複合ナノ繊維
【課題】高い機械的強度を有するナノ繊維を提供する。
【解決手段】かご状のシルセスキオキサン(以下、POSSという。)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという。)であるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなることを特徴とする複合ナノ繊維。POSS例は式(1)。
【解決手段】かご状のシルセスキオキサン(以下、POSSという。)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという。)であるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなることを特徴とする複合ナノ繊維。POSS例は式(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ナノ繊維に関する。なお、本発明において、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均直径が1000nm程度又はそれ以下の繊維のことをいう。また、「複合ナノ繊維」とは、ポリマー材料以外の成分を含むナノ繊維をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー材料のみからなるナノ繊維、当該ナノ繊維からなる不織布、当該ナノ繊維からなる糸及びこれらの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の「ナノ繊維」は、ポリマー材料のみからなるナノ繊維である。また、特許文献1に記載の「ナノ繊維からなる不織布」は、上記したナノ繊維からなるものである。また、特許文献1に記載の「ナノ繊維からなる糸」は、上記したナノ繊維を撚り糸して糸としたものである。図12は、特許文献1に記載のナノ繊維、ナノ繊維からなる不織布及びナノ繊維からなる糸を製造するための製造装置を示す図である。特許文献1に記載の「ナノ繊維」及び「ナノ繊維からなる不織布」は、図12に示すように、電界紡糸装置(図12左側に図示)におけるノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態で、ポリマー材料溶液からなる液体をノズルからコレクターに向けて吐出する電界紡糸法(エレクトロスピニング法ということもある。)によって製造することができる。また、特許文献1に記載の「ナノ繊維からなる糸」は、図12に示すように、電界紡糸法によって製造した「ナノ繊維からなる不織布」を撚り糸装置(図12右側に図示)内で撚り糸することにより製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−518891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、繊維の技術分野においては、常に、従来の繊維よりも高い機械的強度(例えば引っ張り強度)を有する繊維及びこのような繊維の製造方法が求められている。これは、ナノ繊維の技術分野においても同様であり、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有するナノ繊維及びこのようなナノ繊維の製造方法が求められている。また、「ナノ繊維からなる不織布」の技術分野においても同様であり、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」及びこのような「ナノ繊維からなる不織布」を製造可能な「ナノ繊維からなる不織布」の製造方法が求められている。さらにまた、「ナノ繊維からなる糸」の技術分野においても同様であり、従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」及びこのような「ナノ繊維からなる糸」を製造可能な「ナノ繊維からなる糸」の製造方法が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有するナノ繊維を提供することを目的とする。また、上記のようなナノ繊維からなり、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」を提供することを目的とする。また、従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」を提供することを目的とする。さらにまた、従来の「ナノ繊維」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維」を製造可能な「ナノ繊維」の製造方法、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」を製造可能な「ナノ繊維からなる不織布」の製造方法及び従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」を製造可能な「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ナノ繊維を構成するポリマー材料中に、かご状のシルセスキオキサン(POSS)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(POSS修飾MWCNT)を分散させることにより、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有するナノ繊維、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」及び従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、上記のようなナノ繊維は、ポリマー材料以外の成分(かご状のシルセスキオキサンにより化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ)を含むものであるため、複合ナノ繊維ということにする。
【0007】
[1]本発明の「複合ナノ繊維」は、かご状のシルセスキオキサン(以下、POSSという。)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという。)であるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の複合ナノ繊維は、元来高強度のMWCNTから得られるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。また、本発明の複合ナノ繊維は、POSSにより化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、通常のMWCNTの場合と比較してポリマー中での分散性が極めて高くなる。このため、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に均一に分散することが可能となり、また、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することも可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。
【0009】
また、本発明の複合ナノ繊維は、上記したように、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に均一に分散することが可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い品質(均質性)を有する複合ナノ繊維となる。
【0010】
また、本発明の複合ナノ繊維は、上記したように、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することが可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。なお、本発明の複合ナノ繊維は、POSS特有の立体障害によりPOSSがMWCNTを完全に覆ってしまうことがないため、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、MWCNTの表面のより多くの割合を露出させることが可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。
【0011】
さらにまた、本発明の複合ナノ繊維によれば、上記したように、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することが可能となる。このため、POSS修飾MWCNT分散液体に対するPOSS修飾MWCNTの濃度が1重量%程度までの範囲においては、POSS修飾MWCNT分散液体の電気伝導度を高めることが可能となり、より一層円滑に電界紡糸を行うことが可能となる。従って、この観点からは、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも、より一層細い繊維径を有するとともに高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する複合ナノ繊維を構成することが可能となる。このことは後述する実施例からも裏付けられている。
【0012】
なお、「POSS」という名称は、英語で「かご状(多角形状)のシルセスキオキサン」を表す「Polyhedral Oligometric Silsesquioxanes」を略した名称である。
【0013】
[2]本発明の複合ナノ繊維においては、前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることが好ましい。
【化1】
(但し、式(1)中、「R」はアルキル基を示し、「R’」は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【0014】
本発明の複合ナノ繊維においては、上記のPOSSを好適に用いることができる。
【0015】
なお、式(1)における「R」としては、直鎖のもの、分枝を有するもの、環状構造を有するもの等各種のアルキル基を用いることができる。また、式(1)における「R’」としても、直鎖のもの、分枝を有するもの、環状構造を有するもの等各種の官能基を用いることができる。後述する[7]においても同様である。
【0016】
[3]本発明の複合ナノ繊維からなる不織布は、本発明の複合ナノ繊維からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の複合ナノ繊維からなる不織布は、本発明の複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる不織布」となる。
【0018】
[4]本発明の複合ナノ繊維からなる糸は、本発明の複合ナノ繊維からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の複合ナノ繊維からなる糸は、本発明の複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」となる。
【0020】
[5]本発明の複合ナノ繊維の製造方法は、POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTを準備するPOSS修飾MWCNT準備工程と、ポリマー材料溶液又は溶融ポリマー材料からなる液体に、前記POSS修飾MWCNTを分散させることにより、POSS修飾MWCNT分散液体を作製するPOSS修飾MWCNT分散液体作製工程と、前記POSS修飾MWCNT分散液体から「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を作製する複合ナノ繊維作製工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の複合ナノ繊維の製造方法によれば、後述する実施例からも分かるように、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0022】
なお、本明細書においては、「ポリマー材料溶液」とは、ナノ繊維の材料であるポリマー材料を溶媒に溶解させたもののことをいう。また、「溶融ポリマー材料」とは、ポリマー材料を加熱により融解させたもののことをいう。このうち、POSS修飾MWCNT分散液体作製工程に用いる「液体」としては、粘度を低くし易い「ポリマー材料溶液」を用いることがより好ましい。
【0023】
[6]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記複合ナノ繊維作製工程は、ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態で、前記POSS修飾MWCNT分散液体を前記ノズルから前記コレクターに向けて吐出して「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を製造する電界紡糸工程からなることが好ましい。
【0024】
このような方法とすることにより、後述する実施例からも分かるように、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0025】
[7]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることが好ましい。
【化2】
(但し、式(1)中、「R」はアルキル基を示し、「R’」は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【0026】
本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、上記のPOSSを好適に用いることができる。
【0027】
[8]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記反応性の基は、イソシアネート基からなり、前記POSS修飾MWCNT準備工程は、MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、前記MWCNTにおける前記反応性の官能基と、前記POSSにおける前記イソシアネート基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0028】
このような方法とすることにより、末端にイソシアネート基を有する官能基を有するPOSSを用いて、本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0029】
