説明

複合モードレーダ装置

【課題】狭帯域レーダと広帯域レーダとを併用して協調動作させることで、高精度な位置測定を可能とするとともに、他システムとの干渉を低減させた複合モードレーダ装置を提供する。
【解決手段】複合モードレーダ装置100は、狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とが同じ筐体内に設けられており、演算部101からの制御で両者が協調して動作するように構成されている。また、狭帯域レーダ部102及び広帯域レーダ部103で測定されたデータはともに演算部101に入力され、両者から入力した測定データをもとに演算部101で測距を高精度に行えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いた車載用レーダ装置の技術分野に関するもので、特に複数の周波数帯域モードを用いた複合モードレーダ装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を用いて物体までの距離や角度等の位置データを測定する機能、すなわちレーダ機能は既に多くの技術が開示されている。例えば、測距機能として単調に繰り返し送信されるパルスを用いたレーダ等が知られている。また、連続波(CW:Continuous Wave)を利用したレーダとして、単一周波数の連続波を用いて速度を検出するドップラーレーダや、数十MHz乃至は200MHzの帯域を利用して測距及び速度検出を行うFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダが知られている(特許文献1)。
【0003】
上記従来のレーダ方式は、単純にトーン信号を出して返ってきた信号のドップラーを検出する方式、または、200MHzまでの狭帯域において周波数を順次時系列で変えていくFMCW方式を利用している。このような狭帯域の電波を用いて測距や速度検出等を行う方式では、距離分解能が低いため、例えば対象物が10m以下の短距離にある場合には十分な検出精度が得られないといった問題があった。従来から車載用に用いられている76GHz帯のミリ波レーダは、100m程度前方の車両に対する距離や相対速度を検出するのに好適なレーダである。
【0004】
これに対し、近年新しいコンセプトの無線通信技術として、450MHz乃至は数GHzの帯域を利用した超広帯域無線システムであるUWB(Ultra Wide Band)レーダが知られており、特に車載近距離レーダとして注目されている。
【0005】
UWBは、広帯域を利用可能とすることでパルス幅がナノ秒程度かそれ以下の超短パルス波を用いたインパルス無線方式である。パルスを用いた測距システムでは、パルス幅が狭くなるほど高い分解能が得られることから、UWBを用いることで高性能な測距機能を実現することが可能となる。その一方で、パルス幅を狭くすることで平均送信電力が小さくなり、到達距離が短くなる。このことから、UWBは近距離を高い分解能で測定するのに好適な方式といえる。
【0006】
UWB無線システムでは、UWB波送信源からインパルスを送信した後、このインパルスが所定の物体表面で反射して再び送信源で受信されるまでの時間を計測することによって、物体とUWB波送信源との距離を高精度に測定することが可能となる。
【0007】
UWB無線システムでは、22〜29GHzの準ミリ波帯において、450MHz〜数GHzの広帯域を利用して超短パルス波の信号を生成しており、従来の狭帯域の電波を用いたレーダ方式では十分な精度が得られなかった10m以下の近距離の測定において、高い検出精度が得られる。例えば、30m程度以内の物体を数十cmの高い精度で検知するといったことが可能となる。
【0008】
一方、UWB無線システムは広帯域の周波数を利用するため、他の無線システムとの干渉が問題となる可能性があり、これを防止するために、UWB信号の出力を極めて低く抑えて用いる、等の規制が検討されている。従って、UWB無線システムを近距離の測定に用いることで、信号出力を低くするのが好ましい。
【0009】
このような事情から、近距離をUWBの信号を用いて測定し、遠距離を狭帯域の信号を用いて測定する複合モードレーダの検討が進められている。例えば、欧州ではSRDバンドにおける狭帯域信号を用いた狭帯域モードのドップラーレーダと、この狭帯域信号と同じ周波数でスペクトル拡散して得られる広帯域信号を用いた広帯域モードのUWBレーダとを併用した複合モードレーダが検討されている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−271430号公報
【非特許文献1】Th. Wixforth, W. Ritschel, “Multimode-Radar-Technologie fur 24 GHz,“ auto & elektronik, vol.3/2004, pp.56-58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献1に記載の複合モードレーダでは、狭帯域モードで利用する周波数帯域と広帯域モードで利用する周波数帯域とを同一、または共用しているため、狭帯域レーダとUWBレーダの両機能を同時に使用することができず、時分割して両者を切り替えて用いるようにしていた。
【0011】
