説明

複合メソポーラスシリカ粒子及びこれを用いた物質の揮散方法

【課題】2種類以上の機能性物質を均一に揮散させることが可能な複合メソポーラスシリカ粒子、及び、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる方法を提供する。
【解決手段】メソポーラスシリカ粒子(A)と、2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)とを含有し、前記組成物(B)の80〜100質量%を前記メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する複合メソポーラスシリカ粒子。該複合メソポーラスシリカ粒子から前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合メソポーラスシリカ粒子及びこれを用いた物質の揮散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
香料や薬剤等の機能性物質の担体となる多孔性無機粒子として、数nmの均一な細孔径の細孔(メソ細孔)を持つメソポーラスシリカ粒子が注目されている(非特許文献1)。例えば、特許文献1には、片面に1層以上の樹脂層を有している繊維構造物において、該樹脂層中に、機能性薬剤を担持している平均粒径0.01〜5μmのメソポーラスシリカを含有している機能性繊維構造物が開示されている。また、特に、粒子の外殻部にメソ細孔構造を持ち、外殻部の内部(以下、「中空部」ともいう。)に空洞を持つメソポーラスシリカ粒子(以下、「中空メソポーラスシリカ粒子」ともいう。)は、該中空部に機能性化合物を多量に担持できる。それゆえ、中空メソポーラスシリカ粒子は、高性能な徐放担体として期待されている。例えば、特許文献2には、中空メソポーラスシリカ粒子を徐放担体に用い、該中空メソポーラスシリカ粒子に香料を含浸させることにより、香料徐放性の優れた複合シリカ粒子が得られることが開示されている。
【0003】
一方、複数種類の化合物(香料)が調合された香水などの調合香料では、香調変化が避けられない問題として知られている。香調変化の原因は、調合香料に含まれる複数の化合物(香料)の蒸気圧が異なることである。すなわち、蒸気圧の差が調合香料中の香料の不均一な揮散をもたらすため、香調変化を生じる。この不均一な揮散を抑制して機能性物質を安定に揮散させる試みもされており、例えば、セルロースゲルを担体として用いる方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−82580号公報
【特許文献2】特開2009−155400号公報
【特許文献3】特開2004−16742号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C.T.Kresge, et.al., Nature, 359, 710 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メソポーラスシリカ粒子に調合香料を含浸させた従来の複合粒子においても、香調変化が起きることが見出された。すなわち、2種類以上の機能性物質を用いた場合、それぞれの機能性物質の蒸気圧が異なることが一般的であり、蒸気圧が異なる機能性物質をメソポーラスシリカ粒子に含浸させた複合メソポーラスシリカ粒子からの該機能性物質の揮散は、経時的に不均一で変化しうる。そこで、本発明は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させることが可能な複合メソポーラスシリカ粒子、及び、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、メソポーラスシリカ粒子(A)と、2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)とを含有し、前記組成物(B)の80〜100質量%を前記メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する複合メソポーラスシリカ粒子に関する。また、本発明は、その他の態様において、機能性物質を均一に揮散させる方法であって、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子から前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法に関する。
【0008】
さらにまた、本発明は、その他の態様において、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子を製造する方法であって、メソポーラスシリカ粒子(A)に2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)を含浸させること、及び、含浸後に前記メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に付着した組成物(B)を除去することを含む、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させることができるという効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
2種類以上の機能性物質を用いた場合、一般的にそれぞれの機能性物質の蒸気圧が異なることが多く、蒸気圧が異なる2種類以上の機能性物質が混在する場合、蒸気圧の高い機能性物質は先に揮散することになり、その結果、配合系で組成物が劣化することになる。例えば、蒸気圧が異なる2種類以上の物質が配合された調合香料では、経時的に香調変化が生じる。メソポーラスシリカ粒子に調合香料を含浸させる従来の方法で製造した複合粒子においても、同様に香調変化が生じる。本発明は、従来の方法で製造した調合香料複合粒子における香調変化が、該複合粒子の外表面に保持される調合香料に起因する、という知見に基づく。さらに、本発明は、調合香料を実質的にメソポーラスシリカ粒子の内部にのみ保持させれば、本来香調変化を生じる該調合香料を、香調変化をともなうことなく揮散させることができる、言い換えれば、2種類以上の機能性物質を実質的にメソポーラスシリカ粒子の内部にのみ保持させることにより、機能性物質の蒸気圧の差による揮散速度のばらつきが少なくなり、2種類以上の該物質を均一に揮散させることができる、という知見に基づく。
【0011】
すなわち、本発明は、一態様として、メソポーラスシリカ粒子(A)と、2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)とを含有する複合メソポーラスシリカ粒子であって、前記組成物(B)の80〜100質量%を前記メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する複合メソポーラスシリカ粒子(以下、「本発明の複合メソポーラスシリカ粒子」ともいう。)に関する。また、本発明は、その他の態様において、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる方法であって、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子から前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法に関する。本発明によれば、機能性物質の蒸気圧の差による揮散速度のばらつきを少なくすることができる。よって、本発明によれば、蒸気圧が異なる機能性物質を均一に揮散させることができる。
【0012】
メソポーラスシリカの内部に保持された2種類以上の機能性物質を均一に揮散させることができるメカニズムの詳細は明らかでないが、特に蒸気圧が異なる場合には、以下のように推測される。メソポーラスシリカの内部に保持させた物質は、機能性物質のみの場合と比較して物質の揮散速度が遅くなり、更に、2種以上の機能性物質が共存する場合、通常、蒸気圧の差によって起こる個々の揮散速度の差は小さくなり、2種類以上の物質を均一に揮散できると推測される。但し、本発明はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0013】
