説明

複合ハードコート層付き物体及び複合ハードコート層の形成方法

【課題】 防汚性及び潤滑性と、耐擦傷性及び耐摩耗性とに優れたハードコートが付与された物体を安価に提供し、ハードコートの形成方法を提供する。
【解決手段】 ハードコート処理すべき対象物体1表面に、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、ハードコート剤組成物層表面上に、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料を成膜して表面材料層を形成し、形成されたハードコート剤組成物層及び表面材料層に活性エネルギー線を照射して、前記両層を同時に硬化させ、対象物体1表面に接するハードコート層2とハードコート層2表面に接する防汚表面層3とを形成する。対象物体は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜及び各種表示素子から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ハードコート層付き物体及び複合ハードコート層の形成方法に関する。本発明において、複合ハードコート層とは、物体表面に設けられた耐擦傷性及び耐摩耗性を担うハードコート層と、ハードコート層表面に設けられた防汚性及び潤滑性を担う防汚表面層とを含む。本発明は、より詳しくは、防汚性及び潤滑性と、耐擦傷性及び耐摩耗性とを必要とする各種物体の分野において、これら諸性能を具備した複合ハードコート層が表面に設けられた物体、及び複合ハードコート層の形成方法に関する。
【0002】
特に、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子などの表面に、それらの光学性能を損なうことなく防汚性及び潤滑性と、耐擦傷性及び耐摩耗性とを有する複合ハードコートを形成する方法、及び前記複合ハードコートが形成された製品に関する。
【背景技術】
【0003】
耐擦傷性や耐摩耗性が必要とされる各種の物体、例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光記録媒体、光磁気記録媒体、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子の表面には、通常保護層(ハードコート層)が付与されている。
【0004】
これらの各種物体においては、ユーザーの使用によって、その表面に指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着する場合が多い。このような汚れは、一度付着すると除去することは容易でなく、特に、光記録媒体や、この記録再生に用いられる光学レンズにおいては、付着した汚れによって情報信号の記録及び再生に著しい支障が生じるために、大きな問題となる。
【0005】
また、光磁気記録媒体においては、記録層の上に設けられた有機保護層上を磁界ヘッドが走行するため、保護層の耐摩耗性を高めると同時に、低摩擦係数化することが求められる。
【0006】
前者の問題を解決する手段として、汚れが付着しにくく、付着しても拭き取りやすい性質、すなわち防汚性を有する層を光学レンズ等の表面に形成する方法が種々提案されている。具体的には、フッ素系又はシリコーン系の化合物からなる層を表面に設け、表面に撥水性や撥油性を賦与し、防汚性を向上させる方法を採ることが多い。
【0007】
一方、後者の問題、すなわち、保護層(ハードコート層)表面の摩擦係数を低減する方法についても、これまでに多くの対策が提案されている。具体的には、例えば、フッ素系ポリマー(例えば、パーフルオロポリエーテル)やシリコーン系ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン)などの液体潤滑剤からなる膜を保護層表面に設け、潤滑性を向上させる手法を用いることが多い。
【0008】
前者の防汚性と、後者の潤滑性とは本来まったく別の特性であるが、それらの性能を賦与する手段として、フッ素系化合物又はシリコーン系化合物を用いることが多いという点では共通している。このため、フッ素系の化合物やシリコーン系の化合物を用いてハードコート表面に防汚性又は潤滑性を賦与するに際して、両者に共通して生じる問題点も多い。
【0009】
フッ素系やシリコーン系の化合物には柔らかいものが多く、これらの化合物を用いた場合、充分な耐摩耗性を得ることが極めて困難である。このような問題点を改善するため、フッ素系ポリマー又はシリコーン系ポリマーマトリックス中に、SiO2 微粒子などの無機フィラーを添加し耐摩耗性を高める方法も考えられているが、多少の改善はあっても、無機フィラーを分散するマトリックスとしてフッ素系又はシリコーン系のポリマーを用いている限り、満足な耐摩耗性を得ることはできない。
【0010】
このため、保護層を2層以上の異なる層からなる積層構成とし、下層を高硬度の材料からなる層とし、その表面に、フッ素系やシリコーン系の化合物からなる上層を設け、防汚性や潤滑性を賦与する方法が考えられている。この場合、積層保護層の最表面となる上層が下層の硬度を反映するように、フッ素系やシリコーン系の化合物からなる上層はできるだけ薄くすることが好ましい。しかしながらこの方法においては、下層と、フッ素系化合物やシリコーン系化合物からなる上層との間の密着性を得ることが極めて難しい。
【0011】
上記の密着性の問題を解決する方法として、例えば以下のような手法が知られている。すなわち、SiO2 などの無機物からなる下層をスパッタリングやゾル−ゲル法などの方法によって形成し、この下層の表面に、フルオロアルキル基を有するアルコキシシランからなる上層を、蒸着や溶液塗布などの方法によって形成する。その後、微量の水分の存在下で加熱処理を施すことにより、前記アルコキシシランの加水分解により生じたシラノール基同士の間で、及び/又はSiO2 などからなる下層表面に存在する水酸基と前記シラノール基との間で脱水縮合反応が起こり、上層が化学結合及び/又は水素結合を介して下層表面に固定される。
【0012】
上記の方法では、下層表面が水酸基などの活性基を高い密度で有していることが望ましい。このため、下層に用いることができる材料は、無機化合物、特に、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnSなどの金属酸化物や金属カルコゲナイドに限定される。しかも、下層がSiO2 などの金属酸化物からなっている場合であっても、上層の前記アルコキシシランとの密着性を充分なものとするためには、上層の形成に先立って予め、下層表面にアルカリ処理、プラズマ処理、コロナ放電処理などの活性化処理を施し、表面の活性基の密度を増やしておく必要がある。
【0013】
下層として、ポリエチレン、ポリカーボネート又はポリメタクリル酸メチルなどの有機物を用いて、下層表面をプラズマ処理やコロナ放電処理などの方法によって親水化し、この下層表面上に前記アルコキシシランからなる上層を設ける試みもなされている。しかし、この場合には、下層として上記無機物を用いた場合に比べ、密着性に大きく劣り、充分な耐久性は得られていない。
【0014】
また、ハードコート処理されるべき基材が樹脂製である場合、下層としてSiO2 などの無機物を用いる上記の方法では、ハードコートとしての耐摩耗性を得ることが極めて難しい。SiO2 などの無機物からなる層を樹脂製基材表面に設ける場合、形成可能な膜厚は高々数100nm程度である。これ以上の膜厚にすることは製法上も困難であるし、仮に形成できたとしても、基材との弾性率差や熱膨張係数差が著しく大きいために、無機膜の自己破壊が容易に生じる。しかしながら、数100nmの厚さの無機膜によって充分な耐摩耗性を得ることは困難である。また、樹脂製基材と無機膜との間での充分な密着性を得ることも難しい。従って、無機膜が剥離しやすく、この点からも充分な耐摩耗性を得ることは困難である。
