説明

複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法、当該マスターバッチの製造方法により得られた複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチ、および、当該マスターバッチを用いて得られた成形体並びに積層体

【課題】表面被覆処理工程における熱線遮蔽機能の損失が起き難い複合タングステン酸化物微粒子が、ポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチの製造方法と、当該マスターバッチの製造方法により得られたマスターバッチ、および、当該マスターバッチを用いて得られた成形体並びに積層体を提供する。
【解決手段】有機溶剤中に複合タングステン酸化物微粒子を分散させた分散液へ、シラン化合物を添加する工程と、前記シラン化合物が添加された分散液へ触媒を加え、前記シラン化合物の縮重合物で被覆された表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液を得る工程と、前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液に、ポリカーボネート樹脂と相溶性を有し、且つ、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着する官能基を有する凝集防止剤を添加した後、前記有機溶剤を揮散させ、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を得る工程と、前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を、ポリカーボネート樹脂と溶融混練して、ポリカーボネート樹脂マスターバッチを得る工程と、を具備している複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチの製造方法と、当該マスターバッチの製造方法により得られたマスターバッチ、および、当該マスターバッチを用いて得られた成形体並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの移動機器に設けられた窓材、ドア材等のいわゆる開口部分から、建築物や移動機器の内部に入射する太陽光線には、可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれている。この太陽光線に含まれている赤外線のうち、波長800〜2500nmの近赤外線は熱線と呼ばれ、前記開口部分から建築物や移動機器の内部に進入することにより、当該内部の温度を上昇させる原因になる。
【0003】
当該温度上昇を解消するために、近年、各種建築物や移動機器の窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等の製造、建設分野では、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽し、明るさを維持しつつ内部の温度上昇を抑制する熱線遮蔽機能を有する成形体の需要が急増している。一方、当該熱線遮蔽機能を有する成形体の需要に呼応して、熱線遮蔽機能を有する成形体に関する提案が多数なされている。
【0004】
例えば、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムをガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明成形体に接着した熱線遮蔽板が提案されている(特許文献1、2、および3参照)。
【0005】
一方、透明成形体表面に、金属または金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板も数多く提案されている。
【0006】
この他、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性透明樹脂に、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルムが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0007】
さらに、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に、熱線反射機能を有する酸化チタン、または、酸化チタンで被覆されたマイカ等の、無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板も提案されている(例えば、特許文献6、7参照)。
【0008】
このような背景技術の下、本出願人らは、熱線遮蔽成分として6ホウ化物微粒子を各種バインダーに含有させた熱線遮蔽用塗布液、当該塗布液を各種成形体に塗布後、硬化して得られる熱線遮蔽膜、および熱可塑性樹脂中に6ホウ化物微粒子を溶融混錬し分散することで得られるマスターバッチを提案している(例えば、特許文献8、9、および10参照)。
【0009】
さらに、本出願人らは、熱線遮蔽成分として一般式MxWyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子を各種バインダーに含有させた熱線遮蔽用塗布液、この塗布液を各種成形体に塗布後、硬化して得られる熱線遮蔽膜、および、熱可塑性樹脂中に複合タングステン酸化物微粒子を溶融混錬し分散することで得られるマスターバッチを開示している(例えば、特許文献11、12参照)。その中でも、特許文献12では、マスターバッチ中に含まれる分散剤の耐熱性が低いため、当該マスターバッチを、同種または異種の樹脂と加熱しながら混練混合する際、当該分散剤が熱変性し、当該分散剤の分散能力が劣化してマスターバッチ中に含まれる熱線遮蔽微粒子の分散に支障をきたし、期待される可視光線透過能及び熱線遮蔽機能が得られず、さらに、当該熱変性した分散剤が黄〜茶色に着色し、熱線遮蔽シート材が黄変する原因となっていたことに着目し、熱分解温度が230℃以上の高耐熱性分散剤を用い、かつ、当該高耐熱性分散剤と、熱線遮蔽微粒子との混合割合が所定範囲に制御された高耐熱性マスターバッチを得ることを目的とした。
【0010】
さらに、本発明者らは、複合タングステン酸化物微粒子の粒子表面に、有機金属化合物とシラン化合物とを均一に吸着させ被膜を形成させる構成に想到した。そして、当該構成により、屋外使用目的に適した、耐水性および化学安定性に優れた複合タングステン酸化物微粒子を適用した赤外線遮蔽基材、赤外線遮蔽微粒子分散体等を開示した(例えば、特許文献13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−277437号公報
【特許文献2】特開平10−146919号公報
【特許文献3】特開2001−179887号公報
【特許文献4】特開平6−256541号公報
【特許文献5】特開平6−264050号公報
【特許文献6】特開平2−173060号公報
【特許文献7】特開平5−78544号公報
【特許文献8】特開2000−96034号公報
【特許文献9】特開2000−169765号公報
【特許文献10】特開2004−59875号公報
【特許文献11】国際公開2005/87680A1パンプレット
【特許文献12】特開2008−24902号公報
