説明

複合パネルおよびその複合パネルによって形成した駆動装置の支持構造体

【課題】軽量かつ高強度を維持しつつ、制振機能や遮音機能に優れた複合パネルを提供する。また、駆動装置を良好に支持し得る駆動装置の支持構造体を提供する。
【解決手段】多数の凸部12を平面方向に分散配置した一方のパネルPと、一方のパネルPに対向配置される他方のパネルPとを備え、これら双方のパネルPどうしの間に空間を形成しつつ、多数の凸部12と他方のパネルPとが直接に接続され、空間に、一方のパネルPと他方のパネルPとに接触する介装材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の凸部を平面方向に分散配置した一方のパネルと、この一方のパネルに対向配置される他方のパネルとを備えた複合パネル、および、その複合パネルによって形成した駆動装置の支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量かつ高強度の複合パネルとして、トラスコアパネルが注目を集めている。この複合パネルは、例えば平面状の板状部材を加工してなる平面部から突出する4面体状の凸部を平面方向に分散配置した一方のパネルと、平板状の他方のパネルとを対向させると共に、一方のパネルの凸部の突端部と他方のパネルとを接合して構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような複合パネルは、例えば、自動車のドアパネルや飛行機の胴体部分など軽量かつ高強度が要求される対象物に用いられる。
対象物を構成する複合パネルには、対象物の自重や当該複合パネルに装着した機器等の荷重の他、風などの外力が作用する。例えば、一方のパネルから他方のパネルの側にこれらの面方向に対して垂直な力が作用すると、当該力は、凸部を介して他方のパネルに伝達される。このとき凸部の側面部に圧縮力が作用する。ただし、両パネルどうしの間には多数のトラス構造が構築されているため、各凸部の圧縮強度は極めて高いものとなる。
一方、前記垂直の外力が作用したとき複合パネルは一方側に撓み変形する。その結果、上記の場合には、凸部を形成した一方のパネルに対してその面方向に沿った圧縮応力が発生し、他方のパネルには面方向に沿った引張応力が作用する。しかし、この場合にも、双方の面に作用する圧縮・引張応力等はトラス構造を構築する各部材によって負担され、曲げ特性に優れた複合パネルを得ることができる。
このように、従来の複合パネルは、パネル自体を構成する部材厚さが小さく、圧縮強度及び曲げ強度に優れた軽量の構造部材として利用価値は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−112356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記利点を備えた複合パネルは、各種対象物に利用されるが、対象物によっては、エンジンやモータなど様々な振動や騒音を発生させる駆動装置を装着する場合も多い。これらの駆動装置は質量が大きいものもあるため、単にこれら駆動装置を支持するという面では複合パネルは極めて有効である。
しかしながら、対象物が上記車両や航空機などであってその運行に乗員や利用者が伴う場合には、強度以外に振動吸収性能や遮音特性にも優れている必要がある。特に制振性に優れていると、利用者等に対して快適な居住環境を提供することができる。また、対象物の耐久性の面からは、エンジン等の振動が他の機構部に伝達されるのを遮断することで、それら機構部を保護することにもなるため、対象物全体としての耐久性が向上する。
【0006】
従来の複合パネルでは、パネルの内部に所定の空間が形成されるため、ある程度の遮音性は確保されていた。しかし、制振性においては、その構造の複雑さのためか特段の処置はなされておらず、未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、軽量かつ高強度を維持しつつ、制振機能や遮音機能に優れた複合パネルを提供する点にある。また、駆動装置を良好に支持し得る駆動装置の支持構造体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合パネルの第1特徴構成は、多数の凸部を平面方向に分散配置した一方のパネルと、当該一方のパネルに対向配置される他方のパネルとを備え、これら双方のパネルどうしの間に空間を形成しつつ、前記多数の凸部と前記他方のパネルとが直接に接続され、前記空間に、前記一方のパネルと前記他方のパネルとに接触する介装材を設けた点にある。