【0015】
このため、ハードコート処理されるべき基材が樹脂製である場合、樹脂製基材上に高弾性率のプライマー層を設け、プライマー層上に前記無機膜からなる下層を設けて樹脂製基材と無機膜との密着性や無機膜の強度を確保して、さらに下層表面の活性化処理を施し、その下層表面上に前記フッ素系アルコキシシランからなる上層を設ける必要がある。このように、3つの層を順次形成する必要があり、極めて生産性が悪い。
【0016】
特開平9−137117号公報には、樹脂製基材表面に、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物とシリカ微粒子等の無機化合物微粒子とを含有する組成物を塗布し、活性エネルギー線照射により光重合させて硬化させ、この硬化被膜表面にコロナ処理又はプラズマ処理を行い、次いでその処理表面に、加水分解によりシラノール基を生成する基を分子中に少なくとも1個有するシラン化合物を塗布し、硬化被膜との密着性を高めたシラン化合物被膜を形成する方法が開示されている。この場合にも、上層のシラン化合物被膜と下層の硬化被膜との密着性を確保するために、硬化被膜表面にコロナ処理又はプラズマ処理を行うことが必要である。
【0017】
一方、上述の光磁気記録媒体の保護層において、有機保護層表面にパーフルオロポリエーテルやポリジメチルシロキサンなどの液体潤滑剤を塗布し潤滑剤膜を形成する場合は、潤滑剤が粘稠な液体であるため、有機保護層と液体潤滑剤膜との間の密着性はさほど考慮しなくてもよい。しかしながら、長期的には、磁界変調ヘッドが繰り返し摺動することによって潤滑剤が減少したり、長期の保存において潤滑剤が僅かずつながら揮発したりする恐れがある。このため、この方法においても、前記潤滑剤は、有機保護層表面に強固に固定されていることが望ましい。
【0018】
ところで、先述のように、防汚性を得るためには、保護層表面に撥水性や撥油性を賦与することが必要であるが、これだけで必ずしも充分というわけではない。付着した汚れの拭き取り操作は一般的にユーザーの手によって行われるから、ユーザーが汚れの拭き取り作業を行った際に、拭き取りが容易であると感じられるためには、保護層表面の摩擦係数の低減を図る必要がある。防汚性と摩擦係数との関係についてはこれまで指摘されることがほとんどなかったが、実際には、防汚性を賦与するにあたって、低摩擦係数化は、撥水・撥油性と共に必須の特性といってよい。
【0019】
また、表面を低摩擦係数化しておくことによって、硬い突起物が接触した際の衝撃を滑らせて逃がすことができるため、擦過傷の発生を抑制することができる。従って、ハードコートの傷つき防止性をより向上させるという見地からも、表面の低摩擦係数化が要求される。
【0020】
特開平6−211945号公報、特開2000−301053号公報には、フルオロアルキルアクリレートと、これと相溶性がないアクリルモノマーを、両者を共に溶解する溶剤に所定の比率で溶かした組成物を基材上に塗布し、塗布後直ちに電子線を照射して硬化させることによってハードコート層を形成することが開示されている。これらの公報によれば、前記組成物を1〜15μmの厚さに塗布し、その後直ちに電子線を照射することにより、瞬時に溶剤が蒸発し、且つ、フルオロアルキルアクリレート成分とアクリルモノマー成分とが局在化し、塗膜表面にフルオロアルキルアクリレートが偏在した状態で硬化する。
【0021】
しかしながら、同両号公報によれば、相溶性のない成分を含む組成物を用いるため、組成物を塗布した後、溶剤揮発による局在化が起こる前に電子線を照射し瞬時に硬化させる必要がある。そのため、塗布から電子線照射のタイミングも難しく、塗工方法も極めて限定される。例えば、スピンコート法などの、溶剤の蒸発速度が速い塗工方法を用いることはできない。
【0022】
さらに、最も大きな問題として、同両公報記載の方法では、電子線照射と同時に溶剤を蒸発させるので、硬化被膜中の溶剤を完全に除去できない恐れが高い。同公報では、硬化被膜から溶剤が完全に除去されたかどうかは何ら検証されていない。内部に微量の溶剤が残留している場合、ハードコート形成直後は問題がなくても、長期の使用において、膜にクラックや剥離が生じる恐れがある。また、硬度も不十分なものとなるうえ、ハードコートが形成された基材の反りが徐々に増大しやすい。
【0023】
また、電子線照射と同時に溶剤を蒸発させる方法では、硬化被膜がポーラスな構造になりやすいため、硬度が不足するばかりか、光学特性が劣化する恐れがある。従って、汎用製品への適用には問題がなくても、光学レンズや、光記録媒体などの、非常に高い光学特性を要求される用途に対して適用することは困難である。
【0024】
すなわち、防汚性、潤滑性及び耐摩耗性を高いレベルで同時に実現したハードコートはこれまで存在していない。
【0025】
【特許文献1】特開平9−137117号公報
【特許文献2】特開平6−211945号公報
【特許文献3】特開2000−301053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、防汚性及び潤滑性と、耐擦傷性及び耐摩耗性とに優れたハードコートが付与された物体を安価に提供することにある。また、本発明の目的は、防汚性及び潤滑性と、耐擦傷性及び耐摩耗性とに優れたハードコートを安価に且つ容易に形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者らは、鋭意検討した結果、耐擦傷性及び耐摩耗性を担うハードコート層を対象物体表面に、そして、防汚性及び潤滑性を担う防汚表面層を前記ハードコート層表面に、活性エネルギー線の照射によって同時に硬化させて設けることにより、これら防汚表面層とハードコート層とが強固に密着された複合ハードコート層が形成されることを見いだし、本発明に到達した。
【0028】
本発明は、物体表面に設けられたハードコート層とハードコート層表面に設けられた防汚表面層とを含む複合ハードコート層が付与された物体であって、
前記物体は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜及び各種表示素子から選ばれる物体であり、
ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物の硬化物からなり、防汚表面層は、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料の硬化物からなり、前記防汚表面層は前記ハードコート層に固着されている、複合ハードコート層が付与された物体である。
【0029】
本発明は、防汚表面層は、厚さ1nm以上100nm以下である、前記の複合ハードコート層が付与された物体である。
【0030】
本発明は、ハードコート剤組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基の中から選択される少なくとも1つの反応性基を有するものである、前記の複合ハードコート層が付与された物体である。
【0031】
本発明は、ハードコート剤組成物には光重合開始剤、及び必要に応じて無機フィラーが含まれている、前記の複合ハードコート層が付与された物体である。
【0032】
本発明は、対象物体表面に接するハードコート層とハードコート層表面に接する防汚表面層とを含む複合ハードコート層を形成する方法であって、
