説明

複合シートおよび複合シートの製造方法

【課題】線膨張係数および厚みムラの小さい、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シート、ならびに前記特性を有する複合シートを生産性良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】線膨張係数が30ppm/K以下であり、厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内である、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シート。前記複合シートは、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの混合物を、下記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形することにより製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シート、および複合シートの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、薄型ディスプレイ、電子機器の光学機能シート;建材用シート;電気部品用基板などとして好適な耐熱透明シートである、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シート、および複合シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、透明性、耐熱性および耐薬品性などに優れる。このため、前記樹脂からなるシートは、薄型ディスプレイおよび携帯電話などの電子機器の光学機能シートに代表される光学材料、ガラス基板の代替基板として注目されている。
【0003】
このような環状オレフィン系樹脂からなるシートをより広範な用途に適用するためには、より高温の製造プロセスに対応すべく加熱時の形状安定性が必要とされ、特に加熱時のシートの線膨張率(線膨張係数)を低減することが求められている。
【0004】
例えば、透明樹脂とガラスフィラーとを混合して線膨張係数の低い透明シートを製造する手法としては、ガラスクロスにエポキシ系またはアクリル系の硬化性モノマーを含浸させ、さらに熱を加えることで該モノマーを硬化してシート化する手法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0005】
しかしながら、上記手法は、硬化性モノマーを硬化するために長時間の加熱工程が必要であり、シートの生産性に劣るという問題がある。
また、環状オレフィン系樹脂をコートしたガラスクロスを環状オレフィン系樹脂からなるシートで挟持し加熱プレスすることにより、線膨張係数の低い、環状オレフィン系樹脂とガラスクロスとの複合シートが得られることが知られている(特許文献3、4参照)。
【0006】
しかしながら、上記手法は製造工程が長いため、シートの生産性が悪い。また、加熱プレス工程での加圧不均一性により得られるシートの厚みムラが大きく、シートの光学物性にばらつきが生じることが多い。このため、上記複合シートは光学材料として利用しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3728441号公報
【特許文献2】特開2004−252435号公報
【特許文献3】特許第3265709号公報
【特許文献4】特開2007−224270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、線膨張係数および厚みムラの小さい、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シート、ならびに前記特性を有する複合シートを生産性良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、環状オレフィン系樹脂と
ガラスフィラーとの混合物を特定の条件において押出機によりシート状に成形することにより、上記特性を有し、しかも生産性に優れた複合シートを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]に関する。
【0010】
[1]環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シートであって、線膨張係数が30ppm/K以下であり、該シートの厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内である複合シート。
【0011】
[2]前記ガラスフィラーが、ガラス繊維である前記[1]に記載の複合シート。
[3]前記環状オレフィン系樹脂が、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構造単位を有する前記[1]または[2]に記載の複合シート。
【0012】
【化1】

[式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の1価の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1およびR2、またはR3
およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1〜R4のうち任意の2つは
、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。mおよびnは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。]
【0013】
[4]環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの混合物を、下記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形し、厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内であって、線膨張係数が30ppm/K以下である複合シートを製造する複合シートの製造方法。
【0014】
【数1】

[5]前記ガラスフィラーが、ガラス繊維である前記[4]に記載の複合シートの製造方法。
【0015】
[6]前記環状オレフィン系樹脂が、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構造単位を有する前記[4]または[5]に記載の複合シートの製造方法。
【0016】
【化2】