【0009】
当該複合パネルを構成する部材は板状の場合が多く、用いられる環境によっては各部位の部材どうしが共振して振動・騒音が収まらない場合も考えられる。しかし、本構成のごとく、多数の凸部を平面方向に分散配置した一方のパネルと、この一方のパネルに対向配置される他方のパネルとを直接に接触させると共に、双方のパネルどうしの間に形成された空間に、一方のパネルと他方のパネルとに接触する介装材を設けることで、各パネルを構成する面部材に生じる振動を介装材が良好に減衰・吸収することとなる。これにより、制振性・遮音性に優れた複合パネルを得ることができる。
また、一方のパネルには多数の凸部を平面方向に分散配置してあるから、当該一方のパネルの剛性が高まる。このように剛性が高まる構成であれば、一方のパネル自身の板厚を薄くすることも可能となる。よって、本構成であれば、軽量かつ高強度な複合パネルを得ることができる。
尚、本発明の特徴事項における用語「凸部」とは、平面から突出した部分をいう。
【0010】
さらに、介装材は双方のパネルどうしの間に収容するから、介装材の配設に際して複合パネルのサイズを拡大する必要はない。このように本構成であれば、各部への設置の自由度については従来のパネルと同等の特性を維持しつつ、制振機能等に優れた複合パネルを得ることができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記他方のパネルが多数の凸部を平面方向に分散配置してあり、前記一方のパネルの凸部と前記他方のパネルとを接合した点にある。
【0012】
本構成のごとく、前記他方のパネルにも、多数の凸部を平面方向に分散配置することで、当該他方のパネルの剛性を高めることができる。よって、他方のパネルを構成する板材の厚みを薄くして複合パネルの全体重量をさらに軽減すること等も可能となる。
尚、本構成の複合パネルでは、前記一方のパネルの凸部は前記他方のパネルに必ず接合されるが、前記他方のパネルの凸部は、必ずしも前記一方のパネルに接合される必要はない。例えば、一方のパネルの凸部の高さが、他方のパネルの凸部の高さよりも高く形成してあるような場合には、一方のパネルの凸部が他方のパネルの凸部ではない基端部に接合され、他方のパネルの凸部は一方のパネルには当接しないという構成も採り得る。このような場合には、他方のパネルの凸部はあたかも介装材を噛み込んだような状態となり、介装材をより確実に保持することができる。このように本構成であれば、当該複合パネルを長期に使用する際にも、内部の介装材が位置ずれするような不都合が生じず、複合パネルの耐久性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記他方のパネルが多数の凸部を平面方向に分散配置してあり、前記一方のパネルの凸部と前記他方のパネルの凸部とを接合した点にある。
【0014】
本構成のごとく、一方のパネルの凸部と他方のパネルの凸部とを接合する構成であれば、複合パネルの内部に所定の厚みを確保する場合に、夫々のパネルに形成する凸部の高さを低く設定することができる。例えば、一方のパネルのみに凸部を形成する場合に比べて、双方のパネルに等しい高さの凸部を形成した場合には、一方のパネルの凸部の高さは半分でよい。また、双方のパネルとして同じ形状のパネルを使用することも可能となる。よって、本構成であれば、各パネル部材を効率的に形成しながら、介装材を配設する内部空間を確実に確保することができ、極めて合理的な複合パネルを得ることができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記一方のパネルの凸部の側面と前記他方のパネルの凸部の側面とを接合した点にある。
【0016】
