説明

複合フィルタ、及びそのフィルタを前面に配置した画像表示装置

【課題】防眩フィルタと黒化処理を施したパターン状の導電層を有する電磁波遮蔽フィルタとを含む複合フィルタにおいて、黒化層が脱落し難く、外光反射防止性が良好な電磁波遮蔽フィルタを含む複合フィルタ及びそのフィルタを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタを提供すること。
【解決手段】電磁波遮蔽フィルタと防眩フィルタとを含む複合フィルタであって、電磁波遮蔽フィルタは、透明基材上に所定のパターンで形成された導電性粒子と樹脂バインダーを含む導電性パターン層を有するものであり、該導電性パターン層が、その表面に、頂部の端角部が突出し、頂部の中央部が凹陥した金属層が形成され、かつ、該金属層の表面には金属の針状結晶である黒化層が形成されているものである複合フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置(ディスプレイ)の前面に配置するのに好適な複合フィルタ、及びその複合フィルタを前面に配置した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の大型化、薄型化に伴い、プラズマディスプレイ(PDP)が注目を集めている。
PDPは、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(画面側であり、画像の観察者側でもある)に、画像光の透過性は維持した上で、漏洩する電磁波を遮蔽(シールド)するためのフィルム状の電磁波シールド部材を設けるのが一般的である。
なお、本発明において単に電磁波という場合は、周波数が上記範囲を中心とするKHz〜GHz帯近辺の電磁波のことをいう。赤外線、可視光線、紫外線、X線等は含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する)。
【0003】
PDPの前面フィルタは、通常、電磁波シールド部材とともに、少なくとも、観察者側の最外面に反射防止フィルタ又は防眩フィルタを備える複合フィルタである。しかし、PDP装置の視聴時に、(日光、電灯光等の)外光がPDP画面上の電磁波シールド材(の特に導電性パターン)で拡散反射して、画面全体が白化する。すなわち、画像コントラスト(白画像表示部の輝度/黒画像表示部の輝度)が低下するという問題がある。その対策として、特許文献1にあるように、電磁波シールド部材の導電性パターン層を黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき等の黒化層で被覆することが行われる。
しかしながら、従来公知の黒化処理層の形成では、外光が画面に照射される環境下(特に、昼間または高輝度照明下などの明室環境下)における画像コントラスト向上効果はなお不十分であった。即ち、黒化層は、光の反射率を低くする程、自由電子の易動度は低下し、導電性が低下する為、電磁波の反射性即ち電磁波遮蔽性も低下する傾向にある。
そのため、従来、黒化層について、外光反射防止性能と電磁波遮蔽性能との両立は困難であった。
【0004】
また、導電性凸状パターン層に、常法により金属メッキ層及び黒化層を設けた場合、黒化層表面は、平坦面あるいは半円または楕円形状となる。
しかしながら、このようにして製造した電磁波遮蔽用シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程でガイドロール等の稼動部位との接触面積が大きい為、黒化層が磨耗、剥脱する量が多く、黒化層形成の効果が損なわれるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/149969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外光反射防止と黒化処理を施したパターン状の導電層を有する電磁波遮蔽フィルタとを含む複合フィルタにおいて、黒化層が脱落し難く、外光反射防止性が良好な電磁波遮蔽フィルタを含む複合フィルタ及びそのフィルタを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電磁波遮蔽フィルタと防眩フィルタとを含む複合フィルタであって、電磁波遮蔽フィルタは、透明基材上に所定のパターンで形成された導電性粒子と樹脂バインダーを含む導電性パターン層を有するものであり、該導電性パターン層が、その表面に、頂部の端角部が突出し、頂部の中央部が凹陥した金属層が形成され、かつ、該金属層の表面には多数の(金属の)針状結晶(針状突起)からなる黒化層が形成されているものである複合フィルタ及びそのフィルタを前面に配置した画像表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合フィルタは、防眩フィルタと、導電性パターン層が、頂部の端角部が突出し、頂部の中央部が凹陥した金属層の表面に多数の針状結晶(針状突起)からなる黒化層が形成されているという微細表面構造を有する電磁波遮蔽フィルタとからなるため、次のような効果が奏される。
導電性パターン層表面の黒化層を形成する多数の針状結晶は、入射した光が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量は大幅に減少する。また、多数の針状突起は、凹陥した金属層の表面にランダムな方向で形成されているため、強い入射光は乱反射され、観察者の視線方向成分の強度が低減される。さらに、金属層形成時の電流密度を高めると、頂部金属層表面内に溝状凹部ができるが、外光は、該溝状凹部内での多重反射によっても減衰する。
かかる電磁波遮蔽フィルタの外光反射防止効果と防眩フィルタの外光反射防止効果とが相俟って、本発明の複合フィルタは、外光反射防止性が極めて良好であり、優れた画像コントラスト向上効果を発揮する。
また、黒化層を形成する該針状結晶は導電性の金属からなる為、良好な導電性(即ち、電磁波遮蔽性)も具備する。
さらには、導電性パターン層の頂部が凹んだ本発明においては、ガイドロール等との接触面積が少なく、凹部表面は非接触のため、凹部表面上の針状結晶からなる黒化層は磨耗、剥脱が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(A)は、電磁波遮蔽フィルタと防眩フィルタを必須構成部材とする本発明に係る複合フィルタを模式的に示した拡大断面図である。図1(B)は、図1(A)における電磁波遮蔽フィルタ部分の拡大図である。
【図2】本発明(実施例1)の電磁波シールド材を黒化層側から見た走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明に係る複合フィルタの層構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複合フィルタ100は、図1(A)に示す如く、電磁波遮蔽フィルタ10、防眩フィルタ20とを必須構成部材として含むものである。そして、図3に示すように、防眩フィルタ20と電磁波遮蔽フィルタ10との間の位置30及び電磁波遮蔽フィルタの画像表示装置側の位置30のいずれか1箇所以上に機能層を設けるものである。