【特許文献13】特開2008−291109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、本発明者らの更なる検討の結果、以下の課題が明らかとなった。
特許文献1、2、および3に記載されているような、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムは、それ自体が非常に高価である。さらに、当該熱線反射フィルムを透明成形体に接着した熱線遮蔽板の製造には、接着工程等の煩雑な工程を要する。この為、当該熱線遮蔽板は、さらに高コストとなってしまう。その上、当該熱線遮蔽板は、透明成形体と熱線反射フィルムとの接着性が良くないので、経時変化により透明成形体とフィルムとの剥離が生じるといった欠点を有している。
【0013】
一方、透明成形体表面に、金属または金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板の製造に際しては、高真空で精度の高い雰囲気制御を要する装置が必要となるため、量産性が悪く汎用性に乏しいという問題を有している。
【0014】
特許文献4、5に記載されているような、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性透明樹脂に、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルムへ、十分な熱線遮蔽能力を付与するためには、多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならない。ところが当該熱線遮蔽板およびフィルムへ多量の近赤外線吸収剤を配合すると、今度は、可視光線透過機能が低下してしまうという課題を有している。また、近赤外線吸収剤として有機化合物を使用しているため、直射日光に常時曝される建築物や車両の窓材等への適用では耐侯性に難があり、必ずしも好適であるとはいえなかった。
【0015】
特許文献6〜10に記載されているような、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に、熱線反射機能を有する酸化チタン、または、酸化チタンで被覆されたマイカ等の、無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板においても、熱線遮蔽機能を確保するためには、熱線反射機能を有する粒子を多量に添加する必要がある。この結果、熱線反射機能を有する粒子の添加量の増大に伴って、可視光線透過能が低下してしまうという課題を有している。だからといって熱線反射機能を有する粒子の添加量を少なくすると、可視光線透過機能は高まるものの、今度は熱線遮蔽機能が低下してしまう。結局の所、熱線遮蔽機能と可視光線透過機能とを同時に満足させることが困難であるという問題があった。また、熱線反射機能を有する粒子を多量に添加すると、成形体を構成する透明樹脂の物性、特に耐衝撃強度や靭性が低下するという強度面からの問題も有している。
【0016】
本出願人らが、特許文献11、12として開示した、熱線遮蔽成分として一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子を各種バインダーに含有させた熱線遮蔽用塗布液、この塗布液を各種成形体に塗布後、硬化して得られる熱線遮蔽膜、および、熱可塑性樹脂中に複合タングステン酸化物微粒子を溶融混錬し分散することで得られるマスターバッチを提案した。ここで赤外線遮蔽材料は、その特質から基本的には屋外で使用され、高い耐候性が要求される場合が多い。ところが、本発明者らの検討によると、前記複合タングステン酸化物微粒子を含む一部の光学部材(フィルム、樹脂シート等)において、使用方法によっては、空気中の水蒸気や水がマトリクス中に徐々に浸透して当該複合タングステン酸化物微粒子の表面が分解し、熱線遮蔽機能が低下する問題が見出された。
【0017】
本発明者らが特許文献13として開示した、複合タングステン酸化物微粒子の粒子表面に、有機金属化合物とシラン化合物とを均一に吸着させ被膜を形成させた化学安定性に優れた複合タングステン酸化物微粒子は、表面被覆処理工程において、ゾルゲル法により、アルコキシシラン等の金属アルコキシドを加水分解、重縮合反応させることで、当該複合タングステン酸化物微粒子の表面に被膜が形成される。
ところが、上述した加水分解反応に用いられる水の影響で、複合タングステン酸化物微粒子の表面が分解されてしまう。この為、得られる表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の熱線遮蔽機能が、表面被覆処理を施さず空気中の水蒸気や水によって劣化した複合タングステン酸化物微粒子の熱線遮蔽機能と、同程度に損なわれてしまうといった課題がある。
【0018】
加えて、表面被覆処理工程では、余剰の金属アルコキシド同士の縮合が起こり易く、生成オリゴマーが複数の微粒子にまたがって反応する。この為、得られる表面被覆複合タングステン酸化物微粒子は、互いに強固に凝結した状態となってしまう。この凝結状態を解消する為には、媒体攪拌ミルを用いた湿式粉砕処理を行う必要性があるが、この際、複合タングステン酸化物微粒子の表面被覆にダメージが生じたり、表面被覆が剥離したりする為、屋外使用時において、必ずしも熱線遮蔽機能の低下を抑制出来ないという課題もある。
【0019】
本発明は、上述の状況の下に成されたものである。そして、その解決しようとする課題は、表面被覆処理工程における熱線遮蔽機能の損失が起き難い複合タングステン酸化物微粒子が、ポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチの製造方法と、当該マスターバッチの製造方法により得られたマスターバッチ、および、当該マスターバッチを用いて得られた成形体並びに積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記課題解決を目的とし鋭意検討を行った。そして、複合タングステン酸化物微粒子を溶剤中に分散させた分散液に、シロキサン結合を有し、且つ、少なくとも1つ以上の珪素原子が、シラノール基(Si−OH)を有するシラン化合物を添加混合して、その後触媒を加えることで得られるシラン化合物の縮重合物により被覆した表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液を得る工程と、
当該分散液にポリカーボネート樹脂と相溶性を有し、且つ、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着する官能基を有する凝集防止剤を添加し、その後、当該分散液から前記有機溶剤を揮散させ、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子粉状体を得る工程と、
当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子粉状体をポリカーボネート樹脂と溶融混練して、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子が分散したマスターバッチを得る工程とを具備する、工程で製造した複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチに想到した。
【0021】
