説明

複合シート、その製造方法及び装置

【課題】液の浸透性が高いほか、柔軟性及び通気性にも優れる複合シートを提供すること。
【解決手段】本発明の複合シート1は、第1のシート2と第2のシート3とが部分的に接合されて多数の接合部4が形成されているとともに、第1のシート2の接合部4以外の部分に内部が空洞の凸部5が形成されている。第2のシート3の凸部5に対向する第1のシート2との非接合部分に開孔部6が形成されている。第1のシート2の凸部5に開孔部が形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シート、その製造方法及び装置に関わり、特に、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品用の複合シートに好適な複合シート、その製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の表面シートに使用する複合シートとして、出願人は、下記特許文献1に記載のシートを提案している。このシートは、実質的に伸縮しない二層のシートが部分的に接合されて多数の接合部が形成されているとともに、一方のシートの該接合部以外の部分に内部が空洞の凸部が破断や損傷なく再現性よく形成されたものであり、特に高い粘性の液をもれなく吸収体に移行させる点において優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような複合シートに、さらに高い柔軟性及び通気性を付与することによって、吸収性物品の表面シートはもちろん、それ以外の用途への応用が期待される。
【0005】
従って本発明は、高い液浸透性に加え、柔軟性及び通気性にも優れる複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のシートと第2のシートとが部分的に接合されて多数の接合部が形成されているとともに、第1のシートには接合部以外の部分に凸部が形成されている複合シートであって、第2のシートにおける前記凸部に対向する第1のシートとの非接合部分に開孔部が形成されている複合シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、第1のシートと第2のシートとが部分的に接合されて多数の接合部が形成されているとともに、第1のシートには接合部以外の部分に凸部が形成されている複合シートを製造する方法であって、周面部に互いに噛み合う凹凸形状を有する第1及び第2のロールを回転させながらそれらの噛み合い部分に第1のシートを供給し、前記第1のシートを第1のロールの周面部に沿わせてそのまま保持して前記噛み合い部分から移動させた後、第2のシートを前記第1のシートに重ね合わせるように供給して両シートを部分的に接合し、接合された前記両シートを第1のロールの周面部にそのまま保持して移動させた後、周面部に穿孔部を有し且つ前記第1のロールと同期して回転する開孔ロールで第2のシートにおける第1のシートとの非接合部分に開孔部を形成する複合シートの製造方法を提供するものである。
【0008】
さらに、本発明は、第1のシートと第2のシートとが部分的に接合されて多数の接合部が形成されているとともに、第1のシートには接合部以外の部分に凸部が形成されている複合シートを製造するための装置であって、周面部に互いに噛み合う凹凸形状を有する第1及び第2のロールと、周面部に穿孔部を有し且つ該第1のロールと同期して回転する開孔ロールとを備えており、前記穿孔部は、前記第1のシートに前記凸部を賦形する前記第1のロールの凹部に対向して回転するように前記開孔ロールに配設されている複合シートの製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合シートは、高い液浸透性に加え、柔軟性や通気性にも優れたものである。また、本発明の複合シートの製造方法及び装置によれば、前記効果を奏する本発明の複合シートを好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の複合シートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す複合シートの製造装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【図3】図2における第1のロールの要部拡大図である。
【図4】図2に示す第1のロールの一部の分解斜視図である。
【図5】第1のロールの別の実施形態の要部を示す斜視図である。
【図6】本発明の複合シートの他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1に示す複合シート1は、本発明の複合シートを、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の肌当接面となる表面シートに適用した一実施形態を示すものである。
