚り線21の位置ずれを抑止するなどの観点では、撚り線21が撚られる方向とは逆方向とされるほうが好ましい。なお、第3テープ35の材料は、第2テープ22と同様のものを挙げることができる。
【0055】
このような複合ケーブル2によれば、緩衝材13及び撚り線21がそれぞれ個別に巻かれる第1実施形態の場合に比べて、緩衝材13及び撚り線21の双方を簡易に露出させることができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図4は、本発明の第3実施形態に係る複合ケーブルを示す断面図である。
【0057】
図4に示すように、本実施形態の複合ケーブル3は、光ファイバユニット10及び各電線ユニット20とシース30との間に、筒状の金属被覆材40を有している点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。
【0058】
この金属被覆材40は、複数の線材を編み込んで筒状に金属編組を成型したものであっても良く、金属層を有するテープが筒状にされたものであっても良い。なお、金属被覆材40における金属の種類としては、特に制限されないが、例えば、銅、アルミニウム等を挙げることができる。
【0059】
このような複合ケーブル3によれば、電線ユニット20とシース30との間に介在する金属被覆材40が、複合ケーブル2の外側と内側とでの電磁的結合を抑制することができるため、電界又は磁界など外部の力の場の影響を大幅に抑制することができる。
【0060】
これに加えて、撚り線21から発生する高周波が金属被覆材40に吸収される傾向が高くなるため、電線ユニット20間における撚り線21同士のクロストークを低減することもできる。
【0061】
なお、第2実施形態におけるシース30と第3テープ35との間に金属被覆材40が設けられていても良い。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図5は、本発明の第4実施形態に係る複合ケーブルを示す断面図である。
【0063】
図5に示すように、本実施形態の複合ケーブル4は、第1実施形態の電線ユニット20と異なる構造及び数の電線ユニット50を有している点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。
【0064】
具体的には、第1実施形態の電線ユニット20は、2本の電線21A及び21Bを組として撚り合わされた撚り線21の外周に第2テープ22が巻かれた構造とされた。これに対して、本実施形態の電線ユニット50は、4本の電線21A〜21Dを組として撚り合わされた撚り線21の外周にそれぞれ第2テープ22が巻かれた構造とされる。また、第1実施形態の電線ユニット20は、光ファイバユニット10を基準として左右対称に2つずつ配された。これに対して、本実施形態の電線ユニット50は、光ファイバユニット10を基準として左右対称に1つずつ配される。
【0065】
このような複合ケーブル4によれば、同一本数の電線を備えながら、第1実施形態〜第3実施形態の複合ケーブル1〜3よりもケーブル幅を狭くでき、より狭い空間に配置することが可能となる。また、電線ユニット50を左右に分割することで、左右に分割しない場合に比べてクロストークの発生を抑制することが可能になる。さらに、左右の電線ユニット50間に配置される光ファイバユニット10が絶縁のスペーサーの役割を果たし、左側の電線ユニット50と右側の電線ユニット50との静電的結合を弱め、漏話が生じることを抑制することができる。
【0066】
なお、この複合ケーブル4における電線ユニット20とシース30との間に、第3実施形態の金属被覆材40が設けられていても良い。また、第1実施形態〜第3実施形態の電線ユニット20が、本実施形態の電線ユニット50に代替されても良い。
【0067】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図6は、本発明の第5実施形態に係る複合ケーブルを示す断面図である。
【0068】
図6に示すように、本実施形態の複合ケーブル5は、第4実施形態の電線ユニット50と異なる構造の電線ユニット60を有している点で、第4実施形態の複合ケーブル4と異なる。
【0069】
具体的には、第4実施形態の電線ユニット50は、4本の21A〜21Dを組として撚り合わされた撚り線21の外周に第2テープ22が巻かれた構造とされた。これに対して、本実施形態の電線ユニット60は、7本の電線21A〜21Gを組として撚り合わされた撚り線21の外周に第2テープ22が巻かれた構造とされる。
【0070】
また、この撚り線21では、直線状に配置される1本の電線21Aを中心に、6本の電線21B〜21Gが撚り合わされる。なお、直線状に配置されるとは、6本の電線21B〜21Gの間に介在する電線21Aが、撚られることなく、その電線21Aの長手方向に沿って延在していることを意味している。
【0071】
なお、電線21Aは、電線21B〜21Gの直径と同程度の略円形状とされているが、各電線21B〜21Gの中心に介在していれば、その大きさ、形状、又は数を問わない。
【0072】
このような複合ケーブル5によれば、ケーブルの幅を増やさずに通信ラインを増やすことができる。
【0073】
なお、この複合ケーブル5における電線ユニット20とシース30との間に、第3実施形態の金属被覆材40が設けられていても良い。また、第1実施形態〜第3実施形態の電線ユニット20、あるいは、第4実施形態の電線ユニット50が、本実施形態の電線ユニット60に代替されても良い。
【0074】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図7は、本発明の第6実施形態に係る複合ケーブルを示す断面図である。
【0075】
