説明

複合シート

【課題】ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、不職布が積層された複合シートにおいて、通気性、各層の接着性、耐久性、ヒートシール性が良好な複合シートを提供する。
【解決手段】ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)が、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)、および前記不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも5℃以上高く、かつ、T2とT3との差が15℃以下である複合シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布を積層した新規な複合シートに関する(以下、本発明の複合シートにおいて、ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布を、単に層と示す場合もある。)。詳しくは、通気性、液体防漏性を有し、防水建材材料、農業用材料、包装用材料、衣料用材料、糞尿等を堆肥化させる際に使用する廃棄物処理材料等に好適に使用することができる複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から気体透過性(通気性)や液体防漏性を併せ持つ複合シートは、防水建材用途、農業用用途、包装用用途、衣料用用途、廃棄物処理用途等に使用されている。このような複合シートは、通気性、液体防漏性を有する多孔質フィルムに強度を持たせるため、不織布や網状布が積層された積層体が使用されている。尚、通常、前記多孔質フィルムには、複合シートに柔軟性を持たせるため、線状低密度ポリエチレンが使用されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、鞘部に特定の融点を有するポリエチレン系樹脂を使用し、芯部に特定の融点を有するポリエステルを使用した複合繊維からなる不織布と多孔質フィルムとからなる複合シートが提案されている。この複合シートは、不織布と多孔質フィルムとを熱溶着により容易に接着することができ、通気性に優れた複合シートである。
【0004】
しかしながら、前記方法により得られる複合シートは、屋外で使用する用途、例えば、糞尿等の堆積物に被覆して堆肥化する際に使用する糞尿堆積物被覆用シートに用いた場合、不織布の強度に方向性があり引裂強度等の強度が十分ではないため、使用方法や使用環境によっては、一方向に複合シートが裂けるといった耐久性の面で改善の余地があった。
【0005】
一方、特許文献2には、網状布、不織布、多孔質フィルムからなる複合シートが示されている。前記複合シートは、網状布を構成する糸が表面層、中間層からなり、該表面層に使用する樹脂が、低密度ポリエチレンであって、多孔質フィルムに使用する樹脂よりも融点が3℃以上低いものであることにより、網状布と多孔質フィルムとの熱溶着による接着性を改善したものである。
【0006】
特許文献2には、前記複合シートにおいて、不織布が、芯部にポリプロピレン、鞘部にポリエチレンを使用した複合繊維からなるものであることが示されている。通常の不織布では、前記鞘部のポリエチレンは、高密度ポリエチレンからなり、その融点は130℃付近のものである。そのため、鞘部に高密度ポリエチレンを使用した複合繊維からなる不織布を使用した場合、前記高密度ポリエチレンと、網状布の糸の表面層、および多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂とは、熱による融解挙動が大きく異なる。そのため、前記複合シートは、網状布と不織布、不織布と多孔質フィルムとの熱溶着による接着性が十分ではなくなる可能性があった。また、接着性を高めるため、熱溶着時の温度を高めると、多孔質フィルムの貫通孔が熱により塞がり、通気性(透湿度)が低下するといった問題があった。
【0007】
また、前記の糞尿堆積物被覆用シートの用途では、使用する場所にもよるが、通常、縦10m横6m以上の幅広のシートが必要とされている。そのため、一般的には、1〜2m幅の複合シートの端の部分をそれぞれヒートシールすることにより幅広の複合シートとして使用している。
【0008】
このようなヒートシールを必要とする複合シートにおいても、鞘部に高密度ポリエチレンを用いた複合繊維からなる不織布を使用し、特に該不織布面がヒートシール面となる場合、該高密度ポリエチレンの融点は、網状布の糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点よりも高い温度であるため、十分なヒートシール強度のものが得られないといった問題があった。また、過度の加熱をした際には、他方の層(特に、網状布の糸の表面層)が融解してしまい、ヒートシール部の引張強度が低下するといった問題があった。具体的には、不織布面と網状布面、不織布面と多孔質フィルム面、不織布面と不織布面とをヒートシールする場合には、屋外で使用する際の十分なヒートシール強度が得られなかったり、また、過度の加熱により、網状布の糸の表面層が融解してしまい、ヒートシール部の引張強度が低下するといった問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2003−306862号公報
