説明

複合フィルムの製造方法及び複合フィルム

【課題】複合フィルムを伸張させたときの破断強度の変化が小さく、20%伸張させた際に発生する応力を低下させることができる複合フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の複合フィルムの製造方法は、上記ウレタンポリマー及び少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む基準混合物を調製する工程と、上記基準混合物100重量部に対し、連鎖移動剤を0.01重量部以上5重量部以下添加して添加混合物を調製する工程と、上記添加混合物を硬化させて複合フィルムを形成する工程とを含み、上記添加混合物の硬化により得られる複合フィルムP2の伸張破断強度S2は、上記基準混合物の硬化により得られる複合フィルムP1の伸張破断強度S1の85%以上115%以下の値であり、かつ上記複合フィルムP2を20%伸張させた際の応力M2は、上記複合フィルムP1を20%伸張させた際の応力M1の90%以下の値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンポリマー及びアクリル系ポリマーを含む複合フィルムの製造方法、並びに複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーの複合フィルムは、高強度と高破断伸びを両立できるフィルムとして、例えば、特開2003−96140号公報、特開2003−171411号公報、特開2004−10661号、特開2004−10662号公報等に開示されている。この複合フィルムは、フィルムとして高強度、高伸張等の強靭な物性を有している。
【0003】
このような複合フィルムの力学的物性は、アクリル系ポリマーの種類や共重合組成、ウレタンポリマーの組成、アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの比率等を調整することで制御することができる。例えば、低弾性率の複合フィルムを作製するためには、ガラス転移温度(Tg)の低いアクリル系ポリマーを用いたり、高分子量のウレタンポリマーを用いたりする等の方策を採用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−96140号公報
【特許文献2】特開2003−171411号公報
【特許文献3】特開2004−10661号公報
【特許文献4】特開2004−10662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複合フィルムの目的とする力学的物性を変化させるために、上述のようなアクリル系ポリマーやウレタンポリマーの組成を変化させる方法を採用すると、目的とする力学的物性以外の他の力学的物性までも変化してしまい、結果的に複合フィルム全体として狙いとする力学的物性が得られない場合がある。特に、作業性向上や高機能化のために、複合フィルムの伸張破断強度は維持しつつ、複合フィルムを伸張させる際の応力を低下させることが望まれているものの、従来の手法では困難となっている。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、複合フィルムを伸張させたときの破断強度をあまり変化させることなく、20%伸張させた際に発生する応力を低下させることができる複合フィルムの製造方法及びこの製造方法により得られる複合フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、ウレタンポリマー及びアクリル系ポリマーを含む複合フィルムの製造方法であって、
上記ウレタンポリマー及び少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む基準混合物を調製する基準混合物調製工程と、
上記基準混合物100重量部に対し、連鎖移動剤を0.01重量部以上5重量部以下添加して添加混合物を調製する添加混合物調製工程と、
上記添加混合物を硬化させて複合フィルムを形成する複合フィルム形成工程と
を含み、
上記添加混合物の硬化により得られる複合フィルムP2の伸張破断強度S2は、上記基準混合物の硬化により得られる複合フィルムP1の伸張破断強度S1の85%以上115%以下の値であり、かつ
上記複合フィルムP2を20%伸張させた際の応力M2は、上記複合フィルムP1を20%伸張させた際の応力M1の90%以下の値である。
【0008】
当該製造方法では、ウレタンポリマー及びアクリル系ポリマーを含む複合フィルムの製造の際に、ウレタンポリマー及び少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む基準混合物100重量部に対し、連鎖移動剤を0.01重量部以上5重量部以下添加しているので、得られる複合フィルムを伸張して破断させた際の破断強度(すなわち、伸張破断強度)を連鎖移動剤の添加前の複合フィルムの伸張破断強度の85%以上115%以下の値に維持しつつ、複合フィルムを20%伸張させた際に複合フィルムに働く応力(以下、「20%伸張時応力」と称する場合がある。)M2を添加前の90%以下の値に低下させることができる。従来の手法では、伸張時破断強度と20%伸張時応力とが正の相関関係、すなわち一方を高めると他方も高くなるという関係のために両者の制御が困難であったが、当該製造方法では、連鎖移動剤の添加により、従来では困難であった伸張破断強度の維持と20%伸張時応力の低下とを容易に両立させることができる。このメカニズムは明らかではないが、連鎖移動剤の添加により複合フィルムの伸張破断強度に関与するウレタンポリマーの組成ないし構造はほとんど影響を与えずに、20%伸張時応力に関与するアクリル系ポリマーの重合度が低下し、複合フィルム全体での適度な応力緩和が生じたことに起因すると推定される。
【0009】
当該製造方法では、上記ウレタンポリマーはアクリロイル基末端ウレタンポリマーを含むことが好ましい。これにより、ウレタンポリマーにアクリル系モノマーとの共重合性を付与することができ、ポリマー全体の凝集力を向上させて伸張破断強度の維持と20%伸張時応力の低下との両立をより容易に図ることができる。
【0010】