【0012】
図1に示すように、複合シート1は、第1のシート2と第2のシート3とが部分的に接合されて多数の接合部4が形成されているとともに、第1のシート2の接合部4以外の部分に内部が空洞の凸部5が形成されている。
【0013】
複合シート1には、第2のシート3における凸部5に対向する第1のシート2との非接合部分に開孔部6が形成されている。開孔部6は、本実施形態のように凸部5に対応するように非接合部分の全てに形成することもできるし、一部の非接合部分に形成することもできる。開孔部6の形状は、本実施形態のような円形の他、矩形、楕円形又はこれらに類似した形状とすることができる。
【0014】
第2のシート3の非接合部分に形成された開孔部6の面積は、非接合部分の面積の90%以下であることが好ましく、特に30〜90%以下であることがより好ましい。開孔部6の面積が斯かる範囲であると、得られる複合シートの柔軟性がさらに向上し、肌触りのよいシートが得られるほか、通気性もより向上するので好ましい。また、第1のシート2を通して吸収された液を凸部5の内部の空洞に滞留させずに開孔部6を通して移行させることができる。よって吸収性物品の表面シートとして使用した場合に、肌触りが良く、ムレを防ぐことができるほか、内部の吸収体への液の移行性が向上する。なお、通気性そして液移行性の向上を考慮すると、開孔部6の面積の下限は、0.03mm2程度である。
ここで、第2のシート3の非接合部分の面積は、第2のシート3の全面積(全ての開孔部6を含めた第2のシート全体の面積または複合シート1の平面面積)から全ての接合部4の面積を引いて、残った面積を凸部5の数で除して算出される、非接合部分の平均面積をいう。開孔部6の面積は、マイクロスコープ等の拡大鏡を使用して測定することができる。
【0015】
本実施形態においては、凸部5はその底面(シートどうしの非接合部)が矩形である。また凸部5は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。一方、接合部4も矩形となっている。
【0016】
凸部5及び接合部4は、交互に且つ一方向に列をなすように配置されている。本実施形態においては図1に示すように、同図中X方向に沿って凸部5及び接合部4が交互に配置され列をなしている。この方向は、複合シート1の製造工程における流れ方向と一致し、また複合シート1が吸収性物品に組み込まれたときの該吸収性物品の長手方向又はそれと直交する方向と一致する。凸部5及び接合部4からなる列は、図1中Y方向に亘って多列に配置されている。
【0017】
複合シート1においては、一つの列における任意の一つの凸部に着目したときに、該列に隣り合う左右の列においては、該一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない。「一つの凸部と隣り合う位置に凸部が位置していない」とは、一つの凸部に着目したときに、隣り合う列の完全に同位置に、凸部が位置していないことを意味している。つまり、図1におけるY方向に関して、隣り合う列間における凸部が完全に連なるように凸部が配置されていないことを意味する。従って、一つの凸部と隣り合う位置には、凸部の一部と接合部の一部の双方が存在していてもよいし、或いは接合部のみが存在していてもよい。Y方向に関して凸部が完全に連なるように配置されていると、見掛け上Y方向に長く延びた凸部が形成されることになり、その場合には液が長く延びた凸部に沿って流れ出しやすくなってしまい、液漏れの原因となる。
【0018】
複合シート1においては、隣り合う2つの列において、接合部4は半ピッチずつずれて配置されている。従って、一つの列における任意の一つの接合部に着目したときに、該一つの接合部はその前後及び左右が凸部によって取り囲まれている。つまり、接合部は千鳥配列で配置されている。従って、凸部も同様に千鳥配列で配置されている。
【0019】
凸部5及び接合部4がこのように配置されていることで、複合シート1を具備する吸収性物品においては液漏れが極めて効果的に防止される。詳細には、複合シート1を例えば使い捨ておむつ、特に高粘度の排泄物である軟便を排泄する低月齢児用のおむつの複合シートとして用いた場合には次の効果が奏される。軟便は高粘度であることから、一般に複合シートを速やかに透過しづらく複合シート上に滞留して横流れを起こしやすい。これに対して、本実施形態の複合シートによれば、軟便は、凸部5によって取り囲まれた凹部内に捕捉されるので横流れが起こりづらくなり、また捕捉されることに起因して下方向(つまり吸収体方向)への移動が促進される。その結果、軟便の漏れが防止される。さらに、凸部5はその内部が空洞であることから、吸収体に吸収された軟便の色が、複合シート側から見て減殺されるという隠蔽効果もある。これらの効果は、軟便と同様に高粘度の排泄物である経血を吸収するための生理用ナプキンの複合シートとして、本実施形態の複合シート1を用いた場合にも同様に奏される。
