説明

複合ファイバーおよびかかるファイバーを含む糸

本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ステープルファイバーであって、約2:1〜約5:1のアスペクト比A:B(Aはファイバー断面長軸長であり、Bはファイバー断面短軸長である)を有する略卵形の断面形状、長軸に実質的に垂直のポリマー界面、サイド−バイ−サイドおよび偏心シース−コアよりなる群から選択される断面構造、約1.1cN/dtex〜約3.5cN/dtexの10%伸びでのテナシティ、約40%〜約85%のフリー−繊維長保持率、ならびに約30%〜55%のトウ捲縮発現値を有する複合ステープルファイバーと、該複合ステープルファイバーを含む紡績糸とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル・ステープルファイバーに、ならびにかかるポリエステル・ステープルファイバーと綿とを含む紡績糸に関する。より具体的には、本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含むサイド−バイ−サイドまたは偏心シース−コア複合ポリエステル・ステープルファイバーであって、綿システムでの加工に特に好適であり、それから高い均一性および高い伸び−および−回復の紡績糸を製造することができるステープルファイバーに関する。本発明はまた、かかる複合ステープルファイバーよりなる紡績糸から製造された布にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ファイバーは、例えば、米国特許公報(特許文献1)および米国特許公報(特許文献2)だけでなく、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)に、ならびに(特許文献5)および(特許文献6)に開示されているように、一般に公知である。ポリエステル・ファイバーと綿とを含む糸は、米国特許公報(特許文献7)、(特許文献8)に、および米国特許公報(特許文献9)に開示されている。しかしながら、これらの複合ファイバーを綿ステープルと加工することは困難であり得るし、綿と組み合わせてこれらのファイバーから製造された紡績糸は、望まれるものより低い品質を持ち得る。これらのファイバーのブレンディングはしばしば、複合ファイバーの増加した百分率レベルでは品質を悪化させるために、他のファイバーと比べて減少した百分率を必要とする。さらに、これらのファイバーの加工困難さは、許容される品質で製造されるかもしれない紡績糸番手の範囲を制限し得る。
【0003】
綿システムでの加工により好適であるポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ファイバーが求められている。複合ステープルファイバーと綿とを含み、かつ、良好な伸びおよび回復を有する高い均一性の紡績糸もまた、綿/ポリエステル紡績糸から製造される均一な外観の伸縮性布のように、求められている。
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0056553号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0108740号明細書
【特許文献3】米国特許第3,671,379号明細書
【特許文献4】米国特許第6,656,586号明細書
【特許文献5】特開2002−180333号公報
【特許文献6】特開2002−180332号公報
【特許文献7】米国特許第6,413,631号明細書
【特許文献8】特開2002−115149号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0159423 A1号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ステープルファイバーであって、約2:1〜約5:1のアスペクト比A:B(Aはファイバー断面長軸長であり、Bはファイバー断面短軸長である)を有する略卵形の断面形状、長軸に実質的に垂直のポリマー界面、サイド−バイ−サイドおよび偏心シース−コアよりなる群から選択される断面構造、約1.1cN/dtex(デシテックス)〜約3.5cN/dtexの10%伸びでのテナシティ、約40%〜約85%のフリー−繊維長保持率、ならびに約30%〜55%のトウ捲縮発現値を有する複合ステープルファイバーを提供する。
【0006】
本発明はまた、約14〜約60の綿番手を有する、そしてポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ステープルファイバーを含む紡績糸であって、紡績糸が1000メートル当たり約0.1〜約150の薄い領域、1000メートル当たり約0.1〜約300の厚い領域、1000メートル当たり約0.1〜約260のネップ、および約27%〜約45%のボイルオフ収縮を有し、複合ステープルファイバーが紡績糸の総重量を基準にして、約30重量%〜100重量%のレベルで存在する紡績糸を提供する。
【0007】
本発明はさらに、編布および織布よりなる群から選択される、そして本発明のファイバーを含む紡績糸を含む布を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む、そして他の特有の特性だけでなく、ある種の断面形状を有する複合ステープルファイバーが高い均一性と高いボイルオフ収縮との予期されない組合せの紡績糸を与えることが今見いだされた。高いボイルオフ収縮は、糸が今日の布に望ましい高い伸び−および−回復を有することを示唆する。細かい紡績糸は高度に均一にすることが非常に困難であり、該発見は、本発明の紡績糸の高い綿番手を考えれば特に予期されないものである。
【0009】
本明細書で用いるところでは、「複合ファイバー」は、その中で同じ一般クラスの2つのポリマーがサイド−バイ−サイドまたは偏心シース−コア関係にあるステープルファイバーを意味する。
【0010】
本明細書で用いるところでは、用語「サイド−バイ−サイド」は、複合ファイバーの2つの成分が互いに直接隣接していること、およびどちらかの成分のマイナー部分以下が他の成分の凹面部分内にあることを意味する。「偏心シース−コア」は、2成分のうちの1つが他の成分を完全に取り囲んでいること、しかし2成分が同軸でないことを意味する。
