説明

複合パネルの取付構造

【課題】厚みの異なる断熱パネルに対応でき、また、断熱パネルのボルト以外の部分に作用する力に対応し得る複合パネルの取付構造を提供する。
【解決手段】複合パネルの取付構造1は、外壁パネル30に固定され、当該外壁パネル30から断熱パネル31を貫通し断熱パネル31の裏面側に突出するボルト50と、断熱パネル31の裏面のボルト50が突出する位置に設けられた保護板13と、保護板13の裏面のボルト50が突出する位置に設けられ、一部で定規金物11の裏面側を押さえる裏当て板14と、裏当て板14の裏面側からボルト50に締め付けられるナット51と、を有している。保護板13は、ボルト50のネジ部に適合するネジ穴13aを有し、ネジ穴13aにボルト50を嵌め込むことにより保護板13がボルト50に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合パネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリート(ALC)等のコンクリート系の外壁パネルで外壁を構成した建物において、断熱性能の向上を図るため、外壁パネルの裏面に合成樹脂発泡体からなる断熱パネルを貼着し、複合パネルを構成することがある。
【0003】
複合パネルは、建物の梁などの軸組に取り付けられた金物(定規部材)に対して、外壁パネルの貫通ボルトや埋め込みボルトを用いて取り付けられるが、外壁パネルと定規部材との間に断熱パネルが挟み込まれていると、外壁パネルや定規部材に外力が作用した際に、断熱パネルが定規部材から圧縮力を受けて圧壊する恐れがある。そこで、定規部材のある梁部分には、断熱パネルを外壁パネルの裏面に貼着せずに、梁を迂回するように断熱材を配置することが考えられている。しかし、この場合、施工に手間がかかり、材料費も嵩む。また、当該梁に直交するように他の梁が接合されている部分等、断熱材が連続しない部分が生じ、その部分の断熱性が低下してしまう。
【0004】
特許文献1には、外壁パネルの全体に断熱パネルを配置し、外壁パネルを固定するボルトの部分に補強部材を設け、補強部材のプレート(鍔状部分)を、断熱パネルと取付金物との間に配置することが記載されている。これにより、断熱パネルの圧壊を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−036583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記補強部材は断熱パネルの厚みの変更には対応できず、断熱パネルの厚みの変更に応じて、スリーブの長さの異なる補強部材を用意しなければならない。また、断熱パネルのボルト穴の部分で集中的に圧縮力を受けているので、ボルトから離れた位置に作用する圧縮力には対応しきれない。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、厚みの異なる断熱パネルに対応でき、また、断熱パネルのボルト穴から離れた位置に作用する圧縮力にも対応し得る複合パネルの取付構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、外壁パネルと、当該外壁パネルの裏面を覆う断熱パネルとからなる複合パネルを、建物の軸組に取り付けられた定規部材に取り付けるための複合パネルの取り付け構造において、前記外壁パネルに固定され、当該外壁パネルから前記断熱パネルを貫通し当該断熱パネルの裏面側に突出するボルトと、前記断熱パネルの裏面の前記ボルトが突出する位置に設けられた保護板と、前記保護板の裏面の前記ボルトが突出する位置に設けられ、一部で前記定規部材の裏面側を押さえる裏当て板と、前記裏当て板の裏面側から前記ボルトに締め付けられるナットと、を有し、前記保護板は、前記ボルトのネジ部に適合するネジ穴を有し、当該ネジ穴に前記ボルトを嵌め込むことにより前記保護板が前記ボルトに固定されている、複合パネルの取付構造である。
【0009】
本発明によれば、保護板のネジ穴にボルトを嵌め込むことにより保護板がボルトに固定されているので、外壁パネルや定規部材に外力が作用しても、保護板と外壁パネルの間の断熱パネルに直接的に圧縮力が加わることが防止され、断熱パネルの圧壊が防止される。また、断熱パネルの厚みの変更にも容易に対応できるので、汎用性が高い。さらに、保護板の面で圧縮力を受けることができるので、断熱パネルのボルトから離れた位置に作用する圧縮力にも対応できる。
【0010】
前記複合パネルの取付構造は、前記外壁パネルと前記断熱パネルとの間に介在された固定板を有し、前記固定板は、前記ボルトのネジ部に適合するネジ穴を有し、当該ネジ穴に前記ボルトを嵌め込むことにより前記固定板が前記ボルトに固定されていてもよい。かかる場合、外壁パネルから断熱パネルに直接的に力が作用することが防止され、これによっても断熱パネルの圧壊が防止される。また、外壁パネルを裏面側から押さえたり、保護板と間に断熱パネルを挟むことができるので、外壁パネルや断熱パネルの振動等を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異なる厚みの断熱パネルに対応できので、汎用性が向上し、複合パネルの取付構造の生産コストを低減できる。また、より広範囲にわたり断熱パネルの圧壊を防止できるので、建物の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】複合パネルの取付構造の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図2】複合パネルの取付構造の構成を示す説明図である。
【図3】複合パネルの取付構造の保護板の部分の拡大断面図である。
【図4】固定板を有する複合パネルの取付構造の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図5】固定板を有する複合パネルの取付構造の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る複合パネルの取付構造1の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【0014】
複合パネルの取付構造1は、例えば図1及び図2に示すように例えば建物の軸組の床梁10と、定規部材としての定規金物11と、複合パネル12と、保護板13と、裏当て板14等を有している。
【0015】