前記対象物体は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜及び各種表示素子から選ばれる物体であり、
ハードコート処理すべき対象物体表面に、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、
ハードコート剤組成物層表面上に、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料を成膜して表面材料層を形成し、
形成されたハードコート剤組成物層及び表面材料層に活性エネルギー線を照射して、前記両層を同時に硬化させ、対象物体表面に接するハードコート層とハードコート層表面に接する防汚表面層とを形成することを特徴とする、対象物体表面にハードコート層と防汚表面層とを含む複合ハードコート層を形成する方法である。
【0033】
本発明は、防汚表面層を、厚さ1nm以上100nm以下に形成する、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0034】
本発明は、対象物体表面にハードコート剤組成物を塗布した後、乾燥して、ハードコート剤組成物中に含まれていた溶剤をハードコート剤組成物層から除去し、その後、表面材料層を形成する、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0035】
本発明は、対象物体表面にハードコート剤組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥して、活性エネルギー線を照射してハードコート剤組成物層を半硬化の状態として、その後、表面材料層を形成する、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0036】
本発明は、表面材料を塗布又は蒸着により成膜して表面材料層を形成する、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0037】
本発明は、表面材料を塗布により成膜して表面材料層を形成し、その際に溶剤として、すでに形成されているハードコート剤組成物層中の活性エネルギー線硬化性化合物を実質的に溶解しない溶剤を用いる、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0038】
本発明は、ハードコート剤組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基の中から選択される少なくとも1つの反応性基を有するものである、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0039】
本発明は、活性エネルギー線として、電子線又は紫外線を用いる、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0040】
本発明は、活性エネルギー線の照射を、酸素濃度500ppm以下の雰囲気中で行う、前記の複合ハードコート層の形成方法である。
【0041】
本発明は、物体表面に設けられたハードコート層とハードコート層表面に設けられた防汚表面層とを含む複合ハードコート層が付与された物体であって、
前記物体は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜及び各種表示素子から選ばれる物体であり、
ハードコート処理すべき対象物体表面に、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、
ハードコート剤組成物層表面上に、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料を成膜して表面材料層を形成し、
形成されたハードコート剤組成物層及び表面材料層に活性エネルギー線を照射して、前記両層を同時に硬化させ、対象物体表面に接するハードコート層とハードコート層表面に接する防汚表面層とを形成することにより得られる、物体表面に設けられたハードコート層とハードコート層表面に設けられた防汚表面層とを含む複合ハードコート層が付与された物体である。
【0042】
本発明において、物体としては、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、又は各種表示素子が挙げられる。表示素子としては、例えば、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等が挙げられる。
【0043】
この明細書において、「ハードコート剤組成物層」とは、未硬化又は半硬化(一部硬化)状態のハードコート層を意味する。「表面材料層」とは、未硬化状態の表面層すなわち防汚表面層を意味する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、高い耐摩耗性を有するとともに、撥水性・潤滑性にも優れ、且つ、その耐久性も極めて良好なハードコートが付与された物体が安価に且つ容易に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の複合ハードコート層が付与された物体の層構成例を模式的に示す断面図である。図1において、ハードコート処理すべき対象物体(1) 表面にハードコート層(2) が形成され、ハードコート層(2) 表面に接して防汚表面層(3) が形成されている。ハードコート層(2) と防汚表面層(3) の両層を便宜的に複合ハードコート層という。
【0046】
対象物体(1) としては、ハードコート処理の必要な種々のものが含まれる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂からなるシートや基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より具体的な製品としては、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子が挙げられる。
【0047】
まず、対象物体(1) 表面に、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、次に、ハードコート剤組成物層表面上に、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料(防汚及び潤滑機能性を有する材料)を成膜して表面材料層を形成する。ハードコート剤組成物及び表面材料の各成分について説明する。
【0048】
ハードコート剤組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基の中から選択される少なくとも1つの活性基を有するものであれば、特にその構造は限定されない。活性エネルギー線硬化性化合物は、ハードコートとして十分な硬度を得るため、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上の重合性基を含む多官能モノマーもしくはオリゴマーを含んでいることが好ましい。単官能モノマーを含んでいてもよい。
【0049】
このような活性エネルギー線重合性化合物のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0050】
また、ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0051】
