説明

複合サイクル試験装置

【課題】この発明は、コストの上昇や溶液漏れを招くことなく、噴霧試験に使用される噴霧溶液のpH、濃度の変動を防止すること、および低温でも噴霧溶液の凍結を防止することができる噴霧溶液の溶液補給回収機構を設けた複合サイクル試験装置を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、試験槽内に設置した溶液溜めの噴霧溶液を噴霧ノズルでミスト状にして被試験体に接触させる噴霧試験の実施時に、前記試験槽外に設置した溶液タンクから噴霧溶液を前記溶液溜めに補給し、前記噴霧試験の終了時に前記溶液タンクに溶液溜め内の噴霧溶液を回収する溶液補給回収機構を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は複合サイクル試験装置に係り、特に、噴霧試験、乾燥試験、湿潤試験等の複合サイクル試験を行う複合サイクル試験装置において、噴霧試験を行う際に、試験槽内の溶液溜めに試験槽外の溶液タンクから噴霧溶液を補給し、噴霧試験を終了して噴霧試験以外の試験条件(乾燥試験、湿潤試験)を行う際に、溶液溜めに残っている噴霧溶液を試験槽外の溶液タンクに回収する溶液補給回収機構を設けた複合サイクル試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の部品や材料などの被試験体の腐食試験を行う装置には、噴霧溶液をミスト状にして被試験体に接触させる噴霧試験を単独で行う噴霧試験装置(特許文献1、2)や、噴霧試験、乾燥試験、湿潤試験、低温試験、浸漬試験などを組み合わせた複合サイクル試験を行う複合サイクル試験装置(特許文献3〜5)がある。複合サイクル試験などの複数の試験条件を組み合わせて行う場合に、噴霧試験以外の他の試験条件で溶液溜めに残されている噴霧溶液が、低温(−20℃)〜高温(150℃)の雰囲気に晒されて、凍結・蒸発により、pH、濃度が変動することがある。
【0003】
図2に示すように、従来の複合サイクル試験装置101は、噴霧試験を行う際に、試験槽102外の圧縮空気供給源103から空気供給管104により供給される圧縮空気を噴霧ノズル105で噴霧塔106内に噴射することで、試験槽102内の溶液溜め107の噴霧溶液を溶液供給管108により吸引して噴霧塔106内に噴射させ、溶液ミストを生成する。複合サイクル試験装置101は、生成された溶液ミストを噴霧塔106の頂部から試験槽102内に自然落下させ、被試験体109に接触させることで噴霧試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3188262号公報
【特許文献2】特許第3261655号公報
【特許文献3】特公平2−49457号公報
【特許文献4】特公平3−42784号公報
【特許文献5】特公平3−42785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、コストの上昇や溶液漏れを招くことなく、噴霧試験に使用される噴霧溶液のpH、濃度の変動を防止すること、及び低温でも溶液の凍結を防止することができる溶液補給回収機構を設けた複合サイクル試験装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1は、試験槽内に設置した溶液溜めの噴霧溶液を噴霧ノズルでミスト状にして被試験体に接触させる噴霧試験の実施時に、前記試験槽外に設置した溶液タンクから噴霧溶液を前記溶液溜めに補給し、前記噴霧試験の終了時に前記溶液タンクに溶液溜め内の噴霧溶液を回収する溶液補給回収機構を設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明の請求項2は、前記溶液補給回収機構に水位調整器を設け、前記溶液溜めの噴霧溶液の水位を目標水位に保つように前記試験槽外に設置した溶液タンクの噴霧溶液を前記水位調整器により調整して前記溶液溜めに自動で補給することを特徴とする。
【0008】
