説明

複合ナノスフェアおよびそれらの生体分子との複合体

【課題】それ故本発明は、従来技術の欠点を解消する新規なカプセル化複合ナノ粒子に関する。
【解決手段】50から1000nmプラスまたはマイナス5%の間の直径を有し、
− 有機相と、有機相の内部に配置された無機ナノ粒子とからなる必須に液体であるコア、および
− 特にN-アルキルアクリルアミド、またはN,N-ジアルキルアクリルアミドである、少なくとも一つの水溶性モノマーの重合から由来する少なくとも一つの親水性ポリマーからなるエンベロープ
を含むことを特徴とする複合ナノスフェア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マイクロカプセル化は、少なくとも一つのポリマー層で被覆された小さな固体粒子を生産するために使用される方法である。この方法は、有機ポリマーの層で被覆された無機粉体を生産するために特に使用されている。そのようなシステムは、個々の構成成分の特性の合計とは異なる特性、特により優れた機械的特性を有すると想定される。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル化法は、顔料、インク、プラスチックおよび塗料の調製の分野で特に使用されている。カプセル化粒子と顔料の最も重要な応用の一つは、エマルション塗料の分野で見出される。しかしながら、カプセル化によって得られた無機粒子が磁化できる場合、そのことは例えば、診断試験における使用のためのカプセル化粒子を有するタンパク質または抗体の結合によって、生物学の分野で特定の路を開く。そのような粒子はまた、生化学的分離の方法においても使用される。一般的にカプセル化粒子は、生物学的操作、診断および医薬の分野における支持体、ベクターまたはビヒクルとして興味を有されている。この効果のために、それらは生物学的マクロ分子のための固体の支持体として、医学的診断において使用されている。
【0003】
特に特異的な相互作用のための大きな表面を有し、抗体または抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、核酸、核酸断片、酵素のような生物学的分子、または触媒、医薬、ケージ分子若しくはキレーターのような化学的分子といった他の分子と反応可能な官能基をその表面で導入するために容易に化学的に修飾できるため、コロイド状粒子は、チューブまたはプレートのような従来の固体の支持体に対していくつかの利点を示す。
【0004】
コロイド状粒子の中で、磁性ラテックスは、分析の分野で非常に興味を引きつけており、例えば抗原、抗体、生化学的分子、核酸等のような分析物を分離および/または検出するための手段として使用される。
【0005】
ポリマー状/磁性タイプの複合粒子は、通常はサイズの基準で三つのカテゴリーに分類される:50nm未満の直径を有する小粒子、2μmより大きい直径を有する大粒子、および50から1000nmの間の直径を有する中間粒子。
【0006】
しかしながら、それらをとくに診断の応用のための良好な候補として考慮するために、それらは特定の基準に適合しなければならない。形態学的な観点から、それらは比較的球状であることが好ましく、磁性の負荷がポリマーマトリックスにおいて比較的均一に配置されることが好ましい。それらは磁場の作用の下で不可逆的な態様で凝集してはならず、そのことはそれらが容易に、迅速に、且つ可逆的に再分散できることを意味する。同様に、それらは沈降の現象を減少するために、比較的低密度を有するべきである。有利にはそれらは、狭い粒子サイズ分布を有するべきである。前記粒子は、単分散性(monodisperse)または等分散性(isodisperse)とも称される。
【0007】
かくして、そのサイズおよび密度のため、液相中の懸濁物における大きな磁性粒子は、迅速に沈降する傾向を有する。さらに、それらは永久に磁化されているようであるため、磁場にかけられた後に凝集を形成する傾向にある。残余磁化の用語が使用される。それ故それらは良好な候補を構成しない。
【0008】
逆に、小さな磁性粒子は、そのブラウン運動のため懸濁物中に維持される傾向にあり、特にもし適用された磁場が比較的弱いのであれば、磁石によって誘引するのが困難であるかまたは全く誘引されない。それ故それらは、前述の使用にあまり適していない。
【0009】
それ故、上述の欠点を克服し、前述の確立された基準に特に適合する、50から1000nmの間で中間的サイズを有する、ポリマー状/磁性タイプの複合粒子を生産することが明らかに有利である。しかしながら、本発明は、以下に記載されるような複合磁化可能粒子に制限されない。
【0010】