以下、これらについて詳細に説明する。
【0011】
〔電磁波遮蔽フィルタ〕
本発明において使用する電磁波遮蔽フィルタ10は、透明基材1上に所定のパターンで形成された導電性粒子2cと樹脂バインダー2bを含む導電性パターン層2を有するものであり、該導電性パターン層2の表面には、頂部の両側端縁の端角部が突出し、頂部の中央部が凹陥した金属層2mが形成され、かつ、該金属層2mの表面には金属の針状突起2n(針状結晶;黒化層)が形成されているものである。
以下、電磁波遮蔽フィルタ10の構成、製造方法について説明する。
【0012】
(透明基材)
透明基材1は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0013】
樹脂フィルム、樹脂板の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体などのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT等の透明セラミックス、石英等である。
【0014】
透明基材1の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
【0015】
なお、透明基材の樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を添加できる。
また、透明基材は、その表面に、コロナ放電処理、プライマー処理、下地処理などの公知の易接着処理を行ったものでもよい。
【0016】
(導電性パターン層)
本発明の複合フィルタの電磁波遮蔽フィルタ10における導電性パターン層2は、導電性粒子2c及び樹脂バインダー2bを含み、透明基材1上又は該透明基材上にプライマー層を形成する場合には該プライマー層上に所定のパターンで設けられた層である。
パターン形状としては線条パターンであり、メッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、又は擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(所定パターン形成領域の全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。また所定パターンとは別に、その周辺部の全周又はその一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ(開口部なし)等の接地パターンが設けられる場合もある。
なお、線幅は、より高透明のものを得るために、より一層微細化することが求められている。この観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0017】
また、導電性パターン層2の厚さは、その導電性パターン層の抵抗値によっても異なるが、導電性能と該導電性パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電性パターン層2は、導電性粒子2cと樹脂バインダー2bを含む導電性インキを、後述する印刷法により基材上又は透明プライマー層上に形成することで得ることができる。
【0018】
導電性粒子2cとしては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或いは高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、非金属無機粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子等を好ましく挙げることができ、形状も球状、回転楕円体状、正多面体状、截頭多面体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。
これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。導電性粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、例えば、鱗片状の銀粒子の場合には粒子の平均粒子径が0.1〜10μm程度のものを用いることができる。導電性組成物中の導電性粒子の含有量は、導電性粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、導電性粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
【0019】
樹脂バインダー2bとしては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として後述する物を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤を使用できる。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0020】
導電性パターン層2は、その表面において、頂部の少なくとも片方の側端縁、好ましくは両側端縁の端角部が突出し、且つ頂部の中央部が凹陥した金属層2mが形成され、かつ、該金属層の表面には金属の針状突起2n(針状結晶;黒化層)が形成されている。この表面構造のために、黒化層表面の針状結晶の磨耗、剥脱が改善され、外光反射防止性が良好であるという効果を奏する。
【0021】
(プライマー層などその他の層)
本発明の電磁波遮蔽フィルタにおいては、透明基材1と導電性パターン層2との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設けることが好ましい。
該プライマー層は、透明基材及び導電性パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電性パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層である。
更に、導電性パターン層の形成を後述の如き特定の凹版印刷法で行なう場合には、該プライマー層は、流動性を保持できる状態で透明基材上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層となり、最終的な導電部材が形成されたときに固化している層である。
【0022】
かかる透明プライマー層を構成する材料としては、本来特に限定はないが、本発明では、導電性パターン層の形成方法として後述の如き特定の凹版印刷法が推奨されるため、プライマー層も、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工、硬化(固体化)してなる層が好適に用いられる。以下、この材料を中心に詳述する。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0023】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0024】
上記電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。
【0025】
