説明

複合体の製造方法

【課題】複合化剤および有用な複合体形成物質を含有する複合体を製造するための従来公知の製造および/または精製法から1以上の段階を省略する方法を提供する。
【解決手段】有用な複合体形成物質およびシクロデキストリンを含む少なくとも1種の包接複合体を製造する方法が提供され、ここで、前記方法は、(a)前記シクロデキストリンを製造し、および(b)前記シクロデキストリンを前記の有用な複合体形成物質と混合する段階を含み、前記方法は、前記シクロデキストリンを精製することなく行われる。水、少なくとも1種のデンプン、少なくとも1種の酵素、および少なくとも1種の有用な複合体形成物質を含む包接複合体を製造するために有用な組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包接複合体または包接複合体の混合物を製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
複合化剤(complexing agent)および有用な複合体形成物質(complexant)を含有する複合体を製造することが望まれることが多い。このような複合体は、例えば、有用な複合体形成物質の位置を調節するために有用である。例えば、有用な複合体形成物質は、ある目的のために有用な複合体形成物質を放出することが望まれるまで、複合体の部分として維持されうる。
【0003】
過去においては、複合化剤が製造され、有用な複合体形成物質との複合体の形成の前に精製されてきた。このような精製は、有用な複合体形成物質との複合体の形成において複合化剤を使用する前に様々な段階を含む、様々な方法により行われてきた。例えば、G.Schmidは、Comprehensive Supramolecular Chemistry、第3巻、pp41〜56(1966)において、複合化剤として有用であるシクロデキストリンが製造され、精製されうる方法を教唆している。Schmidにより教唆されている製造法のいくつかは、シクロデキストリンおよび製造用複合体形成物質(manufacturing complexant)、例えば、エタノール、デカノール、またはシクロヘキサンからなる複合体の形成と、それに続く精製段階、例えば、脱複合体化して、製造用複合体形成物質を除去することを含む。他の公知精製段階は、例えば、固体複合化剤(単独または複合体の部分として)の流動媒体からの分離、結晶化、乾燥、他の精製段階、およびその組み合わせを含む。
【0004】
過去においては、複合化剤を製造し、精製した後、これを有用な複合体形成物質と混合して、複合体を形成した。例えば、米国特許第6,017,849号は、シクロデキストリンを製造し、次いでシクロデキストリンを精製し、次いで精製されたシクロデキストリンを使用して、シクロプロペンおよびその誘導体との複合体を形成することを教唆している。
【0005】
従来公知の製造法は、複合化剤および製造用複合体形成物質を含有する複合体の形成を含んでいた。このような複合体は、精製された複合化剤を製造する方法において中間物質として以外の目的で有用であるとは考えられていなかった。複合化剤が使用される前に、製造用複合体形成物質を複合体から除去することが必要であると考えられた。このような製造法は、製造用複合体形成物質の除去に加えて、精製された複合化剤を製造する目的で行われる様々な段階を含んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,017,849号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.Schmid、Comprehensive Supramolecular Chemistry、第3巻、pp41〜56(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複合化剤および有用な複合体形成物質を含有する複合体を製造する改良法を提供することが望ましく、この改良法は、かかる複合体を製造するための従来公知の製造および/または精製法から1以上の段階を省略する。例えば、複合化剤および有用な複合体形成物質を含有する複合体の製造方法であって、複合化剤の精製を省略する方法を提供することが望ましい。例えば、複合化剤および有用な複合体形成物質を含有する複合体の製造方法であって、次の段階の1以上を省略する方法を提供することが望ましい:製造用複合体形成物質の除去、固体複合化剤の流動媒体からの分離、複合化剤および製造用複合体形成物質を含有する固体複合体の流動媒体からの分離、複合化剤の結晶化、複合化剤の乾燥、複合化剤精製のための他の段階、およびその組み合わせ。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様において、有用な複合体形成物質およびシクロデキストリンを含む少なくとも1種の包接複合体を製造する方法が提供され、前記方法は
(a)前記シクロデキストリンを製造する段階、および
(b)前記シクロデキストリンを前記の有用な複合体形成物質と混合する段階を含み、前記方法は、前記シクロデキストリンを精製することなく行われる
【0010】
本発明の第二の態様において、包接複合体を製造するために有用な組成物が提供され、前記組成物は、水、少なくとも1種のデンプン、少なくとも1種の酵素、および少なくとも1種の有用な複合体形成物質を含み、前記デンプンおよび前記酵素はシクロデキストリンを形成でき、当該シクロデキストリンは、前記シクロデキストリンおよび前記の有用な複合体形成物質を含む包接複合体を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、包接複合体または包接複合体の混合物を製造する方法である。包接複合体は、複合化剤および複合体形成物質を含有する組成物である。複合化剤は、空洞を提供する化合物であり、および複合体形成物質は、その分子が部分的または完全に前記空洞内に配置される化合物である。
【0012】
複合体形成物質分子の全部または複合体形成物質分子の一部は、複合化剤により提供される空洞中に適合するので、複合体形成物質は包接複合体に含まれる。複合化剤と複合体形成物質の間に共有結合はない。いくつかの場合において、複合体形成物質も複合化剤もどちらも、完全イオン電荷を有する部分を含有しないが、複合体形成物質および複合化剤の一方または両方は、その分子内に1以上の共有結合された極性基を含有してもよい。複合体形成物質は、例えば、複合体形成物質および複合化剤間に作用する次の力のいずれか1種または任意の組み合わせにより、包接化合物中の適所に保持され得る:分子の物理的適合性、疎水性相互作用、双極子相互作用(例えば、水素結合を包含する)、誘発性双極子相互作用、ファンデアワールス力、および他の力。
【0013】