そのため、例えば狭帯域レーダで測距中にUWBレーダで高分解能の測距を行う、といった高度な利用方法が実現できなかった。また、広帯域レーダが好適な測定範囲と狭帯域レーダが好適な測定範囲との境界があいまいなため、どの距離になったときに広帯域レーダと狭帯域レーダとを切り替えて用いるのがよいか明確に規定することができず、狭地域レーダと広帯域レーダとを独立に動作させて不感帯を生じさせてしまうといった問題もあった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、狭帯域レーダと広帯域レーダとを併用して協調動作させることで、高精度な位置測定を可能とするとともに、他システムとの干渉を低減させた複合モードレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の複合モードレーダ装置の第1の態様は、第1の周波数を中心周波数とする狭帯域信号を発生する狭帯域信号発生部と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を中心周波数とする広帯域信号を発生する広帯域信号発生部と、前記狭帯域信号発生部及び前記広帯域信号発生部からそれぞれ前記狭帯域信号及び前記広帯域信号を入力して送信するとともに、前記狭帯域信号及び前記広帯域信号の反射波を受信するアンテナ部と、前記アンテナ部から受信信号を入力して前記狭帯域信号の受信波をろ波する第1のろ波部と、前記アンテナ部から受信信号を入力して前記広帯域信号の受信波をろ波する第2のろ波部と、前記第1のろ波部でろ波された受信波を入力して前記狭帯域信号の反射波を検波する狭帯域受信部と、前記第2のろ波部でろ波された受信波を入力して前記広帯域信号の反射波を検波する広帯域受信部と、 前記狭帯域受信部及び前記広帯域受信部からそれぞれの検波データを入力して位置データを判定する演算部と、を備え、前記狭帯域信号の周波数帯域と前記広帯域信号の周波数帯域とが分離されるよう前記第1の周波数と前記第2の周波数とが隔離して設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記広帯域受信部は、前記狭帯域信号発生部から前記狭帯域信号を入力して前記広帯域信号の受信波と混合することで、前記受信波の周波数帯をダウンコンバートすることを特徴とする。
【0015】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記狭帯域受信部は、前記狭帯域信号発生部から前記狭帯域信号を入力して前記狭帯域信号の受信波と混合することで、前記受信波の周波数帯をベースバンドまでダウンコンバートすることを特徴とする。
【0016】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記狭帯域信号発生部は、前記狭帯域信号の連続波を発生させる連続波発生源と、前記連続波を出力又は遮断する切替操作を行うスイッチとを備え、前記スイッチは、前記演算部からの制御信号に基づいて前記切替操作を行うよう制御されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記狭帯域信号発生部は、利用する周波数帯域が2以上に分割されたいずれか1つの帯域で前記狭帯域信号を発生するよう、前記演算部で制御されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記広帯域信号発生部は、前記広帯域のインパルス信号を発生させる広帯域インパルス源を備え、前記広帯域インパルス源は、前記演算部からの制御信号に基づいて前記インパルス信号を発生するよう制御されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記演算部は、前記位置データの判定結果に基づいて前記狭帯域信号発生部と前記広帯域信号発生部の少なくともいずれか一方に前記制御信号を出力することを特徴とする。
【0020】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記アンテナ部は、送信と受信とを選択的に行える送受信共用アンテナと、前記送受信共用アンテナを前記演算部からの制御によって送信用又は受信用に切替えるアンテナ共用器とを備え、前記送受信共用アンテナが送信用に切替えられたときは、前記狭帯域信号と前記広帯域信号とを混合して送信し、前記送受信共用アンテナが受信用に切替えられたときは、前記受信信号を前記第1のろ波部と前記第2のろ波部とに分波して出力することを特徴とする。
【0021】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記アンテナ部は、送信用アンテナと受信用アンテナとを備え、前記送信用アンテナは、前記狭帯域信号と前記広帯域信号とを混合して送信し、前記受信用アンテナは、前記受信信号を前記第1のろ波部と前記第2のろ波部とに分波して出力することを特徴とする。
【0022】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記アンテナ部は、狭帯域送信用アンテナと、広帯域送信用アンテナと、狭帯域受信用アンテナと、広帯域受信用アンテナとを備え、前記狭帯域送信用アンテナは、前記狭帯域信号を入力して所定の角度範囲に送信し、前記広帯域送信用アンテナは、前記広帯域信号を入力して前記所定の角度範囲よりも広い広角度範囲に送信し、前記狭帯域受信用アンテナは、前記所定の角度範囲から受信した前記受信信号を前記第1のろ波部に出力し、前記広帯域受信用アンテナは、前記広角度範囲から受信した前記受信信号を前記第2のろ波部に出力することを特徴とする。
【0023】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記第1の中心周波数及び前記第2の中心周波数は、22GHz以上29GHz以下のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
本発明の複合モードレーダ装置の他の態様は、前記広帯域信号は、帯域幅が少なくとも450MHz以上のUWB信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、狭帯域レーダと広帯域レーダとを併用して協調動作させることで、高精度な位置測定を可能とするとともに、他システムとの干渉を低減させた複合モードレーダ装置を提供することが可能となる。この発明によれば、遠距離の測定が可能な狭帯域レーダと、近距離を高精度に測定可能な広帯域レーダとを組み合わせることで、近距離から遠距離までを高精度に測定可能な複合モードレーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の好ましい実施の形態における複合モードレーダ装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。なお、以下では本発明の複合モードレーダ装置による位置測定として、物体までの距離を測定する測距機能を例に説明する。