[式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の1価の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1およびR2、またはR3
およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1〜R4のうち任意の2つは
、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。mおよびnは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。]
【0017】
[7]前記環状オレフィン系樹脂が、前記一般式(1)で表される単量体を開環(共)重合した後、さらに水素添加して得られる(共)重合体である前記[6]に記載の複合シートの製造方法。
【0018】
[8]前記[4]〜[7]の何れかに記載の複合シートの製造方法であって、前記環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを押出機により複合化してストランドを得る工程と、該ストランドを裁断してペレットを得る工程と、該ペレットを前記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形する工程とを含む複合シートの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、線膨張係数および厚みムラの小さい、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シート、ならびに前記特性を有する複合シートを生産性良く製造する方法が提供される。このような複合シートは、透明性および加熱時の形状安定性に優れる。
【0020】
すなわち、本発明の製造方法においては、特定の条件において押出成形により環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの複合シートを製造する。前記手法は、加熱工程を特に要することなく、連続的に操業することができるため、生産性に優れ、しかもシートの厚み制御が容易であるという特徴を有する。
【0021】
従って、上記手法により、従来では得られなかった、線膨張係数および厚みムラの小さい、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例1で用いられた複合シートの製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の複合シートおよび複合シートの製造方法について詳細に説明する。
〔複合シート〕
本発明の複合シートは、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有し、線膨張係数が30ppm/K以下であり、該シートの厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内であることを特徴とする。
【0024】
複合シートの線膨張係数は、30ppm/K以下、より好ましくは25ppm/K以下、さらに好ましくは20ppm/K以下である。線膨張係数が前記範囲にある複合シートは、光学材料やガラス基板の代替基板として好適に用いることができる。なお、本発明において、複合シートの線膨張係数は小さい程好ましいが、その下限値は、通常は5ppm/K程度である。
【0025】
複合シートの厚み平均は、好ましくは10〜800μm、より好ましくは20〜500μm、さらに好ましくは40〜300μmである。複合シートの厚み平均が前記範囲を下回ると、該複合シートに対して延伸加工などの後加工を施す場合に機械的強度不足などの問題が生じることがある。一方、複合シートの厚み平均が前記範囲を上回ると、厚みや表面性などが均一なシートを製造することが難しいばかりか、得られたシートを巻き取ることが困難になることがある。
【0026】
複合シートの厚み分布(厚みムラ)は、該シートの厚みの最大値と最小値との差が、厚み平均の10%以内、好ましくは7%以内、より好ましくは5%以内であり;また、複合シートの厚みの最大値と最小値との差が、好ましくは20μm以内、より好ましくは10μm以内、さらに好ましくは6μm以内である。複合シートの厚み分布が前記値を超えると、光学機能シートなどの光学材料として利用する際、厚みの不均一性による光学特性のばらつきが生じることがある。なお、本発明において、複合シートの厚み分布(厚みムラ)は小さい程好ましいが、その下限値は、通常は1%程度(換言すれば、1〜2μm程度)である。
【0027】
複合シートの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が前記範囲にある複合シートは、光学材料として好適に用いることができる。なお、本発明において、複合シートの全光線透過率は大きい程好ましいが、その上限値は、通常は97%程度である。
【0028】
複合シートの機械的熱変形温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは140℃以上である。また、その上限値は、通常は250℃程度である。機械的熱変形温度が前記範囲にある複合シートは、光学材料として好適に用いることができる。
【0029】
なお、複合シートの上記物性は、後述する実施例で記載する条件において測定される。また、上記各種物性を有する複合シートは、後述する〔複合シートの製造方法〕の欄に記載の方法により、容易に製造することができる。
【0030】
本発明の複合シートは、上記のように、透明性および加熱時の形状安定性に優れ、線膨張係数および厚みムラが小さいため、薄型ディスプレイおよび携帯電話などの電子機器の光学機能シートに代表される光学材料、ガラス基板の代替基板、建材用シート、電気部品用基板などに好適に用いられる。
【0031】
以下、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂およびガラスフィラーについて説明する。なお、本発明の複合シートには、前記成分とともに、添加剤が含有されてもよい。
【0032】
<環状オレフィン系樹脂>
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂としては、1種または2種以上の環状オレフィン系単量体とその他単量体とを開環(共)重合または付加(共)重合して得られるものであって、例えば、下記一般式(1)で表される単量体(以下、「特定単量体(1)」ともいう)に由来する構造単位を有する(共)重合体が挙げられる(例えば、以下の(i)
〜(vii))。これらの中では、(iii)の水素添加(共)重合体が樹脂の耐熱性、耐候性
、耐湿性、機械的強度、成型性の観点から好適である。
(i)特定単量体(1)の開環(共)重合体。
(ii)特定単量体(1)と共重合性単量体との開環共重合体。
(iii)上記(i)または(ii)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(iv)上記(i)または(ii)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化
して得られる(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(v)特定単量体(1)と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(vi)特定単量体(1)、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選択される少なくとも1種の単量体の付加型(共)重合体、ならびにその水素添加(共)重合体。
(vii)特定単量体(1)とアクリレートとの交互共重合体。
【0033】
【化3】

式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の1価の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1およびR2、またはR3
よびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1〜R4のうち任意の2つは、
互いに結合して単環または多環を形成してもよい。mおよびnは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。
【0034】
なお、本発明において、「一体化して2価の有機基を形成する」とは、例えばR1およ
びR2がアルキリデン基などを形成することをいう(下記式(1’)参照)。
【0035】
【化4】

