説明

複合シート

【課題】薄くて、且つ電磁波吸収量の向上した複合シートを提供する。
【解決手段】軟磁性金属粉末とシリコ−ン樹脂等の樹脂とを含む電波吸収用複合シートであって、扁平状の軟磁性金属粉末が高密度で充填されるようにすることによって、空隙率がが低くなり、電磁波吸収量を向上させつつ、さらに、シートを薄くすることができるもので、前記複合シート100重量部に対して前記軟磁性金属粉末を50〜99重量部含有し、前記複合シートの空隙率は0.1〜10%である、複合シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性金属粉末と樹脂とを含む複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
軟磁性金属粉末及び樹脂を含むシートである「複合シート」は、電磁波吸収シート又はノイズ抑制シートとも称され、主に、パソコンや携帯電話などの情報通信機器内の回路基板上から発生する電磁ノイズを吸収することによる、回路の誤作動防止や機器外部への放射電磁波の抑制といった効果を奏する。
【0003】
軟磁性金属粉末として、例えば、鉄−ケイ素−アルミニウム合金(Fe−Si−Al)は、初期透磁率が高いことから上記の用途に適している。このような特性を利用して、当該金属粉末を樹脂に対して高い組成比で配合し、薄くシート状に加工してなる複合シートが開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、情報通信機器の小型化に伴い、機器内に貼るシートの薄さに対するニーズが年々高まりつつある。一般に、電磁波を吸収する性能はシートの厚みに比例する。しかしながら、特許文献1に開示されたシートを含めて、これまでのシートは、高い電磁波吸収量及びシートの薄さを十分に兼ね備えていないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、薄くて、且つ電磁波吸収量の向上した複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、前記軟磁性金属粉末と樹脂とを含む複合シートについて鋭意検討した。その結果、シート内の空隙率が低くなるよう、かかるシートに扁平状の軟磁性金属粉末が高密度で充填されるようにすることによって、電磁波吸収量を向上させつつ、さらに、シートを薄くすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、軟磁性金属粉末と樹脂とを含む複合シートであって、前記複合シート100重量部に対して前記軟磁性金属粉末を50〜99重量部含有し、前記複合シートの空隙率は0.1〜10%である、複合シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄くて、且つ電磁波吸収量の向上した複合シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施の形態は、軟磁性金属粉末と樹脂とを含む複合シートであって、前記複合シート100重量部に対して前記軟磁性金属粉末を50〜99重量部含有し、前記複合シートの空隙率は0.1〜10%である複合シートに係る。
【0012】
[軟磁性金属粉末]
【0013】
軟磁性金属粉末とは、軟磁性金属の粉末である。前記軟磁性金属とは、外部磁界のシグナルに迅速に対応して、高い磁束密度をほとんど損失することなく得ることができる金属であり、高透磁率材料とも称される。
【0014】
前記軟磁性金属としては、以下に制限されないが、例えば、純鉄、カルボニル鉄、Fe−Si合金、鉄−アルミ合金、Fe−Cr−Ni合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Ni合金、及びFe−Co合金が挙げられる。中でも、より透磁率が高いという観点から、純鉄、カルボニル鉄、Fe−Si−Al合金、Fe−Cr−Ni合金、及びFe−Ni合金が好ましい。
【0015】
前記Fe−Si−Al合金としては、高い電磁波吸収効果を得るという観点から、原子重量換算で、Siが8〜12重量部であってAlが5〜8重量部であるものが好ましい。中でもSiが9.6重量部、Alが5.7重量部であるものが特に好ましく、この組成の合金を以下では「Fe−9.6Si−5.7Al」と表す。上記カルボニル鉄とは、純鉄の粒子表面がリン酸鉄で覆われたものの一般名称である。上記Fe−Ni合金は、一般にパーマロイと呼ばれ、当該合金100重量部に対するNi成分の組成が通常、20〜90重量部である。上記Fe−Cr−Ni合金としては、高い電磁波吸収量を得るという観点から、原子量換算で、Crが1.48〜1.68重量部、Niが0.50〜0.70重量部であるものが好ましい。
【0016】
軟磁性金属粉末の含有量は、前記複合シート100重量部に対して50〜99重量部である。50重量部以上の場合には、シート成形の原料である樹脂組成物の電磁波吸収量が向上し、99重量部以下の場合には、樹脂組成物の成形性及びシートの柔軟性に優れる。また、ワニスの基材に対する塗工性の向上という観点から、好ましくは60〜90重量部であり、より好ましくは70〜90重量部である。ここで、本明細書における「電磁波吸収量」は、後述する実施例で挙げた方法により算出された値を採用する。