【0011】
本明細書で用いるところでは、「略卵形の」は、ファイバーの縦軸に垂直に測定した際に、ファイバーの断面の面積が卵形形状のそれから約20%未満だけ外れていることを意味する。一般用語「卵形の」は、その意味内に「卵形の」(卵形状の)および「楕円形の」を含む。かかる形状は典型的には形状の中心を通る直角の2つの軸、長軸(A)および短軸(B)を有し、ここで長軸Aの長さは短軸Bの長さより大きい。完全な楕円の特別なケースでは、卵形は、2つの焦点からのその距離のその合計が一定であり、Aに等しい点の場所によって記載される。卵形のより一般的なケースでは、卵形の一端は他端より大きいものであり得るし、その結果2つの焦点からの距離の合計が必ずしも一定ではなく、そして楕円から20%以上だけ変わり得る。本明細書で用いるところでは、「略卵形の」断面周辺は、一定の曲率を有してもよいしまたはそれを欠いてもよい。
【0012】
「アスペクト比」は、卵形の長軸の長さ対卵形の短軸の長さの比、言い換えればA:Bを意味する。
【0013】
「ポリマー界面」は、実質的に直線状または曲線状であり得る、ポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(トリメチレンテレフタレート)との間の境界を意味する。
【0014】
「均質ブレンディング」は、混合物をカード機に供給する前に異なるファイバーを開放室中で(例えばウェイ−パン(weigh−pan)ホッパーフィーダーで)重量測定的に、かつ完全に混合するプロセスか、またはカード機でデュアルフィード・シュートでファイバーを混合するプロセスを意味する。「ドローフレーム・ブレンディング」は、スライバーがドローフレームで延伸されつつある時にカーディングされた複合ファイバースライバーを1つ以上のカーディングされたファイバースライバーとブレンドするプロセスを意味する。
【0015】
本発明のファイバーは、約2:1〜約5:1(例には、約2.6:1〜約3.9:1、および約3.1:1〜約3.9:1が含まれる)のアスペクト比A:Bの略卵形の断面形状を有する。アスペクト比が高すぎるまたは低すぎる場合、ファイバーは望ましくない輝きおよび低い染料歩留まりを示し得るし、該ファイバーを含む紡績糸は不十分に均一であり得る。ファイバーはまた、断面の長軸に実質的に垂直なポリマー界面、および約40%〜約85%のフリー−繊維長保持率を有する。かかる卵形フィラメントは、スロット形状(フラットまたは胴張り)、卵形などである紡糸口金オリフィスから紡糸することができる。
【0016】
卵形断面形状は、断面周辺に実質的に溝がない。すなわち、短軸の長さが長軸の長さに対してプロットされる時に、唯一の最大値がある。溝を有する断面形状の例は、「雪だるま」、「スカラップ卵形」、および「鍵穴」断面である。
【0017】
ファイバーは、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(テトラブチレンテレフタレート)などの異なる組合せもまた可能であるが、2つのポリエステル、例えば、好ましくは異なる固有粘度のポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む。あるいはまた、組成物は類似のもの、例えば、場合によりまた異なる粘度のポリ(エチレンテレフタレート)ホモポリマーおよびポリ(エチレンテレフタレート)コポリエステルであることができる。
【0018】
複合ファイバーは、約40%〜約85%のフリー繊維長保持率を有する。フリー繊維長保持率は、捲縮ファイバーがその弛緩した状態でどれほど「真っ直ぐ」であるか、言い換えれば、捲縮ファイバーが張力下にない時にそれがどれほどきつく輪になっているかの有用な尺度である。低すぎるフリー繊維長保持率を有する複合ステープルファイバーを含む紡績糸は、不満足な均一性を示し得るし、かつ、カーディングすることが困難であり得る。
【0019】
複合ステープルファイバーは、約3.6〜約5.0cN/dtexの破断点テナシティ、約1.1cN/dtex〜約3.5cN/dtex(好ましくは約2.0〜3.0cN/dtex)の10%伸びでのテナシティ(T10)、および約30:70〜約70:30、好ましくは約40:60〜約60:40のポリ(エチレンテレフタレート)対ポリ(トリメチレンテレフタレート)の重量比を有することができる。破断点テナシティが低すぎる場合、ファイバーはカーディング中に破断し得る。破断点テナシティが高すぎる場合、該ファイバーを含む布は望ましくないピリングを示し得る。
【0020】
本発明のファイバーを構成するポリエステルの1つまたは両方はコポリエステルであることができ、「ポリ(エチレンテレフタレート)」および「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」は、それらの意味内にかかるコポリエステルを含む。例えば、コポリエステルを製造するために使用されるコモノマーが4〜12個の炭素原子を有する線状、環式、および分岐脂肪族ジカルボン酸(例えばブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸);テレフタル酸以外の8〜12個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸(例えばイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸);3〜8個の炭素原子を有する線状、環式、および分岐脂肪族ジオール(例えば1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオール)、ならびに4〜10個の炭素原子を有する脂肪族および芳香脂肪族エーテルグリコール(例えばヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、またはジエチレンエーテルグリコールをはじめとする、約460未満の分子量を有するポリ(エチレンエーテル)グリコール)よりなる群から選択される、コポリ(エチレンテレフタレート)を使用することができる。コモノマーは、それが本発明の便益を損なわない程度まで、例えば全ポリマー原料を基準にして約0.5〜15モルパーセントのレベルで存在することができる。イソフタル酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールが好ましいコモノマーである。