本発明の実施において用いられる複合化剤はシクロデキストリンである。シクロデキストリンは、その分子が6以上のグルコース単位から作られる構造を有する円錐形状の構造である化合物である。本明細書において用いられる場合、シクロデキストリンがあるグルコース単位から作られるという記載は、あるグルコース分子を反応させることにより実際に製造されうるかどうかによらず、シクロデキストリン分子の構造の説明として理解されるべきである。シクロデキストリンは、32ものグルコース単位から製造することができる。6、7、および8のグルコース単位から製造されるシクロデキストリンは、それぞれ、アルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、およびガンマ−シクロデキストリンとして公知である。いくつかの実施形態において、ちょうど1種のアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、またはガンマ−シクロデキストリンが使用される。いくつかの実施形態において、アルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、およびガンマ−シクロデキストリンの2種以上の混合物が使用される。独立して、いくつかの実施形態において、アルファ−シクロデキストリン以外の複合化剤は使用されない。
【0014】
シクロデキストリン中のグルコース単位の数に関係なく、「シクロデキストリン」と呼ばれる化合物の種類は、本発明においては、シクロデキストリン分子の誘導体も包含すると認められる。すなわち、「シクロデキストリン」なる用語は、本発明においては、6以上のグルコース単位から製造される構造を有する円錐形構造である分子に適用され、かかる分子の誘導体が複合化剤として機能できる場合には、かかる分子の誘導体にも適用される。いくつかの好適な誘導体は、例えば、アルキル基(例えば、メチル基)をシクロデキストリンに加えることにより形成される(または形成され得る)構造を有する分子である。いくつかの他の誘導体は、例えば、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシプロピル基)をシクロデキストリンに加えることにより形成される(または形成され得る)構造を有する分子である。「シクロデキストリン」とみなされる、いくつかの誘導体は、例えば、メチル−ベータ−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−アルファ−シクロデキストリンである。
【0015】
好適で有用な複合体形成物質は様々な化合物を含む。いくつかの好適で有用な複合体形成物質は、例えば、薬剤、フレーバー、臭気を有する化合物、少なくとも1つの疎水性基を含有する化合物、およびエチレン性不飽和化合物を包含する。好適で有用な複合体形成物質は、1種の化合物であってもよいし、あるいは好適で有用な複合体形成物質の混合物であってもよい。
【0016】
いくつかの好適で有用な複合体形成物質は、例えば、揮発性化合物(すなわち、1気圧の圧力で50℃以下の沸点を有する化合物)である。いくつかの実施形態において、1気圧の圧力で、25℃以下;または15℃以下の沸点を有する有用な複合体形成物質が使用される。独立して、いくつかの実施形態において、1気圧の圧力で、−100℃以上;または−50℃以上;または−25℃以上;または0℃以上の沸点を有する有用な複合体形成物質が使用される。
【0017】
少なくとも1つの疎水性基を有する、いくつかの好適で有用な複合体形成物質は、例えば、会合型増粘剤(associative thickener)である。
【0018】
いくつかの好適で有用な複合体形成物質は、例えば、水中での溶解度が低い化合物(すなわち、25℃で、水100グラム中、化合物5グラム以下の水中溶解度を有する化合物)である。いくつかの好適で有用な複合体形成物質は、例えば、25℃で水100グラムにつき、3グラム以下、または1グラム以下、または0.3グラム以下、または0.1グラム以下、または0.03グラム以下、または0.01グラム以下の水中溶解度を有する。
【0019】
エチレン性不飽和である好適で有用な複合体形成物質のうち、いくつかの例は、アクリレートまたはメタクリレートエステル、例えば、エステル基が8以上の炭素原子、または10以上の炭素原子を有する置換または非置換炭化水素基を有する、アクリレートまたはメタクリレートエステルである。
【0020】
エチレン性不飽和である好適で有用な複合体形成物質のうち、いくつかの例はシクロプロペンである。本発明において用いられる場合、「シクロプロペン」は式
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、各R、R、R、およびRは独立して、Hおよび式:
−(L)−Z
(式中、nは0〜12の整数である)
の化学基からなる群から選択される)
を有する任意の化合物である。各Lは二価の基である。好適なL基には、例えば、H、B、C、N、O、P、S、Si、またはその混合物から選択される1以上の原子を含有する基が挙げられる。L基内の原子は、単結合、二重結合、三重結合、またはその混合物により互いに結合されることができる。各L基は、線状、分岐、環状、またはその組み合わせであってよい。R基のいずれか1つ(すなわち、R、R、R、およびRのいずれか1つ)において、ヘテロ原子(すなわち、HでもCでもない原子)の合計数は0から6である。独立して、R基のいずれか1つにおいて、非水素原子の合計数は50以下である。各Zは一価の基である。各Zは独立して、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロレート、ブロメート、イオデート、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ、および化学基G(ここで、Gは3〜14員環系である)から独立して選択される。
【0023】
、R、R、およびRの少なくとも1つが水素でなく、および1より多いL基を有する実施形態において、その特定のR、R、R、またはR基内のL基は、その同じR、R、R、またはR基内の他のL基と同じであってもよく、またはその特定のR、R、R、またはR基内の任意の数のL基は、その同じR、R、R、またはR基内の他のL基と異なっていてもよい。
【0024】
、R、R、およびRの少なくとも1つが1より多いZ基を含有する実施形態において、R、R、R、またはR基内のZ基は、そのR、R、R、またはR基内の他のZ基と同じであってもよく、もしくはそのR、R、R、またはR基内の任意の数のZ基は、そのR、R、R、またはR基内の他のZ基と異なっていてもよい。
【0025】
、R、R、およびR基は好適な基から独立して選択される。R、R、R、およびR基は互いに同じであってもよく、またはそのうちの任意の数が他のものと異なっていてもよい。R、R、R、およびRの1以上としての使用に適した基には、例えば、脂肪族基、脂肪族オキシ基、アルキルホスホナート基、脂環式基、シクロアルキルスルホニル基、シクロアルキルアミノ基、複素環式基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シリル基、他の基、ならびにその混合物および組み合わせがある。R、R、R、およびRの1以上としての使用に好適な基は、置換されていても、非置換であってもよい。独立して、R、R、R、およびRの1以上としての使用に適した基は、シクロプロペン環に直接結合していてもよく、または介在基、例えば、ヘテロ原子含有基を介してシクロプロペン環に結合していてもよい。