[9]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記反応性の基は、アミノ基からなり、前記POSS修飾MWCNT準備工程は、MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、ハロゲン化剤により、前記MWCNTにおける前記反応性の官能基の全部又は一部をハロゲン化してハロゲン化された官能基を生成するハロゲン化工程と、前記MWCNTにおける前記ハロゲン化された官能基と、前記POSSにおける前記アミノ基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0030】
このような方法とすることにより、末端にアミノ基を有する官能基を有するPOSSを用いて、本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0031】
なお、ハロゲンとしては、塩素を好適に用いることができる。この場合においては、ハロゲン化剤として塩化チオニル(SOCl2)を用いることが好ましい。
【0032】
上記[8]又は[9]に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、反応性の官能基とは、例えば、カルボキシル基(−COOH)やヒドロキシ基(−OH)である。
【0033】
上記[8]又は[9]に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、POSS修飾MWCNT製造工程においては、反応を促進させるための触媒を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の複合ナノ繊維の製造方法において、反応性の基は、上記した、イソシアネート基又はアミノ基の他、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、イミド基、ニトリル基、オレフィン基その他の反応性の基を用いることができる。
【0035】
[10]本発明の複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法は、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明の複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる不織布を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる不織布」を製造することが可能となる。
【0037】
[8]本発明の複合ナノ繊維からなる糸の製造方法は、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程と、前記複合ナノ繊維を撚り糸装置内で撚り糸して複合ナノ繊維からなる糸を製造する撚り糸工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0038】
本発明の複合ナノ繊維からなる糸の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる糸を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0039】
本発明の「複合ナノ繊維」、「複合ナノ繊維からなる不織布」及び「複合ナノ繊維からなる糸」は、上記したように、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などの優れた特性を有するため、衣料分野をはじめ各種電子・機械材料分野(半導体材料、OLED材料、LED材料、ナノ化学センサー材料、MEMS材料、FED材料、燃料電池用触媒の担体などの電池材料、電磁波シールド材料、バイメタル熱電対材料など)、医療材料分野(バイオセンサの担体、バイオメディカル材料、医療用MEMS、医療用マイクロロボット、再生医療材料など。)などの分野に広く用いることができる。
【0040】
なお、本発明の「複合ナノ繊維」、「複合ナノ繊維からなる不織布」及び「複合ナノ繊維からなる糸」は、上記したように、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などの優れた特性を有するものであるが、これら優れた特性のうち少なくとも1つ(例えば高い触媒担持能)を備えているものは、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】実施形態1における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
【図3】実施形態3における撚り糸工程を説明するために示す模式図である。
【図4】実施例における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
【図5】実施例におけるフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析の結果を示すグラフである。
【図6】実施例における高分解能透過型電子顕微鏡による像である。
【図7】実施例における熱重量分析の結果を示すグラフである。
【図8】実施例におけるラマン分光法による分析の結果を示すグラフである。
【図9】実施例における広角X線回折の結果を示すグラフである。
【図10】実施例における走査型電子顕微鏡(SEM)による像である。
【図11】実施例における複合ナノ繊維の繊維径を説明するために示すグラフである。
【図12】従来技術におけるナノ繊維及び「ナノ繊維からなる糸」の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明のナノ繊維、ナノ繊維からなる不織布、ナノ繊維からなる糸及びこれらの製造方法を、実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0043】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、実施形態1における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
【0044】
実施形態1においては、複合ナノ繊維の製造方法及び複合ナノ繊維について説明する。
【0045】
1.原料、触媒及び溶媒
原料として用いるポリマー材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。用途等に応じて最適なものを選択すればよい。
【0046】
原料として用いるMWCNTとしては、種々のMWCNTを用いることができる。MWCNTは、市販のものを用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
【0047】
POSSとしては、以下の式(1)で表されるPOSSを用いる。
【化3】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
実施形態1においては、反応性の基はイソシアネート基からなる。
なお、本発明に用いることができるPOSSは上記のPOSSに限られるものではなく、種々のPOSSを用いることができる。
【0048】
2.器具、装置等
器具、装置等は、汎用の器具、装置等を用いることができる。
【0049】
3.複合ナノ繊維の製造方法
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法は、図1に示すように、POSS修飾MWCNT準備工程と、POSS修飾MWCNT分散液体作製工程と、複合ナノ繊維作製工程とをこの順序で含む。以下、この順番に各工程を説明する。
【0050】
3−1.POSS修飾MWCNT準備工程
POSS修飾MWCNT準備工程は、POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTを準備する工程である。実施形態1におけるPOSS修飾MWCNT準備工程は、酸処理工程とPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含む。
【0051】
(ア)酸処理工程
酸処理工程は、MWCNTに酸処理を施すことにより、MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する工程である。当該酸処理工程により、MWCNTに含まれる不純物(主に製造時に用いる金属触媒の残渣)を除去することも可能である。酸処理に用いる酸としては、例えば、硫酸と硝酸との混酸(硫酸:硝酸=3:1,v/v)を用いることができる。また、必要に応じて加温や超音波処理を併用してもよい。酸処理後のMWCNTにおいては、定法により中和及び乾燥を行うことができる。
【0052】
(イ)POSS修飾MWCNT製造工程
POSS修飾MWCNT製造工程は、MWCNTにおける反応性の官能基と、POSSにおけるイソシアネート基とを反応させることにより、POSS修飾MWCNTを製造する工程である。
反応性の官能基と、イソシアネート基との反応においては、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、有機金属類(有機スズ化合物等)を用いることができる。また、必要に応じて加温や超音波処理を行ってもよい。
【0053】
なお、POSS修飾MWCNT準備工程は、「POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNT」の市販品を購入する等、既に製造済みのPOSS修飾MWCNTを準備することとしてもよい。
【0054】
3−2.POSS修飾MWCNT分散液体作製工程
POSS修飾MWCNT分散液体作製工程は、ポリマー材料溶液からなる液体に、POSS修飾MWCNTを分散させることにより、POSS修飾MWCNT分散液体を作製する工程である。
ポリマー材料溶液に用いる溶媒は、用いるポリマーの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。また、複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。
なお、ポリマー材料溶液からなる液体ではなく、溶融ポリマー材料からなる液体を用いることもできる。
【0055】
3−3.複合ナノ繊維作製工程
複合ナノ繊維作製工程は、POSS修飾MWCNT分散液体から「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を作製する工程である。当該複合ナノ繊維作製工程は、ノズルとコレクターとの間に高電圧(5kV〜50kV)を印加した状態で、POSS修飾MWCNT分散液体をノズルからコレクターに向けて吐出して「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を製造する電界紡糸工程からなる。
【0056】
具体的には、図2のような電界紡糸装置100を用いて電界紡糸工程を行うことができる。図2に示すように、原料タンク102にPOSS修飾MWCNT分散液体10を充填した後に、バルブ104を開けノズル106に溶液を供給可能な状態とし、高圧電源110を用いてノズル106と平板状のコレクター108との間に高電圧を印加することにより複合ナノ繊維12を製造することができる。
なお、本発明における電界紡糸工程は、上記のような電界紡糸装置を用いて行われるものに限られるものではない。例えば、コレクターとして、平板状のコレクターではなく、回転ドラム状のコレクター等を用いることもできる。また、コレクターとノズルとの間に不織布等の基材を移動させながら行うこともできる。
【0057】
以上のような複合ナノ繊維の製造方法により、POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造することができる。実施形態1に係る複合ナノ繊維においては、POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなる。
【化4】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
実施形態1においては、反応性の基はイソシアネート基からなる。
【0058】
次に、実施形態1に係る複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法の効果を説明する。
【0059】
実施形態1に係る複合ナノ繊維は、元来高強度のMWCNTから得られるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。
【0060】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、POSSにより化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、通常のMWCNTの場合と比較してポリマー中での分散性が極めて高くなる。このため、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に均一に分散することが可能となり、また、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することも可能となる。従って、この観点からは、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。
【0061】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い品質(均質性)を有する複合ナノ繊維となる。
【0062】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。
【0063】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、POSS特有の立体障害によりPOSSがMWCNTを完全に覆ってしまうことがないため、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、MWCNTの表面のより多くの割合を露出させることが可能となる。従って、この観点からは、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。