【0020】
これらの効果を一層顕著なものとする観点から、凸部5はその高さH(図1参照)が、1〜10mm、特に3〜6mmであることが好ましい。また、X方向(列方向)に沿う凸部5の底部寸法Aは2〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましく、Y方向(列方向と直交する方向)に沿う底部寸法Bは2〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましい。また、凸部5の底面積は4〜900mm2、特に4〜25mm2であることが好ましい。
【0021】
X方向(列方向)での接合部4の接合長さC(図1参照)は、0.1〜20mm、特に0.5〜5mmであることが、高粘度の排泄物の横流れを起こりづらくさせ得る点、及び肌触りが良好でクッション感が高い点から好ましい。また、接合部4凸の面積は0.2〜600mm2、特に1〜25mm2であることが好ましい。
【0022】
第1のシート2及び第2のシート3は同一の又は異なる繊維材料のシート状物からなる。このシート状物は実質的に非伸縮性である。この様なシート状物を用いることによって、所望する寸法の凹凸形状を形成するにあたり、後述する第1及び第2のロールの凹凸形状にほぼ即した複合シート1を安定的に且つ再現性良く製造できる。実質的に非伸縮性であるシート状物とは、例えば伸長限界が105%以下であり、それを超える伸長では材料破壊を起こすか又は永久歪みが発生するものをいう。
【0023】
前記シート状物としては、従来公知の吸収性物品における複合シートとして用いられる材料において、実質的に非伸縮性であるものであれば、特に制限無く使用することができる。例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、開孔手段によって液透過可能とされたフィルム等も使用することができる。シート材物として不織布を用いる場合、その構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に1.5〜4dtexであることが、複合シートの強度確保、肌触りの向上等の点から好ましい。第1のシート2及び第2のシート3には何れも界面活性剤等を用いた親水化処理を施しておくことが好ましい。
【0024】
第1のシート2の坪量は、10〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。一方、第2のシート3の坪量は、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。第1のシート2及び第2のシート3を含めた複合シート1の全体の坪量は、15〜150g/m2、特に20〜60g/m2であることが好ましい。
【0025】
次に、本実施形態の複合シート1の好ましい製造装置を、図2〜図4を参照しながら説明する。図2に示すように、本実施形態の製造装置10は、周面部に互いに噛み合う凹凸形状を有する第1のロール(以下、単にロールともいう。)11及び第2のロール(以下、単にロールともいう。)12と、重ね合わされた両シート2、3をロール11との間で挟持するアンビルロール13と、周面部に尖鋭な穿孔部140を有し且つロール11と同期して回転する開孔ロール14とを備えている。
【0026】
図3及び図4に示すように、ロール11は、同モジュールの平歯車からなる第1の歯車11c及び第2の歯車11dを複数枚組み合わせ、これらの歯車を回転軸15に同心状に取り付けてロール状に形成したものである。各歯車11c,11dは何れも同じ歯幅を有している。各歯車11c,11dはその中心が開口しており、その開口部に回転軸15が挿入される。各歯車11c,11d及び回転軸15にはそれぞれ切り欠き部(図示せず)が形成されており、該切り欠き部にキー(図示せず)が挿入される。これによって各歯車11c,11dの空回りが防止される。
【0027】
第1の歯車11cと第2の歯車11dとは歯先円直径が同径となっている。また第1の歯車11cの歯数は第2の歯車11dの歯数の整数倍となっている。具体的には、本実施形態に用いられる第2の歯車11dの歯数が7であるのに対して、第1の歯車11cの歯数はその整数倍である21になっている。
【0028】