図7に示すように、本実施形態の複合ケーブル6は、第1実施形態における電線ユニット20を第4実施形態の電線ユニット50に変更した点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。
【0076】
また、本実施形態の複合ケーブル6は、第2実施形態の第3テープ35及び第3実施形態の金属被覆材40を新たな構成要素として有している点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。
【0077】
さらに、本実施形態の複合ケーブル6は、第1実施形態の緩衝材13と異なる構造の緩衝材15を有している点で、第1実施形態の複合ケーブル1と異なる。
【0078】
具体的に第1実施形態の緩衝材13は、複数の繊維からなり、被覆層12の全周に配置されていた。これに対して、本実施形態の緩衝材15は、被覆層12を挟んで、複数本の光ファイバ11が配される方向とは直交する方向に対向する一対の板状樹脂部材15A及び15Bからなる。
【0079】
本実施形態の場合、板状樹脂部材15A及び15Bの幅Wは、光ファイバ11が配される方向における被覆層12の幅(長さ)Lと同程度である。具体的には前記幅Wは前記幅Lの誤差±20%範囲内とされる。また、当該板状樹脂部材15A及び15Bにおける外面間の距離Dは、撚り線21の外接円の直径DM以上とされる。
【0080】
このような板状樹脂部材15A及び15Bの材料は、樹脂である限り特に限定されることはないが、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレンあるいは、ポリエチレン等をあげることができる。
【0081】
また本実施形態の場合、一対の板状樹脂部材15A,15Bを一括して巻かれる第1テープ14と、撚り線21に巻かれる第2テープ22と、当該第1テープ14及び第2テープ22を一括して巻かれる第3テープ35とはそれぞれ螺旋状に巻かれている。そして、第1テープ14及び第2テープ22が巻かれる方向は、第3テープ35が巻かれる方向とは逆の方向とされる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の複合ケーブル6では、被覆層12を挟んで互いに対向する一対の板状樹脂部材15A及び15Bが、複数本の光ファイバ11が配される方向とは直交する方向における被覆層12の周囲に配置される。
【0083】
このため、光ファイバ11が配される方向から外力が加わったとしても、複数の繊維からなる緩衝材13を被覆層12の周囲に配置する場合に比べ、光ファイバ11に歪む力が働くことを一対の板状樹脂部材15A及び15Bによって抑制することができる。
【0084】
また本実施形態の場合、板状樹脂部材15A及び15Bの幅Wは、光ファイバ11が配される方向における被覆層12の長さLに同程度とされる。
【0085】
このため、一対の板状樹脂部材15A及び15Bを第1テープ14で一括して螺旋状に巻くとき、当該第1テープ14から板状樹脂部材15A又は15Bに働く力によって板状樹脂部材15A又は15Bの位置がずれることを防止することができる。したがって、被覆層12の端部から板状樹脂部材15A又は15Bが突出した状態で第1テープ14に巻かれ、光ファイバ11に歪む力が働く状態で固定されることを回避することができる。
【0086】
さらに、一対の板状樹脂部材15A及び15Bを第1テープ14で一括して螺旋状に巻かれた後に外力が加わって板状樹脂部材15A又は15Bの位置がずれて、光ファイバ11に歪む力が働く状態となることも抑制することができる。これに加えて、板状樹脂部材15A又は15Bの位置がずれて被覆層12の端部から板状樹脂部材15A又は15Bが突出し、その突出部分が撚り線21をずらしてしまうことを抑制することもできる。
【0087】
また本実施形態の場合、一対の板状樹脂部材15A及び15Bにおける外面間の距離Dは、撚り線21の外接円の直径DM以上とされる。
【0088】
このため、一対の板状樹脂部材15A及び15Bにおける外面間の距離Sが撚り線21の外接円の直径DM未満とされる場合に比べて、シース30と板状樹脂部材15A又は15Bとの間の隙間を低減することができる。板状樹脂部材15A又は15Bとシース30とを第1テープ14を隔てて接触させることも可能となる。
【0089】
したがって、複合ケーブル6に加わる外力によって撚り線21の一部が板状樹脂部材15A又は15Bとシース30との間に入り込むことを抑止することができる。この結果、一対の板状樹脂部材15A及び15Bにおける外面間の距離Dが撚り線の外接円の直径DM未満とされる場合に比べて、複合ケーブル6における平坦構造を強化することができる。
【0090】
また、前記距離Dを直径DM以上とすると共に、幅Wを長さLと同程度とすることで、複合ケーブル6における平坦構造をより強化することができる。
【0091】
また本実施形態の複合ケーブル6では、第1テープ14及び第2テープ22が巻かれる方向は、第3テープ35が巻かれる方向とは逆の方向とされる。
【0092】
このため、第1テープ14及び第2テープ22に働く力と、第3テープ35に働く力とが相反し、第1テープ14によって光ファイバ11が撚られたり、第2テープ22によって撚り線21の撚りが解かれたりすることを抑制することができる。
【0093】
なお、第1実施形態〜第5実施形態の緩衝材13が、本実施形態の一対の板状樹脂部材15A及び15Bに代替されても良い。
【0094】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
例えば、光ファイバ11の本数が、第1実施形態〜第6実施形態では4本とされたが、この本数に限らず、2本以上であれば、様々な本数にすることができる。
【0096】