上記炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子はハロゲン原子に置換されていてもよく;また、上記その他の1価の有機基としては、例えば、炭化水素基以外の極性を有する1価の極性基が挙げられる。
【0036】
上記1価の極性基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、これらの基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換された基が挙げられる。これらの極性基は、メチレン基などの極性を有さない連結基を介して結合していてもよく、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基などの極性を有する2価の連結基を介して結合していてもよい。
【0037】
これらの極性基の中では、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基がより好ましい。
【0038】
特定単量体(1)において、好ましいR1〜R4、mおよびnを以下に記す。
1およびR3は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4の1価の炭化水素基、さらに好ましくは水素原子または炭素数1〜2の1価の炭化水素基であり;R2およびR4は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子またはその他の1価の有機基、より好ましくはR2およ
びR4の少なくとも1つが1価の極性基である。
【0039】
1およびR3において、上記炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0040】
特に、R2およびR4の少なくとも1つが、アルコキシカルボニル基または連結基を介してアルコキシカルボニル基が結合している極性基である、下記式(i)で表される極性基(以下、「極性基(i)」ともいう)であることが好ましい。極性基(i)を有する特定単量体(1)を用いることにより、高いガラス転移温度(Tg)と低い吸湿性とを有し、各種材料との優れた密着性を有する環状オレフィン系樹脂が得られる。
−(CH2pCOOR・・・(i)
式(i)において、Rは、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2の1価の炭化水素基を表す。前記炭化水素基は、好ましくはアルキル基である。また、pは、好ましくは0〜5、より好ましくは0である。pの値が小さいほど、高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂が得られる点で好ましく、さらにpが0である特定単量体(1)はその合成が容易である点で好ましい。
【0041】
さらに、R2またはR4が極性基(i)である場合には、該極性基(i)が結合した炭素原子に結合する基(例えば、R2が極性基(i)である場合にはR1である)がアルキル基であると、低い吸湿性を有する環状オレフィン系樹脂が得られる点で好ましい。
【0042】
mおよびnは、それぞれ独立に、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくはm+n=0〜4、さらに好ましくはm+n=0〜2を満たす整数であり、特に好ましくはm=0、n=1である。m=0、n=1である特定単量体(1)を用いることにより、ガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れる環状オレフィン系樹脂が得られる。
【0043】
特定単量体(1)の具体例としては、以下のような単量体が挙げられるが、特定単量体(1)はこれらの具体例に限定されるものではない。また、特定単量体(1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0045】
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−イソプロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
【0046】
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロイソプロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン。
【0047】
本発明において、環状オレフィン系樹脂は公知の方法により得ることができ、例えば、特開平1−132626号公報、特開平1−240517号公報、特開2006−77257号公報および特開2008−955号公報に記載の方法により得ることができる。以下、開環(共)重合体(I)および(II)、ならびに水素添加(共)重合体(III)について説明する。
【0048】
−開環(共)重合体(I)および(II)−
開環(共)重合体(I)は、1種または2種以上の特定単量体(1)を開環(共)重合
して合成される。開環共重合体(II)は、1種または2種以上の特定単量体(1)と、以下に記載する共重合性単量体とを開環共重合して合成される。この際、以下に記載する開環重合触媒、重合反応用溶媒および分子量調節剤を用いることが好ましい。
【0049】
≪共重合性単量体≫
上記共重合性単量体(後述する分子量調節剤を除く)としては、炭素数4〜20、好ましくは炭素数5〜12のシクロオレフィンが挙げられ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。これらの共重合性単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記共重合性単量体の使用量は、特定単量体(1):共重合性単量体(重量比)が、好ましくは100:0〜50:50、より好ましくは100:0〜60:40となる量とされる。
【0051】
また、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物;スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素二重結合を2つ以上有する不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に、特定単量体(1)や共重合性単量体を開環共重合して、開環共重合体(I)および(II)を合成してもよ
い。
【0052】
≪開環重合触媒≫
上記開環重合触媒としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K. J. IVIN, J. C. MOL, Academic Press 1997年)に記載されている触媒が好ましく用いら
れる。
【0053】
このような開環重合触媒としては、例えば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物(a)」ともいう)と、(b)Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cd、Hg、B、Al、Si、Sn、Pbなどの化合物であって、該元素と炭素との結合または該元素と水素との結合を少なくとも1つ有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物(b)」ともいう)との組合せからなるメタセシス重合触媒が挙げられる。また、開環重合触媒には、該触媒の活性を高めるために、後述する添加剤(c)が配合されていてもよい。
【0054】
化合物(a)としては、例えば、WCl6、MoCl5、ReOCl3、VOCl3、TiCl4などの特開平1−240517号公報(7頁)に記載の化合物が挙げられる。
化合物(b)としては、例えば、n−C49Li、(C253Al、(C252Al
Cl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiH
などの特開平1−240517号公報(7頁)に記載の化合物が挙げられる。
【0055】
添加剤(c)としては、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類を好適に用いることができ、さらに特開平1−240517号公報(7頁右下〜8頁左上欄)に記載の化合物を用いることができる。
【0056】
また、上述の化合物(a)、化合物(b)および添加剤(c)などからなるメタセシス重合触媒に代えて、(d)助触媒を用いない周期表第4〜8族遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体などからなるメタセシス重合触媒(以下、「その他の触媒(d)」ともいう)を用いてもよい。
【0057】
その他の触媒(d)としては、例えば、W(=N−2,6−C63 iPr2)(=CH
tBu)(O tBu)2、Mo(=N−2,6−C63 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh32Cl2、Ru(=CHPh)(PC6112Cl2が挙げられる。
【0058】