【0064】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維によれば、POSS修飾MWCNT分散液体に対するPOSS修飾MWCNTの濃度が1重量%程度までの範囲においては、POSS修飾MWCNT分散液体の電気伝導度を高めることが可能となり、より一層円滑に電界紡糸を行うことが可能となる。従って、この観点からは、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも、より一層細い繊維径を有するとともに高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する複合ナノ繊維を構成することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造することができる。
【0066】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、反応性の基は、イソシアネート基からなり、POSS修飾MWCNT準備工程は、酸処理工程と、POSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むため、末端にイソシアネート基を有する官能基を有するPOSSを用いて、実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造することができる。
【0067】
[実施形態2]
実施形態2においては、複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法及び複合ナノ繊維からなる不織布について説明する。
【0068】
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程を含む。当該工程については、実施形態1において既に記載したため、詳細は省略する。
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法においては、例えば、電界紡糸装置において実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造すると同時に複合ナノ繊維からなる不織布を製造してもよいし、一度回収した実施形態1に係る複合ナノ繊維を別途圧縮するなどして複合ナノ繊維からなる不織布を製造してもよい。
上記のような方法により、実施形態1に係る複合ナノ繊維からなる「複合ナノ繊維からなる不織布」を製造することができる。
【0069】
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布は、実施形態1に係る複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能を有する「複合ナノ繊維からなる不織布」となる。
【0070】
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する実施形態1に係る複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる不織布を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる不織布」を製造することが可能となる。
【0071】
[実施形態3]
図3は、実施形態3における撚り糸工程を説明するために示す模式図である。
【0072】
実施形態3においては、複合ナノ繊維からなる糸の製造方法及び複合ナノ繊維からなる糸について説明する。
【0073】
実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸の製造方法は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程と、撚り糸工程とをこの順序で含む。以下、この順番で各工程を説明する。
【0074】
1.実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法と同様の方法により、複合ナノ繊維を製造する。当該工程については、実施形態1において既に記載したため、詳細は省略する。
【0075】
2.撚り糸工程
撚り糸工程は、複合ナノ繊維を撚り糸装置内で撚り糸して「複合ナノ繊維からなる糸」を製造する工程である。
実施形態3に係る撚り糸工程においては、具体的には、上記複合ナノ繊維製造工程において製造した複合ナノ繊維を帯状の不織布(複合ナノ繊維からなる不織布)20とし、図3に示すように、当該不織布20を撚り糸装置200内に通過させて「複合ナノ繊維からなる糸」22とする。図3において、符号202で示すのは不織布20を最初に撚り糸とする主撚り糸装置であり、符号204,206で示すのは撚り糸をさらに撚りながら糸送りする糸送り装置である。このとき、糸送り装置204の糸送り速度よりも糸送り装置206の糸送り速度を早くすることにより、不織布20を延伸しながら撚り糸してもよい。
【0076】
撚り糸工程において用いる撚り糸装置は、上記の撚り糸装置以外にも種々の撚り糸装置を用いることができ、目的の「複合ナノ繊維からなる糸」の種類により適宜選択することができる。
【0077】
以上のような複合ナノ繊維からなる糸の製造方法により、実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸を製造することができる。
【0078】
次に、実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸及び複合ナノ繊維からなる糸の製造方法の効果を説明する。
【0079】
実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸は、実施形態1に係る複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」となる。
【0080】
実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する実施形態1に係る複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる糸を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0081】
以下、実施例により本発明の複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに何ら制約されるものではない。
【0082】
[実施例]
図4は、実施例における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
図5は、実施例におけるフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析の結果を示すグラフである。図5中、(a)で示すのは酸処理前のMWCNTにおける結果であり、(b)で示すのは酸処理後のMWCNTにおける結果であり、(c)で示すのはPOSS修飾MWCNTにおける結果である。図5中、縦軸は赤外線の透過率を表し、横軸は波数を表す。
図6は、実施例における高分解能透過型電子顕微鏡による像である。図6(a)は酸処理前のMWCNTの像であり、図6(b)は酸処理後のMWCNTの像であり、図6(c)及び図6(d)はPOSS修飾MWCNTの像である。なお、図6(c)と図6(d)とでは拡大倍率が異なり、図6(d)の方がより高い倍率で拡大した像である。
【0083】
図7は、実施例における熱重量分析の結果を示すグラフである。図7中、(a)で示すのは酸処理前のMWCNTにおける結果であり、(b)で示すのは酸処理後のMWCNTおける結果であり、(c)で示すのはPOSS修飾MWCNTの結果である。図7中、縦軸は相対重量(50℃における重量を100%としたときの重量)を示し、横軸は温度を示す。
図8は、実施例におけるラマン分光法による分析の結果を示すグラフである。図8中、(a)で示すのはPLAのみからなるナノ繊維(PLAナノ繊維)における結果であり、(b)で示すのは酸処理後のMWCNTが、PLAからなるナノ繊維の内部に分散されている複合ナノ繊維(酸処理MWCNT複合ナノ繊維)における結果における結果であり、(c)で示すのは複合ナノ繊維における結果である。図8中、縦軸はラマン散乱強度を表し、横軸は波数を表す。
【0084】
図9は、実施例における広角X線回折の結果を示すグラフである。図9中、(a)に示すのはPLAナノ繊維における結果であり、(b)に示すのは酸処理MWCNT複合ナノ繊維における結果であり、(c)に示すのはPOSS修飾MWCNTを0.1wt%含む複合ナノ繊維における結果であり、(d)に示すのはPOSS修飾MWCNTを0.3wt%含む複合ナノ繊維における結果であり、(e)に示すのはPOSS修飾MWCNTを0.5wt%含む複合ナノ繊維における結果である。
【0085】
図10は、実施例における走査型電子顕微鏡(SEM)による像である。図10(a)はPLAナノ繊維の像であり、図10(b)はPOSS修飾MWCNTを0.1wt%含む複合ナノ繊維の像であり、図10(c)はPOSS修飾MWCNTを0.3wt%含む複合ナノ繊維の像であり、図10(d)はPOSS修飾MWCNTを0.5wt%含む複合ナノ繊維の像である。
図11は、実施例における複合ナノ繊維の繊維径を説明するために示すグラフである。図11においては、縦軸はナノ繊維(複合ナノ繊維、酸処理MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維)の繊維径を示し、横軸は含有するPOSS修飾MWCNT又は酸処理後のMWCNTの量を示す。また、四角印(■)は複合ナノ繊維を表し、三角印(▲)は酸処理MWCNT複合ナノ繊維を表し、丸印(●)はPLAナノ繊維を表す。
【0086】
1.原料、触媒及び溶媒
ポリマー材料としては、ポリ乳酸(以下、PLAと表記する。)を用いた、PLAは、ベーリンガーインゲルハイム社のRESOMER(ベーリンガーインゲルハイム社の登録商標)L210Sを用いた。
また、MWCNTとしては、信州大学工学部電気電子工学科の遠藤グループより入手したMWCNT(純度が95%、直径が20nm〜70nm、アスペクト比(MWCNTの長さをMWCNTの直径で割った数値)が100以上のもの)を用いた。
また、POSSとして、Isocyanatopropyldimethylsilylcyclohexyl-polyhedral oligomeric silsesquioxane(以下の式(2)参照。トーメンプラスチック社より購入。)を用いた。なお、式(2)に示すように、当該POSSは、末端部にイソシアネート基を有する官能基を有する。
【化5】
【0087】
また、MWCNTにおける反応性の官能基(ヒドロキシ基又はカルボキシル基)と、POSSにおけるイソシアネート基とを反応させるための触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(以下、DBTDLと表記する。アルドリッチ社より購入。)は、純度が95%のものを用いた。
また、MWCNTにおける反応性の官能基(ヒドロキシ基又はカルボキシル基)と、POSSにおけるイソシアネート基とを反応させる際に用いる溶媒としてのテトラヒドロフラン(以下、THFと表記する。)は、事前に水素化カルシウムにより乾燥し、また、蒸留を行ったものを用いた。
また、ポリマー材料溶液を作製する際の溶媒としてのジクロロメタン(以下、MCと表記する。)及びジメチルホルムアミド(以下、DMFと表記する。)については、購入したものをそのまま用いた。
【0088】
2.器具、装置及び分析方法
各工程は、明細書中に特に記載がない場合には、汎用の実験器具及び実験装置を用いて行った。
電界紡糸工程における高圧電源としては、チュンパEMT社のCPS−60 K022V1を用いた。
ラマン分光法による分析は、カイザーオプティカルシステムズ社のHololab5000及び波長532nmのアルゴンレーザーを用いて行った。
フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のTHERMO NICOLET AVATAR 370を用いて行った。スペクトルは、範囲は600cm−1〜4000cm−1、分解能は4cm−1で測定した。
走査型電子顕微鏡(SEMともいう。)による観察は、キーエンス社のVE−8800を用いた。
【0089】
広角X線回折(WAXDともいう。)による分析は、リガク社のRotaflex RTP300を用いて行った。温度は室温であり、50kV、200mAで分析を行った。X線としては、ニッケルでフィルターしたCuKα線を用い、5°<2θ<50°の範囲で分析を行った。
熱重量分析は、リガク社のThermo Plus 2 TG−8120を用いて行った。当該分析は、窒素を20mL/分の割合でパージしつつ、50℃〜800℃の範囲で行った。なお、加熱は20℃/分の割合で行った。
高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEMともいう。)は、日本電子株式会社のJEM−2010FEFを用いた。なお、当該高分解能透過型電子顕微鏡には、オメガフィルター、ガタン社のマルチスキャンカメラ及びオックスフォードインスツルメンツ社のエネルギー分散型X線分析装置を取り付けて分析を行った。加速電圧は200kVとした。
【0090】
3.複合ナノ繊維の製造方法
3−1.POSS修飾MWCNT準備工程
POSS修飾MWCNT準備工程は、(ア)酸処理工程と、(イ)POSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含む。以下、各工程を順に説明する。
【0091】
(ア)酸処理工程
まず、MWCNT0.25gを、硫酸75mlと硝酸25mlとの混酸(つまり、硫酸:硝酸=3:1,v/v)中で、超音波処理を行いながら55℃で9時間に渡って反応させた。反応後、pHが中性を示すようになるまでMWCNTを蒸留水で洗浄し(4回洗浄を行った。)、減圧により乾燥した。酸処理後のMWCNTの重量は0.173%であり、収率は69.2%であった。
【0092】
(イ)POSS修飾MWCNT製造工程
まず、超音波処理(10分)により、上記酸処理工程後のMWCNT0.075gをTHF50mlに分散させ、三つ首フラスコに導入した。その後に、0.225gのPOSS、2滴のDBTDL及び1mlのTHFからなる混合物を、シリンジを用いて三つ首フラスコ内にゆっくり滴下した。反応物を80℃で5時間反応させた後に、さらに90℃で1時間反応させた。その後、過剰のTHFを加え、さらにTHFで数回洗浄してDBTDL及び未反応のPOSSを除去した。残渣を減圧下で乾燥し、式(3)に示すようなPOSS修飾MWCNTを得た。なお、式(3)は模式図であり、分析によって確かめられた構造そのものを示すものではない。
