説明

複合プリーツフィルター

【課題】ダスト保持容量及び捕集効率が高く、さらに圧損が低く目詰まりの遅い、ロングライフのエアーフィルター材を提供する。
【解決手段】繊維長さ1〜10mmで、分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーからなる合成繊維を主成分し、エアレイド法で形成した一層または二層以上のウェブを該ウェブを構成する繊維の少なくとも一部を熱溶融接着し一体化したエアレイド不織布と、ポリオレフィンからなるメルトブロー不織布とを一体化させて複合シートとなしたのち、該複合シートにプリーツ加工を施し、さらにフィルター形状に打ち抜いてその周縁部を溶融してなる複合プリーツフィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、据付面積が少なく、ロングライフのエアーフィルターに関するもので、さらに詳しく言えば、低圧損、高効率で長期間の使用に耐えるマスク材などに有用な複合プリーツフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマスク材は、ダスト粒径が5μm以下で、ダスト濃度も1g/m以下と希薄な条件下で使用されるため、フイルター材内部の繊維の表面に付着させる、いわゆる繊維層フイルター材が使用される例が多い。この繊維層フイルター材は、繊維の表面積が大きくなればなるほど、ダストの捕集効率が高くなるため、5μm以下のメルトブロー不織布(以下「MB」という)のエレクトレット加工品が使用されている。使用されるマスクの形状は、ろ過面積を少しでも多くするため、カップ形状に成形したものや、プリーツにしたものが使用されていた。
これらのカップ状やプリーツ状に成形されたMBのエレクトレット品は、繊維が細く、柔軟なため、使用に当たってはバッキング材またはネット材の裏打ちが必要であった。また、繊維が細いため、見掛け密度が高く、そのため圧損が高く目詰まりが早い欠点があった。
【0003】
一方、特許文献1には、生分解性合成繊維からなる、メルトブロー不織布とスパンボンド不織布を積層したエアーフィルターも提案されているが、このフィルター材は、エレクトレット化されたメルトブロー不織布とスパンボンド不織布の組み合わせであり、スパンボンド側はエレクトレットされていないので効率が低いという弱点を有する。
特許文献2の実施例4には、3μmのポリプロピレン製メルトブロー不織布とポリプロピレン製スパンボンド不織布をポリエステル製網状接着シートを介して接着したエレクトレット化不織布の波形(プリーツ)での単層または多層構造が開示されているが、特許文献2のエレクトレット品の空気流入側は、メルトブロー側であるため、ライフが短い欠点を有する。
【特許文献1】特開2003−260321号公報
【特許文献2】特開2004−344756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ダスト保持容量が高い、すなわちロングライフで、捕集効率が高く、さらに圧損が低く目詰まりの遅いライフの長いエアーフィルター材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、繊維長さ1〜10mmで、分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーからなる合成繊維を主成分とし、エアレイド法で形成した一層または二層以上のウェブを該ウェブを構成する繊維の少なくとも一部を熱溶融接着し一体化し、エレクトレット化したエアレイド不織布と、ポリオレフィンからなるエレクトレット化メルトブロー不織布とを一体化させて複合シートとなしたのち、該複合シートにプリーツ加工を施し、さらにフィルター形状に打ち抜いてその周縁部を溶融してなる複合プリーツフィルターに関する
ここで、上記分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびこれらの変性体の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
また、上記分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーからなる合成繊維としては、融点が異なる2以上の成分からなる複合構造の熱接着性短繊維を主成分とするものが挙げられる。
さらに、上記融点が異なり、分子構造に親水基を有しない2以上の成分からなる複合構造の熱接着性短繊維としては、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリプロピレンと変性ポリエチレン、またはポリプロピレンと変性ポリプロピレンからなり、サイドバイサイド型、または、芯鞘型の複合短繊維が挙げられる。
さらに、上記エアレイド不織布は、空気流出側の最下層を細い繊維層とし、空気流入側の上層に向かって順次太い繊維層になるように密度勾配を持たせて積層したものが好ましい。