【0026】
好適なR、R、R、およびR基には、例えば、脂肪族基が挙げられる。いくつかの好適な脂肪族基は、例えば、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を包含する。好適な脂肪族基は、線状、分岐、環状、またはその組み合わせであってよい。独立して、好適な脂肪族基は、置換であっても、非置換であってもよい。
【0027】
本明細書において用いられる場合、興味のある化学基の1以上の水素原子が置換基により置換されているならば、興味のある化学基は「置換されている」と言われる。このような置換された基は、これに限定されないが、興味のある化学基の非置換形態を形成し、次に置換を行うことを含む任意の方法により製造できる。好適な置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アセチルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、カルボキシ、ハロ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、およびその組み合わせが挙げられる。もし存在するならば、単独または別の好適な置換基との組み合わせで存在しうる追加の好適な置換基は
−(L)−Z
(式中、mは0〜8であり、LおよびZは前記定義のとおりである)
である。1より多い置換基が興味のある1つの化学基上に存在するならば、各置換基は異なる水素原子と置換してもよいし、もしくはある置換基は別の置換基と結合することができ、これが今度は興味のある化学基と結合するか、またはその組み合わせであってよい。
【0028】
好適なR、R、R、およびR基には、例えば、置換および非置換脂肪族オキシ基、例えば、アルケノキシ、アルコキシ、アルキノキシ、およびアルコキシカルボニルオキシがある。
【0029】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、置換および非置換アルキルホスホナト(alkylphosphonato)、置換および非置換アルキルホスファト(alkylphosphato)、置換および非置換アルキルアミノ、置換および非置換アルキルスルホニル、置換および非置換アルキルカルボニル、ならびに、置換および非置換アルキルアミノスルホニル、例えば、アルキルホスホナト(alkylphosphonato)、ジアルキルホスファト(dialkylphosphato)、ジアルキルチオホスファト(dialkylthiophosphato)、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニル、およびジアルキルアミノスルホニルがある。
【0030】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、置換および非置換シクロアルキルスルホニル基およびシクロアルキルアミノ基、例えば、ジシクロアルキルアミノスルホニルおよびジシクロアルキルアミノがある。
【0031】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、置換および非置換ヘテロサイクリル基(すなわち、環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族または非芳香族環状基)がある。
【0032】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基、またはスルホニル基を介してシクロプロペン化合物に結合した、置換および非置換ヘテロサイクリル基があり;かかるR、R、R、およびR基の例は、ヘテロサイクリルオキシ、ヘテロサイクリルカルボニル、ジヘテロサイクリルアミノ、およびジヘテロサイクリルアミノスルホニルである。
【0033】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、置換および非置換基アリール基がある。好適な置換基は、前記のものである。いくつかの実施形態において、1以上の置換アリール基が用いられ、ここで、少なくとも1つの置換基は、アルケニル、アルキル、アルキニル、アセチルアミノ、アルコキシアルコキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ、アリールアミノ、ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル、スルホニルアルキル、アルキルチオ、チオアルキル、アリールアミノスルホニル、およびハロアルキルチオの1以上である。
【0034】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、シクロプロペン化合物と介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基、チオアルキル基、またはアミノスルホニル基を介して結合した置換および非置換複素環基があり;かかるR、R、R、およびR基の例は、ジヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールチオアルキル、およびジヘテロアリールアミノスルホニルである。
【0035】
また、好適なR、R、R、およびR基には、例えば、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロレート(chlorato)、ブロメート(bromato)、イオデート(iodato)、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ;アセトキシ、カルボエトキシ、シアナト、ニトラト(nitrato)、ニトリト(nitrito)、パークロラート(perchlorato)、アレニル;ブチルメルカプト、ジエチルホスホナト(diethylphosphonato)、ジメチルフェニルシリル、イソキノリル、メルカプト、ナフチル、フェノキシ、フェニル、ピペリジノ、ピリジル、キノリル、トリエチルシリル、トリメチルシリル;およびその置換類似体がある。
【0036】
本発明において用いられる場合、化学基Gは3〜14員環系である。化学基Gとして好適な環系は、置換であっても、または非置換であってもよく;これらは芳香族(例えば、フェニルおよびナフチルを包含する)または脂肪族(不飽和脂肪族、部分飽和脂肪族、飽和脂肪族)であってよく;およびこれらは炭素環またはヘテロ環であってよい。複素環式G基において、いくつかの好適なヘテロ原子は、例えば、窒素、硫黄、酸素、およびその組み合わせである。化学基Gとして好適な環系は、単環式、二環式、三環式、多環式、スピロ、または縮合であってよく;二環式、三環式、または縮合である好適な化学基G環系において、1つの化学基G中の様々な環は全て同じ種類であってもよいし、または2以上の種類のものであってもよい(例えば、芳香族環は脂肪族環と縮合していてもよい)。
【0037】