上記開環重合触媒の使用量は、化合物(a):全単量体(環状オレフィン系樹脂を合成する際に用いられる全単量体をいう。以下同じ。)(モル比)が、好ましくは1:500〜1:500000、より好ましくは1:1000〜1:100000となる範囲であり、化合物(a):化合物(b)(金属原子換算のモル比)が、好ましくは1:1〜1:100、より好ましくは1:2〜1:50となる範囲であり、開環重合触媒に添加剤(c)を配合する場合には、添加剤(c):化合物(a)(モル比)が、好ましくは0.005:1〜15:1、より好ましくは0.05:1〜7:1となる範囲である。
【0059】
また、その他の触媒(d)の使用量は、その他の触媒(d):全単量体(モル比)が、好ましくは1:50〜1:100000、より好ましくは1:100〜1:50000となる範囲である。
【0060】
≪重合反応用溶媒≫
上記重合反応用溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類が挙げられる。これらの中では、芳香族炭化水素が好ましい。また、これらの重合反応用溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記重合反応用溶媒の使用量は、溶媒:特定単量体(1)(重量比)が、好ましくは1:1〜10:1、より好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0061】
≪分子量調節剤≫
開環(共)重合体(I)および(II)の分子量は、重合温度、開環重合触媒の種類、重
合反応用溶媒の種類を適宜選択することにより調節することができるが、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
【0062】
上記分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンおよびスチレンが挙げられる。これらの中では、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。また、これらの分子量調節剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記分子量調節剤の使用量は、開環重合反応に供される特定単量体(1)1モルに対して、好ましくは0.005〜0.6モル、より好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0063】
−水素添加(共)重合体(III)−
以上のようにして得られる開環(共)重合体(I)または開環共重合体(II)は、その
ままでも用いられるが、これらに水素添加して得られる水素添加(共)重合体(III)は
、耐衝撃性の大きい樹脂であることから有用である。前記水素添加の際には、水素添加触媒を用いることが好ましい。
【0064】
≪水素添加触媒≫
上記水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられる水素添加触媒を用いることができる。上記水素添加触媒としては、公知の不均一系触媒および均一系触媒を何れも用いることができる。
【0065】
上記不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒が挙げられる。
【0066】
上記均一系触媒としては、例えば、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、(アセトキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、(4−ペンチルベンゾイロキシ)カルボニル(ヒドリド)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムが挙げられる。
【0067】
水素添加触媒の形状は粉末状でも粒状でもよい。また、水素添加触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記水素添加触媒の使用量は、適宣調整する必要があるが、開環(共)重合体(I)お
よび開環共重合体(II)の合計:水素添加触媒(重量比)が、好ましくは1:1×10-6〜1:2となる量とされる。
【0068】
−環状オレフィン系樹脂の物性−
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が好ましくは8000〜100000、より好ましくは10000〜80000、さらに好ましくは12000〜50000であり、重量平均分子量(Mw)が好ましくは20000〜300000、より好ましくは30000〜250000、さらに好ましくは40000〜200000であり、分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは2.0〜4.0、より好ましくは2.5〜3.7、さらに好ましくは2.8〜3.5である。数平均分子量および重量平均分子量が前記範囲にある環状オレフィン系樹脂を用いることにより、機械的強度に優れた複合シートが得られる。また、分子量分布が前記範囲にある環状オレフィン系樹脂を用いることにより、機械的強度に優れた複合シートが得られる。
【0069】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜350℃、さらに好ましくは110〜250℃、特に好ましくは110〜200℃である。環状オレフィン系樹脂のTgが前記範囲を下回ると、該樹脂を高温条件下で使用する際、またはコーティングもしくは印刷などの二次加工の際に変形することがある。一方、環状オレフィン系樹脂のTgが前記範囲を上回ると、成形加工が困難になり、また成形加工時の加熱温度を高くする必要が生じるため、熱によって該樹脂が劣化することがある。
【0070】
<ガラスフィラー>
本発明で用いられるガラスフィラーとしては、例えば、ガラスチョップドストランドなどのガラス繊維;ガラスクロスなどのガラス織布、ガラス不織布などのガラス繊維布;ガラスビーズ;ガラスフレーク;ガラスパウダー;ミルドガラスが挙げられる。これらの中では、上記環状オレフィン系樹脂と押出成形により複合化しやすく、かつ機械的強度および耐熱性が優れる複合シートが得られることから、ガラス繊維が特に好ましい。
【0071】
上記カラス繊維としては特に限定されず公知公例のものが使用できるが、その平均長さは0.5〜100mmであることが好ましく、1〜50mmであることがより好ましい。ガラス繊維の平均長さが前記範囲であると、該ガラス繊維と環状オレフィン系樹脂とを押出機内で複合化しやすく、かつ得られる複合シートの線膨張係数を低くできる。
【0072】
また、ガラス繊維の平均繊維径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは5〜20μmである。ガラス繊維の平均繊維径が小さ過ぎると、押出機内でガラス繊維が折損して得られる複合シートの強度が低下し、また平均繊維径が大き過ぎると、得られる複合シートの表面性が低下することがある。
【0073】
ガラスの種類としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスが挙げられる。これらの中では、アルカリ金属などのイオン性不純物が少なく、入手が容易なEガラス、SガラスおよびNEガラスが好ましい。
【0074】
また、ガラスフィラーと環状オレフィン系樹脂との密着性を高めるために、該ガラスフィラー表面をアミノシラン、スチリルシラン、エポキシシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤;アルミキレート化合物などの金属キレート化合物で処理してもよい。
【0075】
ガラスフィラーにこのような表面処理が施されていると、ガラスフィラーと環状オレフィン系樹脂との密着性が高くなるので、複合シートの透明性を高くすることが可能であり、さらに複合シートに繰り返し曲げを与えた場合に生じるガラスフィラー表面と環状オレフィン系樹脂などのポリマーとの界面剥離による透明性の低下を抑制することが可能である。
【0076】
本発明において、ガラスフィラーの含有量は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは66〜132重量部、より好ましくは80〜120重量部、さらに好ましくは90〜110重量部である。環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの含有量の割合が前記範囲にある複合シートは、線膨張係数などの物性が良好となる。
【0077】
<添加剤>
本発明においては、上記環状オレフィン系樹脂およびガラスフィラーとともに、本発明の目的を損なわない範囲で、上記環状オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、ガラスフィラー以外の無機フィラーなどを用いてもよい。
【0078】
〔複合シートの製造方法〕
本発明の複合シートの製造方法は、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの混合物を、下記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形し、厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内であって、線膨張係数が30ppm/K以下である複合シートを製造することを特徴とする。
【0079】
【数2】

