説明

複合シートおよびその製造方法

【課題】本発明は、透明性に優れ、かつ表面に機能性のコート層が形成された、環状オレフィン系樹脂とガラス布との複合シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】片面に光および/または熱硬化コート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の、該コート層が形成されていない面間にガラス布が挟持されてなる複合シートであって、ASTM1003に準じて求められるヘイズが、3%以下であることを特徴とする複合シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シートおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、薄型ディスプレイや電子機器の光学機能シート、建材用シート、電気部品用基板として好適な耐熱透明シートである、環状オレフィン系樹脂とガラス布とを含む複合シートおよび該複合シートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、透明性、耐熱性、耐薬品性などに優れることから、該樹脂からなるシートは、薄型ディスプレイおよび携帯電話などの電子機器の光学機能シートに代表される光学材料、ガラス基板の代替基板として注目されている。
【0003】
このような環状オレフィン系樹脂からなるシートをより広範な用途に適用するためには、より高温の製造プロセスに対応すべく加熱時の形状安定性が必要とされ、特に加熱時のシートの線膨張率(線膨張係数)を低減することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1および2には、環状オレフィン系樹脂をコートしたガラスクロスを環状オレフィン系樹脂からなるシートで挟持し、加熱プレスすることにより、線膨張係数の低い環状オレフィン系樹脂とガラスクロスとの複合シートが得られることが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記手法で得られる複合シートは耐溶剤性が低く、表面硬度向上や光表面反射抑制のようなさらなる機能性付与のため、その表面に硬化性コート剤のウェットコーティングを実施すると、シート内でガラスと樹脂との剥離が起こり、透明性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−305077号公報
【特許文献2】特開2007−224270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、かつ表面に機能性のコート層が形成された、環状オレフィン樹脂とガラス布との複合シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題に鑑みて鋭意研究した結果、環状オレフィン系樹脂シートとガラス布とを含む複合シートに形成する際、熱プレス加工後に光および/または熱硬化性コート剤を用いて形成されてなるコート層を複合シート上に形成するのではなく、あらかじめ環状オレフィン系樹脂シートの片面に該コート層を形成することにより、クラックのない複合シートを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の複合シートは、片面に光および/または熱硬化コート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の、該コート層が形成されていない面間にガラス布が挟持されてなる複合シートであって、ASTM1003に準じて求められるヘイズが、3%以下であることを特徴とする。
【0010】
上記ガラス布は、ガラスクロスであることが好ましい。
上記光および/または熱硬化性コート層は、光硬化性のアクリレート系コート剤を用いて形成されてなることが好ましい。
【0011】
上記環状オレフィン系樹脂は、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有することが好ましく、さらに下記式(1)で表される化合物を開環(共)重合した後、水素添加した重合体であることがより好ましい。
【0012】
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に下記(i)〜(v)で示されるものを表すか、(vi)または(vii)を表す。
【0013】
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(iv)置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(v)極性基、
(vi)R1とR2、またはR3とR4が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に上記(i)〜(v)より選ばれるものを表す、
(vii)R1とR2、R3とR4、またはR2とR3が、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に上記(i)〜(v)より選ばれるものを表す。
mおよびpは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
【0014】
本発明の複合シートの製造方法は、片面に光および/または熱硬化性コート剤を用いて形成されてなるコート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の間に、該環状オレフィン系樹脂と同じであっても異なっていてもよい環状オレフィン系樹脂が含浸されてなるガラス布を挟持し、加熱プレスして得られる複合シートの製造方法であって、該コート層が、該複合シートの外側に形成されていることを特徴とする。
【0015】
上記ガラス布は、ガラスクロスであることが好ましい。
上記光および/または熱硬化性コート剤は、光硬化性のアクリレート系コート剤であることが好ましい。
【0016】
上記環状オレフィン系樹脂が、上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有することが好ましく、さらに上記式(1)で表される化合物を開環(共)重合した後、水素添加した重合体であることがより好ましい。