いくつかの実施形態において、Gは、例えば、置換または非置換シクロプロパン、シクロプロペン、エポキシド、またはアジリジン環などの飽和または不飽和3員環を含有する環系である。
【0038】
いくつかの実施形態において、Gは4員複素環を含有する環系であり;かかる実施形態のいくつかにおいて、複素環はちょうど1つのヘテロ原子を含有する。独立して、いくつかの実施形態において、Gは5以上の環メンバーを有する複素環を含有する環系であり;かかる実施形態のいくつかにおいて、複素環は1〜4個のヘテロ原子を含有する。独立して、いくつかの実施形態において、G中の環は非置換であり;他の実施形態において、環系は1〜5個の置換基を含有し;Gが置換基を含有する他の実施形態において、各置換基は独立して、前記置換基から選択される。Gが炭素環系である実施形態も好適である。
【0039】
いくつかの実施形態において、各Gは独立して、置換または非置換フェニル、ピリジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、ピロリル、フリル、チオフェニル、トリアゾリル、ピラゾリル、1,3−ジオキソラニル、またはモルホリニルである。これらの実施形態には、例えば、Gが非置換または置換フェニル、シクロペンチル、シクロヘプチル、またはシクロヘキシルである実施形態が含まれる。これらの実施形態のいくつかにおいては、Gは、シクロペンチル、シクロヘプチル、シクロヘキシル、フェニル、または置換フェニルである。Gが置換フェニルである実施形態には、例えば、1、2、または3個の置換基がある実施形態がある。独立して、Gが置換フェニルである実施形態には、例えば、置換基が、メチル、メトキシ、およびハロから独立して選択される実施形態がある。
【0040】
およびR基が一体化された一つの基であって、二重結合によりシクロプロペン環の3位の炭素原子に結合した基になる実施形態も想定される。かかる化合物のいくつかは、米国特許公開番号2005/0288189において記載される。
【0041】
いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの1以上が水素である、1種以上のシクロプロペンが使用される。いくつかの実施形態において、RもしくはRまたはRおよびRの両方は水素である。独立して、いくつかの実施形態において、RもしくはRまたはRおよびRの両方は水素である。いくつかの実施形態において、R、R、およびRは水素である。
【0042】
いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの1以上は、二重結合を有さない構造である。独立して、いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの1以上は三重結合を有さない構造である。独立して、いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの1以上は、ハロゲン原子置換基を有さない構造である。独立して、いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの1以上は、イオン性である置換基を有さない構造である。
【0043】
いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRの1以上は水素または(C−C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRのそれぞれは水素または(C−C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRのそれぞれは水素または(C−C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R、R、R、およびRのそれぞれは水素またはメチルである。いくつかの実施形態において、Rは(C−C)アルキルであり、並びにR、R、およびRのそれぞれは水素である。いくつかの実施形態において、Rはメチルであり、R、R、およびRのそれぞれは水素であり、そのシクロプロペンは本明細書においては「1−MCP」と呼ばれる。
【0044】
本発明に適用可能なシクロプロペンは任意の方法により製造できる。シクロプロペンのいくつかの好適な製造方法は、米国特許第5,518,988号および第6,017,849号ならびに米国特許公開番号2005/0065033において開示されている方法である。
【0045】
いくつかの実施形態(本明細書においては、「溶液実施形態」と呼ばれる)において、シクロデキストリンは溶液中で起こる化学反応(すなわち、1以上の反応物質が溶媒中に溶解している)により製造される。いくつかの溶液実施形態において、シクロデキストリンも同じ溶液中の溶質である。独立して、いくつかの溶液実施形態において化学反応は、水溶液中で起こる。水溶液は、溶媒が、溶媒の重量に基づいて50重量%以上の水である溶液である。いくつかの水溶液において、水の量は、溶媒の重量基準で、75重量%以上;または90重量%以上;または95重量%以上である。
【0046】
本発明の実施において、シクロデキストリンは、有用な複合体形成物質と混合される。いくつかの実施形態において、シクロデキストリンが製造される間に、シクロデキストリンが製造される同じ容器中に、1以上の有用な複合体形成物質が存在し得ることが想定される。1以上の有用な複合体形成物質が、シクロデキストリンが製造された後に容器に添加される実施形態も想定される。その組み合わせ、例えば、シクロデキストリンが製造される間に一部の有用な複合体形成物質が存在し、かつシクロデキストリンが製造された後にも一部の有用な複合体形成物質が添加される実施形態もさらに想定される。さらに、かかる方法の他の変法、例えば、シクロデキストリンを製造するために必要な1以上の成分(例えば、1以上の反応物質および/または1以上の触媒)が有用な複合体形成物質の一部または全部と同時に容器に添加される実施形態も想定される。
【0047】
本発明の実施において、シクロデキストリンおよび有用な複合体形成物質が混合される場合、本発明の包接複合体が形成される。いくつかの実施形態において、同様に包接複合体の一部ではない、有用な複合体形成物質のいくつかの分子が存在しても、包接複合体の一部にならないシクロデキストリンのいくつかの分子が存在し得ることも意図される。いくつかの実施形態において、同様に包接複合体の一部ではないシクロデキストリンのいくつかの分子が存在するとしても、包接複合体の一部にならない有用な複合体形成物質のいくつかの分子が存在しうることも想定される。
【0048】
従来公知の方法の実施においては、シクロデキストリンの精製のための手順が行われた。すなわち、かかる方法は、包接複合体の一部でない、精製されたシクロデキストリンの製造を含んでいた。シクロデキストリンの精製手順は、シクロデキストリンが製造される場合に、シクロデキストリンを含む同じ容器中に存在する他の物質からシクロデキストリンを分離するために行われる任意の手順である。少量の溶媒の除去は、シクロデキストリンの精製とみなされない。
【0049】