Dynal(登録商標)粒子が挙げられる。これらの粒子は、ポリスチレンと酸化鉄の多孔性コアからなるミクロスフェアであり、酸化鉄は、ポリスチレンと多孔性ミクロスフェアの酸化鉄をカプセル化する別のポリマーからなるエンベロープの表面で利用可能な孔の中に浸透することによって沈着している。それらはそれぞれ2.8μm(粒子M280)および4.5μm(粒子M450)の直径を有し、比較的均一なサイズである。それ故それらは、等分散性粒子として考慮されるが、その大きなサイズのため、特に沈降の現象という前述の欠点を示す。さらにそれらの比表面積は小さい。
【0011】
特許出願EP 0 390 634は、50から10000nmのオーダーの直径を有し、磁化可能粒子からなる固体コアと、少なくとも一つのビニル芳香族モノマーと、ビニル芳香族モノマーに可溶性で前記モノマーと架橋可能な少なくとも一つのポリエチレン性不飽和乳化ポリマーとから由来する疎水性コポリマーからなる表面を含む、疎水性架橋化ビニル芳香族ポリマーの磁化可能複合ミクロスフェアを記載する。しかしながら、それらはサイズの条件に適合できるが、コアの内部に配置される磁性の負荷の均一な分布を有しないという欠点を有する。さらに、この特許において添付された図面から明らかなように、前記粒子はサイズが不均一である。それ故、それらは、予測されたサイズの粒子のみを選択するように、分画化されなければならない多分散性粒子のセットである。最後に、固体のコアの内部の磁化可能な粒子は、その配向においてランダムで不自然な態様で得られるため、それ故複合ミクロスフェアから生ずる磁性モーメントは、結果として、固体のコアの内部の粒子のランダムな分布と結びついた生成するモーメントの減少を伴う、磁化可能粒子のモーメントの代数的な合計に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許出願EP 0 390 634
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下に記載されるように、本発明の複合ナノスフェアの特徴の一つは、それらが磁性である場合、必須に液体であるコアの内部に分散されたナノ粒子が、生成した磁性モーメントに対して十分に移動可能であり、弱い磁場であっても磁場の作用の下で分離を容易にし、そのことが特許出願EP 0 390 634に記載されたタイプの固体のコアを有する磁性粒子と比較して明白な利点を有する。これは特に、磁性ナノ粒子の含量が低い場合に有利である。
【0014】
それ故本発明は、前述の欠点を解消する新規なカプセル化複合ナノ粒子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のカプセル化複合ナノスフェアは、そのコアに、コアの内部に均一に分散された無機材料の搭載を含む;それらはサイズにおいて等分散性であり、特に診断のためのといった生物学の分野、並びに塗料、インク等の調製の分野で多様に使用されることが可能である。
【0016】
本発明の複合ナノスフェアは、約50から1000nmプラスまたはマイナス5%の間、好ましくは約100から500nmプラスまたはマイナス5%の間、有利には100から200nmプラスまたはマイナス5%の間の直径を有し、
− 有機相と、有機相の内部に均質に配置された無機ナノ粒子とからなる必須に液体であるコア、および
− 特にN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、とりわけN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N-メチルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-シクロプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミドである、少なくとも一つの水溶性モノマーの重合から由来する少なくとも一つの親水性ポリマーからなるエンベロープ
を含む。
【0017】
プラスまたはマイナス5%は、容量による平均径が、プラスまたはマイナス約5%内に定義されることを意味する。サイズは、光散乱によって測定される。
【0018】
必須に液体であるコアは以下のものを含む:
(i)5から12の炭素原子を含む化合物から選択される脂肪族または環状炭化水素、それらの異性体、およびそれらの混合物。好ましくは前記炭化水素は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、およびドデカンから選択され、選択肢の関数としての生産の方法、または選択された炭化水素の重合条件を合わせることは、当業者の能力の範囲内にあると解される。特に重合が高温で実施される場合、反応の段階は、ペンタンのような揮発性炭化水素、および選択された重合開示剤の性質に合わされるべきである;
