説明

複合フィルム

【課題】光硬化性および耐候性を有する複合フィルムを提供すること。
【解決手段】複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルムであって、分光測色計により測定される促進耐候性試験における120時間後のΔb*値(受光角度15度)、および、暗所における80℃雰囲気下での促進耐熱試験におけるΔb*値(受光角度15度)が、いずれも4.0以下である。また、複合フィルムは、さらに、暗所における85℃、相対湿度85%雰囲気下での促進耐湿熱性試験におけるΔb*値(受光角度15度)が6.0以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルムに関し、特に、光硬化性、耐候性、耐熱性および耐湿熱性を有する複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーの複合フィルムは、高強度と高破断伸びを両立できるフィルムとして知られており、特表2001−520127号公報には自動車等の表面保護フィルムとして、相互侵入高分子網目層(IPN層)、および、少なくとも1層のフルオロ含有ポリマー層を含む多層フィルムが開示されている。この多層フィルムのIPN層にはウレタンポリマーとアクリルポリマーのIPN複合体が用いられており、アクリルモノマーとアクリル架橋剤、および、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン架橋物先駆体の混合液を、基材上に塗布し、熱によりアクリルモノマーおよびウレタン先駆体であるポリオール/ポリイソシアネートを不干渉様式で、それぞれ重合、架橋させて得られる。
【0003】
この方法によれば、用いられる単量体の種類や組み合わせ、配合比等による制限(制約)が生じ難いという利点はあるが、ウレタン重合はアクリルのような連鎖反応に比べて遅い重付加反応であることから、生産性の面で課題があった。
【0004】
この生産性の課題の解決のために、IPN層を特開2003−96140号公報に開示されているような逐次合成と光重合を利用して得ようとすると、架橋ウレタンポリマーがアクリルモノマーおよび架橋剤の存在下で膨潤した状態となるため、シロップの粘度が著しく上昇してコーティングやキャスティングによる基材への塗布は極めて困難になるという問題が生じた。
【0005】
また、自動車等が走行する際に、粉塵、小石等がボディー塗装面に衝突することがあり、特に、道路状態の悪い路面や、寒冷地で除雪等のために岩塩、砂、砂利等が散布された路面等を走行する場合には塗装面が傷みやすく、塗装面の損傷部分から錆が発生するという問題がある。自動車業界においては、自動車ボディーの塗装面の損傷防止のために透明粘着テープが貼り付けられることがあり、この透明粘着テープの基材としてポリウレタン基材が使用されている。
【0006】
ところが、ポリウレタンは耐光性が問題であり、共役構造を示す着色物質や窒素含有の着色物質が生成することが知られている。したがって、ポリウレタンを含有するフィルムは、初期は無色透明であるが、フィルムを屋外に放置すると、紫外線に誘発される自動酸化によって変色(黄変)などの劣化を起こし、また、光沢感が消失して美観が低下することがある。
【0007】
また、ポリウレタンは暗所における耐熱性、耐湿熱性にも問題があり、変色(黄変)する。暗所黄変についても主要因はその反応と同様であり、特開平9−137016号公報および特許第2625508号公報には、そのような現象を防止する目的で、フェノール系やリン系化合物あるいは、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などを単独で、あるいは併用すること等が開示されており、それによって一応の効果があることは知られている。しかしながら、さらなる顕著な効果が得られる方法は未だ発見されていない。
【0008】
変色(黄変)を防止するために、紫外線吸収剤を含有させることができるが、フィルムの成形において光重合開始剤を用いて光重合反応を行う場合には、紫外線吸収剤が共存すると光重合開始剤の機能が十分に発揮されないことがあり、十分な光重合反応を起こさずに、硬化性が悪化する。
【0009】
また、変色(黄変)を防止するためにヒンダードアミン光安定剤、または/および、フェノール系化合物を含有させることができるが、光重合反応を抑制する(ラジカル補足剤)ヒンダードアミン光安定剤が共存した状態になるので、光重合開始剤によるラジカル重合反応による硬化において硬化性が悪化する。
【0010】
すなわち、紫外線吸収剤に光安定剤、または/および、フェノール系化合物を含んだ状態で、十分に光硬化し、かつ耐候性(耐黄変性)を有するウレタン系ポリマーを含むフィルムは未だ存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2001−520127号公報
【特許文献2】特開2003−96140号公報
【特許文献3】特開平9−137016号公報
【特許文献2】特許第2625508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、光硬化性、耐候性、耐熱性および耐湿熱性を有する複合フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルムであって、分光測色計により測定される促進耐候性試験における120時間後のΔb*値(受光角度15度)、および、暗所における80℃雰囲気下での促進耐熱試験におけるΔb*値(受光角度15度)が、いずれも4.0以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の複合フィルムは、さらに、暗所における85℃、相対湿度85%雰囲気下での促進耐湿熱試験におけるΔb*値(受光角度15度)が6.0以下である。
【0015】
本発明の複合フィルムは、少なくとも1種類の紫外線吸収剤、少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、および、少なくとも1種類のリン系化合物および/またはフェノール系化合物を含有していることが好ましい。
【0016】
本発明の複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含むことが好ましい。
【0017】
本発明において、前記複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体に、少なくとも1種類の紫外線吸収剤、少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、少なくとも1種類のアシルフォスフィン系光重合開始剤、および、少なくとも1種類のリン系化合物および/またはフェノール系化合物、を含有させた前駆体混合物に、前記光重合開始剤の感光波長域の光を照射して成ることができる。
この複合フィルム前駆体は、(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルム前駆体であることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記アシルフォスフィン系光重合開始剤は、下記式(I)で示される構造のモノアシルフォスフィンオキシドの少なくとも1つ、および/または、下記式(II)で示される構造のジアシルホスフィンオキシドの少なくとも1つを有することが好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
[式中、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、または一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表し、Rは、フェニル基、ナフチル基、または、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、C〜C18のアルコキシ基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を表すか、または、RとRはリン原子と一緒になって環を形成しており、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表すか、または、下記式
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、XはC〜Cのアルキレン基、シクロへキシレン基を表すか、または非置換またはハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されているフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で示される基で表される]
【0023】
【化3】