当該製造方法において、上記基準混合物調製工程では、少なくとも1種のアクリル系モノマーの存在下、ポリオールとイソシアネートとの反応により上記ウレタンポリマーを形成することが好ましい。このような工程を踏むことで、原料として用いるモノマーの種類の幅を広げることができ、添加混合物をフィルム状とすることが容易となる。この場合、上記複合フィルム形成工程では、放射線硬化性とした上記添加混合物を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射し硬化させて複合フィルムを形成することが好ましい。
【0011】
本発明には、当該複合フィルムの製造方法により得られる複合フィルムも含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウレタンポリマーおよびアクリル系ポリマーのそれぞれの組成や両者の組成比等を変えることなく、複合フィルムの伸長破断強度を維持し、かつ20%伸張時応力が低下した複合フィルムを容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ウレタンポリマー及びアクリル系ポリマーを含む複合フィルムの製造方法であって、上記ウレタンポリマー及び少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む基準混合物を調製する基準混合物調製工程と、上記基準混合物100重量部に対し、連鎖移動剤を0.01重量部以上5重量部以下添加して添加混合物を調製する添加混合物調製工程と、上記添加混合物を硬化させて複合フィルムを形成する複合フィルム形成工程とを含み、上記添加混合物の硬化により得られる複合フィルムP2の伸張破断強度S2は、上記基準混合物の硬化により得られる複合フィルムP1の伸張破断強度S1の85%以上115%以下の値であり、かつ上記複合フィルムP2を20%伸張させた際の応力M2は、上記複合フィルムP1を20%伸張させた際の応力M1の90%以下の値である。
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、アクリル系モノマー単独又は2種以上の混合物中で、ポリオールとジイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成し、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを含む混合物を、例えば、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、放射線を照射して硬化させて複合フィルムを作製する。なお、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、適当な基材を使用することもできるし、あるいは、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離基材上に、粘着剤層を設けて、その上に複合フィルムを形成してもよい。また、複合フィルムを形成した後に、別途作製した粘着剤層を積層して、粘着剤層/複合フィルムの積層シートを作製してもよい。
【0015】
[基準混合物調製工程]
基準混合物調製工程では、ウレタンポリマー及び少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む基準混合物を調製する。
【0016】
(ウレタンポリマー)
ウレタンポリマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ポリオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、触媒を用いてもよい。例えば、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いることができる。
【0017】
ポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等)とアジピン酸、アゼライン酸、セパチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)等のポリエーテルポリオール、非結晶性のポリエステルポリオール、非結晶性のポリカーボネートポリオール等が好ましく使用される。これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。
【0018】
ポリオール成分の数平均分子量は特に限定されず、目的とする複合フィルムの特性を考慮して設定すればよい。中でも、基準混合物を安定に調製する観点からは、例えば400〜2000が好ましく、600〜1000がより好ましい。なお、数平均分子量の測定方法は、以下の方法で測定することができる。試料をTHFに0.1wt%で溶解させて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算により数平均分子量を測定する。詳しい測定条件は以下の通りである。
GPC装置:東ソー製、HLC−8120GPC
カラム:東ソー製、(GMHHR−H)+(GMHHR−H)+(G2000HHR)
流量:0.8ml/min
濃度:0.1wt%
注入量:100μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
【0019】
ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのジイソシアネートは単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、アクリルとの相溶性などの観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択することができる。
【0020】
本実施形態において、ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とジイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.0以上であることが好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。NCO/OHが1.0未満では、ウレタン分子鎖の末端官能基が水酸基となり、フィルムの強度が低下しやすい。また、NCO/OHが2.0以下であれば、伸びと柔軟性を確保することができる。