【特許文献2】特開2004−174768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布を積層した通気性、液体防漏性を有する複合シートにおいて、その縦・横方向の強度のバランスに優れ、耐久性があって、熱溶着による各層(ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布)の接着性が良好であり、かつ、ヒートシールにより幅広の複合シートとした際にも、十分なヒートシール強度を有する複合シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリエチレン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリエチレン系樹脂を表面層に使用した糸からなる網状布、ポリエチレン系樹脂を鞘部に使用した複合繊維からなる不織布を熱溶着により積層してなる複合シートであって、それぞれの層に使用する前記ポリエチレン系樹脂の融点を特定の関係にすることにより、熱溶着により各層の接着性が良好であり、縦・横の強度に優れ、更に、ヒートシール性に優れる複合シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布を熱溶着により積層した複合シートにおいて、前記ポリエチレン系多孔質フィルムが、ポリエチレン系樹脂と無機充填剤とを含んでなる樹脂組成物を製膜してフィルムを得た後、得られたフィルムを少なくとも1軸延伸してなる多孔質フィルムであって、前記網状布が、ポリエチレン系樹脂を用いた表面層、中間層からなる3層の延伸複合糸を縦糸および横糸として使用した熱溶着クロスであって、前記不織布が、芯鞘複合繊維からなり、該複合繊維の鞘部にポリエチレン系樹脂を使用した不織布であって、更に、前記ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)が、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)、および前記不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも5℃以上高く、かつ、T2とT3との差が15℃以下であることを特徴とする複合シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合シートは、熱溶着による各層(ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布)の接着性が良好であるため、各層の剥離がなく、また、低温での熱溶着が可能なため、通気性に優れたものである。また、縦・横方向の強度が強く、かつそのバランスも優れるため、屋外での用途、例えば、糞尿堆積物被覆用シート等の用途において、有効に使用することができる。更に、糞尿堆積物被覆用シートのように幅広の複合シートが必要な場合においても、複数の複合シートの端の部分をヒートシールにより接着することによって、十分なヒートシール強度を有する幅広の複合シートを得ることができる。
【0014】
また、本発明の複合シートは、通気性、強度が高く耐久性にも優れるため、糞尿堆積物被覆用シート以外にも、防水建材用途、農業用用途、包装用用途、衣料用用途等に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の複合シートは、ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布を熱溶着により積層した積層シートである。
【0016】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムは、ポリエチレン系樹脂と無機充填剤を含んでなる樹脂組成物を製膜してフィルムを得た後、得られたフィルムを少なくとも1軸延伸してなる多孔質フィルムである。
【0017】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂は、後記の融点(T1)の要件を満足する公知のものが制限なく使用できるが、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、エチレンとビニルアルコール脂肪酸エステルとの共重合体、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、エチレンとビニル基含有脂肪酸アルキルエステルとの共重合体、およびこれら重合体の混合物等を使用できる。中でも、複合シートに柔軟性を持たせるためには、線状低密度ポリエチレンを使用することが好ましく、例えば、エチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。また、線状低密度ポリエチレンを使用する場合には、密度が0.910〜0.940g/cm、メルトインデックスが0.5〜15g/10分のものを使用することが好ましい。また、ポリエチレン系樹脂の融点(T1)は、後記の融点の要件を満足するように他樹脂との兼ね合いにより適宜決定してやればよいが、106〜135℃であることが好ましい。
【0018】
尚、本発明において、前記ポリエチレン系樹脂の融点(T1)は、DSC(示差走査熱量計)により、ポリエチレン系樹脂と無機充填剤とを含んでなる樹脂組成物の融解熱を測定した際のピーク温度とする。前記樹脂組成物の融解熱を測定した際に、ピークが複数存在する場合には、前記ポリエチレン系樹脂の融点(T1)は、最大融解熱量を示す部分のピーク温度とする。
【0019】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムは、前記ポリエチレン系樹脂と無機充填剤を含んでなる樹脂組成物から得られるものである。前記無機充填剤は、特に制限されるものではなく、公知の多孔質フィルムに使用できるものを採用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機塩類、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ等の無機酸化物、マイカ、バーミキュライト、タルク等のケイ酸塩類および有機金属塩を用いることができる。これらは単独または複数種混合して使用することもできる。中でも、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0020】
また、無機充填剤の平均粒子径も特に制限されるものではないが、0.1〜10μmが好ましい。
【0021】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムを構成する樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂30〜60質量部、無機充填剤70〜40質量部であることが、フィルムの製膜性を向上させ、得られる多孔質フィルムが良好な通気性を発揮することができる。
【0022】
