説明

複合体及びその製造方法

【課題】導電性物質に対して金属酸化物を高分散に担持させることによって、触媒性能を向上させ、各種電池の電極材料として優れた性能を発揮することができる複合体、及び、そのような複合体を製造するのに好適な製造方法を提供する。
【解決手段】導電性物質上に窒素元素含有化合物及び金属酸化物を、好ましくは、導電性物質上に窒素元素含有化合物層及び金属酸化物層をこの順に形成する。窒素元素含有化合物としては窒素元素含有カーボン、金属酸化物としては、鉄元素含有酸化物が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、導電性物質を用いる蓄電池等の技術分野に適用される複合体、特に、空気電池における空気極やリチウムイオン二次電池における正極等、これら蓄電池における電極を構成する電極材料として好適である複合体及びそれを製造するのに好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境問題への関心の高まりを背景に、様々な産業分野で石油等の化石燃料から電気へとエネルギー源の転換が進んでいる。それにともなって、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等の分野をはじめ、様々な分野で電池やキャパシタ等の蓄電装置の使用が広がりをみせている。このような背景の下、これら蓄電装置に用いられる材料について、活発に研究開発が行われている。そのような材料の1つに、蓄電装置の性能を左右する重要なものとして、各種電池の正極、負極を構成する電極材料が挙げられる。電極材料は、通常では、集電体、電極活物質、電極触媒、導電性物質等によって構成されることになる。
【0003】
従来の電極材料としては、環境への負荷が小さく、安価で、二次電池電極材料に好適な複合材料に関して、γ−FeO(OH)と導電助剤との混合材料を熱処理することにより、γ−Feと導電助剤との複合材料を合成することを含む複合材料の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。この技術は、高電圧、高エネルギー密度を達成でき、しかも小型かつ軽量化が可能であるリチウム空気二次電池が非常に注目を集めているが、次のような課題があったことから開発されたものである。すなわち、正極の材料としては、合成が容易であるコバルト酸化物(Co)が多用されているが、コバルト(Co)の資源的制約、価格問題、取扱い安全性の面から、コバルトフリーの電極材料が求められていること、そのような材料として、ナノサイズのγ−Feが報告されているが、充放電を繰り返し行う二次電池の特性評価においては、容量が低下するという問題(サイクル劣化)があるため、よりサイクル劣化の小さい材料が求められていたことを課題とし、γ−Feの調製を工夫することによって開発されたものである。
【0004】
ところで、電極活物質を酸素とし、それが正極となる空気極において還元されて電気エネルギーが生じる空気電池や燃料電池が電気化学エネルギーデバイスの1つとして研究されている。このような空気電池や燃料電池は、補聴器等の小型電子機器等に適用することができ、各種分野における実用化が期待される電池の1つとなっている。これらリチウムイオン電池や空気電池等の二次電池の技術分野においては、電池需要の拡大、化石燃料代替による適用用途の拡大にともなって、電子機器から自動車等に至る実用用途で充分な性能が発揮されるように、電池性能の更なる向上が望まれているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−243414号公報(1−5頁等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、蓄電池に関する様々な研究が行われていて、性能を向上させるための技術開発が盛んに行われているが、各種産業分野で求められている高い性能を満足する電池を広く提供できるには至っていないのが現状である。特に蓄電池の性能を左右する新規電極材料となり得る導電性材料の開発が急務である。
そのような中、特許文献1に記載された技術において、導電助剤に触媒が担持された複合材料が二次電池電極材料として機能し、電池性能を向上し得ることが見いだされた。当該複合材料は、導電助剤に触媒が担持した電極触媒として好適に使用することができるものである。この技術においては、図14に概念的に示されるように、γ−FeO(OH)の調製と同時に導電助剤であるアセチレンブラック(AB)を混合し、アセチレンブラックにγ−FeO(OH)が担持された複合材料を調製し、その後に熱処理(焼成)してγ−Fe化することにより、γ−Fe被覆カーボンナノ材料が調製されている。このように調製された複合材料は、電極材料とすると、カーボンが電極において導電助剤として作用することになり、また、金属酸化物であるγ−Feが電極における反応に対して触媒作用を発揮することになる。
【0007】
一方で、このような複合材料においては、複合材料中に触媒成分がより均一に分散された状態とするための工夫の余地があった。例えば、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)を用いて、該ケッチェンブラックにγ−FeO(OH)が担持した鉄担持KB(γ−FeO(OH)/KB、熱処理前)のTEM−EDS観察像を示す図4をみると、数100nmのカーボン(C)系二次粒子と100nm程度の鉄元素(Fe)の凝集体とが認められる。このTEM−EDS観察によれば、カーボンの存在状態を示すC(EDS)像と、鉄元素の存在状態を示すFe(EDS)像とが充分に一致していないことが分かる。すなわち、CとFeとのマッピング像が一致していない。また、同じサンプルの別の箇所のTEM−EDS観察像を示す図5をみても同様な結果となっていることが分かる。
更に、γ−Fe化した鉄担持KB(γ−Fe/KB、熱処理後)のTEM−EDS観察像を示す図9をみると、カーボンの凝集体(C凝集体)と30×200nm程度の棒状のFe結晶とが認められる。このTEM−EDS観察においても、カーボンの存在状態を示すC(EDS)像と、鉄元素の存在状態を示すFe(EDS)像とが充分に一致していないことが分かる。また、同じサンプルの別の箇所のTEM−EDS観察像を示す図10をみても同様な結果となっていることが分かる。
これらのTEM−EDS観察結果から、上述した複合材料においては、複合材料中に触媒成分であるγ−FeO(OH)が均一に分散された状態とはなっていないといえる。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電極の導電助剤となり得る導電性物質と電極における触媒成分となり得る金属酸化物とを含む複合体において、導電性物質に対して金属酸化物を高分散に担持させることによって、触媒性能を向上させ、各種電池の電極材料として優れた性能を発揮することができる複合体、及び、そのような複合体を製造するのに好適な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、電池の電極材料等として優れた性能を発揮することができる材料について種々検討したところ、上述したγ−Fe被覆カーボンナノ材料が電池性能等を向上させることができる複合材料として有用であるが、その触媒成分が導電助剤等として作用する導電性物質に対して充分に分散していないという課題を有していることに着目した。そして、導電助剤等として作用する導電性物質に対して窒素元素(N)含有被膜を形成し、金属酸化物からなる触媒成分を担持させた複合体(複合材料ともいう)とすることで触媒成分を高分散に担持させることが可能となり、触媒性能が向上することを見いだしたものである。また、このような導電性材料の製造方法としては、導電性物質上に窒素元素含有化合物の前駆体及び金属酸化物の前駆体を形成し、該前駆体を窒素元素含有化合物及び金属酸化物とする工程を含む方法が好適であることを見いだしたものである。これにより、N含有被膜と金属酸化物の前駆体との相互作用、N含有被膜と金属酸化物との相互作用を利用して高分散性等の特性を発現させ、触媒活性の向上等の効果を発揮し得る複合材料とすることができる。また、窒素含有導電性物質自体によっても、触媒活性の向上等の効果を発揮し得ることとなる。