(ii)鉄、チタン、コバルト、亜鉛、銅、マンガン、ニッケルの金属酸化物;マグネタイト;ヘマタイト、マンガン、ニッケルおよびマンガン−亜鉛フェライトのようなフェライト;コバルト、ニッケルの合金;ゼオライト;タルク;ベントナイトおよびカオリンのようなクレー;アルミナ;シリカ;グラファイト;カーボンブラックまたは他の無機材料から選択される無機ナノ粒子。好ましくは無機材料は、鉄、チタン、コバルト、亜鉛、銅、マンガン、ニッケルの金属酸化物;マグネタイト;ヘマタイト;マンガン、ニッケル、マンガン−亜鉛のフェライトのようなフェライト;コバルト、ニッケルの合金から選択される。
【0019】
かくして規定されたコアは、蛍光性、発光性または放射性マーカーのようなマーカーをさらに含んでも良く、前記マーカーは、以下の実施例1に記載されたようなエマルションの調製の間で導入されると解される。
【0020】
無機ナノ粒子は、複合ナノスフェアの全重量に対して5から95%、好ましくは10から90%、より好ましくは20から80%、有利には50から80%の重量を占める。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一つの実施態様として、前記エンベロープは、前記エンベロープの外層を構成する前述の親水性ポリマーと、エンベロープの外層と必須に液体であるコアとの間の界面に配置される前記エンベロープの内層を構成する疎水性ポリマーとを含む。
【0022】
疎水性ポリマーは、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ビニルトルエンのような水中で不溶性であるビニル芳香族モノマーのホモポリマー、並びにこれらのモノマーと、互いのおよび/またはアルキル基が3から10の炭素原子を含むアルキルアクリラートおよびアルキルメタクリラート、および4または5の炭素原子を有するエチレン性酸と1から8の炭素原子を有するアルキルとのエステル、メタクリル酸、スチレン誘導体、ジエン化合物のような他のコモノマーとのコポリマーから選択される。
【0023】
本発明の複合ナノスフェアは特に、塗料、インク、プラスチックの分野での応用が見出され、それらが官能化されている場合、特に生物学的または生化学的分子の分離のために、診断試験のために、治療用、予防用、または化粧品組成物の調製のために、生物学の各種の分野での応用が見出される。
【0024】
従って、本発明の一つの実施態様として、複合ナノスフェアは、例えば生物学的分子といった分子と相互作用できる官能基をエンベロープの表面で示し、前記官能基は、(i)例えば加水分解または官能基のグラフト化のような化学的処理といった、エンベロープの表面処理、(ii)またはメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、アミノエチルメタクリラート、アミノプロピルメタクリラートのような、少なくとも一つの官能性モノマーの付加、(iii)またはジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)および2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)のような、官能性開始剤の付加のいずれかによって提供される。
【0025】
かくして官能化された複合ナノスフェアは、特許出願EP 0 842 194に記載されたプロトコールに従って核酸の濃縮のため、または特許出願WO 99/35500に記載されたプロトコールに従ってタンパク質の濃縮のために使用されても良い。
【0026】
かくして、本発明の複合ナノスフェアは官能化されても良く、エンベロープの表面で、少なくとも一つのリガンドと反応可能である、カルボキシル、アミン、チオール、ヒドロキシル、トシル、またはヒドラジン基のような反応性官能基を示しても良い。
【0027】
かくして形成された官能化複合ナノスフェアは、例えば抗体、抗体断片、タンパク質、ポリペプチド、酵素、ポリヌクレオチド、プローブ、プライマー、核酸断片のような生物学的分子;化学的ポリマー、医薬物質、ケージ分子、キレート剤、触媒、ビオチンのような化学的分子といったリガンドを固定可能であろう。
【0028】
本発明の主題はまた、上述の少なくとも一つのリガンドに結合された本発明の複合ナノスフェアから由来する複合体と、その使用である。
【0029】
