説明

複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法、および当該分散体を用いた成形体の製造方法、並びに成形体

【課題】優れた熱線遮蔽能を有しながら、ヘイズが低く意匠性に優れた成形体を製造できる複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法、および当該分散体を用いた成形体の製造方法、並びに成形体を提供する。
【解決手段】一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物の微粒子を、芳香族炭化水素中に分散させて、スラリーを得、当該スラリーにエステル基を有する高分子化合物を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得、当該分散液に凝集防止剤を添加し、その後、当該分散液から前記芳香族炭化水素を揮散させ、複合タングステン酸化物微粒子分散体を得た。当該微粒子分散体を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に溶解させた後、鋳型内で重合させて成形体を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根材や壁材、自動車などの窓材等に広く適用されるアクリル樹脂成形体の製造に用いられる、複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法、および当該分散体を用いた成形体の製造方法、並びに成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などに設けられた窓、ドア等のいわゆる開口部分から入射する太陽光線には、可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれている。この太陽光線に含まれている赤外線のうち、波長800〜2500nmの近赤外線は熱線と呼ばれ、前記開口部分から室内に進入することにより温度を上昇させる原因になる。これを解消するために、近年、各種建築物や車両の窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等の製造、建設分野では、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制する熱線遮蔽機能を有する成形体の需要が急増している。一方、当該熱線遮蔽機能を有する成形体の需要に呼応して、熱線遮蔽機能を有する成形体に関する提案が多数なされている。
【0003】
例えば、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムを、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明成形体に接着した熱線遮蔽板が提案されている(例えば、特許文献1、2、および3参照)。しかし、この熱線反射フィルムは、それ自体が非常に高価である。さらに、当該熱線反射フィルムを透明成形体に接着した熱線遮蔽板の製造には、接着工程等の煩雑な工程を要する。この為、当該熱線遮蔽板は、さらに高コストとなってしまう。その上、当該熱線遮蔽板は、透明成形体と熱線反射フィルムとの接着性が良くないので、経時変化により透明成形体とフィルムとの剥離が生じるといった欠点を有している。
【0004】
一方、透明成形体表面に、金属または金属酸化物を直接蒸着してなる熱線遮蔽板も数多く提案されている。しかし、当該熱線遮蔽板の製造に際しては、高真空で精度の高い雰囲気制御を要する装置が必要となるため、量産性が悪く汎用性に乏しいという問題を有している。
【0005】
この他、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性透明樹脂に、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板およびフィルムが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。しかし、当該熱線遮蔽板およびフィルムへ十分な熱線遮蔽能力を付与するためには、多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならない。ところが当該熱線遮蔽板およびフィルムへ多量の近赤外線吸収剤を配合すると、今度は、可視光線透過機能が低下してしまうという課題を有している。また、近赤外線吸収剤として有機化合物を使用しているため、直射日光に常時曝される建築物や車両の窓材等への適用では耐侯性に難があり、必ずしも好適であるとはいえなかった。
【0006】
さらに、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に、熱線反射機能を有する酸化チタン、または、酸化チタンで被覆されたマイカ等の、無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板も提案されている(例えば、特許文献6、7参照)。しかし、当該熱線遮蔽板においても、熱線遮蔽機能を確保するためには、熱線反射機能を有する粒子を多量に添加する必要がある。この結果、熱線反射機能を有する粒子の添加量の増大に伴って、可視
光線透過能が低下してしまうという課題を有している。だからといって熱線反射機能を有する粒子の添加量を少なくすると、可視光線透過機能は高まるものの、今度は熱線遮蔽機能が低下してしまう。結局の所、熱線遮蔽機能と可視光線透過機能とを同時に満足させることが困難であるという問題があった。また、熱線反射機能を有する粒子を多量に添加すると、成形体を構成する透明樹脂の物性、特に耐衝撃強度や靭性が低下するという強度面からの問題も有している。
【0007】
このような技術的背景の下、本出願人らは、熱線遮蔽成分として6ホウ化物微粒子を各種バインダーに含有させた熱線遮蔽用塗布液、当該塗布液を各種成形体に塗布後、硬化して得られる熱線遮蔽膜、および熱可塑性樹脂中に6ホウ化物微粒子を溶融混錬し分散することで得られるマスターバッチを提案している(例えば、特許文献8、9、および10参照)。
【0008】
さらに、本出願人らは、熱線遮蔽成分として一般式MxWyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子を各種バインダーに含有させた熱線遮蔽用塗布液、この塗布液を各種成形体に塗布後、硬化して得られる熱線遮蔽膜、および、熱可塑性樹脂中に複合タングステン酸化物の微粒子を溶融混錬し分散することで得られるマスターバッチを提案している(例えば、特許文献11、12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−277437号公報
【特許文献2】特開平10−146919号公報
【特許文献3】特開2001−179887号公報
【特許文献4】特開平6−256541号公報
【特許文献5】特開平6−264050号公報
【特許文献6】特開平2−173060号公報
【特許文献7】特開平5−78544号公報