シクロデキストリンの精製のための手順と見なされる、従来公知の方法における1つの公知手順は、シクロデキストリンおよび製造用複合体形成物質を含有する包接複合体である、製造複合体を形成する手順である。製造用複合体形成物質は、シクロデキストリンの製造および/または精製の目的で使用される複合体形成物質である。製造用複合体形成物質は、製造複合体中に含まれ、および製造用複合体形成物質は後に除去される。製造用複合体形成物質の除去は、シクロデキストリンの精製手順の一部として行われ;製造用複合体形成物質の除去は、シクロデキストリンの製造以外のある用途に製造用複合体形成物質を用いるために行われない。
【0050】
いくつかの製造用複合体形成物質は、例えば、シクロヘキサンまたは他の非置換シクロアルカンである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、非置換アルカンである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、およびその混合物である。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、ブロモベンゼンである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、ハロゲン化炭化水素である。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、ベンゼン、トルエン、およびアルファ−ナフトールである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、アリール化合物およびアルカリール化合物である。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、エタノール、1−ブタノール、1−オクタノール、および1−デカノールである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、ヒドロキシ置換アルカンである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、ラウリル硫酸ナトリウムである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、アニオン性界面活性剤である。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、界面活性剤である。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、3または4個の炭素原子を有するケトンである。製造用複合体形成物質のいくつかの他の例は、ケトンである。製造用複合体形成物質の別の例は、二硫化炭素である。製造用複合体形成物質の混合物も製造用複合体形成物質とみなされる。
【0051】
シクロデキストリンの精製手順と見なされる別の手順は、まず製造複合体を製造し、次いで(場合により介在する段階の後)製造用複合体形成物質を除去する手順である。介在する段階は、もし使用されるならば、例えば、以下の任意の一つまたは組み合わせを含みうる:溶媒からの製造複合体の分離(例えば、沈殿すること、または沈殿させることによる);製造複合体の洗浄;製造複合体の乾燥;または製造複合体の結晶化。かかる介在する段階のそれぞれ、およびかかる中間段階の任意の組み合わせは、シクロデキストリンの精製手順と見なされる。
【0052】
製造複合体からの製造用複合体形成物質の除去も、シクロデキストリンの精製手順と見なされる。かかる手順の一つは、例えば、製造複合体からの製造用複合体形成物質を抽出するための蒸気の使用である。
【0053】
独立して、シクロデキストリンの精製手順であると見なされるいくつかの手順は、例えば、純粋なシクロデキストリン(すなわち、包接複合体の一部でないシクロデキストリン)の相対濃度を増加させる手順を包含する。かかる手順は、例えば、次のいずれか、または組み合わせを包含する:溶媒からの純粋なシクロデキストリンの分離;純粋なシクロデキストリンの乾燥;純粋なシクロデキストリンの蒸留;または純粋なシクロデキストリンの結晶化。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、水、少なくとも1種のデンプン、少なくとも1種の酵素、および少なくとも1種の有用な複合体形成物質を含有する予備混合物が存在する。かかる予備混合物中の少なくとも1種のデンプンおよび少なくとも1種の酵素は、反応してシクロデキストリンを形成することができ、それは予備混合物中の少なくとも1種の有用な複合体形成物質と包接複合体を形成できる。予備混合物は、デンプンと酵素間の反応により製造されるシクロデキストリンを含んでもよいし、または含まなくてもよい。独立して、予備混合物は、1以上の追加の成分を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0055】
本発明の実施において、シクロデキストリンを「製造する」ことは、本明細書においては、デンプン分子および酵素を関与させる化学反応であって、シクロデキストリン分子の円錐形構造を形成するものとして定義される。シクロデキストリン分子を関与させるが、円錐形構造を変更しない、場合により行うことができる他の化学反応は、本明細書においては、シクロデキストリンを「製造する」とは見なされない。例えば、シクロデキストリン分子で開始し、ペンダント化学基をそのシクロデキストリン分子に加えて、修飾されたシクロデキストリン分子を形成することを含むプロセスは、本明細書において、修飾シクロデキストリンを「製造する」プロセスであると見なされない。
【0056】
例えば、本発明に含まれないプロセスは次の通りである。シクロデキストリンは、デンプンと酵素を反応させることにより製造され、結果として得られるシクロデキストリンは次に精製される。次いで、メチル基を付加してメチル−シクロデキストリンを形成する化学反応にそのシクロデキストリンを付し、これを次に(さらに精製することなく)有用な複合体形成物質と混合して、包接複合体を形成する。シクロデキストリンは、これが製造された後(すなわち、その円錐形構造が形成された後)に精製されるので、かかるプロセスは、本明細書においては本発明に含まれないと見なされる。
【0057】
方法は、シクロデキストリンの精製のためのいずれか1つの手順を省略するか、または方法がシクロデキストリンの精製のための手順の任意の組み合わせを省略するならば、方法がシクロデキストリンの精製なしに行われると見なされる。シクロデキストリンの精製のための任意の手順なしで行われる本発明の方法も想定される。
【0058】
例えば、本発明のいくつかの方法は、シクロデキストリンおよび製造複合体形成物質を含有する包接複合体の形成を省略する。独立して、本発明のいくつかの方法は、包接複合体から製造用複合体形成物質の除去を省略する。例えば、本発明のいくつかの方法は、製造複合体を沸騰水に付すことを省略する。例えば、本発明のいくつかの方法は、製造用複合体形成物質を除去する条件下で製造複合体を蒸気にさらすことを省略する。たとえば、本発明のいくつかの方法は、製造複合体を溶媒抽出に付して、製造用複合体形成物質を除去することを省略する。前記段階の任意の組み合わせを省略する本発明の方法も想定される。