【0027】
本発明の複合モードレーダ装置は、狭帯域レーダで利用する周波数帯と広帯域レーダで利用する周波数帯とが重ならないように分割することで、両方のレーダ機能を同時に利用できるように構成されている。本発明の複合モードレーダ装置で用いる周波数帯の1例を図2に示す。同図において、(a)は本発明の複合モードレーダ装置で用いる周波数帯を示しており、(b)は非特許文献1に記載の欧州で検討されている複合モードレーダ装置で用いる周波数帯を示している。
【0028】
非特許文献1に記載の複合モードレーダ装置では、図2(b)に示す通り、狭帯域レーダに用いる信号の中心周波数と広帯域レーダに用いる信号の中心周波数とが、ともに同じSRDバンドの約24GHzに設定されていることから、狭帯域レーダの帯域13と広帯域レーダの帯域14とが重なっている。そのため、狭帯域レーダと広帯域レーダとを同時に用いることはできず、必要に応じて両者を切り替えて用いる必要があった。
【0029】
これに対し、本発明の複合モードレーダ装置では、図2(a)に示すように、狭帯域レーダの中心周波数を例えば24.125GHzとし、広帯域レーダの中心周波数を例えば26.5GHzとすることにより、狭帯域レーダの帯域11と広帯域レーダの帯域12とが重ならないようにしており、その結果両者を切り替えることなく協調させて用いることが可能となっている。以下では、狭帯域レーダと広帯域レーダで周波数帯域が異なるように構成された本発明の複合モードレーダ装置の実施形態について説明する。
【0030】
本発明の実施の形態に係る複合モードレーダ装置の基本構成を、図1に示すブロック図を用いて説明する。本実施形態の複合モードレーダ装置100は、狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とが同じ筐体内に設けられており、演算部101からの制御で両者が協調して動作するように構成されている。また、狭帯域レーダ部102及び広帯域レーダ部103で測定されたデータはともに演算部101に入力され、両者から入力した測定データをもとに演算部101で測距を高精度に行えるようにしている。
【0031】
狭帯域レーダ部102は、狭帯域信号を生成する狭帯域信号発生部110と、受信信号から所定の狭帯域の受信波のみをろ波する第1のろ波部131と、第1のろ波部131でろ波された受信波を処理して検知データを取得する狭帯域受信部130とを備えている。また、広帯域レーダ103は、広帯域信号を生成する広帯域信号発生部120と、受信信号から所定の広帯域の受信波のみをろ波する第2のろ波部141と、第2のろ波部141でろ波された受信波から検知データを取得する広帯域受信部140とを備えている。
【0032】
狭帯域信号発生部110及び広帯域信号発生部120にはそれぞれ狭帯域波源111及び広帯域インパルス源121が備えられており、それぞれで生成された狭帯域信号及び広帯域信号が、合波器150で合波されて送信信号となり、これがアンテナ部160から送信される。
【0033】
一方、アンテナ部160で受信された受信信号は、分波器170で分波されて第1のろ波部131及び第2のろ波部141に出力され、それぞれで狭帯域の受信波と広帯域の受信波がろ波される。第1のろ波部131及び第2のろ波部141でろ波された狭帯域受信波及び広帯域受信波は、それぞれ狭帯域受信部130及び広帯域受信部140に入力され、ここでそれぞれの受信波から所定の検波データが取得され、これが演算部101に入力されて距離判定のための所定の処理が行われる。
【0034】
なお、本実施形態のアンテナ部160は、アンテナ161を共用して送信と受信とを行うように構成されており、アンテナ共用器162を用いて送信と受信との切替えが可能となっている。アンテナ161には、狭帯域信号と広帯域信号をともに送受信可能なものを用いている。
【0035】
本実施形態の複合モードレーダ装置100は、狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを演算部101からの制御により協調動作させることが可能に構成されており、狭帯域レーダ部102で検出された測定データと広帯域レーダ部103で検出された測定データとを組み合わせて高精度な測距が可能となっている。すなわち、狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを図3に示すような基本動作で用いることが可能であり、この基本動作をみ合わせることで狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを協調させて好適なレーダ機能を実現することができる。
【0036】
上記の基本動作として、図3(a)に示す狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを適宜切り替えて動作させる切り替え方式と、図3(b)に示す狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを平行して動作させる並用方式の2種類がある。このような基本動作を用いて測距を行う一実施例を図4に示す流れ図を用いて以下に説明する。このような狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103との協調動作は、演算部101からの制御で実現される。
【0037】
図4の処理は演算部101で周期的に実行され、ステップS1では、前回測定された距離L0と第1の基準値LT1とを比較し、前回測定された距離L0が第1の基準値LT1より大きい場合には、ステップS2で切り替え方式により狭帯域レーダ部102のみを用いて測距を行う。また、前回測定された距離L0が第1の基準値LT1以下の場合には、ステップS3の判定に進む。
【0038】