ロール11においては、1枚の第2の歯車11dに対してその両側にそれぞれ1枚ずつの第1の歯車11cが配されて、これらの3枚の歯車を一組とした歯車群16が複数組配されている。各歯車群16においては、第1の歯車11c及び第2の歯車11dは、各歯車11c,11dの歯がロールの回転軸方向に並列するように配されている。これによって各歯車群16においては、ロール11の回転方向に沿って凸部17と凹部18とが交互に形成される。凸部17は、3枚の歯車(つまり2枚の第1の歯車11cと1枚の第2の歯車11d)それぞれの歯がロール11の回転軸方向に並列して形成されたものであるか(図3中、符号17aで示す)、或いは2枚の第1の歯車11cの歯がロールの回転軸方向に並列して形成されたものである(図3中、符号17bで示す)。一方、凹部18は、2枚の第1の歯車11cの歯間で形成されたものである。凸部17の幅は、複合シート1の凸部5におけるY方向の寸法を決定する。
【0029】
歯車群16は二組以上用いられる。各歯車群16は、隣り合う歯車群16,16における凹凸部のピッチが互いに異なるように配される。本実施形態においては、隣り合う歯車群16,16は凹凸部が半ピッチずれている。
【0030】
各歯車群16においては、2枚の第1の歯車11c間に、ロール11の回転方向に沿って、一定の間隔をおいて空隙部19が複数形成されている。各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cと、これらの間に位置する第2の歯車11dとで形成されている。更に詳細には、各空隙部19は、2枚の第1の歯車11cの相対向する側面と、第2の歯車11dにおける隣り合う2つの歯によって画定される。従って空隙部19は、第2の歯車11dの歯数と同数形成されることになる。空隙部19は、先に述べた凹部18において外部に向かって開口している。
【0031】
第1の歯車11cには、回転軸15が挿入される中心の開口部を取り囲むように複数の開口部20が形成されている。各開口部20は同径であり、歯車の中心からそれぞれ等距離の位置に形成されている。隣り合う開口部20,20と歯車の中心とがなす角度は何れも等しくなっている。各歯車11cにおける開口部20の個数は、第2の歯車11dの歯数と同数になっている。そして、各歯車群16を組み付ける場合には、各開口部20が、第2の歯車11dにおける隣り合う歯間にそれぞれ位置するように、第1及び第2の歯車11c,11dを配置する。このように各歯車群16を組み付け、更にそれぞれの歯車群16を凹凸部のピッチが互いに異なるように配した状態においては、それぞれの第1の歯車11cの開口20が、ロール11の回転軸方向に連なって、該回転軸方向に延びる複数の吸引路21がロール11の内部に形成される。そして各吸引路21は、先に述べた空隙部19と連通する。
【0032】
吸引路21の少なくとも一端は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じている。従って、吸引源を作動させて吸引操作を行うと、空隙部19から吸引路21を通じて空気が吸引される。
【0033】
本実施形態のロール11は特に小ピッチで小凸部を多数形成する場合に有効である。小ピッチで且つ歯の大きさが小さい歯車である低モジュールな平歯車を用いて、図5に示すロール11を構成した場合、歯溝部に形成させ得る吸引孔110の面積は小さくなってしまう。その結果、第1のシート2をロール11の周面上へ吸引保持する力が低下し、安定的な凹凸形成が損なわれてしまう。これに対して本実施形態のロール11では、低モジュールな平歯車を用いても、第2の歯車11dの歯幅を大きくしたり、また歯数を少なくすることにより空隙部19を大きくできる。その結果、吸引孔の面積を充分に確保することができる。更に、歯車の組み合わせや幅を変更するだけの簡単な操作で、凸部のピッチや大きさを自由に変更できるという利点もある。
【0034】
ロール12は、前述の吸引路21を備えておらず、ロール11と凹凸形状が噛み合う用に構成されている以外は、ロール11と同様に構成されている。
【0035】
アンビルロール13は、加熱手段(図示せず)を備えている。そしてこの加熱手段で加熱された状態のアンビルロール13とロール11との間で両シート2、3を挟持したときに、両シート2、3同士が熱融着されて接合されて接合部4が形成される。
【0036】
開孔ロール14の穿孔部140は、第2のシート3に形成する開孔部6に対応し、且つロール11の歯溝部においてこれらの開孔部6を穿孔するように当該開孔ロール14の周面部に配設されている。穿孔部140の寸法・形状は、前記開孔部6の面積に応じて設定される。
【0037】
次に、本実施形態の複合シート1の好ましい製造方法を、前記製造装置10による製造方法に基づいて図2を参照しながら説明する。
【0038】
先ず、ロール11及び12を回転させながらそれらの噛み合い部分に第1のシート2を供給し、該シート2をロール11及び12の周面部の凹凸形状に沿わせ、第1のシート2に凹凸形状を賦形する。
【0039】