例として、前記複合体は、生物学的サンプル中のタンパク質、抗原、抗体の検出および/または定量のための免疫学的試験において、または生物学的サンプル中の核酸若しくは核酸断片の検出および/または定量のためのプローブ法を使用する試験において使用される。サンプル中の核酸の検出および/または定量のためのプローブの使用は、当業者に周知であり、例としてサンドイッチハイブリダイゼーション法が挙げられる。同様に、本発明の複合体は、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)またはいずれかの他の適切な増幅法によって、サンプル中の核酸増幅反応のための「プライマー運搬試薬」("primer-carrying agents")として使用されても良く、かくして生物学的サンプル中の核酸の検出および/または定量が可能である。
【0030】
それ故本発明の主題はまた、とりわけ前記複合ナノスフェアまたは前記複合体を含む、診断試薬および診断用組成物、並びに例えばタンパク質または核酸の濃縮のための分析試験における、または別法として診断試験における、前記試薬の使用である。
【0031】
前記複合体はまた、医薬物質のためのビヒクルまたはベクター、欠損遺伝子修復試薬、治療におけるアンチセンスプローブのような、遺伝子の発現をブロックまたは阻害可能な薬剤、またはタンパク質の活性をブロックまたは阻害可能な薬剤として、治療または予防の分野での応用が見出され、それによって治療用または予防用組成物において使用できる。
【0032】
かくして本発明の複合体は、適切な且つ製薬学的に許容可能なアジュバントおよび/または希釈液および/または賦形剤と組み合わせて前記複合体を含む、治療用または予防用組成物において医薬物質を運搬可能であり、前記医薬物質は、in vivoで放出可能である。製薬学的に許容可能な賦形剤およびアジュバントの定義は、例えばRemingtons's Pharmaceutical Science 第16版, Mack Publishing Co編に記載されている。
【0033】
本発明の複合体はまた、興味ある少なくとも一つのタンパク質または興味あるタンパク質の断片をコードする治療上興味ある遺伝子を運搬することが可能であり、用語、タンパク質は、最も一般的に使用される定義におけるタンパク質と抗体の両者を意味するように解される。もちろん、そのような複合体は、前記治療上興味ある遺伝子の発現のために必要な構成成分も含む治療用または予防用組成物内に取り込まれる。
【0034】
本発明の複合体はまた、治療用または予防用組成物内に取り込まれた場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはプローブのin vivoトランスファーのために使用できる。アンチセンス分子は、標的中のmRNAの位置に従ってポリソームの形成および/または機能を阻害することによって、興味ある標的タンパク質の合成を特異的に妨げることが可能である。それ故、アンチセンスオリゴヌクレオチドによる阻害のための標的として翻訳のための開始コドンを取り囲む配列の通常の選択は、開始複合体の形成を妨げるようにデザインされる。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる阻害における他のメカニズムは、アンチセンスオリゴヌクレオチド/mRNAハイブリッドを切断するリボヌクレアーゼHの活性化、またはmRNAスプライシング部位を標的に有するアンチセンスオリゴヌクレオチドによるスプライシング部位での妨害を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、相補的DNA配列をも有し、それ故三本鎖の形成を通じて転写を妨げることができ、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA二本鎖の大きな溝におけるHoogsteen水素結合と称されるものを介して結合する。この特定の場合、抗原性オリゴヌクレオチドに対してより正確に参照がなされる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらがハイブリダイズするDNAまたはRNA標的に対して厳格に相補的であっても良いが、それらが標的にハイブリダイズすることを条件に、厳格に相補的でなくても良い。同様に、これは、ヌクレオチド内結合において修飾されないまたは修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでも良い。全てのこれらの概念は、当業者の一般的知見の一部である。
【0035】
それ故本発明は、とりわけ前述のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドのためのベクター複合体を含む治療用組成物に関する。
【0036】
最後に、前記複合体はまた、ケージ分子/クリプタートまたはキレーター/キレート化分子タイプの複合体を形成すること、あるいは化学的応用における触媒のためのビヒクルとして機能することが可能である。
【0037】
