説明

複合不織布の製造方法

【課題】嵩高で風合いの良好な複合不織布を好適に製造することができる複合不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の複合不織布の製造方法は、カード機により開繊した繊維ウェブを原料として製造された不織布10をそのロール状に巻回されている原反100から繰り出し、加熱して嵩回復処理を行って第1の不織布11を製造した後、第1の不織布11と、第1の不織布11とは別の第2の不織布12とを部分的に接合して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合不織布の製造方法に関わり、特に、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面材に用いて好適な、複合不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の表面材等に使用されるシートの製造方法に関する従来技術として、例えば、下記特許文献1及び2に記載の技術が提案されている。特許文献1に記載の技術は、カード機により開繊した繊維ウェブどうしを重ねてエンボスロール間に通して複合化するものであるが、得られる不織布は、繊維どうしがエンボスロールによる接合部分以外では、熱融着していないため、毛羽立ちやすいものとなってしまい、吸収性物品の表面材として用いる場合には、好ましくない。また、カード機により開繊した繊維ウェブからなる複合不織布は潰れやすく、厚みが薄いものしか得られない。特許文献2に記載の技術は、少なくとも2枚の短繊維不織布同士を熱エンボスによって圧着して複合化するものである。特許文献2には短繊維不織布の製造方法に関する詳細の記述はないが、短繊維不織布は、その製造工程で一度、ロール状に巻回され原反とする場合には、巻き回れされる前は嵩高なために、巻き潰れやすい。したがって、2枚の短繊維不織布どうしを熱エンボスによって圧着して複合化したものは厚みが薄く、風合いや柔軟性が十分に得られない。
【0003】
一方、本出願人は、下記特許文献3に記載の技術を提案している。この技術は、ロール状に巻回された不織布原反から不織布を繰り出し、その嵩を回復させるものである。
【0004】
【特許文献1】特表平8−504136号公報
【特許文献2】特開2005−312601号公報
【特許文献3】特開2004−137655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、凹凸を有し、嵩高で風合いの良好な複合不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記特許文献3に記載の技術に着目し、特定の不織布に嵩回復処理を施し、別の不織布、特に、嵩の高い不織布と部分的に接合して複合化することで、嵩高で風合いの良好な複合不織布が製造できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、カード機により開繊した繊維ウェブを原料として製造された不織布をそのロール状に巻回されている原反から繰り出し、加熱して嵩回復処理を行って第1の不織布を製造した後、第1の不織布と、第1の不織布とは別の第2の不織布とを重ね合わせてエンボス加工を施し、これらの不織布を凹凸を付しながら部分的に接合して一体化する複合不織布の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凹凸を有し、嵩高で風合いの良好な複合不織布を好適に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の複合不織布の製造方法は、カード機2Aにより開繊した繊維ウェブを原料として製造された不織布10をそのロール状に巻回されている原反100から繰り出し、加熱して嵩回復処理を行って第1の不織布11を製造した後、第1の不織布11と、第1の不織布11とは別の第2の不織布12とを重ね合わせて一対のエンボスロール31、32でエンボス加工を施し、これらの不織布を凹凸を付しながら部分的に接合して一体化し、複合不織布1とするものである。
【0011】
本実施形態では、不織布10は、カード機2Aによって繊維を開繊した繊維ウェブ110を原料として製造される。カード機により開繊した繊維ウェブを原料として用いることで、該繊維ウェブを不織布化する工程において、嵩高で風合いが良好な不織布が得られる種々の方法を採用できる。この場合、繊維ウェブの繊維長は、100mm以下が好ましく、80mm以下が特に好ましい。繊維ウェブを不織布化する方法は、特に嵩高で風合いが良好な不織布が得られる点からエアスルー方式が好ましい。
【0012】
不織布10をエアスルー方式によって製造するときの熱処理温度は、不織布10の構成繊維の融点以上、融点+20℃未満であることが、得られる不織布の風合いや生産性の観点から好ましい。不織布10が複合繊維(例えば、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維)で構成されている場合は、前記構成繊維の融点には、複合繊維を構成する最も低融点の樹脂の融点が採用される。