さらに、エアレイド不織布において、相隣接する繊維層の空気流出側と空気流入側の繊維の太さ比率は、0.25〜0.7の範囲であることが好ましい。
さらに、エアレイド不織布とメルトブロー不織布とは、ホットメルト接着剤、ラテックス系接着剤、エマルジョン系接着剤、樹脂パウダー接着剤、超音波接着、高周波接着、または加熱・加圧接着で接着されていることが好ましい。
さらに、本発明の複合プリーツフィルターは、エアレイド不織布とメルトブロー不織布がエレクトレット化されていることが好ましい。
さらに、本発明の複合プリーツフィルターは、その周囲が超音波または高周波で溶融されていることが好ましい。
さらに、本発明の複合プリーツフィルターにおいて、空気流入側がエアレイド不織布側であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の複合プリーツフィルターは、従来の裏打ち材の代わりに、合成繊維を主成分とするエアレイド不織布を使用しているので、次に示す作用効果が期待できる。
すなわち、該不織布を構成する合成繊維の多くが熱溶融接着しているため、繊維の自由度が少なくなり、硬さを有するため、プリーツ加工が可能になる。
また、本発明に用いられるエアレイド不織布は、エレクトレット化されている場合、微粒子に対して低圧損で高効率のフィルター材になる。
さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布は、1層または2層以上から構成できるので、密度勾配の不織布を製造すれば、ロングライフのフィルター材になり得る。すなわち、マスクの場合、空気流入側を太い繊維(例えば、22μm以上)にして、空気流出側を細い繊維(例えば、15.2μm以下)にすれば、空気流出側と空気流入側の繊維の太さ比率は、15.2/22=0.69になり、0.25〜0.7の範囲に入っているのでロングライフのフィルター材となる。
さらに、本発明では、エアレイド不織布とともに、MBをより細かな粒子を高効率で捕集するために用いているので、エアーレイ不織布のロングライフ化と、MBの高捕集の相乗効果が得られる。
さらに、本発明の複合プリーツフィルターは、プリーツ加工後に周縁部を超音波ウエルダーまたは高周波ウエルダーなどで、溶融させているため、プリーツ部分が一定形状に保持することができ、一定据付面積に対して、ろ過面積が高く取れるメリットを有する。周縁部の溶融手段として超音波ウエルダーまたは高周波ウエルダーを適用すれば、効率良く加工することができるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
エアレイド不織布
本発明に用いられるエアレイド不織布は、エアレイド不織布製造法によって形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、繊維長1〜10mmの非親水性熱可塑性合成繊維を噴出しネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上に繊維層(ウェブ)を形成する。
このとき、好ましくは、上層側(流体流入側)より下層側(流体流出側)にかけて、太い繊維の層から細い繊維の層となるように順次積層し、この積層された繊維層を熱オーブンに搬入し、熱風で繊維間を結合し不織布として一体化させる。
繊維量、噴き出し条件、空気サクション条件、熱風条件などによって所定の密度、厚さに仕上げて本発明に用いられるエアレイド不織布を得ることができる。熱オーブンにより熱接着する際の温度は、用いる非親水性熱可塑性合成繊維や熱接着性短繊維の種類や、全体の目付により適宜選択されるが、通常、120〜200℃、さらに好ましくは130〜180℃である。
【0008】
従来から知られている一般的な乾式不織布製造法、つまり短繊維のカーディング法、あるいは連続繊維のスパンボンド法などによる場合、層を構成する繊維はほぼ面状に配列していて、厚さ方向に配向させることは困難である。従って、本発明が意図するエアーフィルター材に使用した場合、圧力損失が高いという欠点を有する。ニードルパンチやスパンレースのような機械的繊維交絡の方法を加えれば比較的に厚さ方向へ繊維を並び変えることができるものの、ニードルまたはスパンレースの水スジによる貫通孔が残るために微細なダストの捕捉作用に欠けるものとなってしまう。
これに対し、本発明のエアーフィルター材に用いられる不織布は、短い繊維を使用したエアレイド不織布製造法によるものなので、繊維は厚さ方向に配列しやすく、かつ層間において異なる繊維径の繊維どうしの混じり合いも生じ、繊維層間の繊維径勾配は比較的に連続傾斜になる。
従って、圧力損失が小さく、目詰まりも少なくなってライフ(ろ過可能時間)が長くなるうえ、圧損上昇が少ないという大きな特徴を有する。また、このような短繊維を原料繊維とするエアレイド不織布製造法によれば、極めて地合いの良好な、つまり均一性の良好なフィルターが得られるという大きな特徴を有する。均一性は、本発明が意図するエアーフィルター材の用途において極めて重要であり、上記した既存の乾式不織布では得られ難い。