【0024】
[式中、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、または一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、C〜C18のアルコキシ基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を表し、かつ、RおよびRは互いに独立にC〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表す]
【0025】
本発明においては、前記前駆体混合物は、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を更に含有することが好ましい。
【0026】
本発明において、前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類の紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0027】
本発明において、前記光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル成分に対して0.05重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましい。
【0028】
また、前記紫外線吸収剤の配合量は、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましい。
【0029】
また、前記ヒンダードアミン光安定剤の配合量は、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましい。
【0030】
また、前記リン系化合物の配合量は、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましい。
【0031】
また、前記フェノール系化合物の配合量は、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明において、前記ウレタンポリマーは、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることが好ましい。
【0033】
本発明において、前記複合フィルムが、(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーを含む複合フィルムである場合には、前記複合フィルム中の(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、アクリル系ポリマー/ウレタンポリマー=1/99〜80/20の範囲内であることが好ましい。
【0034】
本発明においては、前記複合フィルム中に、アクリル酸系モノマーを1重量%以上、15重量%以下含有することが好ましい。
【0035】
本発明の粘着シートは、上記いずれか1項に記載の複合フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有することを特徴とする。
【0036】
本発明において前記粘着シートは、被着体の表面を保護するための保護シートとして使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、光硬化性、耐候性、耐熱性および耐湿熱性に優れた複合フィルムを実現することができる。また、本発明によれば、複合フィルムの強度が十分であり、臭気の問題も生じない複合フィルムを提供することができる。

【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含有するフィルムであって、ウレタンポリマー単独フィルムまたは他のポリマーを更に含有するフィルムである。本発明において複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含有することが好ましい。この場合、複合フィルム中の(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、(メタ)アクリル系ポリマー/ウレタンポリマー=1/99〜80/20の範囲内であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの含有比率が1/99未満では、前駆体混合物の粘度が高くなり、作業性が悪化する場合があり、80/20を超えると、フィルムとしての柔軟性や強度が得られない場合がある。
【0039】
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマー、および、単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなることが好ましく、特に、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを用いることが好ましい。さらに、本発明においては、(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーをさらに含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
【0040】
本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では特にアクリル酸が好ましい。複合フィルム前駆体が、(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルム前駆体である場合には、この(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、複合フィルム前駆体中、1重量%以上、15重量%以下であり、2重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が1重量%未満では、反応に長時間を要し、フィルム化することが非常に困難であり、また、フィルムの強度が十分でない問題が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が15重量%を超える場合には、フィルムの吸水率が大きくなり、耐水性に問題が生じる場合がある。上記の場合、本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーはウレタン成分、アクリル成分との相溶性に大きく影響するものであり、極めて重要な機能を有する必須構成要素である。
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。また、本発明において(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系モノマーのように、「(メタ)アクリル」と表示する場合には、メタアクリル、アクリルを総称する概念とする。また、「アクリル」と表示した場合でも、一般常識上問題がなければ、メタアクリルも含む概念とする。
【0041】
本発明において、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
【0042】
本発明においては、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、および、ジシクロペンタニルアクリレートからなる群のうち少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレート、あるいは、アクリロイルモルホリン及び/又はジシクロペンタニルアクリレートを用いることが更に好ましく、特にイソボルニルアクリレートを用いることが好ましい。
【0043】
Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、98重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が20重量%未満では、フィルムの強度が十分でないという問題が生じることがあり、99重量%を超えると、フィルムの剛性が上がりすぎて脆くなる場合がある。
【0044】
本発明において、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明においては、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチルを用いることが特に好ましい。
【0045】
Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは含有されていなくても良い(含有量が0重量%)が、含有されている場合の含有量は、アクリル成分中、0重量%より多く、50重量%以下であることが好ましく、0重量%より多く、45重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が50重量%を超える場合には、フィルムの強度が十分でない問題が生じることがある。
【0046】
(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0047】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系モノマーとともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0048】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0049】
多官能モノマーはアクリル系モノマー100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下含まれることができる。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、複合フィルムの凝集力は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0050】
ウレタンポリマーは、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0051】
低分子量のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0052】
また、高分子量のジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)等が好ましく使用される。
【0053】
アクリルポリオールとしては水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0054】
本発明において、ウレタンポリマーは架橋構造を含まない。ウレタンポリマーの形成に使用されるジオールは、線状(リニア)のジオールであることが好ましい。但し、ウレタンポリマーに架橋構造を形成させないという条件を満たす限りにおいて、ジオールは側鎖状のジオールまたは分岐構造を含むジオールであっても良い。すなわち、本発明の複合フィルムを構成するウレタンポリマーは架橋構造を含まないものであり、したがって、IPN構造とは構造的に全く異なるものである。
【0055】
本発明においては、上記ジオールを、アクリル系モノマーへの溶解性、イソシアネートとの反応性等を考慮して、単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布する基材等の特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0056】
ジイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0057】
これらの中では、特に、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族系のジイソシアネートが好ましく使用される。ベンゼン環を含む芳香族系のジイソシアネートを使用すると、光反応によって共役構造を有する着色物質が生成しやすいため好ましくないからであり、本発明においては、ベンゼン環を含まない、難黄変型、無黄変型の脂肪族、脂環族系のジイソシアネートが好適に使用される。
【0058】
これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。複合フィルムが適用される(塗布等される)基材等の特性、アクリル系モノマーへの溶解性、水酸基との反応性などの観点から、ジイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
【0059】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのジオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、ジオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、
1.15以上、1.35以下であることがさらに好ましい。NCO/OH(当量比)が1.1未満では、フィルム強度が低下しやすい。また、NCO/OH(当量比)が2.0以下であれば、伸びと柔軟性を十分確保することができる。
【0060】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、(メタ)アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S特性の向上を図ることもできる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
【0061】
本発明においては、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体に、紫外線吸収剤が添加されることが好ましい。この複合フィルム前駆体は、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとからなる複合フィルム前駆体であることが好ましい。本発明に使用される紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等があるが、本発明においてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0062】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C7〜C9の側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾロリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]等が挙げられる。
【0063】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン型紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる紫外線吸収剤、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物、2,4−ビス[2−ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0064】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0065】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert―ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(TINUVIN 120)等が挙げられる。
【0066】
商業的に入手可能なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、
2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN PS」、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C〜Cの側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 384−2」、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 109」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 900」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 928」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物としてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 1130」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN P」、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 326」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 328」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 329」、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]としてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 360」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 213」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 571」、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールとして住友化学社製の「Sumisorb 250」、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]としてADEKA製の「ADKSTAB LA31」等が挙げられる。
【0067】
また、商業的に入手可能なヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる紫外線吸収剤としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 405」、2,4−ビス[2−ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 460」、2-(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 1577」、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 479」等が挙げられる。
【0068】
商業的に入手可能なベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert―ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 120」等が挙げられる。
【0069】
本発明においては、上記紫外線吸収剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用して用いることができる。
【0070】
紫外線吸収剤の総使用量は、複合フィルム前駆体100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.1重量%以上であれば、劣化や着色を引き起こす紫外光の吸収が十分であり、4.0重量%以下であれば、紫外線吸収剤自体による着色を引き起こすことはない。
【0071】
フィルムは着色されている場合がある。本発明において「着色」とは、例えば、フィルム形成直後の着色と、形成されたフィルムが太陽光、暗所での熱、湿度などの外部要因によって発生する着色などがある。フィルム形成直後の着色は、その原因が主成分や添加剤によるものであり、フィルムの初期着色である。太陽光、暗所での熱、湿度などの外部要因によって発生する着色は、フィルムの化学的な組成が外部要因によって変化するために誘引される着色であり、フィルムの変色である。フィルムにおける着色は、例えば、基準となる値(初期値など)のb*値と測定時の値のb*値との差によって、Δb*値として示すことができる。b*値は、多角度分光測色計を用いて測定することができる。本発明の複合フィルムは、促進耐候試験における120時間後のΔb*値(受光角度15度)、および、暗所における80℃雰囲気下での促進耐熱試験におけるΔb*値(受光角度15度)が、それぞれ、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.5以下である。Δb*が4.0を超えると、複合フィルムを白色塗板などの被着体に貼り合せた際に、被着体との色差が大きくなり外観を損ねる場合がある。Δb*値が4.0以下であれば、良好な外観を十分に確保することができる。なお、本発明の複合フィルムは、さらに、暗所における85℃、相対湿度85%雰囲気下での促進耐湿熱試験におけるΔb*値(受光角度15度)が6.0以下であることが好ましい。
本発明に使用される促進耐候試験、促進耐熱試験、および、促進耐湿熱試験については、実施例において説明する。なお、測定対象の複合フィルムは、試験の実施の都合上、片面に透明の粘着剤層(例えば、アクリル系粘着剤層)を設けたものについて測定を行っているが、該粘着剤層は透明であり、厚みも50μmと薄いものであるので、b*値の測定においては問題がないものである。また、本発明において「複合フィルム」と称する場合にはコート層も含める場合がある。
【0072】
本発明においては、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体に、光安定剤が添加されることが好ましい。本発明に用いられる光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)であることが必要である。ヒンダードアミン系光安定剤は、例えば、下記式(III)で示されるものが好ましい。
【0073】
【化4】