また、メルカプト基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0052】
ハードコート剤組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ハードコート剤組成物は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。光重合開始剤の含有量は、例えば、ハードコート剤組成物(固形分として)中に0.5〜5重量%程度である。
【0054】
ハードコート剤組成物は、必要に応じて耐摩耗性向上のために、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。無機フィラーの粒径は、例えば、5〜50nm程度である。無機フィラーのうち、活性エネルギー線重合性基を有する化合物でフィラー表面が修飾され、反応後にポリマーマトリクス中に固定されるものとして、例えば特開平9−100111号公報に記載されている反応性シリカ粒子があり、本発明において好ましく用いることができる。このような無機フィラーをハードコート剤組成物に添加しておくことにより、ハードコート層の耐摩耗性をより高めることができる。無機フィラーの含有量は、例えば、ハードコート剤組成物(固形分として)中に5〜80重量%程度である。無機フィラーを80重量%よりも多く含有させると、ハードコート層の膜強度が弱くなりやすい。
【0055】
また、ハードコート剤組成物はさらに、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、光重合開始助剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、ケイ素化合物などを含んでいても差し支えない。
【0056】
表面材料として、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を用いる。これは活性エネルギー線重合性であり、この硬化物は防汚及び潤滑機能性を有し、すなわち、対象物体表面に撥水性及び/又は潤滑性を賦与することができる。表面材料として、フッ素含有多官能(メタ)アクリレート化合物を用いると、フッ素含有単官能(メタ)アクリレート化合物を用いた場合に比べて、ハードコート層との密着性が向上し、耐久性に非常に優れる複合ハードコート層が得られる。本発明においては、表面材料として、フッ素含有単官能(メタ)アクリレート化合物を用いない。
【0057】
フッ素含有多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、直鎖パーフルオロアルキレンジ(メタ)アクリレートや、パーフルオロポリエーテルジ(メタ)アクリレート、パーフルオロポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、パーフルオロポリエーテルテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
直鎖パーフルオロアルキレンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数12以下、好ましくは8以上12以下のパーフルオロアルキレン基を有する次の一般式で示されるジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
CH2=C(R1)COO-R3-(CF2)n-R4-OCOC(R2)=CH2
ここで、R1 及びR2 はそれぞれ同一又は異なっていてもよく、H又はメチル基を表し、R3 及びR4 はそれぞれ同一又は異なっていてもよく、低級アルキレン基を表し、nは1〜12の整数を表す。R3 及びR4 の低級アルキレン基としては、例えば、−CH2 −、−CH2CH2−、((CF2)n基側)−CH2OCH2-CH(OH)CH2 −(アクリル基側)等が挙げられる。
【0060】
直鎖パーフルオロアルキレンジ(メタ)アクリレートとして、具体的に、例えば、1H,1H,6H,6H −パーフルオロ−1,6 −ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1H,1H,10H,10H −パーフルオロ−1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1H,1H,10H,10H −パーフルオロ−1,10−デカンジオールジエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0061】
パーフルオロポリエーテルジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジオール変性パーフルオロポリエーテルから得られるジ(メタ)アクリレートあるいはジエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、次のジオール変性パーフルオロポリエーテルをジオール成分として合成されるジ(メタ)アクリレートあるいはジエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。パーフルオロポリエーテルジ(メタ)アクリレートは、十分な分な撥水・撥油性を発現するために、1000以上の分子量を有するものが好ましく、1500〜2500程度の分子量を有するものがより好ましい。
【0062】
HOCH2CF2O-(CF2CF2O)m-/-(CF2O)n-CF2CH2OH
(アウジモント社製、Fomblin Z DOL 、分子量:約2000)
HO(CH2CH2O)l-CH2CF2O-(CF2CF2O)m-/-(CF2O)n-CF2CH2-(OCH2CH2)lOH
(アウジモント社製、Fomblin Z DOL TX2000、分子量:約2200)
l,m及びnはそれぞれ重合度を表す。
【0063】
パーフルオロポリエーテルテトラ(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラオール変性パーフルオロポリエーテルから得られるテトラ(メタ)アクリレートあるいはテトラエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、例えば、次のテトラオール変性パーフルオロポリエーテルをテトラオール成分として合成されるテトラ(メタ)アクリレートあるいはテトラエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
HOCH2CH(OH)CH2O-CH2CF2O-(CF2CF2O)m-/-(CF2O)n-CF2CH2OCH2CH(OH)CH2OH
(アウジモント社製、Fomblin Z TETRAOL )
m及びnはそれぞれ重合度を表す。
【0065】
フッ素含有多官能(メタ)アクリレート化合物として、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
表面材料としてフッ素含有多官能(メタ)アクリレート化合物を用いると、フッ素含有単官能(メタ)アクリレート化合物を用いた場合に比べ、ハードコート層との密着性は向上するが、防汚表面層の表面平滑性がやや低下することがある。この場合には、表面材料溶液中におけるフッ素含有多官能(メタ)アクリレートの濃度を、例えば0.75重量%以下、好ましくは0.1〜0.5重量%程度に調整することにより、表面平滑性を良くすることもできる。
【0067】