【特許文献8】特開2000−96034号公報
【特許文献9】特開2000−169765号公報
【特許文献10】特開2004−59875号公報
【特許文献11】国際公開第WO2005/87680A1パンプレット
【特許文献12】特開2008−24902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂中に複合タングステン酸化物の微粒子が均一分散したマスターバッチは、当該複合タングステン酸化物の微粒子に対し吸着効果のある官能基を有するアクリル高分子化合物分散剤中に、複合タングステン酸化物の微粒子を均一に分散させた分散粉と、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂とを溶融混練したものである。当該マスターバッチにおいては、複合タングステン酸化物が微粒子凝集体を形成することなく、均一な分散性を保持した状態である。この結果、当該マスターバッチを用いて製造した成形体は、優れた熱線遮蔽能を有し、ヘイズ値も低く、良好であった。
【0011】
ところが、鋳型内で単量体を重合することにより成形されるアクリル樹脂の成形体中へ、上述の複合タングステン酸化物の微粒子を分散させた場合、上述したポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂に分散させたマスターバッチの場合とは異なり、課題が見出された。
具体的には、上述の方法で製造し最終的に得られる成形体が、優れた熱線遮蔽機能を有してはいるものの、ヘイズ(曇り度)が高くなり意匠性が低下してしまうという課題が見出された。一般的に、当該意匠性の観点から、成形体においてヘイズが低いことが求められる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決することを目的としてなされたものである。
即ち、優れた熱線遮蔽能を有しながら、ヘイズが低く意匠性に優れた成形体を製造できる複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法、および当該分散体を用いた成形体の製造方法、並びに成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は当該問題の検討を行った。そして、アクリル樹脂の成形体においてヘイズが高くなるのは、複合タングステン酸化物の微粒子に対し吸着効果のある官能基を有するアクリル高分子化合物分散剤と、複合タングステン酸化物の微粒子を均一に分散させた分散粉とを、メチルメタクリレート単量体に溶解させた後に、当該溶解を鋳型へ注入して重合した為であると考えられた。つまり、当該重合の過程において、複合タングステン酸化物の微粒子の凝集体が形成され、分散性が不十分となった為であると考えた。
【0014】
当該推論に基づき、本発明者はさらに研究を行った。
そして、複合タングステン酸化物の微粒子と、炭化水素溶剤とを混合したスラリーに、エステル基を有する高分子化合物を添加した混合物を、例えば、媒体攪拌ミルにより解砕処理することで、エステル基を有する高分子化合物被覆複合タングステン酸化物の微粒子分散液を調製した。
【0015】
次に、当該エステル基を有する高分子化合物被覆複合タングステン酸化物の微粒子分散液へ、炭化水素溶剤に可溶でメチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するアクリル樹脂凝集防止剤を添加混合し混合液とする。得られた当該混合液から前記炭化水素溶剤を揮散させ、さらに、得られた混合液から炭化水素溶剤を揮散する工程と並行して、または、当該炭化水素溶剤を揮散する工程の後に、残留物を解砕して複合タングステン酸化物微粒子分散体を得る。その際、前記エステル基を有する高分子化合物と凝集防止剤との混合比率を検討した。
【0016】
そして、当該混合比率が所定範囲をとることで、当該タングステン酸化物微粒子分散体を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に溶解させ、ラジカル重合開始剤(F)存在下、鋳型内で重合させた成形体中においては、前記複合タングステン酸化物の微粒子の凝集体が生成せず、分散性が改善された成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、上記課題を解決する第1の発明は、
一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子を、炭化水素溶剤に分散させて、スラリーを得る工程と、
当該スラリーにエステル基を有する高分子化合物を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得る工程と、
当該分散液に凝集防止剤を添加し、その後、当該分散液から前記炭化水素溶剤を揮散さ
せ、複合タングステン酸化物微粒子分散体を得る工程と、
前記炭化水素溶剤を揮散する工程と並行して、または、前記炭化水素溶剤を揮散する工程の後に、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を解砕する工程と、を具備する複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法であって、
前記凝集防止剤は、前記炭化水素溶剤に可溶で、且つ、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に相溶性を有するアクリル高分子化合物であり、
前記凝集防止剤の添加量が、前記エステル基を有する高分子化合物1重量部に対して1.14〜14重量部であることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0018】
第2の発明は、
前記複合タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0019】
第3の発明は、
前記炭化水素溶剤の溶解度パラメータが、8.5〜9.1(cal/cm1/2であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0020】
第4の発明は、
前記エステル基を有する高分子化合物が、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、4−ヒドロキシドデカン酸から選択される少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸と、6ヒドロキシへキサン酸とを、繰り返し単位としたポリカルボニルアルキレンオキシ鎖を側鎖に有し、構造中にアミノ基を有するグラフト共重合体であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0021】
第5の発明は、
前記エステル基を有する高分子化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して0.01重量部〜5重量部であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0022】