このように、上記のような複合体は、導電性物質を用いる蓄電池等の技術分野に好適であり、特に、空気電池や燃料電池における空気極やリチウムイオン二次電池における正極等、これら蓄電池における電極を構成する電極材料として優れた特性を発揮することを見いだしたものである。これによって上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、導電性物質上に窒素元素含有化合物及び金属酸化物を有する複合体である。
本発明はまた、複合体を製造する方法であって、該製造方法は、導電性物質上に窒素元素含有化合物の前駆体及び金属酸化物の前駆体を形成し、該前駆体を窒素元素含有化合物及び金属酸化物とする工程を含む複合体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
本発明の複合体は、導電性物質上に窒素元素含有化合物及び金属酸化物を有することになればよく、複合される物質や複合状態が特に限定されるものではない。
例えば、導電性物質の核に窒素元素含有化合物が被覆し、その上に金属酸化物が被覆した複合体であってもよく、窒素元素含有化合物で被覆された導電性物質と金属酸化物との複合体であってもよい。これら複合体においては、導電性物質の一部でも複合、被覆された複合体となっていればよく、また、一部でも窒素元素含有化合物で被覆された導電性物質と金属酸化物との複合体となっていればよい。好ましくは、導電性物質や窒素元素含有化合物で被覆された導電性物質における表面の主体的部分が上記のように複合、被覆された形態となっていることである。
【0012】
本発明において「複合」とは、2種以上の物質において、(1)それらがそれぞれ単体で混在している混合状態、(2)分子間力等により近接又は接触した状態、(3)共有結合等により結合した状態のいずれかの状態であることを意味する。該(2)及び(3)の状態においては、2種以上の物質どうしが吸着又は結合して複合体を形成しているともいえる。少なくとも、2種以上の物質が近接及び/又は接触して分散した状態にあること、例えば、nmのオーダーで近接及び/又は接触して存在し、分散した状態にあること、また、共有結合等により結合した状態にあることが好ましい。
【0013】
例えば、導電性物質の一部又は実質的に全部を窒素元素含有化合物や金属酸化物が被覆すること、窒素元素含有化合物で被覆された導電性物質の一部又は実質的に全部を金属酸化物が被覆すること、窒素元素含有化合物の作用等によって導電性物質、窒素元素含有化合物、金属酸化物が近接、接触又は結合して分散した状態にあることが挙げられる。例えば、導電性物質の粒子、窒素元素含有化合物、金属酸化物の粒子がnmのオーダーで近接、接触又は結合して存在し、導電性物質と金属酸化物とが分散した状態にあるという形態を挙げることができる。すべての構成要素が複合して結合している必要があるということではなく、例えば、窒素元素含有化合物で被覆された導電性物質と金属酸化物との複合体となっている場合、導電性物質と窒素元素含有化合物とは直接複合された状態にあり、また、窒素元素含有化合物と金属酸化物とは直接複合された状態にあるが、導電性物質と金属酸化物とは直接結合されず、直接複合されていない状態にある。本発明においては、上記のように導電性物質、窒素元素含有化合物及び金属酸化物が複合体中に存在し、相互に関連して複合体を形成していればよい。
上記複合状態における好ましい形態としては、導電性物質と窒素元素含有化合物、窒素元素含有化合物と金属酸化物、導電性物質と金属酸化物が分子間力等によって結合し、一体化している形態を挙げることができる。
なお、導電性物質上に化合物を有するとは、導電性物質と化合物とが上記のように近接、接触又は結合して存在していればよく、導電性物質の表面だけではなく、導電性物質中に窒素元素含有化合物及び/又は金属酸化物を有していてもよい。
【0014】
上記複合体は、複合体中において、金属酸化物が実質的に均一分散した状態にあることが好ましい。従来のγ−Fe被覆カーボンナノ材料においては、該材料中においてγ−Feが偏在、凝集等しているのに対して、本発明においては、TEM−EDS観察等で金属酸化物が実質的に均一分散した状態、言い換えると、TEM−EDS観察等において、導電性物質の粒子と金属酸化物の粒子とが近接及び/又は接触して存在し、導電性物質と金属酸化物とが実質的に均一に分散していると評価できる状態とすることができる。
これによって、本発明の複合体を電極触媒として用いた場合等において、触媒成分が均一に分散された状態にあることから、電極における反応が効率よく促進され、電池性能を向上することが可能となる。
【0015】
なお、本発明において金属酸化物の分散状態の評価方法は、TEM−EDS観察等において、導電性物質の存在状態を基準とし、導電性物質の存在状態に近い状態で金属酸化物が存在する場合は、金属酸化物が実質的に均一に分散していると評価され、導電性物質の存在状態に対して偏在、凝集等した状態(導電性物質の存在状態とは異なると評価される状態)である場合は、金属酸化物が充分に分散していないと評価することができる。
【0016】
本発明の複合体における好ましい形態としては、更に下記のような形態が挙げられる。
本発明の複合体は、導電性物質上に窒素元素含有化合物層及び金属酸化物層をこの順に有することが好ましい。この場合、窒素元素含有化合物及び金属酸化物が層状の状態となり、導電性物質が窒素元素含有化合物層で被覆され、該窒素元素含有化合物層が金属酸化物層によって被覆されることになる。
上記複合体においても、導電性物質の核に窒素元素含有化合物層が被覆された状態にあり、その上に金属酸化物層が被覆された状態にある複合体であってもよく、窒素元素含有化合物層で被覆された導電性物質と金属酸化物層との複合体であってもよい。これら複合体においては、導電性物質の一部に上記層が被覆された複合体となっていればよく、また、一部でも窒素元素含有化合物層で被覆された導電性物質と金属酸化物層との複合体となっていればよい。好ましくは、導電性物質や窒素元素含有化合物層で被覆された導電性物質が主体的に上記のように被覆された形態となっていることである。窒素元素含有化合物層は通電性があることが好ましい。
【0017】
上記窒素元素含有化合物は、窒素元素含有カーボンからなることが好ましい。すなわち、カーボン中に窒素元素が含まれているものであることが好ましい。
また上記窒素元素含有化合物は、後述する本発明の製造方法において、窒素元素含有化合物の前駆体から形成されたものであることが好ましい。より好ましくは、窒素元素含有カーボンの前駆体から形成された炭化物としての窒素元素含有カーボンである。例えば、窒素元素含有カーボンが炭化水素基部分等の炭素元素を有する有機基部分を有する場合、該有機基部分が熱処理によって炭化し、カーボンとなったものが挙げられる。