【化6】
【0093】
製造したPOSS修飾MWCNTは、MC:DMF=7:3(w/w)のMC/DMF混合溶媒からなる保存液に浸して保存した。当該保存液は、後述するMC/DMF混合溶媒と同質のものである。
【0094】
3−2.POSS修飾MWCNT分散液体作製工程
まず、所定量のPLAをMC/DMF混合溶媒(MC:DMF=7:3、w/w)に溶解させ、ポリマー材料溶液からなる液体を準備した。その後に、所定量のPOSS修飾MWCNTを保存液と共に導入してPOSS修飾MWCNTを分散させ、POSS修飾MWCNT分散液体を作製した。
PLAは、最終的なPOSS修飾MWCNT分散液体の重量に対して3wt%となるように重量を決定した。
POSS修飾MWCNTについては、最終的なPOSS修飾MWCNT分散液体の重量に対して0.1wt%、0.3wt%又は0.5wt%となるように重量を決定し、3種類のPOSS修飾MWCNT分散液体を作製した。
【0095】
具体的には、POSS修飾MWCNTを0.1wt%含むPOSS修飾MWCNT分散液体は、0.15gのPLA、4.5gのMC/DMF混合溶媒、0.005gのPOSS修飾MWCNT及び0.5gの保存液を用いて作製した。
また、POSS修飾MWCNTを0.3wt%含むPOSS修飾MWCNT分散液体は、0.15gのPLA、3.5gのMC/DMF混合溶媒、0.015gのPOSS修飾MWCNT及び1.5gの保存液を用いて作製した。
また、POSS修飾MWCNTを0.5wt%含むPOSS修飾MWCNT分散液体は、0.15gのPLA、2.5gのMC/DMF混合溶媒、0.025gのPOSS修飾MWCNT及び2.5gの保存液を用いて作製した。
【0096】
3−3.電界紡糸工程
当該電界紡糸工程は、図4に示すような電界紡糸装置300を用いて行った。まず、ノズル306に接続されたプラスチックシリンジ302にPOSS修飾MWCNT分散液体30を充填し、当該液体30をノズル306に供給可能な状態とした。高圧電源310の正極側に接続された銅線312をPOSS修飾MWCNT分散液体30に挿入するとともに、金属からなるコレクター308を高圧電源310の負極側に接続した。ノズル306とコレクター308との距離Lを15cmに設定し、プラスチックシリンジ302の角度を水平から10°傾けた上で、12kVの電圧を印加し、ノズル306とコレクター308との間に生じる電界により複合ナノ繊維32をコレクター308に堆積させ、複合ナノ繊維を製造した。
【0097】
4.POSS修飾MWCNT及び複合ナノ繊維の分析
4−1.POSS修飾MWCNTの分析
上記「3−1.POSS修飾MWCNT準備工程」において準備したPOSS修飾MWCNTについて、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析を行った。図5(c)に示すように、1700cm−1と1570cm−1とに、それぞれ弱いカルボニル(−C=O)とアミン(−NH)の吸収帯が検出された。また、1570cm−1においては、アミド結合におけるN−H結合の変角振動の吸収帯と、C−N結合の伸縮振動の吸収帯とが複合した、広く弱い吸収帯も検出された。上記の結果から、POSSがウレタン結合によりMWCNTを修飾していることが確認された。
【0098】
さらに、上記と同様のPOSS修飾MWCNTについて、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)による分析を行った。
酸処理前のMWCNTの表面は、図6(a)に示すように、比較的滑らかで付着物もなかった。酸処理後のMWCNTの表面は、図6(b)に示すように、荒れはあるものの付着物は見られなかった。一方、POSS修飾MWCNTの表面においては、図6(c)及び図6(d)に示すように、結合したPOSSと思われる付着物が見られた。
【0099】
さらに、上記と同様のPOSS修飾MWCNTについて、熱重量分析による分析を行った。
図7に示すように、酸処理後のMWCNTは、外表面にカルボキシル基等が存在するために、酸処理前のMWCNTより早く分解した。POSS修飾MWCNTは、800℃においておよそ14wt%の重量減少が発生した。これは、POSS上のアルキル基の分解によるものと考えられる。
【0100】
4−2.複合ナノ繊維の分析
当該複合ナノ繊維の分析においては、比較のために「酸処理後のMWCNTが、PLAからなるナノ繊維の内部に分散されている複合ナノ繊維」(酸処理MWCNT複合ナノ繊維)と、「PLAのみからなるPLAナノ繊維」(PLAナノ繊維)とについても分析を行った。
【0101】
酸処理MWCNT複合ナノ繊維は、上記「3.複合ナノ繊維の製造方法」における「3−1.POSS修飾MWCNT準備工程」の「(ア)酸処理工程」で得られた酸処理後のMWCNTを用いて製造した。具体的には、0.15gのPLA、4.875gのMC/DMF混合溶媒、0.005gの酸処理後のMWCNT及び0.125gの保存液を用いて酸処理後のMWCNTを0.1wt%含む酸処理MWCNT分散液体を作製し、その後、上記「3−3.電界紡糸工程」と同様の工程を当該液体に適用することにより、酸処理MWCNT複合ナノ繊維を製造した。
【0102】
また、PLAナノ繊維は、POSS修飾MWCNTを用いずに電界紡糸を行うことにより製造した。具体的には、0.15gのPLA及び5gのMC/DMF混合溶媒を用いてポリマー材料溶液を作製し、その後、上記「3−3.電界紡糸工程」と同様の工程を当該溶液に適用することにより、PLAナノ繊維を製造した。
【0103】
上記「3.複合ナノ繊維の製造方法」において製造した複合ナノ繊維並びに酸処理MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維について、ラマン分光法による分析を行った。
図8(c)に示すように、当該複合ナノ繊維からは、POSS修飾MWCNT由来のピーク(1700cm−1(グラファイトGバンド)及び1570cm−1(グラファイトDバンド))とPLA由来のピーク(図8(a)参照。)とがそれぞれ検出された。
これにより、POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されていることが確認できた。
【0104】
上記と同様の複合ナノ繊維並びに酸処理MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維について、広角X線回折(WAXD)による分析を行った。
【0105】
図9に示すように、POSS修飾MWCNTの量が増えるに従って、PLAに特徴的なピーク(特に2θ=16°近辺)が変化した。これはPOSS修飾MWCNTがPLAの結晶構造を乱すためであると考えられる。また、酸処理MWCNT複合ナノ繊維においては、グラファイトに特徴的なピーク(2θ=26°近辺)が強く検出された。複合ナノ繊維においては、0.3wt%以上の濃度の場合には、PLA中で結晶として存在できることが確認された(2θ=7°〜8°近辺、破線丸印参照。)。
【0106】
また、上記と同様の複合ナノ繊維、MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維について走査型電子顕微鏡(SEM)による分析を行った。
図10に示すように、実施例において製造したいずれの複合ナノ繊維においても、PLAナノ繊維と同様の外観を有することが確認できた。これは、複合ナノ繊維の均一性が高いことを示している。
また、操作型電子顕微鏡により得られた像から複合ナノ繊維、MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維の繊維径を測定した。その結果、図11に示すように、複合ナノ繊維に含まれるPOSS修飾MWCNTの含有量が増えるに従って、複合ナノ繊維の繊維径が少しずつ細くなることが確認できた。これは、POSS修飾MWCNTの導電性に起因すると考えられる。
【0107】
以上、実施例にて説明したように、本発明の「複合ナノ繊維」である「POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」が「実際に製造されていること」及び「上記のような特性を示すこと」が明らかとなった。
【0108】
以上、本発明を上記の実施形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0109】
(1)上記各実施形態及び実施例においては、POSSとして、末端にイソシアネート基を有する官能基を有するPOSSを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、末端にアミノ基を有する官能基その他の官能基を有するPOSSを用いることもできる。この場合、末端にアミノ基を有する官能基を有するPOSSを用いる場合には、MWCNTに酸処理を施すことにより、MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、ハロゲン化剤により、MWCNTにおける反応性の官能基の全部又は一部をハロゲン化してハロゲン化された官能基を生成するハロゲン化工程と、MWCNTにおけるハロゲン化された官能基と、POSSにおける前記アミノ基とを反応させることにより、POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で実施する。このような方法とすることにより、末端にアミノ基を有する官能基を有するPOSSを用いて、POSS修飾MWCNTを製造することができる。
【符号の説明】
【0110】
10,30…POSS修飾MWCNT分散液体、12,32…複合ナノ繊維、20…不織布、22…複合ナノ繊維からなる糸、100,300…電界紡糸装置、102…原料タンク、104…バルブ、106,306…ノズル、108,308…コレクター、110,310…高圧電源、200…撚り糸装置、202…主撚り糸装置、204,206…糸送り装置、302…プラスチックシリンジ、312…銅線
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ナノ繊維に関する。なお、本発明において、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均直径が1000nm程度又はそれ以下の繊維のことをいう。また、「複合ナノ繊維」とは、ポリマー材料以外の成分を含むナノ繊維をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー材料のみからなるナノ繊維、当該ナノ繊維からなる不織布、当該ナノ繊維からなる糸及びこれらの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の「ナノ繊維」は、ポリマー材料のみからなるナノ繊維である。また、特許文献1に記載の「ナノ繊維からなる不織布」は、上記したナノ繊維からなるものである。また、特許文献1に記載の「ナノ繊維からなる糸」は、上記したナノ繊維を撚り糸して糸としたものである。図12は、特許文献1に記載のナノ繊維、ナノ繊維からなる不織布及びナノ繊維からなる糸を製造するための製造装置を示す図である。特許文献1に記載の「ナノ繊維」及び「ナノ繊維からなる不織布」は、図12に示すように、電界紡糸装置(図12左側に図示)におけるノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態で、ポリマー材料溶液からなる液体をノズルからコレクターに向けて吐出する電界紡糸法(エレクトロスピニング法ということもある。)によって製造することができる。また、特許文献1に記載の「ナノ繊維からなる糸」は、図12に示すように、電界紡糸法によって製造した「ナノ繊維からなる不織布」を撚り糸装置(図12右側に図示)内で撚り糸することにより製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−518891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、繊維の技術分野においては、常に、従来の繊維よりも高い機械的強度(例えば引っ張り強度)を有する繊維及びこのような繊維の製造方法が求められている。これは、ナノ繊維の技術分野においても同様であり、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有するナノ繊維及びこのようなナノ繊維の製造方法が求められている。また、「ナノ繊維からなる不織布」の技術分野においても同様であり、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」及びこのような「ナノ繊維からなる不織布」を製造可能な「ナノ繊維からなる不織布」の製造方法が求められている。さらにまた、「ナノ繊維からなる糸」の技術分野においても同様であり、従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」及びこのような「ナノ繊維からなる糸」を製造可能な「ナノ繊維からなる糸」の製造方法が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有するナノ繊維を提供することを目的とする。また、上記のようなナノ繊維からなり、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」を提供することを目的とする。また、従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」を提供することを目的とする。さらにまた、従来の「ナノ繊維」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維」を製造可能な「ナノ繊維」の製造方法、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」を製造可能な「ナノ繊維からなる不織布」の製造方法及び従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」を製造可能な「ナノ繊維からなる糸」の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ナノ繊維を構成するポリマー材料中に、かご状のシルセスキオキサン(POSS)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(POSS修飾MWCNT)を分散させることにより、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有するナノ繊維、従来の「ナノ繊維からなる不織布」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる不織布」及び従来の「ナノ繊維からなる糸」よりも高い機械的強度を有する「ナノ繊維からなる糸」が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、上記のようなナノ繊維は、ポリマー材料以外の成分(かご状のシルセスキオキサンにより化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ)を含むものであるため、複合ナノ繊維ということにする。