さらに、ニードルを使用していないので、ニードル跡による性能低下の問題も解消される。また、ケミカルバインダーを使用していないので、皮膜形成による圧力損失アップや捕集効率ダウンの弊害が無く、環境汚染の恐れも無い。
【0009】
本発明に使用する繊維は、繊維長1〜10mmである。10mmを超える繊維を使用すると、不織布としての均一性が得られ難いばかりか、生産性が低下し、好ましくない。一方、1mm未満では不織布の強度低下を生じるばかりか、脱落繊維が発生し易くなり好ましく無い。好ましくは2〜7mm、さらに好ましくは3〜5mmである。
【0010】
本発明のエアレイド不織布を主として構成する繊維は、分子構造に親水性を有しない、すなわち非親水性で、好ましくはさらに耐化学薬品性、耐熱性、耐久性、強度、硬さなどの特性に優れる熱可塑性ポリマーからなる。
このような非親水性熱可塑性合成ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの含ハロゲン系高分子、あるいは、および/またはこれらの変性体などが挙げられるが、コストパフォーマンスの観点から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系が好ましい。変性体としては、融点、溶融時の粘度、他の繊維への接着力、エレクトレット効果などをコントロールする目的で、第3成分添加、共重合などの公知の手段が適用できる。
これらの非親水性熱可塑性合成ポリマーは、1種単独で使用することも、また2種以上を併用することもできる。
【0011】
また、本発明のエアレイド不織布を構成する非親水性熱可塑性繊維は、融点が異なる2以上の成分からなる複合構造の熱接着性短繊維を主成分とすることが好ましい。
この場合、好ましくは、上記の熱接着性短繊維としては、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリプロピレンと変性ポリエチレン、またはポリプロピレンと変性ポリプロピレンからなり、サイドバイサイド型、または芯鞘型の複合短繊維である。この場合、変性体は異性体であっても良い。
全繊維中に占める上記熱接着性複合繊維の比率は、通常、30重量%以上、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%である。30重量%未満の場合、脱落繊維が発生し易く、エアーフィルター材として適さなくなる。
【0012】
本発明のエアレイド不織布には、上記の非親水性の熱可塑性合成繊維のほかに、必要に応じて種々の機能を持たせるため、エレクトレット効果を阻害しない範囲で他の繊維を含んでいてもよい。例えば、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルニトリル、ポリフェニレンサルファイトなどの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維などの無機繊維、ポリ乳酸などの生分解性繊維などが挙げられる。この場合、混綿割合は50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは30重量%以下である。50重量%を超える場合は、エレクトレット加工が不充分となったり、また、混綿した繊維の脱落が生じたり、強度ダウンしたり、耐熱性がダウンしたりして好ましくない。
なお、上記非親水性の熱可塑性合成繊維より融点の高い繊維、あるいは融点を持たない繊維を混綿した場合は、耐熱性を上げ、熱劣化しにくいというメリットを生じるので好ましい。
【0013】
さらに、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で、親水性の他の低融点バインダー繊維、例えば熱接着性のポリエステル系複合繊維を配合してもよい。このポリエステル系複合繊維としては、芯/鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維が好適である。この場合、芯成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘より高融点であり、熱接着処理温度で変質しないポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては,脂肪族ジオール単位と芳香族ジカルボン酸単位から主としてなるポリアルキレンアリレートが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどであり、単独でも2種以上の併用でもよく、必要に応じて共重合成分を含んでいてもよい。また、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で変性されていても差し支えがない。