第6の発明は、
前記凝集防止剤であるアクリル高分子化合物が、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレンとの共重合体であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0023】
第7の発明は、
前記凝集防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、0.46〜50重量部であることを特徴とする第1の発明に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法である。
【0024】
第8の発明は、
第1〜第7のいずれかの発明に記載の製造方法で得られた複合タングステン酸化物微粒子分散体と、ラジカル重合開始剤とを、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に溶解させ分散液を得る工程と、当該分散液を鋳型内で重合することにより成形体を得る工程と、を具備することを特徴とする成形体の製造方法である。
【0025】
第9の発明は、
第8の発明に記載の製造方法で得られた成形体であって、当該成形体の可視光透過率を
60%以上に設定したときのヘイズが5%以下であることを特徴とする成形体である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法によれば、当該方法で製造された複合タングステン酸化物微粒子分散体を重合させて成形体を形成させることで、複合タングステン酸化物の微粒子の分散性が改善された成形体を得ることが出来る。つまり、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体は、建築物の屋根材や壁材、自動車などの窓材等に広く適用されるアクリル樹脂成形材料に熱線遮蔽能を好適に付与することができ、工業的に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法と、当該製造方法で製造された複合タングステン酸化物微粒子分散体、および、当該分散体を用いた成形体について、詳細に説明する
【0028】
1.複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法について、まず、個々の原料について説明し、次に、製造工程と操作上のポイントとについて説明する。
【0029】
(1)複合タングステン酸化物の微粒子(本明細書において便宜の為、「(A)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に用いる複合タングステン酸化物の微粒子(A)は、熱線遮蔽効果を発現する成分であり、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で示される複合
タングステン酸化物の微粒子である。
【0030】
前記一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物の微粒子(A)は、六方晶、正方晶、立方晶の結晶構造を有する場合に耐久性に優れることから、当該六方晶、正方晶、立方晶から選ばれる1つ以上の結晶構造を含むことが好ましい。例えば、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物の微粒子(A)の場合であれば、好ましいM元素として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物の微粒子が挙げられる。
【0031】
このとき、添加されるM元素の添加量xは、x/yにおいて0.001以上1.1以下
が好ましく、更に好ましくは0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論
的に算出されるx/yの値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得
られるからである。一方、酸素の存在量Zは、z/yで2.2以上3.0以下が好ましい。典型的な例としてはCs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができるが、x,y,zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な近赤外線吸収特性を得ることができる。
【0032】
粒子による光の散乱を、低減することを重視するのであれば、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。その理由は、分散粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減される結果、熱線遮蔽膜が曇りガラスのようになって鮮明な透明性が得られなくな
るのを回避できる。即ち、分散粒子の分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上するからである。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
【0033】
また、上記複合タングステン酸化物の微粒子(A)の表面を、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆すれば、耐候性をより向上させることができ、好ましい。
【0034】
(2)炭化水素溶剤(本明細書において便宜の為、「(B)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に用いる炭化水素溶剤(B)は、炭素と水素から構成される溶剤であって、所定範囲の溶解パラメータを有している。
正則溶液理論では、「溶媒−溶質分子間に作用する力は分子間力のみである。」とモデル化されているので、液体分子を凝集させる相互作用は分子間力のみであると考えられる。液体の凝集エネルギーは蒸発エンタルピーと等価であることから、モル蒸発エンタルピーΔHvとモル容積Vmとより、溶解パラメータが定義される。すなわち、溶解パラメータは、1モル体積の液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根(cal/cm1/2から計算される。
実際の溶液が正則溶液であることは稀であり、溶媒−溶質分子間には水素結合などの分子間力以外の力も作用し、2つの成分が混合するか相分離するかはそれらの成分の混合エンタルピーと混合エントロピーとの差で熱力学的に決定される。しかし経験的に、溶解パラメータが近い物質は混ざりやすい傾向を持つ。そのため溶解パラメータ(SP値)は溶質と溶媒の混ざりやすさを判断する目安ともなっている。
【0035】
上述した溶剤の溶解度パラメータδを(1)式に、また、高分子の溶解度パラメータδを(2)式に示す。
δ=(ΔHv/Vm−RT)1/2(cal/cm1/2 (1)
δ=(ρΣG)/M (cal/cm1/2 (2)
(ここで、ΔHv:モル蒸発エンタルピー、Vm:溶媒のモル容積、 G:smallの