本発明において、前記樹脂組成物を得るに際し、前記ポリエチレン系樹脂と前記無機充填剤を混合し、造粒する方法は、公知の方法が採用できる。この時、必要に応じて分散剤等の各種添加剤を添加することもできる。具体的には、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等でポリエチレン系樹脂と無機充填剤を混合した後、高混練タイプの2軸押出機、タンデム型混練機等でペレットにする方法が挙げられる。また、本発明においては、前記方法で混合、混練した樹脂組成物を、そのまま、サーキュラダイ、Tダイから押出し、フィルムを製膜することもできる。
【0023】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムは、前記樹脂組成物を製膜してフィルムを得た後、得られたフィルムを少なくとも1軸延伸してなるものである。前記樹脂組成物を2軸押出機等により溶融混練し、押出機の先にサーキュラダイ、Tダイを取り付け押出すことにより、フィルムを製膜する。サーキュラダイを使用した場合には、空冷等により押出された樹脂を冷却してフィルムを製膜し、Tダイを使用した場合には、ニップロール、エアナイフ、エアチャンバー等により押出された樹脂を冷却してフィルムを製膜する。
【0024】
前記フィルムは、次いで、ロール延伸法またはテンター延伸法等の公知の延伸方法により、本発明に使用するポリエチレン系多孔質フィルムとすることができる。具体的には、常温以上、樹脂の軟化点未満の温度範囲の延伸温度で、少なくとも1軸方向に延伸することにより、ポリエチレン系多孔質フィルムを得ることができる。この少なくとも1軸延伸するとは、フィルムの流れ方向(機械方向)に1軸延伸する、フィルムの幅方向に1軸延伸する、同時2軸延伸する、及び逐次2軸延伸することを示すものである。また、延伸倍率は、特に制限されるものではなく、1.1〜9.0倍であり、延伸は一段でも多段で行なってもよい。更に、延伸後に必要に応じて熱処理を行ってもよい。
【0025】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムは、特に制限されるものではないが、通気度100〜3000秒/100cc、透湿度2000〜8000g/m・24hr、耐水圧10kPa以上、最大孔径0.1〜10.0μmであることが、良好な気体透過性(通気性)と液体防漏性を両立する上で好ましい。
【0026】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、10〜100μmであることが好ましく、さらに20〜70μmがより好ましい。
【0027】
また、前記ポリエチレン系多孔質フィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲で、さらにポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂、石油樹脂等の他の熱可塑性樹脂、顔料、熱安定剤、耐候剤、界面活性剤、可塑剤、オイル等の添加剤を添加することもできる。該添加剤は、ポリエチレン系樹脂と無機充填剤を混合する際に添加することもできるし、樹脂組成物を製膜する際に添加することもできる。
【0028】
中でも、屋外で使用する用途へ用いる場合には、耐候性を付与する目的で、酸化チタン、ヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種を配合することが好適である。該酸化チタンは、特に制限されるものではないが、シリカおよび/またはアルミナで表面処理された酸化チタンを使用することが好ましい。該ヒンダードアミン系光安定剤は、特に制限されるものではないが、分子量1500〜4500のヒンダードアミン系光安定剤を使用することが好ましい。前記酸化チタンの添加量は、前記樹脂組成物100質量部に対して0.1〜10質量部、前記ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、前記樹脂組成物100質量部に対して0.1〜5質量部添加することが好ましい。
【0029】
次に、本発明の複合シートにおいて、前記網状布は、表面層と中間層からなる3層の延伸複合糸を縦糸および横糸として使用した熱溶着クロスであって、該延伸複合糸がポリエチレン系樹脂からなるものである。
【0030】
本発明の複合シートにおいては、前記網状布を使用することが重要である。前記網状布を使用することにより、不織布のみを使用した場合よりも、複合シートの耐久性を向上させることができる。
【0031】
例えば、糞尿堆積物被覆用シートのように屋外で複合シート使用する場合、風等によって飛ばされないように杭等を用いて該シートを地面等に固定する場合がある。この時、不織布のみを使用した複合シートは、強度に方向性があるため、杭を打った部分から不織布の強度の弱い方向に複合シートが破れてしまう問題があった。本発明においては、網状布を使用することにより、複合シートを杭等により固定させた場合でも、強度が優れ、該シートの破れを防止し、耐久性を向上させることができる。
【0032】
本発明において、前記網状布は、2つの表面層と1つの中間層を有する3層構造の延伸複合糸からなるものである。また、前記延伸複合糸は、ポリエチレン系樹脂を材料とするものである。前記延伸複合糸の表面層に用いるポリエチレン系樹脂は、その融点(T2)が、後記の要件を満足するものであれば特に制限なく公知のものを使用することができる。中でも、表面層に用いるポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレンが好ましい。一方、中間層に用いるポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレンが好ましい。表面層に用いるポリエチレン系樹脂が、後記の融点の要件を満足し、低密度ポリエチレンであって、かつ中間層に用いるポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンであることにより、他の層との積層において、延伸複合糸が乱れることなく、容易に熱溶着をすることが可能となるため好ましい。この時、前記延伸複合糸の表面層に用いるポリエチレン系樹脂の融点は、中間層に用いるポリエチレン系樹脂の融点よりも5℃以上低いことが好ましい。
【0033】
