説明

複合不織布

【課題】難接着性素材を含む複合体を耐熱性を保ったまま表面処理無しに生産性良く複合する方法を提供する。
【解決手段】難接着性素材を含む少なくとも2層構造以上の積層不織布を有する複合体を製造する工程において、接着剤としてポリエチレン樹脂100重量%に対してテルペン樹脂系またはロジン樹脂系粘着付与剤を1〜60重量%配合されてなる粉末状又は繊維状ホットメルト接着剤を使用し複合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建材、自動車、家電等に使用する多層構造の複合体に関する。
【技術背景】
【0002】
複合体を構成する多層構造のうち、ポリプロピレン等の難接着素材と、ポリエステル等のオレフィン以外の素材を貼り合わせて複合体として使用される場合があるが、このような難接着素材を含む複合体は単純な低密度ポリエチレンのホットメルト接着剤では十分な接着強力のある複合体は得られにくい。
【0003】
そのためこのような複合体を作製する場合、難接着素材の表面をコロナ放電等で処理し、ウレタン系又はエーテル系接着剤で貼り合わせる方法が用いられている。また接着後にも通気性が必要な場合には、接着剤として粉末状のEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)を散布して接着したり、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を溶融してノズルより糸状、もしくは粒子状にして塗布して接着する方法等により製造される。
しかしながら、ウレタン又はエーテル系接着剤は難接着素材にコロナ放電等の表面処理を行なわないと接着力が安定せず、また有機溶剤を含むものは乾燥工程や乾燥時間が必要となる。また溶剤が残留するなどの欠点もある。
【0004】
ホットメルト接着剤として多用されているEVA樹脂については接着力を重視すると耐熱性が悪化し、高温での使用時に剥がれの問題が発生したり、また使用する環境や条件によっては分解し、発生する酢酸臭や有害なアセトアルデヒドの発生が指摘されており、使用を制限される場合もある。
ホットメルト接着剤でもポリエステル系又はポリアミド系ホットメルトでは難接着素材の表面をコロナ放電等で処理しないと接着せず、製造工程が複雑になるという欠点がある。また、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を使用する場合は、硬化までに時間がかかることと、多層間にリン酸や灰分で処理された活性炭等の機能薬剤添着型機能性粉体を封入しようとしても機能剤がウレタンの硬化を阻害し、接着できない等の欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の技術の欠点を解消し、ポリオレフィン等の難接着繊維を表面処理することなく貼り合わせし、かつ多少の加熱でも剥離せず、分解して酢酸臭や有害なアセトアルデヒド等の発生の無い複合体を粘着付与剤を含有するホットメルト接着剤を使用することで提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明は分解物としてアセトアルデヒド等の有毒なガスの発生のない低密度ポリエチレン樹脂を主剤とし、低密度ポリエチレンのみでは不十分な接着力を補うため、テルペン樹脂またはロジン樹脂からなる粘着付与剤を接着剤組成中にポリエチレン樹脂100重量%に対して1〜60部重量%のテルペン樹脂またはロジン樹脂系粘着付与剤を含有させたホットメルト接着剤を使用し複合体を製造するものである。
【0007】
前述のとおり、ポリエチレン樹脂は分解しても有毒ガスは発生しないため、多層の複合体の接着剤として優れているが、極性が小さく十分な接着力を得られない場合が多い。
またその欠点を補うため溶融粘度を高くし流れやすくしてもアンカー効果による接着力発現はわずかであり、十分な接着力は得られず使用に耐えない場合が多い。
【0008】
これらの欠点を解消するために、本発明では、ポリエチレン樹脂に粘着剤付与剤のテルペン樹脂またはロジン樹脂を配合することにより、ホットタック性や溶融時の濡れ性を著しく改善し実用に耐える接着力を有した複合体を製造できることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合体は、上記の構成により、ポリオレフィン等の難接着繊維を表面処理することなく貼り合わせし、かつ多少の加熱でも剥離せず、分解して酢酸臭や有害なアセトアルデヒド等の発生の無い複合体を作製することができる。そのため、フィルター材や建材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に使用するポリエチレン樹脂は特に制限されないが、密度0.94g/cc以下の低密度ポリエチレンを使用するのが好ましい。密度が0.94g/ccを超えるとホットメルト接着剤として使用する場合のオープンタイムが短くなり適さない。
【0011】