方法により与えられる原子及び原子団の凝集エネルギー定数、M:高分子の構造分子量、ρ:密度、R:気体定数、T:温度)
【0036】
異種溶剤の間、溶剤と高分子との間、異種高分子の間における相溶性は、(1)式および(2)式で得られた溶解度パラメータδ値の差が小さいと良好であり、溶解度パラメータδ値の差が大きいと不良であることが経験的に知られており、広く用いられている。
(新版溶剤ポケットハンドブック(編集:社団法人有機合成化学協会 発行:オーム社)、特性別にわかる実用高分子材料(著者:井出文雄 発行:工業調査会)参照)
【0037】
本発明で用いる炭化水素溶剤の溶解度パラメータは、δ値が8.5〜9.1(cal/cm1/2である。溶解度パラメータが上記範囲にあれば、本発明で使用しているエステル基を有する高分子化合物(C)の炭化水素溶剤への溶解性に富む。このように溶解性に富んでいると、エステル基を有する高分子化合物被服複合タングステンの微粒子分散液を製造する工程において、該複合タングステン微粒子を所望の粒径まで解砕することが容易となるため好ましい。
上記範囲に溶解度パラメータを有する炭化水素溶剤(B)の具体例としては、トルエン、キシレン等を例示することができる。
【0038】
(3)エステル基を有する高分子化合物(本明細書において便宜の為、「(C)」という符号を付記する場合がある。)
上記の複合タングステン酸化物の微粒子(A)は、エステル基を有する高分子化合物(C)によって表面が被覆されていることが必要である。
【0039】
本発明に用いるエステル基を有する高分子化合物(C)について、製造方法に準拠しながら説明する。
具体的には、まず、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、及び4−ヒドロキシドデカン酸から選択される少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸と、6ヒドロキシへキサン酸とを繰り返し単位としたポリカルボニルアルキレンオキサイドを合成する。
次に、当該ポリカルボニルアルキレンオキサイドへ、ポリエチレンイミンを加え、ポリエチレンイミンのアミノ基と、ポリカルボニルアルキレンオキサイドのカルボキシル基との、脱水反応を利用することで、本発明に係るエステル基を有する高分子化合物(C)の1例である、ポリカルボニルアルキレンオキシ鎖を側鎖に有し、構造中にアミノ基を有するグラフト共重合体を得ることが出来る。
このような、エステル基を有する高分子化合物(C)として、商品名:Solsperse24000GR(日本ルーズリゾーブ社製)、商品名:Solsperse32000(日本ルーズリゾーブ社製)等を例示することができる。
【0040】
また、エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量は、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3重量部である。エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量が0.01重量部以上あれば、複合タングステン酸化物の微粒子(A)を均一に分散することができ好ましい。また、エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量が5重量部を以下であれば、上記分散液に上記アクリル樹脂凝集防止剤を添加混合した後、炭化水素を揮散させることで粉状になり好ましい。
【0041】
(4)凝集防止剤(本明細書において便宜の為、「(D)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に用いる凝集防止剤(D)について説明する。
本発明に用いる凝集防止剤(D)は、炭化水素溶剤(B)に可溶性を有し、メチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するアクリル高分子化合物である。
【0042】
本発明者等は、上記凝集防止剤(D)が、炭化水素溶剤(B)に可溶性を有していることで、上記分散体中において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)が凝集体を形成し難くなり、分散性が向上する結果、上記樹脂組成物を用いた成形体が屋外で使用中に受ける雨水などに対する耐候性も良好であることを知見した。
さらに、上記凝集防止剤(D)が、メチルメタクリレートを主成分とする単量体と相溶性を有していることで、上記樹脂組成物を用いた成形体のヘイズ(曇り度)が抑制され意匠性が高まることを知見した。
そして本発明者等は、上記凝集防止剤(D)の添加量が、前記エステル基を有する高分子化合物(C)1重量部に対して1.14〜14重量部であるとき、当該効果が発現することを知見したものである。具体的には、凝集防止剤(D)の添加量が1.14重量部以上あれば上述の効果が発現し、添加量が14重量部以下であればヘイズ値の上昇を回避できる。
【0043】
上記凝集防止剤(D)であるアクリル高分子化合物として、具体的には、(メタ)アクリル酸と、炭素数が1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレンとの共重合体を挙げることができる。このようなアクリル高分子化合物として、商品名:ジョン
クリル611(BASF社製)、商品名:ダイヤナールBR−87(三菱レイヨン製)等を例示することができる。
【0044】
(5)メチルメタクリレートを主成分とする単量体(本明細書において便宜の為、「(E)」という符号を付記する場合がある。)
本発明において、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)とは、メチルメタクリレート単独、または、メチルメタクリレート50〜100重量部に対し、メチルメタクリレートと共重合可能な不飽和単量体を50〜0重量部含む混合物のことを示す。
【0045】
メチルメタクリレートと共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プルピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、モノグリセロールアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、モノグリセロールメタクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの窒素含有単量体、アリルグリジシルエーテル、グリジシルアクリレート、グリジシルメタクリレートなどのエポキシ基含有単量体、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレンオキサイド基含有単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン、エチレンなどの単官能単量体がある。これらの単量体は、2種以上併用することができる。
【0046】
さらに、必要に応じて多官能性単量体も用いることができる。