【0021】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルポリマーを添加することにより、ウレタンポリマーの分子内(特に、末端)にアクリロイル基を導入することができ、アクリルモノマーとの共重合性を付与することができる。その結果、ポリマー全体の凝集力を向上させて 伸張破断強度の維持と20%伸張時応力の低下との両立をより容易に図ることができる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
【0022】
(アクリル系モノマー)
基準混合物に含まれるアクリル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート等の脂環式構造を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸含有モノマーなどがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;メチル(メタ)アクリレートやオクタデシル(メタ)アクリレート等のモノマーを1種または2種以上を用いることができる。これらのアクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。なお、アクリル系モノマーには、上記例示からも明らかなように、アクリル酸由来の構造を有するモノマーだけでなく、メタクリル酸由来の構造を有するモノマーも含まれる。
【0023】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができる。
【0024】
多官能モノマーの含有量は、アクリル系モノマー100重量部に対して、1重量部以上5重量部以下であることが好ましい。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、得られる複合フィルムにおいて十分な凝集力が得られ、伸張破断強度を確保することができ、5重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、20%伸張時応力を低下させることができる。
【0025】
(基準混合物の調製)
基準混合物は、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて別途ウレタンポリマーを形成しておき、このウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを所定割合で混合して調製してもよく、少なくとも1種のアクリル系モノマーの存在下、ポリオールとイソシアネートとの反応により上記ウレタンポリマーを形成して調製してもよい。原料として用いるモノマーの種類の幅を広げることができ、添加混合物をフィルム状とすることが容易であることから、少なくとも1種のアクリル系モノマーの存在下、ポリオールとイソシアネートとの反応により上記ウレタンポリマーを形成することが好ましい。
【0026】
具体的には、ポリオールをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してポリオールと反応させて粘度調整を行い、これを基材等に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得るという手順を採用することができる。この方法では、アクリル系モノマーをウレタンポリマー合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをアクリル系モノマーに溶解させた後、ポリオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0027】
いずれの場合であっても、ウレタンポリマーの形成は、上記ポリオールと上記ジイソシアネートと必要に応じて触媒とを混合し、60〜90℃で2〜24時間反応させることにより行うことができる。さらに、アクリル系ポリマーとの共重合性の付与のために、水酸基含有アクリルモノマーを所定量添加し、60〜90℃で1〜12時間反応させてもよい。これにより基準混合物を調製することができる。
【0028】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとの配合比としては、ウレタンポリマーを組成する成分(ポリオール、ジイソシアネート、及び他の任意の成分(水酸基含有アクリルモノマーなど))の合計100重量部に対して、アクリル系モノマーを好ましくは70〜130重量部、より好ましくは80〜120重量部となるように配合すればよい。
【0029】
基準混合物には、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ポリオールとジイソシアネートとの重合反応前に予め加えておいてもよいし、ウレタンポリマーの形成後アクリル系モノマーの重合前に添加してもよい。
【0030】
また、後述の添加混合物の塗工の際の粘度調整のため、基準混合物には少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができ、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。なお、溶剤は基準混合物調製工程で添加してもよく、添加混合物調製工程で添加してもよい。
【0031】
[添加混合物調製工程]
添加混合物調製工程では、上記基準混合物100重量部に対し、連鎖移動剤を0.01重量部以上5重量部以下添加して添加混合物を調製する。
【0032】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤としては、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン又はt−ドデシルメルカプタンのような直鎖状又は分枝鎖状のアルキルメルカプタン、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)などのメルカプト基を含有する硫黄化合物、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素、エタノール、イソプロパノール、エチルアセテートなどの溶媒などが挙げられる。これらの連鎖移動剤類は単独あるいは併用して使用することができる。