また、本発明の複合シートは、上記製造方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂とガラス布とを含む複合シートの透明性を損なうことなく、その表面のコート層由来の機能性を兼ね備えた複合シートを提供することができる。本発明の複合シートは、特に、薄型ディスプレイ等の光学機能シートなどに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の複合シートおよびその製造方法について詳細に説明する。
<複合シート>
本発明の複合シートは、片面に光および/または熱硬化コート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の、該コート層が形成されていない面間にガラス布が挟持されてなる複合シートであって、ASTM1003に準じて求められるヘイズが、3%以下であることを特徴とするものである。
【0019】
[ガラス布]
本発明で用いる「ガラス布」としては、例えば、ガラスクロス(ガラス織布)、ガラス繊維布、ガラス不織布などが挙げられ、機械的強度、耐熱性に優れる複合シートが得られることから、ガラスクロスおよびガラス繊維布が好ましく、特にガラスクロスが好ましい。
【0020】
ガラス布に用いられるガラスの種類としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが挙げられ、アルカリ金属などのイオン性不純物が少なく、入手が容易なEガラス、SガラスおよびNEガラスが好ましい。
【0021】
ガラスクロスの織り方は、例えば、平織、綾織、朱子織、からみ織、模紗織などが挙げられ、なかでも平織が好ましい。
ガラスクロスの厚さは、通常15〜200μm、好ましくは15〜100μmである。ガラスクロスは1枚単独で用いてもよく、2枚以上を重ねて用いてもよい。
【0022】
ガラス布は、上記「環状オレフィン系樹脂」との密着性を高めるために、該ガラス布表面を、アミノシラン、スチリルシラン、エポキシシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤やアルミキレート化合物等の金属キレート化合物などで処理してもよい。このような表面処理が施されていると、ガラス布と環状オレフィン系樹脂との密着性が高くなるので、複合シートの透明性を向上することができ、さらに複合シートに繰り返し曲げを与えた場合に生じる環状オレフィン系樹脂を含んでなるシートとガラス布との界面剥離による透明性の低下を抑制することが可能である。
【0023】
[光および/または熱硬化性コート層]
本発明で用いる「光および/または熱硬化性コート層」は、光および/または熱硬化性コート剤を用いて形成されてなることが好ましい。
【0024】
(光および/または熱硬化性コート剤)
本発明の「光および/または熱硬化性コート剤」(以下「コート剤」ともいう。)は、得られた複合シートに表面硬度向上効果(ハードコート)、光表面反射抑制効果(ARコート、LRコート)、アンチグレア効果(AGコート)、ガス透過抑制効果、すべり性向上効果などを付与するために使用されるものである。
【0025】
本発明で用いる「コート剤」としては、例えば、熱および/または光硬化性のアクリレート系、シリコーン系、エポキシ系、オキセタン系、フッ素ポリマー系、ウレタン系、アラミド系、イミド系など従来公知のコート剤が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0026】
これらのうち、アクリレート系、エポキシ系およびシリコーン系からなる群より選択される少なくとも1種のコート剤が、環状オレフィン系樹脂からなるシートとの密着性に優れることから、好適である。
【0027】
アクリレート系コート剤としては、透明性を損なわなければ、アクリル系モノマーに由来する構造単位を含む光硬化性のアクリル系樹脂および熱硬化性のアクリル系樹脂のいずれであってもよいが、製造方法の簡便性から光硬化性のアクリル系樹脂が好ましい。
このような「アクリル系モノマー」としては、ラジカル重合性を有する1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する不飽和カルボン酸エステルモノマーが用いられる。
【0028】
「1つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系モノマー」として、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0029】
「2つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系モノマー」として、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等のアルカンジオールジアクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のポリアルキレングリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノールジアクリレートなどが挙げられる。
【0030】
「(メタ)アクリロイル基を3つ以上有するアクリル系モノマー」としては、3価以上の多価アルコールの(メタ)アクリレートが挙げられ、具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールポリアクリレートなどである。
【0031】
これらのアクリル系モノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また上述の「アクリル系モノマー」の他に、光ラジカル開始剤などの添加剤や溶媒、さらにポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーおよび/またはポリマーを含むことができる。
【0032】
なお、光硬化性アクリレート系コート剤は、コート剤に含まれる光照射によりラジカルを発生する「光ラジカル開始剤」により反応性ラジカルが発生し、それによりアクリル系モノマーが重合することによりコート剤が硬化しコート層が形成される。このような「光ラジカル開始剤」としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0033】
これら光ラジカル開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光ラジカル開始剤の添加量は、コート剤に含まれるアクリル系モノマーの総量に対して、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。光ラジカル開始剤の添加量が0.1重量%未満であると、硬化速度が遅く、またコート層の機械的強度が充分に発揮されない。また添加量が10重量%を超えると、コート剤の保存安定性が低下する。