【0021】
コポリエステルはまた、かかるコモノマーがファイバーの物理的特性に悪影響を及ぼさないという条件で、わずかな量の他のコモノマーを使って製造することができる。かかる他のコモノマーには、5−スルホイソフタレートナトリウム、3−(2−スルホエチル)ヘキサン二酸のナトリウム塩、およびそのジアルキルエステルが含まれ、それらは、全ポリエステルを基準にして約0.2〜4モルパーセントで組み込むことができる。改善された酸染色性のために、(コ)ポリエステルはまた、ポリマー第二級アミン添加物、例えばポリ(6,6’−イミノ−ビスヘキサメチレンテレフタルアミド)およびそのヘキサメチレンジアミンとのコポリアミド、好ましくはそれらのリン酸おより亜リン酸塩と混合することができる。少量の、例えばポリマーの1kg当たり約1〜6ミリ当量のトリ−またはテトラ−官能性コモノマー、例えばトリメリット酸(その前駆体を含む)またはペンタエリスリトールを粘度コントロールのために組み込むことができる。
【0022】
本発明のファイバーはまた、それらが本発明の便益を損なわないという条件で、帯電防止剤、酸化防止剤、抗菌剤、防炎剤、染料、光安定剤、および例えば二酸化チタンなどの艶消剤などの通常の添加剤を含むことができる。
【0023】
ファイバーが延伸され、熱処理された後、複合ファイバーに、例えばステープルにカットする前のトウに仕上げ剤を塗布することが有利である。仕上げ剤は0.05〜0.30%の(総重量%の)レベルで塗布することができる。仕上げ剤は、1)アルキルまたは分岐ホスフェートエステルのブレンド、または2)相当するホスフェート酸のカリウム、カルシウム、もしくはナトリウム塩、または任意の割合でのそれら2つのクラスのブレンドを含むことができ、そのそれぞれは脂肪族セグメントに6〜24個の全炭素原子を含有することができる。仕上げ剤はまた、ポリ(エチレンオキシド)および/またはポリ(プロピレンオキシド)を含有することもでき、またはかかるポリエーテルの短鎖セグメントはエステル化によってラウリン酸などの脂肪酸に、もしくはエーテル結合によってソルビトール、グリセロール、ヒマシ油、ヤシ油などのアルコールに結合させることができる。かかる化合物はまたアミン基を含むこともできる。仕上げ剤はまた、シリコーンまたはフルオロケミカルなどのわずかな量(例えば10%未満)の官能性添加剤を含有することもできる。仕上げ剤は、約18個の炭素を含有する一酸および二酸のカリウム塩と、12〜18個の炭素原子を含有するn−アルキルアルコールとポリエーテルのブレンドとの反応によって製造された4〜10個のエチレンオキシドセグメントを含有するエトキシル化ポリエーテルとのブレンドを含有することができる。
【0024】
ステープルファイバーのトウ前駆体中の複合ファイバーの捲縮が消される、すなわちファイバーの捲縮をミスアラインするような方法で処理されることは不必要である。同様に、複合ステープルトウは、それから製造されたステープルが良好な加工性および有用な特性を示すために機械的捲縮を必要としない。
【0025】
複合ファイバーは約15%〜約35%、例えば約15%〜約25%の、典型的には約15%〜約20%の破断点伸びを有することができる。
【0026】
複合ステープルファイバーは、約30%〜約55%のトウ捲縮発現(「CD」)値および約15%〜約25%の捲縮指数(「CI」)値を有することができる。CDが約30%より低い場合、ファイバーを含む紡績糸は典型的には、それから製造された布で良好な回復を生み出すには少なすぎる総ボイルオフ収縮を有する。CI値が低い場合、機械捲縮が満足なカーディングおよび紡糸のために必要であり得る。CI値が高い場合、複合ステープルは容易にカーディングできるには多すぎる捲縮を持ち得るし、紡績糸の均一性は不十分であり得る。CIが許容される値の範囲でより低い場合、カーディング性および糸均一性を損なうことなくポリエステル複合ステープルファイバーのより高い割合を用いることができる。CDが許容される値の範囲でより高い場合、総ボイルオフ収縮を損なうことなく複合ステープルのより低い割合を用いることができる。
【0027】
複合ステープルファイバーは約1.3cm〜約5.5cmの長さを有することができる。複合ファイバーが約1.3cmより短い場合、カーディングすることが困難であり得るし、それが約5.5cmより長い場合、綿システム装置で紡績することが困難であり得る。綿は約2〜約4cmの長さを持ち得る。複合ファイバーは約0.7dtex、好ましくは約0.9dtexから約3.0dtex、好ましくは約2.5dtexの線密度を持ち得る。複合ステープルが約3.0dtex超の線密度を有する場合、糸は荒い手触りを持ち得るし、綿とブレンドすることが困難であり得る。それが約0.7dtex未満の線密度を有する場合、カーディングすることが困難であり得る。
【0028】
本発明の紡績糸は約14〜約60(好ましくは約16〜約40)の綿番手を有し、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ステープルファイバーと綿(好ましい)、合成セルロース系繊維、およびアクリル繊維よりなる群から選択される第2ステープルファイバーとを含む。紡績糸は非常に均一であり、1000メートル当たり約0.1〜約150(好ましくは約1〜70)の薄い領域、1000メートル当たり約0.1〜約300の厚い領域、1000メートル当たり約0.1〜約260のネップ、および約27%〜約45%、例えば約30%〜約45%の総ボイルオフ収縮を有する。総ボイルオフ捲縮収縮が約27%未満である場合、糸の伸び−および−回復性は、糸が布へ織られたまたは編まれた時に低くなりすぎる。
【0029】
糸線質係数は、薄い領域、厚い領域、ネップの数、質量の変動係数、および糸強度から計算することができる、糸品質の非常に有用な尺度である。紡績糸は約0.1〜約650、例えば約1〜約300の糸線質係数を有することができる。線質係数が高すぎる場合、糸は不十分に均一であり得る。
【0030】