プライマー層の厚さ(導電性パターン層2の非形成部の厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜10μm程度となるように形成される。また、プライマー層の厚さは、通常は、導電性パターン層とプライマー層との合計値(総厚。導電性パターン層の頂部と透明基材の表面との高度差)の1〜50%程度である。
【0026】
また、必要に応じ適宜その他の層の形成、乃至は処理を施してもよい。例えば、錆に対する耐久性が不十分な場合は、黒化層上に防錆層を設けるとよい。該防錆層は、従来公知の材料及び手法により設けることができる。
【0027】
次に、本発明の代表的な実施形態を例示して電磁波遮蔽フィルタの製造方法を説明する。
(導電性パターン層の形成方法)
本工程では、透明基材の一方の面に導電性粒子及び樹脂バインダーを含む導電性組成物(導電性インキ、導電性ペーストとも呼称する)を用いて導電性パターン層を形成する。
該導電性パターン層の有する所定パターンは、例えば、シルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等の公知の各種印刷法によって形成することができる。
また、透明基材と導電性パターン層との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設ける場合には、上記電磁波遮蔽フィルタの製造方法としては、特許文献1に記載される特定のプライマーを用いた凹版印刷が推奨される。
以下、この凹版印刷法の概略を述べる。
【0028】
当該凹版印刷法は、表面に所定のパターンで凹部(セルとも云う)が形成された版面に、導電性組成物を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電性組成物を掻き取って該凹部内に導電性組成物を充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで圧着して、凹部内の導電性組成物とプライマー層とを空隙なく密着させ、その状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上に導電性組成物を転移させて、印刷するものである。
【0029】
印刷後、つまり離版後、まだ液状である導電性パターン層に対しては、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、導電性インキを固化せしめて導電性パターン層を完成させる。また、導電性組成物は、版上で半硬化させ離版後に完全硬化させてもよい。
【0030】
なお、一般に、凹版印刷では、導電性インキを版面に供給し、ドクターブレード等で余剰の該インキを掻き取って版凹部に該インキを充填する際、充填された該インキの表面に凹みが発生し、該凹部のため、透明基材との密着不良、透明基材上への該インキの転移率低下という不具合を生じていた。
一方、特許文献1の凹版印刷では、凹版凹部内に充填された導電性インキの上部に窪み(凹み)が生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を該窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層を介して所定パターンの導電性パターン層を、細線でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。かくの如く凹版凹部内に充填されたインキの表面に生じる窪みをプライマー層が流入、充填する結果、得られた導電部材は、プライマー層の厚みが、前記導電性パターン層が形成されている部分の厚みが前記導電性パターン層が形成されていない部分の厚みよりも厚くなる。
【0031】
(金属層)
本発明における電磁波遮蔽フィルタは、導電性を更に向上せしめるために、導電性パターン層2の表面に金属層2mをメッキ法により形成する。メッキ法としては、電解メッキ、無電解メッキのいずれも適用可能であるが、金属層が高速形成可能なこと、導電性パターン層上のみに選択的にメッキ可能なこと等の理由から電解メッキ法の方が好ましい。
導電性パターン層2への給電は導電性パターン層2が形成された面に接触させた通電ロール等の電極から行われるが、導電性パターン層2が電解メッキ可能な程度の導電性(例えば、100Ω/□以下)を有するので、電解メッキを問題なく行うことができる。金属層2mを構成する材料としては、導電性が高く容易にメッキ可能な、銅、銀、金、クロム、ニッケル等を挙げることができる。
メッキ条件としては、浴温20〜60℃、電流密度0.001〜10A/dm2、メッキ時間1〜10分程度が好ましい。電流密度を高くすることによって、導電性パターン層の頂部の端角部に電力集中が起こってメッキがつきやすくなる。特に、導電性パターン層の端角部がメッキ前の時点で突出していると、更に金属メッキした導電性パターン層は頂部の端角部が突出し、且つ頂部の中央部が凹陥した表面形状となる。
また、電流密度が高いほど、頂部の端角部と頂部の中央部のメッキ層成長速度に差がつき、相対的に頂部の端角部の電流密度が高くなって、頂部の中央部が凹陥した凹凸表面形状になり易い。その際、導電性パターン層2の断面形状を図1(B)に図示の如くの台形、長方形、或いは正方形とすることによって、頂部において、中央部に比べて端角部の電流密度を相対的に高めることができる。特に、導電性パターン層の頂部の端角部がメッキ前の時点(印刷完了時点)で突出していると、更にこの傾向は強まる。
電流密度を高めると、これに加えて、さらに、頂部金属層表面内に凹溝、特に図2に示される如く、分岐、蛇行、或いはこれらの両方の形態を有する溪谷状の凹溝が生じ易くなる。
斯かる凹溝、特に分岐、蛇行、或いはこれらの両方の形態を有する溪谷状の凹溝が導電性パターン層の頂部上に存在すると、該凹溝内に入射した光線は該凹溝内において複雑な経路で反射を多数回繰り返す結果減衰する。また、減衰し切れずに反射する場合も乱反射となり、画像観察者の視線方向に向かう反射光量は減少する。そのため、日光、電灯光等の外光の反射防止性の向上に寄与する。
本発明の電磁波遮蔽フィルタにおける金属メッキした導電性パターン層表面における頂部端角部の突出部と頂部中央部の凹陥部の段差は1〜3μm程度である。
【0032】
(黒化処理)
本発明においては、金属層を形成した後、黒化処理を施して金属層表面に黒化層2nを形成する。
黒化層2nは金属の針状突起(針状結晶)から構成される。黒化層を構成する金属は金属層2mを構成する金属と同じものでも良いし、別のものでも良いが、反射光量低減と高導電性との両立の点から、できるだけ導電率の高い物を選ぶことが好ましく、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル等が用いられる。
黒化処理は、例えば、硫酸銅5水和物と硫酸を水に溶かした電解浴を用いて陰極電解して粗面化処理を施すことにより、上記金属メッキした導電性パターン層の表面に銅からなる金属の針状結晶からなる黒化層4を形成する。
粗面化処理は陰極電解により金属の粒状突起物を析出させ(1層目)、次いでその突起物の脱落防止のためその上に金属メッキを施し(2層目)、金属被覆を形成させることによって全体として針状結晶からなる金属の粗面を作る。