【0007】
[1]本発明の「複合ナノ繊維」は、かご状のシルセスキオキサン(以下、POSSという。)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという。)であるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の複合ナノ繊維は、元来高強度のMWCNTから得られるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。また、本発明の複合ナノ繊維は、POSSにより化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、通常のMWCNTの場合と比較してポリマー中での分散性が極めて高くなる。このため、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に均一に分散することが可能となり、また、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することも可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。
【0009】
また、本発明の複合ナノ繊維は、上記したように、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に均一に分散することが可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い品質(均質性)を有する複合ナノ繊維となる。
【0010】
また、本発明の複合ナノ繊維は、上記したように、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することが可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。なお、本発明の複合ナノ繊維は、POSS特有の立体障害によりPOSSがMWCNTを完全に覆ってしまうことがないため、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、MWCNTの表面のより多くの割合を露出させることが可能となる。従って、この観点からは、本発明の複合ナノ繊維は、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。
【0011】
さらにまた、本発明の複合ナノ繊維によれば、上記したように、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することが可能となる。このため、POSS修飾MWCNT分散液体に対するPOSS修飾MWCNTの濃度が1重量%程度までの範囲においては、POSS修飾MWCNT分散液体の電気伝導度を高めることが可能となり、より一層円滑に電界紡糸を行うことが可能となる。従って、この観点からは、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも、より一層細い繊維径を有するとともに高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する複合ナノ繊維を構成することが可能となる。このことは後述する実施例からも裏付けられている。
【0012】
なお、「POSS」という名称は、英語で「かご状(多角形状)のシルセスキオキサン」を表す「Polyhedral Oligometric Silsesquioxanes」を略した名称である。
【0013】
[2]本発明の複合ナノ繊維においては、前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることが好ましい。
【化1】
(但し、式(1)中、「R」はアルキル基を示し、「R’」は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【0014】
本発明の複合ナノ繊維においては、上記のPOSSを好適に用いることができる。
【0015】
なお、式(1)における「R」としては、直鎖のもの、分枝を有するもの、環状構造を有するもの等各種のアルキル基を用いることができる。また、式(1)における「R’」としても、直鎖のもの、分枝を有するもの、環状構造を有するもの等各種の官能基を用いることができる。後述する[7]においても同様である。
【0016】
[3]本発明の複合ナノ繊維からなる不織布は、本発明の複合ナノ繊維からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の複合ナノ繊維からなる不織布は、本発明の複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる不織布」となる。
【0018】
[4]本発明の複合ナノ繊維からなる糸は、本発明の複合ナノ繊維からなることを特徴とする。
【0019】
本発明の複合ナノ繊維からなる糸は、本発明の複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」となる。
【0020】
[5]本発明の複合ナノ繊維の製造方法は、POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTを準備するPOSS修飾MWCNT準備工程と、ポリマー材料溶液又は溶融ポリマー材料からなる液体に、前記POSS修飾MWCNTを分散させることにより、POSS修飾MWCNT分散液体を作製するPOSS修飾MWCNT分散液体作製工程と、前記POSS修飾MWCNT分散液体から「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を作製する複合ナノ繊維作製工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の複合ナノ繊維の製造方法によれば、後述する実施例からも分かるように、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0022】
なお、本明細書においては、「ポリマー材料溶液」とは、ナノ繊維の材料であるポリマー材料を溶媒に溶解させたもののことをいう。また、「溶融ポリマー材料」とは、ポリマー材料を加熱により融解させたもののことをいう。このうち、POSS修飾MWCNT分散液体作製工程に用いる「液体」としては、粘度を低くし易い「ポリマー材料溶液」を用いることがより好ましい。
【0023】
[6]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記複合ナノ繊維作製工程は、ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態で、前記POSS修飾MWCNT分散液体を前記ノズルから前記コレクターに向けて吐出して「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を製造する電界紡糸工程からなることが好ましい。
【0024】
このような方法とすることにより、後述する実施例からも分かるように、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0025】
[7]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることが好ましい。
【化2】
(但し、式(1)中、「R」はアルキル基を示し、「R’」は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【0026】
本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、上記のPOSSを好適に用いることができる。
【0027】
[8]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記反応性の基は、イソシアネート基からなり、前記POSS修飾MWCNT準備工程は、MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、前記MWCNTにおける前記反応性の官能基と、前記POSSにおける前記イソシアネート基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0028】
このような方法とすることにより、末端にイソシアネート基を有する官能基を有するPOSSを用いて、本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0029】
[9]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記反応性の基は、アミノ基からなり、前記POSS修飾MWCNT準備工程は、MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、ハロゲン化剤により、前記MWCNTにおける前記反応性の官能基の全部又は一部をハロゲン化してハロゲン化された官能基を生成するハロゲン化工程と、前記MWCNTにおける前記ハロゲン化された官能基と、前記POSSにおける前記アミノ基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0030】
このような方法とすることにより、末端にアミノ基を有する官能基を有するPOSSを用いて、本発明の複合ナノ繊維を製造することができる。
【0031】
なお、ハロゲンとしては、塩素を好適に用いることができる。この場合においては、ハロゲン化剤として塩化チオニル(SOCl2)を用いることが好ましい。
【0032】
上記[8]又は[9]に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、反応性の官能基とは、例えば、カルボキシル基(−COOH)やヒドロキシ基(−OH)である。
【0033】
上記[8]又は[9]に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、POSS修飾MWCNT製造工程においては、反応を促進させるための触媒を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の複合ナノ繊維の製造方法において、反応性の基は、上記した、イソシアネート基又はアミノ基の他、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、イミド基、ニトリル基、オレフィン基その他の反応性の基を用いることができる。
【0035】
[10]本発明の複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法は、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明の複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる不織布を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる不織布」を製造することが可能となる。
【0037】
[8]本発明の複合ナノ繊維からなる糸の製造方法は、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程と、前記複合ナノ繊維を撚り糸装置内で撚り糸して複合ナノ繊維からなる糸を製造する撚り糸工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0038】
本発明の複合ナノ繊維からなる糸の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する本発明の複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる糸を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0039】
本発明の「複合ナノ繊維」、「複合ナノ繊維からなる不織布」及び「複合ナノ繊維からなる糸」は、上記したように、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などの優れた特性を有するため、衣料分野をはじめ各種電子・機械材料分野(半導体材料、OLED材料、LED材料、ナノ化学センサー材料、MEMS材料、FED材料、燃料電池用触媒の担体などの電池材料、電磁波シールド材料、バイメタル熱電対材料など)、医療材料分野(バイオセンサの担体、バイオメディカル材料、医療用MEMS、医療用マイクロロボット、再生医療材料など。)などの分野に広く用いることができる。
【0040】
なお、本発明の「複合ナノ繊維」、「複合ナノ繊維からなる不織布」及び「複合ナノ繊維からなる糸」は、上記したように、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などの優れた特性を有するものであるが、これら優れた特性のうち少なくとも1つ(例えば高い触媒担持能)を備えているものは、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】実施形態1における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
【図3】実施形態3における撚り糸工程を説明するために示す模式図である。
【図4】実施例における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
【図5】実施例におけるフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析の結果を示すグラフである。
【図6】実施例における高分解能透過型電子顕微鏡による像である。