上記窒素元素含有カーボンの前駆体としては、窒素元素含有有機物であることが好ましく、例えば、ピロール、ポリピロール、ポリビニルピロール、3−メチルポリピロール、ビニルピリジン、ポリビニルピリジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、アニリン、ポリアニリン、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾイミダゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、キチン、キトサン、絹、毛、ポリアミノ酸、核酸、DNA、RNA、ヒドラジン、ヒドラジド、尿素、サレン、ポリカルバゾール、ポリビスマレイミド、トリアジン、メラミン、メラミン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の化合物が好適であり、また、上記窒素元素含有カーボンとしては、上記前駆体として例示された化合物の炭化物が好適である。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。本発明の最も好ましい形態としては、窒素元素含有カーボンの前駆体がポリアニリンである形態であり、また、窒素元素含有カーボンがポリアニリンの炭化物である形態である。
【0018】
上記金属酸化物は、触媒作用を発揮し得るもの、電極触媒となり得るものであることが好ましく、具体的には、鉄元素含有酸化物からなることが好ましい。
更に、上記金属酸化物は、後述する本発明の製造方法において、金属酸化物の前駆体から形成されたものであることが好ましい。より好ましくは、鉄元素含有酸化物の前駆体としてのオキソ鉄化合物が酸化されて形成された鉄元素含有酸化物である。例えば、オキソ鉄化合物が水酸化酸化鉄(FeO(OH))の一種であるγ−FeO(OH)である場合、該γ−FeO(OH)が熱処理によって酸化し、酸化鉄の一種であるγ−Feとなったものが挙げられる。
【0019】
上記鉄元素含有酸化物の前駆体としては、酸化によって鉄元素含有酸化物を形成し得る化合物が好適であり、また、上記鉄元素含有酸化物としては、触媒作用を発揮し得る特定の結晶形をもつ鉄元素含有酸化物、電極触媒となり得る特定の結晶形をもつ鉄元素含有酸化物が好適である。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。本発明の最も好ましい形態としては、鉄元素含有酸化物の前駆体がγ−FeO(OH)である形態であり、鉄元素含有酸化物がγ−Feである形態である。
【0020】
上記導電性物質は、電極材料となり得る導電性を有する物質、電極材料における導電助剤となり得る物質であることが好ましく、具体的には、炭素材料からなることが好ましい。
上記炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック類等が好適である。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
なお、導電性物質における導電特性は、複合体が用いられる用途において適宜設定すればよい。例えば、複合体が電極触媒として用いられる場合は、導電助剤として用いることができる上記カーボンブラック類が好適であり、該カーボンブラックがもつような導電特性であることが好ましい。
【0021】
本発明の複合体において、導電性物質、窒素元素含有化合物及び金属酸化物の質量割合としては、これら3成分の合計を100質量%とすると、(導電性物質の質量%)/(窒素元素含有化合物の質量%)/(金属酸化物の質量%)=30〜70/5〜30/10〜40であることが好ましい。上記3成分の質量割合を上記範囲内で設定することにより、例えば、上記複合体を電極触媒として用いる場合、導電性物質の導電助剤としての作用、窒素元素含有化合物と金属酸化物との相互作用、窒素元素含有化合物自体の触媒活性、金属酸化物の触媒活性が適切にバランスされ、電極触媒としての性能を充分に高めることができる。より好ましくは、(導電性物質の質量%)/(窒素元素含有化合物の質量%)/(金属酸化物の質量%)=50〜70/10〜25/10〜25であり、更に好ましくは、55〜65/15〜25/15〜25である。
【0022】
上記複合体の用途としては、導電性物質を用いる蓄電池等の電極材料、特に、空気電池における正極としての空気極(空気電極)やリチウムイオン二次電池における正極等を構成する電極材料として好適である。電極材料とは、電極活物質、電極触媒、導電助剤、電極そのものを構成する材料を総称したものである。
中でも、上記複合体は、電極触媒として用いられることが好ましい。この場合、実質的には、電極触媒及び/又は導電助剤として用いられることになる。上記空気極において用いられる場合は、空気電極用触媒として、また、空気電極用導電助剤として用いることが好適である。
上記電極材料、電池の構成等については、詳細を後述する。
【0023】
次に、本発明の複合体の好ましい製造方法について説明する。
上記複合体を製造する方法であって、該製造方法は、導電性物質上に窒素元素含有化合物の前駆体を形成して窒素元素含有化合物とする工程、及び、金属酸化物の前駆体を形成して金属酸化物とする工程を含む複合体の製造方法は、本発明の好ましい実施形態の1つである。以下では、導電性物質上に窒素元素含有化合物の前駆体を形成して窒素元素含有化合物とする工程を第1工程、金属酸化物の前駆体を形成して金属酸化物とする工程を第2工程という。
上記製造方法において、第1工程と第2工程とは、この順に実施されること、すなわち、第1工程の後に第2工程を実施することが好ましいが、第1工程と第2工程とを重複して実施することを排除するものではない。
上記製造方法において、上記金属酸化物の前駆体は、オキソ鉄化合物からなることが好ましく、また、上記オキソ鉄化合物は、γ−FeO(OH)であることが好ましい。
【0024】
上記第1工程において、窒素元素含有化合物の前駆体を形成する原料としては、窒素元素含有化合物の前駆体が窒素元素含有重合体である場合、その単量体である窒素元素含有単量体を用いることが好ましい。上記第1工程の好ましい形態においては、導電性物質を含む溶液中に、窒素元素含有単量体を含む単量体成分の溶液、該単量体成分を重合するための重合開始剤を含む溶液を滴下して窒素元素含有化合物の前駆体を形成し、それを熱処理することによって窒素元素含有化合物を形成することになる。上記導電性物質をカーボンブラックとする場合、このような製造方法によって、窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラック(CB)の前駆体である窒素元素含有重合体で被覆されたカーボンブラックを調製することができる。
【0025】
上記前駆体として好ましい形態であるポリアニリンを用いる場合、該前駆体の原料としては、その単量体であるアニリンを用いる。また、導電性物質として好ましい形態であるカーボンブラックを用いる場合、アニリンを含む水溶液、該アニリンを重合するための重合開始剤(FeClの水溶液等)を原料とし、これらを別々にカーボンブラックの水溶液中に滴下してポリアニリンを形成し、それを熱処理することによってポリアニリンの炭化物を形成することが好ましい。
【0026】
上記第1工程における熱処理の条件としては、例えば、温度を400〜1000℃とすることが好ましく、600〜800℃の範囲で調整することがより好ましい。400℃未満であると、窒素元素含有化合物の前駆体の炭化が充分に行われないおそれがある。雰囲気としては、窒素雰囲気とすることが好ましい。これによって第1工程における生成物、例えば、窒素元素含有重合体で被覆された導電性物質の窒化度を高めて前駆体を炭化することができる。
上記熱処理の時間としては、例えば、1〜5時間とすることが好ましい。1時間未満であると、得られる生成物中に、窒素元素含有化合物の前駆体が残存するおそれがある。
【0027】
上記第1工程により、窒素元素含有化合物の前駆体で被覆された導電性物質を得ることができる。好ましくは、窒素元素含有化合物の前駆体で被覆されたカーボンブラック(N含有被膜カーボンともいう)、より好ましくは、窒素元素含有重合体で被覆されたカーボンブラックを生成物とすることである。
なお、ここにいう被覆は、少なくとも導電性物質の一部が被覆されていればよく、また、上記複合と同様に、(1)それらがそれぞれ単体で混在している混合状態、(2)分子間力等により近接又は接触した状態、(3)共有結合等により結合した状態のいずれかの状態であればよい。