紡績糸の均一性を記載するための別の方法は、ユニフォーミティ1−B試験機(Uniformity 1−B Tester)で測定した際の変動係数に関するものである。本発明の紡績糸は、約10%〜約18%、例えば約12%〜約16%の質量の変動係数を有することができる。
【0031】
本発明の紡績糸は本発明のファイバーを含むこと、および紡績糸は約10〜約22cN/texの破断点テナシティを有することが好ましい。テナシティが低すぎる場合、糸紡績が困難であり得るし、織り効率および布強度が低下し得る。紡績糸の線密度が約100〜約700デニール(111〜778dtex)であることもまた好ましい。
【0032】
紡績糸中に、複合ステープルファイバーは、紡績糸の総重量を基準にして約30重量%〜約100重量%のレベルで存在する。本発明の糸が約30重量%未満のポリエステル複合を含む場合、糸は不十分な伸びおよび回復性を示し得る。複合ステープルファイバーが100重量%未満だが30重量%超のレベルで存在する場合、紡績糸は、紡績糸の総重量を基準にして約1重量%〜約70重量%で存在し得る、単一成分ポリ(エチレンテレフタレート)、単一成分ポリ(トリメチレンテレフタレート)、綿、羊毛、アクリルおよびナイロン・ステープルファイバーよりなる群から選択される第2ステープルファイバーを含む。場合により、本発明の紡績糸は、同じ群から選択される、紡績糸の総重量を基準にして約1重量%〜約69重量%で存在する第3ステープルファイバーをさらに含むことができ、同時に、第2および第3ステープルファイバーは、紡績糸の総重量を基準にして約1重量%〜約70重量%で存在することができる。
【0033】
糸は、リング、オープンエンド、エアジェット、およびヴォルテックス紡績のような商業的に利用可能な方法によって紡績されてもよい。
【0034】
伸縮性編布および織布を本発明の紡績糸から製造することができる。伸縮性布例には、丸編布、平編布、およびワープニット布、ならびに平織布、綾織布、および繻子織布が挙げられる。紡績糸の高い均一性および伸縮特性は典型的には、非常に望ましい、均一な外観および高い伸びおよび回復として布にもたらされる。
【0035】
(試験方法)
ポリエステルの固有粘度(「IV」)は、19℃で0.4%濃度でヴィスコテック強制流動粘度計モデルY−900(Viscotek Forced Flow Viscometer Model Y−900)で、規定された60/40重量%フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの代わりに50/50重量%トリフルオロ酢酸/塩化メチレン中で測定した以外はASTM(米国材料試験協会)D−4603−96に従って測定した。測定された粘度を次に、報告される固有粘度値に達するために60/40重量%フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンでの標準粘度と相関させた。
【0036】
ファイバーの線密度および引張特性は、線密度についてはASTM方法D1577、テナシティおよび伸びについてはD3822に従ってテキステクノ(独国)(Textechno(Germany))製のファヴィマット(Favimat)機器で測定した。測定を最低限25のファイバーについて行い、平均値を報告する。
【0037】
各複合ステープルファイバーサンプル内で、ファイバーは実質的に等しい線密度およびポリ(エチレンテレフタレート)対ポリ(トリメチレンテレフタレート)のポリマー比を有した。何の機械捲縮も実施例で複合ステープルファイバーにかけられなかった。
【0038】
仕上げ剤レベルは、ファイバー上の重量%仕上げ剤として与えられ、メタノールを使用してファイバーから仕上げオイルを抽出し、メタノールを蒸発させ、次にそのように抽出された仕上げ剤の重量を重量測定法で測定して、トウからカットされた複合ファイバーについて得た。重量パーセント仕上げ剤を式Iに示されるように計算した。
重量%仕上げ剤=100×(仕上げ剤の重量)/(仕上げ剤の重量+ファイバーの重量) (I)
【0039】
フリー−繊維長保持率を測定するために、捲縮を十分に発現させるためにまだ熱処理されなかったファイバーを、既に存在する低レベルの捲縮を除去するのに丁度十分に伸ばし、長さL(実施例では38mm)にカットした。カットされた時、ファーバーはそれらのフリー(弛緩した)長さLに縮み、それらの捲縮を取り戻した。フリー長さLを定規でゼロ張力下にカットファイバーのアセンブリから測定し、測定を3回繰り返し、結果を平均した。フリー−繊維長保持率は、式IIによって示されるように、フリー繊維長Lを伸びた繊維長Lで割り、結果を百分率として表すことによって計算した。
フリー−繊維長保持率=(L/L)×100 (II)
【0040】
図2は、本発明のものではないファイバー(図2Aおよび2B)と本発明のファイバー(図2C)とのフリー−繊維長保持率の差を定性的に例示する。
【0041】
特に記載のない限り、複合ファイバーのトウ捲縮発現およびトウ捲縮指数の次の測定方法を実施例で用いた。ここに記載する方法は、米国特許公報(特許文献9)で用いられた方法と数的に同等である。操作効率を向上させるわずかな修正がここで示される。トウ捲縮指数(「CI」)を測定するために、ポリエステル複合トウの1.2メートルのサンプルを量り、そのデニールを計算し、トウ線密度は典型的には約40,000〜50,000デニール(44,000〜55,000dtex)であった。ただ1つの結び目をトウの各端に結んだ。下方の結び目に第1クランプを付け、トウの上方端の結び目に少なくとも40mg/デニール(0.035dN/tex)の重りを吊すことによって張力を垂直のトウ・サンプルにかけ、それをトウの底端から1.1mに置かれた固定ローラーの上方に導いた。重りを、ファイバーを破壊することなくトウから捲縮を真っ直ぐにするよう選択した。この時点でトウは実質的に真っ直ぐであり、すべてのファイバー捲縮は除去された。それから、第2クランプを、重りが所定の場所にあるまま第1クランプの上方100cmにトウに付けた。次に、トウの上方端の重りを取り除き、1.5mg/デニール(0.0013dN/tex)重りを下方結び目の直ぐ下にトウに取り付け、第1クランプを下方結び目から取り除き、サンプルを0.0013dN/tex重りに抗して縮ませた。第2クランプから下方結び目までの縮んだトウの長さをセンチメートル単位で測定し、Lと特定した。C.I.を式IIIに従って計算した。トウ捲縮発現(「CD」)を測定するために、1.2メートルのサンプルを(無拘束で)105℃のオーブン中に5分間入れ、次に測定手順を開始する前に少なくとも2分間室温で冷却させたことを除いて、同じ手順を実施した。