また、使用する粘着付与剤はテルペン系樹脂、ロジン系樹脂を使用するのが好ましく、これらの粘着付与剤は一種単独でも二種以上を混合してもよい。
テルペン樹脂の配合量は1〜60%が望ましく、1%以下では粘着付与剤の効果が現れず、また60%以上では接着剤自体の強度が低下し十分な接着力が得られない。好ましくは3〜40%の範囲で使用するのが好ましい。
【0012】
テルペン樹脂を配合したホットメルト接着剤のメルトインデックスは5〜200g/10minが望ましい。5g/10min未満では接着力が期待できず、200g/10min以上では貼り合わせる基材からのしみ出しの可能性が高くなる。接着剤の塗布量は接着力と基材からのしみ出しとのバランスで3〜50g/mが望ましいが、基材の選択よってはその限りではない。
【0013】
接着樹脂は、ポリエチレン樹脂とテルペン樹脂またはロジン樹脂を配合、溶融ブレンド後に冷却して作製する。そして、配合された樹脂を粉砕して粉末状接着剤または繊維製造口金から押し出してシート状に成形して接着繊維シートとして使用する。
樹脂の粉砕方法は、機械粉砕または冷凍粉砕が望ましいが粉末になる方法であれば特に問わない。
同様に繊維シートの生産方法はスパンボンド法、メルトブローン法等、繊維シートを作製できる方法であれば特に問わない。
粉末状接着剤の粒子径や繊維シートの繊維径は大きいほど接着力が強くなるが、接着する基材からの樹脂のしみ出しを考慮すると粒子径は1mm以下が望ましい。同様の理由から繊維シートの繊維径は1mm以下が望ましい。
【0014】
接着する方法としては、メインとなる第一層にホットメルト接着剤粉末を均一に散布またはホットメルト接着シートを重ね合わせし、加熱溶融後、接着するもう一層を重ねてプレスすることで接着し、多層の複合体とする。
また、貼り合わせる際に一層に散布された粉末状接着剤または貼り合せる1層と重ね合わされたホットメルト繊維シートを加熱溶融する際の加熱方法は、均一に散布されたパウダーや接着シートが移動、脱落しない方法、たとえば遠赤外線ヒーター等による加熱やシートでの挟み込み加熱し複合体を作製する方法が望ましい。
【0015】
複合体はフィルターとして使用したり建材として使用し室内空間を調湿する等の機能化のために、ホットメルト接着剤に活性炭やシリカゲル等の機能性パウダーを基材の層間に封入しても良い。この場合は、機能パウダーの脱落と層間の接着力が不足しないように、機能性パウダーとホットメルト接着剤の重量比率はホットメルト接着剤に対して、重量で0.1〜10倍の比率で混合される。
【実施例】
【実施例1】
【0016】
低密度ポリエチレン樹脂にテルペン樹脂を30%配合し、押し出し機にて170℃で加熱混合した後粉砕し500ミクロン以下の粉末状接着剤を得た。接着剤のメルトインデックスは40g/10minであった。この粉末をポリエステル不織布(倉敷繊維加工製TKC60N)の片面に20g/m散布したあと140℃で加熱溶融し、溶融している接着剤の上からPPスパンボンド(三井化学性PK110)を重ね、プレスロールでプレスし複合体を作製した。
【実施例2】
【0017】
実施例1に使用した粉末状接着剤を使用し、ポリエステル不織布(倉敷繊維加工製TKC60N)の片面に20g/m散布したあと140℃で加熱溶融し、溶融している接着剤の上からPE素材の透湿防水フィルムを重ね、プレスロールでプレスし複合体を作製した。
【実施例3】
【0018】
実施例1に使用した粉末状接着剤を使用し、60g/mのケミカルボンド不織布(倉敷繊維加工製TN60)の片面に10g/m散布したあと140℃で加熱溶融し、溶融している接着剤の上からフッ素系撥水剤で撥水加工された30g/mの短繊維ポリエステル不織布を重ね、プレスロールでプレスし複合体を作製した。
【実施例4】
【0019】
メルトインデックスが100g/10minの低密度ポリエチレン樹脂にロジン樹脂を10%配合し、押し出し機にて180℃で加熱混合し、カーテンスプレーダイから押し出して目付15g/m、繊維径0.7mmの繊維シートを作製した。このシートをポリエステル不織布(倉敷繊維加工製TKC60N)とPPスパンボンド(三井化学製PK110)の間に挟み、130℃のシートプレス機で加熱プレスし複合体を作製した。
【実施例5】
【0020】
ポリエステル不織布上に実施例1の粉末状接着剤を20g/m、粒子径120μm〜350μmの活性炭を150g/m散布後、実施例1の粉末状接着剤を20g/m散布し150℃にて接着剤を溶融したあと20g/mのPPスパンボンドを重ね、プレスロールでプレスし複合体を作製した。
【実施例6】
【0021】
ポリエステル不織布上に実施例2の接着シートを重ねその上から粒子径120μm〜350μmの活性炭を150g/m散布後、実施例2の接着シートとPPメルトブローンを重ね、ベルトプレス式接着機で110℃にて貼りあわせて複合体を作製した。
【0022】
[比較例1]