そして当該複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチを、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂により希釈・溶融混練することで、複合タングステン酸化物の熱線遮蔽機能の損失が改善された熱線遮蔽成形体を得られることを見出し本発明に至った。
【0022】
すなわち、上記課題を解決する第1の発明は、
有機溶剤中に、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子を分散させた分散液へ、シロキサン結合を有し、且つ、少なくとも1つ以上の珪素原子が、シラノール基(Si−OH)を有するシラン化合物を添加する工程と、
前記シラン化合物が添加された分散液へ触媒を加え、前記シラン化合物の縮重合物で被覆された表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液に、ポリカーボネート樹脂と相溶性を有し、且つ、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着する官能基を有する凝集防止剤を添加した後、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液から前記有機溶剤を揮散させ、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を得る工程と、
前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を、ポリカーボネート樹脂と溶融混練して、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子が分散したポリカーボネート樹脂マスターバッチを得る工程と、を具備していることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法である。
第2の発明は、
前記凝集防止剤が、ヒドロキシル基、グリシジル基、カルボキシル基、又はアミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基を含む高分子化合物であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法である。
第3の発明は、
前記凝集防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、1.0〜50重量部であることを特徴とする第1、第2のいずれかの発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法である。
第4の発明は、
前記シラン化合物の分子量が、100〜100,000であることを特徴とする第1〜第3のいずれかの発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法である。
第5の発明は、
前記シラン化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、0.1〜10.0重量部であることを特徴とする第1〜第4のいずれかの発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法である。
第6の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子の1次粒径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする第1〜第5のいずれかの発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法である。
第7の発明は、
第1〜第6のいずれかの発明に記載の製造方法で製造され、前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散していることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチである。
第8の発明は、
第7の発明に記載のマスターバッチを、ポリカーボネート樹脂、またはポリカーボネート樹脂と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂により希釈、溶融混練し、かつ所定の形状に成形することによって得られることを特徴とする成形体である。
第9の発明は、
第8の発明に記載の成形体の片面または両面に、ハードコート層及び反射防止層から選択された少なくとも1種の被覆層を1層以上有することを特徴とする成形体である。
第10の発明は、
第8の発明に記載の成形体が、他の透明成形体上に積層されていることを特徴とする積層体である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチの製造方法により製造されたマスターバッチを、ポリカーボネート樹脂、または、ポリカーボネート樹脂と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂により希釈・溶融混練し成形体並びに積層体を製造することで、耐候性に優れた成形体並びに積層体を製造することが出来た。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチ(本発明において、「マスターバッチ」と記載する場合がある。)の製造方法と、当該マスターバッチの製造方法により得られたマスターバッチ、および、当該マスターバッチを用いて得られた成形体並びに積層体について詳細に説明する。
【0025】
1.複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散しているマスターバッチの製造方法
本発明に係るマスターバッチの製造方法について、まず、個々の原料について説明し、次に、製造工程と操作について説明する。
【0026】
(1)複合タングステン酸化物微粒子(本発明において、「(A)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に用いる複合タングステン酸化物微粒子(A)は、熱線遮蔽効果を発現する成分であり、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で示される複合タングステン酸化物微粒子である。
【0027】
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)は、六方晶、正方晶、立方晶の結晶構造を有する場合に耐久性に優れる。そこで、前記複合タングステン酸化物微粒子(A)は、当該六方晶、正方晶、立方晶から選ばれる1つ以上の結晶構造を含むことが好ましい。例えば、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子(A)の場合、好ましいM元素として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。
【0028】