また、互いに平行に配される複数本の光ファイバ11のうち、互いに隣り合う光ファイバ11同士が接触する状態とされたが、非接触状態とされていても良い。ただし、各光ファイバ11が並べられる方向における複合ケーブル1〜6の幅を低減する観点では、互いに隣り合う光ファイバ11同士が接触する状態とされたほうが好ましい。なお、互いに隣り合う光ファイバ11同士が接触する状態の場合、各光ファイバ11の外周は、接触部分を除いて充実の被覆層12で被覆されたが、光ファイバ11同士が非接触状態とされる場合、各光ファイバ11の外周全体が充実の被覆層12で被覆される。
【0097】
また、撚り線21における電線本数が、第1実施形態〜第3実施形態では2本とされ、第4実施形態及び第5実施形態では4本とされ、第5実施形態では6本とされたが、これら本数以外に限らず、2本以上であれば、様々な本数にすることができる。
【0098】
また、撚り線21の本数(電線ユニット数)が、第1実施形態〜第3実施形態では4本とされ、第4実施形態〜第6実施形態では2本とされたが、これら本数以外に限らず、様々な本数(電線ユニット数)にすることができる。
【0099】
また、光ファイバユニット10を基準として一方側にある電線ユニット数と、他方側にある電線ユニット数とは同じであったが異なっていても良く、一方側又は他方側の電線ユニット20、50又は60が省略されていても良い。
【0100】
また、撚り線21の長手方向に垂直となる同一面内での断面の中心が、当該面内での各光ファイバ11の断面の中心を通る直線上にある状態とされたが、撚り線21と光ファイバ11とが平行に配置されていれば、直線上にない状態とされていても良い。ただし、複合ケーブル1〜5の長手方向に直交する方向の厚みを低減する観点では、直線上にある状態とされたほうが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、光信号と電気信号もしくは電力との伝送を行う分野において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0102】
1〜6・・・複合ケーブル
10・・・光ファイバユニット
11・・・光ファイバ
12・・・被覆層
13,15A,15B・・・緩衝材
14・・・第1テープ
20,50,60・・・電線ユニット
21・・・撚り線
21A〜21F・・・電線
22・・・第2テープ
30・・・シース
35・・・第3テープ
40・・・金属被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配される複数本の光ファイバと、
前記複数本の光ファイバを被覆する充実の被覆層と、
前記被覆層の周囲に配置される緩衝材と、
前記複数本の光ファイバと平行に配され、少なくとも2本の電線を撚り合わせた撚り線と、
前記緩衝材及び前記撚り線を囲う筒状のシースと
を備えることを特徴とする複合ケーブル。
【請求項2】
前記緩衝材は、前記被覆層を挟んで、前記複数本の光ファイバが配される方向とは直交する方向に対向する一対の板状樹脂部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記複数本の光ファイバと前記緩衝材及び前記撚り線とはテープで巻かれている
ことを特徴とする請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記複数本の光ファイバと前記緩衝材及び前記撚り線は、それぞれ個別にテープで巻かれている
ことを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記複数本の光ファイバと前記緩衝材及び前記撚り線は、1つのテープで一括して巻かれている
ことを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記複数本の光ファイバと前記一対の板状樹脂部材とに一括して螺旋状に巻かれる第1テープと、前記撚り線に螺旋状に巻かれる第2テープと、前記第1テープ及び前記第2テープを一括して螺旋状に巻かれる第3テープとを備え、
前記第1テープ及び前記第2テープが巻かれる方向は、前記第3テープが巻かれる方向とは逆の方向とされる
ことを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
前記板状樹脂部材の幅は、前記複数本の光ファイバが配される方向における前記被覆層の幅と同程度である
ことを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【請求項8】
前記一対の板状樹脂部材における外面間の距離は、前記撚り線の外接円の直径以上とされる
ことを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【請求項9】
前記撚り線は、前記充実の被覆層を基準として左右対称に配置される
ことを特徴とする請求項1〜請求項8いずれか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項10】
前記シースの内壁と、前記撚り線及び前記緩衝材との間に介在される筒状の金属被覆材
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項9いずれか1項に記載の複合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−41814(P2013−41814A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135394(P2012−135394)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】