【0033】
連鎖移動剤の使用量は、ウレタンポリマーとアクリル系モノマー単独あるいは2種以上からなる混合物100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下であり、0.01重量部以上1重量部以下であることが好ましい。連鎖移動剤使用量が0.01重量部未満では、複合フィルムを20%伸張した時に発生する応力が低下しにくく、5重量部以上では、複合フィルムのゲル分率が低下し過ぎてフィルムとして耐溶剤性などが低下する問題が生じる。
【0034】
(光重合開始剤)
添加混合物に放射線硬化性を付与する場合は、光重合開始剤を添加すればよい。光重合開始剤を添加し添加混合物に放射線硬化性を付与すると、該添加混合物の塗膜の放射線硬化を経るだけで複合フィルムを形成することができ、生産性を向上させることができる。光重合開始剤としては、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール;2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフォニルクロライド;1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。なお、本実施形態では光重合開始剤を添加混合物調製工程で添加しているが、これに限らず基準混合物調製工程で添加してもよい。
【0035】
光重合開始剤の添加量としては特に制限されないが、例えば、基準混合物(溶剤除く)100重量部に対して0.01〜3重量部(好ましくは0.1〜1重量部)の範囲から選択することができる。
【0036】
(添加混合物の調製)
上記基準混合物に、連鎖移動剤及び必要に応じて光重合開始剤を添加し、常温(約25℃)又は加熱下(例えば、40〜70℃)で混合することで添加混合物を調製することができる。
【0037】
[複合フィルム形成工程]
複合フィルム形成工程では、上記添加混合物を硬化させて複合フィルムを形成する。複合フィルム形成の過程は特に限定されないものの、本実施形態では、放射線硬化性とした上記添加混合物を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射し硬化させて複合フィルムを形成することが好ましい。
【0038】
本実施形態に用いられる基材(必要に応じて剥離処理されている)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が使用される。中でもPETは、精密部品の加工に使用する場合には適度な硬さを有している点や、品種の豊富さやコスト面からも有利であるので、好ましく使用される。フィルムの材料は、用途や必要に応じて設けられる粘着剤層の種類等に応じて、適宜決定することが好ましく、例えば紫外線硬化型粘着剤を設ける場合には、紫外線透過率の高い基材が好ましい。
【0039】
添加混合物の塗膜の形成は従来公知の手法により行うことができ、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。塗膜の厚みは目的とする複合フィルムの厚みを考慮して決定すればよい。
【0040】
本実施形態では、添加混合物を剥離処理した基材上に塗布して塗膜を形成し、光重合開始剤の種類等に応じてα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、該塗膜を硬化させて複合フィルムを形成することができる。
【0041】
この際、酸素によるアクリル系モノマーの重合阻害を避けるために、基材上に形成した塗膜上に、剥離処理したシートをのせて、酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に剥離ライナーを入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0042】
本実施形態において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプなどを用いることができる。
【0043】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、50〜5000mJ/cm、好ましくは100〜4000mJ/cm、更に好ましくは100〜3000mJ/cmである。紫外線の照射量が50mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0044】
また、紫外線照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0045】
以上の手順により、アクリル系モノマーが重合してアクリル系ポリマーとなり、全体として硬化した複合フィルムを得ることができる。なお、添加混合物に溶剤を添加している場合は、放射線硬化後に乾燥工程を設けてもよい。乾燥温度としては、溶剤の種類等に応じて設定すればよく、例えば80〜160℃程度である。また、ウレタンポリマーが末端にアクリロイル基を有する場合は、ウレタンポリマーとアクリル系ポリマーとの架橋が生じるので、これを利用して複合フィルムの機械的物性又は化学的物性を制御することができる。
【0046】
なお、基準混合物の硬化により複合フィルムを形成する場合は、基準混合物に連鎖移動剤を添加せずに光重合開始剤を添加し、この混合物に上記と同様の手順で放射線照射して硬化反応を行えばよい。
【0047】
(複合フィルム)