【図7】実施例における熱重量分析の結果を示すグラフである。
【図8】実施例におけるラマン分光法による分析の結果を示すグラフである。
【図9】実施例における広角X線回折の結果を示すグラフである。
【図10】実施例における走査型電子顕微鏡(SEM)による像である。
【図11】実施例における複合ナノ繊維の繊維径を説明するために示すグラフである。
【図12】従来技術におけるナノ繊維及び「ナノ繊維からなる糸」の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明のナノ繊維、ナノ繊維からなる不織布、ナノ繊維からなる糸及びこれらの製造方法を、実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【0043】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、実施形態1における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
【0044】
実施形態1においては、複合ナノ繊維の製造方法及び複合ナノ繊維について説明する。
【0045】
1.原料、触媒及び溶媒
原料として用いるポリマー材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。用途等に応じて最適なものを選択すればよい。
【0046】
原料として用いるMWCNTとしては、種々のMWCNTを用いることができる。MWCNTは、市販のものを用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
【0047】
POSSとしては、以下の式(1)で表されるPOSSを用いる。
【化3】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
実施形態1においては、反応性の基はイソシアネート基からなる。
なお、本発明に用いることができるPOSSは上記のPOSSに限られるものではなく、種々のPOSSを用いることができる。
【0048】
2.器具、装置等
器具、装置等は、汎用の器具、装置等を用いることができる。
【0049】
3.複合ナノ繊維の製造方法
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法は、図1に示すように、POSS修飾MWCNT準備工程と、POSS修飾MWCNT分散液体作製工程と、複合ナノ繊維作製工程とをこの順序で含む。以下、この順番に各工程を説明する。
【0050】
3−1.POSS修飾MWCNT準備工程
POSS修飾MWCNT準備工程は、POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTを準備する工程である。実施形態1におけるPOSS修飾MWCNT準備工程は、酸処理工程とPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含む。
【0051】
(ア)酸処理工程
酸処理工程は、MWCNTに酸処理を施すことにより、MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する工程である。当該酸処理工程により、MWCNTに含まれる不純物(主に製造時に用いる金属触媒の残渣)を除去することも可能である。酸処理に用いる酸としては、例えば、硫酸と硝酸との混酸(硫酸:硝酸=3:1,v/v)を用いることができる。また、必要に応じて加温や超音波処理を併用してもよい。酸処理後のMWCNTにおいては、定法により中和及び乾燥を行うことができる。
【0052】
(イ)POSS修飾MWCNT製造工程
POSS修飾MWCNT製造工程は、MWCNTにおける反応性の官能基と、POSSにおけるイソシアネート基とを反応させることにより、POSS修飾MWCNTを製造する工程である。
反応性の官能基と、イソシアネート基との反応においては、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、有機金属類(有機スズ化合物等)を用いることができる。また、必要に応じて加温や超音波処理を行ってもよい。
【0053】
なお、POSS修飾MWCNT準備工程は、「POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNT」の市販品を購入する等、既に製造済みのPOSS修飾MWCNTを準備することとしてもよい。
【0054】
3−2.POSS修飾MWCNT分散液体作製工程
POSS修飾MWCNT分散液体作製工程は、ポリマー材料溶液からなる液体に、POSS修飾MWCNTを分散させることにより、POSS修飾MWCNT分散液体を作製する工程である。
ポリマー材料溶液に用いる溶媒は、用いるポリマーの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。また、複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。
なお、ポリマー材料溶液からなる液体ではなく、溶融ポリマー材料からなる液体を用いることもできる。
【0055】
3−3.複合ナノ繊維作製工程
複合ナノ繊維作製工程は、POSS修飾MWCNT分散液体から「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を作製する工程である。当該複合ナノ繊維作製工程は、ノズルとコレクターとの間に高電圧(5kV〜50kV)を印加した状態で、POSS修飾MWCNT分散液体をノズルからコレクターに向けて吐出して「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を製造する電界紡糸工程からなる。
【0056】
具体的には、図2のような電界紡糸装置100を用いて電界紡糸工程を行うことができる。図2に示すように、原料タンク102にPOSS修飾MWCNT分散液体10を充填した後に、バルブ104を開けノズル106に溶液を供給可能な状態とし、高圧電源110を用いてノズル106と平板状のコレクター108との間に高電圧を印加することにより複合ナノ繊維12を製造することができる。
なお、本発明における電界紡糸工程は、上記のような電界紡糸装置を用いて行われるものに限られるものではない。例えば、コレクターとして、平板状のコレクターではなく、回転ドラム状のコレクター等を用いることもできる。また、コレクターとノズルとの間に不織布等の基材を移動させながら行うこともできる。
【0057】
以上のような複合ナノ繊維の製造方法により、POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造することができる。実施形態1に係る複合ナノ繊維においては、POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなる。
【化4】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
実施形態1においては、反応性の基はイソシアネート基からなる。
【0058】
次に、実施形態1に係る複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法の効果を説明する。
【0059】
実施形態1に係る複合ナノ繊維は、元来高強度のMWCNTから得られるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、従来のナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。
【0060】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、POSSにより化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなるものであるため、通常のMWCNTの場合と比較してポリマー中での分散性が極めて高くなる。このため、本発明の複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に均一に分散することが可能となり、また、POSS修飾MWCNTをナノ繊維中に多量に分散することも可能となる。従って、この観点からは、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い機械的強度を有する複合ナノ繊維となる。
【0061】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い品質(均質性)を有する複合ナノ繊維となる。
【0062】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。
【0063】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、POSS特有の立体障害によりPOSSがMWCNTを完全に覆ってしまうことがないため、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維と比較して、MWCNTの表面のより多くの割合を露出させることが可能となる。従って、この観点からは、実施形態1に係る複合ナノ繊維は、グラフト重合等により通常の有機基が化学的に修飾されたMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも高い導電性及び高い熱伝導性を有する複合ナノ繊維となる。
【0064】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維によれば、POSS修飾MWCNT分散液体に対するPOSS修飾MWCNTの濃度が1重量%程度までの範囲においては、POSS修飾MWCNT分散液体の電気伝導度を高めることが可能となり、より一層円滑に電界紡糸を行うことが可能となる。従って、この観点からは、通常のMWCNTがナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維よりも、より一層細い繊維径を有するとともに高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する複合ナノ繊維を構成することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造することができる。
【0066】
また、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、反応性の基は、イソシアネート基からなり、POSS修飾MWCNT準備工程は、酸処理工程と、POSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むため、末端にイソシアネート基を有する官能基を有するPOSSを用いて、実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造することができる。
【0067】
[実施形態2]
実施形態2においては、複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法及び複合ナノ繊維からなる不織布について説明する。
【0068】
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程を含む。当該工程については、実施形態1において既に記載したため、詳細は省略する。
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法においては、例えば、電界紡糸装置において実施形態1に係る複合ナノ繊維を製造すると同時に複合ナノ繊維からなる不織布を製造してもよいし、一度回収した実施形態1に係る複合ナノ繊維を別途圧縮するなどして複合ナノ繊維からなる不織布を製造してもよい。
上記のような方法により、実施形態1に係る複合ナノ繊維からなる「複合ナノ繊維からなる不織布」を製造することができる。
【0069】
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布は、実施形態1に係る複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能を有する「複合ナノ繊維からなる不織布」となる。
【0070】
実施形態2に係る複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する実施形態1に係る複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる不織布を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる不織布」を製造することが可能となる。
【0071】
[実施形態3]
図3は、実施形態3における撚り糸工程を説明するために示す模式図である。
【0072】
実施形態3においては、複合ナノ繊維からなる糸の製造方法及び複合ナノ繊維からなる糸について説明する。
【0073】
実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸の製造方法は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程と、撚り糸工程とをこの順序で含む。以下、この順番で各工程を説明する。
【0074】
1.実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法と同様の方法により、複合ナノ繊維を製造する。当該工程については、実施形態1において既に記載したため、詳細は省略する。
【0075】
2.撚り糸工程
撚り糸工程は、複合ナノ繊維を撚り糸装置内で撚り糸して「複合ナノ繊維からなる糸」を製造する工程である。
実施形態3に係る撚り糸工程においては、具体的には、上記複合ナノ繊維製造工程において製造した複合ナノ繊維を帯状の不織布(複合ナノ繊維からなる不織布)20とし、図3に示すように、当該不織布20を撚り糸装置200内に通過させて「複合ナノ繊維からなる糸」22とする。図3において、符号202で示すのは不織布20を最初に撚り糸とする主撚り糸装置であり、符号204,206で示すのは撚り糸をさらに撚りながら糸送りする糸送り装置である。このとき、糸送り装置204の糸送り速度よりも糸送り装置206の糸送り速度を早くすることにより、不織布20を延伸しながら撚り糸してもよい。
【0076】
撚り糸工程において用いる撚り糸装置は、上記の撚り糸装置以外にも種々の撚り糸装置を用いることができ、目的の「複合ナノ繊維からなる糸」の種類により適宜選択することができる。