定規金物11は、例えば縦断面がL字形状あるいはT字形状を有する長尺の部材であり、上下の床梁10に沿って水平方向に延びている。定規金物11は、床梁10に固定された水平片20と、複合パネル12が固定される垂直片21を有している。
【0016】
複合パネル12は、外壁パネル30と、外壁パネル30の裏面(室内側の面、以下同様)の全面を覆う断熱パネル31からなる。外壁パネル30は、例えば軽量気泡コンクリートからなる。
【0017】
断熱パネル31は、例えばフェノール樹脂発泡体(フェノールフォーム)の両面にポリエステル不織布を張り合わせたものである。断熱パネル31の幅寸法及び高さ寸法は、外壁パネル30の幅寸法及び高さ寸法とほぼ等しく対応している。建物の外壁は、複合パネル12が上下左右に並べられて構成されている。
【0018】
例えば外壁パネル30には、外壁パネル30に埋設され、当該外壁パネル30から断熱パネル31の孔31aを貫通しその裏面側に突出するボルト50が設けられている。ボルト50は、定規金物11に近い位置に突出している。
【0019】
保護板13は、断熱パネル31の裏面のボルト50が突出する位置に設けられている。保護板13は、例えば円板形状を有し、断熱パネル31の裏面に接触している。図3に示すように保護板13は、中央にボルト50のネジ部に適合するネジ穴13aを有し、当該ネジ穴13aにボルト50を嵌め込むことによりボルト50に固定されている。保護板13は、例えば断熱パネル31よりも強度が高い鋼板により形成されている。
【0020】
図1〜図3に示すように裏当て板14は、保護板13の裏面のボルト50が突出する位置に設けられている。裏当て板14は、例えば方形状でわずかに屈曲している。裏当て板14には、孔14aが形成されている。裏当て板14は、一部が定規金物11の垂直片21の裏面を覆い、他の部分が保護板13の裏面を覆って、定規金物11と保護板13に跨るようにボルト50に挿入されている。裏当て板14の裏面側に突出するボルト50には、ワッシャー51及びナット52が取り付けられている。このナット52を締めることによって、複合パネル12が定規金物11の垂直片21に引き寄せられ、裏当て板14を介して床梁10に固定されている。
【0021】
図2に示すように断熱パネル31の裏面側には、断熱パネル31を貫通し外壁パネル30に達するタッピングビス60が設けられている。このタッピングビス60により断熱パネル31が外壁パネル30に固定されている。タッピングビス60は、ワッシャー61を介して断熱パネル31に挿入されている。
【0022】
本実施の形態にかかる複合パネルの取付構造1によれば、保護板13がネジ穴13aによりボルト50に固定されているため、外壁パネル30や定規金物11に外力が作用しても、外壁パネル30と保護板13が互いに動かず、断熱パネル31に直接圧縮力が加わることがない。よって、断熱パネル31の圧壊が防止される。また、断熱パネル31の厚みが変わっても、保護板13のボルト50へのねじ込み量を変えることで対応できる。よって断熱パネル31の厚みの変更に容易に対応できるので、汎用性がある。また、保護板13の面全体で外力を受けることができるので、断熱パネル31のボルト50から離れた位置に作用する圧縮力にも対応できる。
【0023】
以上の実施の形態で記載した複合パネルの取付構造1において、図4及び図5に示すように外壁パネル30と断熱パネル31の間に固定板70を設けてもよい。この場合、固定板70は、例えば上記保護板13と同様に円形状を有し、中央にボルト50のネジ部に適合するネジ穴70aを備えている。固定板70は、ネジ穴70aにボルト50を嵌め込むことによりボルト50に固定されている。また、固定板70は、例えば外壁パネル30よりも強度が高い鋼板により形成されている。
【0024】
かかる場合、固定板70は、外壁パネル30を裏面側から押さえるとともに、断熱パネル31を保護板13との間に挟むことができる。よって、例えば外壁パネル30や断熱パネル31の振動等を抑えることができる。また、外壁パネル30と断熱パネル31が直接接することを抑制できるので、外壁パネル30からの外力が断熱パネル31に直接作用することが抑制され、これによっても断熱パネル31の圧壊を防止できる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0026】
例えば上記実施の形態で記載した保護板13や固定板70、ボルト50、定規金物11等の形状は他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、複合パネルの取付構造において、多様な厚みの断熱パネルに対応でき、またボルト以外の位置の断熱パネルの圧縮力にも対応できるようにする際に有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 複合パネルの取付構造
10 床梁
11 定規金物
12 複合パネル
13 保護板
13a ネジ穴
14 裏当て板
30 外壁パネル
31 断熱パネル
50 ボルト
51 ワッシャー
52 ナット
70 固定板
70a ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルと、当該外壁パネルの裏面を覆う断熱パネルとからなる複合パネルを、建物の軸組に取り付けられた定規部材に取り付けるための複合パネルの取り付け構造において、
前記外壁パネルに固定され、当該外壁パネルから前記断熱パネルを貫通し当該断熱パネルの裏面側に突出するボルトと、
前記断熱パネルの裏面の前記ボルトが突出する位置に設けられた保護板と、
前記保護板の裏面の前記ボルトが突出する位置に設けられ、一部で前記定規部材の裏面側を押さえる裏当て板と、
前記裏当て板の裏面側から前記ボルトに締め付けられるナットと、を有し、
前記保護板は、前記ボルトのネジ部に適合するネジ穴を有し、当該ネジ穴に前記ボルトを嵌め込むことにより前記保護板が前記ボルトに固定されている、複合パネルの取付構造。
【請求項2】
前記外壁パネルと前記断熱パネルとの間に介在された固定板を有し、
前記固定板は、前記ボルトのネジ部に適合するネジ穴を有し、当該ネジ穴に前記ボルトを嵌め込むことにより前記固定板が前記ボルトに固定されている、請求項1に記載の複合パネルの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91988(P2013−91988A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235080(P2011−235080)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】