本明細書において、2種類以上の機能性物質が「均一に揮散する」とは、2種類以上の機能性物質が、はじめに配合したときの比率で揮散する状態のことをいい、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等により、配合直後と一定の時間が経過した後の物質の量を定量することにより評価することができる。2種類以上の機能性物質を用いる用途によって要求される効果にもよるが、一般的には、最も変化した成分の変化前の組成の割合のうち増減が20%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下の変化であれば、経時的に安定に効果を発現し、「均一に揮散する」状態とする。また、機能性物質が有用用途である調合香料の場合には、経時的な香調変化を、官能評価することによって評価することができる。本願では、実施例にも示すように官能評価を行い、3段階で評点を付け平均した後、四捨五入を行い最高点となれば「均一に揮散する」状態とする。
【0014】
[メソポーラスシリカ粒子(A)]
メソポーラスシリカ粒子(A)としては、ヘキサゴナル配列のメソポーラス(メソ細孔)構造を有する粒子が挙げられる。具体的には、メソポーラスシリカ粒子(A)としては、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さない粒子が挙げられる。粉末X線回折(XRD)測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示すことは、このシリカ粒子がメソ領域に周期性のある物質であることを意味する。また、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さないことは、ゼオライトなどの結晶性化合物と異なるものであることを意味する。本発明におけるメソポーラスシリカ粒子(A)としては、2種類以上の機能性物質の均一な揮散及び該物質のメソポーラスシリカ粒子(A)内での残存性の向上の観点から、中空メソポーラスシリカ及び中実メソポーラスシリカが好ましく、中空メソポーラスシリカがより好ましい。
【0015】
メソポーラスシリカ粒子(A)は、その主成分がシリカで構成され、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上がSiO2であると換算されることが好ましい。また、メソポーラススシリカ粒子(A)は、同様の観点から、SiO2重量換算で、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%のシリカを含有することが好ましい。なお、これらの物性は、核磁気共鳴測定を用いたケイ素原子(29Si−NMR)や炭素原子(13C−NMR)の測定、赤外分光分析、元素分析、熱重量分析等により同定、定量することができる。また、メソポーラスシリカ粒子(A)は、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態であってもよい。これら元素を導入する場合はそれらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加すればよい。
【0016】
[平均細孔径]
本明細書において、本発明におけるメソポーラスシリカ粒子(A)のメソ細孔構造の平均細孔径は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、1〜10nmが好ましく、1〜5nmがより好ましく、1〜2nmがさらに好ましく、1〜1.5nmがさらにより好ましい。メソ細孔の平均細孔径は、窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線からBJH法により求めることができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。また、メソポーラスシリカ粒子(A)は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、メソ細孔径が揃っていることが好ましく、メソ細孔の好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上が平均細孔径±30%以内に入ることが好ましい。なお、メソ細孔構造を有する外殻部の構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができ、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。また、TEM観察により、細孔径及び細孔規則性、並びに、中空メソポーラスシリカ粒子の場合には外殻部から内部への細孔の繋がり具合を確認することができる。
【0017】
メソポーラスシリカ粒子(A)の細孔径は、合成時に細孔径のテンプレートとして働く界面活性剤のアルキル鎖長、水溶性高分子化合物の親水性と親油性の比率等を適宜調整することにより調整することができる。特に平均細孔径が約5nm以上のメソポーラスシリカ粒子原料を得るためには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック重合からなる非イオン性高分子化合物を用いることが好ましく、平均細孔径が8nm以下のメソポーラスシリカ粒子原料を得るためには、第四級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0018】
[BET比表面積]
メソポーラスシリカ粒子(A)のBET比表面積は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、100〜1500m2/gが好ましく、より好ましくは200〜1500m2/g、さらに好ましくは500〜1000m2/gである。BET比表面積は、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0019】
[平均一次粒子径]
メソポーラスシリカ粒子(A)の平均一次粒子径は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは0.02〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。本明細書において、メソポーラスシリカ粒子(A)の平均一次粒子径は、TEMを用いて得られる数平均粒子径であって、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。不定形のメソポーラスシリカ粒子の場合は、TEM像において円相当径として平均一次粒子径を算出できる。メソポーラスシリカ粒子(A)は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、揃った粒子径の粒子群から構成されていることが好ましい。具体的には、メソポーラスシリカ粒子(A)は、同様の観点から、好ましくは一次粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していることが好ましい。
【0020】
[中空シリカ粒子(A−1)及び中実シリカ粒子(A−2)]
メソポーラスシリカ粒子(A)の形状は、特に制限されず、不定形、球状等でもよく、それらの混合物でもよいが、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、球状が好ましい。特に、メソ細孔構造の外殻部を持ち内部が中空の球状粒子である中空メソポーラスシリカ粒子(A−1)(以下、「中空シリカ粒子(A−1)」ともいう)、及び、内部が中空でなくその中心部から放射状にメソ細孔が配列している球状粒子である中実メソポーラスシリカ粒子(A−2)(以下、「中実シリカ粒子(A−2)」ともいう)がより好ましく、組成物(B)の保持量を高める観点から、中空シリカ粒子(A−1)がさらに好ましい。
【0021】
[外殻部の平均厚み及び中空部の平均径]
中空シリカ粒子(A−1)の外殻部(メソポーラスシリカ部)の平均厚みは、複合粒子が担体としての強度を維持できる範囲で薄い方が好ましい。また、中空シリカ粒子(A−1)の平均径は、内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。これらの観点から、外殻部の平均厚みは、好ましくは10〜800nm、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは20〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmである。中空部の平均径は、同様の観点から、好ましくは10〜8000nm、より好ましくは10〜5000nm、さらに好ましくは100〜1000nm、特に好ましくは200〜800nmである。また、外殻部の平均厚みと平均粒子径の比(外殻部厚み/平均粒子径)は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは0.001〜0.4、より好ましくは0.01〜0.35、さらに好ましくは0.1〜0.3である。さらに、中空部の平均径と外殻部の平均厚みとの比(中空部平均径/外殻部厚み)は、同様の観点から、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜10である。外殻部の平均厚み、及び、中空部の平均径は、TEMの観察により測定でき、具体的は後述する実施例に記載のように測定できる。