【0077】
以上のような複合ナノ繊維からなる糸の製造方法により、実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸を製造することができる。
【0078】
次に、実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸及び複合ナノ繊維からなる糸の製造方法の効果を説明する。
【0079】
実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸は、実施形態1に係る複合ナノ繊維からなるものであるため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」となる。
【0080】
実施形態3に係る複合ナノ繊維からなる糸の製造方法によれば、上記した特徴(高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、細い繊維径、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能など。)を有する実施形態1に係る複合ナノ繊維を用いて複合ナノ繊維からなる糸を製造することとしているため、高い機械的強度、高い品質(均質性)、高い導電性、高い熱伝導性、高い防水性、しなやかな特性、大きい比表面積、高い物質担持能、高い触媒担持能などを有する「複合ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0081】
以下、実施例により本発明の複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに何ら制約されるものではない。
【0082】
[実施例]
図4は、実施例における電界紡糸工程を説明するために示す模式図である。
図5は、実施例におけるフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析の結果を示すグラフである。図5中、(a)で示すのは酸処理前のMWCNTにおける結果であり、(b)で示すのは酸処理後のMWCNTにおける結果であり、(c)で示すのはPOSS修飾MWCNTにおける結果である。図5中、縦軸は赤外線の透過率を表し、横軸は波数を表す。
図6は、実施例における高分解能透過型電子顕微鏡による像である。図6(a)は酸処理前のMWCNTの像であり、図6(b)は酸処理後のMWCNTの像であり、図6(c)及び図6(d)はPOSS修飾MWCNTの像である。なお、図6(c)と図6(d)とでは拡大倍率が異なり、図6(d)の方がより高い倍率で拡大した像である。
【0083】
図7は、実施例における熱重量分析の結果を示すグラフである。図7中、(a)で示すのは酸処理前のMWCNTにおける結果であり、(b)で示すのは酸処理後のMWCNTおける結果であり、(c)で示すのはPOSS修飾MWCNTの結果である。図7中、縦軸は相対重量(50℃における重量を100%としたときの重量)を示し、横軸は温度を示す。
図8は、実施例におけるラマン分光法による分析の結果を示すグラフである。図8中、(a)で示すのはPLAのみからなるナノ繊維(PLAナノ繊維)における結果であり、(b)で示すのは酸処理後のMWCNTが、PLAからなるナノ繊維の内部に分散されている複合ナノ繊維(酸処理MWCNT複合ナノ繊維)における結果における結果であり、(c)で示すのは複合ナノ繊維における結果である。図8中、縦軸はラマン散乱強度を表し、横軸は波数を表す。
【0084】
図9は、実施例における広角X線回折の結果を示すグラフである。図9中、(a)に示すのはPLAナノ繊維における結果であり、(b)に示すのは酸処理MWCNT複合ナノ繊維における結果であり、(c)に示すのはPOSS修飾MWCNTを0.1wt%含む複合ナノ繊維における結果であり、(d)に示すのはPOSS修飾MWCNTを0.3wt%含む複合ナノ繊維における結果であり、(e)に示すのはPOSS修飾MWCNTを0.5wt%含む複合ナノ繊維における結果である。
【0085】
図10は、実施例における走査型電子顕微鏡(SEM)による像である。図10(a)はPLAナノ繊維の像であり、図10(b)はPOSS修飾MWCNTを0.1wt%含む複合ナノ繊維の像であり、図10(c)はPOSS修飾MWCNTを0.3wt%含む複合ナノ繊維の像であり、図10(d)はPOSS修飾MWCNTを0.5wt%含む複合ナノ繊維の像である。
図11は、実施例における複合ナノ繊維の繊維径を説明するために示すグラフである。図11においては、縦軸はナノ繊維(複合ナノ繊維、酸処理MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維)の繊維径を示し、横軸は含有するPOSS修飾MWCNT又は酸処理後のMWCNTの量を示す。また、四角印(■)は複合ナノ繊維を表し、三角印(▲)は酸処理MWCNT複合ナノ繊維を表し、丸印(●)はPLAナノ繊維を表す。
【0086】
1.原料、触媒及び溶媒
ポリマー材料としては、ポリ乳酸(以下、PLAと表記する。)を用いた、PLAは、ベーリンガーインゲルハイム社のRESOMER(ベーリンガーインゲルハイム社の登録商標)L210Sを用いた。
また、MWCNTとしては、信州大学工学部電気電子工学科の遠藤グループより入手したMWCNT(純度が95%、直径が20nm〜70nm、アスペクト比(MWCNTの長さをMWCNTの直径で割った数値)が100以上のもの)を用いた。
また、POSSとして、Isocyanatopropyldimethylsilylcyclohexyl-polyhedral oligomeric silsesquioxane(以下の式(2)参照。トーメンプラスチック社より購入。)を用いた。なお、式(2)に示すように、当該POSSは、末端部にイソシアネート基を有する官能基を有する。
【化5】
【0087】
また、MWCNTにおける反応性の官能基(ヒドロキシ基又はカルボキシル基)と、POSSにおけるイソシアネート基とを反応させるための触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(以下、DBTDLと表記する。アルドリッチ社より購入。)は、純度が95%のものを用いた。
また、MWCNTにおける反応性の官能基(ヒドロキシ基又はカルボキシル基)と、POSSにおけるイソシアネート基とを反応させる際に用いる溶媒としてのテトラヒドロフラン(以下、THFと表記する。)は、事前に水素化カルシウムにより乾燥し、また、蒸留を行ったものを用いた。
また、ポリマー材料溶液を作製する際の溶媒としてのジクロロメタン(以下、MCと表記する。)及びジメチルホルムアミド(以下、DMFと表記する。)については、購入したものをそのまま用いた。
【0088】
2.器具、装置及び分析方法
各工程は、明細書中に特に記載がない場合には、汎用の実験器具及び実験装置を用いて行った。
電界紡糸工程における高圧電源としては、チュンパEMT社のCPS−60 K022V1を用いた。
ラマン分光法による分析は、カイザーオプティカルシステムズ社のHololab5000及び波長532nmのアルゴンレーザーを用いて行った。
フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のTHERMO NICOLET AVATAR 370を用いて行った。スペクトルは、範囲は600cm−1〜4000cm−1、分解能は4cm−1で測定した。
走査型電子顕微鏡(SEMともいう。)による観察は、キーエンス社のVE−8800を用いた。
【0089】
広角X線回折(WAXDともいう。)による分析は、リガク社のRotaflex RTP300を用いて行った。温度は室温であり、50kV、200mAで分析を行った。X線としては、ニッケルでフィルターしたCuKα線を用い、5°<2θ<50°の範囲で分析を行った。
熱重量分析は、リガク社のThermo Plus 2 TG−8120を用いて行った。当該分析は、窒素を20mL/分の割合でパージしつつ、50℃〜800℃の範囲で行った。なお、加熱は20℃/分の割合で行った。
高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEMともいう。)は、日本電子株式会社のJEM−2010FEFを用いた。なお、当該高分解能透過型電子顕微鏡には、オメガフィルター、ガタン社のマルチスキャンカメラ及びオックスフォードインスツルメンツ社のエネルギー分散型X線分析装置を取り付けて分析を行った。加速電圧は200kVとした。
【0090】
3.複合ナノ繊維の製造方法
3−1.POSS修飾MWCNT準備工程
POSS修飾MWCNT準備工程は、(ア)酸処理工程と、(イ)POSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含む。以下、各工程を順に説明する。
【0091】
(ア)酸処理工程
まず、MWCNT0.25gを、硫酸75mlと硝酸25mlとの混酸(つまり、硫酸:硝酸=3:1,v/v)中で、超音波処理を行いながら55℃で9時間に渡って反応させた。反応後、pHが中性を示すようになるまでMWCNTを蒸留水で洗浄し(4回洗浄を行った。)、減圧により乾燥した。酸処理後のMWCNTの重量は0.173%であり、収率は69.2%であった。
【0092】
(イ)POSS修飾MWCNT製造工程
まず、超音波処理(10分)により、上記酸処理工程後のMWCNT0.075gをTHF50mlに分散させ、三つ首フラスコに導入した。その後に、0.225gのPOSS、2滴のDBTDL及び1mlのTHFからなる混合物を、シリンジを用いて三つ首フラスコ内にゆっくり滴下した。反応物を80℃で5時間反応させた後に、さらに90℃で1時間反応させた。その後、過剰のTHFを加え、さらにTHFで数回洗浄してDBTDL及び未反応のPOSSを除去した。残渣を減圧下で乾燥し、式(3)に示すようなPOSS修飾MWCNTを得た。なお、式(3)は模式図であり、分析によって確かめられた構造そのものを示すものではない。
【化6】
【0093】
製造したPOSS修飾MWCNTは、MC:DMF=7:3(w/w)のMC/DMF混合溶媒からなる保存液に浸して保存した。当該保存液は、後述するMC/DMF混合溶媒と同質のものである。
【0094】
3−2.POSS修飾MWCNT分散液体作製工程
まず、所定量のPLAをMC/DMF混合溶媒(MC:DMF=7:3、w/w)に溶解させ、ポリマー材料溶液からなる液体を準備した。その後に、所定量のPOSS修飾MWCNTを保存液と共に導入してPOSS修飾MWCNTを分散させ、POSS修飾MWCNT分散液体を作製した。
PLAは、最終的なPOSS修飾MWCNT分散液体の重量に対して3wt%となるように重量を決定した。
POSS修飾MWCNTについては、最終的なPOSS修飾MWCNT分散液体の重量に対して0.1wt%、0.3wt%又は0.5wt%となるように重量を決定し、3種類のPOSS修飾MWCNT分散液体を作製した。
【0095】
具体的には、POSS修飾MWCNTを0.1wt%含むPOSS修飾MWCNT分散液体は、0.15gのPLA、4.5gのMC/DMF混合溶媒、0.005gのPOSS修飾MWCNT及び0.5gの保存液を用いて作製した。
また、POSS修飾MWCNTを0.3wt%含むPOSS修飾MWCNT分散液体は、0.15gのPLA、3.5gのMC/DMF混合溶媒、0.015gのPOSS修飾MWCNT及び1.5gの保存液を用いて作製した。
また、POSS修飾MWCNTを0.5wt%含むPOSS修飾MWCNT分散液体は、0.15gのPLA、2.5gのMC/DMF混合溶媒、0.025gのPOSS修飾MWCNT及び2.5gの保存液を用いて作製した。
【0096】
3−3.電界紡糸工程
当該電界紡糸工程は、図4に示すような電界紡糸装置300を用いて行った。まず、ノズル306に接続されたプラスチックシリンジ302にPOSS修飾MWCNT分散液体30を充填し、当該液体30をノズル306に供給可能な状態とした。高圧電源310の正極側に接続された銅線312をPOSS修飾MWCNT分散液体30に挿入するとともに、金属からなるコレクター308を高圧電源310の負極側に接続した。ノズル306とコレクター308との距離Lを15cmに設定し、プラスチックシリンジ302の角度を水平から10°傾けた上で、12kVの電圧を印加し、ノズル306とコレクター308との間に生じる電界により複合ナノ繊維32をコレクター308に堆積させ、複合ナノ繊維を製造した。
【0097】
4.POSS修飾MWCNT及び複合ナノ繊維の分析
4−1.POSS修飾MWCNTの分析
上記「3−1.POSS修飾MWCNT準備工程」において準備したPOSS修飾MWCNTについて、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)による分析を行った。図5(c)に示すように、1700cm−1と1570cm−1とに、それぞれ弱いカルボニル(−C=O)とアミン(−NH)の吸収帯が検出された。また、1570cm−1においては、アミド結合におけるN−H結合の変角振動の吸収帯と、C−N結合の伸縮振動の吸収帯とが複合した、広く弱い吸収帯も検出された。上記の結果から、POSSがウレタン結合によりMWCNTを修飾していることが確認された。
【0098】
さらに、上記と同様のPOSS修飾MWCNTについて、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)による分析を行った。
酸処理前のMWCNTの表面は、図6(a)に示すように、比較的滑らかで付着物もなかった。酸処理後のMWCNTの表面は、図6(b)に示すように、荒れはあるものの付着物は見られなかった。一方、POSS修飾MWCNTの表面においては、図6(c)及び図6(d)に示すように、結合したPOSSと思われる付着物が見られた。
【0099】
さらに、上記と同様のPOSS修飾MWCNTについて、熱重量分析による分析を行った。
図7に示すように、酸処理後のMWCNTは、外表面にカルボキシル基等が存在するために、酸処理前のMWCNTより早く分解した。POSS修飾MWCNTは、800℃においておよそ14wt%の重量減少が発生した。これは、POSS上のアルキル基の分解によるものと考えられる。
【0100】
4−2.複合ナノ繊維の分析
当該複合ナノ繊維の分析においては、比較のために「酸処理後のMWCNTが、PLAからなるナノ繊維の内部に分散されている複合ナノ繊維」(酸処理MWCNT複合ナノ繊維)と、「PLAのみからなるPLAナノ繊維」(PLAナノ繊維)とについても分析を行った。
【0101】