また、前記表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)は、後記の融点の要件を満足するように他樹脂との兼ね合いにより適宜決定してやればよいが、100〜120℃であることが好ましい。尚、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)は、DSC(示差走査熱量計)により、該ポリエチレン系樹脂の融解熱を測定した際のピーク温度とする。
【0034】
本発明において、前記網状布に使用する延伸複合糸は、表面層と中間層との比が1:9〜5:5であることが好ましく、糸の繊度が100〜3000dt(デシテックス)、糸幅は1.0〜5.0mmであることが好ましい。
【0035】
本発明において、前記網状布に使用する延伸複合糸は、延伸されてなるものである。該複合糸が延伸されてなることにより、該複合糸を縦糸および横糸に使用し、熱溶着させた熱溶着クロスである網状布の引張強度が高くなる。そのため、該網状布を使用した複合シートの引張強度および引裂強度を高めることができ、耐久性を向上させることができる。延伸複合糸の延伸倍率は、3〜12倍が好ましく、さらに5〜10倍がより好ましい。
【0036】
本発明において、前記網状布は、前記延伸複合糸を縦糸と横糸を編織して熱溶着させるか、縦糸と横糸とを重ねておき、その交点を熱溶着させる方法等により熱溶着クロスとすることができる。
【0037】
本発明において、前記網状布は、前記延伸複合糸よりなり、縦糸の本数(L)と横糸の本数(W)との比(L/W)が0.7〜1.4であることが好ましい。前記ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)が、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)、および後記に詳述する不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも5℃以上高く、かつ、T2とT3との差が15℃以下となる要件を満足し、更に、前記L/Wとの比が、前記範囲を満足することにより、熱溶着により積層した複合シートにおいて、各層(ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布)の接着性が強くなり、更に、強度が高く、縦・横方向の強度のバランスに優れた複合シートとすることができる。即ち、例えば、糞尿堆積物被覆用シートのような屋外に使用する用途において、杭等により該シートを地面などに固定した際に、前記融点の要件と前記L/Wが前記範囲の両方を満足することにより、網状布と他層の接着性がよく、更に、強度が高く、縦・横方向の強度のバランスに優れた複合シートとなるため、該シートに杭等を打ちつけた部分からの裂けを少なくすることができる。
【0038】
本発明において、前記網状布に使用する延伸複合糸の打込本数は、糸の繊度および幅にもよるが、前記L/Wが前記範囲を満足し、縦糸2〜15本/1インチ×横糸2×15本/1インチの範囲であることが好ましく、さらに良好な強度と通気性を両立する上で、縦糸5〜10本/1インチ×横糸5×10本/1インチであることがより好ましい。また、開口率は、30〜70%であることが好ましい。
【0039】
本発明において、前記要件を満足する網状物を具体的に例示すると、商品名:メルタック(萩原工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0040】
次に、本発明の複合シートにおいて、前記不織布は、芯鞘複合繊維からなり、該複合繊維の鞘部にポリエチレン系樹脂を使用したものである。前記複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂は、後記の融点(T3)を満足すれば、特に制限なく公知のポリエチレン系樹脂を使用することができる。中でも、他の層と積層した際に、複合シートの熱溶着を容易に行うためには、融点(T3)が後記の要件を満足し、かつ、その融点(T3)が90〜110℃の範囲にあることが好ましい。融点(T3)が前記範囲を満足することにより、複合シートの熱溶着が容易となる。尚、不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)は、DSC(示差走査熱量計)により、該ポリエチレン系樹脂の融解熱を測定した際のピーク温度とする。
【0041】
また、前記複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂は、密度が0.890〜0.920の低密度ポリエチレンであることが好ましい。更に、前記複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂は、不織布の製造を容易とするためにはメタロセン触媒により重合され、分子量分布Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜3.5であり、密度が0.890〜0.920である低密度ポリエチレンが好ましい。
【0042】
本発明において、前記複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲で他の樹脂を添加することができる。
【0043】
本発明において、前記複合繊維の芯部に使用する樹脂は、ポリプロピレン、ポリエステル等を使用することができる。中でも、不織布、複合シートの引張強度や熱融着時の耐熱性等を考慮すると、ポリエステルを使用することが好ましく、前記鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも45℃以上高い融点のポリエステルを採用することが好ましい。
【0044】
本発明において、前記複合繊維の芯部にポリエステルを使用する場合には、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが挙げられる。また、前記したアルキレンテレフタレートと他の成分との共重合ポリエステルを用いることもでき、他の成分としては、酸成分として、イソフタル酸、アジピン酸、ジオール成分として、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール成分が挙げられる。共重合ポリエステルを用いる場合、アルキレンテレフタレート単位が80モル%以上であることが、耐熱性、繊維強度の点から好ましい。