【0017】
軟磁性金属粉末の平均粒径(d50)として、好ましくは1〜100μmである。1μm以上の場合には粉末の取り扱い性が良好となり、100μm以下の場合には、樹脂組成物のシート成形性が良好になるとともに、電磁波吸収量も向上する。また、粉末の取り扱い性の観点から、より好ましくは2〜60μmであり、さらに好ましくは10〜50μmである。なお、本明細書における平均粒径の測定方法は、BET法である。
【0018】
軟磁性金属粉末は、その粒径が大きいものと小さいものとを混合させて用いた場合、樹脂と混練した際に当該粉末の空間(粉末粒子間の距離)を有意に減少させることができる。そのため、樹脂に対する軟磁性金属粉末の充填率を一層増大させることができ、複合シートの電磁波吸収量を向上させることができる。
【0019】
軟磁性金属粉末の比表面積は、0.3〜2m2/gであることが好ましい。0.3m2/g以上の場合には、樹脂と混練しシート化させた際のシートの柔軟性に優れ、2m2/g以下の場合には、樹脂に対して軟磁性金属粉末を高濃度(高組成比)で配合できるため、シートの電磁波吸収量を向上させることができる。なお、本明細書における比表面積の測定方法は、BET法である。
【0020】
軟磁性金属粉末の形態としては、以下に制限されないが、例えば、球状や扁平状が挙げられる。中でも好ましくは扁平状である。扁平状の場合、樹脂と混練しシート化する段階で、軟磁性金属粉末がシート平面に対して水平に配向しやすくなる。そして、このように水平に配向させることで、複合シートの電磁波吸収量が向上し、且つ複合シートを有意に薄くできるという観点から、扁平状は好ましいといえる。特に、扁平状に加工されたFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Ni合金、及びFe−Ni合金の粉末は、透磁率が非常に高いため、より好ましい。
【0021】
軟磁性金属粉末の粒子が扁平状の場合に、この扁平な「板」の厚みとしては、0.05〜5μmが好ましい。0.05μm以上の場合には、樹脂との混練時に形状を維持できるため、所望の形状の複合シートを成形しやすく、5μm以下の場合には複合シートを一層薄くできる。また、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0022】
軟磁性金属粉末は、樹脂との密着性を一層向上させることを目的として、当該粉末の粒子表面をカップリング処理してもよい。前記カップリング処理としては、以下に制限されないが、例えば、シランカップリング処理が挙げられる。
【0023】
前記シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性シラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ官能性シラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のオレフィン官能性シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シラン;及び、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランが挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
シランカップリング処理の各条件の例を説明する。まず、処理液の組成としては、上記のカップリング剤を水などの溶媒に0.1〜15g/Lの濃度で溶解させればよい。また、処理液の温度は、室温〜50℃であればよい。軟磁性金属粉末の処理液への浸漬時間については特に制限されることはない。
【0025】
シランカップリング処理後は、以下に制限されないが、加熱や紫外線照射により、カップリング剤と軟磁性金属粉末との間で安定的結合を形成させて、カップリング剤を軟磁性金属粉末に吸着させることができる。なお、加熱や紫外線照射の条件については、従来公知の条件を用いればよい。
【0026】
[樹脂]
【0027】
本実施の形態における樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、二重結合や三重結合などの不飽和基を有するモノマーの重合体又は共重合体を用いることができる。
【0029】
モノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ素化エチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、及び酢酸ビニルが挙げられる。
【0030】
また、上記のモノマーの重合体又は共重合体以外の熱可塑性樹脂として、以下に制限されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、及びポリアリレートが挙げられる。
【0031】
熱硬化性樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、及びベンゾシクロブテン樹脂が挙げられる。