酸処理MWCNT複合ナノ繊維は、上記「3.複合ナノ繊維の製造方法」における「3−1.POSS修飾MWCNT準備工程」の「(ア)酸処理工程」で得られた酸処理後のMWCNTを用いて製造した。具体的には、0.15gのPLA、4.875gのMC/DMF混合溶媒、0.005gの酸処理後のMWCNT及び0.125gの保存液を用いて酸処理後のMWCNTを0.1wt%含む酸処理MWCNT分散液体を作製し、その後、上記「3−3.電界紡糸工程」と同様の工程を当該液体に適用することにより、酸処理MWCNT複合ナノ繊維を製造した。
【0102】
また、PLAナノ繊維は、POSS修飾MWCNTを用いずに電界紡糸を行うことにより製造した。具体的には、0.15gのPLA及び5gのMC/DMF混合溶媒を用いてポリマー材料溶液を作製し、その後、上記「3−3.電界紡糸工程」と同様の工程を当該溶液に適用することにより、PLAナノ繊維を製造した。
【0103】
上記「3.複合ナノ繊維の製造方法」において製造した複合ナノ繊維並びに酸処理MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維について、ラマン分光法による分析を行った。
図8(c)に示すように、当該複合ナノ繊維からは、POSS修飾MWCNT由来のピーク(1700cm−1(グラファイトGバンド)及び1570cm−1(グラファイトDバンド))とPLA由来のピーク(図8(a)参照。)とがそれぞれ検出された。
これにより、POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されていることが確認できた。
【0104】
上記と同様の複合ナノ繊維並びに酸処理MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維について、広角X線回折(WAXD)による分析を行った。
【0105】
図9に示すように、POSS修飾MWCNTの量が増えるに従って、PLAに特徴的なピーク(特に2θ=16°近辺)が変化した。これはPOSS修飾MWCNTがPLAの結晶構造を乱すためであると考えられる。また、酸処理MWCNT複合ナノ繊維においては、グラファイトに特徴的なピーク(2θ=26°近辺)が強く検出された。複合ナノ繊維においては、0.3wt%以上の濃度の場合には、PLA中で結晶として存在できることが確認された(2θ=7°〜8°近辺、破線丸印参照。)。
【0106】
また、上記と同様の複合ナノ繊維、MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維について走査型電子顕微鏡(SEM)による分析を行った。
図10に示すように、実施例において製造したいずれの複合ナノ繊維においても、PLAナノ繊維と同様の外観を有することが確認できた。これは、複合ナノ繊維の均一性が高いことを示している。
また、操作型電子顕微鏡により得られた像から複合ナノ繊維、MWCNT複合ナノ繊維及びPLAナノ繊維の繊維径を測定した。その結果、図11に示すように、複合ナノ繊維に含まれるPOSS修飾MWCNTの含有量が増えるに従って、複合ナノ繊維の繊維径が少しずつ細くなることが確認できた。これは、POSS修飾MWCNTの導電性に起因すると考えられる。
【0107】
以上、実施例にて説明したように、本発明の「複合ナノ繊維」である「POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」が「実際に製造されていること」及び「上記のような特性を示すこと」が明らかとなった。
【0108】
以上、本発明を上記の実施形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0109】
(1)上記各実施形態及び実施例においては、POSSとして、末端にイソシアネート基を有する官能基を有するPOSSを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、末端にアミノ基を有する官能基その他の官能基を有するPOSSを用いることもできる。この場合、末端にアミノ基を有する官能基を有するPOSSを用いる場合には、MWCNTに酸処理を施すことにより、MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、ハロゲン化剤により、MWCNTにおける反応性の官能基の全部又は一部をハロゲン化してハロゲン化された官能基を生成するハロゲン化工程と、MWCNTにおけるハロゲン化された官能基と、POSSにおける前記アミノ基とを反応させることにより、POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で実施する。このような方法とすることにより、末端にアミノ基を有する官能基を有するPOSSを用いて、POSS修飾MWCNTを製造することができる。
【符号の説明】
【0110】
10,30…POSS修飾MWCNT分散液体、12,32…複合ナノ繊維、20…不織布、22…複合ナノ繊維からなる糸、100,300…電界紡糸装置、102…原料タンク、104…バルブ、106,306…ノズル、108,308…コレクター、110,310…高圧電源、200…撚り糸装置、202…主撚り糸装置、204,206…糸送り装置、302…プラスチックシリンジ、312…銅線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご状のシルセスキオキサン(以下、POSSという。)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという。)であるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなることを特徴とする複合ナノ繊維。
【請求項2】
前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることを特徴とする請求項1に記載の複合ナノ繊維。
【化1】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合ナノ繊維からなることを特徴とする複合ナノ繊維からなる不織布。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の複合ナノ繊維からなることを特徴とする複合ナノ繊維からなる糸。
【請求項5】
POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTを準備するPOSS修飾MWCNT準備工程と、
ポリマー材料溶液又は溶融ポリマー材料からなる液体に、前記POSS修飾MWCNTを分散させることにより、POSS修飾MWCNT分散液体を作製するPOSS修飾MWCNT分散液体作製工程と、
前記POSS修飾MWCNT分散液体から「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を作製する複合ナノ繊維作製工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
前記複合ナノ繊維作製工程は、
ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態で、前記POSS修飾MWCNT分散液体を前記ノズルから前記コレクターに向けて吐出して「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を製造する電界紡糸工程からなることを特徴とする請求項5に記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項7】
前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることを特徴とする請求項5又は6に記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【化2】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【請求項8】
前記反応性の基は、イソシアネート基からなり、
前記POSS修飾MWCNT準備工程は、
MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、
前記MWCNTにおける前記反応性の官能基と、前記POSSにおける前記イソシアネート基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項9】
前記反応性の基は、アミノ基からなり、
前記POSS修飾MWCNT準備工程は、
MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、
ハロゲン化剤により、前記MWCNTにおける前記反応性の官能基の全部又は一部をハロゲン化してハロゲン化された官能基を生成するハロゲン化工程と、
前記MWCNTにおける前記ハロゲン化された官能基と、前記POSSにおける前記アミノ基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程を含むことを特徴とする複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程と、
前記複合ナノ繊維を撚り糸装置内で撚り糸して複合ナノ繊維からなる糸を製造する撚り糸工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維からなる糸の製造方法。
【請求項1】
かご状のシルセスキオキサン(以下、POSSという。)と反応させることによりPOSSが化学的に修飾された多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという。)であるPOSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなることを特徴とする複合ナノ繊維。
【請求項2】
前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることを特徴とする請求項1に記載の複合ナノ繊維。
【化1】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合ナノ繊維からなることを特徴とする複合ナノ繊維からなる不織布。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の複合ナノ繊維からなることを特徴とする複合ナノ繊維からなる糸。
【請求項5】
POSSと反応させることによりPOSSが化学的に修飾されたMWCNTであるPOSS修飾MWCNTを準備するPOSS修飾MWCNT準備工程と、
ポリマー材料溶液又は溶融ポリマー材料からなる液体に、前記POSS修飾MWCNTを分散させることにより、POSS修飾MWCNT分散液体を作製するPOSS修飾MWCNT分散液体作製工程と、
前記POSS修飾MWCNT分散液体から「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を作製する複合ナノ繊維作製工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項6】
前記複合ナノ繊維作製工程は、
ノズルとコレクターとの間に高電圧を印加した状態で、前記POSS修飾MWCNT分散液体を前記ノズルから前記コレクターに向けて吐出して「POSS修飾MWCNTが、ポリマー材料からなるナノ繊維の内部に分散されてなる複合ナノ繊維」を製造する電界紡糸工程からなることを特徴とする請求項5に記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項7】
前記POSSが、以下の式(1)で表されるPOSSからなることを特徴とする請求項5又は6に記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【化2】
(但し、式(1)中、Rはアルキル基を示し、R’は末端に反応性の基を有する官能基を示す。)
【請求項8】
前記反応性の基は、イソシアネート基からなり、
前記POSS修飾MWCNT準備工程は、
MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、
前記MWCNTにおける前記反応性の官能基と、前記POSSにおける前記イソシアネート基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項9】
前記反応性の基は、アミノ基からなり、
前記POSS修飾MWCNT準備工程は、
MWCNTに酸処理を施すことにより、前記MWCNTの外表面に反応性の官能基を生成する酸処理工程と、
ハロゲン化剤により、前記MWCNTにおける前記反応性の官能基の全部又は一部をハロゲン化してハロゲン化された官能基を生成するハロゲン化工程と、
前記MWCNTにおける前記ハロゲン化された官能基と、前記POSSにおける前記アミノ基とを反応させることにより、前記POSS修飾MWCNTを製造するPOSS修飾MWCNT製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程を含むことを特徴とする複合ナノ繊維からなる不織布の製造方法。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を製造する工程と、
前記複合ナノ繊維を撚り糸装置内で撚り糸して複合ナノ繊維からなる糸を製造する撚り糸工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維からなる糸の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図11】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図11】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2012−41665(P2012−41665A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186705(P2010−186705)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000225740)南部化成株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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