【0045】
中でも、本発明においては、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートとイソフタル酸の共重合体が好ましい。
【0046】
本発明において、前記複合繊維の芯部と鞘部の割合は、質量比20/80〜80/20の範囲にすることが好ましい。鞘部の比率が少ないとヒートシール性が低下し、多すぎると繊維強度が低下する。
【0047】
本発明において、前記不織布は、前記複合繊維を堆積して一体化することによりなるものである。複合繊維を一体化する方法としては、公知の方法を制限することなく用いることができ、例えば、熱エンボス処理や熱風処理等の熱処理により繊維同士を熱接着してなる熱接着不織布、繊維同士をニードルパンチ等により機械的に交絡してなる交絡不織布等が挙げられる。中でも、熱エンボス処理により繊維同士を熱接着してなる熱接着不織布であることが好ましい。尚、前記不織布は、特開2003−306862号公報に記載された製法に従い、製造することができる。
【0048】
本発明において、前記不織布の目付は、10〜300g/mの範囲であることが好ましく、20〜100g/mが好ましい。
【0049】
本発明において、複合シートは、熱溶着により各層(前記ポリエチレン系多孔質フィルム、前記網状布、および前記不織布)を接着させ、積層したものである。具体的な積層方法は、各層を巻出機より巻出して、それぞれを積層した状態で電気加熱、誘電加熱、熱媒循環加熱等により、ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)よりも低い温度、好ましくは、100〜120℃に加熱されたドラムロールとシリコンゴムロール間でニップして熱融着して巻取る方法が好ましい。
【0050】
本発明において、複合シートの積層順は、特に制限されるものではないが、糞尿堆積物被覆用シート等の屋外で使用する場合には、ポリエチレン系多孔質フィルムは、他層よりも強度が低いため、中間層に使用することが好ましい。つまり、複合シートが、網状布/ポリエチレン系多孔質フィルム/不織布の順で積層した部分を有し、ポリエチレン系多孔質フィルムが表面層とならないようにすることが好ましい。また、積層数もポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布の各層が積層された部分を含めば、3層であってもよいし、3層以上の積層であってもよい。
【0051】
本発明の複合シートにおいて、最大の特徴は、前記ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)が、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)、前記不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも5℃以上高く、かつ、T2とT3との差が15℃以下としたことにある。
【0052】
本発明において、前記ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)は、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)、および前記不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも少なくとも5℃以上高くなければならない。T1が、T2、T3よりも5℃未満である場合には、熱溶着により積層を行う際に、ポリエチレン系多孔質フィルムの通気性を発現する貫通孔を、熱溶着時に該多孔質フィルムの一部のポリエチレン系樹脂が溶融して潰すものと考えられ、得られる複合シートの通気性が低下するため好ましくない。尚、T1と、T2、T3との差の上限は、特に制限されるものではないが、工業的に入手可能なポリエチレン系樹脂を考慮すると、45℃以下であることが好ましい。
【0053】
本発明において、複合シートは、T1がT2、T3よりも5℃以上高く、かつ、T2とT3との差が15℃以下でなければならない。T2とT3は何れの融点が高くともかまわないが、両者の差が15℃以下でなければならない。T2とT3の差が15℃を超える場合には、熱溶着により積層する際に、複合シートにおいて、熱溶着による接着が十分でなくなり、各層(ポリエチレン系多孔質フィルム、前記網状布、および前記不織布)が剥がれてしまうため好ましくない。また、この場合、接着性を高めるため、熱溶着時の温度を上げると得られる複合シートの通気性が低下してしまうため好ましくない。
【0054】
本発明においては、ポリエチレン系多孔質フィルム(以下、多孔質フィルムとする場合もある)/網状布/不織布、多孔質フィルム/不織布/網状布、不職布/多孔質フィルム/網状布等の構成、で積層した部分を含む複合シートとなる(ただし、複合シートにおいて、3層における表面層の上下が反対になる場合の構成、および3層を超えるものの構成は記載を略した)。この場合、T2とT3との差が15℃を超えることにより、網状布または不織布の少なくとも何れか一方において、他層と熱溶着する部分(ポリエチレン系樹脂)の融点が高い温度を示すこととなり、各層の接着が十分とならないため好ましくない。具体的にT3がT2より15℃を超える温度である場合を考えると、多孔質フィルム/不織布の層間において、接着強度が低下するため好ましくない。また、この場合、多孔質フィルム/網状布/不織布において、網状布/不織布間の接着強度を高めるためには、高い温度での熱溶着が必要となり、多孔質フィルムの貫通孔を潰す恐れがあり、通気性が低下するため好ましくない。
【0055】
更に、本発明においては、T2とT3との差が15℃以下であることにより、幅広の複合シートを得る際に有利となる。通常、糞尿堆積物被覆用シート等の用途に使用する場合には、複合シートの端の部分をヒートシールにより接合した幅広のものを使用する。中でも、前記複合シートにおいて、特に不織布面がヒートシール面となる場合、T2とT3との差が15℃以下であることにより、十分なヒートシール強度を有する複合シートを得ることができる。つまり、T2とT3との差が15℃を超える場合には、不織布面と網状布面、不織布面と多孔質フィルム面、不織布面と不織布面とをヒートシールする際には、十分なヒートシール強度が得られなかったり、また、過度の加熱により、網状布の糸の表面層が融解してしまい、ヒートシール部の引張強度が低下するため好ましくない。