【0014】
さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布には、消臭、抗菌、防カビ、撥水、難燃、着色などの効果を有する繊維や物質を含有させても良い。
【0015】
さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布は、2層以上の多層でもよく、また、各層を構成する繊維は、同一でも異なっていてもよい。
【0016】
例えば、本発明に用いられるエアレイド不織布は、空気流出側(最終流体流出側)の最下層を細い繊維層とし、空気流入側の上層に向かって、順次、太い繊維層になるように、密度勾配を持たせて多層構造で積層することが好ましい。
ライフの長いエアーフィルター材が得られる。
【0017】
また、相隣接する各層の繊維の太さの比率、すなわち流体流出側の繊維層の繊維/流体流入側の繊維層の繊維の太さ比率は、種々テストした結果、空気流出側と空気流入側の太さ比が0.25〜0.7、好ましくは0.3〜0.6であれば、1μm以下の細かなダストも効率よく捕集でき、ライフも長いことが判明した。0.7を超えると、層間の差がなく単一層に近付き、本発明の趣旨に反する。一方0.25未満であると、細かな粒子の多くが上層に捕集されずに下層に侵入するのでライフが短くなる。
【0018】
なお、本発明に用いられるエアレイド不織布を構成する熱接着性短繊維がその接着効果を十分に発揮するには、熱接着温度は該熱接着性短繊維の接着成分の融点、または融着可能な温度より5〜40℃高い温度での加熱処理が好ましい。5℃未満であれば接着不良を生じ、40℃を超えると繊維収縮や半溶融により均一な不織布が得られない。温度は、通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃であるが、接着成分のポリマーの融点に応じて適宜選択することができる。
さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布は、カレンダー加工を施すことにより、得られる不織布の厚さや密度を調整することもできる。カレンダー加工においては、1対の加熱ローラーの隙間を調整し所望の厚さの不織布に加工する方法が好ましい。この場合、隙間は0.3〜4mm、さらに好ましくは0.8〜3mmである。温度は、熱接着性短繊維の接着成分の融点、または融着可能な温度より50〜110℃低く設定するのが好ましい。50℃未満の場合は融点に接近してくるので、表面繊維が変形しはじめ、皮膜が形成されやすくなって圧損増加や捕集性能のダウンを生じる。一方、110℃を超える場合は、カレンダー効果が発揮しにくくなる。あらかじめ不織布を予熱してある場合には低温度で加工することもできる。カレンダーローラーの表面は、フラットでも良いし、凹凸形状を取ることもできる。
これらの条件は所望の厚さ・密度に加工するに適した条件を、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で適宜選択することができる。
【0019】
以上の本発明に用いられるエアレイド不織布は、エレクトレット加工を施すことにより、本発明のエアーフィルター材として用いられる。
ここで、エレクトレット加工とは、例えば特開昭61−186568号公報に開示されている加工方法であり、公知の種々のエレクトレット化の方法、例えば、熱エレクトレット法、エレクトロエレクトレット法、ラジオエレクトレット法、メカノエレクトレット法などを適用することによって、シートなどを荷電状態にする加工方法である。
エレクトレット加工する際には、用いられるエアレイド不織布を構成している繊維に付着している表面油剤などを除去するために、例えば50〜100℃の熱水で、5数秒〜10数分程度洗浄したのち、熱接着性短繊維を構成するポリマーの融点未満の温度、例えば80〜140℃で数十秒〜数十分程度乾燥処理することが好ましい。油剤などの除去には、そのほかウォタージェット処理してもよい。
エレクトレット加工の具体的な一例としての条件は、ポリオレフィン系エアレイド不織布の場合、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90℃〜110℃程度の加熱ローラー上にて、−30〜−5KVあるいは+5〜+30KV、さらに好ましくは−30〜−5KV程度の直流電圧を印加し、次に冷却ロール上にてさらに−30〜−5KVあるいは+5〜+30KV、さらに好ましくは−30〜−5KV程度の直流電圧を印加する方法などが挙げられる。生活空間に存在する微少塵埃の多くはプラス帯電しているものが比較的に多いので、印加電圧はマイナスとする方が好ましい。
【0020】
メルトブロー不織布
本発明に用いられるメルトブロー不織布は、本発明の複合プリーツフィルターにおいて、10μm以下の微細粒子の捕集の役目を果たすものである。