また、表面材料中には、ハードコート剤組成物におけるのと同様に、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、光重合開始剤、光重合開始助剤、有機フィラー、無機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、ケイ素化合物などを含んでいても差し支えない。ただし、1nm以上100nm以下という超薄膜の防汚表面層が形成できる材料を選択する必要がある。
【0068】
本発明において、まず、対象物体(1) 表面に、上記ハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成する。塗布方法は、限定されることなく、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法等の各種塗布方法を用いるとよい。
【0069】
対象物体(1) 表面にハードコート剤組成物を塗布した後、表面材料を成膜するのに先立って、ハードコート剤組成物層の流動性をなくしておくことが好ましい。ハードコート剤組成物層の流動性をなくしておくことによって、これの上に表面材料を成膜する際に、ハードコート剤組成物層の膜厚変動や、表面性の悪化を防ぐことができ、表面材料を均一に成膜しやすい。
【0070】
ハードコート剤組成物層の流動性をなくすためには、例えば、塗布後に乾燥して、ハードコート剤組成物中に含まれていた溶剤をハードコート剤組成物層から除去するとよい。また、塗布後に必要に応じて乾燥して、紫外線等の活性エネルギー線を照射してハードコート剤組成物層を半硬化の状態としてもよい。ここで半硬化とは、ハードコート剤組成物の一部が未反応であることを意味する。従って、ハードコート剤組成物層の物理的な硬化度は特に問わず、表面の粘着性(タック)が消失していても差し支えない。このような半硬化の状態とするためには、例えば紫外線等の活性エネルギー線の照射量を少なくするとよい。このようにすることにより、ハードコート剤組成物層の少なくとも表面近傍において未反応のハードコート剤組成物が存在することになる。
【0071】
次に、未硬化又は一部硬化(半硬化)状態のハードコート剤組成物層表面上に、上記表面材料を成膜して表面材料層を形成する。表面材料層は、最終的に得られる防汚表面層の厚さが、1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下となるように形成するとよい。1nm未満では、防汚性及び潤滑性の効果があまり得られず、100nmを超えると、下層のハードコート層の硬度があまり反映されず、耐擦傷性及び耐摩耗性の効果が減少してしまう。
【0072】
成膜は、表面材料の塗布により、あるいは蒸着により行うことができる。以下、塗布の場合を例に説明する。塗布は、上記表面材料を適当な溶剤で希釈し、この塗布液を限定されることなく、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等の各種塗布方法で塗布するとよい。
【0073】
この際の溶剤としては、未硬化又は一部硬化(半硬化)状態のハードコート剤組成物層中の活性エネルギー線硬化性化合物を実質的に溶解しない溶剤を選択して用いることが好ましい。前記ハードコート剤組成物層を実質的に溶解するか否かは、溶剤の種類だけでなく、塗布方法にも依存する。例えば、表面材料層の塗布方法としてスピンコート法を用いる際は、多くの場合、スピンコート時に塗布液に含まれる希釈溶剤の大半は揮発するため、前記ハードコート剤組成物層をある程度溶解する溶剤を希釈溶剤として用いても、実用上は問題にならない。一方、例えば、表面材料層の塗布方法としてディップコート法を用いる場合は、未硬化の前記ハードコート剤組成物層表面と、表面材料層塗布液との接触時間が長いため、前記ハードコート剤組成物層材料をまったく溶解しないか、ほとんど溶解しない溶剤を用いる必要がある。
【0074】
このようにして、未硬化又は一部硬化(半硬化)状態のハードコート剤組成物層と、その表面上に未硬化の表面材料層とを形成する。
【0075】
次に、形成されたハードコート剤組成物層及び表面材料層に活性エネルギー線を照射して、前記両層を同時に硬化させる。この際、前記両層を完全に硬化させ得るに十分なエネルギー量の活性エネルギー線を照射し、両層の硬化反応を完結させる。未硬化又は一部硬化(半硬化)状態のハードコート剤組成物層とその表面上に接して設けられた未硬化の表面材料層とを同時に硬化させることにより、これら両層が界面において強固に密着され、すなわち、硬化したハードコート層(2) 上に硬化した防汚表面層(3) が密着性良く得られる。
【0076】
本発明のこのようなプロセスを用いることにより、高硬度のハードコート層(2) 上に、その硬度が最表面に反映される程度に薄く、且つ良好な撥水性・潤滑性を有する防汚表面層(3) を設けると共に、ハードコート層(2) と防汚表面層(3) の良好な密着性が得られる。
【0077】
ハードコート剤組成物層及び表面材料層を同時硬化させる手段としては、紫外線、電子線、可視光などの活性エネルギー線の中から適切なものを選択して用いればよい。ただし、本発明においては、防汚表面層の厚さが1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下と極めて薄く、ハードコート層との良好な密着性を得るために、両層の界面近傍において良好な反応性が得られる硬化手段を用いる必要がある。
【0078】
具体的には、前記活性エネルギー線として電子線又は紫外線のいずれを用いる場合でも、活性エネルギー線照射雰囲気中の酸素濃度が500ppm以下、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10ppm以下となるように、窒素などの不活性ガスによるパージを行うことが好ましい。これは、照射雰囲気中で生じる酸素ラジカルに起因する表面の硬化阻害を抑制するためである。あるいは、照射雰囲気中の酸素濃度を制御する代わりに、ハードコート剤組成物及び/又は表面材料中に、従来公知の各種酸素阻害抑制剤を添加しておいてもよい。このような酸素阻害抑制剤としては、例えば、特開2000−109828号公報、特開2000−109828号公報及び特開2000−144011号公報に記載されている酸素阻害抑制剤を用いることができる。いうまでもなく、上記酸素阻害抑制剤と、照射雰囲気中の酸素濃度制御とを併用しても差し支えない。
【0079】
このような材料及び成膜、硬化方法を用いることにより、耐摩耗性及び撥水・潤滑性にすぐれ、その耐久性も良好な複合ハードコート層が形成される。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
厚さ0.6mmのポリカーボネート基板(直径12cm)上に、紫外線/電子線硬化型ハードコート剤(JSR社製、デソライトZ7503)をスピンコート法により塗布した後、大気中60℃で3分間加熱して被膜内部の希釈溶剤を除去して、未硬化のハードコート層を形成した。なお、上記ハードコート剤は特開平9−100111号公報に示される反応性無機フィラーを含む組成物であった。
【0082】
次いで、パーフルオロポリエーテルジアクリレート(アウジモント社製、Fomblin Z DOL のアクリル変性品、分子量:約2000)の0.5%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を調製した。この表面材料溶液を上記未硬化ハードコート層上にスピンコート法によって塗布し、これを60℃で3分間乾燥し、未硬化表面層を形成した。
【0083】