上記窒素元素含有化合物の前駆体で被覆された導電性物質は、原料である導電性物質と比較して、窒化度が高くなるが、窒化度の好ましい範囲としては、窒素元素含有化合物の前駆体で被覆された導電性物質を100質量%とすると、0.2質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上のいずれかである。また、10質量%以下とすることが好ましい。
上記範囲内であれば、窒素元素含有化合物の前駆体で被覆された導電性物質と金属酸化物とを複合し、複合体中において金属酸化物を充分に分散することができる。
【0028】
上記第2工程において、金属酸化物の前駆体を形成する原料としては、オキソ鉄化合物としてのγ−FeO(OH)を該前駆体とする場合、第二鉄イオンを含む原料を用いることが好ましい。該第二鉄イオンを含む原料としては、塩化第二鉄四水和物(FeCl・4HO)を用いることが好ましい。上記第2工程の好ましい形態においては、緩衝液及び第二鉄イオンを含む原料を混合し、pHを調整した後、第1工程における生成物と混合することによって金属酸化物の前駆体を形成し、それを熱処理することによって金属酸化物を形成することになる。上記導電性物質をカーボンブラックとする場合、このような製造方法によって窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラック(CB)と金属酸化物との複合体を調製することができる。
【0029】
上記第2工程のより好ましい実施形態としては、緩衝液及びFeCl・4HOを混合し、pHを調整した後、その中へ第1工程における生成物である窒素元素含有化合物の前駆体で被覆されたカーボンブラック(N含有被膜カーボン)を投入して混合し、濾過、洗浄して得られた粉末を乾燥してFeO(OH)x(Xは水和した水酸基の個数を表す)で被覆されたN含有被膜カーボンを得た後、それを熱処理することによってγ−Feで被覆された窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラックを生成させる形態である。
【0030】
上記第2工程における製造条件としては、上記特許文献に記載された製造方法における条件を適用することができる。
すなわち、上記緩衝液としては、例えば、弱酸とその塩との水溶液を用いることが好ましい。弱酸としては、鉄イオンに配位して酸化鉄の生成に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、酢酸等が好適である。弱酸の塩としては、弱酸が酢酸である場合、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等が好適である。
上記調整するpHとしては、4〜6であることが好適である。pHが4未満であると、酸化物固体が生成されにくくなり、6を超えると、Fe等が不純物として生成されるおそれがある。pHの調整においては、導電性物質及び第二鉄イオンを含む溶液を攪拌しながら行うことが好ましい。その際の温度としては、室温(25℃)が好ましく、攪拌時間としては、3時間程度、例えば1〜5時間の範囲で行うことが好ましい。
上記乾燥の条件としては、温度を70℃程度、例えば50〜100℃とすることが好ましく、雰囲気としては、空気中で行うことができる。
【0031】
上記第2工程における熱処理の条件としては、例えば、温度を400℃以下とすることが好ましく、190〜300℃の範囲で調整することがより好ましい。190℃未満であると、水酸基の分解が充分に行われないおそれがある。雰囲気としては、真空中が好ましい。このような条件であれば、α−Fe等の生成を抑制することができる。
上記熱処理の時間としては、例えば、48時間以上とすることが好ましい。48時間未満であると、得られる複合材料中に、γ−FeO(OH)が残存するおそれがある。より好ましくは、60〜90時間である。
【0032】
上記第2工程を概念的に示すと、図1のようになる。この図においては、FeCl・4HOとN含有被膜カーボンとを混合し、緩衝液と3時間攪拌してpHを5.5とし、カーボンブラック(CB)に窒素元素含有被覆(N含有被膜)、γ−FeO(OH)の被膜をこの順に形成し、それを真空中200℃で焼成することによって、窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラック(N含有カーボン被覆CB)とγ−Feの複合体(複合材料)が生成することが示されている。
【0033】
本発明の好ましい実施形態としては、上記複合体を含む電極材料を挙げることができる。
以下では、本発明の複合体が空気電池や燃料電池の空気電極用触媒として用いられる場合の空気電極材料、本発明の複合体が二次電池電極用触媒として用いられる場合の電極材料について説明する。
【0034】
本発明の複合体が適用される電極としては、正極であることが好適である。この場合、上記電極材料としては、電池の正極を形成する材料である正極合剤となる。
上記電極材料、好ましくは正極合剤としては、本発明の複合体を必須成分とし、導電助剤、有機化合物を含んで構成されることが好ましく、必要により正極活物質を含み、その他の成分を含んでいてもよい。
なお、上記空気極においては、酸素が正極活物質となり、酸素の還元や水の酸化が可能なペロブスカイト型化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、白金含有化合物等より構成される空気極とすることが好適である。
上記電極材料、好ましくは正極合剤を粒子状の形態とする場合、平均粒子径が1000μm以下である粒子とすることが好ましい。
【0035】
上記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布測定装置等により測定することができる。粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。ここで平均粒子径とは、粒子群が径の不均一な多くの粒子から構成される場合に、その粒子群を代表させる粒子径を考えるとき、その粒子径を平均粒子径とする。粒子径は一般的な決められたルールに従って測定した粒子の長さをそのまま粒子径とするが、例えば、(i)顕微鏡観察法の場合には、1個の粒子について長軸径、短軸径、定方向径等二つ以上の長さを測定し、その平均値を粒子径とする。少なくとも100個の粒子に対して測定を行うことが好ましい。(ii)画像解析法、遮光法、コールター法の場合には、粒子の大きさとして直接に測定された量(投影面積、体積)を幾何学公式により、規則的な形状(例:円、球や立方体)の粒子に換算してその粒子径(相当径)とする。(iii)沈降法、レーザー回折散乱法の場合には、特定の粒子形状と特定の物理的な条件を仮定したとき導かれる物理学的法則(例:Mie理論)を用いて測定量を粒子径(有効径)として算出する。(iv)動的光散乱法の場合には、液体中の粒子がブラウン運動により拡散する速度(拡散係数)を計測することで粒子径を算出する。
【0036】
上記電極材料から電極を形成する工程としては、次のように実施することが好ましい。
先ず、必要により水及び/又は有機溶媒を、本発明の複合体、有機化合物、必要により正極活物質と共に混練し、ペースト状とする。次に、得られたペースト混合物をアルミ箔等の金属箔上に、できる限り膜厚が一定になるように塗工する。塗工後、0〜250℃で乾燥する。乾燥温度としてより好ましくは、15〜200℃である。乾燥は真空乾燥で行ってもよい。また、乾燥後に0.01〜20tの圧力で、ロールプレス機等によりプレスを行うことが好ましい。プレスする圧力としてより好ましくは、0.1〜15tの圧力である。