CIおよびCD(%)=100×(100cm−L)/100cm (III)
【0042】
トウをステープルファイバーへ単にカットすることは捲縮に影響を及ぼさないので、ステープルファイバーの捲縮値についての本明細書での言及はかかるファイバーのトウ前駆体について行った測定値を示すことが意図され、理解されるべきである。
【0043】
帯電防止するのに十分な仕上げ剤を含有するステープルファイバーのカーディング性は、カードウェブおよびスライバーのコイリングの目視検査によって評価した。外観が均一であり、ネップがなく、そしてスライバーへの加工中のコイラー・チョークを全く持たないカードウェブを生み出したファイバーは、良好なカーディング性を示すと考えられた。これらの判定基準を満たさなかったファイバーは不満足なカーディング性を有すると考えられた。
【0044】
実施例での紡績糸の総ボイルオフ収縮(「B.O.S.」)を測定するために、糸を、標準かせ巻取機で25ラップのかせにした。サンプルを巻取機でピンと張って保持したまま、10インチ(25.4cm)長さ(「L」)をサンプル上に染色マーカーでマークした。かせを巻取機から取り外し、沸騰水中に拘束なしに1分間入れ、水から取り出し、室温で乾燥させた。乾燥したかせを平たく横たえ、染色マーク間の距離を再び測定した(「Lbo」)。総ボイルオフ収縮を式IVから計算した。
全B.O.S(%)=100×(L−Lbo)/L (IV)
【0045】
ボイルオフ全収縮試験を受けた同じサンプルを使用して、紡績糸の「真の」収縮を、200mg/デニール(0.18dN/tex)負荷をかけ、伸びた長さを測定し、ボイルオフ前長さと伸びたボイルオフ後長さとのパーセント差を計算することによって求めた。サンプルの真の収縮は一般に約5%未満である。真の収縮は総ボイルオフ収縮の非常にわずかな部分を構成するにすぎないので、後者が紡績糸の伸び−および−回復特性の信頼できる尺度として本明細書では用いられる。より高い総ボイルオフ収縮は、望ましくはより高い伸び−および−回復に対応する。
【0046】
糸番手は、紡績糸の線密度を記載するために一般に用いられる用語である。
【0047】
紡績糸のそれらの長さに沿った均一性は、ユニフォーミティ1−B試験機(ゼルウェーガー・ウスター・コープ.(Zellweger Uster Corp.)によって製造された)で測定し、百分率単位の変動係数(「CV」)として報告した。この試験では、糸を400ヤード/分(336m/分)で2.5分間試験機中へフィードし、その間ずっと糸の質量をおおよそ8mm毎に測定した。得られたデータの標準偏差を計算し、100を乗じ、試験された糸の平均質量で割ってパーセントCVに達した。ユニフォーミティ1−B試験機はまた、糸の1000ヤード当たりの厚い領域、薄い領域、およびネップの数の平均数カウントも測定した。糸中の厚い領域は、平均質量より少なくとも50%大きい質量を有する当該場所である。糸中の薄い領域は、平均質量より少なくとも50%低い質量を有する当該場所である。ネップは、平均質量より少なくとも200%多い質量を有する糸中の当該場所である。
【0048】
紡績糸引張特性は、テンソジェット(Tensojet)(またゼルウェーガー・ウスター・コープ.によって製造された)を用いて測定した。テナシティはcN/texとして報告する。
【0049】
糸線質係数は式Vに示されるように計算した。
糸線質係数=([E+F+G]×H)/J (V)
ここで、
Eは糸の1000ヤード当たりの厚い領域の数であり、
Fは糸の1000ヤード当たりの薄い領域の数であり、
Gは糸の1000ヤード当たりのネップの数であり、
Hは百分率単位での糸質量の変動係数(「CV」)であり、
それぞれは、ウスター・ユニフォーミティ1−B試験機で測定した際のものであり、そして
JはcN/tex単位での糸の破断点テナシティである。
【0050】
実施例1ならびに比較例1、2、3、および4では、第1延伸比対全延伸比の比は0.78〜0.88であり、熱処理工程の期間は少なくとも3秒であった。断面アスペクト比A:Bは、顕微鏡写真の測定によって求められ、典型的には5%内まで正確であった。本文に記載されなかったファイバー製造条件および特性を、それぞれ表1および2に提示する。
【0051】
表中、「Comp.」は比較例を示し、「B.O.S.」はボイルオフ収縮を意味し、「Ne」は綿番手(英国式)を意味し、「nm」は「未測定」を示し、「CV」はウスター・ユニフォーミティ1−B試験機によって測定した際の質量の変動係数を意味し、「T10」は10%伸びでの複合ファイバーのテナシティを意味し、「レットダウン比」はフィルムガイダー速度対最終延伸ロール速度の比を意味し、「Bico」は複合を意味する。「厚い部分」は平均質量より少なくとも50%大きい質量を有する糸の1000ヤード当たりの場所の数を意味し、「薄い部分」は平均質量より少なくとも50%低い質量を有する糸の1000ヤード当たりの場所の数を意味する。「ニップ」は平均質量より少なくとも200%多い質量を有する糸の1000ヤード当たりの場所の数を意味する。報告される厚い部分、薄い部分、およびネップの数は、ウスター・ユニフォーミティ1−B試験機によって測定した際のものである。
【実施例】
【0052】
(実施例1A)
ポリ(エチレンテレフタレート)(インターコンチネンタル・ポリマーズ社(Intercontinental Polymers,Inc.)製のT211、0.56dl/gのIV)、および0.98dl/gのIVを有するソロナ(Sorona)(登録商標)銘柄ポリ(トリメチレンテレフタレート)(ソロナ(登録商標)はイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)の登録商標である)の連続の複合フィラメントを、計量供給ポンプにより272℃で運転されるブロックから50/50重量比で、紡糸口金キャピラリーのカウンターボアの真上でポリマー流れを一緒にする刻み込み計量供給プレートを備えた複合紡糸パックへ押し出した。微粒子TiOの艶消剤を0.1〜0.4重量%のレベルで両ポリマーに添加した。ポリマーを288穴紡糸口金から紡糸し、その紡糸口金ではキャピラリーは深さが0.38mmであり、それぞれの長い側面の中央に外側へ丸い膨らみ(最大幅0.18mm)および0.06mm半径の丸い末端付きの、0.64mm長さの改良スロットである断面を有した。ポリマー界面は、生じた卵形断面ファイバーの長軸に実質的に垂直であった。