本発明のメルトブロー不織布に用いるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4メチル1ペンテン、ポリ3メチル1ブテンなどが挙げられる。これらの中では、特にプロピレンからなる単独重合体、共重合体が細い均一な繊維構成を得やすく、かつまた、不織布強度の面から好ましい。また、これらのポリオレフィンは、必要に応じて適宜ブレンドして用いることができる。
【0021】
本発明のメルトブロー不織布は、上記のポリオレフィンを用い、メルトブロー法で製造して得られる。
メルトブロー不織布としては、目付けは、好ましくは5〜50g/mであり、より好ましくは10〜40g/mである。平均繊維径は、好ましくは2〜30μmであり、より好ましくは4〜10μmである。厚みは、好ましくは0.1〜0.6mmであり、より好ましくは0.2〜0.4mmである。通気度は、好ましくは5〜100cc/sec/cmであり、より好ましくは5〜50cc/sec/cmである。このような物性を有するポリオレフィン製のメルトブロー不織布がエアーフィルターとして用いるのに好ましい。
【0022】
本発明に用いられるメルトブロー不織布は、メルトブロー法により得られるウェブをカレンダー加工を施すことにより、得られる不織布の繊維構造を固定させるとともに、その厚さや密度を調整することもできる。カレンダー加工においては、1対の加熱ローラーの隙間を調整し所望の厚さの不織布に加工する方法が好ましい。この場合、隙間は0.3〜4mm、さらに好ましくは0.8〜3mmである。温度は、20〜90℃、好ましくは20〜80℃である。90℃を超えると、融点に接近してくるので、表面繊維が変形しはじめ、皮膜が形成されやすくなって圧損増加や捕集性能のダウンを生じる。一方、20℃未満では、カレンダー効果が発揮しにくくなる。なお、あらかじめウェブを予熱してある場合には低温度で加工することもできる。カレンダーローラーの表面は、フラットでも良いし、凹凸形状を取ることもできる。
これらの条件は、所望の厚さ・密度に加工するに適した条件を、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で適宜選択することができる。
【0023】
以上の本発明に用いられるメルトブロー不織布は、エレクトレット加工を施すことにより、本発明のフィルター材として用いられる。
ここで、エレクトレット加工としては、例えば上記のエアレイド不織布のエレクトレット加工と同様の加工方法のほか、例えば特開2005−131485号公報の段落「0017」−「0019」に具示されているような、メルトブロー不織布への水の噴流または水滴流を衝突させる方法も挙げることができる。
【0024】
複合プリーツフィルター
本発明の複合プリーツフィルターは、以上のエアレイド不織布とメルトブロー不織布とを一体化させて、複合シートとなしたのち、この複合シートにプリーツ加工をして、さらにフィルター形状に打ち抜いて、その周縁部が溶融されていることを特徴とする。
エアレイド不織布とメルトブロー不織布との一体化は、ホットメルト接着剤、ラテックス系接着剤、エマルジョン系接着剤、樹脂パウダー接着剤、超音波ウエルダー、高周波ウエルダー、または部分的な熱圧接着などによればよい。
ここで、これらの接着剤の成分としては、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリアクリル酸エステル系、合成ゴム系、ポリウレタン系、エポキシ樹脂系、熱硬化型樹脂系、無機系などを挙げることができる。
これらの接着剤の使用量は、通常、固形分換算で、2〜20g/m、好ましくは4〜10g/mであり、圧損を上げずにしかも剥離を生じない範囲で決められる。
【0025】
また、これらの接着剤の使用に代えて、エアレイド不織布とメルトブロー不織布とをカレンダー加工などにより、加熱・加圧接着し、一体化させることもできる。
【0026】
ここで、カレンダー処理の線圧は、幅方向で均一な接圧になるよう設定すれば、任意の圧力を選択することができる。高圧の場合は密度・不織布強力・層間強力がアップし、厚さがダウンする。低圧の場合は勿論これに反する影響が出る。不織布強力を重視するのであれば極力高圧のほうが好ましい。柔軟性を重視するのであれば低圧の方が好ましい。カレンダー処理の線圧は、通常、10〜100kgf/cmの範囲で任意に選択できる。また、一対のローラー間に任意の隙間を設けても良い。
【0027】
エアレイド不織布とメルトブローを積層・一体化して複合シートとするには、インラインでもアウトラインでも可能である。
インラインの場合、あらかじめ上面に接着剤が付与されたメルトブロー不織布を多孔質ネットコンベアー上に載置し、このコンベア上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、繊維長1〜10mmの非親水性熱可塑性合成繊維を噴出しネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上に繊維層を形成させ、この積層された繊維層を熱オーブンに搬入し、熱風で繊維間を結合し不織布として一体化させ、必要に応じて、カレンダー加工して、複合シートを得る。