【0022】
中空シリカ粒子(A−1)の製造方法に特に制限はないが、特開2008−110905号公報、特開2008−150229号公報、特開2008−174435号公報に記載の方法により容易に調製することができる。
【0023】
中実シリカ粒子(A−2)の製造方法に特に制限はない。例えば加水分解によりシラノール化合物を生成するテトラメチルシランやテトラエトキシシラン等のアルコキシシラン等のシリカ源を、メソ孔のテンプレートとして働く陽イオン界面活性剤又はエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック重合体等の共存下で、水溶液中で反応させることにより製造することができる。
【0024】
[2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)]
本明細書において、組成物(B)に含まれる「2種類以上の機能性物質」は、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子から制御放出される物質をいう。したがって、「2種類以上の機能性物質」は、揮発性であることが好ましい。組成物(B)は「2種類以上の機能性物質」そのものであってもよく、その他の溶媒等を含んでもよい。
【0025】
組成物(B)に含まれる「2種類以上の機能性物質」としては、香料、防虫剤、保湿剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、医薬剤、肥料、紫外線吸収剤、美白剤、食品添加剤、及びこれらの組み合わせから選択される2種類以上の機能性物質であることが好ましい。これらの機能性物質の中でも入手容易性等の点から、香料、防虫剤、防カビ剤、保湿剤が含まれることがより好ましく、香料がさらに好ましい。機能性物質は、水やエタノールなどの有機溶剤に溶解したものであってもよい。
【0026】
[香料]
香料の具体例としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、ニトリル類、カルボン酸類、ラクトン類、及び他の天然精油や天然抽出物から選ばれる1種以上が挙げられ、アルコール類がより好ましい。
【0027】
アルコール類としては、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトロネロール、テルピネオール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、ファルネソール、ネロリドール、シス−3−ヘキセノール、セドロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、1−(2−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール等が挙げられ、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトロネロールがより好ましい。
【0028】
炭化水素類としては、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン等が挙げられる。
【0029】
フェノール類としては、グアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、チモール、バニリン等が挙げられる。
【0030】
エステル類としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、ノネン酸エステル、安息香酸エステル、桂皮酸エステル、サリチル酸エステル、ブラシル酸エステル、チグリン酸エステル、ジャスモン酸エステル、グリシド酸エステル、アントラニル酸エステル等が挙げられる。
【0031】
ギ酸エステルとしては、リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート等、酢酸エステルとしては、n−ヘキシルアセテート、シス−3−ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、3−ペンチルテトラヒドロピラン−4−イルアセテート等、プロピオン酸エステルとしては、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2−シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート等、酪酸エステルとしては、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn−ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート等が挙げられる。
【0032】
また、ノネン酸エステルとしては、メチル2−ノネノエート、エチル2−ノネノエート、エチル3−ノネノエート等、安息香酸エステルとしては、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、3,6−ジメチルベンゾエート等、桂皮酸エステルとしては、メチルシンナメート、ベンジルシンナメート等、サリチル酸エステルとしては、メチルサリシレート、n−ヘキシルサリシレート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ベンジルサリシレート等が挙げられる。
【0033】
さらに、ブラシル酸エステルとしては、エチレンブラシレート等、チグリン酸エステルとしては、ゲラニルチグレート、1−ヘキシルチグレート、シス−3−ヘキセニルチグレート等、ジャスモン酸エステルとしては、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート等、グリシド酸エステルとしては、メチル2,4−ジヒドロキシ−エチルメチルフェニルグリシデート、4−メチルフェニルエチルグリシデート等、アントラニル酸エステルとしては、メチルアントラニレート、エチルアントラニレート、ジメチルアントラニレート等が挙げられる。
【0034】
その他、市販品として、花王株式会社製、フルテート(エチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン−2−カルボキシレート:商品名:FRUITATE)等が挙げられる。
【0035】
カーボネート類としては、市販品として、花王株式会社製、ジャスマシクラット(商品名:JASMACYCLAT)、花王株式会社製、フロラマット(商品名:FLORAMAT)、インターナショナルフレーバー・アンド・フレグランス(IFF)社製、バイオリッフ(商品名:VIOLIFF)等が挙げられる。
【0036】
アルデヒド類としては、n−オクタナール、n−デカナ−ル、n−ドデカナ−ル、2−メチルウンデカナール、10−ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(IFF社、商品名:リラール)、2−シクロヘキシルプロパナール、p−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p−イソプロピル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、p−エチル−α,α−ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、α−メチル−3,4−メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0037】
ケトン類としては、α−イオノン、β−イオノン、γ−イオノン、α−メチルイオノン、β−メチルイオノン、γ−メチルイオノン、メチルヘプテノン、4−メチレン−3,5,6,6−テトラメチル−2−ヘプタノン、アミルシクロペンタノン、3−メチル−2−(シス−2−ペンテン−1−イル)−2−シクロペンテン−1−オン、メチルシクロペンテノロン、ローズケトン、カルボン、メントン、樟脳、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ−ナフチルケトン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン等が挙げられる。