例えば、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートのごときアルキルジオールジアクリレートやアルキルジオールジメタクリレート類、
トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートのごとき多価アルコールのメタクリレートやメタクリレート類、
ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートのごとき芳香族多官能単量体、
アリルグリジシルエーテル、グリジシルアクリレート、グリジシルメタクリレートなどのエポキシ基含有単量体、などがある。これらの単量体は、2種以上併用することができる。
【0047】
(6)ラジカル重合開始剤(本明細書において便宜の為、「(F)」という符号を付記する場合がある。)
本発明に用いるラジカル重合開始剤(F)は、一般的に使用されているラジカル開始剤であれば、特に制限されない。例えば、2、2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物等を挙げることができる。これらラジカル開始剤を2種類以上併用することもできる。
【0048】
2.複合タングステン酸化物の微粒子分散液の製造工程
まず、複合タングステン酸化物の微粒子(A)を、炭化水素溶剤(B)に混合分散してスラリー化する。これに、エステル基を有する高分子化合物(C)を添加し、媒体攪拌ミルで解砕する。これによりエステル基を有する高分子化合物(C)で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子(A)を含む分散液が得られる。尚、上記解砕処理に適用される方法として、超音波ホモジナイザーやボールミル(ビーズミル)といった媒体攪拌ミルを用いる湿式粉砕法が好ましい。
【0049】
3.複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造工程
上述したエステル基を有する高分子化合物で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子分散液へ、炭化水素溶剤に可溶でメチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するアクリル樹脂凝集防止剤(D)を添加混合し混合液とする。そして、得られた当該混合液から前記炭化水素溶剤(B)を揮散させる。このとき、得られた混合液から炭化水素溶剤(B)を揮散する工程と並行して、または、当該炭化水素溶剤(B)を揮散する工程の後に、らいかい機等の汎用的に用いられる粉砕・解砕機を用いて残留物を解砕することにより粉状の複合タングステン酸化物微粒子分散体を得ることができる。一方、上記炭化水素溶剤(B)を揮散させた後に、残留物を解砕することにより粉状の複合タングステン酸化物微粒子分散体を得ることもできる。
【0050】
4.複合タングステン酸化物の微粒子分散液および微粒子分散体の製造工程における操作上のポイント
上述した2.、3.の工程おいて、エステル基を有する高分子化合物(C)と、凝集防止剤(D)との混合比率を、最適化しておくことが好ましい。
具体的には、エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.01〜5重量部とすることが好ましい。より好ましくは、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.1〜3重量部である。
【0051】
複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を0.01重量部以上とすることで、複合タングステン酸化物の微粒子(A)を均一に分散させることが出来る。また、エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を5重量部以下とすることで、上記分散液に上記アクリル樹脂凝集防止剤を添加混合した後、芳香族炭化水素(B)を揮散させたときに、残留物が粉状となり好ましいからである。
【0052】
一方、凝集防止剤(D)の添加量を、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.40〜55重量部、より好ましくは0.46〜50重量部、さらに好ましくは、2〜20重量部である。凝集防止剤(D)の添加量が0.40重量部以上である場合は、上記分散液中で複合タングステン酸化物の微粒子の凝集体が形成され難く、分散性が十分となるため好ましい。また、凝集防止剤(D)の添加量が55重量部以下の場合は、得られる複合タングステン酸化物微粒子分散体を用いて得られた成形体の機械的強度の低下や、屋外で使用する際の耐候性の悪化が見られず、好ましい。さらに、凝集防止剤(D)の添加量が0.46〜50重量部の範囲にあると、成形体の光学特性が向上(ヘイズ値が、特に低減する。)し、好ましい。
【0053】
添加するエステル基を有する高分子化合物(C)と凝集防止剤(D)との混合比率を重量部で上述の最適な範囲([凝集防止剤(D)/エステル基を有する高分子化合物(C)]=1.14〜14)として、製造されたタングステン酸化物微粒子分散体を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)に溶解させる。そして当該単量体(E)を、ラジカル重合開始剤(F)の存在下、鋳型内で重合させて成形体を形成させた場合、当該成
形体中で、前記複合タングステン酸化物の微粒子(A)の凝集体が生成しないことを、実現することが出来た。
【0054】
炭化水素溶剤(B)を揮散させる方法には、各種の蒸留、蒸発操作が適用できる。具体的には、常圧又は減圧下で当該炭化水素溶剤(B)の沸点以上に加熱して留出させる方法、窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを導入して留出させる方法、等がある。尤も、工業的には、常圧で80〜200℃、好ましくは120〜180℃まで溶液を加熱し、炭化水素溶剤(B)を留去させる方法が適している。
【0055】
得られた複合タングステン酸化物の微粒子(A)は、ポリエステル基を有する高分子化合物(C)で表面被覆されており、一方、凝集防止剤(D)は、トルエンに可溶でメチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)に対する相溶性を有するアクリル高分子化合物であることを特徴とする。
【0056】
エステル基を有する高分子化合物(C)で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子(A)を含む分散液の留出時間は、特に制限はないが通常1〜5時間とすることが好ましい。工業的には、この範囲まで昇温した後、その温度を維持して0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間保ち、反応を完結させればよい。当該反応の完結により、多量の均一な粉状の複合タングステン酸化物微粒子分散体を効率的に得ることができる。
【0057】
5.成形体の製造