また、アウトラインの場合には、あらかじめ作製されたエアレイド不織布とメルトブロー不織布とを接着剤を介して一体化し、必要に応じて、カレンダー加工を施す。
インライン、アウトラインいずれの場合も、接着剤を用いない場合には、カレンダー加工により、両者を加熱・加圧して一体化すればよい。
【0028】
エアレイド不織布とMBとの複合からなる本発明の複合プリーツフィルターの目付は、プリーツ形状にもよるが、マスク材に使用する場合は、一般的に50〜200g/m、好ましくは80〜150g/mで、50g/mより低い場合は、ライフが短く、一方、200g/mより高い場合は、プリーツ時に隣どうしが接触して、構造圧損の要因にもなる。
また、本発明の複合プリーツフィルターの厚さは、通常、0.4〜1.5mm、好ましくは、0.6〜1.0mmで、0.4mm未満の場合、ライフが短く、一方、1.5mmを超えると、プリーツ時に隣どうしが接触して、構造圧損の要因にもなる。
【0029】
次いで、上記複合シートをプリーツ加工する。
この際、プリーツ加工条件は、レシプロまたは、ロータリープリーツ機械で、5mm高さ以上のヒダを形成させた後、100℃以下、好ましくは60〜90℃に余熱した熱板上に送り込み、プリーツの形成のクセ付けを行うものである。
次いで、プリーツ加工された複合シートを、用いられるフィルターの形状に合わせて、その周囲を超音波加工あるいは高周波加工により、打ち抜くとともに、該周縁部を溶融し、本発明の複合プリーツフィルターを得る。
この場合、超音波加工とは、発振周波数を10〜100Khz、また、高周波加工条件は、3.5〜8Kvでの電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換することによって、熱可塑性繊維に摩擦振動を与えて発熱溶融させるものである。
【0030】
本発明の複合シートにプリーツ加工を施して、複合プリーツフィルターを得る場合の具体例について、以下に説明する。例えば、75mmφの円形で10mm高さのプリーツ加工する場合、プリーツ間隔を3mmにすれば、(75mm/3mm)×10mm×2枚=500mmの長さになるので、フラットで使用した時とプリーツで使用した時の面積比は500/75=6.6倍になる。すなわち、75mmφの円形をフラットで設計するよりも、10mm高さのプリーツを3mm間隔で加工したプリーツ品の方が6.6倍の面積になる。面積が6.6倍になれば、圧損は限りなく1/6.6になるが、種々テストした結果、構造抵抗の影響で圧損は1/3程度になる。プリーツピッチを小さくして山数を多くすればするほど、面積比は多くなるが、隣どうしのプリーツが接触しあい圧損の減少は面積の増加に比べて大きくは期待できない。そのため、プリーツ間隔は、2〜4mm程度が好ましい。
【0031】
また、本発明の複合プリーツフィルターは、プリーツ加工後のプリーツ部分の接着を超音波や高周波などで溶着させていて、接着樹脂などからのVOCなどの飛散がなく、環境にやさしいマスク材といえる。
【0032】
次に、図面を用いて、本発明に用いられる複合シート、これを用いた複合プリーツフィルターについて説明する。
図1は本発明に用いられる複合シートの断面構成図で、図2は本発明の複合プリーツフィルターの平面図である。
図1において、符号1は太繊維からなるエアレイド不織布層、2は細繊維からなるエアレイド不織布層で、符号3はメルトブロー不織布層である。なお、エアレイド不織布層1とエアレイド不織布層2は、熱融着により一体化されており、あらかじめエレクトレット加工がなされている。
また、メルトブロー不織布層3も、別途、あらかじめエレクトレット加工が施されていて、エアレイド不織布層2側とメルトブロー不織布3の一面とが、ポリオレフィン系などのホットメルト接着剤により、一体化されて複合シートとなっている。
一方、図2において、符号4は溶着部、符号5はプリーツ部、符号6はプリーツ部と溶着部の境界線である。
【0033】
ところで、本発明の複合プリーツフィルターは、比較的細い繊維(直径5μm以下)からなるメルトブロー不織布と、比較的太い繊維(直径10μm以上)からなり、好ましくはエレクトレット加工されたエアレイド不織布からなる多層構造のマスク材であるので、ダストはエアレイド側から流入させた方が、メルトブロー側からの流入よりはライフが長い。すなわち、エレクトレット化されたエアレイド不織布の空隙容積は、メルトブロー不織布より大きいので、ダスト保持量が多くなり、エアレイド不織布を貫通したより細かな粒子はより細孔径の小さなメルトブロー不織布で捕集されるため、効率も高くなる。