【0059】
独立して、本発明のいくつかの実施形態において、行われる方法は、シクロデキストリンを次の一連の段階に付すことを省略する:(A)シクロデキストリンおよび第一複合体形成物質を有する包接複合体を含有する組成物の形成、(B)続いて、第一複合体形成物質の前記組成物からの計画的除去、(C)続いて、そのシクロデキストリンを用いた新規組成物の形成(ここで、新規組成物はシクロデキストリンおよび第二の複合体形成物質を有する新規包接複合体を含む)。本発明のいくつかの実施形態において、他の段階が段階(A)、(B)、および(C)の前;(A)、(B)、および(C)の任意の組の間;(A)、(B)、および(C)の後;またはその任意の組み合わせで行われるとしても、一連の段階(A)、(B)、および(C)は行われないことが想定される。
【0060】
独立して、本発明のいくつかの方法は、包接複合体中に含まれないシクロデキストリンを溶媒から分離することを省略する。独立して、本発明のいくつかの方法は、包接複合体中に含まれないシクロデキストリンを洗浄することを省略する。独立して、本発明のいくつかの方法は、包接複合体中に含まれないシクロデキストリンを乾燥することを省略する。前記段階の任意の組み合わせを省略する本発明の方法も想定される。
【0061】
本発明のいくつかの溶液実施形態において、包接複合体は溶媒中に可溶性である。かかる実施形態のいくつかにおいて、包接複合体が溶解している溶液をそのまま(すなわち、精製せずに)次の目的のために使用することができる。
【0062】
独立して、本発明の包接複合体が溶媒中に可溶性であるいくつかの溶液実施形態において、包接複合体が溶解している溶液を1以上の精製プロセスに付して、包接複合体が、溶液中のその濃度よりも高い濃度で存在する組成物を製造することができる。例えば、包接複合体を除去し、場合により乾燥することができるか;または包接複合体以外のいくつかの物質を溶液から除去することができるか;またはいくらかの溶媒を、例えば、蒸発化により除去することができるか;またはその組み合わせを行うことができる。
【0063】
本発明の包接複合体が溶媒中に難溶性である溶液実施形態も想定される。すなわち、難溶性包接複合体は、25℃で、溶媒100グラムにつき5グラム以下、または1グラム以下;または0.3グラム以下;または0.1グラム以下;または0.03グラム以下;または0.01グラム以下の溶媒中溶解度を有する。
【0064】
本発明のいくつかのシクロデキストリン実施形態において、シクロデキストリンはデンプン(場合により予備液化される)およびシクロデキストリン産生酵素を必要とする化学反応により製造される。ある公知のシクロデキストリン産生酵素は、例えば、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTase)である。
【0065】
シクロデキストリンの製造に好適なデンプンは、例えば、穀物または塊茎起源由来の加工または未加工デンプン、およびそのアミロースまたはアミロペクチンフラクションを含む。好適なデンプンは、例えば、トウモロコシ(corn)、ジャガイモ、ワクシーメイズ(waxy maize)、他の植物、またはその混合物から製造することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、デンプンおよびシクロデキストリン産生酵素は、水溶液中に溶解され、ここでこれらは相互作用して、シクロデキストリンを形成する。かかる実施形態のいくつかにおいて、シクロデキストリンが有用な複合体形成物質と相互作用した場合に形成する包接複合体は、水溶液中に可溶性のままである。
【0067】
いくつかのシクロデキストリン実施形態(本明細書において、「CD−P実施形態」と呼ばれる)において、デンプンおよびシクロデキストリン産生酵素は、これらが相互作用して、シクロデキストリンを形成する場合に水溶液中に溶解し、シクロデキストリンが有用な複合体形成物質と相互作用する場合に形成する包接複合体は、水溶液中に難溶性であり、沈殿する。CD−P実施形態の実施において、かかる包接複合体は沈殿するであろうことが想定される。いくつかのCD−P実施形態において、包接複合体の沈殿によるシクロデキストリン生成物の除去は、反応をさらにシクロデキストリンを産生する方向に促進し、これにより、シクロデキストリンの収率を増加させるので、包接複合体の沈殿は望ましい。いくつかのCD−P実施形態において、酵素とデンプンとの相互作用は、シクロデキストリンの混合物(例えば、アルファ−、ベータ−、およびガンマ−シクロデキストリンの混合物)を製造できる。これらのシクロデキストリンの特定の1種との包接複合体を、他のシクロデキストリンとの複合体よりも多く形成する傾向がある有用な複合体形成物質が用いられるならば、沈殿した包接複合体はその特定のシクロデキストリンを含有する複合体を多く含むであろう。存在する他の存在シクロデキストリンよりも存在する1種のシクロデキストリンとの包接複合体を形成する傾向を有さない有用な複合体形成物質が使用されるCD−P実施形態も想定される。
【0068】
独立して、いくつかのCD−P実施形態において、沈殿した包接複合体は、水溶液から単離され、および任意に(場合により水で)洗浄され、および任意に乾燥される。
【0069】
デンプンおよびシクロデキストリン産生酵素が水溶液中に溶解しているシクロデキストリン実施形態(「CD−S」実施形態)も想定され、ここでこれらは相互作用してシクロデキストリンを形成し、シクロデキストリンが有用な複合体形成物質と相互作用する場合に形成する包接複合体は、水溶液中で良好な溶解性を有する。CD−P実施形態と同様に、いくつかのCD−S実施形態において、可溶性包接複合体の産生は、シクロデキストリンを産生する反応を促進するのに役立つ。ある種類のシクロデキストリンを他の種類のシクロデキストリンよりも優先して産生することを増進する傾向があるCD−S実施形態が想定される。ある種類のシクロデキストリンを他の種類のシクロデキストリンよりも産生することを増進しないCD−S実施形態も想定される。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1以上の追加の任意の段階を含む。例えば、いくつかのシクロデキストリン実施形態は、デンプンの液化を含む。すなわち、1成分としてデンプンおよび別の成分としてシクロデキストリン産生酵素を関与させる、いくつかのシクロデキストリン実施形態において、デンプンはシクロデキストリン産生酵素と混合される前に液化される。デンプンは、熱、機械的処理、酸処理、デンプンを液化させる1以上の酵素への暴露、またはその組み合わせのいずれかにより液化される。デンプンの液化は部分的加水分解プロセスである場合がある。いくつかの実施形態において、デンプンの液化は、デンプンを1以上のアルファ−アミラーゼと混合することにより行われる。いくつかの実施形態において、液化前に、アミロペクチンが多いデンプンが選択される。いくつかの実施形態において、デンプンの液化は、水溶液中で行われ、次いで、かかる実施形態のいくつかにおいて、シクロデキストリン産生酵素および有用な複合体形成物質が同じ水溶液に(任意の順序で逐次的に、または同時に、またはその組み合わせで)添加される。