黒化処理(粗面化処理)条件としては、(特に1層目の)電流密度を高くすることにより、針状結晶が形成され易いので好ましい。
黒化層2nの針状結晶の長さは0.1〜1μm程度、その直径は長さの1/20〜1/2程度である。
斯かる針状結晶は、入射した光線が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量を大幅に減少せしめる。
図1(B)に図示の如く、導電性パターン層2の頂部に前記の如く両側端縁の端角部が突出した凹陥部を形成した上で更にその表面に針状結晶からなる黒化層2nを形成すると、凹陥部と針状結晶の両者の入射光線減衰作用の相乗効果によって、外光反射防止効果はより高まる。
【0033】
〔防眩フィルタ〕
本発明の複合フィルタ100は、電磁波遮蔽性と外光反射防止性との両立性をより高める為、電磁波遮蔽フィルタ10とともに、該電磁波遮蔽フィルタ10の画像観察者側の最表面には、光拡散性によって鏡面反射光量を低減せしめる防眩フィルタを設ける。
防眩フィルタ20は、透明基材上に防眩層を積層したもので、防眩層は外来光を散乱乃至は拡散させる為に、光の入射面を粗面化することが基本である。この粗面化処理には;
(1)サンドブラスト法やエンボス法等により透明基材表面に直接微細凹凸を形成して粗面化する方法。
(2)透明基材表面に樹脂バインダ中に、光拡散性粒子とし、粒徑0.5〜10μm程度の、シリカ粒子などの無機物粒子や、アクリル樹脂粒子などの有機物粒子を含有させた塗膜により粗面化層を設ける方法。
(3)透明基材表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法。
等を挙げることができる。
樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、アクリル系、エポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用される。
防眩層の厚みは特に限定されるものではないが、0.07μm以上20μm以下が好ましい。
また、斯かる防眩層の凹凸の平均間隔をSmとし、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸の十点平均粗さをRzとした場合に、Smが60μm以上250μm以下であり、θaが0.3度以上1.0度以下であり、Rzが0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0034】
なお、本明細書、実施例において使用するRz、Sm、θaは下記の通り定義される。
≪凹凸の平均間隔Sm、平均傾斜角θa、10点平均粗さRz≫
本発明による複合フィルタを構成する防眩フィルタにおける防眩層は凹凸形状を有する。Sm(μm)とは、この防眩層の凹凸の平均間隔を表し、θa(度)は凹凸部の平均傾斜角を表し、Rz(μm)は、10点平均粗さを表す。これらの用語の定義は、JIS B0601 1994に準拠し、表面粗さ測定器(型番:SE−3400/小坂研究所製)の取り扱い説明書(1995,07,20改訂)にも記載されている。θa(度)は角度単位であり、傾斜を縦横比率で表したものがΔaである場合、Δa=tanθa=(各凹凸の極小部と極大部の差(各凸部の高さに相当)の総和/基準長さ)で求められる。ここで、「基準長さ」とは、下記の測定条件:と同じで、SE−3400で実際に触針測定する測定長さ(カットオフ値λc)であり、本発明では0.8mmを使用している。
本発明では、SE−3400/小坂研究所製にて、以下の条件で測定を実施した。
1)表面粗さ検出部の触針:
型番/SE2555N(2μm標準)(株)小坂研究所製
(先端曲率半径2μm/頂角:90度/材質:ダイヤモンド)
2)表面粗さ測定器の測定条件:
基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):0.8mm
評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):4.0mm
触針の送り速さ:0.1mm/s
【0035】
〔その他機能層〕
本発明においては、図3に示すように、防眩フィルタ20と電磁波遮蔽フィルタ10との間の位置30及び電磁波遮蔽フィルタの画像表示装置側の位置30のいずれか1箇所以上にその他機能層を設けるものである。
該その他機能層としては、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色層、紫外線吸収層、所謂薄膜ミクロルーバ層からなるコントラスト向上層等の光学機能層(光学フィルタ層)、或いはハードコート層、耐衝撃層(衝撃吸収層)、防汚層、帯電防止層、抗菌層、防黴層等が挙げられる。
その他機能層は単数又は接着剤で接着された複数の層よりなる。
なお、耐衝撃層は、下側(PDP側)に位置させるが、他の機能層は、いずれの位置にも位置させることができる。
また、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色(着色)層、紫外線吸収層は、接着剤層のいずれか1層以上に、当該吸収剤を含有させることにより、形成することができる。
以下、その他機能層、吸収剤について、主なものの概要を説明する。
【0036】
(コントラスト向上層)
コントラスト向上層としては、特開2007−272161号公報、特表2009−535673号公報等に記載の薄膜ミクロルーバ層、或いは透明着色フィルタ等各種形態のものが使用可能である。ただし、外光存在下での画像コントラスト向上性能、製造容易性等の点から好ましいものは、いわゆる薄膜ミクロルーバ層であって、次のような構造である。
層の表裏面乃至これと平行な面内の所定方向に沿って直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な主切断面が幅広の下底を観察者側又はPDP側に向ける台形となる形状の、光を透過する「透光性領域」と、該透光性領域と平行な方向に直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な断面が幅広の下底をPDP側又は観察者側に向ける楔型となる形状の、光を吸収する「光吸収部」とを、交互に隣接させて多数噛み合わせて配列したものである。
透光性領域は、通常、透明な電離放射線硬化樹脂で構成され、楔型の溝部である光吸収部には、カーボンブラック等の黒色顔料と透明バインダーをインキ化した黒化インキが充填される。
【0037】
主切断面が幅広の下底を観察者側に向ける台形形状の透光性領域と主切断面が幅広の下底をPDP側に向ける楔型形状の光吸収部からなるコントラスト向上層は視野角が良好であり、それとは逆向きである、主切断面が幅広の下底をPDP側に向ける台形形状の透光性領域と主切断面が幅広の下底を観察者側に向ける楔型形状の光吸収部からなるコントラスト向上層は外光遮蔽性が良好である。本発明の複合フィルタにおいては、いずれの向きであってもよいが、本発明の外光遮蔽性を上げるという目的からは、コントラスト向上層を後者の向きで配置することが好ましい。
【0038】