(式中、R11はアルキレン基、アルキル基、エーテル基であり、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルコキシ基である。)
【0074】
商業的に入手可能なヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物である光安定剤として、「TINUVIN 622」(チバ・ジャパン社製)、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物とN,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンとの1対1の反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 119」(チバ・ジャパン社製)、ジブチルアミン・1,3−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物である光安定剤として「TINUVIN 2020」(チバ・ジャパン社製)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ})である光安定剤として、「TINUVIN 944」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 765」(チバ・ジャパン社製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートである光安定剤として「TINUVIN 770」(チバ・ジャパン社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシド)とオクタンとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 123」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートである光安定剤として「TINUVIN 144」(チバ・ジャパン社製)、シクロヘキサンと過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 152」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 292」(チバ・ジャパン社製)、「Viosorb 765」(共同薬品(株)製)等が挙げられる。
【0075】
本発明においては、上記ヒンダードアミン光安定剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用することができるが、これらヒンダードアミン光安定剤の総使用量は、複合フィルム前駆体100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。ヒンダードアミン光安定剤の使用量が0.1重量%以上であれば、劣化防止機能が十分発現し、4.0重量%以下であれば、光安定剤自体による着色を引き起こすことはない。
【0076】
本発明においては、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体に、アシルフォスフィン系光重合開始剤が添加される。この複合フィルム前駆体は、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとからなる複合フィルム前駆体であることが好ましい。本発明に用いられるアシルフォスフィン系光重合開始剤としては、下記式(I)で示される構造のモノアシルフォスフィンオキシドの少なくとも1つ、および/または、下記式(II)で示される構造のジアシルホスフィンオキシドの少なくとも1つを有することが好ましい。
【0077】
式(I)を下記に示す。
【化5】

【0078】
[式中、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、または一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表し、Rは、フェニル基、ナフチル基、または、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、C〜C18のアルコキシ基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を表すか、または、RとRはリン原子と一緒になって環を形成しており、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表すか、または、下記式
【0079】
【化6】

【0080】
(式中、XはC〜Cのアルキレン基、シクロへキシレン基を表すか、または非置換またはハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されているフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で示される基で表される]
【0081】
【化7】