本発明の複合ナノスフェアおよび複合体は、以下の実施例に記載されるプロトコールに従って、エマルションの重合を介するカプセル化の方法によって得られ、本発明はまた、そのような調製の方法にも関する。
【0038】
本発明の方法に従って、(i)二つの混和しない相からなる安定な等分散性開始エマルションが入手可能であり、疎水性A相は、界面活性剤を含む有機相に均一に分散した無機ナノ粒子を含む小滴からなり、前記A相は、親水性B相に分散しており、(ii)少なくとも一つの水溶性モノマー、少なくとも一つの水溶性架橋剤、および少なくとも一つの水溶性重合開始剤を、親水性B相に導入し、並びに(iii)水溶性モノマーを、架橋剤と開始剤の存在下で重合させる。
【0039】
本発明の一つの実施態様として、工程(ii)の前に、少なくとも一つの疎水性モノマーと第一の水溶性重合開始剤を親水性相内に導入し、次いで少なくとも水溶性モノマーと、架橋剤と、任意にもし必要であれば、第一の開始剤と同一でもことなっても良い第二の水溶性重合開始剤への添加を実施し、第二の重合開始剤の添加は、もし第一の重合開始剤の量が、組成物に対する完全な重合を達成するのに制限されるまたは不十分である場合にのみ有用であると解される。開始剤の全体の量は、全体のモノマー濃度に対して、1から10mol%の間、好ましくは1から5mol%の間である。
【0040】
水溶性開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムのような、過硫酸塩と称されるパーオキシジスルファート塩;ヒドロ過酸化クメンのようなヒドロ過酸化物;過酸化水素;塩酸2,2'-アゾビスアミジノプロパン、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、および2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)から選択される。これらの中で、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、および2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)が官能性開始剤である。過硫酸塩は水溶性開始剤である。熱の作用の下での分解は、ナノスフェアの荷電に向けて寄与する硫酸基を有するアニオンを生産する。過酸化水素は水中で分解し、荷電しないヒドロキシル基を形成する。ヒドロ過酸化物は、特にモノマーからなる水相の両者で可溶性である。ヒドロ過酸化物の分解は、ヒドロキシル基と、使用される過酸化物のタイプに従って相の一方で分布するようになる別の酸素化基を生産する。ヒドロ過酸化クメンは、スチレンの重合の場合、モノマーの粒子と水の間の界面で分解するように想定され、ヒドロキシル基が水相中に侵入し、非極性基が粒子に向けて分散する。本発明の複合ナノスフェアの、または生成した複合体のカチオン特性またはアニオン特性は、開始剤のカチオン性またはアニオン性に依存するであろう。
【0041】
開始剤は、モノマーの導入と同時に、またはそれらの導入の前に、または別法としてそれらの導入に引き続きのいずれかで、親水性相内に導入される。
【0042】
水溶性モノマーおよび疎水性モノマーは、前述の定義に対応する。
【0043】
水溶性架橋剤は、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)およびエチレングリコールジメタクリラートから選択される。
【0044】
疎水性有機A相は、5から12の炭素原子を含む化合物から選択される脂肪族または環状炭化水素、それらの異性体、およびそれらの混合物を含む相である。特に前記炭化水素は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、およびドデカンから選択され、重合が温度を上昇させることによって実施された場合、当業者はペンタンのような揮発性構成成分、および選択される重合開始剤の性質に反応工程を合わせるべきである。B相は、水のような水性相である。
【0045】
重合は好ましくは、重合開始剤の存在下で、約60℃から約90℃まで、好ましくは約70℃まで温度を上昇させることによって実施され、重合条件は、選択された開始剤の性質に従って当業者により決定されるであろう;またはUV光線若しくはレーザービームまたは他のエネルギー源のような光線を使用して光化学的に実施される。
【実施例】
【0046】
実施例1
安定で且つ等分散性の開始エマルションを、この実施例に記載されたプロトコールのそれそれに従って調製した。
【0047】