また、光吸収部がストライプ状に並ぶコントラスト向上層とメッシュ状の電磁波遮蔽層が重なることにより、モアレ模様が出ることがある。このようなモアレ模様を防止するには、コントラスト向上層のストライプと電磁波遮蔽層のメッシュのバイアス角は、5〜80°であることを要し、20〜60°であることが好ましい。
なお、本発明のコントラスト向上層において、光吸収部としては、上記の形態以外の各種形態とすることもできる。例えば、光吸収部の主切断面形状として、上底の幅と下底の幅が等しい長方形、正方形、或いは平行四辺形としたり、或いは狭幅の上底の幅を0乃至0に近いものとした三角形乃至三角形類似形状とすることもできる。光吸収部の色は暗色とするが、暗色としては具体的には、黒色が代表的であるが、その他、(濃い)灰色、褐色、紺色、深緑色、臙脂色、濃紫色等が可能である。光吸収部にこれら暗色を付与する為には、カーボンブラック、黒色酸化鉄、アニリンブラック等の公知の着色剤(顔料乃至染料)を添加する。
【0039】
(耐擦傷機能層)
耐擦傷機能(ハードコート)層は、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と十分な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、通常樹脂硬化層として形成される。
用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、又は公知の熱硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、前述のプライマー層の説明箇所で例示したものと同様のものの中から選択して使用できる。
耐擦傷機能層の厚みは特に限定されるものではないが、1.0μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは3.0μm以上5μm以下である。
【0040】
なお、本発明において、ハードコート層は、防眩フィルタの防眩層自体を構成する層として、或いは防眩層に隣接する層として用いることができる。
【0041】
(近赤外線吸収層)
近赤外線吸収層に添加する近赤外線吸収剤は、本発明の複合フィルタの代表的な用途であるPDP用前面フィルタに適用する場合、PDPがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長領域を吸収し、且つ可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長領域では吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。そして、接着剤層に添加する場合、上記近赤外線領域での近赤外線の吸収量が、透過率でいえば20%以下、更に好ましくは10%以下となるように、近赤外線吸収剤の種類、近赤外線吸収剤の接着剤層中での含有量、及び接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このような近赤外線吸収剤としては、具体的には、フタロシアニン系、イモニウム系、ジイモニウム系、シアニン系、アゾ系、ポリメチン系、キノン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系等の化合物、或いはジチオール金属錯体等の有機系化合物からなる有機系近赤外線吸収剤、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系化合物から成る無機系近赤外線吸収剤が挙げられ、耐久性の面から、無機系近赤外線吸収剤が好ましい。
このうち、金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどの微粒子が挙げられる。
これらの中で、光学特性、即ち、近赤外線の高吸収率と可視光線の高透過率との両立性の点からは、ジイモニウム系化合物が好ましい。また、光学特性に加えて、更に高湿高湿度条件下における分光透過率特性の変化に対する耐久性の点からは、フタロシアニン系化合物、或いは酸化タングステン系化合物が好ましい。
上記近赤外線吸収剤の含有量は、該吸収層中に0.1〜15質量%程度であることが好ましい。
【0042】
(ネオン光吸収層)
ネオン光吸収層に添加するネオン光吸収剤は、本発明の複合フィルタの代表的な用途であるPDP用前面フィルタに適用する場合、PDPから放射されるネオン光を吸収させる色素である。該ネオン光は、ネオン原子の発光スペクトル帯域、即ち550〜640nmの波長領域(ネオン光領域)を吸収し、且つ該波長領域を除いた可視光領域380nm〜780nmの波長領域中ではなるべく吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。また、吸収波長領域中の吸収極大波長における透過率変化の半値幅は50nm以下であることが好ましい。
そして、接着剤層に添加する場合、上記Ne光領域の中心波長を590nmとすれば、該590nmにおける光線の透過率が50%以下になるように、ネオン光吸収剤、ネオン光吸収剤の接着剤層中での含有量、及び接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このようなネオン光吸収剤としては、具体的には、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系の有機化合物等が挙げられる。これらの中でもポルフィリン系化合物が好ましく、中でも、テトラアザポルフィリン系色素が、分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、ネオン光吸収層中に、0.05〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば十分なネオン光吸収機能を発現でき、5質量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0043】
(調色層)
調色層に添加する調色光吸収剤は、表示画像を好みの色調(天然色、或いは天然色から多少偏移した色)に補正するための色素である。このような調色光吸収剤としては、有機系色素、無機系色素などを1種単独使用、又は2種以上併用することができる。具体的には、アントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の化合物からなる色素が挙げられる。
調色光吸収剤の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、調色層中に0.01〜10質量%程度含有する。
【0044】
(紫外線吸収層)
紫外線吸収層に添加する紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系等の有機系化合物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、或いは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉体、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体等の無機系化合物からなる公知の化合物を用いることができる。