【0082】
[式中、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、または一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、C〜C18のアルコキシ基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を表し、かつ、RおよびRは互いに独立にC〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表す]
【0083】
式(I)におけるRは、フェニル基を表すか、またはハロゲン、C12のアルキル基もしくはC〜C12のアルコキシ基により1個以上置換されているフェニル基を表すことが好ましい。
【0084】
は、フェニル基を表すか、またはC〜Cのアルキル基により1〜3個置換されているフェニル基を表すことが更に好ましく、特にフェニル基を表すことが好ましい。
【0085】
式(I)におけるRは、フェニル基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基もしくはC〜C12のアルコキシ基により1個以上置換されているフェニル基もしくはフェノキシ基を表すか、または、C〜C18のアルコキシ基を表すことが好ましい。
【0086】
は、フェニル基、フェノキシ基を表すか、または1〜3個のアルキル基、特に、メチル基により置換されているフェニル基もしくはフェノキシ基を表すか、またはC〜Cのアルコキシ基を表すことが更に好ましい。
【0087】
は、C〜Cのアルコキシ基、特にC〜Cのアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
【0088】
は、フェニル基を表すか、またはハロゲン、C〜C12のアルキル基もしくはC〜C12のアルコキシ基により1個以上置換されているフェニル基を表すことが好ましい。
【0089】
は、少なくとも2位および6位で、2位および4位で、または2位、4位および6位で(カルボニル基に対して)C〜Cのアルキル基、好ましくはC〜Cのアルキル基、特にメチル基により置換されているフェニル基を表すことが更に好ましい。
【0090】
は2,4−ジメチルフェニル基または2,4,6−トリメチルフェニル基を表すことが特に好ましい。
【0091】
式(II)におけるRは、フェニル基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基もしくはC〜C12のアルコキシ基により1個以上置換されているフェニル基もしくはフェノキシ基を表すか、またはC〜C18のアルコキシ基またはC〜C18のアルキル基を表すことが好ましい。
【0092】
は、フェニル基、フェノキシ基を表すか、またはC〜Cのアルキル基により置換されているフェニル基を表し、アルキル基は特にメチル基を表すことが更に好ましい。Rはフェニル基であることが特に好ましい。
【0093】
式(II)におけるRおよびRは、互いに独立にフェニル基を表すか、またはハロゲン、C〜C12のアルキル基もしくはC〜C12のアルコキシ基により1個以上置換されているフェニル基を表すことが好ましい。
【0094】
およびRは、互いに独立に、2位および6位で、2位および4位で、または2位、4位および6位で(カルボニル基に対して)C〜Cのアルコキシ基またはアルキル基、好ましくはC〜Cのアルコキシ基またはアルキル基、特にメチル基により置換されているフェニル基を表すことが更に好ましい。
【0095】
およびRは、2,4−ジメチルフェニル基、特に2,4,6−トリメチルフェニル基を表すことが特に好ましい。
【0096】
本発明に用いられるアシルフォスフィン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジブトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジイソプロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−4−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジエチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,3,5,6−テトラメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジブトキシフェニルホスフィンオキシド、1,10−ビス[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド]デカン、トリ(2−メチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、などが挙げられる。
【0097】
これらの中でも特に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドが好ましい。
【0098】
本発明においては、アシルフォスフィン系光重合開始剤の使用と併用して更に
アルキルフェノン系光重合開始剤を使用することもできる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えばα−ヒドロキシアルキルフェノン等が挙げられる。α−ヒドロキシアルキルフェノンを併用することにより、重合率を向上させることができる。
【0099】
本発明に用いられるα―ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0100】
商業的に入手可能なアシルフォスフィン系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドとして、「DAROCUR TPO」(チバ・ジャパン社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドとして、「IRGACURE 819」(チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。また、商業的に入手可能なアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、α−ヒドロキシアルキルフェノンとして、「IRGACURE 184」(チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。また、アシルフォスフィン系光重合開始剤およびアルキルフェノン系光重合開始剤が予め混合された光重合開始剤として、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドおよび1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンを混合した、「IRGACURE 1850」(チバ・ジャパン社製)も商業的に入手可能なものとして挙げられ、これも本発明においては使用可能である。
【0101】
本発明においては、アシルフォスフィン系光重合開始剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用することができるが、これらアシルフォスフィン系光重合開始剤の総使用量は、アクリル成分に対して0.05重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。アシルフォスフィン系光重合開始剤の使用量が0.05重量%以上であれば、複合フィルムの硬化性は充分であり、4.0重量%以下であれば、未分解の開始剤残渣による複合フィルムの初期着色が少なくなる。
【0102】
本発明において、硬化性は、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体に、例えばウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーを含む複合フィルム前駆体に、紫外線吸収剤等を添加したものに、光重合開始剤の感光波長域の放射線等を照射して硬化した後の不揮発成分、すなわち重合率で示すことができ、例えば以下のようにして求めることができる。
【0103】
すなわち、硬化後の複合フィルム(必要に応じて、キャストフィルム、セパレータ等を剥離除去する)の重量(W1)を測定する。次いで、重量測定後の複合フィルムを130℃で2時間加熱処理し、未反応の(メタ)アクリル系モノマーを除去する。加熱処理後の複合フィルムの重量(W2)を測定し、下記式から不揮発成分(%)を求める。

不揮発成分(%)=重合率(%)=(加熱処理後の重量(W2)/加熱処理前の重量(W1))×100

【0104】
複合フィルムの不揮発成分(重合率)は96%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましい。不揮発成分(重合率)が96%未満では未反応成分の残存量が多いので臭気が問題となることがあり、あるいは、得られる複合フィルムの強度が充分でない場合がある。不揮発成分(重合率)が96%以上であれば、モノマーは充分に反応しており、臭気も少なく、複合フィルムの強度も充分である。
【0105】
本発明の複合フィルムは、さらに、少なくとも1種類のフェノール系化合物、および/または、少なくとも1種類のリン系化合物を含有することが好ましい。
【0106】
リン系化合物の配合量は、複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以上、3.0重量%以下であることが更に好ましい。
また、フェノール系化合物の配合量は、複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以上、3.0重量%以下であることが更に好ましい。
【0107】
本発明においては、リン系化合物およびフェノール系化合物は、それぞれ単独で使用しても良いが、併用することもでき、併用する場合の配合量は、リン系化合物およびフェノール系化合物の総量が、複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.2重量%以上、5.0重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上、4.0重量%以下であることが更に好ましい。
【0108】
本発明に用いられるフェノール系化合物としては、例えば、嵩高い置換基(例えばt−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基など)を持つフェノール骨格を有する化合物であり、例えば下記式で表される化合物や、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、 N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、 ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、 ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシイソオクチルエステル、 ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、 2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(IRGANOX1520L)などを挙げることができる。
【0109】
【化8】

【0110】
上記フェノール系化合物は市販品として入手可能であり、例えばIrganox1010、Irganox1010FF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox5057、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295、Irganox1222、Irganox1141(以上、チバ・ジャパン社製)などを挙げることができる。なお、上記式で表されるフェノール系化合物は、市販品として例えば「Irganox1135」(チバ・ジャパン製)を入手することができる。
【0111】
本発明に用いられるリン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式で表される三置換ホスファイト化合物であることが望ましい。
【0112】
【化9】

