説明

複合体およびその製造方法

【課題】一対の加熱ロール間に加熱溶融性の繊維材質からなる不織布シートとプラスチックフィルムとを重ね合わせて通し、不織布シートとプラスチックフィルムとを融着するので、加熱ロール表面に溶融した不織布シートやプラスチックフィルムの一部が付着し、発煙や悪臭の原因となったり、また超音波シールの場合は1個の振動装置で溶着できる面積が限られ、超音波装置を大きくすれば作業時間が長く生産効率が低下するといったことのない複合体を提供する。
【解決手段】複合体は、押出機の複数ノズルから押出された多数の溶融樹脂線条7が移送中の立体網状構造体1上に垂涎された直後に被着体2が重ね合わされて圧着され、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体とが溶着一体化されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空間のある立体網状構造体と、合成樹脂製不織布、網、立体網状構造体などの被着体を溶着させることにより、液体と粒子、気体と粒子を分離し、気体または液体を透過させる場合に使用する濾過材、または土木用排水材、植生用基材に使用される複合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許平09−356589号公報(特許文献1)に、一対の加熱ロール間に加熱溶融性の繊維材質からなる不織布シートとプラスチックフィルムとを重ね合わせて通し、不織布シートとプラスチックフィルムとを融着する遮水シートが開示されている。
【0003】
また特開2006−314361号公報(特許文献2)にはおむつ本体の側縁にファスニングテープ複合体を超音波シールする使い捨ておむつが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特許平09−356589号公報
【特許文献2】特開2006−314361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の場合、一対の加熱ロール間に加熱溶融性の繊維材質からなる不織布シートとプラスチックフィルムとを重ね合わせて通し、不織布シートとプラスチックフィルムとを融着するので、加熱ロール表面に溶融した不織布シートやプラスチックフィルムの一部が付着し、発煙や悪臭の原因となり、放置すると発火の恐れもあった。
【0006】
また特許文献1の場合、加熱ロール表面に溶融した不織布シートやプラスチックフィルムの一部が付着するため、不織布シートやプラスチックフィルムが目減りし、所定の厚さが維持しがたいという欠点もある。
【0007】
また特許文献2の場合、おむつ本体の側縁にファスニングテープ複合体を超音波シールしているが、1個の振動装置で溶着できる面積も限られており、また超音波装置を大きくすれば作業時間も長くなり非効率となる欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明複合体は、押出機の複数ノズルから押出された多数の溶融樹脂線条が移送中の立体網状構造体上に垂涎させた直後に被着体が重ね合わされて圧着され、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体とが溶着一体化されたことを特徴とする。
【0009】
また本発明複合体は、前進装置の送り速度が間欠的に速くなされるとともに垂涎される溶融樹脂線条が一時的に遮断され、部分的に立体網状構造体と被着体とが溶着されず、立体網状構造体と被着体間に非溶着領域が設けられたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明複合体の製造方法は、押出機の複数ノズルから多数の溶融樹脂線条にして押出し、この溶融樹脂線条を移送中の立体網状構造体上に垂涎した直後に被着体を重ねて圧着前進し、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体を溶着一体化することを特徴とする。
【0011】
さらにまた本発明複合体の製造方法は、立体網状構造体と被着体を溶着させる直前に、加熱装置により立体網状構造体の表面を加熱することを特徴とする。
【0012】