この発明の請求項3は、前記溶液補給回収機構は、前記溶液タンクの上部に前記水位調整器を搭載し、前記溶液タンクの最下部に前記水位調整器の目標水位よりも上部に連通する溶液供給管を設け、前記溶液供給管の途中に前記溶液タンクの噴霧溶液を前記水位調整器に圧送する溶液供給ポンプを配置し、前記水位調整器の目標水位と同じ高さに一端側を開口して他端側を前記溶液タンクに開口する水位調整管を設け、前記水位調整器の最下部を前記溶液タンクに連通する溶液戻り孔を設け、前記水位調整器の下部と前記溶液溜めの最下部とを連通する溶液補給回収管を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の複合サイクル試験装置に設けた溶液補給回収機構は、溶液供給ポンプの溶液吐出量と水位調整管および溶液戻り孔の溶液戻り量とのバランスで、溶液溜めの噴霧溶液を目標水位に保つことができるので、複数のセンサ・ポンプを必要とせず、構造を簡単にすることができ、また、開口部やシール構造を設ける必要がないので、溶液漏れを生じることがない。これにより、この複合サイクル試験装置は、コストの上昇や溶液漏れを招くことなく、噴霧試験の実施時に溶液溜めに噴霧溶液を補給し、噴霧試験の終了時に溶液溜めに残っている噴霧溶液を回収することができるため、噴霧試験に使用される噴霧溶液のpH、濃度の変動を防止すること、及び低温でも溶液の凍結を防止することができ、均一な試験結果を得ることができ、また、凍結等による機器の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】溶液補給回収機構を設けた複合サイクル試験装置の概略構成図である。(実施例)
【図2】複合サイクル試験装置の概略構成図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は複合サイクル試験装置である。複合サイクル試験装置1は、試験槽2内に溶液溜め3を設置し、溶液溜め3上部に搭載した噴霧塔4に噴霧ノズル5を設けている。噴霧ノズル5には、試験槽2外の圧縮空気供給源6から空気供給管7が連絡され、溶液溜め3から溶液供給管8が連絡されている。
【0013】
複合サイクル試験装置1は、噴霧試験を行う際に、噴霧ノズル5から空気供給管7により供給される圧縮空気を噴射することで、溶液溜め3の噴霧溶液を溶液供給管8により吸引して噴霧塔4内に噴射させてミスト状にし、溶液ミストを生成する。複合サイクル試験装置1は、生成された溶液ミストを噴霧塔4の頂部から試験槽2内に自然落下させ、被試験体9に接触させることで噴霧試験を行う。
【0014】
複合サイクル試験装置1は、溶液溜め3の噴霧溶液を自動的に補給・回収する溶液自動補給回収機構10を設けている。噴霧溶液の溶液補給回収機構10は、噴霧溶液を保存する溶液タンク11と、溶液溜め3の噴霧溶液の水位を目標水位Lに調整する水位調整器12とを備え、溶液タンク11の上部に水位調整器12を搭載している。溶液タンク11は、水位調整器12に溶液供給管13で連通している。溶液供給管13は、溶液タンク11の最下部に一端側を開口し、他端側を水位調整器12の目標水位Lよりも上部に開口している。溶液供給管13の途中には、溶液タンク11の噴霧溶液を水位調整器12に圧送する溶液供給ポンプ14を配置している。
【0015】
水位調整器12には、噴霧溶液を目標水位Lに保つ水位調整管15を設けている。水位調整管15は、水位調整器12の目標水位Lと同じ高さに一端側を開口し、他端側を溶液タンク11の上部に開口している。また、水位調整器12には、溶液タンク11に連通する溶液戻り孔16を設けている。溶液戻り孔16は、水位調整器12の最下部に、溶液タンク11の上部に開口するように設けている。さらに、水位調整器12には、溶液溜め3に連通する溶液補給回収管17を設けている。溶液補給回収管17は、水位調整器12の下部に一端側を開口し、他端側を溶液溜め3の最下部に開口することで、水位調整器12と溶液溜め3とを連通している。
【0016】
次に作用を説明する。
複合サイクル試験装置1に設けた溶液補給回収機構10は、複合サイクル試験装置1によって噴霧試験を行う際に、溶液供給ポンプ14を駆動し、溶液タンク11の噴霧溶液を溶液供給管13で水位調整器12に圧送する。水位調整器12の噴霧溶液は、溶液供給ポンプ14による溶液吐出量と水位調整管15および溶液戻り孔16による溶液タンク11への溶液戻り量とのバランスで、目標水位Lに保つことができる。目標水位Lに保たれた水位調整器12の噴霧溶液は、溶液補給回収管17で水位調整器12に補給される。これにより、溶液補給回収機構10は、複合サイクル試験装置1の溶液溜め3の噴霧溶液を、目標水位Lに保つことができる。