ここで、製造される複合シートの、厚み分布など(厚み平均、厚みの最大値と最小値との差)、線膨張係数、全光線透過率および機械的変形強度などの各種物性の好ましい範囲は、上記〔複合シート〕の欄に記載したとおりである。
【0080】
本発明で用いられる押出成形法としては、例えば、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを押出機により複合化して、得られた複合化物をギアポンプによりダイに定量供給してシート状に成形し、冷却ロールや冷却ベルトなどの引取り機(以下、「冷却ロールなど」ともいう)を用いて得られた複合シートを冷却し、巻取り機を用いて該複合シートを巻き取る方法が好ましい。
【0081】
本発明において、環状オレフィン系樹脂およびガラスフィラーを押出機に供給する順序などは特に限定されず、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する樹脂組成物を押出機に供給してもよく、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを別々に押出機に供給してもよく、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有するペレットを押出機に供給してもよい。
【0082】
特に、予め押出機により環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを溶融混合して得られたペレットを、再度押出機に供給することが好ましい。
すなわち、本発明の複合シートの製造方法は、(1)環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを押出機により複合化してストランドを得る工程と、(2)該ストランドを裁断してペレットを得る工程と、(3)該ペレットを前記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形する工程とを含むことが好ましい。
【0083】
このように、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを2度にわたって押出機内で溶融混合することにより、複合シートに含まれるガラスフィラーの分散性が高く均一となり、機械的強度の高い複合シートが得られる。
【0084】
なお、本発明の複合シートの製造方法において、環状オレフィン系樹脂およびガラスフィラーは、上記〔複合シート〕の欄に記載した環状オレフィン系樹脂およびガラスフィラーを好ましく用いることができる。また、前記環状オレフィン系樹脂およびガラスフィラーとともに、上記添加剤を用いてもよい。
【0085】
本発明において、ガラスフィラーの供給割合は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは66〜132重量部、より好ましくは80〜120重量部、さらに好ましくは90〜110重量部である。環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの供給割合が前記範囲にあると、得られる複合シートの線膨張係数などの物性が良好となる。
【0086】
≪押出機≫
上記押出機としては、例えば、単軸、二軸、遊星式、コニーダー、バンバリーミキサータイプなどの押出機が挙げられるが、これらの中では単軸押出機および二軸押出機が好ましく用いられる。また、押出機のスクリュー形状としては、例えば、ベント型、先端ダルメージ型、ダブルフライト型、フルフライト型、バリア型があり;圧縮タイプとしては、例えば、緩圧縮タイプ、急圧縮タイプがある。これらの中では、フルフライト型緩圧縮タ
イプまたはバリア型緩圧縮タイプが好ましい。
【0087】
上記押出機(シリンダー、スクリューなど)およびダイの材質としては特に限定されず、例えば、SCM系などの鋼鉄、SUSなどのステンレス材が挙げられる。また、上記押出機およびダイとしては、その表面(押出機シリンダーおよびダイの内面、押出機スクリューの表面)に、クロム、ニッケル、チタンなどのメッキが施されたもの;PVD(Physical Vapor Deposition)法などにより、TiN、TiAlN、TiCN、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜が形成されたもの;WCなどのタングステン系物質、サーメットなどのセラミックが溶射されて被膜が形成されたもの;窒化処理されたものなどを用いることもできる。このような表面処理を施すことにより、前記内面および表面と樹脂との摩擦係数が小さくなるため、均一に溶融した樹脂が得られる。
【0088】
上記樹脂温度(押出機シリンダーの設定温度を指す)は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは220〜320℃である。樹脂温度が前記範囲を下回ると、樹脂を均一に溶融させることができず、一方、前記範囲を上回ると、溶融時に樹脂が熱劣化して表面性に優れた高品質な複合シートの製造が困難になることがある。
【0089】
さらに、樹脂温度が、上記温度範囲内であって、かつ環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg+120℃〜Tg+160℃の範囲内であることが特に好ましい。例えば、環状オレフィン系樹脂のTgが130℃であれば、複合シートの製造にとって特に好ましい温度範囲は250〜290℃である。本発明において、好ましくは上述した特定の環状オレフィン系樹脂を用いた場合には、前記のような高温下においても複合シートの結晶化(白濁)を抑制することができ、また該樹脂はガラスフィラーと優れた相溶性を有するため、押出成形性が良好となる。
【0090】
また、押出時にスクリューが樹脂に与えるせん断速度は、好ましくは1〜500(1/sec)、より好ましくは2〜350(1/sec)、さらに好ましくは5〜200(1/sec)である。押出時のせん断速度が前記範囲を下回ると、樹脂を均一に溶融させることができないため、厚みムラが小さい複合シートを得ることが困難になることがある。一方、押出時のせん断速度が前記範囲を上回ると、せん断力が大き過ぎて樹脂および添加剤が分解・劣化し、複合シートの表面に発泡、ダイライン、付着物などの欠陥が生じてしまうことがある。
【0091】
≪ギアポンプ≫
上記ギアポンプとしては、ギアの間で下流側より戻される樹脂がキアポンプ系内に入る内部潤滑方式と、該樹脂が外部に排出される外部潤滑方式とがあるが、環状オレフィン系樹脂の熱安定性が良好ではない場合には、外部潤滑方式が好ましい。ギアポンプのギア歯の切り方は、軸に対して平行なタイプよりもヘリカルタイプが、樹脂の計量が安定するため好ましい。
【0092】
≪ダイ≫
上記ダイの形状としては、ダイ内部の樹脂流動を均一にできる形状であることが好ましい。また、複合シートの厚みを均一とするには、ダイ出口近傍での幅方向におけるダイ内部の圧力分布が一定であること、およびダイ出口近傍での幅方向における樹脂流量がほぼ一定であり、ダイ出口での樹脂流量が吐出口のリップギャップ(ダイリップの開き量。以下、単に「リップギャップ」ともいう。)により調整可能な範囲であることが好ましい。
【0093】
上記条件を満たすダイのマニホールドとしては、コートハンガータイプのマニホールドが好ましい。一方、ストレートタイプおよびフィッシュテールタイプなどのマニホールド
は、幅方向における樹脂流量の流量分布が大きくなり、結果として複合シートの厚みムラが大きくなることがある。
【0094】
本発明において、シート引取り速度(m/min)と押出時のダイリップにおけるリップギャップ(m)との比で表される吐出せん断速度(1/min)を、以下のような特定の範囲に設定して、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの混合物または複合化物を押出機によりシート状に成形することを特徴とする。
【0095】
従来技術においては、一般的な環状オレフィン系樹脂の押出条件は、吐出せん断速度が10000〜20000(1/min)程度であった。しかしながら、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの複合化物に対して前記条件を適用すると、引取速度が速すぎて全くシート形状にはならないのである。
【0096】
また、線膨張係数の低い複合シートを製造するためには、従来技術においては、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの合計量に対し、ガラスフィラーを30重量%以上供給する必要があるとされていた。そして、そのような供給割合では、これらの複合化物の溶融特性が悪い(MFR低下、靭性低下)ため、押出成形により該複合化物をシート状に成形することは困難であると考えられていた。
【0097】
しかしながら、本発明においては、特定の条件において押出成形することにより、上記問題点が解決(上記量のガラスフィラーを供給したとしてもシート成形可能であるなど)されたのである。すなわち、以下のような条件において、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの混合物または複合化物を押出成形することにより、従来では得られなかった、透明性および加熱時の形状安定性に優れ、線膨張係数および厚みムラが小さい複合シートを製造することができる。
【0098】
【数3】