なお、紫外線吸収剤を添加する場合、他の吸収剤(色素)を外来光から保護するために、他の吸収剤(色素)を添加した層と同じ層か、或いはその層よりも観察者側に近い層に添加する。また、耐光性が堅牢な色素を使用する場合は、紫外線吸収剤の添加は不要である。
【0045】
〔接着剤層(粘着剤層)〕
接着剤層は、防眩フィルタと電磁波遮蔽フィルタの間のその他機能層と電磁波遮蔽フィルタとを接着し、或いは本発明の複合フィルタを画像表示装置本体又は画像表示装置基板に接着する役割を有する層であり、また、各種吸収剤を含有させることで各種光学機能層となり得る層である。
接着剤層に用いる接着剤としては、基本的には特に制限はなく、公知の接着剤の中から、接着性(粘着力)、透明性、塗工適性などを有し、またそれ自体好ましくは無着色のものを適宜選択する。各種の天然又は合成樹脂が使用できる。
好適に用いられる接着剤は、粘着剤と呼称される形態のものである。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0046】
本発明の複合フィルタは、各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
(電磁波遮蔽シートの製造)
まず、凹版を用意した。該凹版は、中空の鉄の円筒表面に銅メッキ層を被覆してなる円筒版材表面を機械的に切削加工し、その後、前面にクロム膜を電解メッキして、該円筒版材表面に、深さ7μm、線幅14μm、縦横線の繰返し周期270μmの正方格子のメッシュパターン状凹部を形成し、印刷用の凹版を得た。該凹版凹部の線条パターンの走行方向(長手方向)と直交する主切断面形状は底部(円筒中心に近い側)の幅がせばまった台形形状であり、底部の角の両底角が各々105度、円筒表面部に露出する角の両底角が各々75度であり、該台形の高さが7μm、該台形の円筒表面部に露出する底辺の長さが14μmであった。
また、該台形状の主切断面の凹部の底部(導電性パターン層では頂部に対応)には中央部が線部の両側端縁にある端角部よりも2μm湾曲して突出(導電性パターン層では頂部の中央部が端角部よりも2μm湾曲して凹陥することに対応)する形状とした。
次いで、透明基材として厚みが100μmで、1080mm幅×2000m巻の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製A4300)を用意した。この透明基材上の一方の面上にプライマー層用の紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が厚さ25μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバースロールコート法を採用し、紫外線硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレート44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート9質量部、さらに光重合開始剤としてイルガキュア184(物質名;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、製造元;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)3質量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1300cps(25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
一方、準備された上記円筒状凹版の版面に、導電性組成物である銀ペーストをピックアップロールで塗布し、鋼鉄製ドクターブレードで凹部内以外の導電性組成物を掻き取って凹部内のみに導電性組成物を充填させた。
そして、該導電性組成物を凹部内に充填させた状態のロール状凹版と、ニップロールとの間に、流動状態のプライマー層が形成されたPETフィルムを供し、ロール状凹版に対するニップロールの押圧力(付勢力)によって、流動状態のプライマー層を凹部内に存在する導電性組成物の凹みに流入させ、導電性ペーストと流動性保持状態のプライマー層とを隙間なく密着させると共に、該プライマーの一部を凹部内の該導電性組成物内に浸透せしめた。
次いで、更に凹版ロールが回転して高圧水銀灯によって紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物からなる流動状態のプライマー層を硬化させた。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性ペーストは、硬化したプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転写形成された。このようにして得られたフィルムを、130℃の乾燥ゾーンを通過させて、60秒熱風乾燥させ、該導電性組成物中の溶剤を蒸発させ、プライマー層上に、該導電性導電性組成物から成る、厚さ6μm(パターン幅方向中央部の頂部の凹陥部における厚み)、線幅20μm、縦横線の繰返周期270μmの正方格子の導電性凸状パターン層を形成した。得られた導電性パターン層は、頂部の中央部が線部頂部の両側端縁にある端角部よりも1.5μm湾曲して凹陥する形状であった。
なお、該導電性組成物は、導電性粉末として平均粒径約2μmの銀粉末93質量部、樹脂バインダーとして熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂7質量部、溶剤としてブチルカルビトールアセテート25質量部を配合し、十分に撹拌混合した後、3本ロールで混練りして作製した。
【0049】
次いで、上記メッシュパターンが形成されている透明基材をメッキした。
メッキ液としては、溶媒として水(3000L)を用い、硫酸銅5水和物(75g/L)と、硫酸(180g/L)、塩酸(60mg/L)、配向性調節成分として炭化水素系高分子系メッキ添加剤(40mL/L)を混合してメッキ液を調製した。
メッキ条件は、浴量(500mL)、撹拌(エアー撹拌)、浴温(25℃)、電流密度(2A/dm2)、メッキ時間(5min)で行って、膜厚は2.0μmであった。メッキ処理により堆積した被膜を120℃、60分間アニール処理して、銅から成る金属層を得た。
メッキは被メッキ部とアノード極板との距離が近いところにメッキがつきやすく、角部にも電流密度集中が起こりメッキが厚くつきやすい。本実施例の導電性パターン層は主切断面が台形形状で頂部の端角部が尖っているとともに、その端角部が頂部の中央部よりも突出しているため、得られた銅メッキされたメッシュパターンの頂部は、その端角部が突出し、その中央部が凹陥した表面形状であった。
【0050】
上記メッキ処理後、黒化処理を実施した。
黒化処理は、以下の浴組成の電解浴を用いて陰極電解し粗面化処理を施すことにより行った。
(1層目)
硫酸銅五水和物 70g/L
硫酸 100g/L
液温 40℃
電流密度 40A/dm2
電解時間 5秒
陽極 白金
(2層目)
硫酸銅五水和物 250g/L
硫酸 100g/L
液温 45℃
電流密度 20A/dm2