本構成のごとく、一方のパネルの凸部の側面と他方のパネルの凸部の側面とを接合するものであれば、一方のパネルの凸部の側面と他方のパネルの凸部の側面との接触箇所を変更することにより、複合パネルの厚みを調整することができる。よって、複合パネルを設置するためのスペースや介装材の厚みに合わせて、双方のパネルどうしの間の空間の幅を調整することができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記空間が前記介装材を個々に配置可能な小空間に仕切られるよう、前記一方のパネルの凸部と前記他方のパネルの凸部との接触部により仕切部を形成した点にある。
【0018】
本構成のごとく、仕切部によって空間が介装材を個々に配置可能な小空間に仕切ることで、介装材が平面方向に移動していずれかの箇所に偏ることを防止できる。よって、防振効果および遮音効果を長期に亘って維持することができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記仕切部に、隣接する前記小空間どうしを連通する連通孔を設けた点にある。
【0020】
本構成のごとく、仕切部に、隣接する小空間どうしを連通する連通孔を設けることで、例えば、介装材を配設する際に、流動性のある介装材を各小空間に充填するとき等に便利である。その場合、介装材の原料を一つの小空間に注入するだけで、当該小空間から溢出した原料が連通孔を介して隣接する小空間にも注入される。このように、本構成であれば、複合パネルの空間に介装材を効率よく配設することができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、前記連通孔で相互に連通された一連の小空間のうち少なくとも何れか一つの小空間と外部空間とを連通する外部連通孔を設けた点にある。
【0022】
本構成のごとく、一連の小空間のうち少なくとも何れか一つの小空間と外部空間とを連通する外部連通孔を設けることで、例えば、まず、一方のパネルと他方のパネルとを接合して複合物を形成しておき、その後、介装材を外部連通孔から注入することができる。よって、複合パネルの製造が極めて容易となる。
尚、このような外部連通孔は、介装材を複合パネルの内部空間に注入するために、相互に連通した一連の小空間に対して少なくとも一つ設けてあればよい。ただし、当該一連の小空間に対して外部連通孔を一対設け、一方の外部連通孔から介装材の原料を注入すると共に、他方の外部連通孔から小空間の空気を外部に排出するようにすれば、小空間に介装材の原料を充填し易くなる。
【0023】
本発明の第8特徴構成は、前記凸部が多角錐体状であって、前記一方のパネルの凸部の稜線と、前記他方のパネルの凸部の稜線とを接続した点にある。
【0024】
本構成のごとく、一方のパネルの凸部の稜線と他方のパネルの凸部の稜線とを接続することで各凸部の剛性が高まるうえ、一方のパネルの凸部と他方のパネルの凸部との接触面積が広くなって、パネル強度が格段に向上する。
また、双方のパネルの凸部の稜線どうしが接続されることで、内部空間が小空間に仕切られるため小空間の仕切りを構成するのに便利である。
【0025】
本発明の駆動装置の支持構造体に係る特徴構成は、
前記介装材として防振材を配設した上記何れかの構成の複合パネルによって、振動を伴う駆動装置を支持する支持構造体を構成した点にある。
【0026】
本構成のごとく、防振材を配設した複合パネルによって駆動装置から発生する振動を吸収することで、支持構造体を対象物に取り付けた場合、駆動装置から発生する振動によって対象物に装着された他の機構部に悪影響を及ぼしたり、乗員や利用者に不快感を与えること等を防止できる。よって、当該駆動装置を組込んだ対象物全体の静寂性や、対象物全体としての耐久性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】支持構造体によって駆動装置を支持する状態を示す図である。
【図2】パネルおよび介装材を示す斜視図である。
【図3】凸部、小空間および介装材を示す斜視図である。
【図4】複合パネルを示す平面図である。
【図5】複合パネルを示すV−V矢視断面図である。
【図6】複合パネルを示すVI−VI矢視断面図である。