【0113】
上記式中、R1、R2およびR3は同一でも異なっていても良く、炭素原子数が1〜18の、芳香族もしくは芳香脂肪族基、または必要に応じてエーテル基を有する直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族基を示すか、あるいは、R1およびR2はリン原子および2個の酸素原子と一緒になって5員もしくは6員の複素環を形成している。ただし置換基R1、R2およびR3の少なくとも1つは、炭素原子数が6〜18の芳香族基または炭素原子数が9〜18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族基を示す。
【0114】
具体的には、例えば、トリフェニルホスファイトもしくはトリス(ノニルフェニル)ホスファイトのようなアリールホスファイト;ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ジイソオクチルオクチルフェニルホスファイト、フェニルネオペンチルグリコールホスファイトもしくは2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−(2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)ホスファイトのようなアルキル−アリールホスファイト;トリイソデシルホスファイト、トリラウリルホスファイトもしくはトリス(トリデシル)ホスファイトのようなアルキルホスファイト;ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトもしくはテトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトのような芳香族もしくは脂肪族置換のジホスファイト、などが挙げられる。
【0115】
これらの中では、トリイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイトおよびジフェニルイソデシルホスファイトが好適であり、これらの混合物を用いることが特に好適である。なお、トリイソデシルホスファイトの構造、フェニルジイソデシルホスファイトの構造、ジフェニルイソデシルホスファイトの構造、トリフェニルホスファイトの構造を下記に示す。
【0116】
【化10】

【0117】
【化11】

【0118】
【化12】

【0119】
【化13】

【0120】
商業的に入手可能なリン系化合物としては、例えば、Irgafos168、Irgafos168FF、Irgafos12、Irgafos38(以上、チバ・ジャパン社製)などを挙げることができる。
【0121】
本発明の複合フィルムは、上記したように、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルムであり、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルムであって、少なくとも1種類の紫外線吸収剤、少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、および、少なくとも1種類のリン系化合物および/またはフェノール系化合物を含有していることが好ましい。
【0122】
複合フィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ジイソシアネートとジオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとをそれぞれ重合させる前に添加してもよい。
【0123】
また、塗工の粘度調整のため、少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0124】
本発明における複合フィルムが(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーを含む複合フィルムである場合には、例えば、まず、(メタ)アクリル系モノマーを希釈剤として、この(メタ)アクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとの反応を行ってウレタンポリマーを形成し、(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む複合フィルム前駆体を形成する。次いで、この複合フィルム前駆体に、少なくとも1種類の紫外線吸収剤と、少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤と、少なくとも1種類のリン系化合物および/またはフェノール系化合物、および、必要に応じて更に、少なくとも1種類のアシルフォスフィン系光重合開始剤等を含有させた混合物(前駆体混合物)を形成する。
【0125】
この前駆体混合物を基材(必要に応じて剥離処理されている)等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、光重合開始剤の感光波長域の光を照射して硬化させ、その後、基材等を剥離除去することにより、複合フィルムを形成することができる。あるいは、基材等を剥離除去せずに、基材等の上に複合フィルムが積層された形態で得ることもできる。なお、本発明においては、キャストフィルムは基材に含まれるものとする。
【0126】
具体的には、ジオールを(メタ)アクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してジオールと反応させて粘度調整を行い、これに紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、リン系化合物および/またはフェノール系化合物、および、必要に応じてアシルフォスフィン系光重合開始剤等を更に混合し、この混合物(前駆体混合物)を基材等に、あるいは、必要に応じて基材等の剥離処理面に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得ることができる。この方法では、(メタ)アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートを(メタ)アクリル系モノマーに溶解させた後、ジオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0127】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、基材等上に塗布した前駆体混合物の上に、剥離処理したシート(セパレータ等)をのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0128】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0129】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0130】
また、紫外線等を照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0131】
本発明の複合フィルムの厚みは、目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、自動車のボディーを保護するために用いられるチッピング用途の場合には、複合フィルムの厚さは50〜500μm程度であることが好ましく、更に好ましくは100〜300μm程度であることが好ましい。
【0132】
本発明の複合フィルムは、その片面または両面にコート層を設けることもできる。コート層を形成する材料は特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、シリコーン系、フッ素化合物系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、などの樹脂、あるいは、金属蒸着物等、一般的なものを使用することができる。コート層としては、特にフッ素化合物系樹脂を用いてなる層であることが好ましく、例えばフルオロエチレンビニルエーテル層であることが好ましい。コート層を設けることにより、光沢性、耐摩耗性、防汚性、撥水性などの特性を付与することが可能となり、また複合フィルム自体の劣化を抑制する効果もある。
【0133】
コート層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溶剤系、エマルジョン系等のコート剤を複合フィルムの上に直接塗布し、乾燥する方法、該コート剤を剥離紙に塗布して予めコート層を形成しておき、このコート層を複合フィルムに熱圧着などの方法で転写する方法、剥離処理されたフィルム上に、予めコート層を形成しておき、コート層の上に複合フィルムを硬化させて形成する方法、放射線硬化型のコート剤を用いて剥離処理されたフィルム上に予めコート層を形成しておき、このコート層を複合フィルムに転写する方法、放射線硬化型のコート剤を複合フィルムの一方の面に塗布し、他方の面に放射線硬化型の粘着剤を塗布し、放射線を照射することにより、好ましくは複合フィルムの両面側から放射線を照射することにより、コート層と粘着剤層とを同時に硬化させて形成する方法、複合フィルム上に金属酸化物を蒸着させてコート層を形成する方法等が適用できる。
なお、コート層を設ける場合には、複合フィルムの一方の面にコート層を有し、他方の面に粘着剤層を有する構成とすることが好ましい。
【0134】
コート層の厚みは、2〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜40μmであり、更に好ましくは8〜30μmである。コート層の厚みが2μm未満では、ピンホールなど、コート層が形成されない欠陥部位が発生しやすく、またコート層の特性が充分に発揮できない場合がある。また50μmを超えると、コート層の物性が複合フィルムの物性を低下させてしまう場合がある。
【0135】
本発明の複合フィルムは、そのままでも使用することができるが、片面または両面に粘着剤層を形成して粘着シートとすることもできる。粘着剤組成としては特に限定されず、アクリル系、ゴム系等、一般的なものを使用することができる。粘着剤の形成方法も特に限定されるものではなく、複合フィルムに、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を複合フィルムに塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、複合フィルムと粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と複合フィルム層は、多層構成となるように塗布することもできる。あるいはまた、セパレータに粘着剤層を設けて、その上に複合フィルムを形成してもよい。
【0136】
粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は3〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましく、特に10〜30μm程度であることが好ましい。
【0137】
本発明に用いられる基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が使用される。中でもPETは、精密部品の加工に使用する場合には適度な固さを有しているので好適であり、さらにまた、品種の豊富さやコスト面からも有利であるので、好ましく使用される。フィルムの材料は、用途や必要に応じて設けられる粘着剤層の種類等に応じて、適宜決定することが好ましく、例えば紫外線硬化型粘着剤を設ける場合には、紫外線透過率の高い基材が好ましい。
【0138】
本発明において、複合フィルムは、その片面または両面に他のフィルムを積層することができる。他のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等のような熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、他のフィルムは単層構成でもよいが、同種の、又は異種の材料からなる複数の層による多層構造のフィルムでもよい。
【0139】
本発明の複合フィルムは、高強度と高破断伸びを両立することができ、また、曲面に対する柔軟性にも優れている。したがって、自動車、自動二輪車、航空機、風力発電等の羽等のあらゆる塗装面を保護するための保護用シート等に好適であり、例えば、自動車の塗装面や建造物等の被着体に粘着剤を塗布等した上に複合フィルムを貼り合わせて使用することができる。あるいは、複合フィルムに粘着剤層を設けた粘着シートとして使用することもでき、この場合、粘着シートは、自動車のボディー等に貼付適用されるチッピングシートやボディープロテクションフィルムとして好適である。しかも、本発明の複合フィルムは、耐候性、耐熱性、耐湿熱性に優れているので、長期間、屋外に放置しても変色(黄変)したり、光沢感がなくなる等によって美観が低下することがない。