M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素であるとき、添加されるM元素の添加量xは、x/yの値において0.001以上1.1以下が好ましく、更に好ましくは0.30以上0.36以下が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出されるx/yの値が0.33であり、この値の前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。
一方、酸素の存在量Zは、z/yの値で2.2以上3.0以下が好ましい。
【0029】
以上より、好ましい組成の例としては、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることが出来る。尤も、x,y,zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な近赤外線吸収特性を得ることができる。
複合タングステン酸化物微粒子(A)は、例えば、国際公開2005/037932号記載の方法により製造することが出来る。
【0030】
前記複合タングステン酸化物微粒子(A)による光の散乱を、低減することを重視するのであれば、複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。その理由は、当該分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減される結果、熱線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できる。これは、分散粒子径が200nm以下になると、複合タングステン酸化物微粒子(A)に起因する幾何学散乱やミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。
当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上する。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
【0031】
(2)シラン化合物(本明細書において「(B)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に係るシラン化合物(B)は、3次元化したシロキサン結合を主骨格とし、次式(1)に示すように、一部の分子末端がシラノール基(Si−OH)で封鎖され、アルキル基および/またはフェニル基を有機置換基とする高分子量体であることが好ましい。
【数1】

【0032】
すなわち、シラン化合物(B)は、3次元化したシロキサン結合を構成する珪素原子の一部がOH基を有し、さらに、当該シラン化合物の最も外側を構成する珪素原子の一部もOH基を有しており、当該シラン化合物分子は、外側に向いたOH基を有する分子であることが好ましい。
【0033】
シラン化合物(B)は、構造中にシラノール基(Si−OH)を有している為、アルコキシシラン等の金属アルコキシドとは異なり、加水分解・重縮合反応を促すための酸性(または塩基性)触媒や水の添加が不要である。この水の添加が不要という特徴の為、後述する表面被覆処理工程において、水の存在に起因する複合タングステン酸化物の表面分解が起こらない。この結果、得られる複合タングステン酸化物微粒子(A)は、表面被覆処理を施していない複合タングステン酸化物微粒子と同等の熱線遮蔽機能を維持することが可能となった。
【0034】
本発明に係るシラン化合物(B)の分子量は、好ましくは100〜100,000、より好ましくは500〜10,000である。分子量が100以上あれば、得られる複合タングステン酸化物微粒子(A)において耐水性および化学安定性に関して期待する効果が得られる。一方、分子量が100,000以下であれば、シラン化合物(B)の粘性が高くなり過ぎず、複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散性が阻害されるのを回避出来る。
【0035】
シラン化合物(B)は、一般に4種のクロロシランを原料とし、これを加水分解することで得られる。
また、シラン化合物(B)として市販品を用いることも可能であり、TSR127B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製/不揮発成分50%)、TSR145(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)等が好ましい例として挙げられる。
【0036】
シラン化合物(B)の複合タングステン酸化物(A)に対する添加量は、上記複合タングステン酸化物(A)1重量部に対して、0.1〜10.0重量部であることが好ましい。当該添加量が0.1重量部以上であれば、複合タングステン酸化物微粒子(A)の表面に十分な被覆が行え、当該複合タングステン酸化物微粒子(A)の耐候性が改善される。一方、当該添加量が10重量部以下であれば、複合タングステン酸化物微粒子の分散性が阻害されないからである。
【0037】
(3)凝集防止剤(本明細書において「(C)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に係る凝集防止剤(C)は、ポリカーボネート樹脂(本明細書において「(D)」という符号を付記する場合がある。)と相溶性を有し、且つ、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の表面に吸着する為の官能基を有する高分子化合物である。
【0038】
本発明に係る凝集防止剤(C)としては官能基として、ヒドロキシル基、グリシジル基、カルボキシル基、又はアミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基を含む高分子化合物を挙げることができる。
【0039】
また、凝集防止剤(C)としてとして市販品を用いることも可能であり、UF−5022(東亜合成製)、UG−4030(東亜合成製)、ジョンクリル611(BASF社製)等が好ましい例として挙げられる。上記UF−5022やUG−4030は、アクリル系モノマーを主成分とする組成物を高温で連続重合することにより得られる。
【0040】
凝集防止剤(C)が、ポリカーボネート樹脂(D)と相溶性を有していることで、本発明に係るマスターバッチ中において、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)が凝集体を形成し難くなり、分散性が十分となり好ましい。また、凝集防止剤(C)が、表面被覆複合タングステン微粒子(A)の表面に対し吸着効果のある官能基を有していると、ポリカーボネート樹脂(D)中において、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の凝集体を形成し難くなり、分散性が十分となり、上記熱線遮蔽成形体のヘイズ(曇り度)が下がり意匠性が向上するため好ましい。
【0041】
上記凝集防止剤(C)の添加量は、複合タングステン酸化物(A)1重量部に対して、1.0〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは、2〜20重量部である。当該添加量が1.0重量部以上であれば、上記分散体中において複合タングステン酸化物微粒子(A)が凝集体を形成し難くなり分散性が十分となる。また、当該添加量が50重量部以下であれば、熱線遮蔽成形体の機械的強度の低下や、屋外で使用する際の耐候性の悪化回避出来る。
【0042】