ステップS3では、前回測定された距離L0と第2の基準値LT2とを比較し、前回測定された距離L0が第1の基準値LT1以下でかつ第2の基準値LT2より大きい場合には、ステップS4で併用方式を用いて狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とをともに動作させて測距を行わせる。この場合、演算部101では、両者の測定結果をもとに、例えば距離の短い方を採用する、あるいは両者の平均値を算出する、等の方法で距離を好適に決定することが可能となる。
【0039】
前回測定された距離L0が第2の基準値LT2以下の場合には、ステップS5において、切り替え方式を用いて広帯域レーダ部103のみで測距を行わせる。このように、本実施形態の複合モードレーダ装置100では、狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを同時に使えるように構成しておくことで、高精度な測距機能を実現することが可能となっている。
【0040】
図4に示す処理方法では、物体までの距離に基づいて狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを使い分けるようにしているが、別の処理方法として、例えば通常は狭帯域レーダ部102を用い、高分解能が必要なときだけ広帯域レーダ部103を用いるようにすることも可能である。これにより、広帯域レーダ部103の使用を限定することができ、他システムとの干渉を低減させることができる。
【0041】
広帯域レーダ部103の使用が他システムとの干渉の問題を発生させる恐れがある場合には、一時的に狭帯域レーダ部102のみを用いるように制御することが可能であり、このような制御方式を演算部101のソフトウェア処理だけで実現することができる。さらに、狭帯域レーダ部102の使用において、他の狭帯域レーダとの干渉が問題となることが予想される場合には、狭帯域レーダ部102で用いる周波数帯域を予め複数の利用帯域に分割して用いるようにすることができる。
【0042】
一例として、図5に示すように、狭帯域レーダ部102で利用可能な帯域幅を200MHzとし、狭帯域信号の帯域幅を20MHzとしたとき、利用可能な帯域幅200MHzを10分割した第1の利用帯域20から第10の利用帯29までに分けて用いることが可能となる。この場合、他の狭帯域システムが第1の利用帯域20と第2の利用帯域21を使用しているとすると、狭帯域レーダ部102は第3から第10の利用帯域22〜29のいずれかに切り替えることで、他の狭帯域システムとの干渉を回避することが可能となる。
【0043】
上記の通り、本実施形態の複合モードレーダ装置100によれば、遠距離の測定が可能な狭帯域レーダ部102と、近距離を高精度に測定可能な広帯域レーダ部103とを協調させて用いることで、近距離から遠距離までを高精度に測定することが可能となる。また、演算部101における処理により、狭帯域レーダ部102と広帯域レーダ部103とを制御して他システムとの干渉を容易に回避することが可能となる。
【0044】
本発明の別の実施の形態に係る複合モードレーダ装置の構成を、図6を用いて以下に説明する。図6は、本実施形態の複合モードレーダ装置200の詳細な構成を示している。
本実施形態の複合モードレーダ装置200では、狭帯域波源としてVCO(Voltage Controlled Oscillator)211を用いている。狭帯域レーダ部202では、三角波生成器212からの信号に基づいてVCO211で周波数を変調させた狭帯域信号を生成し、これを増幅器213で増幅した後、スイッチ214がオンのときに合波器250に出力させる。三角波生成器212の各種制御パラメータは演算部201から設定可能となっており、スイッチ214の切替は演算部201からのトリガ信号で制御されている。
【0045】
また、広帯域インパルス源にはBO(Burst Oscillator)221が用いられており、演算部201からインパルストリガが出力されると、BO221において1nsec程度の期間だけ高周波の広帯域インパルス信号が発振される。BO221で発振された広帯域インパルス信号は、増幅器223で増幅された後合波器250に出力され、ここで狭帯域信号と合波されて送信信号としてアンテナ部260に送られる。
【0046】
本実施形態のアンテナ部260は、送信アンテナ261と受信アンテナ262とを備える構成としており、アンテナ共用器を不要としている。合波器250で合波された送信信号は広帯域な信号となることから、これに対応して送信アンテナ261を、広帯域の信号を送信可能な広帯域送信アンテナとしている。同様に、受信アンテナ262にも、狭帯域信号及び広帯域インパルス信号の各反射波を受信可能なアンテナを用いている。
【0047】
受信アンテナ262で受信された受信信号は、分波器270で分波された後第1のろ波部231と第2のろ波部241に伝送され、さらに狭帯域受信部230と広帯域受信部240とに伝送される。第1のろ波部231では、受信信号から狭帯域の周波数の受信波がろ波される。そして、狭帯域受信部230において、第1のろ波部231でろ波された受信波が増幅器232で増幅された後、ミキサ233で送信信号と混合されて所定のビート信号に変換される。ミキサ233で受信波と混合される送信信号は、狭帯域信号発生部210の方向性結合器215から分波されたものである。
【0048】
ミキサ233で生成された混合波をLPF(Low Pass Filter)234でろ波することにより、観測された物体までの距離に対応するビート周波数を有するビート信号を取得することができる。このビート信号を増幅器235で増幅した後、S/H(Sample/Hold)回路237に伝送し、ここで狭帯域レーダ部202による検波データを取得して演算部201に出力する。
【0049】