【実施例】
【0140】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、技術常識上問題がない範囲内で、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、以下の実施例において使用された重合率の算出方法、および、耐候性、耐熱性、耐湿熱性の評価方法を下記に示す。
下記評価において標準試験板として使用したアクリル焼付白色塗板(日本テストパネル(株)製)は、L*値が95.68〜98.56、a*値が−1.26〜−1.01、b*値が0.16〜1.52の値を示すものを用いた。
【0141】
(1)不揮発成分(重合率)の算出方法
得られた複合フィルムからキャストフィルムおよびセパレータを剥離して重量(W1)を測定する。測定後、複合フィルムを130℃で2時間加熱処理し、未反応の(メタ)アクリル系モノマーを除去する。加熱処理後の複合フィルムの重量(W2)を測定し、下記式に基づいて重合率(不揮発成分)を算出する。

重合率(不揮発成分)(%)={加熱処理後の重量(W2)/加熱処理前の重量(W1)}×100

【0142】
(2)耐候性(耐黄変性)の評価
複合フィルムからキャストフィルムおよびセパレータを剥離除去した後、複合フィルムの一方の表面に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層を形成して粘着テープを作製する。この粘着テープをアクリル焼付白色塗板(日本テストパネル(株)製、標準試験板)にローラーを用いて貼り付けた後、多角度分光測色計(MA68II、エックスライト(株)製)を用いて、初期のb*値(受光角度15度の値)を測定する。
その後、粘着テープについて、メタルウェザーメーター(製品名「ダイプラメタルウェザー KU−R5N」、ダイプラ・ウィンテス(株)製)を用い、照射状態で4時間(パネル温度63℃、相対湿度70%)、照射及び降雨状態で4時間(パネル温度70℃、相対湿度90%)、および、暗黒状態で4時間(パネル温度30℃、相対湿度98%)の計12時間を1サイクルとして、120時間(10サイクル)の促進耐候試験を行い、b*値(受光角度15度の値)を測定する。
促進耐候試験後、得られた受光角度15度でのb*値と、初期に測定した受光角度15度でのb*値との差をとりΔb*値を算出する。
【0143】
(3)耐熱性(耐黄変性)の評価
複合フィルムからキャストフィルムおよびセパレータを剥離除去した後、複合フィルムの一方の表面に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層を形成して粘着テープを作製する。この粘着テープをアクリル焼付白色塗板(日本テストパネル(株)製、標準試験板)にローラーを用いて貼り付けた後、多角度分光測色計(MA68II、エックスライト(株)製)を用いて、初期のb*値(受光角度15度の値)を測定する。
アクリル焼付白色塗板に貼り付けた粘着テープについて、80℃に設定したオーブン(装置名「オーブン OH−201」、ESPEC(株)製)を用い、暗所で4週間、促進耐熱試験を行ない、b*値(受光角度15度の値)を測定する。
この促進耐熱試験後に得られた受光角度15度でのb*値と、初期に測定した受光角度15度でのb*値との差を求めてΔb*値を算出する。
【0144】
(4)耐湿熱性(耐黄変性)の評価
複合フィルムからキャストフィルムおよびセパレータを剥離除去した後、複合フィルムの一方の表面に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層を形成して粘着テープを作製する。この粘着テープをアクリル焼付白色塗板(日本テストパネル(株)製、標準試験板)にローラーを用いて貼り付けた後、多角度分光測色計(MA68II、エックスライト(株)製)を用いて、初期のb*値(受光角度15度の値)を測定する。
アクリル焼付白色塗板に貼り付けた粘着テープについて、85℃、相対湿度85%に設定したオーブン(装置名「恒温恒湿機 PR−3KT」、ESPEC(株)製)を用い、暗所で4週間、促進耐湿熱試験を行ない、b*値(受光角度15度の値)を測定する。
促進耐湿熱試験後に得られた受光角度15度でのb*値と、初期に測定した受光角度15度でのb*値との差を求めてΔb*値を算出する。
【0145】
(実施例1)
フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる溶解液(旭硝子(株)製のLF600、固形分50%含有)の100重量部に、硬化剤として、10.15部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、コロネートHX)と、触媒として、3.5部のラウリン酸ジブチル錫(東京ファインケミカル(株)製のOL1)のキシレン希釈液(ラウリン酸ジブチル錫の濃度0.01重量%)を添加してフルオロエチレンビニルエーテル層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ75μm)上に、硬化後の厚みが10μmとなるように塗布し、140℃の温度で3分間乾燥および硬化させて、フルオロエチレンビニルエーテル層を有するPETフィルムを形成した。
【0146】
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を35部、n−ブチルアクリレート(BA)を10部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(複合フィルム前駆体)を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0147】
その後、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を3部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN400、チバ・ジャパン(株)製)を1.0部、ヒンダードアミン光安定剤(Viosorb765、共同薬品(株)製)を1.0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)を1.0部添加した。さらに光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(IRGACURE819、チバ・ジャパン(株)製)をアクリル成分に対して0.3部となるように添加した後、充分に攪拌して添加剤等を完全に溶解させ、複合フィルムの前駆体混合物を得た。
【0148】
剥離処理したPETフィルムのフルオロエチレンビニルエーテル層(コート層)の上に、前駆体混合物を硬化後の厚みが150μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(厚み38μm)を重ねて被覆した後、被覆したセパレータ面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
【0149】
得られた複合フィルム(コート層有り)について、剥離処理されたPETフィルムおよびセパレータを除去し、上記に示す方法に従い、重合率(不揮発成分)の算出、および耐候性、耐熱性、耐湿熱性(黄変性)の評価を行なった。その結果を表1に示す。ただし、耐候性、耐熱性、耐湿熱性の評価において、粘着剤層はフルオロエチレンビニルエーテル層(コート層)が積層されている面とは反対側の面に設けられた。
【0150】
(実施例2)
実施例1において、前駆体混合物の塗布量を、硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム状に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0151】
(実施例3)
実施例1において、リン系化合物の種類を、リン系化合物B(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、および、イソデシルジフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)に変更して、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが150μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0152】
(実施例4)
実施例3において、前駆体混合物の塗布量を、硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例3と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0153】
(実施例5)
実施例1において、リン系化合物の替わりにフェノール系化合物(Irganox1135、チバ・ジャパン(株)製)の1.0重量部を使用して、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが150μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0154】
(実施例6)
実施例5において、前駆体混合物の塗布量を、硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例5と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0155】
(実施例7)
実施例1において、リン系化合物Aの1.0部を、リン系化合物Aの0.5部およびフェノール系化合物(Irganox1135、チバ・ジャパン(株)製)の0.5部に変更して、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが150μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0156】
(実施例8)
実施例7において、前駆体混合物の塗布量を、硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例7と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0157】
(実施例9)
実施例1において、リン系化合物Aの1.0部を、リン系化合物Bの0.5部、および、フェノール系化合物(Irganox1135、チバ・ジャパン(株)製)の0.5部に変更して、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが150μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0158】
(実施例10)
実施例9において、前駆体混合物の塗布量を、硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例9と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0159】
(実施例11)
実施例7において、紫外線吸収剤の種類をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN213、チバ・ジャパン(株)製)に変更し、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが150μmとなるように塗布した以外は実施例7と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0160】
(実施例12)
実施例11において、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例11と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0161】
(実施例13)
実施例9において、紫外線吸収剤の種類をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN213、チバ・ジャパン(株)製)に変更し、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが150μmとなるように塗布した以外は実施例9と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0162】
(実施例14)
実施例13において、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は実施例13と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0163】
(実施例15)
フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる溶解液(旭硝子(株)製のLF600、固形分50%含有)の100重量部に、硬化剤として、10.15部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、コロネートHX)と、触媒として、3.5部のラウリン酸ジブチル錫(東京ファインケミカル(株)製のOL1)のキシレン希釈液(ラウリン酸ジブチル錫の濃度0.01重量%)を添加してフルオロエチレンビニルエーテル層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ75μm)上に、硬化後の厚みが10μmとなるように塗布し、140℃の温度で3分間乾燥および硬化させて、フルオロエチレンビニルエーテル層を有するPETフィルムを形成した。
【0164】
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を30部、n−ブチルアクリレート(BA)を15部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を35.05部とを投入し、攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の14.95部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(複合フィルム前駆体)を得た。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレートを4.28部滴下した後、65℃で1時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0165】