その後、窒素気流下で電子線を照射してハードコート層と表面層とを同時に硬化させた。電子線照射装置Curetron(日新ハイボルテージ(株)製)を用い、電子線加速電圧を200kV、照射線量を10Mradとした。照射雰囲気の酸素濃度は80ppmであった。硬化されたハードコート層の膜厚は3.4μm、硬化された表面層の膜厚は約36nmであった。なお、表面層の膜厚は、パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業社製、デムナム)を標準物質として、蛍光X線分析(XRF)により測定した。このようにして、複合ハードコート層付き基板を得た。
【0084】
[実施例2]
厚さ0.6mmのポリカーボネート基板(直径12cm)上に、紫外線/電子線硬化型ハードコート剤(JSR社製、デソライトZ7503)をスピンコート法により塗布した後、大気中60℃で3分間加熱して被膜内部の希釈溶剤を除去した。その後、大気中で弱い紫外線(高圧水銀灯、80mJ/cm2 )を照射して、半硬化させた状態のハードコート層を形成した。
【0085】
次いで、パーフルオロポリエーテルジアクリレート(アウジモント社製、Fomblin Z DOL のアクリル変性品、分子量:約2000)の0.5%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を調製した。この表面材料溶液を上記半硬化ハードコート層上にスピンコート法によって塗布し、これを60℃で3分間乾燥し、未硬化表面層を形成した。
【0086】
その後、実施例1と同じ電子線照射条件で、窒素気流下で電子線を照射してハードコート層と表面層とを同時に硬化させ、複合ハードコート層付き基板を得た。硬化されたハードコート層の膜厚は3.4μm、硬化された表面層の膜厚は約32nmであった。
【0087】
[実施例3]
パーフルオロポリエーテルジアクリレート(アウジモント社製、Fomblin Z DOL のアクリル変性品、分子量:約2000)の0.25%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を調製した。この溶液を表面材料溶液として用いた以外は、実施例1と同様にして、複合ハードコート層付き基板を得た。硬化されたハードコート層の膜厚は3.4μm、硬化された表面層の膜厚は約25nmであった。
【0088】
[実施例4]
共栄社化学製ART−3(パーフルオロポリエーテルジアクリレート、分子量:約1000)の0.5%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を調製した。この溶液を表面材料溶液として用いた以外は、実施例1と同様にして、複合ハードコート層付き基板を得た。硬化されたハードコート層の膜厚は3.4μm、硬化された表面層の膜厚は約30nmであった。
【0089】
[比較例1]
厚さ0.6mmのポリカーボネート基板(直径12cm)上に、紫外線/電子線硬化型ハードコート剤(JSR社製、デソライトZ7503)をスピンコート法により塗布した後、大気中60℃で3分間加熱して被膜内部の希釈溶剤を除去して、未硬化のハードコート層を形成した。
【0090】
次いで、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート(ダイキンファインケミカル研究所社製)の0.5%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を上記未硬化ハードコート層上にスピンコート法によって塗布し、これを60℃で3分間乾燥し、未硬化表面層を形成した。
【0091】
その後、実施例1と同じ電子線照射条件で、窒素気流下で電子線を照射してハードコート層と表面層とを同時に硬化させ、複合ハードコート層付き基板を得た。硬化されたハードコート層の膜厚は3.4μm、硬化された表面層の膜厚は約36nmであった。
【0092】
[比較例2]
紫外線/電子線硬化型ハードコート剤(JSR社製、デソライトZ7503)95重量部に、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(ダイキンファインケミカル研究所社製)5重量部を添加し、均一な組成物を調製した。上記組成物を、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板(直径12cm)上にスピンコート法により塗布した後、直ちに窒素気流下で電子線を照射して硬化させ、ハードコート層付き基板を作製した。電子線照射条件は実施例1と同じにした。硬化されたハードコート層の膜厚は4.0μmであった。
【0093】
(評価)
実施例1〜4及び比較例1〜2で作製した各試料について、以下に示す性能試験を行った。
【0094】
(1)耐摩耗性
スチールウール#0000を用い、試料のハードコート表面を、荷重4.9N/cm2 にて20往復摺動した際に生じた傷の程度を目視により判定した。判定基準は以下の通りである。
○:傷発生なし
△:僅かに傷発生
×:傷発生
【0095】
(2)撥水性及びその耐久性
試料のハードコート表面の水の接触角を測定した。測定は、作製から1日間室温放置後の試料(初期試料)、作製から1日間室温放置後の試料のハードコート表面を溶剤を含ませたウェスで摺動した後の試料、及び作製から30日間室温放置後の試料のハードコート表面を溶剤を含ませたウェスで摺動した後の試料それぞれについて行った。摺動条件は以下の通りであった。すなわち、不織布(旭化成工業社製、ベンコットリントフリーCT−8)にアセトンを含浸させ、荷重4.9N/cm2 にて50往復摺動した。接触角の測定は、協和界面科学社製、接触角計CA−Dを用いて、気温20℃、相対湿度60%の環境下で行った。
【0096】
(3)表面平滑性
試料のハードコート表面の平滑性を目視で確認した。試料表面を電灯光にかざし、斜め20〜30度の方向から観察して、表面層の均一性(微視的な凝集の有無)や、ハードコート層の表面性に起因すると考えられる凹凸やうねりの有無を確認した。判定基準は以下の通りである。
◎:表面層に微視的な凝集がなく均一であり、且つ、ハードコート層に凹凸やうねりが確認できない。
○+:表面層に微視的な凝集が見られるが極めて軽微であり、且つ、ハードコート層に凹凸やうねりが確認できない。
○−:表面層に微視的な凝集が見られるが、ハードコート層に凹凸やうねりが確認できない。
△:表面層に微視的な凝集が顕著に見られ、且つ、ハードコート層にも凹凸やうねりが見られる。
×:ハードコート層の凹凸やうねりが顕著であり、且つ白濁を生じている。
【0097】
【表1】

【0098】
以上の測定結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜4のハードコート層付き基板は、非常に高い表面硬度を有すると共に、撥水性に優れ、その耐久性も極めて良好であった。
【0099】
実施例1では、表面平滑性は実用レベルではあるが他の実施例に比べるとやや劣っていた。実施例2では、実施例1と同一の表面材料を用いたが、ハードコート層を半硬化状態とした後に表面材料層を形成したので、表面平滑性に優れていた。実施例3では、実施例1と同一の表面材料を用いたが、表面材料中におけるフッ化アクリレート濃度が低く、表面平滑性に優れていた。実施例4では、実施例1〜3の場合よりも分子量の小さい(約1000)パーフルオロポリエーテルジアクリレートを用いたので、表面平滑性に非常に優れていた。しかしながら、このパーフルオロポリエーテルジアクリレートは、分子量が小さいため撥水・撥油性を発現する主鎖の長さが短く、実施例1〜3に比べると撥水性が僅かに低かった。