さらにまた本発明複合体の製造方法は、前進装置の送り速度を間欠的に速くするとともに垂涎する溶融樹脂線条を一時的に遮断し、部分的に立体網状構造体と被着体とが溶着しない非溶着領域を設けることを特徴とする。
【0013】
上記課題の解決手段による作用は、本発明複合体が、押出機の複数ノズルから押出された多数の溶融樹脂線条が移送中の立体網状構造体上に垂涎させた直後に被着体が重ね合わされて圧着され、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体とが溶着一体化されるので、加熱ロールが使用されず、発煙や悪臭がもたらされることも、また放置しても発火の恐れもない。
【0014】
また立体網状構造体や網、不織布などの被着体自体の一部が加熱ロールに付着することにより表面からはぎ取られ、厚さの薄い部分が生じるといったこともない。
【0015】
さらに、超音波シールが使用されないので、溶着できる面積も限られることがなく、作業時間が長くなり非効率となることもない。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように本発明複合体は、押出機の複数ノズルから多数の溶融樹脂線条を押出し、この溶融樹脂線条を移送中の立体網状構造体上に垂涎した直後に被着体を重ねて圧着前進し、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体を溶着一体化して製造されるので、立体網状構造体や網、不織布などの被着体の表面に加熱ロールなどを押し当てずにすみ、加熱ロール表面に残った樹脂が、連続加熱により発煙することも、周囲に悪臭をもたらすことも、また付着樹脂の発火するおそれもなく、かつ立体網状構造体や網、不織布などの被着体自体の樹脂が加熱ロールに付着することにより表面からはぎ取られ、厚さの薄い部分が生じるといったこともなく、さらに超音波シールが使用されないので、溶着できる面積も限られることがなく、作業時間が長くなり非効率となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1において、1は立体網状構造体、2は被着体、3、3は圧着ローラ、7は溶融樹脂線条、10は加熱装置、11はカバー、8は可動シャッター、9は固定仕切板、4、4は速度可変引取りローラーである。
【0018】
立体網状構造体1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA樹脂などのオレフィン系樹脂が使用され、この原料を1000〜3000本の素麺状の線条に押出成形し、押出し直後の温度の高いうちに多数の線条を屈曲させるとともに、互いに乾麺状に絡ませて各線条の接点を溶着して三次元の立体網状構造体1を連続して製造する。該線条の直径は0.5〜2mm程度が適当であり、立体網状構造体1の厚さは1〜20cm程度、幅は0.3〜2m程度が好適である。さらに立体網状構造体1の密度は、通常1立方mあたり50〜100kg程度が適当である。
【0019】
被着体2は、不織布、網、立体網状構造体などからなり、該被着体2もポリエチレン、ポリプロピレン、EVA樹脂などのオレフィン系樹脂が使用される。なお、該被着体2の種類は後述の複合体を使用する用途に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
圧着ローラー3、3は立体網状構造体1と被着体2を重ね合わせ、連続して圧着するもので、通常上下一対のローラーからなる。
【0021】
溶融樹脂線条7は押出機先端のノズル6から溶融状態で押出し、立体網状構造体1上に垂誕し、その上に被着体2を被覆して圧着ローラー3、3間に送り、圧着して該溶融樹脂線条7を介して立体網状構造体1と被着体2を溶着一体化し、複合体連続体Aとする。該溶融樹脂線条7もポリエチレン、ポリプロピレン、EVA樹脂などのオレフィン系樹脂が使用され、線条の直径が細く、かつ高温の溶融状態で押出せば立体網状構造体1と被着体2との溶着が強固となるが、通常溶融樹脂線条7の直径は0.5〜5mm程度が好適に使用される。
【0022】
複合体連続体Aとなる過程で、溶融樹脂線条7は冷却固化し、立体網状構造体1と被着体2を強固に一体化する。
【0023】
加熱装置10は立体網状構造体1を加熱し、被着体2を被覆するまでの溶融樹脂線条7の溶融状態を維持するためのものであって、熱風、電熱ヒーター、近赤外ヒーターなどがあるが、特に近赤外ヒーターが立体網状構造体1のごく表面のみ加熱できて好適に使用される。カバー11は適宜加熱装置10を覆い放熱を防止するものである。