上記式(S)で表される押出時の吐出せん断速度は、400〜800(1/min)、好ましくは500〜700(1/min)、特に好ましくは550〜650(1/min)である。吐出せん断速度が前記範囲より小さいと、押出機のダイリップ付近で樹脂だまりが形成され、局所的に厚い部分が形成され、厚みの均一なシートを製造することが困難となる。一方、吐出せん断速度が前記範囲より大きいと、シート内に薄い部分や空隙が形成され、シートの巻取り問題などが発生し、シート状への成形が困難となる。
【0099】
また、複合シートの厚みを均一とするには、ダイ出口近傍での幅方向における温度分布を一定にすることが重要であり、温度分布は好ましくは±1℃以下、より好ましくは±0.5℃以下である。ダイ出口近傍での幅方向における温度分布が前記範囲外であると(温度ムラが生じていると)、樹脂の溶融粘度に差が生じ、得られる複合シートに厚みムラおよび応力分布ムラなどが生じることがある。
【0100】
さらに、リップギャップは、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1.2mm、さらに好ましくは0.35〜1.0mmである。リップギャップが前記範囲を下回ると、ダイ内部の樹脂圧力が高くなり過ぎて、ダイリップ以外の場所から樹脂漏れが起こることがある。一方、リップギャップが前記範囲を上回ると、ダイ内部の樹脂圧力が上がりにくくなるため、複合シートの幅方向における厚みの均一性が悪化することがある。
【0101】
また、吐出口の設定温度の好ましい範囲は、上記樹脂温度の好ましい範囲と同様であり、さらに環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg+120℃〜Tg+160℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0102】
≪複合シートの成形≫
溶融樹脂はダイリップ(吐出口)から吐出され、上記冷却ロールなどに密着および固化されて目的とする複合シートに成形される。ダイリップから押出された溶融樹脂と冷却ロールなどとの密着性を向上させる方法としては、例えば、ニップロール方式、静電印加方式、エアーナイフ方式、バキュームチャンバー方式、カレンダー方式が挙げられ、複合シートの厚みおよび用途に従って、適切な方式が選択される。
【0103】
ダイリップから押出された溶融樹脂を固化するために用いられる冷却ロールなどの表面についても、押出機シリンダーおよびダイの内面などと同様に、各種の表面処理が行われることが好ましい。
【0104】
以上記載の本発明の複合シートの製造方法は、加熱プレス工程を有する従来の製造方法と比べて、必要とする製造工程が短く、また加熱プレス工程を必要としないため得られる複合シートの厚みムラが小さい。このため、複合シートの光学物性などにばらつきが生じにくく、上記光学材料などとして好適に用いられるのである。
【実施例】
【0105】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例において特にことわりがない限り、「部」は「重量部」を表す。
【0106】
各種物性の測定は、下記(1)〜(7)に記載の方法に従った。
(1)水素添加率(%)
核磁気共鳴分光計(NMR)としてAVANCE500(Bruker社製)を用い、d−クロロホルムを測定溶媒とし、環状オレフィン系樹脂の1H−NMRを測定した。前
記樹脂の水素添加率(%)は、5.1〜5.8ppmのビニレン基、3.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、前記樹脂の構造単位を算出して求めた値である。
【0107】
(2)ガラス転移温度(Tg)
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC6200(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、昇温速度=毎分20℃・窒素気流下で測定し、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度(A点)より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた値である。
【0108】
(3)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSKgel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSKgel G2000HXLを順次連結したもの、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8重量%、注入量:70μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、環状オレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0109】
(4)複合シートの厚み
複合シート中央部分で、成形方向に対して垂直方向に、10cm間隔の2点を結んだ直線上に1cm間隔で計測点を設定し、該シートの厚みをマイクロメーター(ミツトヨ(株)製)で計測した。計測した複合シートの厚みの平均を複合シートの厚み平均、最大値と最小値との差を複合シートの厚みムラ(1)、厚み平均に対する最大値と最小値との差を複合シートの厚みムラ(2)とした。
【0110】
(5)機械的熱変形温度
熱機械装置(TMA;Thermal Mechanical Analysis)/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、幅4mm、長さ20mmに調製した複合シートを、25℃から350℃まで10℃/minで昇温しながら、印加荷重を10gとして長辺方向に引張り試験を行った。複合シートの延び率を記録し、複合シートの軟化により延び率が急激に増大し始める温度を接線法にて求め、その温度を複合シートの機械的熱変形温度とした。
【0111】
(6)線膨張係数
熱機械装置(TMA;Thermal Mechanical Analysis)/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、幅10mm、長さ10mmに調製した複合シートを、25℃→150℃→25℃→300℃の温度プロファイルで10℃/minの速度で加温冷却しながら、印加荷重を1gとして、該シート面に平行に圧縮試験を行った。2回目の昇温時の50℃〜150℃の温度範囲における複合シートの並行面における伸び量を100で割った値を該シートの線膨張係数(ppm/K)とした。
【0112】
(7)全光線透過率
複合シートの全光線透過率(%)は、ASTM1003規格に準拠し、Gardner社製ヘイズ−光線透過率測定機(Haze−Gard Plus型)を使用して測定された値である。
【0113】
〔合成例1〕
下記式(2)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)225部と、下記式(3)で表されるビ
シクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)25部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)27部と、トルエン(重合反応用溶媒)200部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。
【0114】
次いで、反応容器内の溶液に、開環重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6モル/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(0.025モル/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0115】
【化5】