【0100】
比較例1のハードコート層付き基板は、非常に高い表面硬度を有すると共に、初期の撥水性に優れ、表面平滑性にも優れていた。しかしながら、30日間室温放置した後にアセトン含浸ウェスで摺動するという過酷な試験条件下では、接触角の低下が見られた。アセトン含浸ウェスでの摺動によって防汚表面層が払拭され、接触角が低下したと考えられる。
【0101】
比較例2においては、比較例1と同じ材料を用いたにも係わらず、初期、ウェスでの摺動後ともに撥水性に著しく劣っていた。すなわち、活性エネルギー線硬化型樹脂にフッ化アクリレートを混合し、塗布・硬化させただけではフッ化アクリレート成分が塗膜表面に露出せず、所期の目的を達成できなかった。さらに、比較例2では、調製した組成物を基材表面に塗布している段階で著しい塗布ムラを生じるのが確認された。これは、スピンコート時に希釈溶剤が揮発し、相溶性のないアクリルモノマーとフッ化アクリレートとが急激に相分離を起こしたことによるものであり、この点からも、ハードコートとしての実用に耐えるものではなかった。
【0102】
[実施例5(参考例)]
この実施例は、複合ハードコート層が付与された光情報媒体(以下、光ディスクと略記する)の製造例である。この実施例では、相変化型の光ディスクを製造したが、本発明はこれに限らず、再生専用型の光ディスク、1回のみ記録可能な光ディスク等、記録層の種類によらず広く適用が可能である。
【0103】
図2は、複合ハードコート層が付与された光ディスクの一例の概略断面図である。図2において、光ディスク(11)は、支持基体(12)の情報ピットやプリグルーブ等の微細凹凸が形成されている側の面上に、反射層(13)、第2誘電体層(14)、相変化記録材料層(15)及び第1誘電体層(16)をこの順で有し、第1誘電体層(16)上に光透過層(18)を有し、光透過層(18)上にハードコート層(19)及び防汚表面層(20)を有する。この例では、反射層(13)、第2誘電体層(14)、相変化記録材料層(15)及び第1誘電体層(16)が記録層(17)を構成する。ハードコート層(19)及び防汚表面層(20)の両層を便宜的に複合ハードコート層という。光ディスク(11)は、防汚表面層(20)、ハードコート層(19)及び光透過層(18)を通して、記録又は再生のためのレーザー光が入射するように使用される。
【0104】
図2に示す層構成の光記録ディスクサンプルを以下のようにして作製した。
【0105】
情報記録のためにグルーブが形成されたディスク状支持基体(12)(ポリカーボネート製、直径120mm、厚さ1.1mm)の表面に、Al98Pd1 Cu1 (原子比)からなる厚さ100nmの反射層(13)をスパッタリング法により形成した。前記グルーブの深さは、波長λ=405nmにおける光路長で表してλ/6とした。グルーブ記録方式における記録トラックピッチは、0.32μmとした。
【0106】
次いで、反射層(13)表面に、Al2 3 ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ20nmの第2誘電体層(14)を形成した。第2誘電体層(14)表面に、相変化材料からなる合金ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ12nmの記録材料層(15)を形成した。記録材料層(15)の組成(原子比)は、Sb74Te18(Ge7 In1 )とした。記録材料層(15)表面に、ZnS(80モル%)−SiO2 (20モル%)ターゲットを用いてスパッタリング法により、厚さ130nmの第1誘電体層(16)を形成した。
【0107】
次いで、第1誘電体層(16)表面に、下記組成のラジカル重合性の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布し、紫外線を照射して、硬化後の厚さが98μmとなるように光透過層(18)を形成した。
【0108】
(光透過層:紫外線硬化型樹脂の組成)
ウレタンアクリレートオリゴマー 50重量部
(三菱レイヨン(株)製、ダイヤビームUK6035)
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート 10重量部
(東亜合成(株)製、アロニックスM315)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート 5重量部
(東亜合成(株)製、アロニックスM215)
テトラヒドロフルフリルアクリレート 25重量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 3重量部
【0109】
次いで、光透過層(18)上に、下記組成の紫外線/電子線硬化型ハードコート剤をスピンコート法により塗布した後、大気中60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去した。その後、大気中で弱い紫外線(高圧水銀灯、80mJ/cm2 )を照射して、半硬化させた状態のハードコート層(19)を形成した。
【0110】
(ハードコート剤の組成)
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%) 100重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
テトラヒドロフルフリルアクリレート 12重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 40重量部
(非反応性希釈溶剤)
イルガキュア184(重合開始剤) 5重量部
【0111】
次いで、パーフルオロポリエーテルジアクリレート(アウジモント社製、Fomblin Z DOL のアクリル変性品、分子量:約2000)の0.5%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を調製した。この表面材料溶液を上記半硬化ハードコート層(19)上にスピンコート法によって塗布し、これを60℃で3分間乾燥し、未硬化表面層(20)を形成した。
【0112】
その後、窒素気流下で電子線を照射することによりハードコート層(19)と表面層(20)とを同時に硬化させた。電子線照射装置Min−EB(ウシオ電機社製)を用い、電子線加速電圧を50kV、照射線量を5Mradとした。照射雰囲気の酸素濃度は80ppmであった。ハードコート層(19)の膜厚は2.5μm、表面層(20)の膜厚は約28nmであった。なお、表面層の膜厚は、パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業社製、デムナム)を標準物質として、蛍光X線分析(XRF)により測定した。このようにして、複合ハードコート層が付与された光記録ディスクサンプルNo.1を得た。
【0113】
[比較例3]
実施例5と同様にして、ディスク状支持基体(12)の表面上に、反射層(13)、第2誘電体層(14)、相変化記録材料層(15)及び光透過層(18)を順次形成した。
【0114】
次いで、光透過層(18)上に、実施例5で用いたのと同じ組成の紫外線/電子線硬化型ハードコート剤をスピンコート法により塗布した後、大気中60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去して、未硬化のハードコート層(19)を形成した。
【0115】