【0032】
上記の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、官能基を有する化合物で変性されたものであってもよい。かかる官能基としては、以下に制限されないが、ビニル基、アリル基、カルボキシル基、酸無水基、エステル基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エポキシ基及びハロゲンからなる群より選択される1種以上があり得る。
【0033】
上記樹脂の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
上記した熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の中でも、溶剤に対する溶解性、軟磁性金属粉末との密着性、及び溶剤や軟磁性金属粉末と混練してなるワニスの基材へのコーティング性といった観点から、熱可塑性シリコーン樹脂又は塩素化ポリエチレンが好ましく、熱可塑性シリコーン樹脂がより好ましい。前記熱可塑性シリコーン樹脂は、主に、ジメチルシロキサンの繰り返し単位から構成されるが、その繰り返し単位中に水素結合などの相互作用を有するセグメントを含むものは水素結合を介して擬似架橋点を形成し、エラストマーとしての粘弾性挙動を示す。そのため、前記熱可塑性シリコーン樹脂は、本実施の形態に係る複合シートの引っ張り強度や柔軟性などの特性上、好ましいものといえる。上記の相互作用を有するセグメントとしては、以下に制限されないが、相互作用の強さという観点から、好ましくはエステル結合又はウレア結合である。
【0035】
樹脂の含有量は、複合シート100重量部に対して1〜50重量部である。1重量部以上の場合、コーティング成膜性に優れ、50重量部以下の場合、複合シートの磁気特性や難燃性に優れる。また、好ましくは5〜20重量部である。
【0036】
また、本実施の形態に係る複合シートを製造する際に、前記樹脂を溶解させる目的で溶剤を用いることができる。かかる溶剤としては、以下に制限されないが、例えば、トルエン、ヘキサン及びブタノンが挙げられる。
【0037】
[複合シート]
【0038】
本実施の形態に係る複合シートは、上記の軟磁性金属粉末や樹脂以外にも、目的に応じて、難燃剤、紫外線吸収剤、可塑剤や架橋剤などを含み得る。
【0039】
本実施の形態に係る複合シートの空隙率は、0.1〜10%である。空隙率が10%以下の場合には電磁波吸収量が向上し、0.1%以上の場合には複合シートの柔軟性に優れる。また、電波吸収量及びシート柔軟性の兼備の観点から、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.1〜3%である。なお、本実施の形態に係る複合シートの空隙率は、後述の実施例において用いた手法により算出される値を採用する。
【0040】
本実施の形態に係る複合シートの比重の測定は、後述する実施例において実施した方法を採用する。
【0041】
本実施の形態に係る複合シートの厚みは、10〜120μmが好ましい。120μm以下の場合には、小型機器内の狭い隙間に用いることができ、10μm以上の場合には、シート強度がより高く、取り扱い性が一層良好となる。また、厚み及び電磁波吸収特性の兼備の観点から、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜100μm、さらにより好ましくは30〜80μmである。
【0042】
本実施の形態に係る複合シートは、以下に制限されないが、押し出し成形法、射出成形法、カレンダー成形法やコーティング法などにより製造することができる。中でも、薄い複合シートが簡便に得られるという観点から、コーティング法が好ましい。上記の方法などにより得られた複合シートを、高比重化及び薄膜化を目的として、さらに圧縮加工してもよい。かかる圧縮加工として、以下に制限されないが、熱プレスやロール圧延などの手段を用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0044】
[比重の測定]
【0045】
比重は、JIS K7112 A法(水中置換法)に準拠し、水の比重を997.5kg/m3(23℃)として求めた。
【0046】
[空隙率の算出]
【0047】
複合シート内に軟磁性金属粉末と樹脂とが隙間無く完全に充填されたと仮定したときの比重をρ(A)、及びシート比重の実測値をρ(B)として、下記式により算出された値を空隙率とした。
【0048】
空隙率=(ρ(A)―ρ(B))/ρ(A)
【0049】
[電磁波吸収量の評価]
【0050】
幅1mmのマイクロスプリットラインから放射される電磁波強度を電磁波可視化装置で観察した。ライン上の任意の位置での放射電磁波強度を測定し、その値をP1とした。同じ位置に複合シートを貼り、その位置での放射電磁波強度をP2とした。
【0051】
電磁波吸収量(単位:dB)は下記式から求めた。
【0052】
電磁波吸収量=20×log(P1/P2)
【0053】
複合シートは1cm角の正方形であり、放射電磁波の測定値は500MHzであった。