【0034】
また、アクリレート系コート剤には、粘度調整剤、光増感剤、レベリング剤等の添加剤を含んでもよい。
このような光硬化性のアクリレート系コート剤としては、市販のものを用いてもよく、例えば、デソライトZ7524(JSR(株)製)、デソライトKZ6395(JSR(株)製)などが好適である。
【0035】
(光および/または熱硬化性コート層)
環状オレフィン系樹脂からなるシートの片面に光および/または熱硬化性コート剤によりコート層を形成する際、該シートとコート層との密着性をより高めるために、コート層を形成する前に、シート表面に表面処理が施されていることが好ましい。
【0036】
このような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、200〜300nmの波長を有するUVオゾン処理、200nm以下の波長を有する電磁波放射線処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知の方法が用いられるが、製造方法の簡便性、生産性の観点から、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理が好適である。
【0037】
コート層の形成方法としては、例えば、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるようにコート剤を直接塗工する方法;1枚または2枚以上からなるセパレータの所定の剥離処理面に、コート剤を乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗工し、乾燥させて得られたコート層をシート上に転写する方法などが挙げられる。
【0038】
コート剤の塗工は、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いて行うことができる。
【0039】
コート層の硬化は、熱硬化であれば加熱乾燥炉内にコート液を塗工したシートを入れ、加熱された空気または不活性ガスを当て加熱することにより、コート層が硬化する。加熱条件は、用いる熱硬化性コート剤の種類により選択される。
【0040】
光硬化の場合は、ハロゲンランプ、水銀ランプなどのような光源を用い、コート液を塗工したシートに光照射することによりコート層を硬化する。光源の照度、光照射量、照射波長などは、用いる光硬化性コート剤の種類により選択される。また、光照射による硬化の後に、さらに硬化を促進するため、コート層が形成されたシートを加熱してもよい。
【0041】
コート層の硬化後の厚さは、複合シートに機能性を付与するに充分な厚さを要し、具体的には0.1〜50μmが好ましく、0.5〜20μmがより好ましく、1〜10μmが特に好ましい。
【0042】
[環状オレフィン系樹脂]
本発明で用いられる「環状オレフィン系樹脂」は、環状オレフィン系単量体を含む単量体(組成物)を開環(共)重合または付加(共)重合して得られるものであって、次のような(共)重合体が挙げられる。
【0043】
(a)下記式(1)で表される化合物の開環(共)重合体。
(b)下記式(1)で表される化合物と共重合性単量体との開環共重合体。
(c)(a)または(b)の開環(共)重合体の水素添加物。
(d)(a)または(b)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化した後、水素添加した(共)重合体。
(e)下記式(1)で表される化合物と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(f)下記式(1)で表される化合物、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体の付加(共)重合体およびその水素添加物。
(g)下記式(1)で表される化合物とアクリレートとの交互共重合体。
【0044】
【化2】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に下記(i)〜(v)で示されるものを表すか、(vi)または(vii)を表す。
【0045】
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(iv)置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(v)極性基、
(vi)R1とR2、またはR3とR4が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に上記(i)〜(v)より選ばれるものを表す、
(vii)R1とR2、R3とR4、またはR2とR3が、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に上記(i)〜(v)より選ばれるものを表す。
mおよびpは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
【0046】
これら(a)〜(g)のうち、(c)が、環状オレフィン系樹脂の耐熱性、耐候性、耐湿性、機械的強度、易成型性の観点から好適である。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0047】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(NB)、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−イソプロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロイソプロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン。
【0048】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式(1)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜30、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の炭化水素基を表すのが望ましい。該炭化水素基は、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜2、特に好ましくはメチル基であることが望ましい。
【0049】