【0013】
不織布10を構成する繊維は、特に制限はないが、嵩高性に優れることから、熱融着性を有する複合繊維であることが好ましい。また、複合繊維は、機械捲縮を発現していると、嵩高性に優れるので好ましい。さらに、前記複合繊維は、熱可塑性樹脂からなる芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維であることが嵩高性に優れる不織布を得る上で好ましく、特に偏芯芯鞘構造を有する場合、スパイラル状の立体捲縮を発現するため、より嵩高性に優れるので好ましい。
【0014】
不織布10を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
ポリエステル系重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等及びこれらの共重合体が挙げられ、使用に際しては、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
ポリアミド系重合体としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン2、ナイロン3、ナイロン4、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、及び共重合体等のポリアミド系重合体が挙げられ、使用に際しては、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
ポリオレフィン系重合体としては、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン1−プロピレン3元共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体等が挙げられ、使用に際しては、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0015】
不織布10を複合繊維で構成する場合には、嵩高性・凹凸構造の保持性の観点から、少なくとも複合繊維を構成する樹脂の一方は、ポリエステル系の単独重合体又はポリオレフィン系の単独重合体を用いることが好ましい。また、嵩回復性に優れる点を考慮すると、複合繊維を構成する樹脂の一方のガラス転移点が室温(10〜30℃程度)以上であることが好ましい。また凹凸複合不織布の形成性や保形成の観点から、複合繊維を構成する2種類の樹脂の融点差を、少なくとも10℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上とすることが好ましい。
【0016】
次に、ロール状に巻き回されている原反100から繰り出された不織布10を加熱して嵩回復処理を行う。
【0017】
嵩回復処理における不織布10の加熱方法に特に制限はないが、嵩回復を効率的に実施する観点からエアスルー方式が好ましい。ここでエアスルー方式とは、不織布10に熱風を吹き付け、吹き付けた熱風が該不織布10を貫通し、不織布10の嵩を回復させる方式である。不織布10に吹き付ける熱風の温度は、不織布10の構成繊維の融点−(マイナス)50℃以上で且つ該融点未満とすることが得られる不織布の嵩回復性や生産性の点で好ましい。不織布10が複合繊維(例えば、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維)で構成されている場合は、前記構成繊維の融点には、複合繊維を構成する最も低融点の樹脂の融点が採用される。
【0018】
エアスルー方式で嵩回復処理を行う場合の、熱風の吹き付け面は特に制限はないが、より嵩高な不織布を得る観点から不織布10の製造時の熱風吹き付け面10A側から熱風を吹き付けることが好ましい。
【0019】
嵩回復処理後における第1の不織布11の厚みは、1.0〜10.0mmが好ましく、1.5〜5.0mmがより好ましい。また、第1の不織布の坪量は、5〜60g/m2が好ましく、10〜30g/m2がより好ましい。嵩回復処理後における第1の不織布11の厚みは、嵩回復処理前に比して1.5〜10倍とすることが好ましく、2〜5倍とすることが一層好ましい。
【0020】
本実施形態においては、図1に示したように、第2の不織布12は、カード機2Bにより開繊した繊維ウェブを原料として製造される。カード機により開繊した繊維ウェブを原料として用いることで、該繊維ウェブを不織布化する工程において、嵩高で風合いが良好な不織布が得られる種々の方法を採用できる。この場合、繊維ウェブの繊維長は、100mm以下が好ましく、80mm以下が特に好ましい。繊維ウェブを不織布化する方法は、特に嵩高で風合いが良好な不織布が得られる点からエアスルー方式が好ましい。