[実施例1]
【0054】
熱可塑性シリコーン樹脂(GENIOMER140、旭化成ワッカー(株)製;メルトフローインデックス(180℃、荷重21.6Kg)90g/10min)15gを2−ブタノン20gに溶解させて得られた溶液に、扁平状のFe−9.6Si−5.7Al合金の粉末(比表面積0.57m2/g;d50=59μm、d90=133μm)85gを加え、十分に攪拌混合(混練)した。合金粉末が溶液中に均一に分散した状態で、かかる分散液をPETフィルム上にキャストし、100℃で熱風乾燥した結果、厚み200μmの膜が得られた。この膜を、50MPa、200℃3分間の条件下で熱プレス処理し、厚み75μmの膜(複合シート)を製造した。得られた膜の比重は3.6、空隙率は2.3%、電磁波吸収量は6dBであった。
【0055】
[実施例2]
【0056】
熱可塑性シリコーン樹脂の添加量を12g、扁平状のFe−9.6Si−5.7Al合金の粉末の添加量を88gとした点以外は、実施例1と同様にして、厚み80μmの膜(複合シート)を製造した。得られた膜の比重は3.9、空隙率は4.2%、電磁波吸収量は7dBであった。
【0057】
[実施例3]
【0058】
塩素化ポリエチレン(エラスレン301A、昭和電工(株)製;メルトフローインデックス(180℃、荷重21.6Kg)1.6g/min)20g、及び扁平状の97Fe−2Cr−1Ni合金の粉末(比表面積0.87m2/g;d50=19μm、d90=39μm)80gを、トルエン20g中でよく分散させた。その後、かかる分散液をPETフィルム上にキャストし、100℃で熱風乾燥した結果、厚み0.3mmの膜が得られた。この膜を、70MPa、120℃3分間の条件下で熱プレス処理し、厚み120μmの膜(複合シート)を製造した。膜の比重は3.5、空隙率は6.7%、電磁波吸収量は4dBであった。
【0059】
[比較例1]
【0060】
熱可塑性シリコーン樹脂25gと扁平状のFe−9.6Si−5.7Al合金の粉末75gとを、小型ミキサーを用いて150℃で混練し、合金粉末が均一に分散した樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、5MPa、200℃3分間の条件下で熱プレス処理し、厚み200μmの膜(複合シート)を製造した。なお、用いた樹脂及び合金粉末は、実施例1で用いたものと同じである。得られた膜の比重は3.2、空隙率は13.1%、電磁波吸収量は2dBであった。
【0061】
[比較例2]
【0062】
塩素化ポリエチレン20gと扁平状の97Fe−2Cr−1Ni合金の粉末80gとを、小型ミキサーを用いて120℃で混練し、合金粉末が均一に分散した樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、5MPa、120℃3分間の条件下で熱プレス処理し、厚み250μmの膜(複合シート)を製造した。なお、用いた樹脂及び合金粉末は、実施例3で用いたものと同じである。得られた膜の比重は3.2、空隙率は14.7%、電磁波吸収量は2dBであった。
[比較例3]
熱可塑性シリコーン樹脂55gと扁平状のFe−9.6Si−5.7Al合金の粉末45gとを用いた他は実施例1と同様にして行った。得られた膜の比重は1.5、空隙率は7.9%、電磁波吸収量は0.2dBであった。
【0063】
上記した実施例及び比較例の結果を下記表1にまとめた。
【表1】

【0064】
表1より、実施例1〜3で得られた複合シートは、比較例1〜2で得られたものと比較して、薄さと電磁波吸収量とのバランスに優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の複合シートは、携帯電話、パーソナルコンピュータやデジタルカメラ等の電子機器及び情報通信機器の内部に搭載される、配線板、CPU、LSIや配線などの部材に貼り付けられ、機器の誤作動の原因となる不要な電磁ノイズの吸収の用に供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性金属粉末と樹脂とを含む複合シートであって、
前記複合シート100重量部に対して前記軟磁性金属粉末を50〜99重量部含有し、前記複合シートの空隙率は0.1〜10%である、複合シート。
【請求項2】
前記樹脂は熱可塑性シリコーン樹脂である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記軟磁性金属粉末の平均粒径(d50)は1〜100μmである、請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】
厚みが10〜120μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合シート。

【公開番号】特開2011−3583(P2011−3583A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143233(P2009−143233)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】