このようなアルキル基が、下述する下記式:−(CH2nCOORで表される極性基が結合した炭素原子に結合している場合、得られる環状オレフィン系樹脂の吸湿性を低減できるため好適である。
上記式(1)中、R2およびR4は、それぞれ独立に、水素原子または1価の極性基であるのが望ましい。
【0050】
「1価の極性基」としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられる。これらの極性基は、メチレン基などの極性を有さない連結基を介して結合していてもよいし、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基などの極性を有する2価の有機基を介して結合していてもよい。これらの極性基のうち、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基およびアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基およびアリロキシカルボニル基が好ましい。
【0051】
また、「1価の極性基」が、式:−(CH2nCOORで表される場合、得られる環状オレフィン系樹脂が、高いガラス転移温度〔Tg〕、低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなるため好ましい。
【0052】
上記式:−(CH2nCOORにおいて、Rは、炭素原子数1〜12、好ましくは炭素原子数1〜4、より好ましくは炭素原子数1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基であることが望ましい。nは、通常0〜5を表すが、好ましくは0〜3を表す。nの値が小さいものほど、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度〔Tg〕が高くなるので好ましく、さらにnが0を表す場合は、その合成も容易である点で好ましい。
【0053】
上記式(1)中、mおよびpは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すのが望ましく、m+p=0〜4を満たすことが好ましく、m+p=0〜2がより好ましく、m=1のときp=0であることが特に好ましい。m=1、p=0である場合は、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度〔Tg〕が高く、かつ該樹脂を含んでなるシートの機械的強度も優れるため、好適である。
【0054】
本発明において、環状オレフィン系樹脂は、公知の方法により得ることができ、例えば、特開平1−132626号公報、特開2006−77257号公報および特開2008−955号公報に記載の方法により得ることができる。
【0055】
環状オレフィン系樹脂の分子量としては、テトラヒドロフランに溶解してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量〔Mn〕で、好ましくは8,000〜100,000、より好ましくは10,000〜80,000、さらに好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量〔Mw〕で、好ましくは20,000〜300,000、より好ましくは30,000〜250,000、さらに好ましくは40,000〜200,000のものが好適である。また、分子量分布〔Mw/Mn〕は、好ましくは2.0〜4.0、より好ましくは2.5〜3.7であり、さらに好ましくは2.8〜3.5である。分子量分布の小さい樹脂を用いることにより、機械的強度に優れる成形体が得られるため好適である。
また、数平均分子量および重量平均分子量が上記範囲内であることによっても機械的強度に優れた成形体が得られる。
【0056】
[環状オレフィン系樹脂からなるシート]
環状オレフィン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲において、さらに機械的特性、易成形性を付与するための機能性樹脂、および酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの添加剤を配合することができる。
【0057】
「機能性樹脂」としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリレート、ABS等のオリゴマーもしくはポリマー;ブダジエンゴム、スチレンゴム、ブタジエン-スチレンゴム等のゴム状ポリマー、オリゴマーおよびその水添体などが挙げられる。
【0058】
「酸化防止剤」としては、例えば、フェノール系、リン系、硫黄系、ピペリジン系などの酸化防止剤が挙げられ、特に耐熱性に優れることからフェノール系の酸化防止剤が好ましい。
【0059】
なお「フェノール系の酸化防止剤」としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。これらのうち、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートが好ましい。
【0060】
「紫外線吸収剤」としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、サリシレート系などの紫外線吸収剤が挙げられる。
「難燃剤」としては、例えば、臭素系、ホスファゼン系、リン酸エステル系、アンチモン系、イントメッセント系、無機水酸化物、シリコーン系などの難燃剤が挙げられる。
【0061】
なお、後述する溶液キャスティング法により、環状オレフィン系樹脂からなるシートを成形する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することでシートの製造を容易にすることができる。
【0062】
これら添加剤は、環状オレフィン系樹脂からなるシートを製造する際に、環状オレフィン系樹脂とともに添加してもよいし、環状オレフィン系樹脂を製造する前に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるが、機能性樹脂の場合、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、その他の添加剤の場合、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部であることが望ましい。
【0063】
「環状オレフィン系樹脂からなるシート」は、上記「環状オレフィン系樹脂」の他に、必要に応じて、溶媒、機能性樹脂、添加剤などを含む樹脂組成物をシート状に成型したものである。