【0038】
アセタール類としては、ホルムアルデヒドシクロドデシルエチルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリンアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールアセタール等が挙げられる。
【0039】
エーテル類としては、セドリルメチルエーテル、アネトール、β−ナフチルメチルエーテル、β−ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、ネロールオキサイド、1,8−シネオール、ローズフラン、デカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2.1−b]フラン等が挙げられる。
【0040】
ニトリル類としては、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル等が挙げられる。
【0041】
カルボン酸類としては、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、酪酸、2−ヘキセン酸等が挙げられる。
【0042】
ラクトン類としては、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−ヘキサラクトン、γ−ジャスモラクトン、ウイスキーラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、エチレンブラシレート、11−オキサヘキサデカノリド、ブチリデンフタリド等が挙げられる。
【0043】
天然精油や天然抽出物としては、オレンジ、レモン、ライム、ベルガモット、バニラ、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ロックローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチュリ、レモングラス、ラブダナム等が挙げられる。
【0044】
[防虫剤]
防虫剤の具体例としては、ゲラニオール、ナフタリン、パラジクロロベンゼン等が挙げられ、ゲラニオールが好ましい。
【0045】
[保湿剤]
保湿剤としては、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、γ−リノレン酸、コラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウム、海藻エキス、ヘチマエキス、デュークエキス等が挙げられ、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオールがより好ましい。
【0046】
[消毒殺菌剤]
消毒殺菌剤の具体例としては、ホルムアルデヒド、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン塩酸塩、塩素化イソシアヌール酸、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヒキシジン、2,2‘−メチレンビス−3,4,6−トリクロルフェノール、フェノール、クレゾール、トリクロサン等が挙げられる。
【0047】
[殺菌剤]
殺菌剤(医薬用途)の具体例としては、ヨードキチン、ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウム、クロル石灰、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、エタノール、イソプロパノール、過酸化水素水、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
【0048】
殺菌剤(食品添加物用途)の具体例としては、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、さらし粉、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素水、オゾン水等が挙げられる。
【0049】
殺菌剤(農業用途)の具体例としては、臭化メチル、マンネブ、ジネブ、2,6−ジクロル4−ニトロアニリン、ジヒドロメチルアキサチンカルボキサニリドジオキシド、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ−3,4−ベンゾチアゾル、トリフェニルスズオキシド等が挙げられる。
【0050】
[防カビ剤・防腐剤]
防カビ剤の具体例としては、ゲラニオール、ジヒドロメチルアキサチンカルボキサニリドジオキシド、α−ブロムシンナムアルデヒド、レゾルシノール、ペンタクロルフェニルラウレート等が挙げられ、ゲラニオールが好ましい。防腐剤の具体例としては、安息香酸、ジフェニール、モノクロルナフタリン等が挙げられる。
【0051】
[医薬剤]
医薬剤の具体例としては、ピロカルピン、スコポラミン、ニトログリセリン、酢酸リュープロレイン、テオドール、塩酸アンブロキソール等が挙げられる。
【0052】
[肥料]
肥料の具体例としては、ウレアホルム、イソブチリデン二尿素、クロトニリデン二尿素、ウレアズィー、グリコールウリル、グアニル尿素、アキサミド等が挙げられる。
【0053】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、オキシベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、次ヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリン、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−4‘−メトキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0054】
[美白剤]
美白剤としては、ビタミンC、ビタミンC誘導体、コウジ酸、アルブチン等が挙げられる。
【0055】
[食品添加剤]
食品添加剤の具体例としては、アルギン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、ビタミンA、ビタミンE、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、酢酸、乳酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、β−カロテン、塩化カリウム、炭酸カルシウム、ヘキサン、カンゾウ抽出物、ステビア抽出物、オレンジ色素、カラメル、ニンジンカロテン、エゴノキ抽出物、しらこタンパク抽出物、アラビアガム、グァーガム、ペクチン、ペッパー抽出物、チクル、エレミ樹脂、カルナルバロウ、カフェイン、キハダ抽出物、アミラーゼ、プロテアーゼ、パパイン、コメヌカロウ、ミツロウ、サトウキビロウ、フィチン酸、イタコン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、植物レシチン、ダイズサポニン等が挙げられる。
【0056】
本明細書において、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、「2種類以上の機能性物質」は、メソポーラスシリカ粒子(A)の細孔径よりも小さいものを用いることが好ましい。用いられるメソポーラスシリカ粒子(A)の細孔径にも依存するが、前記香料の中では、炭化水素系香料としてはリモネン、アルコール系香料としては、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、cis−3−ヘキセノール、l−メントール、トリメチルヘキサノール、アルデヒド系香料としては、シトラール、リリアール、バニリン、エチルバニリン、ヘリオナール、ケトン系香料としては、イソ・イー・スーパー、δ−ダマスコン、エステル系香料としては、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸リナリル、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート、アミン系香料としてはアントラニル酸メチル等が好適に挙げられ、リモネン、エチルバニリン、ヘリオナール、δ−ダマスコン、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート、アントラニル酸メチルがより好ましい。