【図7】複合パネルを示すVII−VII矢視断面図である。
【図8】第2実施形態における複合パネルを示す平面図である。
【図9】第2実施形態における複合パネルを示すIX−IX矢視断面図である。
【図10】第2実施形態における複合パネルを示すX−X矢視断面図である。
【図11】別実施形態における複合パネルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
本発明の複合パネルにつき、以下、図面を参照しながら説明する。
本発明の複合パネルは、図2〜図4に示す如く、多数の凸部12を平面方向に分散配置した一方のパネルPと、当該一方のパネルPに対向配置される他方のパネルPとを備えている。これら双方のパネルPどうしの間には空間が形成されている。多数の凸部12はこれと対向する他方のパネルPに対して直接に接続され、これにより、各パネルを構成する部位どうしが一種のトラスを形成して軽量かつ高強度の複合パネルを得ることができる。本発明の複合パネルの内部には、特に、その内部の空間に介装材を備えた点に特徴がある。後述する如く、当該介装材が一方のパネルと他方のパネルとに接触することで、パネルに伝達される振動を低減化し、騒音を遮音することができる。
【0029】
本発明の複合パネルは、例えば、図1に示すように、自動車にエンジンやモータMを取り付ける際のブラケットBとして利用することができる。このブラケットBは、取付パネル1の穴部1aの縁部にボルト連結する連結部2と、その連結部2から突出してモータMを取り付ける取付部3と、を備えている。モータMの回転軸に接続されたウォームギヤ4は、取付パネル1の穴部1aを貫通して取付パネル1のモータMとは反対側に突出している。複合パネルは、対向する一対の金属製のパネルPの間に例えばウレタンフォーム製の防振材5(介装材の一例)を配設して構成されている。尚、当該ウレタンフォームは、遮音材としても利用される。
【0030】
前記パネルPは、図2〜図4に示すように、平面部11と、その平面部11から内方側に突出する四面体状の凸部12と、を備えている。凸部12は、パネルPの全面に亘って分散配置してある。尚、図中の実線部分は、下に載置した一方のパネルPであり、図中の2点鎖線部分は前記一方のパネルPに被せた他方のパネルPを示す。
前記凸部12は、3つの正三角形状の側面部12aと、3つの基端頂点部12bと、1つの突端部12cと、3つの基端頂点部12b同士を結ぶ3つの基端辺部12dと、基端頂点部12bおよび突端部12cを結ぶ3つの稜線部12eと、を備えている。平面方向に沿って隣接する3つの凸部12どうしが頂点を共有している。
平面方向に沿って隣接する凸部12同士の間には、平面部11の三角状部分13が形成されている。よって隣接する凸部12および三角状部分13どうしが辺を共有している。一方のパネルPの突端部12cを他方のパネルPの基端頂点部12bに接合し、一方のパネルPの基端頂点部12bを他方のパネルPの突端部12cに接合してある。
【0031】
このとき、図3〜図7に示すように、一方のパネルPの1つの凸部12の稜線部12eの全部が、他方のパネルPの上記1つの凸部12に隣接する3つの凸部1の稜線部12eの全部に線接触している。これにより、双方のパネルPどうしの間の空間を複数の8面体状の閉じた小空間14に仕切る仕切部が形成される。当該稜線部12eどうしの接触部は互いに接触するだけであっても良いし、互いに強固に接続してあっても良い。小空間14の内部には、防振材5が充填される。
【0032】
モータMを駆動させたときに、モータMが電磁振動又は機械振動する。このとき、ブラケットBの防振材5がモータMの振動を吸収する。よって、モータMから自動車の乗員に伝達する振動が大幅に低減され、乗員が不快感を抱くことがない。また、モータMから他の部材への振動の伝達が低減することで、他の機構部に悪影響を及ぼすことも防止できる。
【0033】
さらに、防振材5は双方のパネルPどうしの間に収容するから、防振材5を双方のパネルPの外方側に設けるに比して、複合パネルの厚みを拡大する必要はない。よって、ブラケットBを取り付ける際にブラケットBと各種機器類との間のスペースが狭くなってブラケットBが取り付け難くなり、モータMが各種機器類に干渉するのを抑制することができる。