【0064】
このようなシートの成型方法としては、所望の形状により適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、溶液キャスティング法、溶融押出法、射出成形法、金型成形法などが挙げられる。
【0065】
得られたシートの厚さは、希望する複合シートの厚さに対応して適宜選択されるが、得られた複合シートにおける環状オレフィン系樹脂の含有率が少ないほど、複合シートの線膨張係数が低下するので、該シートの厚さも薄い方が好ましく、具体的には、5〜100μmがより好ましく、特に10〜50μmが好ましい。
【0066】
<複合シートの製造方法>
本発明の複合シートの製造方法は、片面に光および/または熱硬化性コート剤を用いて形成されてなるコート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の間に、該環状オレフィン系樹脂と同じであっても異なっていてもよい環状オレフィン系樹脂が含浸されてなるガラス布を挟持し、加熱プレスして得られる複合シートの製造方法であって、該コート層が、該複合シートの外側に形成されていることを特徴とするものである。
【0067】
[環状オレフィン系樹脂に含浸させてなるガラス布]
「上記『環状オレフィン系樹脂』と同じであっても異なっていてもよい環状オレフィン系樹脂に含浸させてなるガラス布」は、あらかじめ、上記「ガラス布」を、下記「溶媒」に溶解した「上記『環状オレフィン系樹脂』と同じであっても異なっていてもよい環状オレフィン系樹脂」溶液に浸漬させた後、乾燥させることによって得られる。
【0068】
上記「環状オレフィン系樹脂」と異なる環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン系単量体を含む単量体(組成物)を開環(共)重合または付加(共)重合して得られるものであって、上記(a)〜(g)に記載されているような(共)重合体が挙げられ、これらのうち上記(c)が、環状オレフィン系樹脂の耐熱性、耐候性、耐湿性、機械的強度、易成型性の観点から好適である。
【0069】
このような環状オレフィン系樹脂としては、上記シートに用いられている「環状オレフィン系樹脂」と同じものが好ましい。
環状オレフィン系樹脂を溶解させる「溶媒」としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン;クロロベンゼン等のハロゲン化アリール化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタン等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0070】
用いる溶媒の量は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは50〜2,000重量部、より好ましくは100〜1,000重量部である。
浸漬させる時間は、通常1〜60分間、好ましくは5〜30分間である。
【0071】
浸漬させる温度は、通常室温〜40℃である。
浸漬させる時間が1分間未満であると、環状オレフィン系樹脂の含浸が不充分となる場合があり、また浸漬させる温度が40℃を超えると溶媒揮発により環状オレフィン系樹脂を溶解させた溶液の樹脂含有率が上昇し含浸不良となる場合がある。
【0072】
乾燥時間は、通常1〜24時間、好ましくは5〜12時間である。
乾燥温度は、通常室温〜200℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜130℃である。
【0073】
環状オレフィン系樹脂を溶解させた溶液には、環状オレフィン系樹脂や溶媒以外に、上述した環状オレフィン系樹脂からなるシートと同様に、機能性樹脂、および酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの添加剤を配合することができる。
【0074】
また、環状オレフィン系樹脂を溶解させた溶液の代わりに、アミノシラン、スチリルシラン、エポキシシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤または金属キレート化合物と、環状オレフィン系樹脂とを含む溶液を用いてもよい。この場合、[ガラス布]の項目中で述べた表面処理は不要である。
【0075】
シランカップリング剤または金属キレート化合物の濃度は、このような溶液の総量に対して、処理効率の観点から、通常1〜50重量%である。ただし、環状オレフィン系樹脂を含まない溶液では、通常3〜50重量%である。
【0076】
複合シートに含まれるガラス布の含有量は、10〜70重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましい。ガラス布の含有量が上記下限値未満であると、複合化による低線膨張化の効果が認められず、上記上限値を超えると、力学的強度の大幅な低下が生じ、プラスチックスシートの重要な特長である曲げ強度が不足し、軽量化が図れない場合がある。
【0077】
[加熱プレス]
加熱プレスの好ましい条件として、温度:200〜300℃、真空度:100〜1Torr、圧力:5〜15MPaおよび時間:5〜20分間が望ましい。
【0078】
加熱プレス、すなわち加熱圧縮成形の温度、圧力および時間が上記下限値未満であると、シートとガラス布とが密着不良となり、基板の透明性が低下する場合がある。また、加熱圧縮成形の温度、時間が上記上限値を超える、または真空度が上記下限値未満であると、環状オレフィン系樹脂が熱劣化および/または酸化劣化するため、基板の着色原因となる場合がある。さらに、加熱圧縮成形の圧力が上記上限値を超えると、ガラス布の形状が変形し、均一な基板が得られない場合がある。
【0079】
[複合シート]
本発明の複合シートは、上記「複合シートの製造方法」により製造されることを特徴とするものである。なお、本発明において、シートとは、フィルムおよび膜を包含するものである。
【0080】
このような複合シートは、透明基板であり、上述したように、「光および/または熱硬化性コート剤から形成されるコート層」を、その片面に有する「環状オレフィン系樹脂からなるシート」2枚の間に、「該環状オレフィン系樹脂と同じであっても異なっていてもよい環状オレフィン系樹脂に含浸されてなるガラス布」を挟持し、加熱プレスして得られるものであって、該コート層が、該複合シートの外側に形成されている。
【0081】
(複合シートの特性)