同様に、第2のろ波部241でも、受信信号から広帯域の周波数の受信波がろ波される。そして、広帯域受信部240において、第2のろ波部241でろ波された受信波が増幅器242で増幅された後、ミキサ243で狭帯域信号発生部210の方向性結合器215から分波された送信信号と混合される。但し、ミキサ243における送信信号との混合は、広帯域信号をダウンコンバートするためのものであり、これによりベースバンドに近い周波数帯までダウンコンバートされる。このように、広帯域信号をダウンコンバートすることで、後段のLPF244や増幅器245には、低周波数対応の比較的低価格のものを用いることが可能となる。
【0050】
ミキサ243で生成された混合波をLPF244でろ波することにより、ダウンコンバートされた広帯域受信波を得ることができ、これを増幅器245で増幅させた後検波器246に入力してインパルス信号の検波を行わせる。検波器246で検波されたインパルス信号は、S/H回路247に伝送され、ここで広帯域レーダ部203による検波データを取得して演算部201に出力する。
【0051】
本実施形態の複合モードレーダ装置200では、狭帯域信号としてFMCWを用いている。FMCWを用いたレーダは、周波数を時系列で順次変化させた電波を用いており、これにより物体までの距離及び相対速度を測定することが可能となっている。FMCWレーダでは、遠方の物体で反射された場合は周波数が高くなり、近傍で反射された場合には周波数が低くなる。FMCWを用いた距離及び相対速度の測定方法を、図7を用いて説明する。
【0052】
FMCWレーダでは、図7(a)に示すように、周波数を時系列的に増加・減少させて三角状に変調させたものを送信波に用いている。図7(a)に示す周波数の変化幅(帯域幅)は20MHz程度と小さく、FMCWレーダに用いる信号は狭帯域な信号であるといえる。このような信号を送信して距離Lだけ離れた物体で反射されると、往復距離2Lの時間遅れを伴って受信アンテナ262に受信される。この受信波と送信波とをミキサ233でミキシングすることにより、図7(b)に示すような距離Lに比例したビート周波数を持つ信号を抽出することができる。そこで、このビート信号を演算部201でFFT解析してピーク周波数を検出する。
【0053】
図7(a)に示す増加区間のビート周波数fbuと減少区間のビート周波数fbdとから、距離に相当する周波数fbを次式で求めることができる。
[数1]
fb=(|fbu|+|fbd|)/2 (式1)
また、物体がレーダ装置に対し相対速度を有している場合には、反射波の周波数はドップラー効果により図7に示すfdだけシフトする。
【0054】
一方、広帯域レーダ部203では、BO221で発振された広帯域インパルス信号が観測物体までの往復距離2Lに相当する時間遅れで検出され、これを広帯域受信部240で検波処理して検波データとして演算部201に出力され、これを演算部201で処理して距離Lを算出する。
【0055】
本実施形態でも、狭帯域レーダ部202と広帯域レーダ部203とを協調させて用いることで、近距離から遠距離までを高精度に測定することが可能であり、また演算部201における処理により、狭帯域レーダ部202と広帯域レーダ部203とを制御して他システムとの干渉を容易に回避することが可能となっている。
【0056】
これに加えて、広帯域受信部240に入力される受信信号が、狭帯域信号発生部210で生成された狭帯域信号と混合されてダウンコンバートされることにより、広帯域受信波をろ波するためのLPF244やこれを増幅するための増幅器245には、低周波数帯対応の比較的低価格のものを用いることが可能となる。周波数変調された狭帯域信号は、広帯域インパルス信号の帯域から見れば十分狭帯域な信号であり、インパルスの検出に問題となることはない。
【0057】
さらに本実施形態では、アンテナ部260に送信アンテナ261と受信アンテナ262とを備えるように構成することで、送信と受信とを並行して行えるようにしており、これにより例えば物体を追跡観測する等のより高度な利用が可能となる。
【0058】
なお、送信アンテナ261と受信アンテナ262とを備えて送信と受信とを並行して行えるようにした場合、送信信号にFMCWのような連続波を用いるためには、送信アンテナ261と受信アンテナ262とをある程度離して設置する必要がある。これは、送信アンテナ261から送信された連続波の一部が、回り込みによって受信アンテナ262に直接受信されてしまうのを防止するためである。
【0059】
送信アンテナ261と受信アンテナ262とを接近させて設置すると、送信信号が連続波の場合には回り込みによって一部の送信波が受信アンテナ262に常時受信されてしまい、受信回路が飽和して測定不能になってしまう。これを防止するために、本実施形態では送信アンテナ261と受信アンテナ262との距離をある程度大きくしてアイソレーションをとるように構成している。なお、本実施形態の複合モードレーダ装置200では、狭帯域信号発生部210から狭帯域信号が出力されるのは、スイッチ214がオンの期間だけに限定されているため、受信回路が飽和してしまう恐れはないが、送信アンテナ261と受信アンテナ262とのアイソレーションをとるように構成するのがより好ましい。
【0060】
一方、インパルス信号を送信する場合には、この信号が所定の間隔をおいて出力されることから、受信回路が飽和してしまうような問題は発生しない。本実施形態では、広帯域信号としてインパルス信号を用いており、広帯域レーダ部203では上記のような問題は発生しない。
【0061】
本発明のさらに別の実施の形態に係る複合モードレーダ装置の構成を、図8を用いて以下に説明する。本実施形態の複合モードレーダ装置300では、狭帯域レーダ部302による観測領域と広帯域レーダ部303による観測領域とが異なるように設定している。それぞれの観測領域の一例を図9に示す。
【0062】
図9では、狭帯域レーダ部302による観測領域31として、狭い角度範囲でかつ遠距離までを設定しているのに対し、広帯域レーダ部303の観測領域32を広角度でかつ近距離までの領域としている。広帯域レーダ部303による広帯域インパルス信号を用いたレーダ機能では、近距離を広範囲に観測することが可能なことから、狭帯域レーダ部302及び広帯域レーダ部303のそれぞれの観測領域を、例えば図9のように設定するのが好ましい。