【0057】
[本発明の複合メソポーラスシリカ粒子]
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、メソポーラスシリカ粒子(A)に組成物(B)が保持される構成である。2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、組成物(B)の80〜100質量%をメソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する。本発明の複合メソポーラスシリカ粒子の組成物(B)の全保持量のうちのメソポーラスシリカ粒子(A)内部に保持された香料量の割合は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは85〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%であり、さらに好ましくは実質的に100質量であり、100質量%がさらにより好ましい。ここで、メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に存在する組成物(B)の割合が100重量%であるとは、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子において、メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に組成物(B)が存在しないことを意味する。また、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子の組成物(B)の全保持量のうちのメソポーラスシリカ粒子(A)内部に保持された香料量の割合は、後述する実施例のように測定及び算出できる。
【0058】
なお、本明細書において、メソポーラスシリカ粒子(A)の内部とは、中空シリカ粒子(A−1)においては外殻物のメソ細孔内及び中空部をいい、中実シリカ粒子(A−2)においてはメソ細孔内をいう。
【0059】
[本発明の複合メソポーラスシリカ粒子の製造方法]
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、例えば、メソポーラスシリカ粒子(A)に組成物(B)を含浸させること(含浸処理)、及び、含浸後に前記メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に付着した組成物(B)を除去すること(除去処理)を含む製造方法により得られる。以下、中空シリカ粒子(A−1)に組成物(B)(例えば、調合香料)を含浸させる場合を例にして説明する。
【0060】
[含浸処理]
組成物(B)の含浸処理は、組成物(B)が前記メソポーラスシリカ粒子(A)に含浸できる方法であれば特に制限はなく、公知の真空含浸法等を採用することができる。例えば、容器内で組成物(B)と中空シリカ粒子(A−1)とを混合し、該容器内を組成物(B)に含まれる全ての機能性物質の蒸気圧より高く、用いる中空シリカ粒子(A−1)のメソ細孔中における窒素の蒸気圧より小さい条件で含浸することが好ましい。この場合のメソ細孔中における窒素の蒸気圧は窒素の吸着等温線から求められる。この条件で中空シリカ粒子(A−1)の細孔内を脱気して組成物(B)を強制含浸せしめ、例えば1分間〜10時間、好ましくは1分間〜1時間静置した後に容器内の圧力を一旦大気圧に戻し、さらに1分間〜10時間、好ましくは1時間〜10時間静置することで、組成物(B)を中空シリカ粒子(A−1)のメソ細孔内を通して中空内部に導入できる。なお、含浸の程度は、中空シリカ粒子(A−1)の粒子(中空部、メソ細孔)内全てに組成物(B)が包含されるまで行うことが好ましい。常温常圧下で固体である機能性物質の場合、組成物(B)の融点以上の温度で加熱融解し液体状態にして含浸させる方法が好ましい。また、固体の組成物(B)を溶媒に溶解した溶液を含浸させても良い。
【0061】
[除去処理]
含浸処理後の複合メソポーラスシリカ粒子には、粒子の外表面に組成物(B)が保持された状態である。本発明の複合メソポーラスシリカ粒子とするためには、外表面の組成物(B)を除去する必要がある。外表面の組成物(B)を除去する方法としては、例えば、外表面の組成物(B)を揮散させる方法、又は、水、有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒中で含浸処理後の複合メソポーラスシリカ粒子を撹拌して除去する方法が挙げられる。
【0062】
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子中の組成物(B)の含有量は、特に限定されないが、均一な揮散を持続させる観点から、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子中の組成として、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは20〜50質量%である。なお、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子中の組成物(B)の含有量は、熱重量分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の常法により求めることができる。
【0063】
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を、好ましくは、長時間、安定した速度で均一に揮散させることができる。すなわち、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、組成物(B)に含まれる物質の制御放出が可能である。したがって、本発明は、その他の態様において、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子からから前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法に関する。また、本発明は、さらにその他の態様において、前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質の制御放出を行うための制御放出材料であって、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子を含有する制御放出材料に関する。本発明における制御放出材料は、好ましくは、機能性物質を均一に揮散させつつ放出制御することが可能であり、広範なかつ効果的な利用が可能となる。
【0064】
さらにまた、本発明は、その他の態様において、製造工程において本発明の複合メソポーラスシリカ粒子が付加された製品であって、該製品に含まれる該複合メソポーラスシリカ粒子から少なくとも2種類の機能性物質が均一に揮散する製品に関する。該製品としては特に制限されず、好ましくは、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子に含有される機能性物質の種類に応じて広範な種類の製品に適用できる。
【実施例】
【0065】
調合香料を含有する複合メソポーラスシリカ粒子(実施例1〜2及び比較例1〜2)を作製し、タオルに適用した場合の香調変化、及び、シート状発熱体に適用した場合の香調変化及び残香性について評価した。なお、シリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
【0066】
(1)平均粒子径、平均中空部径、及び平均外殻厚みの測定
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径および外殻厚みを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから平均粒子径及びその分布の程度、平均中空部径、並びに外殻部の平均厚みを求めた。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、シリカ粒子の大きさによって適宜調節される。観察に用いた試料は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(200−Aメッシュ、応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作製した。
【0067】
(2)BET比表面積、平均細孔径、外殻部の空孔率の測定