【0053】
紡糸したばかりのファイバーを約10〜14の質量比(空気/ポリマー)で加えられる空気のクロスフローで冷却し、紡糸仕上げ剤を計量供給接触アプリケーターで0.1重量%で塗布し、卵形(2.1:1のアスペクト比(測定−図1Cを参照されたい))ファイバーを1000m/分でボビンに巻き取った。
【0054】
複数のボビンからのファイバーを、おおよそ50,000dtexのトウへ組み合わせ、50m/分の最終速度で、それぞれ、2.69および1.28の第1および第2延伸比を用いて二段延伸した。第1延伸は水浴中35℃で、第2延伸は90℃で熱水スプレー下に行った。延伸されたトウを150℃で熱処理し、希薄な仕上げオイル/水スプレー(ファイバーに関して0.20重量%)で30℃未満に冷却し、最終延伸ロールより遅い速度で運転されるフィルムガイダーに通した。トウを室温で乾燥させ、1.5インチ(3.8cm)ステープル長さにカットした。
【0055】
(実施例1B)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Aに記載したように製造した。アスペクト比3.3:1(測定−図1Dを参照されたい)の卵形ファイバーを288穴紡糸口金から紡糸し、その紡糸口金ではキャピラリーは深さが0.38mmであり、それぞれの長い側面の中央に外側へ丸い膨らみ(最大幅0.14mm)および0.05mm半径の丸い末端付きの、0.76mm長さの改良スロットである断面を有した。レットダウン比は0.942であった。図2Cは、該ファイバーによって示される低いコイリングを例示する。
【0056】
(実施例1C)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Aに記載したように製造した。ポリ(エチレンテレフタレート)IVは0.54であり、ポリ(トリメチレンテレフタレート)IVは0.95であった。ファイバー断面は、2.4:1(測定)のアスペクト比の卵形であり、紡糸速度は1200m/分であり、第1延伸比は2.23であり、熱処理温度は170℃であった。
【0057】
(実施例1D)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Aに記載したように製造した。約3:1(推定)のアスペクト比の卵形ファイバーを実施例1Bのオリフィスを通して紡糸した。ポリ(エチレンテレフタレート)IVは0.54であり、ポリ(トリメチレンテレフタレート)IVは0.95であり、紡糸速度は1200m/分であり、第1延伸比は2.44であり、熱処理温度は170℃であった。
【0058】
(実施例1E)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Dに記載したように製造した。アスペクト比3.3:1(測定)の卵形ファイバーを紡糸し、第1延伸比は2.52であり、レットダウン比は0.97であった。
【0059】
(実施例1F)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、第1延伸比が2.54であり、熱処理温度が165℃であったことを除いて、実施例1Dに記載したように製造した。
【0060】
(実施例1G)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Dに記載したように製造した。アスペクト比3.5:1(測定)の卵形ファイバーを紡糸し、第1延伸比は2.56であり、熱処理温度は165℃であった。得られた低いT10値は、1.0の目標レットダウン比が達成されないことを示唆した。実際のレットダウン比は1.0未満であった。
【0061】
(実施例1H)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Bに記載したように製造した。アスペクト比約3:1(推定)の卵形ファイバーを紡糸した。ポリマーの重量比は55/45ポリ(エチレンテレフタレート)/ポリ(トリメチレン)テレフタレートであり、ポリ(トリメチレンテレフタレート)IVは0.94であり、ポリ(エチレンテレフタレート)はコサ(KoSa)8958Cであり、紡糸速度は1400m/分であり、第1延伸比は2.37であり、第2延伸比は1.29であり、熱処理温度は180℃であった。
【0062】
(比較例)
(比較例1)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Aに記載したように製造した。ポリマー界面が断面の長軸に平行のスカラップ卵形(測定アスペクト比2.2:1−図1Bを参照されたい)ファイバーを、本質的に図3に示されるような構造のオリフィスを通して紡糸した。オリフィスを所望の界面配向を与えるように配置した。ポリ(トリメチレンテレフタレート)IVは1.04であり、第1延伸比は2.71であり、レットダウン比は0.85であった。図2Bは、ファイバーによって示される過度のコイリングを例示する。
【0063】
(比較例2)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、以下の相違があるが、実施例1Aに記載したように製造した。丸いファイバー(図1Aを参照されたい)を直径0.36mmの円形オリフィスを通して押し出した。第1延伸比は2.91であり、第2延伸比は1.13であり、レットダウン比は0.85であった。図2Aは、ファイバーによって示される過度のコイリングを例示する。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表2のデータはまた、本発明のファイバーが非常に良好なカーディング性を有し、本発明のものではないファイバーが不満足なカーディング性を有することを示す。
【0067】
(比較例3)