【0056】
本発明において、T2とT3との差は、複合フィルムの通気性、各層の接着性、ヒートシール強度等を考慮すると、より好ましくは10℃以下である。また、複数の複合シートの端の部分をヒートシールにより接着させて使用する場合には、網状布の融解による破断を防止し、ヒートシール強度を高く保つためには、T3がT2よりも低い温度であることが好ましい。尚、T2とT3との差の下限は、特に制限されるものではなく、T2とT3とが同じ温度であってもよい。
【0057】
また、本発明において、複数の複合シートの端部をヒートシールする際には、前記の通り、ヒートシール性が良好なため、ヒートシールの重ね代を20〜50mmにすることができる。本発明の複合シートは、ヒートシール性が良好であるため、ヒートシールの重ね代を前記範囲にしたとしても、十分な強度を有することができ、複合シートの面積を有効に使用することができる。
【0058】
本発明の複合シートを糞尿堆積物被覆用シートに使用した場合には、耐水圧が高く雨水を通さず、通気性が良く、機械的強度に優れ、耐久性もあるため、糞尿等を良好に発酵させることができ、屋外での使用に十分な強度を備えている。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を示すが本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0060】
実施例、比較例で用いた不織布の製造例を示す。
【0061】
不織布の製造例1
芯部のポリエステルとして、融点260℃、極限粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを用い、鞘部のポリエチレンとして、メタロセン系重合触媒を用いて重合された、メルトフローレート20g/10分、Q値2.2、密度0.904g/cm、融点102℃のポリエチレン系樹脂を用いて、下記スパンボンド法にて芯鞘構造を有する不織布を製造した。
【0062】
上記ポリエステル及びポリエチレン系樹脂を原料とし、公知の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度280℃にて芯鞘型複合断面となる紡糸口金より、繊維質量に占める鞘部の重量比率が50質量%となるように溶融紡糸し、吸引装置により繊度3.3dTexとなるように引き取り細化させ、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、移動する捕集面上に捕集・堆積させて、長繊維が堆積してなる不織布ウェブとした。この不織布ウェブを、エンボスロール(エンボス突起部の面積率21%)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に導き、両ロールの表面温度95℃、線圧294N/cmの条件下で部分的に熱圧接処理を施し、目付40g/mの不織布を得た。
【0063】
不織布の製造例2
鞘部として、融点130℃、メルトフローレート20g/10分、Q値4.9、密度0.957g/cmのポリエチレン系樹脂を用いた以外は、不織布の製造例1と同様にして、目付40g/mの不織布を製造した。
【0064】
【表1】

【0065】
以下、実施例、比較例で使用した網状布を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
なお、実施例及び比較例に記載した物性値は、以下に示す方法によって測定したものである。
【0068】
1)DSCによる融点の測定
セイコーインスツルメンツ株式会社製 DSC6200Rを用い、以下の測定条件で融点を測定した。
【0069】
約5〜6mgの試料を秤量後、アルミパンに封入し、示差走査熱量計にて20ml/minの窒素気流中で室温から235℃まで昇温し、この温度で10分間保持し、次いで10℃/minで室温まで冷却する。この後、昇温速度10℃/minで得られる融解曲線により、ピークの温度を測定した。
【0070】
2)通気度
JIS P 8117法に準じて、王研式透気度計にて測定した。
【0071】
3)透湿度
JIS Z 0208法に準じて、測定温度40℃、湿度90%条件下で測定した。
【0072】
4)耐水圧
JIS L 1092法に準じて測定した。
【0073】
5)引張強度
JIS L 1096法に準じて、試験片幅50mm、引張速度200mm/minの条件で測定した。
【0074】
6)引裂強度
JIS L 1096法(シングルタング法)に準じて測定した。
【0075】
7)接着強度
70〜100℃雰囲気の恒温槽内に1時間放置し、層間剥離の有無を目視で確認することにより接着強度を評価した。試験片は、縦20cm×横10cmとした。
【0076】
8)中接強度(ヒートシール強度)
JIS L 1096法に準じて、試験片幅50mm、引張速度200mm/minの条件下で中接部(ヒートシール部40mm幅)の引張強度(ヒートシール部と垂直方向の引張強度)を測定した。
【0077】
9)複合シートの堆肥化、および耐久性のテスト
得られた複合シートを糞尿堆積物被覆用シートとして屋外で使用した。屋外において、浸透防止シートを設置した上に、乳牛の糞を1m高に積み上げた。その上から、複合シートで被覆し、該シートの4辺を杭により固定した。約1ヶ月ごと糞の切り返しを行い、3ヶ月放置して使用したときの、被覆物の状態を外観、臭気により堆肥化の評価を行った。糞が内部まで均一に発酵し、黄緑色から濃い土色に変化すると共に、嫌気性発酵が生じておらずアンモニア臭がしないものを良好に堆肥が製造されたものとした。
【0078】
また、耐久性のテストとして、杭を打ち込んだ部分からの破れを以下の通り評価した。尚、4辺を最初に杭で固定した際、杭を打った部分から、糞がある部分の距離は約30cmとした。
○:複合シートに破れが見られなかったもの。
△:少しの破れはあるが、雨水の浸入、糞のもれの可能性の低いもの(破れた部分から糞が確認できない程度の破れのもの)。
