説明

複合ヤーン

本発明は、芯糸上に固定されたフェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とが接合されるとともに捻じり加工が施されていることを特徴とする
複合ヤーンを提供する。本発明の複合ヤーンは、異種の羽毛、即ち、フェザーと毛皮との特徴が有機的に作用し合い、異種の毛が絡み合うことによりそれぞれが一定方向に寝ようとするのを阻止し、その結果、少ない材料で、ボリウム感に富み、独特の風合、触感を醸し出し、保温性にも優れるばかりでなく、意匠性、ファッション性にも優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は複合ヤーン及びその製造方法に関し、更に詳しくは、フェザーとテープ状の毛皮とからなる、ボリウム感、風合、触感、及び保温性に優れるばかりでなく、意匠性及びファッション性にも優れた複合ヤーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
従来、この種の技術としては、毛皮を細切りにし、捻じり加工を施した毛皮ヤーン(毛皮糸)が知られており、コートやケープの表地や裏地、コートや上着等のえり、カフス、縁どり、帽子、ハンドバッグ、くつ、手袋、ショール、ストール、イア・マフ(耳おおい)等に広く利用されている。
しかしながら、従来の毛皮ヤーンにあっては、毛が皮の片面だけにしか存在しないため、捻じり加工を加えたとしても、皮の面が現れる場合があり、意匠性やファッション性を著しく低下させるばかりでなく、毛皮特有の柔らかい風合、触感を損ない、商品価値を台無しにする虞れがあった。
かかる問題を解決せんとして、例えば日本国特許第3028193号には、水分を含ませた毛皮生地を、毛の流れと直交する方向に引き伸ばして乾燥させた後、毛の流れの方向に沿って平行に裁断して細切り毛皮となし、この細切り毛皮に水分を含ませて長手方向に引き伸ばしながら毛の面が表となるように捩じってから乾燥させることにより、従来の毛皮ヤーンに比してより軽くて柔軟性に優れた小径の毛皮ヤーンを製造する方法が提案されている。
この製造方法で得られた毛皮ヤーンは、従来の毛皮ヤーンよりも小径であるため、上記問題点はある程度解消されるものの、未だ十分に満足し得るものとは云い難い。
また、従来の毛皮ヤーンは1種類の毛皮を使用しているため、毛の方向は一定の方向であり、従って、捻じり加工を加えても毛の方向は一定の方向であることには変わりがなく、そのため、毛が一定方向に寝やすくボリウム感に欠けるとともに、風合、触感や保温性を低下させ、また意匠性、ファッション性にも制約を与える原因となっていた。
本発明はかかる実情に鑑み、上記課題を解決し、ボリウ厶感、風合、触感及び保温性に優れるとともに、意匠性及びファッション性に優れた複合ヤーンを提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究の結果、異種のフェザーと毛皮を細断したテープ状毛皮とを複合化することにより、少ない材料でボリウム感を出すことができ、従って、従来の毛皮ヤーンのように皮の面が現れたり、一定方向に寝るということがなく、柔らかい風合、触感に優れるとともに保温性にも優れ、更に、異種のフェザーと毛皮との組み合わせにより、意匠性、ファッション性が大巾に改善されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
本発明の請求項1に係る発明は、芯糸上に固定されたフェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とが接合されるとともに捻じり加工が施されていることを特徴とする複合ヤーンを内容とする。
本発明の請求項2に係る発明は、芯糸上に固定されたフェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とが両面粘着テープにより接合されていることを特徴とする請求項1記載の複合ヤーンを内容とする。
本発明の請求項3に係る発明は、毛皮がフォックス、ミンク、ラビット、チンチラ、セーブル、ムートンから選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の複合ヤーンを内容とする。
本発明の請求項4に係る発明は、芯糸上にフェザーを並べてミシン掛けして芯糸にフェザーを固定し、次いで、フェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とを接合した後、捻じり加工を施すことを特徴とする複合ヤーンの製造方法を内容とする。
本発明の請求項5に係る発明は、フェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とを両面粘着テープにより接合することを特徴とする請求項4記載の複合ヤーンの製造方法を内容とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、毛皮原皮を裏面(皮面)から見た概略図である。