複合シートのヘイズは、3%以下、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。なお、全光線透過率およびヘイズは、Gardner社製ヘイズ−光線透過率測定機(Haze−Gard Plus型)を使用して、ASTM1003に準じて測定する。
【0082】
複合シートの全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。なお、複合シートの全光線透過率を90%以上とするには、環状オレフィン系樹脂とガラス布との屈折率差を0.01以内に調整する必要があり、環状オレフィン系樹脂の組成を変更してガラス布の屈折率に合わせるか、または環状オレフィン系樹脂の屈折率と一致したガラス布を用いるか、いずれかの調整法を選択することができる。環状オレフィン系樹脂とガラス布との屈折率差は、0.01以下が好ましく、0.005以下がより好ましい。屈折率差が0.01を超えると、得られる複合シートの透明性が劣ることがある。
【0083】
複合シートのヘイズおよび全光線透過率が上記範囲内であると、透明基板として光学用途に好適である。
複合シートの表面鉛筆硬度は、好ましくは2B以上、より好ましくはHB以上である。なお、表面鉛筆硬度は、東洋精機(株)製電動式引掻塗膜硬さ試験機で、加重500g、引っかき速度1mm/sで鉛筆引っかき試験を実施し、JIS K5600−5−4に基づき求める。複合シートの表面鉛筆硬度がHB以上であると、基板としての耐擦傷性、耐打鍵性に優れるため好適である。
【0084】
複合シートの厚さは、好ましくは50〜1,000μm、より好ましくは80〜200μmである。複合シートの厚さが上記範囲内であると、透明基板として屈曲性、折り曲げ性易成形性に優れ、かつ機械的強度にも優れるため好適である。
【0085】
複合シートの50〜140℃における線膨張係数は、50ppm/℃以下であることが好ましく、40ppm/℃以下がより好ましく、30ppm/℃以下が特に好ましい。線膨張係数が上記範囲内であると、温度による複合シートの寸法安定性が高く、また、光学異方性が少ないので、ガラス代替用途に好適となる。
【実施例】
【0086】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、「部」は断りがない限り「重量部」を表す。
各種物性の測定は、下記(1)〜(6)に記載の方法に従った。
【0087】
(1)水素添加率
核磁気共鳴分光計(NMR)はBruker社製AVANCE500を用い、d−クロロホルムを測定溶媒とし、1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、水素添加率(%)を算出した。
【0088】
(2)ガラス転移温度〔Tg〕
セイコーインスツル(株)製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。Tg(℃)は、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度(A点)より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
【0089】
(3)数平均分子量〔Mn〕、重量平均分子量〔Mw〕および分子量分布〔Mw/Mn〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8重量%、注入量:70μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0090】
(4)屈折率
環状オレフィン樹脂を溶液キャスティング法により厚さ100μmのシート状に成形した試験片を用いて、METRICN社製屈折率測定機(プリズムカプラ 2000型)によりシートの屈折率を測定した。
【0091】
(5)全光線透過率
Gardner社製ヘイズ−光線透過率測定機(Haze−Gard Plus型)を使用し、ASTM1003に準じて全光線透過率(%)を測定した。
【0092】
(6)ヘイズ
Gardner社製ヘイズ−光線透過率測定機(Haze−Gard Plus型)を使用し、ASTM1003に準じてヘイズ(%)を測定した。
【0093】
(7)線膨張係数
熱機械装置(TMA;Thermal Mechanical Analysis)/SS6100(セイコーインスツル(株)製)を用いて、幅10mm、長さ10mmに調製した複合シートを、25℃→150℃→25℃→300℃の温度プロファイルで10℃/minの速度で加温冷却しながら、印加荷重を1gとして、該シート面に平行に圧縮試験を行った。2回目の昇温時の50℃〜130℃の温度範囲における複合シートの並行面における伸び量を100で割った値を該シートの線膨張係数(ppm/K)とした。
【0094】
(8)表面鉛筆硬度
東洋精機(株)製電動式引掻塗膜硬さ試験機で、加重500g、引っかき速度1mm/sで鉛筆引っかき試験を実施し、JIS K5600−5−4に基づき表面鉛筆硬度を求めた。
【0095】
[合成例1]
下記式(2)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)225部と、下記式(3)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(NB)25部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)27部と、トルエン(重合反応用溶媒)200部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。
【0096】
次いで、反応容器内の溶液に、開環重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6モル/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(0.025モル/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0097】
【化3】

このようにして得られた開環重合体溶液1000部をオートクレーブに仕込み、該開環重合体溶液に、水素添加触媒としてRuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。
【0098】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂(A1)」ともいう。)を得た。
【0099】
このようにして得られた樹脂(A1)の水素添加率は99.9%、ガラス転移温度〔Tg〕は130℃、数平均分子量〔Mn〕は20800、重量平均分子量〔Mw〕は62000、分子量分布〔Mw/Mn〕は3.0、屈折率は1.513であった。