【0034】
モータMの荷重や振動等によってブラケットBには様々な方向の力が作用する。このとき、一方のパネルPの稜線部12が、他方のパネルPの稜線部12に線接触しているので、パネルPに作用する外力に対する耐力が高まり、突端部12cが座屈し難くなる。よって、パネルPの耐久性を高めることができる。
【0035】
(複合パネルの成形工程)
複合パネルの組み立てに際しては、例えば、対向する一対のパネル支持金型(図外)によって夫々のパネルPを支持する。図2に示すように、一対のパネルPの間にウレタンフォームを配置する。一対のパネル支持金型を近接移動させて型締めを行う。このとき、双方のパネルPの稜線部12eの押圧によってウレタンフォームが分割され、双方のパネルPの三角状部分13および側面部12aの押圧によってウレタンフォームが小空間14の形状に合わせて塑性変形する。
【0036】
(パネルの接合工程)
パネルPが金属である場合には、例えばスポット溶接等によって一対のパネルPどうしを溶接する。これにより、一対のパネルPと防振材5とが強固に一体化された複合パネルを得る。ただし、一方のパネルPの基端頂点部12bと他方のパネルPの突端部12cとの間にウレタンフォームが残存すると、スポット溶接が不十分となる。このような事態を避けるために、ウレタンフォームのうち前記凸部と干渉しそうな箇所を予め薄肉に形成しておくと好都合である。
【0037】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、夫々の凸部の稜線どうしが当接する例を示した。しかし、この例の他に、図8〜図10に示す如く、パネルPの稜線部12eに切欠を形成するものであっても良い。本構成であれば、一対のパネル支持金型を型締めしたときに、切欠の部位で稜線部12eどうしの接触部に、隣接する小空間14どうしを連通する連通孔22が形成される。
【0038】
本構成であれば、例えば複合パネルを作製する際に流動性を備えた各種樹脂材料を用いる場合に便利である。本構成の場合、一対のパネルPどうしを予め接合して複合パネルの形状に仕上げておく。次に、流動状の材料を注入するに際し、材料注入用のノズルを連通孔22の少なくとも1つに接続する。材料の注入に伴い、材料は、まず連通孔22を通して小空間14に充填される。当該小空間14への充填が終了すると、その小空間14から溢出した材料は、連通孔22を介して隣接する小空間14に流入する。このような充填が順次繰り返され、相互に連通する全ての小空間14に材料が充填される。
【0039】
材料が全ての小空間14に隙間無く充填されるには、全ての稜線部12eに切欠を形成することが好ましい。ただし、材料が外部に漏れるのを防止するために、当該切欠は、外部との仕切りを構成する稜線部12eには設けないのが好ましい。
【0040】
尚、図11に示す如く、連通孔22で相互に連通された一連の小空間24を一つのブロックとみなし、このブロックの最外壁部を構成する稜線部12eには切欠を設けないようにしてもよい。この場合、一連の小空間24に介装材を注入するための外部連通孔23を一対のパネルPの何れかの表面に形成しておく。当該外部連通孔23は、一つのブロックに対して少なくとも一つ設けておけば、介装材の注入が可能となる。ただし、二つ設けることで、一方を注入孔とし、他方を空気排出孔として利用することができるため、介装材の注入作業が円滑なものとなる。このようなブロックを複合パネル部材の平面方向に沿って多数設けておき、夫々のブロックに対して介装材を一度に注入することとすれば、複合パネルの製造工数が大幅に削減される。
【0041】
尚、介装材を注入する方法は、上記のごとく、注入用の孔部に対してノズル等を用いて行う方法の他に、接合した一対のパネルPを流動状の介装材を保持した貯留層の中に浸漬させるものであってもよく、各種の手法を適用可能である。
〔その他の実施形態〕
【0042】
(1)上記各実施形態では、一対のパネルPの間にウレタンフォームあるいは流動性の材料を配設する例を示した。しかし、この他に、予め複合パネルの内部空間の形状に合わせた介装材を個々の小空間に設置しつつ双方のパネルPを接合しても良い。この場合には、介装材を一対のパネルPの少なくとも何れか一方に接着しておくとパネルPを構成する部材の振動等をより確実に拘束できるから、制振・遮音機能を高めることができる。