(4)ポリカーボネート樹脂(D)
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(D)としては、当該分野で使用されているポリカーボネート樹脂であれば特に制限されない。尤も、特に好ましいポリカーボネート樹脂(D)として、芳香族ポリカーボネートを挙げることが出来る。
さらに、芳香族ポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表される二価のフェノール系化合物の一種以上と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネート等で代表されるカーボネート前駆体とを用いて合成されるポリカーボネートを挙げることが出来る。
【0043】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(D)の合成方法は、界面重合、溶融重合または固相重合等の公知の方法によることができる。
二価のフェノール系化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類;4,4−ビフェノール等を挙げることができる。この他に、例えばレゾルシン、および3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−プロピルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、2,3,4,6−テトラフルオロレゾルシン、2,3,4,6−テトラブロムレゾルシン等の置換レゾルシン;カテコール;ハイドロキノン、及び3−メチルハイドロキノン、3−エチルハイドロキノン、3−プロピルハイドロキノン、3−ブチルハイドロキノン、3−t−ブチルハイドロキノン、3−フェニルハイドロキノン、3−クミルハイドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルハイドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルハイドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロハイドロキノン、2,3,5,6−テトラブロムハイドロキノンなどの置換ハイドロキノン等、及び2,2,2',2'−テトラヒドロ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビス(1H−インデン)−7,7'ジオール等を用いることもできる。これらの二価のフェノール系化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0044】
上述した二価のフェノール系化合物と反応させる、ホスゲンまたはジフェニルカーボネート等で代表されるカーボネート前駆体にも特に制限はなく、例えば、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ジフェニルカーボネートを使用する。これらカーボネート前駆体もまた、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
ポリカーボネート樹脂(D)を製造する際に、酸成分として、ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルを含有させても良い。ジカルボン酸及びジカルボン酸エステルの例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルなどの芳香族ジカルボン酸類;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼッライン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、セバシン酸ジフェニル、デカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニルなどの脂肪族ジカルボン酸類;シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,2’−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸ジフェニル、1,2−シクロブタンジカルボン酸ジフェニル、1,3−シクロブタンジカルボン酸ジフェニル、1,2−シクロペンタンジカルボン酸ジフェニル、1,3−シクロペンタンジカルボン酸ジフェニル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニルなどの脂環族ジカルボン酸類を挙げることができる。これらジカルボン酸またはジカルボン酸エステルは、単独で用いてもよく、また、二種以上組み合わせても良い。ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルは、上記カーボネート前駆体に、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量で含有される。
【0046】
ポリカーボネート樹脂(D)を製造する際に、1分子中に3個以上の官能基を有する多官能性化合物を使用できる。これら多官能性化合物としては、フェノール性水酸基またはカルボキシルを有する化合物が好ましく、特にフェノール性水酸基を3個含有する化合物が好ましい。
【0047】
また、ポリカーボネート樹脂として市販品を用いることも可能であり、ポリカーボネート樹脂ペレット(Bayer社製)、ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチックス製)、ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製)、ポリカーボネート樹脂ペレット(出光興産製)等が好ましい例として挙げられる。
【0048】
2.複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散液の製造工程
まず、複合タングステン酸化物微粒子(A)と、有機溶剤とを混合し、分散させてスラリー化する。この後、複合タングステン酸化物微粒子(A)の解砕を行うことが好ましい。これによって、複合タングステン酸化物微粒子(A)が、有機溶剤中に十分に分散した分散液が得られる。尚、上記解砕処理に適用される方法として、超音波ホモジナイザーやボールミル(ビーズミル)といった媒体攪拌ミルを用いる湿式粉砕法が好ましい。
【0049】
ここで、有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチルが好ましく、さらに好ましくは、メチルイソブチルケトンである。
また、製造されるスラリーの中に含まれる複合タングステン酸化物微粒子の濃度範囲は5〜40wt%であることが好ましく、さらに好ましくは、10〜30wt%である。複合タングステン酸化物微粒子の濃度が5wt%以上あれば、複合タングステン酸化物微粒子に対して多量の有機溶剤が不要となるので、それによって製造コストが低減され、量産性も向上する。また、40wt%以下であれば、微粒子同士の凝集力が抑制され、有機溶剤中で微粒子の十分な分散安定性が保てる。
【0050】
3.複合タングステン酸化物微粒子(A)の表面被覆工程