【0100】
[合成例2]
DNM100部と、1−ヘキセン18部と、トルエン300部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0101】
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。
【0102】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A2」ともいう。)を得た。
【0103】
このようにして得られた樹脂(A2)の水素添加率は99.9%、ガラス転移温度〔Tg〕は130℃、数平均分子量〔Mn〕は21000、重量平均分子量〔Mw〕は62000、分子量分布〔Mw/Mn〕は3.2、屈折率は1.512であった。
【0104】
[製造例1]
環状オレフィン系樹脂(A1)100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部を加え、トルエン233重量部に溶解し、その樹脂溶液をADVANTEC社製の孔径5μmのメンブレンフィルターを用い濾過した。得られた樹脂溶液を、乾燥後の厚さが20μmとなるようアプリケーターを用いて25℃でキャストし、室温で12時間静置し溶剤を蒸発させ、続いて真空下110℃にて5時間保持し、環状オレフィン系樹脂シートを得た。得られたシートの残留溶媒量の残留溶媒量は0.1%以下であった。
【0105】
得られたシートを、コロナ処理機(春日電機(株)製CORONA GENERATOR AGF−B1G型)に入れ、0.45kW、6m/minでコロナ処理を実施した。
次に、そのコロナ処理面に、光硬化性アクリレート系コート剤としてデソライトZ7524(JSR(株)製)を、バーコーターを使用して硬化後の厚さが5μmとなるようにコートし、熱風乾燥機(ヤマト科学(株)製WINDY OVEN(WFO−450SD型))80℃で1分間乾燥した。
【0106】
次に、UV露光機(岩崎電気(株)製US2−X0405型、光源250w水銀灯)で積算光量が540mJ/cm2となるように露光させ片面にコート層が形成されたシート(以下「シート(a1)」ともいう。)を得た。
【0107】
[製造例2]
製造例1において、光硬化性アクリレート系コート剤としてデソライトKZ6395(JSR(株)製)を用いた以外は製造例1と同様にして、片面にコート層が形成されたシート(以下「シート(a2)」ともいう。)を得た。
【0108】
[製造例3]
製造例1において、コート層を形成しない以外は製造例1と同様にしてシート(以下「シート(a3)」)を得た。
【0109】
[製造例4]
環状オレフィン系樹脂(A1)100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部を加え、トルエン400重量部に溶解し、その樹脂溶液をADVANTEC社製の孔径5μmのメンブレンフィルターを用い濾過した。得られた樹脂溶液をステンレス製バットに入れ、そこにガラス布として、日東紡製ガラスクロスNE1080(厚さ55μm、屈折率1.512)を10cm×10cmにカットしたものを10分間浸漬し、ガラス布に環状オレフィン系樹脂(A1)を含浸させた。その後、環状オレフィン系樹脂(A1)が含浸されたガラス布を取り出し、1時間風乾し、さらに真空下100℃で2時間乾燥した。このようにして得られたものを含浸ガラスクロス(b1)とする。
【0110】
[製造例5]
製造例1において、樹脂(A1)の代わりに樹脂(A2)を用いた以外は製造例1と同様にして、片面にコート層が形成されたシート(以下「シート(a4)」ともいう。)を製造した。
【0111】
[製造例6]
製造例2において、樹脂(A1)の代わりに樹脂(A2)を用いた以外は製造例2と同様にして、片面にコート層が形成されたシート(以下「シート(a5)」ともいう。)を製造した。
【0112】
[製造例7]
製造例3において、樹脂(A1)の代わりに樹脂(A2)を用いた以外は製造例3と同様にして、シート(以下「シート(a6)」ともいう。)を製造した。
【0113】
[製造例8]
製造例4において、樹脂(A1)の代わりに樹脂(A2)を用いた以外は製造例4と同様にして、含浸ガラスクロス(b2)を製造した。
【0114】
[実施例1]
含浸ガラスクロス(b1)を、12cm×12cmにカットした2枚の環状オレフィン系樹脂からなるシート(a1)の間に、そのコート層が外側となるように挟み入れ、さらに保護フィルムとして東レデュポン(株)製ポリイミドフィルムで挟み、真空プレス機(関西ロール(株)製PEWR−1030型)で、温度260℃、真空度50Torr、圧力30MPaで10分間プレスした。その後、保護フィルムを剥離し、その結果、透明な複合シート(c1)を得た。
得られた複合シート(c1)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0115】
[実施例2]
実施例1において、シート(a1)の代わりに(a2)を用いた以外は実施例1と同様にして、複合シート(c2)を得た。複合シート(c2)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0116】
[実勢例3]
実施例1において、シート(a1)の代わりに(a4)を用い、さらに含浸ガラスクロス(b1)の代わりに(b2)を用いた以外は実施例1と同様にして、複合シート(c3)を得た。複合シート(c3)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0117】
[実施例4]
実施例3において、シート(a4)の代わりに(a5)を用いた以外は実施例3と同様にして、複合シート(c4)を得た。複合シート(c4)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0118】
[比較例1]
実施例1において、シート(a1)の代わりに(a3)を用いた以外は実施例1と同様にして、複合シート(c5)を得た。複合シート(c5)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0119】
[比較例2]