【0071】
本発明の実施において、複合化剤を製造するための成分は、意図される有用な複合体形成物質との使用について適切であるように選択されることが想定される。すなわち、特に有用な複合体形成物質を使用することが意図され、および特定の有用な複合体形成物質が特定の複合化剤と包接複合体を容易に形成することが知られているならば、その特定の複合化剤を産生することが知られている成分が選択されることが想定される。
【0072】
本明細書において、「感知できない量」の特定の包接複合体が使用されると記載されている場合、本発明の範囲内に含まれる、その特定の包接複合体の包接複合体(複数種)に対するモル比は、0.1以下;または0.01以下;または0.001以下;または0であることを意味する。
【0073】
複合体形成物質が有用な複合体形成物質以外の複合体形成物質である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0074】
独立して、複合体形成物質がシクロヘキサンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質が非置換シクロアルカンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質が非置換アルカンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0075】
独立して、複合体形成物質がテトラクロロエタンまたはトリクロロエチレンまたはその混合物である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がブロモベンゼンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がハロゲン化炭化水素である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0076】
独立して、複合体形成物質がベンゼンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がトルエンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がアルファ−ナフトールである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がアリール化合物またはアルカリール化合物またはその混合物である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0077】
独立して、複合体形成物質がエタノールである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質が1−ブタノールである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質が1−オクタノールである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質が1−デカノールである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がヒドロキシ置換アルカンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0078】
独立して、複合体形成物質がラウリル硫酸ナトリウムである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がアニオン性界面活性剤である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質が界面活性剤である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0079】
独立して、複合体形成物質が3または4個の炭素原子を有するケトンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。独立して、複合体形成物質がケトンである、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0080】
独立して、複合体形成物質が二硫化炭素である、感知できない量の包接複合体が製造される実施形態が想定される。
【0081】
いくつかの実施形態(本明細書において、「放出実施形態」と呼ばれる)において、本発明の包接複合体は、有用な複合体形成物質の有用な性質(単一または複数)を利用する状況において、有用な複合体形成物質を放出する方法で使用される。例えば、いくつかの放出実施形態において、有用な複合体形成物質は、薬剤、フレーバー、臭気を有する化合物、少なくとも1つの疎水性基を含有する化合物、エチレン性不飽和化合物、およびその組み合わせから選択される。いくつかの放出実施形態において、本発明の包接複合体は、有用な複合体形成物質の放出前に乾燥される。
【0082】
独立して、いくつかの放出実施形態において、有用な複合体形成物質はシクロプロペンである。様々なシクロプロペンが、植物または植物の部分を処理するために使用される場合に有益な効果を有することが知られている。例えば、シクロプロペンを含有する乾燥包接複合体を水に添加することができ;水を撹拌するか、泡立てるか、または他の方法で処理して、植物または植物の部分に近接して、任意に閉鎖された体積中でシクロプロペンを放出させることができる。別の例として、シクロプロペンを含有する包接複合体を水に、任意に他の成分、例えば、アジュバントとともに添加することができ、かくして形成された組成物を、例えば、噴霧または浸漬により、植物または植物の部分と接触させることができる。
【0083】
いくつかの放出実施形態において、一旦本発明の包接複合体が製造されると、有用な複合体形成物質が使用されるまで、実質的な量の複合体形成物質は放出されない。すなわち、このような実施形態において、有用な複合体形成物質が使用されるまで包接複合体中に残存する有用な複合体形成物質の量は、包接複合体の重量基準で、50重量%以上;または75重量%以上;または90重量%以上;または99重量%以上である。
【0084】
例えば、有用な複合体形成物質がシクロプロペン(すなわち、シクロプロペンまたはシクロプロペンの混合物)である、いくつかの放出実施形態が想定される。かかる実施形態のいくつかにおいて、例えば、シクロプロペンの意図される使用は、シクロプロペンを植物または植物の部分と接触させることである。このような実施形態において、包接複合体がシクロプロペンにより接触されることが意図される植物または植物の部分と接触するか、または接近するまで、実質的な量のシクロプロペンが包接複合体から放出されないことが想定される。
【0085】