次いで、凹凸形状が賦形された第1のシート2をロール11で吸引し、ロール11の周面部に沿わせてそのまま保持し、前記噛み合い部分から移動させる。そして、ロール11と所定温度に加熱されたアンビルロール13との間に第1のシート2に重ね合わせるように第2のシート3を供給し、ロール11の歯車の先端に位置する第1シート2とアンビルロール13との間に配置された第2のシート3とを熱融着により接合する。第1のシート2と第2のシート3とを熱融着によって接合することに代えて、接着剤による接着や超音波接合によってこれらのシートどうしを接合してもよい。
【0040】
次いで、接合された両シート2、3をロール11の周面部に沿わせてそのまま保持してさらに移動させた後、開孔ロール14の穿孔部140で第2のシート3における第1のシート2との非接合部分に開孔部6を形成する。
【0041】
開孔部6が形成された複合シート1は、ロール11からの吸引力が解かれた後、ロール11から離間される。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の製造装置10を用いた複合シートの製造方法によれば、ロール11及び12として、前述した歯車の組み合わせを用い且つ隣り合う歯車間に所定幅の空隙を設けることで、シートに破断や損傷を与えることなく高さの高い凸部5を形成することができる。従って、得られた複合シート1には毛羽立ちが発生しておらず、その結果、着用者の皮膚が刺激されて装着感が低下するおそれもない。そしてこのようにして一定の大きさで再現性良く形成された凸部5に対応した第2のシート3における凸部5に対向する第1のシート2との非接合部分に、開孔部6を良好に形成することができる。
【0043】
このようにして得られた複合シート1は、第2のシート3の第1のシート2との非接合部分に開孔部6が形成されており、液の浸透性が高く、柔軟性及び通気性にも優れているので、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品の表面シートに用いた場合に、粘性の高い液であっても凸部5の内部の空洞に浸透した液を滞りなくさらに内部に浸透させることができるほか、柔軟で肌触りが良く、ムレを防ぐことができる。
【0044】
図5には、第1のロール11の他の実施形態の要部拡大図が示されている。第1のロール11は、所定の歯幅を有する平歯車11a,11b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯幅は、複合シート1の凸部5におけるY方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1のロール11は、その周面が凹凸形状となる。
【0045】
本実施形態では、第1のロール11における各歯車の歯溝部には吸引孔110が形成されている。この歯溝部は、第1のロール11の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔110は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1のロール11とロール12との噛み合い部から第1のシート2と第2のシート3との合流部を経て開孔ロール14によって開孔部が形成されるまでの間で吸引が行われる様に制御されている。従って、第1のロール11とロールとの噛み合いによって凹凸形状が賦形された第1のシート2は、吸引孔110を通じた吸引力によって第1のロール11の周面に密着し、その凹凸形状が賦形された状態で保持される。この場合、図5に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、第1のシート2に無理な伸長力や、ロールの凹凸の噛み合いによる切断効果を加えることなく第1のシート2を第1のロール11の周面に密着させられる。空隙Gは歯車の全歯たけや第1のシート2の坪量にもよるが、0.1〜50mm、特に0.1〜5mm程度であれば、第1のシート2に破断や損傷を与えることなく密着を行うことができる。本実施形態のロールは、前述した歯車の組み合わせを用い且つ隣り合う歯車間に所定幅の空隙Gを設けることで、シートに破断や損傷を与えることなく高さの高い凸部を形成することができる。
【0046】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の複合シート1においては、第2のシート3と第1のシート2との非接合部に開孔部6を形成したが、毛羽立ちが生じる等によって複合シートの表面性(第1のシートの表面性)を損なわない範囲において、第1のシートの凸部5に開孔部を形成することもできる。第1のシート2に形成された開孔部の大きさは、第2のシート3に形成された開孔部の大きさよりも小さいことが好ましい。また、同じ凸部に対向して第1シート及び第2シート形成された開孔部について、第1のシートに形成された開孔部の大きさが、第2のシートに形成された開孔部の大きさよりも小さいことが好ましい。第1のシートに形成する開孔部の面積は、開孔ロール14の穿孔部140による開口形成の加工性の面から、第2のシート3に形成された開孔部6の面積以下に設計することが好ましく、第2のシート3に形成された開口部6の面積の90%以下であることが好ましく、特に70%以下であることがより好ましい。