複合フィルムの物性に関しては以下の関係が成り立つ。すなわち、上記添加混合物の硬化により得られる複合フィルムP2の伸張破断強度S2は、上記基準混合物の硬化により得られる複合フィルムP1の伸張破断強度S1の85%以上115%以下の値であり、好ましくは90%以上110%以下の値である。同時に、上記複合フィルムP2を20%伸張させた際の応力M2は、上記複合フィルムP1を20%伸張させた際の応力M1の90%以下の値であり、好ましくは80%以下の値である。本実施形態の複合フィルムはこのような関係を満たしているので、従来手法では困難であった伸張破断強度の維持と20%伸張時応力の低下とを両立させることができる。なお、20%伸張時応力M2の下限は低いほど好ましいが、低すぎると伸張破断強度S2が伸張破断強度S1の85%未満になるおそれがあるため、10%以上とすることが好ましい。
【0048】
本実施形態の複合フィルムの厚みは、目的等に応じて適宜選択することができるが、一般的には5〜500μm、好ましくは50〜200μm程度である。
【0049】
本実施形態の複合フィルムは、そのままでも使用することができるが、片面または両面に粘着剤層を形成して粘着シートとすることもできる。粘着剤組成としては特に限定されず、アクリル系、ゴム系等、一般的なものを使用することができる。粘着剤の形成方法も特に限定されるものではなく、複合フィルムに、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を複合フィルムに塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、複合フィルムと粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と複合フィルム層は、多層構成となるように塗布することもできる。
【0050】
粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は3〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましく、特に10〜30μm程度であることが好ましい。
【0051】
本実施形態における複合フィルムは、その片面または両面に他のフィルムを積層することができる。他のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、他のフィルムは単層構成でもよいが、同種の、又は異種の材料からなる複数の層による多層構造のフィルムでもよい。
【0052】
本実施形態の複合フィルムの用途は特に限定されず、家庭用、医療用、農業用、工業用等の各種用途に適応しうるフィルム基材や保護フィルムとして用いることができる。
【実施例】
【0053】
次に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。なお本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。
【0054】
(参考例−基準混合物の硬化による複合フィルムの形成)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(以下、「IBXA」と略す)を40部、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」と略す)を10部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(以下、「PTMG」と略す;三菱化学株式会社製)を34.2部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(以下、「DBTL」と略す)0.025部を投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(以下、「HXDI」と略す;三井化学ポリウレタン株式会社製)を12.8部滴下し、65℃で5時間反応させウレタンポリマーを合成し、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにヒドロキシエチルアクリレート(以下、「HEA」と略す)3.0重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物である基準混合物Aを得た。なお、ジイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0055】
100重量部の基準混合物Aに、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名「イルガキュア651」(以下、「Irg.651」と略す))を0.15部加えることで基準混合物A’を得た。
【0056】
基準混合物A’を、厚さ38μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)上に、硬化後の厚みが100μmとなるように塗布し塗膜を形成した。この塗膜上に、剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面にブラックライトおよびメタルハライドランプを用いて紫外線(照度9mW/cm、光量1200mJ/cm)を照射して硬化させて、PETフィルム上にウレタン−アクリル複合フィルムを形成した。
【0057】
(実施例1)
100重量部の基準混合物Aに、光重合開始剤として、Irg.651を0.15部、連鎖移動剤として、チオグリコール酸(以下、「TGA」と略す)を0.1部加えることで添加混合物Aを得た。参考例と同様にして添加混合物Aによる塗膜形成及び放射線硬化を行い、ウレタン−アクリル複合フィルムを形成した。
【0058】
(実施例2)
100重量部の基準混合物Aに、光重合開始剤として、Irg.651を0.15部、連鎖移動剤として、TGAを0.5部加えることで添加混合物Bを得た。参考例と同様にして添加混合物Bによる塗膜形成及び放射線硬化を行い、ウレタン−アクリル複合フィルムを形成した。
【0059】
(実施例3)
100重量部の基準混合物Aに、光重合開始剤として、Irg.651を0.15部、連鎖移動剤として、TGAを1.0部加えることで添加混合物Cを得た。参考例と同様にして添加混合物Cによる塗膜形成及び放射線硬化を行い、ウレタン−アクリル複合フィルムを形成した。
【0060】
(比較例1)
【0061】