ポリエステル複合ステープルファイバーを、255〜265℃の紡糸ブロック温度で68穴後融合紡糸口金を通して溶融紡糸される、0.52dl/gの固有粘度(「IV」)を有するポリ(エチレンテレフタレート)(クライスター(Crystar)(登録商標)4415−763、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーの登録商標)、および1.00dl/gのIVを有するソロナ(登録商標)銘柄ポリ(トリメチレンテレフタレート)(ソロナ(登録商標)はイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーの登録商標である)の複合連続フィラメントから製造した。ポリマーの重量比は60/40ポリ(エチレンテレフタレート)/ポリ(トリメチレンテレフタレート)であった。フィラメントを450〜550m/分で紡糸口金から離脱させ、クロスフロー空気で急冷した。「雪だるま」断面を有するフィラメントを4.4倍に延伸し、170℃で熱処理し、インターレースし、2100〜2400m/分で巻き取った。フィラメントは12%CI、51%CD、および2.4dtex/フィラメントの線密度を有した。ステープルファイバーへの変換のために、巻き取られたパッケージからのフィラメントをトウへ集め、その刃間隔を1.5インチ(3.8cm)ステープル長さを得るように調整した通常のステープルトウ・カッターへフィードした。
【0068】
(比較例4)
トウ・サンプル比較例4Aおよび比較例4Bを作るために、特に記載のない限り、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(ソロナ(登録商標)銘柄、1.00のIV)を約260℃の最高温度で押し出し、ポリ(エチレンテレフタレート)(インターコンチネンタル・ポリマーズ社製の「通常の」、セミダル、ファイバーグレード211、0.54dl/gのIV)を約285℃の最高温度で押し出した。
【0069】
紡糸口金パックは280℃に加熱され、円形形状の、直径0.4mmの2622キャピラリーを有した。生じたサイド−バイ−サイドの丸い断面ファイバー(約1〜2dtex)中に、ポリ(エチレンテレフタレート)は52重量%で存在し、ポリ(トリメチレンテレフタレート)は48重量%で存在し、094dl/gのIVを有した。ファイバーを、1200〜1500m/分で運転するフィルムガイダーによって多数の紡糸場所から集め、缶中に集めた。
【0070】
約50缶からのトウを組み合わせ、フィードロールを回って35℃未満で運転される第1延伸ロールに、80℃で運転される蒸気室を通って、次に第2延伸ロールに通した。第1延伸は、ファイバーにかけられる全延伸の約80%であった。延伸されたトウは約800,000デニール(888,900dtex)〜1,000,000デニール(1,111,100dtex)であった。延伸されたトウを110℃で運転される第1群の4つのロールとの接触によって、140〜160℃での第2群の4つのロールによって、そして170℃での第3群の4つのロールによって熱処理した。ロールの第1群と第2群とのロール速度の比は約0.91〜0.99(弛緩)であり、ロールの第2群と第3群とのロール速度の比は約0.93〜0.99(弛緩)であり、そしてロールの第3群とフィルムガイダー/クーラーロールとのロール速度の比は、全レットダウン比が0.86〜0.89であるように約0.88〜1.03であった。最終ファイバーは約1.46デニール(約1.62dtex)であった。仕上げ剤スプレーを、トウ上の仕上げ剤の量が0.15〜0.35重量%であるように塗布した。フィルムガイダー/クーラーロールは35〜40℃で運転した。トウを次に、35℃未満で運転中の連続の強制対流乾燥機に通し、実質的に張力なしで箱中へ集めた。追加の加工条件およびファイバー特性を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
トウ・サンプルを1.75インチ(4.4cm)ステープルにカットし、均質ブレンディングによって綿と組み合わせ、ジェー.ディー.ホリングスワース(J.D.Hollingsworth)カード機で60ポンド(27kg)毎時でカーディングし、リング紡績して様々な綿番手の糸を製造した。
【0073】
(実施例2)
実施例1ならびに比較例1、2、3、および4で製造された複合ステープルサンプルを含む紡績糸を製造した。特に記載のない限り、綿は4.3の平均マイクロネア(ファイバー当たり約1.5デニール(ファイバー当たり1.7dtex))の標準ストリクト・ローミッドランド・イースタン・バラエティ(Standard Strict Low Midland Eastern Variety)であった。均質ブレンディングを用いて製造される糸については、綿およびポリエステル複合ステープルファイバーを、標準テキスタイルカード機にフィードする、デュアルフィード・シュートフィーダーへ両方を装填することによってブレンドした。特に記載のない限り、各糸中の複合ポリエステル・ステープルの量は、ファイバーの重量を基準にして60重量%であった。生じたカードスラーバーは70グレイン/ヤード(約49,500dtex)であった。(各パス前にスラーバー末端を適切に再結合しつつ)スラーバーの6末端を2または3パスのそれぞれで6.5倍に一緒に延伸して60グレイン/ヤード(約42,500dtex)の延伸スライバーを与え、それを次に、特に記載のない限り、ロービングに変換した。ロービング工程での全延伸は9.9倍であった。特に記載のない限り、複合ステープルを均質ブレンドした。しかしながら、ドローフレーム・ブレンディングを用いて製造される糸については、綿および複合ステープルファイバーをそれぞれ別々にカーディングし、次にスラーバーからロービングへの延伸工程中に組み合わせた。特に記載のない限り、ロービングをサコ−ローウェル(Saco−Lowell)フレームで1.35のバックドラフトおよび29の全延伸を用いてリング紡績して3.8撚り係数およびインチ当たり17.8回転(センチメートル当たり7.0回転)を有する22/1綿番手(270dtex)紡績糸を与えた。100%綿をそのように加工した場合、生じた紡績糸は5%の総ボイルオフ収縮を有した。紡績糸特性を表4に提示する。
【0074】
【表4】

【0075】