次いで、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート(ダイキンファインケミカル研究所社製)の0.5%(質量百分率)フロリナートFC−77(住友スリーエム社製)溶液を上記未硬化ハードコート層上にスピンコート法によって塗布し、これを60℃で3分間乾燥し、未硬化表面層を形成した。
【0116】
その後、実施例5と同じ電子線照射条件で、窒素気流下で電子線を照射してハードコート層と表面層とを同時に硬化させた。硬化されたハードコート層の膜厚は2.5μm、硬化された表面層の膜厚は約28nmであった。このようにして、複合ハードコート層付き光記録ディスクサンプルNo.2を得た。
【0117】
[比較例4]
実施例5と同様にして、ディスク状支持基体(12)の表面上に、反射層(13)、第2誘電体層(14)、相変化記録材料層(15)及び光透過層(18)を順次形成した。
【0118】
次いで、実施例5で用いたのと同じ組成の紫外線/電子線硬化型ハードコート剤95重量部に、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(ダイキンファインケミカル研究所社製)5重量部を添加し、均一な組成物を調製した。上記組成物を光透過層(18)上にスピンコート法により塗布した後、直ちに窒素気流下で電子線を照射して硬化させた。電子線照射条件は実施例5と同じにした。硬化されたハードコート層の膜厚は2.5μmであった。このようにして、単層からなるハードコート層付き光記録ディスクサンプルNo.3を得た。
【0119】
(評価)
実施例5及び比較例3〜4で作製した各光記録ディスクサンプルNo.1〜3のハードコート表面について、ハードコート層付き基板について行ったのと同様に、(1)耐摩耗性、(2)撥水性及びその耐久性、及び(3)表面平滑性の評価を行った。実施例5の光記録ディスクサンプルNo.1は、実施例2のハードコート層付き基板と同等の結果を示し、いずれの性能においても優れていた。また、比較例3の光記録ディスクサンプルNo.2は、比較例1のハードコート層付き基板と同等の結果を示し、比較例4の光記録ディスクサンプルNo.3は、比較例2のハードコート層付き基板と同等の結果を示した。
【0120】
上記実施例では、相変化型光ディスクへの複合ハードコート層の付与を示した。しかしながら、本発明は、記録層が相変化型の光ディスクのみならず、再生専用型光ディスクや、追記型光ディスクにも適用される。さらに、本発明は、光情報媒体のみならず、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及び各種表示素子にも適用される。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の複合ハードコート層が付与された物体の層構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の複合ハードコート層が付与された光ディスクの一例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0122】
(1) :対象物体
(2) :ハードコート層
(3) :防汚表面層
(11):光ディスク
(12):支持基体
(13):反射層
(14):第2誘電体層
(15):相変化記録材料層
(16):第1誘電体層
(18):光透過層
(19):ハードコート層
(20):防汚表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体表面に接するハードコート層とハードコート層表面に接する防汚表面層とを含む複合ハードコート層を形成する方法であって、
前記対象物体は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜及び各種表示素子から選ばれる物体であり、
ハードコート処理すべき対象物体表面に、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、
ハードコート剤組成物層表面上に、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料を成膜して表面材料層を形成し、
形成されたハードコート剤組成物層及び表面材料層に活性エネルギー線を照射して、前記両層を同時に硬化させ、対象物体表面に接するハードコート層とハードコート層表面に接する防汚表面層とを形成することを特徴とする、対象物体表面にハードコート層と防汚表面層とを含む複合ハードコート層を形成する方法。
【請求項2】
対象物体表面にハードコート剤組成物を塗布した後、乾燥して、ハードコート剤組成物中に含まれていた溶剤をハードコート剤組成物層から除去し、その後、表面材料層を形成する、請求項1に記載の複合ハードコート層の形成方法。
【請求項3】
対象物体表面にハードコート剤組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥して、活性エネルギー線を照射してハードコート剤組成物層を半硬化の状態として、その後、表面材料層を形成する、請求項1に記載の複合ハードコート層の形成方法。
【請求項4】
表面材料を塗布により成膜して表面材料層を形成し、その際に溶剤として、すでに形成されているハードコート剤組成物層中の活性エネルギー線硬化性化合物を実質的に溶解しない溶剤を用いる、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の複合ハードコート層の形成方法。
【請求項5】
ハードコート剤組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びメルカプト基の中から選択される少なくとも1つの反応性基を有するものである、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の複合ハードコート層の形成方法。
【請求項6】
物体表面に設けられたハードコート層とハードコート層表面に設けられた防汚表面層とを含む複合ハードコート層が付与された物体であって、
前記物体は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜及び各種表示素子から選ばれる物体であり、
ハードコート処理すべき対象物体表面に、活性エネルギー線硬化性化合物を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、
ハードコート剤組成物層表面上に、フッ素を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含む表面材料を成膜して表面材料層を形成し、
形成されたハードコート剤組成物層及び表面材料層に活性エネルギー線を照射して、前記両層を同時に硬化させ、対象物体表面に接するハードコート層とハードコート層表面に接する防汚表面層とを形成することにより得られる、物体表面に設けられたハードコート層とハードコート層表面に設けられた防汚表面層とを含む複合ハードコート層が付与された物体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−75825(P2006−75825A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256869(P2005−256869)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【分割の表示】特願2003−182184(P2003−182184)の分割
【原出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】