複合タングステン酸化物微粒子(A)が有機溶剤中に分散した分散液へ、シロキサン結合を有し、且つ、少なくとも1つ以上の珪素原子が、シラノール基(Si−OH)を有するシラン化合物(B)を添加混合する。そして、当該添加混合後、重合触媒を添加し、上記シラン化合物(B)に含まれるシラノール基(Si−OH)を縮重合反応させることで、シラン化合物(B)の縮重合物で表面が被覆された表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散液が得られる。
【0051】
ここで、重合触媒としては、アルミニウムキレートを適用することが出来る。この重合触媒として市販品を用いることも可能であり、ALCH(川研ファインケミカル社製)、ALCH−TR(川研ファインケミカル社製)、アルミニウムキレートD(川研ファインケミカル社製)等が好ましい例として挙げられる。
上記複合タングステン酸化物微粒子(A)が有機溶剤中に分散した分散液へ、シロキサン結合を有し、且つ、少なくとも1つ以上の珪素原子が、シラノール基(Si−OH)を有するシラン化合物(B)を添加混合後、重合触媒を添加し、所定の温度、時間攪拌することにより、上記シラン化合物(B)に含まれるシラノール基(Si−OH)を縮重合反応させることができる。
【0052】
4.表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の粉状体の製造工程
上記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の分散液に凝集防止剤(C)を添加混合した後、得られた混合液から前記有機溶剤を揮散させることで、シラン化合物(B)の縮重合物で表面が被覆された表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の粉状体を得る。
【0053】
5.表面被覆複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造工程
本発明に係るマスターバッチは、上記製造工程で得られたシラン化合物(B)の縮重合物で表面が被覆された表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の粉状体を、ポリカーボネート樹脂(D)と溶融混練して製造される。
製造された本発明に係るマスターバッチは、例えば、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工する。このペレット状のマスターバッチは、最も一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法により得ることができる。従って、その形状としては円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。かかる場合には球状に近い形状をとることが一般的である。
【0054】
6.マスターバッチを用いて得られた成形体
本発明に係る成形体は、本発明に係るマスターバッチを、ポリカーボネート樹脂(D)、または、ポリカーボネート樹脂と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂を用いて希釈・溶融混練し、その後、所定の形状に成形してなる成形体である。
当該成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、または、回転成形等を用いることができる。特に、射出成形、押出成形によれば、効率的に所望の形状に成形できるので好ましい。例えば、押出成形により板状(シート状)、フィルム状の成形体を得る方法としては、Tダイなどの押出機を用いて押し出した溶融アクリル樹脂を冷却ロールで冷却しながら引き取る方法が採用される。
【0055】
当該成形方法に用いる成形温度は、使用するポリカーボネート樹脂成形材料の組成等によって異なるが、十分な流動性が得られるように樹脂の融点、または、ガラス転移温度より50〜150℃高い温度とする。具体的には200℃以上、好ましくは240℃〜330℃とする。成形温度が200℃以上あれば、高分子特有の粘度を低下させることが出来、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子をポリカーボネート樹脂中に均一に分散させることが出来好ましい。成形温度が350℃以下であればポリカーボネート樹脂が分解し劣化することが回避出来好ましい。
【0056】
7.積層体
本発明に係る積層体は、上記本発明に係る成形体が、ポリカーボネート樹脂(D)以外の透明成形体に積層されてなる積層体である。この積層体は、それ自体で建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に使用することができる。
【0057】
本発明に係る成形体を、無機ガラス、樹脂ガラス、樹脂フィルム等の透明成形体上に任意の方法で積層して一体化した透明積層体とし、構造材に使用することも出来る。具体的には、例えば、予めフィルム状に成形した本発明に係る成形体を、無機ガラス上へ熱ラミネート法により積層一体化することで、熱線遮蔽機能、飛散防止機能を有する透明積層体を得ることが出来る。
【0058】
さらに、共押出法、プレス成形法、射出成形法等により、本発明に係る成形体の成形の際と同時に、他の透明成形体と積層一体化することで、熱線遮蔽透明積層体を得ることも可能である。
以上説明した熱線遮蔽透明積層体は、両者の成形体の持つ利点を相互に有効に発揮させつつ、欠点を補完し合うことで、より有用な構造材として使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明について実施例を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されることはない。
本実施例において得られた成形体の光学特性評価に関し、ヘイズ(本明細書において「(H)」という符号を付記する場合がある。)(単位:%)は、ヘイズメーター(村上色彩研究所製)を使用し、JIS K 7136に準拠して測定した。また、可視光透過率(本明細書において「(T)」という符号を付記する場合がある。)(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)は、分光光度計U−4000(日立製作所製)を使用して測定した。
【0060】
(実施例1)
複合タングステン酸化物微粒子(A)として粒径1〜3μmの複合タングステン酸化物Cs0.33WO200gと、溶剤としてメチルイソブチルケトン1800gとを、攪拌混合してスラリーを調製した。このスラリーをビーズとともに媒体攪拌ミルに投入し、スラリーを循環させて粉砕分散処理を行い、複合タングステン酸化物微粒子分散液を得た(以下、当該複合タングステン酸化物微粒子分散液を「α液」と略記する。)。当該複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は90nmであった。
【0061】
シラン化合物(B)として、TSR127B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製/不揮発成分50%)(以下、当該シラン化合物(B)を「B−1」と略記する。)を、溶剤であるメチルイソブチルケトンに溶解させ、不揮発成分10%溶液を調製した(以下、当該溶液を「β液」と略記する。)。
【0062】