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。窒素吸着等温線からBJH法を採用し、ピークトップを平均細孔径とした。前処理は250℃で5時間行った。外殻部の空孔率は、はじめにt−プロットの切片から細孔容積を算出し、その細孔容積の値とシリカ密度(2.2cm3/g)から以下のように算出した。
空孔率(%)=細孔容積/{(1/2.2)+細孔容積}×100
【0068】
(3)粉末X線回折(XRD)パターンの測定
理学電機工業株式会社製、粉末X線回折装置、商品名「RINT2500VPC」を用いて、X線源:Cu−kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲は回折角(2θ)1〜20°、走査速度は4.0°/分で連続スキャン法を用いた。なお、試料は、粉砕した後、アルミニウム板に詰めて測定した。
【0069】
(4)香料保持量と香料保持割合の測定
複合メソポーラスシリカ粒子には、シリカ(α)と粒子内に保持された香料(β)と粒子外に保持された香料(γ)が存在すると仮定する。複合メソポーラスシリカ粒子(α+β+γ)0.03gを5mLのヘキサン/エタノール混合溶媒(体積比率1:1)に分散させ、1時間撹拌することにより粒子内の香料を抽出した。撹拌終了後、内部標準としてヘキサデカン0.01gを加え、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)でろ過した。ろ液中の香料量をアジレント・テクノロジー株式会社製、ガスクロマトグラフィー、HP6890を用いて算出し、複合メソポーラスシリカ粒子に担持された香料量(β+γ)を算出した。この値を用いて、複合メソポーラスシリカ粒子の香料保持量を以下のように算出した。
香料保持量(質量%)=(複合メソポーラスシリカ粒子内に担持された香料量(β+γ)(g)/複合メソポーラスシリカ粒子量(α+β+γ))(g)×100
また、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)に対する香料保持割合を求めた。まず、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)を求めた。
複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)(g)= 複合メソポーラスシリカ粒子の質量(α+β+γ)(g)― 複合メソポーラスシリカ粒子内に担持された香料量(β+γ)(g)
この値を用いて、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)に対する香料保持割合を以下の式より求めた。
複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量に対する香料保持割合(質量%)=(複合メソポーラスシリカ粒子内に担持された香料量(β+γ)(g)/複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)(g)
【0070】
(5)複合メソポーラスシリカ粒子中の香料量のうちの粒子内部に保持された香料量の割合の算出方法
複合メソポーラスシリカ粒子の製造に用いるメソポーラスシリカ粒子の構造より求められる複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量をα´とし、その粒子内部のみに保持される香料量をβ´とする。複合メソポーラスシリカ粒子の製造に用いるメソポーラスシリカ粒子の構造より求めた複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α´)に対する粒子内香料割合(以下、計算値とする。β´/α´)を算出し、その計算値と上記(4)により測定した香料保持割合(以下、実測値とする。(β+γ)/α)を用いて以下の式により、粒子内部の香料量の割合を算出した。
粒子内部の香料量の割合(%)=(計算値(β´/α´)/実測値((β+γ)/α)×100
粒子内部の香料量の割合が100%の場合(γ=0)、保持された香料全量が粒子内に保持されているとした。粒子内部の香料量の割合が100%を超えた場合は、全ての香料がメソポーラスシリカ粒子内に保持されており、メソポーラスシリカ粒子内の一部にのみ香料が保持された状態のことを示している。なお、粒子内部の香料量の割合が100%を超えた場合には、粒子内部の香料量の割合をすべて100%とした。
【0071】
メソポーラスシリカ粒子が中空メソポーラスシリカ粒子の場合の複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量に対する粒子内香料割合(計算値、β´/α´)の算出を、以下のように行った。
(i)中空メソポーラスシリカ粒子の粒子径と中空部径から、粒子1個あたりの体積と中空部の体積を求め、両者の差から外殻部の体積を算出した。その値と別途測定した外殻部の空孔率から、外殻部の細孔体積を算出した。さらに中空部の体積と外殻部の細孔体積から、粒子1個あたりの空洞体積を算出した。
粒子全体の体積(nm3)=4/3×(粒子径/2)3×π
中空部の体積(nm3)=4/3×(中空部径/2)3×π
外殻部の体積(nm3)=粒子全体の体積−中空部の体積
外殻部の細孔体積(nm3)=外殻部の体積×外殻部の空孔率
粒子1個あたりの空洞体積(nm3)=外殻部の細孔体積+中空部の体積
粒子1個あたりの空孔率(%)=粒子1個あたりの空洞体積/粒子1個あたりの体積
(ii)次に、外殻部の体積、空孔率、及びシリカ密度(2.2g/cm3)から粒子1個あたりのシリカ質量(α´)を算出した。
粒子1個あたりのシリカ質量(α´)(g)=外殻部の体積×(1−空孔率(%)×0.01)×シリカ密度
(iii)さらに、中空部の体積と香料の密度から中空部のみに保持される香料量と、外殻部の細孔体積と香料の密度から細孔部のみに保持される香料量を算出した。またこれらの合計を粒子内部のみに保持される香料量(β´)とした。
中空部のみに保持される香料量(g)=中空部の体積×香料の密度
細孔部のみに保持される香料量(g)=外殻部の細孔体積×香料の密度
粒子内に保持される香料量(β´)(g)=中空部のみに保持される香料量+細孔部のみに保持される香料量
(iv)粒子1個あたりのシリカ質量(α´)とその粒子内に保持される香料量(β´)より、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量に対する粒子内香料割合は以下の式により算出される。
シリカ質量に対する粒子内香料割合(計算値)(質量%)=粒子内に保持される香料量(β´)/粒子1個あたりのシリカ質量(α´)
【0072】
製造例1(中空メソポーラスシリカ粒子の製造)
(1)1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製)99.5部、及び塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(三菱レイヨン株式会社製)0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、撹拌速度200rpmで3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間加熱撹拌を行った。冷却後、得られた混合液から凝集物を200メッシュ濾過(目開き;約75μm)し、得られた濾過液をエバポレーターにより加熱濃縮し、冷却後、濃縮液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、イオン交換水で調整することで、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液〔固形分(有効分)含有量40%、平均粒径250nm〕を得た。
【0073】
(2)次に、300L反応釜にイオン交換水192kg、メタノール64kg、1M 水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製)1.44kg、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)0.96kg、及び上記で得られたカチオン性ポリマー粒子の懸濁液1.04kgを入れて撹拌し、その水溶液にテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)1.09kgを30秒で添加し、室温にて70rpmで5時間攪拌した。攪拌速度を25rpmに減速し、更に一晩攪拌した。次いで、得られた白色沈殿物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、10Lの水で洗浄し、100℃の温度条件で5時間乾燥した。