上記電極、好ましくは正極電極の膜厚は、例えば、1nm〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは、10nm〜1500μmであり、更に好ましくは、100nm〜1000μmである。
【0037】
上記電極材料の調製や電極の調製における混合、混練には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、ボールミル等を使用することができる。混合の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を加えてもよい。混合した後、粒子を所望の粒子径に揃えるために、混合、混練操作の前後で上記したようにふるいにかける等の操作を行ってもよい。
【0038】
上記電極材料、好ましくは正極合剤を用いて構成される蓄電池もまた、本発明の好ましい実施形態の一つである。上記蓄電池としては、正極電極、負極電極及び電解液(又は固体電解質)、好ましくは、セパレータを構成要素とするものである。なお、蓄電池は本発明の好ましい実施形態の一つであって、一次電池、充放電が可能な二次電池(蓄電池)、メカニカルチャージの利用、正極及び負極とは別の第3極の利用等、いずれの形態であってもよい。
【0039】
以下では、上記電極材料において用いることができる、導電助剤、有機化合物、蓄電池において用いることができる、電解液、セパレータ等について説明する。
なお、上記導電助剤は、本発明の複合体において、導電性物質として用いてもよく、そのような形態は、本発明の好ましい実施形態の一つである。すなわち、本発明の複合体は、導電性物質として上記導電助剤を用い、該導電助剤上に窒素元素含有化合物及び金属酸化物を有するものとすることが好ましい。
上記導電助剤としては、例えば、導電性カーボンの1種又は2種以上を用いることができる。導電性カーボンとしては、黒鉛、アモルファス炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維が好ましい。より好ましくは、グラフェン、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラックである。
上記導電助剤は、正極における導電性を向上させる作用を有するものである。
【0040】
上記導電助剤の配合量としては、電極材料、好ましくは正極合剤(導電助剤を含む、以下同様)を100質量%とすると、0.001〜90質量%であることが好ましい。導電助剤の配合量がこのような範囲であると、本発明の複合体を含む電極材料から形成される電極がより良好な電池性能を発揮することとなる。より好ましくは、0.01〜70質量%であり、更に好ましくは、0.05〜50質量%である。
【0041】
上記有機化合物としては、有機化合物の他、有機化合物塩を例示することができ、1種又は2種以上用いることができる。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマー、ポリアクリロニトリル含有ポリマー、ポリアクリルアミド含有ポリマー、ポリ塩化ビニル含有ポリマー、ポリビニルアルコール含有ポリマー、ポリエチレンオキシド含有ポリマー、ポリプロピレンオキシド含有ポリマー、ポリブテンオキシド含有ポリマー、ポリエチレン含有ポリマー、ポリプロピレン含有ポリマー、ポリブテン含有ポリマー、ポリヘキセン含有ポリマー、ポリオクテン含有ポリマー、ポリブタジエン含有ポリマー、ポリイソプレン含有ポリマー、アナルゲン、ベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、トルエン、ピペロンアルデヒド、カーボワックス、カルバゾール、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアセチレン含有ポリマー、ポリエチレンイミン含有ポリマー、ポリアミド含有ポリマー、ポリスチレン含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマー、ポリペンタフルオロエチレン含有ポリマー、ポリ(無水)マレイン酸含有ポリマー、ポリマレイン酸塩含有ポリマー、ポリ(無水)イタコン酸含有ポリマー、ポリイタコン酸塩含有ポリマー、陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体、環化重合体、スルホン酸塩、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩、第四級ホスホニウム塩ポリマー等が挙げられる。上記有機化合物は、結着剤としての機能を持たせることも可能である。
【0042】
なお、上記有機化合物、有機化合物塩がポリマーの場合には、ポリマーの構成単位に該当するモノマーより、ラジカル重合、ラジカル(交互)共重合、アニオン重合、アニオン(交互)共重合、カチオン重合、カチオン(交互)共重合等により得ることができる。
上記有機化合物、有機化合物塩は、粒子同士や粒子と集電体とを結着させる結着剤として働くこともできる。上記有機化合物、有機化合物塩として好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマー、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン含有ポリマー、ポリペンタフルオロエチレン含有ポリマー、ポリマレイン酸塩含有ポリマー、ポリイタコン酸塩含有ポリマー、イオン交換膜性重合体、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩ポリマーである。
【0043】
上記有機化合物、有機化合物塩の配合量、好ましくはポリマーの配合量としては、電極材料、好ましくは正極合剤を100質量%とすると、0.01〜50質量%であることが好ましい。これら有機化合物、有機化合物塩、好ましくはポリマーの配合量がこのような範囲であると、本発明の複合体を含む電極材料から形成される電極が、より良好な電池性能を発揮することとなる。より好ましくは、0.01〜45質量%であり、更に好ましくは、0.1〜40質量%である。
【0044】
上記電極材料は、本発明の複合体、導電助剤、有機化合物、必要により配合される正極活物質以外の成分を含む場合、該成分の配合量は、電極材料、好ましくは正極合剤を100質量%とすると、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜7質量%であり、更に好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0045】
上記電解液としては、蓄電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、有機溶剤系電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、フッ素基含有カーボネート、フッ素基含有エーテル、イオン性液体、ゲル化合物含有電解液、ポリマー含有電解液等が好ましく、水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ性水溶液や、硫酸水溶液等の酸性水溶液が挙げられる。電解液は、上記1種又は2種以上使用してもよい。無機固体電解質を使用してもよい。
【0046】
上記電解液の濃度は、電解質の濃度が0.01〜15mol/Lであることが好ましい。このような濃度の電解液を用いることで、良好な電池性能を発揮することができる。より好ましくは、0.1〜12mol/Lである。電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、LiN(SO、Li(BC)、LiF、LiB(CN)等が挙げられる。また、電解液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば正極や負極の保護被膜を形成する材料や、プロピレンカーボネートを電解液に使用した場合に、プロピレンカーボネートの黒鉛への挿入を抑制する材料等が挙げられ、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、臭化エチレンカーボネート、エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、クラウンエーテル類、ホウ素含有アニオンレセプター類、アルミニウム含有アニオンレセプター等が挙げられる。添加剤は、上記1種又は2種以上使用してもよい。