α液10gと、β液10gと、触媒としてALCH(川研ファインケミカル社製)0.05gとを攪拌混合し、混合液を調製した。続けて、当該混合液を攪拌しながら、室温下で15時間、さらに、70℃で3時間反応させることで、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)分散液を調製した(以下、当該溶液を「γ液」と略記する。)。
【0063】
ポリカーボネート樹脂(D)と相溶性を有し、且つ、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)の表面に吸着する官能基を有する凝集防止剤(C)としてUF5022(東亞合成社製)(以下、当該凝集防止剤(C)を「C−1」と略記する。)を、溶剤であるメチルキソブチルケトンに溶解させ、40質量%溶液を調整した(以下、当該溶液を「δ液」と略記する。)。
【0064】
上記γ液10gと、δ液7.5gとを混合した。そして、得られた混合液からメチルイソブチルケトンを揮散させて、更に、らいかい機で解砕することで、凝集防止剤(C−1)中に表面被覆複合タングステン酸化物微粒子が均一に分散している粉状体を得た。当該粉状体には複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、シラン化合物(B−1)が1重量部、凝集防止剤(C−1)が6重量部含有されている。
【0065】
次に、得られた凝集防止剤(C−1)中に表面被覆複合タングステン酸化物微粒子が均一に分散している粉状体を、複合タングステン酸化物微粒子含有量が0.5重量%になるように、ポリカーボネート樹脂ペレット(Bayer社製)に対して加える。そして、当該粉状体とポリカーボネート樹脂ペレットとを均一に混合した後、二軸押出機(東洋精機製作所製)で溶融混練し、押し出された直径3mmのストランドをペレット状にカットし、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子とポリカーボネート樹脂を主成分とするマスターバッチを得た。
【0066】
得られたマスターバッチと、ポリカーボネート樹脂ペレット(Bayer社製)とを、複合タングステン酸化物微粒子(A)の含有量が0.05重量%となるように、均一に混合した後、射出成形機(東洋精機製作所製)を使用して10cm×5cm、厚さ2.0mmのシート状成形体を得た。
【0067】
得られたシート状成形体の光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を、表1に示す。
続けて、得られたシート状成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
α液10gに、β液50gを添加混合し、実施例1と同様の方法で、凝集防止剤(C)中に表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)が均一に分散している実施例2に係る粉状体を得た。当該粉状体には、複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、シラン化合物(B−1)が5重量部、凝集防止剤(C−1)が6重量部含有されている。
【0069】
次に、得られた実施例2に係る粉状体を使用し、実施例1と同様の方法で実施例2に係るシート状成形体を得た。得られた実施例2に係るシート状成形体の光学特性(ヘイズ、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%))を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、当該実施例2に係るシート状成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
α液10gに、β液1gを添加混合し、実施例1と同様の方法で、凝集防止剤(C)中に表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)が均一に分散している実施例3に係る粉状体を得た。当該粉状体には、複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、シラン化合物(B−1)が0.1重量部、凝集防止剤(C−1)が6重量部含有されている。
【0071】
次に、得られた実施例3に係る粉状体を使用し、実施例1と同様の方法で実施例3に係るシート状成形体を得た。得られた実施例3に係るシート状成形体の光学特性(ヘイズ、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%))を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、当該実施例3に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例4)
γ液10gに、σ液を1.1g添加混合し、実施例1と同様の方法で、凝集防止剤(C)中に、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)が均一に分散している実施例4に係る粉状体を得た。当該粉状体には、複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、シラン化合物(B−1)が1重量部、凝集防止剤(C−1)が0.9重量部含有されている。
【0073】
次に、得られた実施例4に係る粉状体を使用し、実施例1と同様の方法で実施例4に係るシート状成形体を得た。得られた実施例4に係るシート状成形体の光学特性(ヘイズ、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%))を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、当該実施例4に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例5)
γ液10gに、σ液68.8gを添加混合し、実施例1と同様の方法で、凝集防止剤(C)中に、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子(A)を均一に分散している実施例5に係る粉状体を得た。当該粉状体には複合タングステン酸化物微粒子(A)1重量部に対して、シラン化合物(B−1)が1重量部、凝集防止剤(C−1)が55重量部含有されている。
【0075】
次に、得られた実施例5に係る粉状体を使用し、実施例1と同様の方法で実施例5に係るシート状成形体を得た。得られた実施例5に係るシート状成形体の光学特性(ヘイズ、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%))を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、実施例5に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0076】
(実施例6)
シラン化合物(B)として、TSR145(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施例6に係るシート状成形体を得た。