【0116】
【化6】

このようにして得られた開環重合体溶液1000部をオートクレーブに仕込み、該開環重合体溶液に、水素添加触媒としてRuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌
して水素添加反応を行った。
【0117】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下、「樹脂(A)」ともいう)を得た。
【0118】
このようにして得られた樹脂(A)の水素添加率は99.9%、ガラス転移温度は130℃、数平均分子量(Mn)は20800、重量平均分子量(Mw)は62000、分子量分布(Mw/Mn)は3.0であった。
【0119】
〔製造例1〕
攪拌羽根を装着したガラス製セパラブルフラスコに、樹脂(A)100部を仕込み、そこにトルエン300部を添加して室温で5時間攪拌して、該樹脂(A)をトルエンに溶解させた。
【0120】
この樹脂溶液に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートを、樹脂溶液中の樹脂(A)100部に対し0.5部となるように添加し、その樹脂溶液を孔径5μmのメンブレンフィルター(ADVANTEC製)を用い濾過した。
【0121】
得られた樹脂溶液を、乾燥後の厚みが100μmとなるようアプリケーターを用いて25℃でキャストし、室温にて12時間静置して溶剤を蒸発させ、続いて真空下80℃にて2時間、さらに150℃にて12時間保持し、樹脂フィルム(A)を得た。
【0122】
[実施例1]
<ペレットの製造>
環状オレフィン系樹脂として樹脂(A)50部と、ガラスフィラーとしてNEガラスのチョップドストランド(日東紡製)50部と、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5部とを、二軸押出機(TEM−37BS、東芝機械(株)製)のホッパーに投入し、シリンダー温度290℃、軸回転速度100rpm、押出速度10〜20kg/hrでストランドを押出し、該ストランドをストランドカッター(PPS−150R型、東芝機械(株)製)で裁断し、環状オレフィン系樹脂−ガラス繊維複合ペレットを得た。
【0123】
<複合シートの押出条件>
下記に示す条件(図1参照)で、上記環状オレフィン系樹脂−ガラス繊維複合ペレットを押出成形し、環状オレフィン系樹脂−ガラス繊維複合シートを得た。得られた複合シートの上記(4)〜(7)に係る物性値を表1に示す。
押出機:KZW15TW−30MG−NH型2軸押出機(テクノベル(株)製)。
・シリンダー内径:15(mm)
・シリンダー設定温度:285(℃)
・スクリュー形状:フルフライトタイプ
・スクリューのL/D:30
・圧縮タイプ:緩圧縮タイプ、圧縮比2.5
・押出量:16(kg/hr)
・せん断速度:100(1/s)
ダイ:コートハンガータイプのマニホールド。ダイ内面にクロムメッキが施されたもの。・吐出口の幅:300(mm)
・吐出口のリップギャップ:0.5(mm)
・吐出口の設定温度:270(℃)
・吐出せん断速度:620(1/min)
フィルム巻取り装置:FPU15−330型フィルム引取り巻装置(テクノベル(株)製)。
・ロール面長:330(mm)
・シート引取り速度:0.31(m/min)
・タッチロール:材質(S45C)+表面処理(HCrメッキ)
・冷却ロール:材質(S45C)+表面処理(HCrメッキ)
・剥離ロール:材質(S45C)+表面処理(HCrメッキ)
・ニップロール:材質(シリコンラバー)
・引取りロール:材質(S45C)+表面処理(HCrメッキ)
【0124】
[比較例1]
実施例1において、シート引取り速度を0.5(m/min)、吐出せん断速度を1000(1/min)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で押出成形を実施した。しかしながら、得られたシートは空隙や薄膜化が見られ、良好なシートは得られなかった。
【0125】
[比較例2]
実施例1において、シート引取り速度を0.1(m/min)、吐出せん断速度を200(1/min)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で押出成形を実施した。しかしながら、得られたシートは引取り方向と平行に大きな波うちが見られ、良好なシートは得られなかった。
【0126】
[比較例3]
実施例1と同様にして得た環状オレフィン系樹脂−ガラス繊維複合ペレットを、真空プレス機(関西ロール(株)製PEWR−1030型)で予熱300℃×10min、加圧30MPa×300℃×5minでプレスし、環状オレフィン系樹脂−ガラス繊維複合シートを得た。得られた複合シートの上記(4)〜(7)に係る物性値を表1に示す。
【0127】
[比較例4]
特許第3265709号を参考に、樹脂フィルム(A)(厚み100μm)の間に、予め樹脂(A)の1%トルエン溶液をコートした厚み100μmのNEガラスクロス(日東紡製)を挟んでサンドイッチ状にした後、真空プレス機(関西ロール(株)製PEWR−1030型)で、予熱300℃×10min、加圧30MPa×300℃×5minでプレスし、環状オレフィン系樹脂−ガラス複合シートを作成した。得られた複合シートの上記(4)〜(7)に係る物性値を表1に示す。