本明細書および請求の範囲の目的に関して、本書において記載される範囲および比の境界は、組み合わせることができる。例えば、特定のパラメータについて60から120および80から110の範囲が記載されているならば、60から110および80から120の範囲も想定されると理解される。さらなる独立した例として、特定のパラメータが1、2、および3の好適な最小値を有することが開示されているならば、およびこのパラメータが9および10の好適な最大値を有することが開示されているならば、次の範囲の全てが想定される:1から9、1から10、2から9、2から10、3から9および3から10。
【実施例】
【0086】
比較例C1
精製シクロデキストリン
G.SchmidによりComprehensive Supramolecular Chemistry、第3巻、41〜56ページ(1966)において教唆されている方法を用いて、次の段階を行うことにより、精製されたアルファ−シクロデキストリンを製造することができた:
(i)ジャガイモデンプンまたはコーンスターチをアルファ−アミラーゼで液化して、1−デカノールと混合された水である溶媒を用いて、30重量%の液化デンプンの溶媒中溶液を製造することができた。
(ii)Kebsiella oxytocaからの酵素アルファ−CGTaseを溶液に添加することができた。
(iii)シクロデキストリンおよびデカノールの、結果としての沈殿した包接複合体を、溶液から除去し、洗浄し、乾燥して、包接複合体の粉末を形成することができた。
(iv)1−デカノールは蒸気蒸留または抽出により包接複合体から除去することができた。
(v)得られた混合物を真空蒸留により濃縮し、活性炭で処理し、結晶化させ、濾過し、乾燥させて、純粋なシクロデキストリンの粉末を形成することができた。
【0087】
比較例C2
包接複合体を形成するための比較法
米国特許第6,017,849号において教唆される方法を用いて、包接複合体は次の段階を行うことにより形成できた:
(vi)比較例C1においてと同様に製造された2.9kgの純粋なシクロデキストリン粉末を0.575リットルの緩衝液(0.2M酢酸ナトリウムおよび0.2M酢酸の混合物(pH3〜5))中に溶解させることができた。
(vii)気体形態における1−MCPを緩衝液に吹き込んで、包接複合体を製造させることができた、これは沈殿する。
(viii)包接複合体を真空濾過により緩衝液から分離することができた。
(xi)包接複合体を次に乾燥して、乾燥粉末を形成することができた。
【0088】
実施例3
包接複合体の形成
包接複合体を次の段階を行うことにより形成できた:
(1)液化ジャガイモデンプンまたはコーンスターチの溶液を、デカノールを使用しなかった以外は比較例C1の段階(i)と類似した方法を用い、水中アルファ−アミラーゼによる液化により製造することができた。
(2)アルファ−CGTaseを溶液に添加することができた。
(3)気体状1−MCPをバブリングにより溶液に添加して、シクロデキストリンおよび1−MCPの沈殿した包接複合体を製造することができた。
(4)結果としての沈殿した包接複合体を溶液から取り出し、洗浄し、乾燥して、包接複合体の粉末を形成することができた。
実施例3の方法は、比較例C1およびC2の方法よりも少ない段階を行いつつ、包接複合体の純粋な乾燥粉末を製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用な複合体形成物質およびアルファ−シクロデキストリンを含む少なくとも1種の包接複合体を製造する方法であって、当該方法は
(a)前記シクロデキストリンを製造する段階、および
(b)前記シクロデキストリンを前記の有用な複合体形成物質と混合する段階を含み、前記シクロデキストリンを精製することなく行われ、前記有用な複合体形成物質がシクロプロペンである方法。
【請求項2】
前記の有用な複合体形成物質が、下記式を有する少なくとも1種のシクロプロペンを含む請求項1記載の方法:
【化1】

(式中、各R、R、RおよびRは独立して、Hおよび(C−C)アルキルからなる群から選択される)。
【請求項3】
前記の段階(a)が、少なくとも1種のデンプンを少なくとも1種のシクロデキストリン産生酵素と反応させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記包接複合体を沈殿させるか、または前記複合体が沈殿するのを許容する段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記の段階(a)が、少なくとも1種のデンプンを少なくとも1種のシクロデキストリン産生酵素と反応させて、前記アルファ−シクロデキストリンを形成することを含み、および
前記方法が前記包接複合体を沈殿させるか、または前記包接複合体が沈殿するのを許容する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
包接複合体を製造するための組成物であって、水、少なくとも1種のデンプン、少なくとも1種の酵素、および少なくとも1種のシクロプロペンを含み、前記デンプンおよび前記酵素がアルファ−シクロデキストリンを形成でき、前記シクロプロペンが前記アルファ−シクロデキストリンおよび前記のシクロプロペンを含む包接複合体を形成できる、組成物。
【請求項7】
前記シクロプロペンが、下記式を有する化合物である請求項6記載の組成物:
【化2】

(式中、各R、R、RおよびRは独立して、Hおよび(C−C)アルキルからなる群から選択される)。
【請求項8】
前記シクロプロペンが1−メチルシクロプロペンを含む請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記シクロプロペンが1−メチルシクロプロペンを含む請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記包接複合体が、前記包接複合体を乾燥させ;乾燥された該包接複合体を水に添加し;該水を撹拌するか、泡立てるか、または他の方法で処理して、閉鎖された体積中で植物または植物の部分に近接して前記シクロプロペンを放出させる段階を含む方法において使用するためのものである請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記包接複合体が、前記包接複合体を乾燥させ;乾燥された該包接複合体を水に添加し;かくして形成された組成物を、植物または植物の部分と接触させる段階を含む方法において使用するためのものである請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2012−193381(P2012−193381A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−152265(P2012−152265)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2008−39683(P2008−39683)の分割
【原出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】