本発明に係る成形体は、上記製造方法で得られた、複合タングステン酸化物の微粒子(A)とエステル基を有する高分子化合物(C)と凝集防止剤(D)とを含む粉状の分散体を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)に溶解させた後、ラジカル重合開始剤(F)存在下、鋳型内で重合させて成形し、得られる成形体である。
【0058】
当該成形方法は、公知の方法でよい。尤も、板状の成形体を製造することから、セルキャスト、連続セルキャストなどのキャスト重合法が便宜である。具体的には、セル鋳型として2枚のガラス板とガスケットとで作製されたガラスセル、またはステンレス板のような金属製の2枚のエンドレスエンドレスベルトとガスケットとで作製された連続スチールセルなどを用いる方法である。
【0059】
具体的には、上記のメチルメタクリレートを主体とする単量体(E)あるいはその部分重合体に、ラジカル重合開始剤(F)を添加混合したのち、所望の大きさのセルに注入して重合する。さらに、必要に応じて当該添加混合物へ、成形体の耐久性や強度の向上を目的としてメチルメタクリレートを主体とする多官能性単量体、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、トリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート等の紫外線吸収剤、リン酸エステル系、フェノール系等の酸化防止剤、ヒンダートアミン系光安定剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤、離型剤、難燃化剤等を添加混合しても良い。
【0060】
上記添加剤としては、この分野で使用されている添加剤であれば、特に制限されない。具体例としては、2−(5−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール)、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2、2‘−4、4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノール ビス(ジフェニルホスフェート)、ビス
(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等を、挙げることができる。
尚、上述したメチルメタクリレートを主体とする単量体の部分重合体とは、メチルメタクリレートを主体とする単量体の重合体を、メチルメタクリレートを含む単量体に溶解し
たもの、または、メチルメタクリレートを主体とする単量体の一部を予め重合したもの、等のことである。
【0061】
6.本発明に係る成形体
当該成形体を、建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に利用するに際して、成形体の可視光透過率が60%以上のときにヘイズが5%以下であれば、上記用途で不可欠な意匠性が保たれ、好ましい。
ここで、本発明に係る成形体は、可視光透過率を60%以上に設定した時に、ヘイズが5%以下であるという特徴を有している。
ここで、全光線透過率とヘイズの評価方法としては、例えば市販のヘイズメーターを使用し、全光線透過率(Tt)(単位:%)に関しては、JIS K 7361に準じ、ヘイズ(H)(単位:%)に関してはJIS K 7136に準拠する方法を挙げることができる。
【0062】
以上のように、本発明に係る製造方法で得られる複合タングステン酸化物微粒子分散体は、成形体中で複合タングステン酸化物の微粒子(A)が凝集することなく分散性が改善されているものであって、本発明により初めて調製された分散体である。
このため、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を使用した成形体は、優れた熱線遮蔽能を有し、ヘイズも5%以下と低く良好である。加えて、複合タングステン酸化物の微粒子(A)の分散性が良好であること、および、凝集防止剤(D)を使用していることから、屋外で使用中に受ける雨水などに対する耐候性も良好である。したがって、建築物の屋根材、壁材、自動車、電車、航空機などの開口部に使用される窓材、アーケード、天井ドーム、カーポート等に広く利用されるアクリル樹脂成形体に優れた熱線遮蔽能に加えて意匠性を付与することができるため、幅広い分野で利用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について実施例を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されることはない。
【0064】
本実施例において得られた成形体の光学特性評価に関し、ヘイズ(H)(単位:%)は、ヘイズメーター(村上色彩研究所製)を使用し、JIS K 7136に準拠して測定した。また、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)は、分光光度計U−4000(日立製作所製)を使用して測定した。
【0065】
(実施例1)
複合タングステン酸化物の微粒子(A)として粒径1〜3μmの複合タングステン酸化物Cs0.33WO170gと、炭化水素溶剤(B)としてトルエン1762gとを、攪拌して混合物とした。当該混合物へ、エステル基を有する高分子化合物(C)としてS24000GR(日本ルーブリゾール社製)68gを添加し、スラリーを調製した。このスラリーをビーズとともに媒体攪拌ミルに投入し、スラリーを循環させて粉砕分散処理を行い、エステル基を有する高分子化合物で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子分散液を得た(以下、α液と略記する)。当該エステル基を有する高分子化合物で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径は90nmであった。
【0066】
メチルメタクリレート単量体との相溶性を有するアクリル樹脂凝集防止剤(D)としてジョンクリル611(BASF社製)を、炭化水素溶剤(B)であるトルエンに溶解させ、40質量%溶液を調製した(以下、β液と略記する。)。
上記α液10gと、β液6.5gとを混合した。そして、得られた混合液からトルエンを揮散させて、アクリル樹脂凝集防止剤中に、エステル基を有する高分子化合物で被覆さ
れた複合タングステン酸化物の微粒子を均一に分散している分散体を得た(以下、γ液と略記する)。
上記γ液からの炭化水素溶剤(B)の揮散は、当該炭化水素溶剤(B)の沸点以下の温度で加熱しながら5kPa以下の雰囲気下で減圧蒸留し、当該炭化水素溶剤(B)を揮散させた。
当該分散体には複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が2.6重量部含有されている。そして、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体をらいかい機で解砕し粉状物にした。
【0067】