【0074】
(3)得られた乾燥粉末を、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:スーパーバーン)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去した。得られた粉末を、ロータースピードミル(FRITSCH社製、商品名:pulverisettel4)を用いて、乾式解砕(20000rpm)、乾式分級(孔径0.2mmスクリーンをパス)することにより、中空メソポーラスシリカ粒子原料粉末を得た。なお、この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有していた。結果を表1に示す。
【0075】
製造例2(複合メソポーラスシリカ粒子の製造:比較例1)
製造例1で得られた中空メソポーラスシリカ粒子0.5gを20mlのサンプル瓶へ入れ、その上に香料としてローズ系調合香料2.0gを注いだ。ローズ系調合香料とは、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトロネロールなどの異なる蒸気圧の物質を主な香料成分とする調合香料である(密度は1.0g/cm3とした。)。その容器をガラス製デシケータ中に移し、ロータリーポンプを用い3分間減圧した。その後、窒素ガスを充填し内圧を常圧に戻した。この操作を3度繰り返した後、サンプルを一晩静置した。翌日、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、PTFE、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は64質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は41%であった。結果を表1に示す。
【0076】
製造例3(外表面の香料を除去した複合メソポーラスシリカ粒子の製造:実施例1)
製造例2で得られた複合メソポーラスシリカ粒子0.5gを50mlのサンプル瓶へ入れ、その中に水15gを注いだ。マグネチックスターラーで1分間撹拌後、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、セルロースアセテート、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は33質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は100%であった。結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、粒子径割合は、一次粒子全体における数平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有している中空メソポーラスシリカ粒子の割合を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
試験例1
市販タオル50g(32cm×40cm)に対し28mgの香料が付加されるように、製造例3により得られた複合メソポーラスシリカ粒子77mgを均一に振りかけた。香料を振りかけてから1週間後に香調が維持されているかどうかを、研究員5人の官能評価により3段階(3:香調の変化なし、2:やや香調が変化した、1:香調が変化した)で評価し平均した後小数点以下1位を四捨五入した値を評価点として求めた。結果を表2に示す。
【0079】
比較試験例1
実施例1において、製造例3で得られた複合メソポーラスシリカ粒子の代わりに、製造例2で得られた複合メソポーラスシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って評価した。結果を表2に示す。
【0080】
比較試験例2
実施例1において、製造例3で得られた複合メソポーラスシリカ粒子を用いずに、香料としてローズ系調合香料をそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。結果を下記表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
上記表2に示すとおり、外表面に香料が保持された比較例1の複合メソポーラスシリカ粒子を用いた比較試験例1、及び、香料のみを用いた比較試験例2に比べ、外表面の香料が除去された実施例1の複合メソポーラスシリカ粒子を用いた試験例1では、調合香料の香料変化が長期間抑制された。
【0083】
製造例4(中空メソポーラスシリカ粒子の製造)
(1)1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製)99.5部、及び塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(三菱レイヨン株式会社製)0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、撹拌速度300rpmで3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間加熱撹拌を行った。冷却後、得られた混合液から凝集物を200メッシュ濾過(目開き;約75μm)し、得られた濾過液をエバポレーターにより加熱濃縮し、冷却後、濃縮液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、イオン交換水で調整することで、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液〔固形分(有効分)含有量40%、平均粒径330nm〕を得た。
【0084】
(2)次に、室温下、20Lポリタンクに水5719g、メタノール2000g、1M水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製)45g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)34.8g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液326gを入れ撹拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)34gゆっくり加え、10分間撹拌した。さらにその水溶液中にメタノール2000g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド314g、テトラメトキシシラン306gをあらかじめ混合したものを、マイクロチューブポンプ(ヤマト科学株式会社製、マスターフレックス デジタル送液ポンプ 7524‐40/50型)を用いて2時間かけて滴下した。滴下時に水溶液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間静置した。得られた白色沈殿物を硝酸セルロースメンブレンフィルター(孔径0.2μm、47nmφ)でろ別し、水5000gで洗浄、乾燥(100℃、15時間)した。
【0085】
(3)得られた乾燥粉末を、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:スーパーバーン)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去することにより、中空メソポーラスシリカ粒子原料粉末を得た。なお、この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有していた。結果を下記表3に示す。
【0086】
製造例5(複合メソポーラスシリカ粒子の製造:比較例3)
製造例4で得られた中空メソポーラスシリカ粒子0.5gを20mlのサンプル瓶へ入れ、その上に香料としてローズ系調合香料2.0gを注いだ。その容器をガラス製デシケータ中に移し、ロータリーポンプを用い3分間減圧した。その後、窒素ガスを充填し内圧を常圧に戻した。この操作を3度繰り返した後、サンプルを一晩静置した。翌日、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、PTFE、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は69質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は24%であった。結果を表3に示す。
【0087】