その後、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を9部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN400、BASF・ジャパン(株)製)を1.25部、ヒンダードアミン光安定剤(Viosorb765、共同薬品(株)製)を0.54部、および、ヒンダードアミン光安定剤(TINUVIN123、BASF・ジャパン(株)製)を0.30部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)を1.07部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の0.55部添加した。さらに光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(IRGACURE819、BASF・ジャパン(株)製)をアクリル成分に対して0.3部となるように添加した後、充分に攪拌して添加剤等を完全に溶解させ、複合フィルムの前駆体混合物を得た。
【0166】
剥離処理したPETフィルムのフルオロエチレンビニルエーテル層(コート層)の上に、前駆体混合物を硬化後の厚みが150μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(厚み38μm)を重ねて被覆した後、被覆したセパレータ面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
【0167】
得られた複合フィルム(コート層有り)について、剥離処理されたPETフィルムおよびセパレータを除去し、上記に示す方法に従い、重合率(不揮発成分)の算出、および耐候性、耐熱性、耐湿熱性(黄変性)の評価を行なった。その結果を表1に示す。ただし、耐候性、耐熱性、耐湿熱性の評価において、粘着剤層はフルオロエチレンビニルエーテル層(コート層)が積層されている面とは反対側の面に設けられた。
【0168】
(実施例16)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤(Viosorb765、共同薬品(株)製)の添加量を1.13部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.26部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0169】
(実施例17)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.59部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.20部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.18部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0170】
(実施例18)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.13部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.20部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.26部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0171】
(実施例19)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.83部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.75部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0172】
(実施例20)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.33部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.75部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.00部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0173】
(実施例21)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.33部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.75部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を0.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.00部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0174】
(実施例22)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.83部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.00部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0175】
(実施例23)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.83部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.75部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.00部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0176】
(実施例24)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.50部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0177】
(実施例25)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0178】
(実施例26)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0179】
(実施例27)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765、共同薬品(株)製)の添加量を0.50部、および、(TINUVIN123、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、フェノール系化合物の種類を(Irganox1135、BASF・ジャパン(株)製)に変更しその添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0180】
(実施例28)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.00部、フェノール系化合物の種類を(Irganox1135、BASF・ジャパン(株)製)に変更しその添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0181】
(実施例29)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.50部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0182】
(実施例30)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0183】
(実施例31)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を0.50部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0184】
(実施例32)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.00部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.00部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0185】
(実施例33)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.33部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.67部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0186】
(実施例34)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.33部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0187】
(実施例35)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.33部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0188】
(実施例36)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765(共同薬品(株)製)の添加量を1.33部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.50部、リン系化合物A(トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物、共同薬品(株)製)の添加量を2.67部、フェノール系化合物(Irganox1520L、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を0.25部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0189】
(実施例37)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤(Viosorb765、共同薬品(株)製)の添加量を0部、および、(TINUVIN123、BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.25部、リン系化合物Aの添加量を0部、フェノール系化合物の種類を(Irganox1135、BASF・ジャパン(株)製)に変更しその添加量を0.50部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0190】
(実施例38)
実施例15において、ヒンダードアミン光安定剤として、Viosorb765の添加量を0部、および、TINUVIN123(BASF・ジャパン(株)製)の添加量を1.25部、リン系化合物Aの添加量を0部、フェノール系化合物の種類を(Irganox1135、BASF・ジャパン(株)製)に変更しその添加量を1.00部に変更した以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0191】
(比較例1)
実施例1において、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤およびリン系化合物を使用しなかった(すなわち、紫外線吸収剤を0部、および、ヒンダードアミン系光安定剤を0部)以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0192】
(比較例2)
比較例1において、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は比較例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0193】
(比較例3)
実施例1において、紫外線吸収剤(TINUVIN400、チバ・ジャパン(株)製)の使用量を1.25部に変更し、ヒンダードアミン系光安定剤の種類と使用量をヒンダードアミン光安定剤(TINUVIN123、チバ・ジャパン(株)製)1.25部に変更し、かつリン系化合物を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0194】
(比較例4)
比較例3において、前駆体混合物の塗布量を硬化後の厚みが300μmとなるように変更した以外は比較例3と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0195】
(比較例5)
実施例15において、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤およびリン系化合物、フェノール系化合物を使用しなかった(すなわち、紫外線吸収剤を0部、ヒンダードアミン系光安定剤を0部、および、リン系化合物を0部、フェノール系化合物を0部)以外は実施例15と同様にして、剥離処理したPETフィルム上に、フルオロエチレンビニルエーテル層が積層された複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0196】
【表1】