【0047】
上記蓄電池におけるセパレータとは、正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。セパレータとして特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、セロファン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ビニロン、ポリ(メタ)アクリル酸等のマイクロポアを有する高分子量体やそれら共重合体、ゲル化合物、イオン交換膜性重合体やそれら共重合体、環化重合体やそれら共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、スルホン酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級アンモニウム塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級ホスホニウム塩ポリマーやそれら共重合体等が挙げられる。
【0048】
本発明の複合体を含む電極材料から正極を形成する場合、上記蓄電池における負極としては、黒鉛;アモルファス炭素;カーボンナノフォーム;活性炭;グラフェン;ナノグラフェン;グラフェンナノリボン;フラーレン;カーボンブラック;ファイバー状カーボン;カーボンナノチューブ;カーボンナノホーン;ケッチェンブラック;アセチレンブラック;炭素繊維;気相成長炭素繊維等の炭素材料、酸化等の表面処理を施した炭素材料、ホウ素等の元素を導入した炭素材料、リチウム金属、マグネシウム金属、カルシウム金属、アルミニウム金属、亜鉛金属、Mg;Ca;Al;Si;Ge;Sn;Pb;As;Sb;Bi;Ag;Au;Zn;Cd;HgとLiとの合金化合物、SiO;CoO;Li4/3Ti5/3等の酸化物、MoS;MnS等の硫化物、Li2.6Co0.4等の窒化物、NiP等のリン化合物、珪素含有化合物等が挙げられる。
【0049】
上述したように、導電性物質に対して、その上に窒素元素含有化合物及び金属酸化物を有する複合体とし、特に、導電性物質上に窒素元素含有化合物層及び金属酸化物層をこの順に有する複合体とすれば、電極触媒としての活性、電極における還元能力を高めることが可能となる。上記特許文献1に記載されたγ−Feと前記導電助剤との複合材料においては、エネルギー密度が高く、充放電のサイクル劣化が小さく、高性能かつ長寿命で、しかも高速充放電が可能であり、小型電気機器用途から、高出力・大容量が要求される大型機械用途まで、幅広く利用することができるとされているが、本発明の複合体は、電極触媒及び/又は導電助剤として更に有利な効果を奏することができる新規材料として有用なものである。
【発明の効果】
【0050】
本発明の複合体は、上述の構成よりなり、電極の導電助剤となり得る導電性物質と電極における触媒成分となり得る金属酸化物とを含む複合体において、導電性物質に対して金属酸化物を高分散に担持させることによって、触媒性能を向上させることができるため、導電性物質を用いる蓄電池等の技術分野に適用される複合体、特に、空気電池や燃料電池における空気極やリチウムイオン二次電池における正極等、これら蓄電池における電極を構成する電極材料として優れた性能を発揮させることができ好適なものである。また、本発明の複合体の製造方法は、そのような複合体を製造するのに好適な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の製造方法において、金属酸化物の前駆体を形成して金属酸化物とする工程によって窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラック(N含有カーボン被覆CB)とγ−Feの複合体(複合材料)を作製するフロー(工程順序)等を概念的に説明するための図である。
【図2】PAN被膜KBとブランクであるケッチェンブラック(KB)とのXRD(X線回折)分析結果のチャートを示す。
【図3】鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)と鉄担持KB(熱処理前)とのXRD(X線回折)分析結果のチャートを示す。このチャートにおいて、鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)のチャートを鉄担持KB(熱処理前)の上に平行移動させて示している。
【図4】鉄担持KB(熱処理前)のTEM−EDS観察結果を示す。
【図5】鉄担持KB(熱処理前)の図4とは別の箇所のTEM−EDS観察結果を示す。
【図6】鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)のTEM−EDS観察結果を示す。
【図7】鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)の図6とは別の箇所のTEM−EDS観察結果を示す。
【図8】鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)と鉄担持KB(熱処理後)とのXRD(X線回折)分析結果のチャートを示す。このチャートにおいて、鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)のチャートを鉄担持KB(熱処理後)の上に平行移動させて示している。
【図9】鉄担持KB(熱処理後)のTEM−EDS観察結果を示す。
【図10】鉄担持KB(熱処理後)の図9とは別の箇所のTEM−EDS観察結果を示す。
【図11】鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)のTEM−EDS観察結果を示す。
【図12】鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)の図11とは別の箇所のTEM−EDS観察結果を示す。
【図13】酸素還元能評価を行った結果を示す。γ−Fe/炭化PAN/KB(実施例)を用いた電極、γ−Fe/KB(比較例)を用いた電極、ケッチェンブラック(KB)(比較例)を用いた電極を比較している。
【図14】従来のγ−Fe被覆カーボンナノ材料の調製方法のフロー(工程順序)等を概念的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に発明を実施するための形態を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの発明を実施するための形態のみに限定されるものではない。
【0053】
実施例・比較例
(N含有被膜カーボン調製方法)
下記手順によって、導電性物質をケッチェンブラック(KB)とする、窒素元素含有化合物の前駆体であるポリアニリン(PAN)がケッチェンブラック(KB)に被覆及び/又は分散したN含有被膜カーボン(「PAN−KB」ともいう)を調製した。
(1)ケッチェンブラック(KB)9.0g、純水(HO)500gをセパラブルフラスコのボトムに仕込んだ。これをA液とした。
(2)アニリン3g、純水150gを混合し、B液を調製した。またFeCl(39質量%水溶液)22.2gをC液とした。
(3)A液を攪拌しながらB液とC液を同時に1時間掛けて滴下し、その後2時間熟成した。