図2は、毛皮原皮を引き伸ばした状態の概略図である。
図3は、引き伸ばした毛皮原皮の周縁部を切除して、長方形の毛皮プレートを得る状態を示す概略図である。
図4は、毛皮プレートを複数枚ミシン掛けにより縫合して得られた長尺毛皮プレートの概略図である。
図5は、長尺毛皮プレートを細断してテープ状毛皮を得る状態を示す概略図である。
図6は、テープ状毛皮を示し、(a)はテープ状毛皮を裏面(皮面)から見た概略図、(b)はX−X断面図である。
図7は、芯糸上にフェザーを並べてミシン掛けして固定した状態を示し、(a)は芯糸面から見た概略図、(b)は側面から見た概略図である。
図8は、図6に示したテープ状毛皮と、図7に示した、芯糸に固定したフェザーとを両面粘着テープにより貼着した複合物とした状態を示し、(a)は側面から見た概略図、(b)は長さ方向からの概略図である。
図9は、図8の複合物に捻じり加工を施して複合ヤーンとする状態を示す概略図である。
図10は、本発明の複合ヤーンを示し、(a)は長さ方向からの概略図、(b)は側面から見た概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の複合ヤーンは、芯糸上に固定されたフェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とが接合されるとともに捻じり加工が施されていることを特徴とする。
本発明に用いられるフェザーとしては特に制限されないが、七面鳥、オーストリッチ、スワン、キジ等が好適に用いられる。幅が3〜8cm程度、長さが5〜15cm程度のフェザーが好ましい。これらは単独で、又は必要に応じ、2種以上組み合わせて用いられる。
本発明に用いられるテープ状毛皮としては、特に制限されないが、フォックス(シルバーフォックス、ブラックフォックス、ホワイトフォックス、レッドフォックス等)、ミンク、ラビット、チンチラ、セーブル、ムートン等からなるものが好適に用いられる。これらは単独で、又は必要に応じ、2種以上組み合わせて用いられる。
フェザー又はテープ状毛皮のいずれか一方又は両方に、2種以上を組み合わせて用いることにより、それぞれが単種の場合に比べて一層興趣に富んだ風合、触感及び外観を有し、意匠性、デザイン性に富んだ複合ヤーンを得ることができる。
本発明に用いられる芯糸は特に制限されないが、余り太くなると複合ヤーンの柔らかい風合、触感が損なわれ、一方、余り細くなると、フェザーの固定及び両面粘着テープ等によるテープ状毛皮との接合が困難となる。従って、5〜10本程度の糸を引き揃えた、又は撚り合わせた直径1.0〜1.5mm程度のものが好適である。
フェザーの芯糸上への固定は、羽毛の幅が略一定となるように羽軸を一部重ね合わせて芯糸上に並べ、羽軸と芯糸とをミシン掛けにより固定する(図7(a)、(b))。ミシン掛けの代わりに接着剤等を用いると、接着剤の乾燥とともに硬くなり、また食み出した接着剤により羽毛が固まり、風合、触感が損なわれるので好ましくない。
本発明に用いられるテープ状毛皮は、毛皮を幅1〜3mm程度のテープ状に細断したものが用いられる。テープ状毛皮の製造方法の好ましい一例を示せば、毛皮原皮1(図1)を縦、横の一方向又は二方向に大きく引き伸ばし(図2)、引き伸ばした毛皮原皮1aを長方形又は正方形に裁断し、周縁の不定形部分を除去した毛皮プレート1bを得る(図3)。得られた毛皮プレート1bを所定の枚数ミシン掛け2により縫合し長尺毛皮プレート1cを得る(図4)。
次いで、得られた長尺毛皮プレート1cを幅1〜3mm程度のテープ状に細断してテープ状毛皮3を得る(図5)。図6(a)、(b)は、テープ状毛皮3の裏面(皮面)から見た概略図及びX−X断面図で、3aは皮部、3bは毛部である。
芯糸上に固定されたフェザーとテープ状毛皮は、フェザーの芯糸面とテープ状毛皮の皮面とを接合することにより、フェザーとテープ状毛皮との複合物とされる(図8(a)、(b))。フェザーとテープ状毛皮の接合手段としては両面粘着テープが好適である。接合手段として、例えば、接着剤を使用すると、上記したように、接着剤の乾燥とともに硬くなり、また食み出した接着剤により羽毛やテープ状毛皮の毛が固まり、風合、触感が損なわれる場合がある。
フェザーとテープ状毛皮とからなる複合物は、捻じり加工が施される。捻じり加工は、該複合物の両側をツイストスプリングで張設し、蒸気を吹きかけながら、ツイスト(捻じる)する通常の方法によりなされる(図9)。
上記の如くして得られた複合ヤーンは、接合された芯糸と皮部の周囲にフェザーの羽毛とテープ状毛皮の毛部とが略均一に絡み合い、しかもそれぞれが一定方向に寝ようとするのを相互に絡み合うことにより阻止するので、ボリウム感に富み、フェザー及び毛皮に特有のふんわりとした風合、触感を有し、保温性に優れるとともに、意匠性、ファッション性にも優れている(図10)。
また、従来のように、一面にのみ毛を有する毛皮ヤーンとは異なり、両面に毛(フェザーの羽毛と毛皮の毛)を有するので、捻じり加工した場合にも皮面が現れることがなく、外観的にも優れ、意匠性、ファッション性の自由度が飛躍的に高められる。また、異種のフェザーと毛皮とを組み合わせたことにより、興趣性に富む風合、触感及び外観が得られる。