電解時間 30秒
陽極 白金
上記条件により、メッシュパターン頂部の両側端縁の端角部が突出し、頂部の中央部が凹陥し、且つ頂部表面には、図2の如く、分岐し且つ蛇行する溪谷状の凹溝が多数形成された表面形状の銅メッキ層の表面に銅からなる針状結晶からなる黒化層が形成された。
次いで、黒化層が形成された電磁波遮蔽シートを1000mm×600mmの寸法の長方形に裁断した。その際、長辺とメッシュ(導電性パターン層)線条部走行方向とのなす角度(バイアス角)は50度に設定した。
【0051】
(防眩フィルタの準備)
透明基材の一方の面に防眩層を積層した防眩フィルタを準備した。具体的には、先ず、透明基材として、厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300:商品名、東洋紡績社製)を用意した。次に、電離放射線硬化性樹脂として、ペンタエリスリトールトリアクリレートを70質量部(日本化薬(株)製、屈折率1.49)、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレートを30質量部(東亜合成(株)製、屈折率1.51)、アクリル系ポリマー(三菱レイヨン(株)製、分子量75,000)を10.0質量部、光硬化開始剤である商品名イルガキュア184(物質名;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、製造元;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を5.0質量部配合してなる紫外線硬化性樹脂に、更に、透光性微粒子としてスチレンビーズを15.0質量部(綜研化学(株)製、平均粒径3.5μm、屈折率1.60)、レベリング剤として商品名「10−28」を0.01質量部(ザ・インクテック(株)製)、トルエンを127.5質量部、及び、シクロヘキサノン54.6質量部、を十分混合して塗布液とした。当該塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、防眩層形成用の塗布液を調製した。次に、前記透明基材の一方の面上に、当該塗布液を、膜厚5μmとなるように塗工した後、50℃のオーブンで加熱乾燥させ、N2雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株)製)のHバルブを光源に用いて紫外線照射して硬化し(積算光量200mJ)、防眩層を形成した。
【0052】
(コントラスト向上層の製造)
先ず、片面に易接着処理がされた幅1000mm、厚さ188μmでロール巻した連続帯状の透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムから成る支持体としての透明基材の一方の表面に、液状のウレタンアクリレート系のプレポリマー及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体、及びベンゾフェノン系光開始剤の混合液とから成る液状紫外線硬化樹脂を硬化後の膜厚が155μmとなる様に塗布した。次に、ロール金型表面の面方向に沿って円周方向に直線状に連なり、その延長方向と直交する主切断面形状が、高さ150μm、版表面側底辺の長さが30μm、版表面から遠い側の底辺の長さが6μmの台形となる溝状凸部を、60μm周期で複数條互いに平行に配列した凸條群(暗色部と同形状且つ逆凹凸)を形成されたロール金型とPETフィルムとの間に、塗布した紫外線硬化樹脂を挟んだ状態で水銀灯からの紫外線を照射することにより、該紫外線硬化樹脂を架橋硬化せしめて透明樹脂層とし、しかる後ロール金型を離型することにより、該透明樹脂層表面に、該透明樹脂層表面の面方向に沿って一方向に直線状に連なり、主切断面が、高さ150μm、透明樹脂層表面側底辺となる下底の長さが30μm、PETフィルム側の底辺となる上底の長さが6μmの台形となる凹條溝群を表面に有する透明樹脂層(透光性領域)を該透明基材の一方の面上に形成した。なお、凹條溝は暗色材料が充填されて遮光する機能を有するので、遮光溝ともいう。
次に、アクリル系の紫外線硬化性プレポリマー100質量部中に、最小粒径が2μmで最大粒径が3μmのカーボンブラックを含む黒色球状ビーズ状粒子50質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)2質量部を混合して黒色で液状の紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。この黒色液状組成物を透明樹脂層の遮光溝に塗工し、次いで該塗膜を鉄製ドクターブレードでスキージし該(凹條)遮光溝外の該黒色液状組成物のみを掻き取り除去し、該凹條溝内のみに該黒色液状組成物を充填して、しかる後これを水銀灯からの紫外線を照射して架橋硬化せしめて暗色部(光吸収部)を形成することで、コントラスト向上層(ミクロルーバ層)を完成した。
【0053】
(粘着剤層の準備)
アクリル系粘着剤(東洋インキ(株)、感圧性粘着剤「オリバイン」(商品名:BPS6271)、固形分27%)及び硬化剤BXX5627(東洋インキ製造(株))に、紫外線吸収剤CyasorbUV24(サイテック社)を4質量%配合した粘着剤層用組成物を作製した。
この粘着剤層用組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、更に別の38μm離型フィルムで塗工面をラミネートし、粘着剤層を2枚の離型フィルム間に設けた粘着剤層形成フィルム(1)を作製した。その後、枚葉化した電磁波遮蔽シートの寸法よりも縦横とも30mm小さい長方形に裁断した。
【0054】
アクリル系粘着剤(東洋インキ(株)、感圧性粘着剤「オリバイン」(商品名:BPS6271)、固形分27%)及び硬化剤BXX5627(東洋インキ製造(株))に、酸化防止剤として1−Hベンゾトリアゾールからなる金属不活性化剤IRGME T39(BASF社製)を0.5質量%配合した粘着剤層用組成物を作製した。
この粘着剤層用組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、更に別の38μm離型フィルムで塗工面をラミネートし、粘着剤層を2枚の離型フィルム間に設けた粘着剤層形成フィルム(2)を作製した。その後、枚葉化した電磁波遮蔽シートの寸法よりも縦横とも30mm小さい長方形に裁断した。
【0055】
アクリル系粘着剤(東洋インキ(株)、感圧性粘着剤「オリバイン」(商品名:BPS6271)、固形分27%)及び硬化剤BXX5627(東洋インキ製造(株))に、近赤外線吸収化合物として、フタロシアニン系化合物「IR12」(商品名、日本触媒(株))を0.05質量%、フタロシアニン系化合物「IR14」(商品名、日本触媒(株))を0.02質量%及びジインモニウム系化合物「IRG−068」(商品名、日本化薬(株))を0.03質量%それぞれ配合した。更に、テトラアザポルフィリン系化合物からなるネオン光吸収剤「TAP2」(商品名、山田化学(株))を0.01質量%配合した。更に、調色色素(KAYASET(日本化薬(株)製)を0.05質量%配合し、十分に混合して粘着剤層用組成物(3)を作製した。