(4)濾過し、純水1.0Lで洗浄後に100℃で乾燥した。
(5)700℃、3時間、Nフロー下(窒素雰囲気下)で焼成した。
【0054】
実施例として上記で得られた窒素元素含有カーボン(PAN/KB)及び比較例としてケッチェンブラック(KB)のそれぞれの酸化度及び窒化度を分析したところ、下記表に示すようであった。
なお、酸化度及び窒化度は、窒素酸素同時分析装置(TC−400、LECO社製)を用いて測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
(触媒担持方法)
上記特許文献1に記載の方法に準拠して下記のように実施した。
(1)0.1M(モル)のCHCOOK溶液109.8g、
0.1M(モル)のCHCOOH溶液110.2g、
FeCl・4HOを0.5955g、
上記を混合後にpHが5.5になるようにCHCOOHを追加して調整した。混合溶液は、橙色となった。
(2)上記橙色溶液中へ、上記調製方法によって得られたN含有被膜カーボンを600mg投入後に、室温にて3時間攪拌した。
(3)濾過・洗浄にて得られた黒色粉末を70℃で一晩乾燥した。この時点で、FeO(OH)x/PAN/KB(xは水和した水酸基の個数を表す)[FeO(OH)がN含有被膜カーボンに担持した形態]となる。
(4)200℃にて72時間真空で処理した。この時点で、γ−Fe/炭化PAN/KBとなる。すなわち、γ−Feと、N含有皮膜カーボンが炭化した窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラック(N含有カーボン被覆CB)とが複合したものとなる。これは、γ−Feが窒素元素含有カーボン被覆カーボンブラック(N含有カーボン被覆CB)に担持し、被覆及び/又は分散した形態ということもできる。
同様の操作をN含有被膜カーボンの代わりにケッチェンブラック(KB)を用いて行うことで、比較例としてγ−Fe/KB(γ−Fe被覆カーボンナノ材料)を得た。
【0057】
実施例・比較例においては、窒素元素含有化合物の前駆体(ポリアニリン)がケッチェンブラック(KB)に担持した実施例としてのPAN/KBを、PAN被膜KBとし、FeO(OH)がN含有被膜カーボンに担持した実施例としてのFeO(OH)x/PAN/KBを、鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)とし、γ−FeがN含有カーボン被覆CBに担持した実施例としてのγ−Fe/炭化PAN/KBを、鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)という。
またFeO(OH)がケッチェンブラック(KB)に担持した比較例としてのFeO(OH)x/KBを、鉄担持KB(熱処理前)とし、γ−Feがケッチェンブラック(KB)に担持した比較例としてのγ−Fe/KBを、鉄担持KB(熱処理後)という。
【0058】
(PAN被膜KBのXRD分析)
PAN被膜KBとブランクであるケッチェンブラック(KB)とのXRD(X線回折)分析結果を図2に示す。なお、PAN被膜KBは、焼成後のものである。
このXRD分析より、ポリアニリン被膜することで若干カーボンの結晶度が増大していることがわかる。
また、実施例・比較例におけるXRD測定は、TTRIIIシステム(リガク社製)を用いて定法に従い、以下の条件で測定した。
走査範囲:10°−70°
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:5.000°min−1
【0059】
(鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)のXRD分析)
鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)と鉄担持KB(熱処理前)とのXRD(X線回折)分析結果を図3に示す。ともにFeCl含浸し、濾過・乾燥後のものである。このXRD分析より、γ−FeO(OH)のピークを確認することができる。また、XRD分析チャートにおけるピークをみると、鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)の方が鉄担持KB(熱処理前)よりも小さくなっていることから、ポリアニリン被膜したPAN/KBを用いた場合、γ−FeO(OH)の結晶成長が抑制されていることがわかる。鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)の方がγ−FeO(OH)の結晶成長が抑制された分だけ粒子が小さいものと考えられ、また、γ−FeO(OH)がより分散されたものと推察できる。
なお、図3においては、鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)のチャートを鉄担持KB(熱処理前)の上に平行移動させて示している。
【0060】
(鉄担持KB(熱処理前)のTEM−EDS観察)
鉄担持KB(熱処理前)のTEM−EDS観察結果を図4に示す。
数100nmのC系二次粒子と100nm程度のFeの凝集体が認められる。
またカーボンの存在状態を示すC(EDS)像と、鉄元素の存在状態を示すFe(EDS)像とが充分に一致していない。
調製した鉄担持KB(熱処理前)の別の箇所のTEM−EDS観察結果を図5に示す。
こちらも数100nmのC系二次粒子と100nm程度のFeの凝集体が認められる。
C(EDS)像とFe(EDS)像との比較も同様である。
なお、TEM−EDS観察は、JEM−2100F(日本電子社製)を用いて行った。
【0061】
(鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)のTEM−EDS観察)
鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)のTEM−EDS観察結果を図6に示す。
CとFeのマッピング像が一致している。このことから、CとFeがナノオーダーで分散していることがわかる。これは、XRD分析の結果とも矛盾しない。
調製した鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)の別の箇所のTEM−EDS観察結果を図7に示す。
こちらもCとFeのマッピング像が一致している。このことから、CとFeがナノオーダーで分散していることがわかる。これは、XRD分析の結果とも矛盾しない。
これらより、鉄担持KB(熱処理前)においては、複合体における鉄元素の分散状態が充分ではないが、鉄担持PAN被膜KB(熱処理前)においては、C系二次粒子やFeの凝集体の生成が抑制され、また、複合体の前駆体における鉄元素の分散状態が充分なものとなることがわかる。
【0062】
(鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)のXRD分析)
鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)と鉄担持KB(熱処理後)とのXRD(X線回折)分析結果を図8に示す。ともに200℃×72時間真空中で焼成した後のものである。このXRD分析より、γ−Feのピークを確認することができる。また、XRD分析チャートにおけるピークをみると、鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)の方が鉄担持KB(熱処理後)よりも少し小さくなっていることから、ポリアニリン被膜したPAN/KBを用いた場合、γ−Feの結晶成長が僅かながら抑制されていることがわかる。鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)の方がγ−Feの結晶成長が抑制された分だけ粒子が小さいものと考えられ、また、γ−FeO(OH)がより分散されたものと推察できる。