(i)一次エマルションを、コロイドミル(Ika(登録商標))を使用して剪断しながら、オクタン中に45重量%の酸化鉄からなる分散相を、水中に50重量%の濃度でドデシル硫酸ナトリウムからなる連続相中に、80重量%の鉄流体を含む分画が得られるまで段階的に取り込ませることによって、乳化法を使用して調製した。かくして規定された混合物を、事前に決定された剪断速度でPG398-type Couetteで分画した。かくして調製された一次エマルションは、小滴の直径の広範囲の分布によって特徴付けされる多分散性エマルションであり、それをサイズにおいて等分散性である開始エマルションの生産のために連続的磁性ソーティングによって処理する。
【0048】
(ii)一次エマルションを、オクタン、73重量%の酸化鉄、およびモノグリセロールまたはポリグリセロールポリリシノールアートタイプの脂溶性界面活性剤(1から10重量%)からなる分散相を、テルギトールNP10-typeの界面活性剤(31重量%)からなる連続相に、へらを使用して迅速に添加することによって、乳化法を使用して調製した。かくして規定された混合物を、事前に決定された剪断速度でPG398-type Couetteで分画した。かくして調製された一次エマルションは、小滴の直径の低分布によって特徴付けされる比較的等分散性のエマルションであり、それをサイズにおいて等分散性である開始エマルションの生産のために連続的磁性ソーティングによって処理する。
【0049】
実施例2
20mlのエマルション(0.8倍の臨界ミセル濃度(CMC)でドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と水中に分散された1重量%)を、重合のため25ml丸底フラスコ内に注ぐ。9時間空気を排出させるために、窒素下でバブリングによって溶液を脱気する。0.4mlの水中の24μlのスチレンモノマーと4.3mgの可溶化過硫酸カリウム開始剤を導入し、混合物を2時間攪拌し続ける。次いで20分攪拌しながら、温度を70℃に上昇させる。混合物(1mlの水中に可溶化した280mgのN-イソプロピルアクリルアミド、0.4mlの水中に可溶化した11mgのメチレンビスアクリルアミド、30μlのメタクリル酸)を、30分に亘り導入する。重合を窒素雰囲気下で70℃の温度で12時間実施する。官能基の存在を、メタクリル酸によって確認する。
【0050】
最終磁性ラテックスは、20℃で以下の特徴を有する:光散乱によって測定される直径は、192nmプラスまたはマイナス5nmである。酸化鉄レベルは約70%である。
【0051】
実施例3:
50mlのエマルション(1倍のCMCでSDSと水中に分散した0.7%)を、50mlの重合反応器に注ぐ。溶液を、3時間30分窒素下でのバブリングによって脱気する。7μlのスチレンモノマーと2μlのメタクリル酸を導入し、混合物を20分間攪拌し続ける。0.1mlの水中に可溶化した開始剤(過硫酸カリウム、2mg)を導入し、溶液を10分間ホモジェナイズする。次いで25分攪拌しながら、温度を70℃に上昇させる。以下の混合物(0.5mlの水中に可溶化した80mgのN-イソプロピルアクリルアミド、6μlのメタクリル酸、4μlのスチレン)を、以下のように導入する:
【0052】
200μlの混合物の導入、および200μlの混合物の導入に引き続き30分のホモジェナイゼーション、および30分のホモジェナイゼーションの後に混合物の他の構成成分の導入。窒素雰囲気下で70℃の温度で、16時間300rpmで攪拌しながら重合反応を実施する。官能基の存在を、メタクリル酸によって確認する。
【0053】
最終磁性ラテックスは、以下の特徴を有する:光散乱によって測定される、20℃で187nmプラスまたはマイナス5nmの直径、および約70%の酸化鉄レベル。pH10で-50mVおよびpH4.5で0mVのゼータ電位。
【0054】
実施例4:
15mlのエマルション(トリトンX405において1倍のCMCで水中に分散した0.7%)を、重合のため50mlの丸底フラスコ内に導入する。このエマルションを、5時間窒素下でのバブリングによって事前に脱気する。0.2mlの水中に可溶化した7μlのスチレンモノマーと2mgのN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドを導入する。混合物を25分ホモジェナイズし、その後0.2mlの水中に可溶化した開始剤である2mgの塩酸2,2'-アゾビスアミジノプロパンを導入する。20分のホモジェナイズの後、温度を25分70℃に上昇し、以下の混合物(0.5mlの水中に可溶化した80mgのN-イソプロピルアクリルアミド、0.1mlの水中に可溶化した2mgのメチレンビスアクリルアミド、0.1mlの水中に可溶化した6mgのN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド)を、以下の態様で導入する:
【0055】
0.2mlの混合物の導入、20分のホモジェナイゼーション、0.2mlの混合物の導入、30分のホモジェナイゼーション、混合物の残りの導入。