この粘着剤層用組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、更に別の38μm離型フィルムで塗工面をラミネートし、粘着剤層を2枚の離型フィルム間に設けた粘着剤層形成フィルムを作製した。その後、枚葉化した電磁波遮蔽シートの寸法よりも同じ大きさの長方形に裁断した。
【0056】
(プラズマディスプレイ用前面フィルタの作製)
防眩フィルタの透明基材側とコントラスト向上層の暗色部形成側の反対面とを離型フィルムを順次剥がした上記粘着剤層形成フィルム(1)を介して貼り合わせて光学機能層とした。
その光学機能層のコントラスト向上層の暗色部形成側の面と電磁波遮蔽シートの導電性パターン層形成側の面とを離型フィルムを順次剥がした上記粘着剤層形成フィルム(2)を介して貼り合わせ、複合フィルタを得た。なお、コントラスト向上層の暗色部線条と電磁波遮蔽フィルタのメッシュパターンのバイアス角は47°となるように貼り合わせた。
また、その際、電磁波遮蔽フィルタの周縁部が幅15mmだけ機能層で被覆されずに接地用領域として露出するような位置関係で貼着した。
そのようにして得た複合フィルタの電磁波遮蔽シートの透明基材側に、離型フィルムを順次剥がした上記粘着剤層形成フィルム(3)を貼着して、PDP本体に貼着するリワーク性のある粘着層を形成して、プラズマディスプレイ用前面フィルタを完成した。
【0057】
実施例1の電磁波遮蔽シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程において黒化層とガイドロール等の稼動部位との接触面積が少なく、黒化層の摩耗、剥脱が、これら稼動部位表面を目視観察した限りでは検知されなかった。
また、実施例1及び後述の比較例1のPDP用前面フィルタを同等の外光存在条件下の室内で、同一のPDPに同一条件の白及び黒の両画像を並列表示して、目視で、白黒両画像の輝度比(コントラスト)を相対比較したところ、
実施例1のコントラスト>比較例1のコントラスト
であった。
【0058】
[比較例1]
凹版の製造時に、中空の鉄の円筒表面に銅メッキ層を被覆してなる円筒版材の表面にネガ型感光性レジスト膜を塗工し、実施例1と同じ線幅及び繰返周期の正方格子パターンをArイオンレーザで露光により、該円筒版材表面の該正方格子の線状パターン部のみ未露光とし、該パターン非形成部(メッシュ開口部)は露光した。次いで、未露光部を洗浄除去することで正方格子パターン部のみ銅層を露出させた状態で、塩化第2鉄水溶液にてレジスト非形成部の銅層を腐蝕して、該円筒版材表面に、深さ7μm、線幅14μm、縦横線の繰返し周期270μmの正方格子のメッシュパターン状凹部を形成し、印刷用の凹版を得た。
その他は実施例1と同様にして電磁波遮蔽シートを製造した。
該製版方式の場合、腐蝕(エッチング)により版凹部の線条パターンの主切断面形状は、底部(導電性パターン層頂部に対応)において凹部の底部が楕円形状となり、その版で凹版印刷したメッシュ状導電性パターン層の主切断面形状は表面凹凸の少ない綺麗な半楕円形状となり、頂部は両側端部よりも中央部の方が突出し、上に凸の滑らかな曲面形状となった。それにメッキ処理を施しても下地形状がそのまま影響し綺麗な丸みを持ったメッキ層形状となってしまった。また、得られた導電性パターン層の頂部表面には、端角部も凹溝も形成されていなかった。
上記メッキ処理後、黒化処理を施した。黒化処理は、浴温90℃の亜塩素酸ソーダ水溶液50g/Lとカセイソーダ水溶液20g/Lとの混合液に、該メッシュパターン及び銅メッキ層が施された透明基材を、2分間浸漬させて化成処理を行う。これにより、銅メッキ層表面が銅酸化物になり、黒化処理される。
その他は実施例1と同様にして比較例1のプラズマディスプレイ用前面フィルタを製造した。
【0059】
比較例1の電磁波遮蔽シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程において黒化層とガイドロール等の稼動部位との接触面積が多く、黒化層の摩耗、剥脱があった。
また、前記した如く、実施例1及び比較例1のPDP用前面フィルタを同等の外光存在条件下の室内で、同一のPDPに同一条件の白及び黒の両画像を並列表示して、目視で、白黒両画像の輝度比(コントラスト)を相対比較したところ、
実施例1のコントラスト>比較例1のコントラスト
であった。
【0060】
[実施例2]
印刷方法をプライマーを用いないシルクスクリーン印刷とした他は実施例1と同じ操作によって、線幅、線厚、開口率、ピッチ、格子パターンが実施例1に同じであり、実施例1と同様の導電性パターン層表面を有する電磁波遮蔽フィルタを作製した。
その他は実施例1と同様にして実施例2のプラズマディスプレイ用前面フィルタを製造した。
実施例2の電磁波遮蔽シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程において黒化層とガイドロール等の稼動部位との接触面積が少なく、黒化層の摩耗、剥脱がほとんどなかった。
また、実施例2及び比較例1のPDP用前面フィルタを同等の外光存在条件下の室内で、同一のPDPに同一条件の白及び黒の両画像を並列表示して、目視で、白黒両画像の輝度比(コントラスト)を相対比較したところ、
実施例2のコントラスト>比較例1のコントラスト
であった。
【符号の説明】
【0061】
1 透明基材
2 導電性パターン層
2c 導電性粒子
2b 樹脂バインダー
2m 金属層
2n 針状結晶(黒化層)
10 電磁波遮蔽フィルタ
20 防眩フィルタ
30 その他機能層が設けられる位置
100 複合フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波遮蔽フィルタと防眩フィルタとを含む複合フィルタであって、
電磁波遮蔽フィルタは、透明基材上に所定のパターンで形成された導電性粒子と樹脂バインダーを含む導電性パターン層を有するものであり、
該導電性パターン層が、その表面に、頂部の端角部が突出し、頂部の中央部が凹陥した金属層が形成され、かつ、該金属層の表面には金属の針状結晶である黒化層が形成されているものである複合フィルタ。
【請求項2】
電磁波遮蔽フィルタの導電性パターン層が、さらに、頂部金属層表面内に凹溝が走行しているものである請求項1に記載の複合フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合フィルタであって、前記防眩フィルタと前記電磁波遮蔽フィルタとの間、前記電磁波遮蔽フィルタの画像表示装置側、のいずれか1箇所以上に機能層を設けた複合フィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の複合フィルタを画像表示板の前面に設けた画像表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−204782(P2012−204782A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70618(P2011−70618)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】