予め準備しておいたメチルメタクリレート単量体(関東化学社製)へ、ラジカル重合開始剤(F)である2、2−アゾビスイソブチロニトリルを0.1質量%含有させたメチルメタクリレートを主成分とする単量体(E)へ、上記合タングステン酸化物微粒子分散体を溶解させ溶解物を得た。当該メチルメタクリレート単量体(E)の添加量は、当該溶解物中の複合タングステン酸化物の微粒子(A)の含有量が0.06質量%になるように調整した。
当該溶解物を真空脱気した後、2枚のガラス板とポリ塩化ビニルのガスケットとで作製したキャスト用セルに注入した。そして、当該キャスト用セルを65℃の湯浴中で6時間保持して溶解物を重合させ、さらに、120℃の空気浴中で2時間重合させ、60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、上述した、溶解物中の複合タングステン酸化物の微粒子(A)の含有量を0.06質量%としたのは、当該得られたシート状成形体の可視光透過率を75%となるように設定する為である。得られたシート状成形体における複合タングステン酸化物含有量は、0.06質量%であった。
得られた成形体の光学特性として、ヘイズ(H)、可視光透過率T(単位:%)、日射透過率ST(単位:%)を評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0068】
(実施例2)
実施例1にて説明したα液10gと、β液14gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が5.6重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0069】
(実施例3)
実施例1にて説明したα液10gと、β液1.14gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が0.46重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0070】
(実施例4)
エステル基を有する高分子化合物(C)としてS32000(日本ルーブリゾール社製)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形
体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0071】
(実施例5)
凝集防止剤(D)としてダイヤナールBR−87を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0072】
(実施例6)
エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を680gに変更する以外は、実施例1と同様の方法で複合タングステン酸化物微粒子分散液を得た(以下α’液とする)。
上記α’液10gと実施例1にて説明したβ液125gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が50重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0073】
(実施例7)
実施例6にて説明したα’液10gと、β液137.5gを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が55重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0074】
(実施例8)
エステル基を有する高分子化合物(C)の添加量を59.5gに変更する以外は、実施例1と同様の方法で複合タングステン酸化物微粒子分散液を得た(以下α’’液とする)。
上記α’’液10gと実施例1にて説明したβ液1gとを混合し、実施例1と同様の操作を行って分散体を得た。当該分散体において、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.35重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が0.40重量部含有されている。
当該分散体に対し、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0075】
(比較例1)
凝集防止剤(D)を添加しない以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0076】
(比較例2)
凝集防止剤(D)を添加しない以外は、実施例4と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0077】
(比較例3)
エステル基を有する高分子化合物(C)の代わりに、アクリル樹脂凝集防止剤(D)のジョンクリル611を添加し、複合タングステン酸化物微粒子分散液を得る以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が3.0重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0078】
(比較例4)
エステル基を有する高分子化合物(C)の代わりに、アクリル樹脂凝集防止剤(D)のダイヤナールBR−87を添加し、複合タングステン酸化物微粒子分散液を得る以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が3.0重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0079】
(比較例5)
実施例1にて説明したメチルメタクリレート単量体との相溶性を有するアクリル樹脂凝集防止剤(D)(BASF製:ジョンクリル611)を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体との相溶性を有するものの、トルエンに不溶であるアクリル樹脂凝集防止剤(D)(東亞合成製:UC−3910)へ代替した以外は、実施例1と同様の操作を行って60×50×2mmのシート状成形体を得た。
尚、当該例に用いられた分散体には、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、エステル基を有する高分子化合物(C)が0.4重量部、アクリル樹脂凝集防止剤(D)が2.6重量部含有されている。
当該シート状成形体の光学特性を、実施例1と同様に評価した。当該評価結果を、表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
(まとめ)
実施例1から3においては、まず、本発明に係る複合タングステン酸化物の微粒子を、トルエン中に分散させて、スラリーを得、当該スラリーにS24000GR0.4重量部を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得た。そして当該分散液にジョンクリル611を、実施例1では2.6重量部(S24000GR1重量部に対して、6.5重量部)、実施例2では5.6重量部(S24000GR1重量部に対して、14重量部)、実施例3では0.46重量部(S24000GR1重量部に対して、1.15重量部)添加した。当該[凝集防止剤の添加量/エステル基を有する高分子化合物の添加量]の重量部比率は、いずれも本発明の範囲内である。