【0024】
該加熱装置10により、立体網状構造体1の表面が加熱され、垂涎された溶融樹脂線条7がすぐに冷やされず、立体網状構造体1の表面で展延され被着体2との溶着面積が広がり、立体網状構造体1と被着体2との溶着強度が向上する。
【0025】
溶融樹脂線条7が立体網状構造体1上に垂涎されるとき、該溶融樹脂線条7は可動シャッター8と固定仕切板9で挟まれ遮断が可能となされ、立体網状構造体1と被着体2間の溶融樹脂線条7による溶着部分12を部分的に間欠して非溶着部分13を形成することができる。
【0026】
速度可変引取りローラー4、4は溶着一体化した立体網状構造体1と被着体2を通常の速度で引取り中に一時的に5倍から200倍の高速度で引取ることができるものであり、該速度可変引取りローラー4、4が高速度で引取るのと連動して、溶融樹脂線条7を可動シャッター8と固定仕切板9で挟んで遮断し、溶着部分12を間欠して非溶着部分13を形成した複合体連続体Aとする。
【0027】
次に図2、図3を用いて速度可変引取りローラー4、4を高速度で引き取る一実施例を説明する。
【0028】
図2の場合、速度可変引取りローラー4、4は通常の引取り速度で回転する。速度可変引取りローラー4、4の駆動は通常速度駆動用モータ21の駆動をウォームギヤ20、通常速度用電磁クラッチ19、チェーンホイール18、駆動軸30、チェーンホイール14を経由して伝える。このとき高速度駆動用モータ17の駆動は高速度用電磁クラッチ16が分離されていることにより、速度可変引取りローラー4、4には伝達しない。
【0029】
これに対して図3の場合、高速度駆動用モータ17の駆動は高速度用電磁クラッチ16、チェーンホイール15、駆動軸30、チェーンホイール14を経由して速度可変引取りローラー4、4に伝達され、速度可変引取りローラー4、4が高速度で駆動する。このとき通常速度用電磁クラッチ19は分離されている。
【0030】
速度可変引取りローラー4、4が高速度で駆動するのと連動して、溶融樹脂線条7を可動シャッター8と固定仕切板9で挟んで遮断し、溶着部分12を間欠して非溶着部分13を形成し、所定長さの非溶着部分13が形成された後、高速度用電磁クラッチ16がはずれ、再び通常速度用電磁クラッチ19が噛みあう。
【0031】
また図4を用いて速度可変引取りローラー4、4を高速度で引き取る他の実施例について説明する。
【0032】
図4において、速度可変引取りローラー4、4が通常の引取り速度で回転させる場合は、通常速度駆動用モータ21の駆動をウォームギヤ20、チェーンホイール27、チェーン28にて一方向クラッチ29に伝達し、駆動軸30を介してチェーンホイール32、チェーン33、チェーンホイール34にて速度可変引取りローラー4、4に伝達する。
【0033】
一方向クラッチ29は駆動軸30を一方向にのみ回転させるものであり、反転時にはクラッチがスリップし、駆動軸30は逆転しない。
【0034】
速度可変引取りローラー4、4を高速度で回転させる場合は、シリンダー内をピストンが往復動する往復動機器35のピストンを高速度で突出させ、連結棒37を介して一方向クラッチ29’を高速で回転させ、駆動軸30を高速で回転させる。そのとき通常の引取り速度側の一方向クラッチ29がスリップし、チェーンホイール32、チェーン33、チェーンホイール34が高速度で回転し、速度可変引取りローラー4、4が高速度で回転する。往復動機器35が後退すると駆動軸30は再び通常の引取り速度で回転する。そのとき一方向クラッチ29’がスリップする。
【0035】
さらに図4において、往復動機器35とはストロークの異なる往復動機器39を併設しておけば、速度可変引取りローラー4、4による引取り距離を変えることができ、立体網状構造体1と被着体2間の非溶着部分13の長さを変えることが可能となる。
【0036】
上述の例では2種類の往復動機器35、39のストロークに応じて立体網状構造体1と被着体2間に長さの異なる非溶着部分13が形成される。
【0037】
さらにまた図4の一方向クラッチ29の代わりに、ラチェットとスプラインを用いて一方向のみの回転力を伝達してもよい。
【0038】
上記実施例で製造された複合体連続体Aを適宜長さに切り離して農業資材、透水マット、濾過材などに使用できる。その場合、非溶着部分13を切り離せば切断が容易である。