【0128】
【表1】

表1に示すように、吐出せん断速度が本発明で規定される範囲外で実施された比較例1や2は、良好な複合シートを得ることができなかった。これは、環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの複合化物では、吐出せん断速度が特定の範囲にある条件において押出成形しなければ良好な複合シートを製造することができないことを意味し、本発明の有意性を示すものである。
【0129】
また、押出機により成形して得られた環状オレフィン系樹脂−ガラス繊維複合シートは、プレス成形して得られた複合シートに比べ、厚みムラ(4)が小さく、しかも透明性(7)、加熱時の形状安定性(5)および線膨張係数(6)が同等である。
【符号の説明】
【0130】
10・・・押出機
20・・・ダイ
21・・・ダイリップ(吐出口)
30・・・溶融樹脂
40・・・冷却ロール
50・・・タッチロール
60・・・剥離ロール
70・・・引取りロール
80・・・ニップロール
90・・・ダンサーロール
100・・・巻取り機
110・・・巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを含有する複合シートであって、線膨張係数が30ppm/K以下であり、該シートの厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内である複合シート。
【請求項2】
前記ガラスフィラーが、ガラス繊維である請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記環状オレフィン系樹脂が、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構造単位を有する請求項1または2に記載の複合シート。
【化1】

[式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の1価の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1およびR2、またはR3
およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1〜R4のうち任意の2つは
、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。mおよびnは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。]
【請求項4】
環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとの混合物を、下記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形し、厚みの最大値と最小値との差が厚み平均の10%以内であって、線膨張係数が30ppm/K以下である複合シートを製造する複合シートの製造方法。
【数1】

【請求項5】
前記ガラスフィラーが、ガラス繊維である請求項4に記載の複合シートの製造方法。
【請求項6】
前記環状オレフィン系樹脂が、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構造単位を有する請求項4または5に記載の複合シートの製造方法。
【化2】

[式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の1価の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表す。R1およびR2、またはR3
およびR4は、一体化して2価の有機基を形成してもよく、R1〜R4のうち任意の2つは
、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。mおよびnは、それぞれ独立に0または正の整数を表す。]
【請求項7】
前記環状オレフィン系樹脂が、前記一般式(1)で表される単量体を開環(共)重合した後、さらに水素添加して得られる(共)重合体である請求項6に記載の複合シートの製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7の何れかに記載の複合シートの製造方法であって、前記環状オレフィン系樹脂とガラスフィラーとを押出機により複合化してストランドを得る工程と、該ストランドを裁断してペレットを得る工程と、該ペレットを前記式(S)で表される吐出せん断速度が400〜800(1/min)の条件において押出機によりシート状に成形する工程とを含む複合シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−163548(P2010−163548A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7594(P2009−7594)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】