×:破れがひどく、破れた部分から糞が確認できるほど破れが生じたもの。
【0079】
実施例1
多孔質フィルムは、線状低密度ポリエチレン(出光石油化学製、商品名:LLDPE0234CL、密度=0.919g/cm、MI=2.1g/10min)46質量部、炭酸カルシウム(カルファイン製、商品名:LAC2000、平均粒子径=2.0μm)54質量部からなる樹脂組成物100質量部に対し、酸化チタン(タイオキサイト製、商品名:R−TC30)2.0質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティーケミカルズ製、商品名:TINUVIN111)1.0質量部を添加してなる配合で、混合・造粒、フィルム成形を行った。
【0080】
造粒はベント付二軸押出機を用いて、シリンダー温度180℃でストランド状に押出し、水槽で冷却後に5mm程度にカットし・乾燥してペレットとした。次に、上記ペレットをインフレ成膜機にて、押出温度180℃で溶融成膜した後、60℃に加熱したロール間で2.0倍の延伸倍率で縦方向に延伸し、さらに200℃に加熱したマンドレル延伸機で1.2倍の延伸倍率で横方向に延伸し、厚さ40μmのポリエチレン系多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの通気度は250秒/100cc、融点(ピークトップ温度)は123℃であった。
【0081】
次に、得られた多孔質フィルムと不織布(不織布の製造例1で示したもの)および網状布(萩原工業製、商品名:メルタッククロス、繊度=560dt、打込本数/インチ=縦8本×横7本、L/W=1.1)を、加熱ロール側から網状布/多孔質フィルム/不織布の順に配置し、ロール温度115℃、速度30m/minの条件下で熱圧着させ3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表3に示した。得られた積層シートは、良好な通気度と引裂強度を有しており、且つ高い接着強度を有していた。
【0082】
さらに、得られた3層複合シート2枚の端と端を、網状布面と不織布面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートを得た。このようにして得られた中接シートの中接強度を測定した結果を表3に示した。得られた中接シートは、良好な中接強度を有していた。
【0083】
また、得られた複合シートについて、網状布面を糞側にして糞尿堆積物被覆用シートとして使用したが、堆肥を良好に製造することができた。また、杭を打った部分からの破れも見られなかった。結果を表3に示す。
【0084】
実施例2
層構成を不織布/網状布/多孔質フィルムに変更した以外は、実施例1と同一の資材、同様の製造方法にて3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表3に示した。得られた積層シートは、良好な通気度と引裂強度を有しており、且つ高い接着強度を有していた。
【0085】
また、実施例1と同様の方法により、不織布面と多孔質フィルム面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートを得た。このようにして得られた中接シートの中接強度を測定した結果を表−3に示した。得られた中接シートは、良好な中接強度を有していた。得られた複合シートを、多孔質フィルム面を糞の側にして、前記方法に従い、糞尿堆積物被覆用シートとして使用した。堆肥は良好に製造されていた。また、耐久性については、杭を打った部分からの破れは見られなかった。結果を表3に示す。
【0086】
実施例3
層構成を網状布/不織布/多孔質フィルムに変更した以外は、実施例1と同一の資材、同様の製造方法にて3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表3に示した。得られた積層シートは、良好な通気度と引裂強度を有しており、且つ高い接着強度を有していた。
【0087】
また、実施例1と同様の方法により、網状布面と多孔質フィルム面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートを得た。このようにして得られた中接シートの中接強度を測定した結果を表−3に示した。得られた中接シートは、良好な中接強度を有していた。得られた複合シートを、多孔質フィルム面を糞の側にして、前記方法に従い、糞尿堆積物被覆用シートとして使用した。堆肥は良好に製造されていた。また、耐久性については、杭を打った部分からの破れは見られなかった。結果を表3に示す。
【0088】
実施例4
実施例1の網状布をL/Wが1.6(萩原工業製、商品名:メルタッククロス、繊度=560dt、打込本数/インチ=縦8本×横5本)とした以外は、実施例1と同一の資材、同様の製造方法にて3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表3に示した。得られた積層シートは、良好な通気度を有しており、且つ高い接着強度を有していた。
【0089】
また、実施例1と同様の方法により、網状布面と不織布面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートを得た。このようにして得られた中接シートの中接強度を測定した結果を表−3に示した。得られた中接シートは、良好な中接強度を有していた。得られた複合シートを、網状布面を糞の側にして、前記方法に従い、糞尿堆積物被覆用シートとして使用した。結果を表3に示す。
【0090】
比較例1
実施例1で使用した多孔質フィルムと不織布(不織布の製造例2で示したもの)および網状布(萩原工業製、商品名:メルタッククロス、繊度=560dt、打込本数/インチ=縦8本×横7本、L/W=1.1)を、加熱ロール側から網状布/多孔質フィルム/不織布の順に配置し、115℃に加熱したロール間で熱圧着させ3層複合シートの製造を試みた。しかしながら、各層間が接着せず、3層複合シートを得ることはできなかった。
【0091】
比較例2