【0039】
なお、上記複合体連続体Aを表裏反転させ、立体網状構造体1のもう一方の面にも被着体2を溶着一体化し、立体網状構造体1の表裏両面に被着体2を溶着一体化した複合体連続体Aを形成してもよい。
【実施例】
【0040】
線条の直径1.2mm、厚さ2cm、幅25cm、1平方m当たり1500gのポリプロピレン製の立体網状構造体の表面に、ノズル温度220℃で溶融した直径1mmの溶融樹脂線条を30本垂涎させ、この上から厚さ1.2mm、幅32cmのポリプロピレン製の不織布を重ねながら、送り速度分速1mで一対の圧着ローラーで圧着しながら前進させ、複合体連続体とした。
【0041】
近赤外線ヒーターは、発光長260mm、200V、3000Wの近赤外ハロゲンヒーターを用い、立体網状構造体の表面から高さ30cmの位置に取付け、背面には集光用のステンレス製で断面が円弧状とした反射板を取付け、溶融樹脂線条が垂涎されるまでの立体網状構造体のごく表層部分を熱するようにした。
【0042】
上記複合体連続体から縦横25cmのサンプルを切り取り、定速引張試験機で分速1cmで剪断方向に引っ張った際の強度は、2500Nであった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】 本発明製造方法の一例を示す説明図である。
【図2】 本発明速度可変引取りローラーが通常の引取り速度で回転する例の説明図である。
【図3】 本発明速度可変引取りローラーが高速度の引取り速度で回転する例の説明図である。
【図4】 本発明速度可変引取りローラーの他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
A 複合体連続体
1 立体網状構造体
2 被着体
3 圧着ローラ
4 速度可変引取りローラー
6 ノズル
7 溶融樹脂線条
8 可動シャッター
9 固定仕切板
10 加熱装置
11 カバー
12 溶着部分
13 非溶着部分
14 チェーンホイール
15 チェーン
16 高速度用電磁クラッチ
17 高速度駆動用モータ
18 チェーンホイール
19 通常速度用電磁クラッチ
20 ウォームギヤ
21 通常速度駆動用モータ
22 平歯車
23 軸受け
27 チェーンホイール
28 チェーン
29 一方向クラッッチ
29’ 一方向クラッッチ
30 駆動軸
32 チェーンホイール
33 チェーン
34 チェーンホイール
35 往復動機器
37 連結アーム
39 往復動機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機の複数ノズルから押出された多数の溶融樹脂線条が移送中の立体網状構造体上に垂涎された直後に被着体が重ね合わされて圧着され、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体とが溶着一体化された複合体。
【請求項2】
前進装置の送り速度が間欠的に速くなされるとともに垂涎される溶融樹脂線条が一時的に遮断され、部分的に立体網状構造体と被着体とが溶着されず、立体網状構造体と被着体間に非溶着領域が設けられてなる請求項1記載の複合体。
【請求項3】
押出機の複数ノズルから多数の溶融樹脂線条を押出し、この溶融樹脂線条を移送中の立体網状構造体上に垂涎した直後に被着体を重ねて圧着前進し、溶融樹脂線条により立体網状構造体と被着体を溶着一体化する複合体の製造方法。
【請求項4】
立体網状構造体と被着体を溶着する直前に、加熱装置により立体網状構造体の表面を加熱する請求項3記載の複合体の製造方法。
【請求項5】
前進装置の送り速度を間欠的に速くするとともに垂涎する溶融樹脂線条を一時的に遮断し、部分的に立体網状構造体と被着体とが溶着しない非溶着領域を設ける請求項3または4記載の複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152779(P2011−152779A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31785(P2010−31785)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000191973)森村興産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】