メルトインデックスが12g/10minのEVA粉末状接着剤を使用し、ポリエステル不織布(倉敷繊維加工製TKC60N)の片面に20g/mの粉末状接着剤を散布したあと140℃で加熱溶融し、溶融している接着剤の上からPPスパンボンド(三井化学性PK110)を重ね、プレスロールでプレスし複合体を作製した。
【0023】
[比較例2]
ポリエステル不織布(倉敷繊維加工製TKC60N)とPPスパンボンド(三井化学製PK110)の間にポリアミド系ホットメルトシートを挟み、130℃のシートプレス機で加熱プレスし複合体を作製した。
【0024】
[比較例3]
ポリエステル不織布上に融点が120℃、メルトインデックスが45g/10minの共重合ポリエステルの粉末状接着剤を20g/m、粒子径120μm〜350μmの活性炭を150g/m散布後、同じ共重合ポリエステルの粉末状接着剤を20g/m散布し150℃にて接着剤を溶融したあと20g/mのPPスパンボンドを重ね、プレスロールでプレスし複合体を作製した。
【0025】
[比較例4]
ポリエステル不織布上にポリアミド系ホットメルトシートを重ねその上から粒子径120μm〜350μmの活性炭を150g/m散布後、同じポリアミド系ホットメルトシートとPPメルトブローンを重ね、ベルトプレス式接着機で130℃にて貼りあわせて複合体を作製した。
【0026】
実施例と比較例の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0027】
実施例1では、各層が良好な接着状態を示しているのに対して、比較例1ではいずれの基材に対しても接着してはいるが十分ではなかった。実施例2でも各層は良好な接着状態を示すが比較例2では表面材と接着剤の接着力は良好だがPP素材の裏材は接着剤と接着しない。
実施例3では各層が一体化しており活性炭もほとんど脱落しない。それに対し比較例3では表面層と活性炭はよく接着されているが裏材と活性炭の間は接着力を有せず、また活性炭層が一体化していないため端面をカットしたとき活性炭が脱落する。実施例4でも各層は一体化しているのに対し比較例4は表面材と活性炭は一体化しているが、裏材と接着されておらず、一体化していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難接着性素材を含む少なくとも2層構造以上の積層不織布からなる複合体であり、貼り合わせの接着剤にポリエチレン樹脂100重量%に対して粘着付与剤が1〜60部重量%含有されたホットメルト接着剤を使用することを特徴とする複合体。
【請求項2】
難接着素材がポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂のいずれか又は両方を含むポリオレフィン樹脂からなり、形態が不織布、0.1mm以下のフィルムのいずれかを含む構造物であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
難接着素材がフッ素系撥水剤で撥水加工された不織布であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
粘着付与剤がテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂及びそれぞれの水添樹脂の単一又は混合物であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
難接着性素材を含む少なくとも2層以上の層間を接着するホットメルト接着剤のメルトインデックスが5〜200g/10minであることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
難接着性素材を含む少なくとも2層以上の層間を接着するホットメルト接着剤が粒径1mm以下の粉体であることを特徴とした請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
難接着性素材を含む少なくとも2層以上の層間を接着するホットメルト接着剤がシート状であり、平均繊維径が1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
難接着性素材を含む少なくとも2層以上の層間を接着する粉末状ホットメルト接着剤に、ホットメルト接着剤に対して、重量で0.1〜10倍の活性炭等の機能性のある粉体をブレンドすることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
難接着性素材を含む少なくとも2層以上の層間からなり、活性炭を層間に挟み込んだ複合体において、層間を接着する接着剤が平均繊維径1mm以下のホットメルト接着シートであることを特徴とする請求項1に記載の複合体。

【公開番号】特開2012−149367(P2012−149367A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22139(P2011−22139)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【Fターム(参考)】