以下、本発明の複合ヤーンの製造方法の好ましい実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
〔A:フェザーの芯糸上への固定〕
6本の糸を引き揃えた直径約1.5mmの芯糸4上にフェザー(七面鳥の幅約6〜7cm、長さ約10〜12cmの羽毛)5を一部重なるように羽軸を並べ、羽軸と芯糸とをミシン掛け2をすることにより、フェザー5を芯糸上に固定する(図7(a)、(b))。
〔B:フェザーとテープ状毛皮との接合〕
フォックスを幅約3mmに細断したテープ状毛皮3の皮部3aに両面粘着テープ6の一の面を貼着するとともに、該両面粘着テープ6の他の面に、上記A工程で得られた芯糸4上に固定したフェザー5の芯糸4面を貼着することにより、フェザー5とテープ状毛皮3とを接合し、フェザーとテープ状毛皮との複合物10を得る(図8(a)、(b))。
〔C:捻じり加工〕
ケース7内の下方には蒸気孔8を穿設した蒸気供給パイプ9を複数本備え、上方には、上記B工程で得られたフェザーとテープ状毛皮との複合物10をその両端をツイストスプリング11を介して取り付け、蒸気供給パイプ9より蒸気を供給して蒸気孔8より蒸気を噴出させながらツイストスプリングを回転させることにより、フェザーとテープ状毛皮の複合物10を捻じり加工して本発明の複合ヤーンを得る(図10(a)、(b))。
得られた複合ヤーンは、図10(a)、(b)に示すように、両面粘着テープ6により接合された芯糸4と皮部3との周りにフェザー5とテープ状毛皮3の毛部3bとが略均一に絡み合い、しかも一定方向に寝ようとするのを、フェザー5とテープ状毛皮3の毛部3bが絡み合うことにより阻止し、その結果、ボリウム感に富み、ふんわりとした風合、触感に優れ、保温性、意匠性、ファッション性に優れた複合ヤーン12が得られた。
また、得られた複合ヤーン12は、異種のフェザーと毛皮との組合せにより、興趣性に富んだ風合、触感及び外観を有していた。
【実施例2】
フェザーとして、七面鳥とオーストリッチを用いて交互に芯糸上に固定し、またテープ状毛皮として、フォックスとラビットを用い、交互に縫合したテープ状毛皮を用いた他は実施例1と同様にして複合ヤーンを製造した。
得られた複合ヤーンは、実施例1の複合ヤーンとは興趣を異にするボリウ厶感、風合、触感を有し、実施例1の複合ヤーンとは異なる、一層興趣に富んだ意匠性、ファッション性を有していた。
【産業上の利用可能性】
叙上のとおり、本発明の複合ヤーンは異種の羽毛、即ち、フェザーと毛皮との各々の特徴が有機的に作用し合い、異種の毛が絡み合うことによりそれぞれが一定方向に寝ようとするのを阻止し、その結果、少ない材料で、ボリウム感に富み、独特の風合、触感を醸し出し、保温性にも優れるばかりでなく、意匠性、ファッション性に優れ、その有用性は頗る大である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸上に固定されたフェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とが接合されるとともに捻じり加工が施されていることを特徴とする複合ヤーン。
【請求項2】
芯糸上に固定されたフェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とが両面粘着テープにより接合されていることを特徴とする請求項1記載の複合ヤーン。
【請求項3】
毛皮がフォックス、ミンク、ラビット、チンチラ、セーブル、ムートンから選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の複合ヤーン。
【請求項4】
芯糸上にフェザーを並べてミシン掛けして芯糸にフェザーを固定し、次いで、フェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とを接合した後、捻じり加工を施すことを特徴とする複合ヤーンの製造方法。
【請求項5】
フェザーの芯糸面と毛皮を細断したテープ状毛皮の皮面とを両面粘着テープにより接合することを特徴とする請求項4記載の複合ヤーンの製造方法。

【国際公開番号】WO2005/075723
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517604(P2005−517604)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001354
【国際出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【特許番号】特許第3843309号(P3843309)
【特許公報発行日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(506247468)有限会社ディ・リンク (1)
【Fターム(参考)】