【0063】
狭帯域レーダ部302及び広帯域レーダ部303のそれぞれの観測領域を、例えば図9のような異なる領域に設定した場合、それぞれの送信範囲及び受信範囲も異なることから、送受信に用いるアンテナも狭帯域レーダ部302に用いるものと広帯域レーダ部303に用いるものの両方が必要となる。
【0064】
本実施形態では、図8に示すように、アンテナ部360に狭帯域送信用アンテナ361、広帯域送信用アンテナ362、狭帯域受信用アンテナ363、及び広帯域受信用アンテナ364が設けられており、それぞれ狭帯域信号発生部310、広帯域信号発生部320、狭帯域受信部330、及び広帯域受信部340に接続されている。
【0065】
次に、複合モードレーダ装置200を例に、演算部201における処理について説明する。演算部201では、狭帯域レーダ部202に係る処理、広帯域レーダ部203に係る処理、及びこれらを統括する処理が実行されており、図10に示すように、それぞれNBR用CPU420、WBR用CPU430、及び統括用CPU410で実行するよう構成されている。各CPUにおける動作状態遷移図を図11に、また処理の流れ図を図12、13に示す。
【0066】
統括用CPU410では、上位系40からの指令等に基づいてNBR(Narrow Band Radar)用CPU420及びWBR(Wide Band Radar)用CPU430における各処理を制御する統括処理部411が実行される。図11(a)に示す統括用CPU410の動作状態遷移図では、統括処理部411の処理として、所定のタイミングで狭帯域レーダ部202及び広帯域レーダ部203を作動させるためのトリガ出力、所定のタイミングでNBR用CPU420とWBR用CPU430とから測定データの判定結果を取得して観測物体までの距離判定等を行う識別処理、及び上位系40からの情報要求に従って識別処理の結果を出力する上位系情報出力、の各処理を行うことを示している。
【0067】
また、NBR用CPU420では、統括処理部411からの要求等に基づいて、狭帯域レーダ部202に係る各処理を行うNBR処理部421とNBR制御部422とが実行される。図11(b)に示すNBR用CPU420の動作状態遷移図では、NBR処理部421の処理として、統括処理部411からのトリガによるNBR制御部422の起動、及び統括処理部411からのポーリング処理による測定データの出力、の各処理を行うことを示している。NBR制御部422では、狭帯域レーダ部202の制御が行われる。
【0068】
さらに、WBR用CPU430では、統括処理部411からの要求等に基づいて、広帯域レーダ部203に係る各処理を行うWBR処理部431とWBR制御部432とが実行される。図11(c)に示すWBR用CPU430の動作状態遷移図では、WBR処理部431の処理として、統括処理部411からのトリガによるWBR制御部432の起動、及び統括処理部411からのポーリング処理による測定データの出力、の各処理を行うことを示している。WBR制御部432では、広帯域レーダ部203の制御が行われる。
【0069】
演算部201には、広帯域レーダ部203による検波データをサンプリングしてWBR用CPU430に取込むために、さらにRAMP生成回路433と比較器434と積分器435が設けられている。
【0070】
統括処理部411の処理の流れを、図12に示す流れ図を用いて説明する。統括処理部411は、統括用CPU410の起動直後のステップS11で上記の各処理に用いるパラメータ等の初期化を行った後、次のステップS12以降の処理を所定の周期で実行する。ステップS12では、上位系40からの情報要求があるか否かを判定し、情報要求があった場合には次のステップS13の処理を実行する一方、情報要求がない場合にはステップS14に進む。
【0071】
ステップS13では、上位系40からの情報要求に対し、それまでに行われている識別処理の結果を出力する。次のステップS14では、狭帯域レーダ部202及び広帯域レーダ部203を作動させるためのトリガ出力のタイミングか否かを判定し、トリガ出力のタイミングと判定した場合には次のステップS15の処理を実行する一方、トリガ出力のタイミングでないと判定した場合にはステップS16に進む。
【0072】
ステップS15では、狭帯域レーダ部202及び広帯域レーダ部203を作動させるためのトリガを、NBR用CPU420及びWBR用CPU430に出力する。次のステップS16では、NBR用CPU420とWBR用CPU430とから測定データを取込むタイミングか否かを判定し、データ取込タイミングと判定した場合には次のステップS17以降の処理を実行する一方、データ取込タイミングでないと判定した場合には次の周期でステップS12の処理から開始させる。
【0073】
ステップS17では、NBR用CPU420及びWBR用CPU430に対するポーリング処理を行ってそれぞれから測定データを取込み、ステップS18で測定データの追跡処理を行う。さらにステップS19では、ステップS18の追跡処理の結果をもとに観測物体までの距離を決定する識別処理を行う。
【0074】
次に、NBR処理部421の処理の流れを、図13(a)、(b)に示す流れ図を用いて説明する。NBR処理部421は、NBR用CPU420の起動直後のステップS21で上記の各処理に用いるパラメータ等の初期化を行った後、次のステップS22以降の処理を所定の周期で実行する。ステップS22では、統括処理部411からのデータ要求があるか否かを判定し、データ要求があった場合には次のステップS23の処理を実行する一方、データ要求がない場合にはステップS24に進む。
【0075】
ステップS23では、統括処理部411からのデータ要求に対し、直前に処理された測定データを出力する。次のステップS24では、狭帯域レーダ部202を作動させるためのトリガを統括処理部411から入力したか否かを判定し、トリガを入力したと判定した場合には次のステップS25の処理を実行する一方、トリガを入力していないと判定した場合には、次の周期でステップS22の処理から開始させる。ステップS25では、同じNBR用CPU420でNBR制御部422を実行させ、実行を終了したNBR制御部422から測定データを取得する。