比較例1の構成において、まず網状布と多孔質フィルムを115℃に加熱したロール間で熱圧着して2層複合シートを製造し、その後、該2層複合シートと不織布を130℃に加熱したロール間で熱圧着させ3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表4に示した。得られた積層シートは、良好な引裂強度と接着強度を有していたが、多孔質フィルムの通気度が大幅に低下したものであった。
【0092】
さらに、得られた3層複合シート2枚の端と端を、網状布面と不織布面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートの製造を試みたが、各層を溶融させることができず中接することができなかった。また、140℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着させた場合は、表4に示したように、網状布が溶融破壊され中接部の引張強度は大幅に低下した。
【0093】
この複合シートを用いて、前記方法に従い、網状布側を糞側にして糞尿堆積物被覆用シートとして使用した。しかしながら、堆肥化テストの途中で中接部から複合シートに亀裂が入り、最後までテストを行うことができなかった。また、途中までではあったが、堆肥はアンモニア臭がし、嫌気性の発酵であった。
【0094】
比較例3
実施例1で使用した多孔質フィルムと不織布(不織布の製造例1で示したもの)および網状布(積水フィルム製、商品名:2軸ソフNA77 打込本数/インチ=縦7本×横7本、L/W=1.0)を、加熱ロール側から網状布/多孔質フィルム/不織布の順に配置し、115℃に加熱したロール間で熱圧着させ3層複合シートの製造を試みた。しかしながら、各層間が接着せず、3層複合シートを得ることはできなかった。
【0095】
比較例4
比較例3の構成において、まず不織布と多孔質フィルムを115℃に加熱したロール間で熱圧着して2層複合シートを製造し、その後、該2層複合シートと網状布を130℃に加熱したロール間で熱圧着させ3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表4に示した。得られた積層シートは、良好な引裂強度と接着強度を有していたが、多孔質フィルムの通気度が大幅に低下したものであった。
【0096】
さらに、得られた3層複合シート2枚の端と端を、網状布面と不織布面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートを得た。このようにして得られた中接シートの中接強度を測定した結果を表4に示した。得られた中接シートは、良好な中接強度を有していた。この複合シートを用いて、前記方法に従い、網状布側を糞側にして糞尿堆積物被覆用シートとして使用した。しかしながら、堆肥はアンモニア臭がし、嫌気性の発酵であった。結果を表4に示す。
【0097】
比較例5
実施例1で使用した多孔質フィルムと不織布(不織布の製造例1で示したもの)を、加熱ロール側から不織布/多孔質フィルム/不織布の順に配置し、115℃に加熱したロール間で熱圧着させ3層複合シートを得た。このようにして得られた3層複合シートについて測定した物性値を表4に示した。得られた積層シートは、良好な通気度と接着強度を有していたが、複合シートの引裂強度(縦方向)が大幅に低下した。なお、横方向の引裂強度は、測定時に縦方向へ裂けてしまうため、実質の強度を測定することができなかった。
【0098】
さらに、得られた3層複合シート2枚の端と端を、網状布面と不織布面が接着面となるように配置し、120℃に加熱した40mm幅の加熱バー間で熱圧着することにより中接シートを得た。このようにして得られた中接シートの中接強度を測定した結果を表−4に示した。得られた中接シートは、複合シートの強度が低いため値はやや低いが、良好な中接強度を有していた。 この複合シートを用いて、前記方法に従い、不織布側を糞側にして糞尿堆積物被覆用シートとして使用した。堆肥は良好に製造することができたが、杭を打った部分からの破れがひどく、糞が破れた部分から確認された。結果を表4に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系多孔質フィルム、網状布、および不織布を熱溶着により積層した複合シートにおいて、前記ポリエチレン系多孔質フィルムが、ポリエチレン系樹脂と無機充填剤とを含んでなる樹脂組成物を製膜してフィルムを得た後、得られたフィルムを少なくとも1軸延伸してなる多孔質フィルムであって、前記網状布が、ポリエチレン系樹脂を用いた表面層、中間層の3層からなる延伸複合糸を縦糸および横糸として使用した熱溶着クロスであって、前記不織布が、芯鞘複合繊維からなり、該複合繊維の鞘部にポリエチレン系樹脂を使用した不織布であって、更に、前記ポリエチレン系多孔質フィルムに使用するポリエチレン系樹脂の融点(T1)が、前記網状布の延伸複合糸の表面層に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T2)、および前記不織布の複合繊維の鞘部に使用するポリエチレン系樹脂の融点(T3)よりも5℃以上高く、かつ、T2とT3との差が15℃以下であることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
前記網状布が、表面層に低密度ポリエチレンを用い、中間層に高密度ポリエチレンを用いた3層の延伸複合糸からなり、縦糸の本数(L)と横糸の本数(W)との比(L/W)が0.7〜1.4であることを特徴とする請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記複合シートが、複数の複合シートの端の部分をヒートシールにより接着してなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の複合シート。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の複合シートからなる糞尿堆積物被覆用シート。

【公開番号】特開2007−136690(P2007−136690A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329544(P2005−329544)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】