比較例1で得られた複合シート(c5)を、コロナ処理機(春日電機(株)製CORONA GENERATOR AGF−B1G型)に入れ、0.45kW、6m/minでコロナ処理を実施した。次に、そのコロナ処理面に、デソライトZ7524(JSR(株)製)を、バーコーターを使用して硬化後の厚さが5μmとなるようにコートし、熱風乾燥機(ヤマト科学(株)製WINDY OVEN(WFO−450SD型))80℃×1min乾燥した。次に、UV露光機(岩崎電気(株)製US2−X0405型、光源250w水銀灯)で積算光量が540mJ/cm2となるように露光させた。コート面と反対の面にも同様の操作を実施し、両面にコート層が形成された複合シート(c6)を得た。複合シート(c6)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0120】
[比較例3]
比較例1において、シート(a3)の代わりに(a6)を用い、さらに含浸ガラスクロス(b1)の代わりに(b2)を用いた以外は比較例1と同様にして、複合シート(c7)を得た。複合シート(c7)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0121】
[比較例4]
比較例2において、複合シート(c5)の代わりに(c7)を用いた以外は比較例2と同様にして、複合シート(c8)を得た。複合シート(c8)の(5)〜(8)に係る物性値を表1に示す。
【0122】
【表1】

表1から、環状オレフィン系樹脂と含浸ガラスクロスとの複合シートに、その表面硬度を向上するためアクリル系コート層を形成させた場合、実施例1〜4のように該複合シートを、2枚の片面にコート層を形成したシートの間に、ガラスクロスを、コート層が複合シートの外側となるように挟持して加熱プレスする方法で製造すると、複合シートの透明性を損なわず、かつコート層の機能性を付与できるのに対し、比較例2,4のように、加熱プレスにより複合シートを製造した後、その複合シート上でコート層を形成すると、シート内にクラック発生し、透明性やヘイズが悪化することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明により製造される、表面に機能性コート層が形成された複合シートは、薄型ディスプレイ、携帯電話などの電子機器の光学機能シートに代表される光学材料、ガラス基板の代替基板などに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に光および/または熱硬化コート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の、該コート層が形成されていない面間にガラス布が挟持されてなる複合シートであって、
ASTM1003に準じて求められるヘイズが、3%以下であることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
上記ガラス布が、ガラスクロスであることを特徴とする請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
上記光および/または熱硬化性コート層が、光硬化性のアクリレート系コート剤を用いて形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合シート。
【請求項4】
上記環状オレフィン系樹脂が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合シート。
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に下記(i)〜(v)で示されるものを表すか、(vi)または(vii)を表す。
(i)水素原子、
(ii)ハロゲン原子、
(iii)酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を含む置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(iv)置換または非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、
(v)極性基、
(vi)R1とR2、またはR3とR4が、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に上記(i)〜(v)より選ばれるものを表す、
(vii)R1とR2、R3とR4、またはR2とR3が、相互に結合して形成された芳香環あるいは非芳香環の単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、該結合に関与しないR1〜R4は、相互に独立に上記(i)〜(v)より選ばれるものを表す。
mおよびpは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。)
【請求項5】
上記環状オレフィン系樹脂が、上記式(1)で表される化合物を開環(共)重合した後、水素添加した重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合シート。
【請求項6】
片面に光および/または熱硬化性コート剤を用いて形成されてなるコート層を有する環状オレフィン系樹脂からなるシート2枚の間に、該環状オレフィン系樹脂と同じであっても異なっていてもよい環状オレフィン系樹脂が含浸されてなるガラス布を挟持し、加熱プレスして得られる複合シートの製造方法であって、
該コート層が、該複合シートの外側に形成されていることを特徴とする複合シートの製造方法。
【請求項7】
上記ガラス布が、ガラスクロスであることを特徴とする請求項6に記載の複合シートの製造方法。
【請求項8】
上記光および/または熱硬化性コート剤が、光硬化性のアクリレート系コート剤であることを特徴とする請求項6または7に記載の複合シートの製造方法。
【請求項9】
上記環状オレフィン系樹脂が、上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
【請求項10】
上記環状オレフィン系樹脂が、上記式(1)で表される化合物を開環(共)重合した後、水素添加した重合体であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の複合シートの製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかの複合シートの製造方法により製造されることを特徴とする複合シート。

【公開番号】特開2010−184494(P2010−184494A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4705(P2010−4705)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】