【0076】
NBR制御部422は、NBR処理部421から実行要求されると、ステップS26において、狭帯域信号発生部210から狭帯域信号を出力させるために、スイッチ214に対し送信トリガを出力する。次のステップS27では、S/H回路237からデータサンプリングを行い、このサンプリングデータをステップS28でFFT解析して図7に示すビート周波数を判定し、さらにステップS29ではFFT解析で得られたビート周波数から距離等の測定データを判定する。
【0077】
WBR処理部431の処理の流れを、図13(c)、(d)に示す流れ図を用いて説明する。WBR処理部431は、WBR用CPU430の起動直後のステップS31で上記の各処理に用いるパラメータ等の初期化を行った後、次のステップS32以降の処理を所定の周期で実行する。ステップS32では、統括処理部411からのデータ要求があるか否かを判定し、データ要求があった場合には次のステップS33の処理を実行する一方、データ要求がない場合にはステップS34に進む。
【0078】
ステップS33では、統括処理部411からのデータ要求に対し、直前に処理された測定データを出力する。次のステップS34では、広帯域レーダ部203を作動させるためのトリガを統括処理部411から入力したか否かを判定し、トリガを入力したと判定した場合には次のステップS35の処理を実行する一方、トリガを入力していないと判定した場合には、次の周期でステップS32の処理から開始させる。ステップS35では、同じWBR用CPU430でWBR制御部432を実行させ、実行を終了したWBR制御部432から測定データを取得する。
【0079】
WBR制御部432は、WBR処理部431から実行要求されると、ステップS36においてBO221に対しインパルストリガを出力する。次のステップS37では、RAMP生成回路433及び比較器434で決定されるタイミングでS/H回路247によるデータサンプリングを行い、ステップS38においてこのサンプリングデータを所定数のインパルス分だけ積分器435で積分し、この積分値からステップS39で距離等の測定データを判定する。
【0080】
上記のステップS37における処理では、図10(a)に示したRAMP生成回路433で生成されたランプ波433aとWBR制御部432で設定された閾値432aとを比較器434で比較し、ランプ波433aが閾値432aを超えたときにトリガをS/H回路247に出力している。S/H回路247では、このトリガを入力すると、検波器246から入力したインパルスの振幅をラッチして積分器435に出力している。
【0081】
RAMP生成回路433は、定電流源充電により図10(b)に示すようランプ波433aを生成して比較器434に出力している。このランプ波433aは、所定の周期で繰返し生成されるよう構成されている。S/H回路247で入力データをラッチするタイミングを上記のランプ波433aを用いて決定するよう構成することで、閾値432aの変更だけでデータサンプリングのタイミングを調整することが可能となっている。
【0082】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る複合モードレーダ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における複合モードレーダ装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る複合モードレーダ装置のブロック図を示す図である。
【図2】本発明の複合モードレーダ装置で用いる周波数帯の1例を示す図である。
【図3】狭帯域レーダ部と広帯域レーダ部の基本動作を示す図である。
【図4】基本動作を用いて測距を行う一実施例を示す流れ図である。
【図5】狭帯域レーダ部で利用可能な帯域幅を10分割して利用する形態を示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る複合モードレーダ装置のブロック図を示す図である。
【図7】FMCWを用いた距離及び相対速度の測定方法を説明する図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係る複合モードレーダ装置のブロック図を示す図である。
【図9】狭帯域レーダ部による観測領域と広帯域レーダ部による観測領域とが異なる例を示す図である。
【図10】演算部の構成を示す図である。
【図11】統括用CPU、NBR用CPU、及びWBR用CPUの動作状態遷移図である。
【図12】統括用CPUにおける処理の流れを示す図である。
【図13】NBR用CPU、及びWBR用CPUにおける処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0084】
11、13 狭帯域レーダの帯域
12、14 広帯域レーダの帯域
20〜29 利用帯域
31、32 観測領域
40 上位系
100、200、300 複合モードレーダ装置
101 演算部
102、202、302 狭帯域レーダ部
103、203、303 広帯域レーダ部
110、210、310 狭帯域信号発生部
111 狭帯域波源
120、220、320 広帯域信号発生部
121 広帯域インパルス源
130、230、330 狭帯域受信部
131、231 第1のろ波部
132 狭帯域受信回路
140、240、340 広帯域受信部
141、241 第2のろ波部
142 広帯域受信回路
150、250 合波器
160、260 アンテナ部
161、261、262 アンテナ
162 アンテナ共用器
170、270 分波器
211 VCO
212 三角波生成器
213、223,232、235、242、245 増幅器
214 スイッチ
215 方向性結合器
221 BO
233 ミキサ
237、247 S/H回路
246 検波器
410 統括用CPU
411 統括処理部
420 NBR用CPU
421 NBR処理部