【0043】
(2)上記各実施形態では、一方のパネルPの稜線部12eの全部が、他方のパネルPの稜線部12eの全部に線接触する構成を例示した。しかし、一方のパネルPの稜線部12eの突端側の一部が、他方のパネルPの稜線部12eの突端側の一部に線接触しつつ接合する構成としてもよい。これにより、一方のパネルの稜線部12eと他方のパネルの稜線部12eとの接触箇所を変更すれば、複合パネルの厚みを調整できる。
【0044】
(3)さらに、一方のパネルPの突端部12cが、他方のパネルPの突端部12cに点接触しつつ接合する構成としてもよい。これにより、複合パネルの内部に所定の厚みを確保する場合において、夫々のパネルPに形成する凸部12の高さを低く設定することができる。例えば、一方のパネルPのみに凸部12を形成する構成では、凸部12の高さを所定の厚みとほぼ同じにする必要がある。これに対し、双方のパネルPに等しい高さの凸部12を形成する構成では、凸部12の高さが所定の厚みのほぼ半分で済む。また、双方のパネルPとして同じ形状のパネルPを使用することも可能となる。
【0045】
(4)介装材の素材としては、上記ウレタンフォームに限られるものではなく、通常のゴムや発泡ゴムなどの各種ゴム、あるいは、合成樹脂、スポンジ等であっても良い。複合パネルに備えるべき特性が制振性であるか或いは遮音性であるか等、用途に応じて介装材は適宜選択自由である。
例えば、介装材が変形程度の少ないゴムである場合等には、予め複合パネルの内部空間の形状に合わせたゴムを個々の小空間に設置しつつ双方のパネルPを接合しても良い。この場合には、ゴムを一対のパネルPの少なくとも何れか一方に接着するものであっても良い。また、一対のパネルPによって原料ゴムを挟み込み、複合パネルの内部空間に原料ゴムを充填し、複合パネルを加熱して原料ゴムを加硫させた後、双方のパネルPを接合しても良い。ゴムは、重量が大きく、ゴム弾性を有するため、防振材として好都合である。
【0046】
(5)パネルPの材料としては各種の材料を用いることができる。例えば、金属の他に合成樹脂等であっても良い。合成樹脂製のパネルPを接合するには、接着剤による接着の他、熱溶着、超音波溶着等が適応可能である。
【0047】
(6)一対のパネルPは、夫々を予め別のロール金型に巻きつけた帯状の凹凸板を用いて形成しても良い。この場合、双方のパネルPを互いに近接させつつ両パネルPの間に介装材を順次供給して複合パネルを連続形成する。得られた長尺状の複合パネルは適宜所定幅にカットすると良い。
【0048】
(7)上記各実施形態では、一対のパネルPの夫々が凸部12を備える構成を例示した。しかし、一方のパネルPが凸部12を備え、他方のパネルPを単なる平板状に構成し、一方のパネルPの正四面体12の突端部12cを他方のパネルPに接合しても良い。
【0049】
(8)
一方、本発明の複合パネルは、一方のパネルおよび他方のパネルの双方に、平面方向に沿った多数の凸部を備えると共に、一方のパネルの凸部と他方のパネルとを接合した構成であっても良い。例えば、図示は省略するが、双方のパネル共に、基端部である平坦部と、当該平坦部から突出した多数の凸部とを備えた構成とし、一方のパネルの凸部の高さを他方のパネルの凸部の高さよりも高く形成しておく。このような両パネルを接合する際に、一方のパネルの凸部は他方のパネルの前記平坦部に接合し、他方のパネルの凸部は、前記一方のパネルの平坦部に届かない状態にする。
【0050】
本構成の如く、他方のパネルにも多数の凸部を平面方向に分散配置することで、他方のパネルの剛性を高めることができる。よって、他方のパネルを構成する板材の厚みを薄くすること等が可能となり、複合パネルの全体重量を軽減される等の利益を得ることができる。