なお、図8においても、鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)のチャートを鉄担持KB(熱処理後)の上に平行移動させて示している。
【0063】
(鉄担持KB(熱処理後)のTEM−EDS観察)
鉄担持KB(熱処理後)のTEM−EDS観察結果を図9に示す。
C凝集体と30×200nm程度の棒状のFe結晶が見られる。
またカーボンの存在状態を示すC(EDS)像と、鉄元素の存在状態を示すFe(EDS)像とが充分に一致していない。
調製した鉄担持KB(熱処理後)の別の箇所のTEM−EDS観察結果を図10に示す。
こちらもC凝集体と30×200nm程度の棒状のFe結晶が見られる。
C(EDS)像とFe(EDS)像との比較も同様であり、一致していない。
【0064】
(鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)のTEM−EDS観察)
鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)のTEM−EDS観察結果を図11に示す。
PAN被膜した場合は、Feの棒状結晶は見られず、CとFeのマッピング像が一致していると評価できる。このことは、高分散性であること、すなわち、複合体において、金属酸化物が高分散されていることを示している。
調製した鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)の別の箇所のTEM−EDS観察結果を図12に示す。
こちらもFeの棒状結晶は見られず、CとFeのマッピング像が一致していると評価でき、高分散性であることを示している。
これらより、鉄担持KB(熱処理後)においては、複合体における鉄元素の分散状態が充分ではないが、鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)においては、Feの棒状結晶等の生成が抑制され、また、複合体における鉄元素の分散状態が充分なものとなることがわかる。
【0065】
(酸素還元能評価)
上記実施例及び比較例で得られた電極触媒を用いて、以下のようにして酸素還元能を評価した。なお電極触媒は、実施例として、鉄担持PAN被膜KB(熱処理後)であるγ−Fe/炭化PAN/KBを用いた。また、比較例として、鉄担持KB(熱処理後)であるFe/KB、及び、ケッチェンブラック(KB)のみを、それぞれ用いた。
上記電極触媒20mgを、1−ヘキサノール2.0ml中に超音波分散にて分散させ、分散液(スラリー)を調製した。この分散液を、回転電極装置(北斗電工社製、HR−201)に付属の回転ディスク電極のGC(グラッシーカーボン)ディスク上に、マイクロピペットを用いて5.0μl滴下し、乾燥し、電極触媒を均一に堆積した。該回転ディスク電極を0.1M水酸化カリウム水溶液中にセットし、酸素を吹き込むことで酸素飽和水溶液とした。当該回転ディスク電極は空気電極(正極)となる。
参照電極としてはAg/AgCl電極を用いた。0Vから−0.6Vに向けて0.005mV/secの掃引速度で掃引して酸素還元電流を測定した。
【0066】
上記酸素還元能評価を行った結果を図13に示す。
図13において、横軸が印加電圧(V)、縦軸が電流値(mA)であり、横軸の0.0Vから−0.6Vの方向に印加電圧を変化させる場合、電池性能を比較して性能が高い、すなわち電極触媒としての触媒作用が優れているといえるのは、縦軸の0.0mAからマイナス電流値へ早く立ち上がる(早くマイナス電流の値(絶対値)が大きくなる)方であり、また、印加電圧のマイナスの値(絶対値)が大きくなるに従ってマイナス電流の値(絶対値)が大きくなる方である。
【0067】
酸素還元能評価結果を示す図13より、横軸の0.0Vから−0.6Vの方向に印加電圧を変化させる場合、γ−Fe/炭化PAN/KB(実施例)を用いた電極が−0.1Vを過ぎた時点で最も早く立ち上がり、他の2つの電極(比較例)は、−0.2Vになる手前で立ち上がっている。このことから、実施例においては電圧を印加した直後の初期性能がかなり向上することがわかる。また、マイナス電流の値(絶対値)もケッチェンブラック(KB)、γ−Fe/KB、γ−Fe/炭化PAN/KBの順に高くなることがわかる。マイナス電流の値(絶対値)が、γ−Fe/炭化PAN/KB(実施例)は、ケッチェンブラック(KB)(比較例)と比べて約3倍、γ−Fe/KB(比較例)と比べて約1.5倍にもなっている。
このように、PAN被膜させることで、複合体における作用効果である電極触媒としての性能が格段に向上することがわかる。
【0068】
なお、上記実施例においては、導電性物質がカーボンブラック、窒素元素含有化合物が炭化PAN、金属酸化物が鉄元素の酸化物によって実証されているが、導電性物質であれば電極の導電助剤となり得、金属酸化物であれば、電極触媒としての作用を発揮し得る。また、窒素元素含有化合物であれば、導電性物質に対する金属酸化物の分散状態を向上し得る。これらの作用によって、触媒成分を高分散に担持させることが可能となり、触媒性能が向上する、特に電極触媒としての性能が向上することになる作用機序は、本発明の複合体を用いた場合にはすべて同様である。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質上に窒素元素含有化合物及び金属酸化物を有することを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記複合体は、導電性物質上に窒素元素含有化合物層及び金属酸化物層をこの順に有することを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記窒素元素含有化合物は、窒素元素含有カーボンからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記金属酸化物は、鉄元素含有酸化物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
前記鉄元素含有酸化物は、γ−Feであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
前記導電性物質は、炭素材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
前記複合体は、電極触媒として用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複合体を製造する方法であって、
該製造方法は、導電性物質上に窒素元素含有化合物の前駆体を形成して窒素元素含有化合物とする工程、及び、金属酸化物の前駆体を形成して金属酸化物とする工程を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物の前駆体は、オキソ鉄化合物からなることを特徴とする請求項8に記載の複合体の製造方法。
【請求項10】
前記オキソ鉄化合物は、γ−FeO(OH)であることを特徴とする請求項8又は9に記載の複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−105668(P2013−105668A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249935(P2011−249935)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 独立行政法人日本学術振興会の最先端研究開発支援プログラム「高性能蓄電デバイス創製に向けた革新的基盤研究」助成研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】