【0021】
第2の不織布12をエアスルー方式によって製造するときの熱処理温度は、第2の不織布12の構成繊維の融点以上、融点+20℃未満であることが、得られる不織布の風合いや生産性の観点から好ましい。第2の不織布12が複合繊維(例えば、芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維)で構成されている場合は、前記構成繊維の融点には、複合繊維を構成する最も低融点の樹脂の融点が採用される。
【0022】
第2の不織布12を構成する繊維は、特に制限はないが、嵩高性に優れることから、熱融着性を有する複合繊維であることが好ましい。また、複合繊維は、機械捲縮を発現していると、嵩高性に優れるので好ましい。さらに、前記複合繊維は、熱可塑性樹脂からなる芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維であることが嵩高性に優れる不織布を得る上で好ましく、特に偏芯芯鞘構造を有する場合、スパイラル状の立体捲縮を発現するため、より嵩高性に優れるので好ましい。
【0023】
前記第2の不織布12を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
ポリエステル系重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等及びこれらの共重合体が挙げられ、使用に際しては、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
ポリアミド系重合体としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン2、ナイロン3、ナイロン4、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、及び共重合体等のポリアミド系重合体が挙げられ、使用に際しては、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
ポリオレフィン系重合体としては、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン1−プロピレン3元共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体等が挙げられ、使用に際しては、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0024】
第2の不織布12の厚みは、1.0〜10.0mmが好ましく、2.0〜5.0mmがより好ましい。また、第2の不織布12の坪量は、5〜60g/m2が好ましく、10〜30g/m2がより好ましい。
【0025】
本実施形態においては、上述のようにして得られた第1の不織布11及び第2の不織布12を重ね合わせる。第1の不織布11と第2の不織布を構成する繊維は同じ材質でもよいし、異なる材質でもよい。
【0026】
本実施形態では、第1の不織布11を反転させ、不織布10の製造時の熱風の吹き付け面10Aと、第2の不織布12の製造時の熱風の吹き付け面12Aとを重ねて接合する。これによって、得られる複合不織布1の表面の風合いをより良好にすることができる。特に、複合不織布1を吸収性物品の表面材として用いる場合には、耐毛羽立ち性能の観点から前述のように製造時の熱風の吹き付け面どうしを重ね合わせる構成が好ましい。
【0027】
そして、重ね合わされた不織布を、一対のエンボスロール31、32によって挟圧し、部分的に熱融着して接合する。一対のエンボスロール31、32のうち、ロール31は、その周面に多数の凸部が形成された彫刻ロールである。第1の不織布11と第2の不織布12との接合する際に、十分な凹凸構造を発現する観点から、ロール31の高さは、0.5mm以上であることが好ましく、エンボス加工を施す前の第1の不織布11と第2の不織布12の厚みの合計より大きいことがより好ましい。一方、ロール32は、その周面が平滑な平滑ロールである。ここで、エンボス高さとは、エンボスロール31における凸部の法線方向における周面からの高さをいう。
【0028】
各ロール31、32は、それぞれ所定温度に加熱されていてもよく、或いは加熱されていなくてもよい。加熱する場合その温度は、接合部を強固に接着させる観点から、各不織布11、12の構成繊維中の最も融点の低い樹脂の融点近傍であることが好ましい。繊維の種類にもよるが、構成繊維の融点−20℃<エンボスロールの加熱温度<構成繊維の融点+50℃であることが好ましい。
【0029】
第1の不織布11と第2の不織布12との接合部13の形態及び配列パターンは、複合不織布の用途に応じて設定することができ、特に制限はないが、図2に示すように、平面視して円形であり千鳥配列パターンで点状に配置されていることが好ましい。接合部13は、1〜20mm、特に3〜10mmのピッチで配置されていることが、複合不織布1の嵩高さ、風合い、強度の観点から好ましい。