【0056】
窒素雰囲気下で70℃の温度で、16時間300rpmで攪拌しながら重合反応を実施する。アミン基の存在を、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドによって確認する。
【0057】
最終磁性ラテックスは、以下の特徴を有する:光散乱によって測定される、20℃で187nmプラスまたはマイナス5nmの直径、および70%のオーダーの酸化鉄レベル。pH4で+50mVおよびpH10で-50mVのゼータ電位。
【0058】
実施例5:
60μlのTween 20 (1%)、636μlのリン酸バッファー(pH6.9で10mM)、60μlの二塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(25mg/ml)、156μlのN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(25mg/ml)、およびストレプタビジン(1mg/mlで48μl)を、前述のように得られた240μlの3%での磁性ラテックスに連続的に添加する。
【0059】
混合物を室温で1時間インキュベートし、次いで磁場を適用することによって粒子を濃縮し、次いで界面活性剤を含むバッファー中に再分散する(10mMリン酸、pH6.9+0.05% Tween 20)。
【0060】
338nmol/mlの濃度で5753g/molの重量を有する、9.9μlの17マーのビオチン化オリゴヌクレオチド(ODN)を、ポジティブコントロールを構成するために、事前に合成された400μlのストレプタビジン被覆化粒子に加える。20μlの17マーの非ビオチン化且つ非アミノ化オリゴヌクレオチド(重量:167nmol/mlの濃度で6452g/mol)を、ネガティブコントロールを構成するために、事前に合成された400μlのストレプタビジン被膜化粒子に加える。
【0061】
二つのコントロールを、室温で30分インキュベートし、3倍に分離させ、一度目に塩基性バッファーで(10mMリン酸、pH9.9+SDS、5倍の臨界ミセル濃度)、二度目に中性pHでのバッファーで(10mMリン酸、pH6.9+0.05% Tween 20)、および三度目にサケ精子DNAを含む280μlのPEG中に再分散する。
【0062】
両者の場合で、セイヨウワサビペルオキシダーゼでラベルされたポジティブコントロールのODNに相補的な20μlのODN(17マー、9nmol/mlの濃度)を加える。
【0063】
二つのコントロールを、室温で1時間再びインキュベートし、さらに分離し、サケ精子DNAを含む400μlのPEG中に再び分散した。
【0064】
50μlのオルト-フェニレンジアミンを、50μlの粒子に加える。酵素反応を5分間実施し、50μlの硫酸(1M)の添加によって停止する。
【0065】
粒子を上清から分離し、後者を492と630nmでAxia Microreader(登録商標、bioMerieux)装置での比色法によってアッセイする。
【0066】
ポジティブコントロールは、2000OD単位の光学密度を提供する一方、ネガティブコントロールは、1000OD単位の密度を提供する。
【0067】
前述の実施例における重合の前後で観察されたサイズの変動は、以下の二つの現象の組み合わせに寄与する:a)有機相の部分の考え得る蒸発、およびb)一つの例から別のものへの重合の変換。重合の後の酸化鉄レベルは、重合の前に使用されたエマルションにおける大きさと実質的に同じオーダーを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50から1000nmプラスまたはマイナス5%の間の直径を有し、
− 有機相と、有機相の内部に配置された無機ナノ粒子とからなる必須に液体であるコア、および
− 特にN-アルキルアクリルアミド、またはN,N-ジアルキルアクリルアミドである、少なくとも一つの水溶性モノマーの重合から由来する少なくとも一つの親水性ポリマーからなるエンベロープ
を含むことを特徴とする複合ナノスフェア。

【公開番号】特開2012−17332(P2012−17332A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176851(P2011−176851)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2001−535057(P2001−535057)の分割
【原出願日】平成12年11月6日(2000.11.6)
【出願人】(596020794)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】