100重量部の基準混合物Aに、アクリル系モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート(以下、「TMPTA」と略す)を5部、光重合開始剤として、Irg.651を0.165部加えることで、アクリル系モノマーの組成を変化させた基準混合物αを得た。参考例と同様にして基準混合物αによる塗膜形成及び放射線硬化を行い、ウレタン−アクリル複合フィルムを形成した。
【0062】
(比較例2)
ポリオールとして、数平均分子量700のポリ(オキシプロピレン)グリコール(以下、PPG720と略す;旭硝子ウレタン株式会社製、商品名「エクセノール720」)を35.0重量部、HXDIを12.2重量部滴下し、65℃で5時間反応させウレタンポリマーを合成し、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにHEAを2.9重量部投入し、65℃で1時間反応させて、ウレタンポリマーの組成を変化させたこと以外は、参考例と同様の操作方法でアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物である基準混合物βを得た。なお、ジイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0063】
100重量部の基準混合物βに、光重合開始剤として、Irg.651を0.15部加えることで基準混合物β’を得た。参考例と同様にして基準混合物β’による塗膜形成及び放射線硬化を行い、ウレタン−アクリル複合フィルムを形成した。
【0064】
<評価試験>
(力学物性の評価)
得られた複合フィルムについて、力学物性の評価として、下記評価方法に基づき、伸張破断強度および20%伸張時応力の測定を行った。
【0065】
すなわち、得られた複合フィルムを幅10mm×長さ130mmに切断した後、セパレータを除去し、引張試験機として「オートグラフ−1kNG」(島津製作所株式会社製)を用い、試験サンプルに対し、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(23℃)で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求めた。複合フィルムが破断したときの応力を求めて伸張破断強度とし、フィルムの20%伸張時(当初のチャック間距離に対してチャック間距離が20%伸びた時点)における単位面積あたりの応力を20%伸張時応力とした。また、実施例および比較例の測定値の参考例の測定値に対する変化率(%)について、参考例の伸張破断強度と20%伸張時応力の値を100%とし、下の式を用いて算出した。
変化率=(実施例および比較例の各測定値/参考例の各測定値)×100(%)
【0066】
【表1】

【0067】
なお、表中の略号は以下のとおりである。
PTMG:数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール
PPG720:数平均分子量700のポリ(オキシプロピレン)グリコール
HXDI:水添キシリレンジイソシアネート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
Irg.650:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
TGA:チオグリコール酸
【0068】
実施例1〜3に示すように、連鎖移動剤であるTGAを添加したウレタン−アクリル複合フィルムの伸張破断強度は、参考例の伸張破断強度の89.8〜105.0%であり、参考例とほぼ同等の値を示した。また、20%伸張時応力は、参考例の20%伸張時応力の87.2〜31.2%であり、参考例よりも低い値を示した。一方、アクリル組成を変化させた比較例1では、伸張破断強度は参考例の105.5%と同等の値を示したが、20%伸張時応力は参考例よりも高い142.0%という値を示した。また、ウレタン組成を変化させた比較例2では、20%伸張時応力は参考例よりも低い88.8%という値を示したが、伸張破断強度は参考例の43.9%となり、参考例の伸張破断強度よりも値が大きく変化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンポリマー及びアクリル系ポリマーを含む複合フィルムの製造方法であって、
上記ウレタンポリマー及び少なくとも1種のアクリル系モノマーを含む基準混合物を調製する基準混合物調製工程と、
上記基準混合物100重量部に対し、連鎖移動剤を0.01重量部以上5重量部以下添加して添加混合物を調製する添加混合物調製工程と、
上記添加混合物を硬化させて複合フィルムを形成する複合フィルム形成工程と
を含み、
上記添加混合物の硬化により得られる複合フィルムP2の伸張破断強度S2は、上記基準混合物の硬化により得られる複合フィルムP1の伸張破断強度S1の85%以上115%以下の値であり、かつ
上記複合フィルムP2を20%伸張させた際の応力M2は、上記複合フィルムP1を20%伸張させた際の応力M1の90%以下の値である複合フィルムの製造方法。
【請求項2】
上記ウレタンポリマーはアクリロイル基末端ウレタンポリマーを含む請求項1に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項3】
上記基準混合物調製工程では、上記少なくとも1種のアクリル系モノマーの存在下、ポリオールとイソシアネートとの反応により上記ウレタンポリマーを形成する請求項1又は2に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項4】
上記複合フィルム形成工程では、放射線硬化性とした上記添加混合物を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射し硬化させて複合フィルムを形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合フィルムの製造方法により得られる複合フィルム。





【公開番号】特開2013−60546(P2013−60546A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200799(P2011−200799)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】