メルトブロー不織布側から流入させると、メルトブロー不織布の小さな細孔径がダストで早く目詰まりをして、ライフが短いものになる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例を記載するが、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1、比較例1
鞘部がポリエチレンで、芯部がポリプロピレンからなる芯鞘型複合繊維(熱接着性ポリオレフィン系繊維)として、チッソ(株)製、ESCタイプ(ポリエチレンとポリプロピレンの重量比率=50:50、繊度1.7dtex、繊維太さは約15μm、繊維長5mm)60g/mを下層側とし、同社製、ESCタイプ(ポリエチレンとポリプロピレンの重量比率=50:50、繊度11dtex、繊維太さは約39μm、繊維長5mm)10g/mを上層として、エアレイド法により積層ウエブを作成した。(従って、空気流出側と流入側の繊維の太さの比率は15/39=0.38)。次に、このウエブに135℃の熱風を吹き付け、該繊維間を熱融着させ、厚さ0.7mm、目付70g/mのエアレイド不織布1を作成した。このエアレイド不織布を温度100℃に加熱してから−15Kvの直流電流を1秒間針電極で流してエレクトレット加工し、本発明のエレクトレットエアーレイド不織布1(ALP70E)を得た
【0035】
次に、エレクトレットエアーレイド不織布1の上に、ポリオレフィン系のホットメルト接着剤(松村石油(株)製、モレスコメルト)を溶融し、4g/mとなるよう繊維状にスプレーしてから、(株)クラレ製、クラフレックスPS20(平均繊維太さ4μm、厚さ0.17mm、20g/m、通気性30.5cm/sec)のエレクトレット化されたMBを重ねてエアレイド不織布とMBを一体化し、厚さ0.67mm、目付94g/mの複合シート1(ALP70E/PS20)を得た。
【0036】
次に、複合シート1をホップテック社製、プリーツ機械に掛け、10mm高さのプリーツ材−1を作成し、超音波ウレルダー(Rinco社製、20Khz 200W)で22山/75mmφ(3.4mmピッチ)の周縁部を溶融カットした複合エアーレイドプリーツマスク1(90mmφ)を作成した。
本発明のプリーツマスク1(実施例1)の面積は、プリーツにする前の75mmφのフラット型に比べて5.8倍の面積を有することになる。
実施例1の複合エアーレイドプリーツマスク1のフィルター特性を表1、2に示す。
なお、表1には、比較例1として、エレクトレットエアーレイド不織布1をプリーツ機械に掛けた試料を再度引き伸ばしてフラットにした状態のフラット形体のフィルター特性も列記した。
【0037】
実施例2、比較例2
実施例2として、実施例1のMBの代わりに、市販の(株)クラ社製、クラフレックスPF400(繊維太さ3μm、厚さ0.35mm、40g/m,通気性12.3cm/sec)を使用して複合エアーレイドフィルター材−2を得た以外は、全て実施例1に記述した方法で複合エアーレイドプリーツマスク2(ALP70E/PF40:25山/3mmピッチ)を得た。
本発明のプリーツマスク2(実施例2)の面積は、プリーツにする前の75mmφのフラットに比べて6.5倍の面積を有することになる。
実施例2の複合エアーレイドプリーツマスク2のフィルター特性を表1、2に示す。
なお、表1には、比較例2として、エレクトレットエアーレイド不織布2のフラット形体のフィルター特性も列記した。
【0038】
なお、表1は、大気塵を使用した時の初期フィルター特性で、表2は、Naclダストを負荷させた時のフィルター特性で防塵マスクの検定に使用される方法で行ったものである。
【0039】
【表1】

【0040】
試験条件:
1)通気性: KES法
2)圧損: 15L/min 75mmφでの圧損
3)捕集効率:パーティクルカウンターで0.3〜5μm大気塵の15 L/min、75mmφでの捕集効率
【0041】
表1より、実施例1のプリーツ形状はフラット品に比べて、圧損が約1/3になり、効率もアップする。すなわち、圧損が1/3とになるということはライフが3倍になることを意味する。
また、実施例2のプリーツ品の効率のアップが実施例1よりは少ないのは、フィルター2の本来の効率が高いので、プリーツにしても大幅に効率アップにはならないが、圧損はフラット品に比べて実施例1と同様約1/2程度である。
【0042】
【表2】

【0043】
ダスト捕集性能試験条件
1)試験機;TSI社製試験機・Model 8130
2)ダスト条件;ダスト Nacl、平均粒子径 0.07μm、ダスト濃度 27mg/m
2)圧損測定:40L/min
3)捕集効率測定:85 L/min
4)圧損上昇値:Naclを100mg堆積させた後の圧損上昇で表す
【0044】
表2は、実施例1および実施例2のプリーツフィルターを使用して、NaClのダストをエアレイド側からと、MB側から流入させた時のTSI試験機による差を表しているもので、この表2より、エアレイド側から流入させた方が、100mg負荷時の圧損が遥かに低い、すなわちライフが長いことが判る。