尚、本構成の複合パネルでは、前記一方のパネルの凸部は前記他方のパネルに必ず接合されるが、前記他方のパネルの凸部は、必ずしも前記一方のパネルに接合される必要はない。例えば、一方のパネルにおける基端部からの凸部の高さが、他方のパネルにおける基端部からの凸部の高さよりも高く形成してあるような場合には、一方のパネルの凸部が他方のパネルの凸部ではない基端部に接合され、他方のパネルの凸部は一方のパネルには当接しないという構成も採り得る。このような場合には、他方のパネルの凸部は内部に配置される介装材を噛み込んだ状態となり、介装材をより確実に保持することができる。このように本構成であれば、当該複合パネルを長期に使用する際にも、内部の介装材が位置ずれするような不都合が生じず、複合パネルの耐久性を向上させることができる。
【0051】
(9)パネルPに備える凸部の形状としては、三角錐状の四面体に限られるものではなく、四角錐などの多角錐体状にしたり、円錐状のものとしても良い。さらには、半球状等の凸曲面状としても良いし、上記錐体状の先端を切断する截頭錐体状としても良い。このような構成を採用することにより、凸部の耐座屈性を改善し、凸部どうしの当接具合を任意に設定することができる。
【0052】
(10)凸部12は、パネルPの全面に亘って分散配置するものではなく、凸部12として閉ループ状や格子状の連続した凸部を配置しても良い。このとき、閉ループの内部や格子間に介装材を設けることになる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の複合パネルは、広く一般の工業製品のうち、軽量かつ高強度が要求され、さらに、制振性能・遮音性能が求められる構造部材として利用可能である。特に、駆動に際して振動や騒音を発するような駆動装置の支持構造部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
5 防振材、介装材
12 凸部
12e 稜線、側面、仕切部
14 小空間
22 連通孔
23 外部連通孔
24 一連の小空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の凸部を平面方向に分散配置した一方のパネルと、
当該一方のパネルに対向配置される他方のパネルとを備え、
これら双方のパネルどうしの間に空間を形成しつつ、前記多数の凸部と前記他方のパネルとが直接に接続され、
前記空間に、前記一方のパネルと前記他方のパネルとに接触する介装材を設けた複合パネル。
【請求項2】
前記他方のパネルが多数の凸部を平面方向に分散配置してあり、
前記一方のパネルの凸部と前記他方のパネルとを接合してある請求項1に記載の複合パネル。
【請求項3】
前記他方のパネルが多数の凸部を平面方向に分散配置してあり、
前記一方のパネルの凸部と前記他方のパネルの凸部とを接合してある請求項1に記載の複合パネル。
【請求項4】
前記一方のパネルの凸部の側面と前記他方のパネルの凸部の側面とを接合してある請求項3に記載の複合パネル。
【請求項5】
前記空間が前記介装材を個々に配置可能な小空間に仕切られるよう、前記一方のパネルの凸部と前記他方のパネルの凸部との接触部により仕切部を形成してある請求項2〜4の何れか1項に記載の複合パネル。
【請求項6】
前記仕切部に、隣接する前記小空間どうしを連通する連通孔を設けてある請求項5に記載の複合パネル。
【請求項7】
前記連通孔で相互に連通された一連の小空間のうち少なくとも何れか一つの小空間と外部空間とを連通する外部連通孔を設けてある請求項6に記載の複合パネル。
【請求項8】
前記凸部が多角錐体状であって、前記一方のパネルの凸部の稜線と、前記他方のパネルの凸部の稜線とを接続してある請求項2〜7の何れか1項に記載の複合パネル。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の前記複合パネルにおいて、
前記介装材として防振材を配設した前記複合パネルによって形成した、振動を伴う駆動装置を支持する支持構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−270787(P2010−270787A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121060(P2009−121060)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】