【0030】
このようにして得られた凹凸を有する複合不織布1は、嵩高で風合いが良好である。また、上記効果が奏される複合不織布の製造は、製造設備に大幅な改良等が不要であるため、低コストで製造することができる。複合不織布1は、その用途にもよるが、例えば複合不織布1を吸収性物品の表面シートとして用いる場合は、坪量が10g/m2〜120g/m2、特に20g/m2〜60g/m2であることが好ましい。また、複合不織布1の厚みは、これを例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には1.0〜20mmが好ましく、2.0〜10.0mmがより好ましい。
特に複合不織布全体の柔らかさ・しなやかさ及び表面シートとしての尿や経血等のシートへの低残り性や、すばやく尿や経血を透過させる観点からは、複合不織布は、坪量を10〜40g/m2の低坪量で且つ厚みを2.0〜10.0mmと厚めにすることが好ましい。
【0031】
本実施形態の複合不織布の製造方法は、吸収性物品の製造工程にそのまま適用することができる。この場合、複合不織布1を、そのまま吸収性物品の製造工程に連続的に供給することもできるし、一端原反として巻き取り、原反として供給することもできる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の複合不織布の製造方法によれば、嵩回復処理を行った第1の不織布11と嵩の高い第2の不織布12を部分的に接合することによって、嵩高で風合いの良好な凹凸を有する複合不織布1を簡便・安価に製造することができる。また、本実施形態の複合不織布の製造方法では、各不織布を任意に選択可能であり、多様な不織布を製造可能である。
【0033】
このようにして得られた複合不織布1は、例えば生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨てオムツなどの各種吸収性物品の表面シートとして用いると、肌触りが良好で装着感に優れた吸収性物品を得ることができる。
【0034】
本発明は前記実施形態に制限されない。
本発明は、前記実施形態の複合不織布の製造方法におけるように、第1の不織布11に使用する嵩回復処理前の不織布10は、エアスルー方式により製造された不織布をその原反から繰り出し、加熱して嵩回復した不織布を用いることが好ましいが、カード機により開繊した繊維ウェブを原料として製造されたもので、加熱による嵩回復処理によって、不織布10の嵩が回復するものであれば、ヒートロール法、スパンレース法、ニードルパンチ法、ケミカルボンド法、エアレイド法、メルトブローン法、スパンボンド法等の各種の不織布製造方法で製造された不織布を用いることもできる。
【0035】
また、本発明は、前記実施形態の複合不織布の製造方法におけるように、第2の不織布12に、カード機により開繊した繊維ウェブに熱風をエアスルー方式で吹き付けて製造した不織布を用いることが好ましいが、それ以外の不織布で、カード機により開繊した繊維ウェブをヒートロール方式で熱接着して製造した不織布を用いることもできる。また、図3に示すように、カード機2Bにより開繊した繊維ウェブ110’を原料として製造された不織布10’の原反100’から繰り出し、不織布10’の製造時の熱風吹き付け面10A’側から、前述の第1の不織布と同様に熱風を吹き付けて嵩回復処理を行った不織布を、第2の不織布12として使用することもできる。
【0036】
また、本発明は、前記実施形態のように、嵩回復処理における加熱を、前記不織布に熱風をエアスルー方式で吹き付けて行うことが好ましいが、これに代えて、遠赤外線を照射して加熱を行ったり、ヒートロール等の加熱源に接触させて加熱を行ったりすることもできる。
【0037】
また、前記実施形態では、第1の不織布11の製造時の熱風の吹き付け面10Aと、第2の不織布の製造時の熱風の吹き付け面12Aどうしを重ねて接合したが、接合面の向きは、これに限られず、用途に応じて任意に選択することができる。第1の不織布における熱風の吹き付け面を外側に向け、第2の不織布の熱風の吹き付け面と接合することもできるし、熱風の吹き付け面の裏面同士を接合面として接合することもできる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、本実施例により何ら制限されない。
【0039】
表1に示す二種類の不織布を使用し、下記実施例1、2及び比較例1〜3のようにして複合不織布を作製した。そして、得られた不織布の厚み、比容積及び風合いを下記のように評価した。それらの結果を表2に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
〔実施例1〕
以下のようにして、表1に示す不織布を作製した。
<第1の不織布の作製>