【0045】
次に、図3〜図6に、本発明のプリーツ品(図3〜図4は実施例1のプリーツマスク、図5〜図6は実施例2のプリーツマスク)と比較品(フラット品、比較例1または比較例2)の流量を15 L/min〜60 L/minに変化させた時の圧損および効率の推移比較を示す。
これらのグラフより、流量が増加するに従い、本発明と比較品との差が開き、流量の大きなフィルター材が要求される場合は、本発明品はより有利になることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の複合プリーツフィルターは、マスクのほか、ビルなどの室内の空調フィルター、自動車キャビンフイルター、燃料電池のインテークフィルターなどの用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の複合エアレイド不織布の断面構成図である。
【図2】本発明の複合プリーツマスクの平面図である。
【図3】エアーフィルターにおける風量と圧損との関係を示すグラフである。
【図4】エアーフィルターにおける風量とパーティカル効率との関係を示すグラフである。
【図5】エアーフィルターにおける風量と圧損との関係を示すグラフである。
【図6】エアーフィルターにおける風量とパーティカル効率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1:太繊維からなるエアレイド繊維層
2:細繊維からなるエアレイド繊維層
3:MB部
4:溶着部
5:プリーツ部
6:プリーツ部と溶着部の境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維長さ1〜10mmで、分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーからなる合成繊維を主成分とし、エアレイド法で形成した一層または二層以上のウェブを該ウェブを構成する繊維の少なくとも一部を熱溶融接着し一体化したエアレイド不織布と、ポリオレフィンからなるメルトブロー不織布とを一体化させて複合シートとなしたのち、該複合シートにプリーツ加工を施し、さらにフィルター形状に打ち抜いてその周縁部を溶融してなる複合プリーツフィルター。
【請求項2】
分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびこれらの変性体の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の複合プリーツフィルター。
【請求項3】
分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーからなる合成繊維が、融点が異なる2種以上の成分からなる複合構造の熱接着性短繊維を主成分とする請求項1または2記載の複合プリーツフィルター。
【請求項4】
融点が異なり、分子構造に親水基を有しない2種以上の成分からなる複合構造の熱接着性短繊維が、ポリプロピレンとポリエチレン、ポリプロピレンと変性ポリエチレン、またはポリプロピレンと変性ポリプロピレンからなり、サイドバイサイド型、または、芯鞘型の複合短繊維である請求項3記載の複合プリーツフィルター。
【請求項5】
エアレイド不織布が、空気流出側の最下層を細い繊維層とし、空気流入側の上層に向かって順次太い繊維層になるように密度勾配を持たせて積層した請求項1〜4いずれかに記載の複合プリーツフィルター。
【請求項6】
エアレイド不織布において、相隣接する繊維層の空気流出側と空気流入側の繊維の太さ比率が0.25〜0.7の範囲である請求項5記載の複合プリーツフィルター。
【請求項7】
エアレイド不織布とメルトブロー不織布とが、ホットメルト接着剤、ラテックス系接着剤、エマルジョン系接着剤、樹脂パウダー接着剤、超音波接着、高周波接着、または加熱・加圧接着で接着されている請求項1〜6いずれかに記載の複合プリーツフィルター。
【請求項8】
エアレイド不織布とメルトブロー不織布がエレクトレット化されている請求項1〜7いずれかに記載する複合プリーツフィルター。
【請求項9】
周縁部が超音波または高周波で溶融されている請求項1〜8いずれかにに記載の複合プリーツフィルター。
【請求項10】
空気流入側がエアレイド不織布側である請求項1〜9いずれかに記載の複合プリーツフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−98356(P2007−98356A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295130(P2005−295130)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000229863)アンビック株式会社 (35)
【出願人】(591196315)金星製紙株式会社 (36)
【Fターム(参考)】