実施例4は、S24000GRをS32000に代替した以外は実施例1と同様である。
実施例5は、ジョンクリル611をダイヤナールBR−87に代替した以外は実施例1と同様である。
さらに、実施例6から8においては、実施例1から3と同様ではあるが、実施例6ではジョンクリル611を50重量部(S24000GR1重量部に対して、12.5重量部)、実施例7では55重量部(S24000GR1重量部に対して、13.8重量部)、実施例8では0.40重量部(S24000GR1重量部に対して、1.17重量部)添加した。当該[凝集防止剤の添加量/エステル基を有する高分子化合物の添加量]の重量部比率は、いずれも本発明の範囲内である。
【0082】
その後、当該分散液からトルエンを揮散させ、実施例1から5に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体を得た。ここで、ライカイ機で、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を解砕し、実施例1から5に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体を得た。
【0083】
当該実施例1から8に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体を、メチルメタクリレートを主成分とする単量体と混合し、重合して得た実施例1から3に係る成形体は、狙い通り74.7〜75.9%の可視光透過率を示す一方、38.9〜40.8%の日射透過率を示し、優れた日射遮蔽機能を示した。そして、このときのヘイズは5%を遙かに下回る1.8〜0.7%に留まり、実施例1から8に係る成形体は優れた意匠性を有すること
が判明した。
さらに、凝集防止剤の添加量が本明細書(0052)段落で説明した、複合タングステン酸化物の微粒子(A)1重量部に対して、0.40〜55重量部の範囲であると、分散液中で複合タングステン酸化物の微粒子の凝集体が形成され難く、分散性が十分となり、得られる複合タングステン酸化物微粒子分散体を用いて得られた成形体の機械的強度の低下や、屋外で使用する際の耐候性の悪化が見られず、好ましい。さらに、複合タングステン酸化物1重量部に対して0.46〜50重量部の範囲にある実施例1から6に係る成形体においては、ヘイズが0.6〜0.7%と非常に低い値に低減し、特に優れた意匠性を有することが判明した。
【0084】
これに対し、ジョンクリル611を欠く比較例1、2、S24000GRまたはS32000を欠く比較例3、4、ジョンクリル611をUC−3910に代替した比較例5は、可視光透過率、日射透過率において、実施例1から5とほぼ同等の光学特性を示したものの、ヘイズは5%を超えて5.7〜10.8%に達した。この結果、比較例1から5に係る成形体は、意匠性に問題があることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子を、炭化水素溶剤に分散させて、スラリーを得る工程と、
当該スラリーにエステル基を有する高分子化合物を添加した後、解砕して、エステル基を有する高分子化合物で表面被覆された複合タングステン酸化物の微粒子の分散液を得る工程と、
当該分散液に凝集防止剤を添加し、その後、当該分散液から前記炭化水素溶剤を揮散させ、複合タングステン酸化物微粒子分散体を得る工程と、
前記炭化水素溶剤を揮散する工程と並行して、または、前記炭化水素溶剤を揮散する工程の後に、当該複合タングステン酸化物微粒子分散体を解砕する工程と、を具備する複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法であって、
前記凝集防止剤は、前記炭化水素溶剤に可溶で、且つ、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に相溶性を有するアクリル高分子化合物であり、
前記凝集防止剤の添加量が、前記エステル基を有する高分子化合物1重量部に対して1.14〜14重量部であることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項2】
前記複合タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径が、500nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項3】
前記炭化水素溶剤の溶解度パラメータが、8.5〜9.1(cal/cm1/2であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項4】
前記エステル基を有する高分子化合物が、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、4−ヒドロキシドデカン酸から選択される少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸と、6ヒドロキシへキサン酸とを、繰り返し単位としたポリカルボニルアルキレンオキシ鎖を側鎖に有し、構造中にアミノ基を有するグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項5】
前記エステル基を有する高分子化合物の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して0.01重量部〜5重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項6】
前記凝集防止剤であるアクリル高分子化合物が、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜13の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項7】
前記凝集防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物1重量部に対して、0.46〜50重量部であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られた複合タングステン酸化物微粒子分
散体と、ラジカル重合開始剤とを、メチルメタクリレートを主成分とする単量体に溶解させ分散液を得る工程と、当該分散液を鋳型内で重合することにより成形体を得る工程と、を具備することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法で得られた成形体であって、当該成形体の可視光透過率を60%以上に設定したときのヘイズが5%以下であることを特徴とする成形体。

【公開番号】特開2010−168430(P2010−168430A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10169(P2009−10169)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】