表1に示す芯鞘型複合繊維をカード機で開繊した繊維ウェブを原料として、エアスルー方式によって不織布を作製し、ロール状に巻き取って原反を得た。そして、この原反から不織布を繰り出し、表1に示す嵩回復処理を施して第1の不織布とした。
【0042】
<第2の不織布の作製>
表1に示す芯鞘型複合繊維をカード機で開繊した繊維ウェブを原料として、エアスルー方式によって不織布を作製した。
【0043】
<複合不織布の作製>
上述のようにして作製された第1の不織布と第2の不織布とを表2に示す接合面の向きで重ね合わせ、表2に示す温度設定された一対のエンボスロール(エンボス高さ1mm)間に通してエンボス加工を施し、両不織布を凹凸を付しながら部分的に接合して一体化し、図2に示すような複合不織布を得た。
【0044】
得られた複合不織布の単位面積当たりの接合部の面積率は12.8%であり、各接合部は円形の形状を有し、その配列パターンは図2に示すような千鳥配列であった。
【0045】
〔厚みの測定〕
得られた複合不織布の厚みは、定圧式厚み計を用いて測定した。そのときの圧力は0.5g/cm2であった。
【0046】
〔比容積の測定〕
得られた複合不織布の比容積は、前記の厚み測定により得られた厚みと複合不織布の坪量を測定し、下記の算出式によって算出した。
比容積=厚み/坪量
【0047】
〔風合いの評価〕
得られた複合不織布について、5人のモニターに、柔らかさの程度を評価させた。このとき、以下の評価基準に従い、5人のモニターの平均点を算出した。
柔らかい:+1
どちらともいえない:0
柔らかくない:−1
【0048】
〔実施例2及び比較例1、2〕
表1に示した不織布を使用し、表2に示した接合条件で接合した以外は、実施例1と同様にして、複合不織布を作製し、その厚み・比容積及び風合いを評価した。
【0049】
〔比較例3〕
表1に示したカードウェブを使用し、表2に示した接合条件で接合した以外は、実施例1と同様にして複合不織布作製し、その厚み、比容積及び風合いを評価した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に示したように、実施例1、2の複合不織布は、第1の不織布に嵩回復処理を施しているので、比較例1〜3の複合不織布よりも厚みが厚く、比容積が大きいことがわかった。特に、坪量の低い(10g/m2)の不織布同士を用いた実施例1と比較例1の複合不織布においては、嵩回復の効果はより明確になり、複合化する不織布に嵩回復処理を施している実施例1の場合と、嵩回復していない比較例1の場合で、凹凸性に大きな差が生じることが分かった。また、実施例の複合不織布は、比容積が大きいため、柔軟でしなやかなものとなっており、風合いに優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の複合不織布は、前記実施形態のような吸収性物品以外に、使い捨ての着衣等の使い捨ての着用物品を構成する不織布としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の複合不織布の製造方法による製造工程の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の複合不織布の製造方法により製造される複合不織布の一形態を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の複合不織布の製造方法による製造工程の他の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 複合不織布
10 不織布
11 第1の不織布
12 第2の不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード機により開繊した繊維ウェブを原料として製造された不織布をそのロール状に巻回されている原反から繰り出し、加熱して嵩回復処理を行って第1の不織布を製造した後、第1の不織布と、第1の不織布とは別の第2の不織布とを重ね合わせてエンボス加工を施し、これらの不織布を凹凸を付しながら部分的に接合して一体化する複合不織布の製造方法。
【請求項2】
前記嵩回復処理における加熱を、前記不織布に熱風をエアスルー方式で吹き付けるか又は加熱源で加熱して行う請求項1に記載の複合不織布の製造方法。
【請求項3】
前記嵩回復処理を行う前の前記不織布をエアスルー方式により製造する請求項1又は2に記載の複合不織布の製造方法。
【請求項4】
第2の不織布を、カード機により開繊した繊維ウェブを用いてエアスルー方式により製造する請求項1〜3の何れかに記載の複合不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−156793(P2008−156793A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348340(P2006−348340)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】