422 NBR制御部
430 WBR用CPU
431 WBR処理部
432 WBR制御部
433 RAMP生成回路
434 比較器
435 積分器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数を中心周波数とする狭帯域信号を発生する狭帯域信号発生部と、
前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を中心周波数とする広帯域信号を発生する広帯域信号発生部と、
前記狭帯域信号発生部及び前記広帯域信号発生部からそれぞれ前記狭帯域信号及び前記広帯域信号を入力して送信するとともに、前記狭帯域信号及び前記広帯域信号の反射波を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部から受信信号を入力して前記狭帯域信号の受信波をろ波する第1のろ波部と、
前記アンテナ部から受信信号を入力して前記広帯域信号の受信波をろ波する第2のろ波部と、
前記第1のろ波部でろ波された受信波を入力して前記狭帯域信号の反射波を検波する狭帯域受信部と、
前記第2のろ波部でろ波された受信波を入力して前記広帯域信号の反射波を検波する広帯域受信部と、
前記狭帯域受信部及び前記広帯域受信部からそれぞれの検波データを入力して位置データを判定する演算部と、を備え、
前記狭帯域信号の周波数帯域と前記広帯域信号の周波数帯域とが分離されるよう前記第1の周波数と前記第2の周波数とが隔離して設定されている
ことを特徴とする複合モードレーダ装置。
【請求項2】
前記広帯域受信部は、前記狭帯域信号発生部から前記狭帯域信号を入力して前記広帯域信号の受信波と混合することで、前記受信波の周波数帯をダウンコンバートする
ことを特徴とする請求項1に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項3】
前記狭帯域受信部は、前記狭帯域信号発生部から前記狭帯域信号を入力して前記狭帯域信号の受信波と混合することで、前記受信波の周波数帯をベースバンドまでダウンコンバートする
ことを特徴とする請求項1に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項4】
前記狭帯域信号発生部は、前記狭帯域信号の連続波を発生させる連続波発生源と、前記連続波を出力又は遮断する切替操作を行うスイッチとを備え、
前記スイッチは、前記演算部からの制御信号に基づいて前記切替操作を行うよう制御されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項5】
前記狭帯域信号発生部は、利用する周波数帯域が2以上に分割されたいずれか1つの帯域で前記狭帯域信号を発生するよう、前記演算部で制御されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項6】
前記広帯域信号発生部は、前記広帯域のインパルス信号を発生させる広帯域インパルス源を備え、
前記広帯域インパルス源は、前記演算部からの制御信号に基づいて前記インパルス信号を発生するよう制御されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記位置データの判定結果に基づいて前記狭帯域信号発生部と前記広帯域信号発生部の少なくともいずれか一方に前記制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項8】
前記アンテナ部は、送信と受信とを選択的に行える送受信共用アンテナと、前記送受信共用アンテナを前記演算部からの制御によって送信用又は受信用に切替えるアンテナ共用器とを備え、
前記送受信共用アンテナが送信用に切替えられたときは、前記狭帯域信号と前記広帯域信号とを混合して送信し、
前記送受信共用アンテナが受信用に切替えられたときは、前記受信信号を前記第1のろ波部と前記第2のろ波部とに分波して出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項9】
前記アンテナ部は、送信用アンテナと受信用アンテナとを備え、
前記送信用アンテナは、前記狭帯域信号と前記広帯域信号とを混合して送信し、
前記受信用アンテナは、前記受信信号を前記第1のろ波部と前記第2のろ波部とに分波して出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項10】
前記アンテナ部は、狭帯域送信用アンテナと、広帯域送信用アンテナと、狭帯域受信用アンテナと、広帯域受信用アンテナとを備え、
前記狭帯域送信用アンテナは、前記狭帯域信号を入力して所定の角度範囲に送信し、
前記広帯域送信用アンテナは、前記広帯域信号を入力して前記所定の角度範囲よりも広い広角度範囲に送信し、
前記狭帯域受信用アンテナは、前記所定の角度範囲から受信した前記受信信号を前記第1のろ波部に出力し、
前記広帯域受信用アンテナは、前記広角度範囲から受信した前記受信信号を前記第2のろ波部に出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項11】
前記第1の中心周波数及び前記第2の中心周波数は、22GHz以上29GHz以下のいずれかである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。
【請求項12】
前記広帯域信号は、帯域幅が少なくとも450MHz以上のUWB信号である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合モードレーダ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−215937(P2008−215937A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51528(P2007−51528)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】