得られた実施例6に係るシート状成形体の光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、実施例6に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0077】
(実施例7)
凝集防止剤(C)として、BR52(三菱レイヨン社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施例7に係るシート状成形体を得た。得られた実施例7に係るシート状成形体の光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、実施例7に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0078】
(比較例1)
凝集防止剤(C)として、ポリカーボネート樹脂(D)と相溶性を有さないUC−3920(東亞合成社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で比較例1に係るシート状成形体を得た。得られた比較例1に係るシート状成形体の光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、比較例1に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
凝集防止剤(C)として、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着する官能基を有さないBR−105(東亞合成社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で比較例2に係るシート状成形体を得た。得られた比較例2に係るシート状成形体の光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、比較例2に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、再度、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0080】
(比較例3)
シラン化合物(B)として、テトラエトキシシラン(多摩化学社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。得られた比較例3に係るシート状成形体の光学特性(ヘイズ、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%))を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、比較例3に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0081】
(比較例4)
シラン化合物(B)を添加しない以外は、実施例1と同様の方法でシート状成形体を得た。得られた比較例4に係るシート状成形体の光学特性(ヘイズ、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%))を評価した。評価結果を表1に示す。
続けて、比較例4に係る成形体を120℃空気浴中に30日間保持した後、光学特性:ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤中に、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子を分散させた分散液へ、シロキサン結合を有し、且つ、少なくとも1つ以上の珪素原子が、シラノール基(Si−OH)を有するシラン化合物を添加する工程と、
前記シラン化合物が添加された分散液へ触媒を加え、前記シラン化合物の縮重合物で被覆された表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液に、ポリカーボネート樹脂と相溶性を有し、且つ、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着する官能基を有する凝集防止剤を添加した後、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の分散液から前記有機溶剤を揮散させ、表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を得る工程と、
前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子の粉状体を、ポリカーボネート樹脂と溶融混練して、当該表面被覆複合タングステン酸化物微粒子が分散したポリカーボネート樹脂マスターバッチを得る工程と、を具備していることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記凝集防止剤が、ヒドロキシル基、グリシジル基、カルボキシル基、又はアミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基を含む高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項3】
前記凝集防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、1.0〜50重量部であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項4】
前記シラン化合物の分子量が、100〜100000であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項5】
前記シラン化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、0.1〜10.0重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項6】
前記複合タングステン酸化物微粒子の1次粒径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造され、前記表面被覆複合タングステン酸化物微粒子がポリカーボネート樹脂中に分散していることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散ポリカーボネート樹脂マスターバッチ。
【請求項8】
請求項7に記載のマスターバッチを、ポリカーボネート樹脂、またはポリカーボネート樹脂と相溶性を有する異種の熱可塑性樹脂により希釈、溶融混練し、かつ所定の形状に成形することによって得られることを特徴とする成形体。
【請求項9】
請求項8に記載の成形体の片面または両面に、ハードコート層及び反射防止層から選択された少なくとも1種の被覆層を1層以上有することを特徴とする成形体。
【請求項10】
請求項8に記載の成形体が、他の透明成形体上に積層されていることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2012−77230(P2012−77230A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225180(P2010−225180)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】