【0197】
表1、表2および表3における注記:
注1) 紫外線吸収剤 T400:TINUVIN 400
T213:TINUVIN 213
注2) 光安定剤 T123:TINUVIN 123
Vio765:Viosorb 765
注3) リン系化合物 A:トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、および、トリフェニルホスファイトからなる混合物
リン系化合物 B:トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、および、イソデシルジフェニルホスファイトからなる混合物
注4) フェノール系化合物 Irg1135:Irganox 1135
Irg1520L:Irganox 1520L
注5) 光重合開始剤 Irg819:Irgacure 819
【0198】
【表2】

【0199】
【表3】

【0200】
表1〜表3から明らかなように、本発明の実施例1〜38の複合フィルムは、耐候性、耐熱性、耐湿熱性(黄変性)に関し、時間が経過してもΔb*値が小さくて、耐候性、耐熱性、耐湿熱性に優れたフィルムであることが分かった。また重合率は98%以上であることが分かった。
一方、表3から明らかなように、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を含有しない比較例1および2は、耐候性が著しく劣るものであることが分かった。
また、比較例3および4は、耐候性は優れるものの耐湿熱性に劣るものであることが分かった。更にまた、比較例5は耐熱性に劣るものであることが分かった。
【0201】
本発明によれば、光硬化性および耐候性、耐熱性、耐湿熱性に優れた複合フィルムを提供することができた。また、複合フィルムの強度が十分であり、臭気の問題も生じない複合フィルムを提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明の複合フィルムは、耐候性、耐熱性、耐湿熱性、さらには柔軟性および耐水性が要求されるフィルムに好適に使用することができる。例えば、屋外の天候、溶剤、ほこり、油脂および海洋環境などを含む有害環境にさらされる表面の保護および装飾用のフィルムとして使用することができる。また、自動車のボディーを保護するためのチッピングテープ、ボディープロテクションフィルム用のシートとしても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルムであって、分光測色計により測定される促進耐候性試験における120時間後のΔb*値(受光角度15度)、および、暗所における80℃雰囲気下での促進耐熱試験におけるΔb*値(受光角度15度)が、いずれも4.0以下であり、かつ、暗所における85℃、相対湿度85%雰囲気下での促進耐湿熱性試験におけるΔb*値(受光角度15度)が6.0以下であることを特徴とする複合フィルム。
【請求項2】
前記複合フィルムが、少なくとも1種類の紫外線吸収剤、少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、および、少なくとも1種類のリン系化合物および/または少なくとも1種類のフェノール系化合物を含有していることを特徴とする請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記複合フィルムが、(メタ)アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含むことを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記複合フィルムは、少なくともウレタンポリマーを含む複合フィルム前駆体に、少なくとも1種類の紫外線吸収剤、少なくとも1種類のヒンダードアミン光安定剤、少なくとも1種類のアシルフォスフィン系光重合開始剤、および、少なくとも1種類のリン系化合物および/またはフェノール系化合物、を含有させた前駆体混合物に、前記光重合開始剤の感光波長域の光を照射して成ることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記複合フィルム前駆体が、(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルム前駆体であることを特徴とする請求項4に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記アシルフォスフィン系光重合開始剤が、下記式(I)で示される構造のモノアシルフォスフィンオキシドの少なくとも1つ、および/または、下記式(II)で示される構造のジアシルホスフィンオキシドの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項4から5のいずれか1項に記載の複合フィルム。

【化14】


[式中、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、または一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表し、Rは、フェニル基、ナフチル基、または、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、C〜C18のアルコキシ基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を表すか、または、RとRはリン原子と一緒になって環を形成しており、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表すか、または、下記式

【化15】


(式中、XはC〜Cのアルキレン基、シクロへキシレン基を表すか、または非置換またはハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されているフェニレン基またはビフェニレン基を表す)
で示される基で表される]

【化16】


[式中、Rは、C〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、または一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、C〜C18のアルコキシ基、フェノキシ基を表すか、ハロゲン、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を表し、かつ、RおよびRは互いに独立にC〜C18のアルキル基を表すか、ハロゲンもしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されている、C〜Cのアルキル基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を表すか、ハロゲン、C〜C12のアルキル基およびC〜C12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基を表すか、一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基を表す]
【請求項7】
前記前駆体混合物が、α−ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤を更に含有することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記光重合開始剤の配合量が、(メタ)アクリル成分に対して0.05重量%以上、4.0重量%以下であることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤の配合量が、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
前記ヒンダードアミン光安定剤の配合量が、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることを特徴とする請求項2から10のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記リン系化合物の配合量が、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項13】
前記フェノール系化合物の配合量が、前記複合フィルム前駆体の100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項14】
前記ウレタンポリマーが、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項15】
前記複合フィルム中の(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、アクリル系ポリマー/ウレタンポリマー=1/99〜80/20の範囲内であることを特徴とする請求項3から14のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項16】
前記複合フィルム中に、アクリル酸系モノマーを1重量%以上、15重量%以下含有することを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の複合フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【請求項18】
前記粘着シートが、被着体の表面を保護するための保護シートとして使用されることを特徴とする請求項17に記載の複合フィルム。

【公開番号】特開2011−127103(P2011−127103A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256452(P2010−256452)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】