【0017】
また、溶液補給回収機構10は、複合サイクル試験装置1による噴霧試験を終了して噴霧試験以外の試験条件(乾燥試験、湿潤試験など)を行う際に、溶液供給ポンプ14を停止し、水位調整器12への噴霧溶液の圧送を停止する。水位調整器12の噴霧溶液は、溶液戻り孔16で溶液タンク11に戻される。溶液溜め3の噴霧溶液は、水位調整器12の噴霧溶液の水位の低下に伴い、最下部に連通された溶液補給回収管17で水位調整器12の下部に戻され、さらに、溶液戻り孔16で溶液タンク11に戻される。これにより、溶液補給回収機構10は、複合サイクル試験装置1の溶液溜め3に残っている噴霧溶液を、水位調整器12を介して試験槽2外の溶液タンク11に回収することができる。
【0018】
このように、複合サイクル試験装置1に設けた溶液補給回収機構10は、溶液供給ポンプ14の溶液吐出量と水位調整管15および溶液戻り孔16の溶液戻り量とのバランスで、溶液溜め3の噴霧溶液を目標水位Lに保つことができ、1台の溶液供給ポンプ14で噴霧溶液の補給・回収を行うことができるので、構造を簡単にすることができる。
【0019】
これにより、この複合サイクル試験装置1は、コストの上昇や溶液漏れを招くことなく、噴霧試験の実施時に溶液溜め3に噴霧溶液を補給し、噴霧試験の終了時に溶液溜め3に残っている噴霧溶液を回収することができる。このため、この複合サイクル試験装置1は、噴霧試験に使用される噴霧溶液のpH、濃度の変動を防止すること、及び低温(−20℃)でも溶液の凍結を防止することができ、均一な試験結果を得ることができ、また、凍結等による機器の破損を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、簡単な構造で噴霧試験に使用される噴霧溶液を補給・回収することができるものであり、複合サイクル試験を行う複合サイクル試験装置だけでなく、噴霧試験を単独で行う噴霧試験装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 複合サイクル試験装置
2 試験槽
3 溶液溜め
4 噴霧塔
5 噴霧ノズル
10 溶液補給回収機構
11 溶液タンク
12 水位調整器
13 溶液供給管
14 溶液供給ポンプ
15 水位調整管
16 溶液戻り孔
17 溶液補給回収管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽内に設置した溶液溜めの噴霧溶液を噴霧ノズルでミスト状にして被試験体に接触させる噴霧試験の実施時に、
前記試験槽外に設置した溶液タンクから噴霧溶液を前記溶液溜めに補給し、
前記噴霧試験の終了時に前記溶液タンクに溶液溜め内の噴霧溶液を回収する溶液補給回収機構を設けたことを特徴とする複合サイクル試験装置。
【請求項2】
前記溶液補給回収機構に水位調整器を設け、
前記溶液溜めの噴霧溶液の水位を目標水位に保つように前記試験槽外に設置した溶液タンクの噴霧溶液を前記水位調整器により調整して前記溶液溜めに自動で補給することを特徴とする請求項1に記載の複合サイクル試験装置。
【請求項3】
前記溶液補給回収機構は、
前記溶液タンクの上部に前記水位調整器を搭載し、
前記溶液タンクの最下部に前記水位調整器の目標水位よりも上部に連通する溶液供給管を設け、
前記溶液供給管の途中に前記溶液タンクの噴霧溶液を前記水位調整器に圧送する溶液供給ポンプを配置し、
前記水位調整器の目標水位と同じ高さに一端側を開口して他端側を前記溶液タンクに開口する水位調整管を設け、
前記水位調整器の最下部を前記溶液タンクに連通する溶液戻り孔を設け、
前記水位調整器の下部と前記溶液溜めの最下部とを連通する溶液補給回収管を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合サイクル試験装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−196892(P2011−196892A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65550(P2010−65550)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】