【0047】
また、前記実施形態においては、複合シート1における凸部5及び接合部4の列は、隣り合う列と半ピッチずつずれて配置されていたが、半ピッチ以外のピッチで配置されていてもよく、同ピッチ(同位相)でもよい。同ピッチとした場合には、図6に示す複合シート1’のように、凸部5がY方向沿って伸びるように揃った形態の複合シートを得ることができる。
【0048】
また、前記実施形態においては、複合シート1は第1のシート2及び第2のシート3の2層構造であったが、第2のシート3の下側、もしくは第1のシート2の上側に、複合シート1に所定の機能を付与する一又は二以上の別のシートを更に積層や接合をしてもよい。
【0049】
また図3及び図4に示す実施形態のロールは、ロールの回転方向に沿って交互に凹凸部を形成するように、複数枚の歯車が回転軸に取り付けられてロール状となされており、また所定枚数の歯車おきに、該歯車間に所定幅の空隙部が形成されており、該空隙部が、ロールの回転軸方向に延びるようにロール内に形成された吸引路と連通しているものであればどのような形態のものであってもよい。
【0050】
また図3及び図4に示す実施形態のロールにおいては、2枚の第1の歯車11cと、これらの間に位置する1枚の第2の歯車11dとで一組の歯車群が構成されていたが、歯車群の構成はこれに限られず、少なくとも1枚の第2の歯車11dの少なくとも一方の側に、少なくとも1枚の第1の歯車11cを配し、これを以て一組の歯車群となすことができる。
【0051】
更に図3及び図4に示す実施形態のロールにおいては、2枚の第1の歯車11c間に第2の歯車11dを介在させることで空隙部19を形成していたが、空隙部の形成方法はこれに限られない。例えば第2の歯車11dを第1の歯車11cと一体化した形状の歯車を用いて空隙部を形成してもよい。
【0052】
本発明の複合シートは、前記実施形態のような吸収性物品の表面シート以外に、吸収性物品の外装材等の他の構成部材、使い捨ての着衣用のシートとしても用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 複合シート
2 第1のシート
3 第2のシート
4 接合部
5 凸部
11 第1のロール
110 吸引孔
12 第2のロール
15 回転軸
16 歯車群
17 凸部
18 凹部
19 空隙部
20 開口部
21 吸引路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシートと第2のシートとが部分的に接合されて多数の接合部が形成されているとともに、第1のシートには接合部以外の部分に凸部が形成されている複合シートを製造する方法であって、
周面部に互いに噛み合う凹凸形状を有する第1及び第2のロールを回転させながらそれらの噛み合い部分に第1のシートを供給し、
前記第1のシートを第1のロールの周面部に沿わせてそのまま保持して前記噛み合い部分から移動させた後、第2のシートを前記第1のシートに重ね合わせるように供給して両シートを部分的に接合し、
接合された前記両シートを第1のロールの周面部にそのまま保持して移動させた後、周面部に穿孔部を有し且つ前記第1のロールと同期して回転する開孔ロールで第2のシートにおける第1のシートとの非接合部分に開孔部を形成して、該第2のシートにおける前記凸部に対向する位置に該開孔部が形成された複合シートを製造しており、
前記第1ロールの凹凸形状の凹部分には吸引孔が形成されており、該吸引孔を通じて、前記第1のシートを、前記第1のロールと第2のロールとの噛み合い部から該第1のシートと前記第2のシートとの合流部を経て前記開孔ロールによって前記開孔部が形成されるまでの間継続して吸引しており、
前記開孔部が形成された前記複合シートを、前記第1ロールの前記吸引孔からの吸引を解くことにより、該第1ロールから離間させる複合シートの製造方法。
【請求項2】
前記開孔ロールで第2のシートの前記開孔部とともに第1のシートにも開孔部を形成する請求項1に記載の複合シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−251536(P2011−251536A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159726(P2011−159726)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【分割の表示】特願2005−324167(P2005−324167)の分割
【原出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】