表4のデータは、本発明のステープルファイバーが、高いボイルオフ収縮を保ちながら非常に高品質(低い薄いおよび厚い領域、低いネップ、低いCV、および全体的な優れた品質)の紡績糸を製造するために使用できることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1A】ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む丸い複合ファイバーの顕微鏡写真の画像(3000×拡大)である。
【図1B】ポリマー界面が長軸に平行である「スカラップ卵形」断面を有するポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ファイバーの顕微鏡写真の画像(1000×拡大)である。
【図1C】約2.1:1のアスペクト比の「卵形」断面を有する本発明の複合ファイバーの実施形態の顕微鏡写真の画像(1000×拡大)である。
【図1D】約3.5:1のアスペクト比の「卵形」断面を有する本発明の複合ファイバーの好ましい実施形態の顕微鏡写真の画像(1000×拡大)である。
【図2A】丸い断面を有するポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ファイバーの顕微鏡写真の画像(32×拡大)である。
【図2B】長軸に平行なポリマー界面でスカラップ卵形断面を有するポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ファイバーの顕微鏡写真の画像(32×拡大)である。
【図2C】約3.3:1のアスペクト比の「卵形」断面を有する本発明の複合ファイバーの好ましい実施形態の顕微鏡写真の画像(32×拡大)である。
【図3】スカラップ卵形断面のファイバーを紡糸するための典型的な紡糸口金オリフィスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ステープルファイバーであって、
a)約2:1〜約5:1のアスペクト比A:B(Aはファイバー断面長軸長であり、かつBはファイバー断面短軸長である)を有する略卵形の断面形状、
b)長軸に実質的に垂直のポリマー界面、
c)サイド−バイ−サイドおよび偏心シース−コアよりなる群から選択される断面構造、
d)約1.1cN/dtex〜約3.5cN/dtexの10%伸びでのテナシティ、
e)約40%〜約85%のフリー繊維長保持率、ならびに
f)約30%〜55%のトウ捲縮発現値
を有することを特徴とする複合ステープルファイバー。
【請求項2】
約3.6cN/dtex〜約5.0cN/dtexの破断点テナシティを有し、前記アスペクト比A:Bが約2.6:1〜約3.9:1であることを特徴とする請求項1に記載の複合ステープルファイバー。
【請求項3】
約2.0cN/dtex〜約3.5cN/dtexの10%伸びでのテナシティを有することを特徴とする請求項1に記載の複合ステープルファイバー。
【請求項4】
前記アスペクト比A:Bが約3.1:1〜約3.9:1であることを特徴とする請求項1に記載の複合ステープルファイバー。
【請求項5】
約14〜約60の綿番手を有し、かつポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)を含む複合ステープルファイバーを含む紡績糸であって、前記紡績糸が1000ヤード当たり約0.1〜約150の薄い領域、1000ヤード当たり約0.1〜約300の厚い領域、1000ヤード当たり約0.1〜約260のネップ、および約27%〜約45%のボイルオフ収縮を有し、前記複合ステープルファイバーが前記紡績糸の総重量を基準にして約30重量%〜約100重量%のレベルで存在することを特徴とする紡績糸。
【請求項6】
綿、合成セルロース系繊維、およびアクリル繊維よりなる群から選択されるステープルファイバーをさらに含み、前記複合が前記紡績糸の総重量を基準にして約30重量%〜約70重量%で存在することを特徴とする請求項5に記載の紡績糸。
【請求項7】
選択される前記ステープルファイバーが綿であり、かつ、前記複合ステープルファイバーが約2.6:1〜約3.9:1のアスペクト比A:B(Aはファイバー断面長軸長であり、かつBはファイバー断面短軸長である)を有することを特徴とする請求項6に記載の紡績糸。
【請求項8】
約0.1〜約650の線質係数を有することを特徴とする請求項5に記載の紡績糸。
【請求項9】
前記複合ステープルファイバーが約40%〜約85%のフリー繊維長保持率を有することを特徴とする請求項5に記載の紡績糸。
【請求項10】
約1重量%〜約69重量%のポリ(エチレンテレフタレート)単一成分ステープルファイバーをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の紡績糸。
【請求項11】
約27%〜約45%の総ボイルオフ収縮および約10%〜約18%の質量の変動係数を有することを特徴とする請求項6に記載の紡績糸。
【請求項12】
約30%〜約45%の総ボイルオフ収縮および約12%〜約16%の質量の変動係数を有することを特徴とする請求項11に記載の紡績糸。
【請求項13】
約0.1〜約650の線質係数および約27%〜約45%の総ボイルオフ収縮を有することを特徴とする請求項6に記載の紡績糸。
【請求項14】
約1〜約300の線質係数および約30%〜約45%の総ボイルオフ収縮を有することを特徴とする請求項13に記載の紡績糸。
【請求項15】
編布および織布よりなる群から選択され、かつ請求項5に記載の紡績糸を含むことを特徴とする布。
【請求項16】
請求項1に記載のファイバーをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の布。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−533870(P2007−533870A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509483(P2007−509483)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010704
【国際公開番号】WO2005/108660
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】