製造例6(外表面の香料を除去した複合メソポーラスシリカ粒子の製造:実施例2)
製造例5で得られた複合メソポーラスシリカ粒子0.5gを50mlのサンプル瓶へ入れ、その中に水15gを注いだ。マグネチックスターラーで1分間撹拌後、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、セルロースアセテート、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は34質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は100%であった。結果を表3に示す。なお、下記表3において、粒子径割合は、一次粒子全体における数平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有している中空メソポーラスシリカ粒子の割合を示す。
【0088】
【表3】

【0089】
試験例2
(1)シート状発熱体の作製
<成形シートの原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:83%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):8%
・反応促進剤:活性炭(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」、平均粒径45μm):9%
前記原料組成物の固形分(被酸化性金属、繊維状物及び活性炭の合計)100部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7部及びアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」)0.18部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加しスラリーを得た。
【0090】
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
【0091】
<乾燥条件>
成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄83%、活性炭9%、パルプ8%であった。
【0092】
<香料含有シート状発熱体の作製>
得られた成形シートを面積25cm2(5cm×5cm)に裁断し、成形シート100重量部に対し、下記電解液42重量部、ローズ系調合香料18mgを含有する製造例6により得られた複合メソポーラスシリカ粒子1.6重量部を添加した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させてシート状発熱体を得た。
【0093】
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5重量%
【0094】
(2)蒸気温熱シートの作製
第1の面が炭酸カルシウムを含む延伸された多孔質のポリエチレン透湿性フィルム(通気度:2500秒/(100ml・6.42cm2))、第2の面がポリエチレンよりなる非通気フィルムを用いて作製した袋状フィルムに、上記で得られたシート状発熱体を入れヒートシールで開口部を熱融着し密閉した。さらに、外周部全体をポリエチレンテレフタレートよりなる不織布(坪量100g/cm2)で袋状に覆い、開口部をヒートシールで熱溶着し、第1の面より香料及び水蒸気を発生する蒸気温熱シートを作製した。
【0095】
(3)香料の残香性と香調変化の評価方法
上記(2)にて作製した蒸気温熱シートを50℃1ヶ月保存後の残香性と香調の変化を、官能評価により以下のように3段階で評価した。結果を表4に示す。
<残香性>
3:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中9人以上
2:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中6人以上9人未満
1:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中6人未満
<香調変化>
3:香調の変化なし
2:やや香調が変化した
1:香調が変化した
【0096】
比較試験例3
試験例2と同じ面積の成形シート、電解液(成形シート100重量部に対し電解液量が42重量部)とローズ系調合香料18mgを含有する製造例5により得られた複合メソポーラスシリカ粒子(成形シート100重両部に対し1.6重量部)を用いてシート状発熱体を作製した以外は、試験例2と同様な方法で香料および水蒸気を発生する蒸気温熱シートを作製し、評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0097】
比較試験例4
試験例2と同じ面積の成形シート、電解液(成形シート100重量部に対し電解液量が42重量部)とローズ系調合香料18mgを用いてシート状発熱体を作製した以外は、試験例2と同様な方法で香料および水蒸気を発生する蒸気温熱シートを作製し、評価を行った。結果を下記表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
上記表4に示すとおり、外表面に香料が保持された比較例2の複合メソポーラスシリカ粒子を用いた比較試験例3、及び、香料のみを用いた比較試験例4に比べ、外表面の香料が除去された実施例2の複合メソポーラスシリカ粒子を用いた試験例2では、調合香料の香料変化抑制、及び、残香性が、比較試験例3及び4よりも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、例えば、香料、化粧品、洗剤、防虫剤、農薬、食品、繊維、インク等の広範な分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラスシリカ粒子(A)と、2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)とを含有する複合メソポーラスシリカ粒子であって、前記組成物(B)の80〜100質量%を前記メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する複合メソポーラスシリカ粒子。
【請求項2】
前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を均一に揮散させるための、請求項1記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
【請求項3】
前記メソポーラスシリカ粒子(A)の平均細孔径が、1〜10nmである、請求項1又は2に記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
【請求項4】
前記メソポーラスシリカ粒子(A)が、中空メソポーラスシリカ粒子である、請求項1から3のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
【請求項5】
前記組成物(B)における2種類以上の機能性物質が、香料、防虫剤、保湿剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、医薬剤、肥料、紫外線吸収剤、美白剤、食品添加剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される機能性物質である、請求項1から4のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子から前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法。
【請求項7】
メソポーラスシリカ粒子(A)に2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)を含浸させること、及び、含浸後に前記メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に付着した組成物(B)を除去することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子を製造する方法。

【公開番号】特開2011−219303(P2011−219303A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89711(P2010−89711)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】