説明

複合体薄膜とその製造方法

【課題】サイズ及び配置がナノメートルスケールで制御された無機化合物微粒子からなる薄膜を提供すること。
【解決手段】特定の配向を持ったミクロドメイン構造を有するブロック共重合体と複数の無機化合物の前駆体からなる薄膜を形成し、上記前駆体を各々特定のミクロドメインに偏在させた後、各々の微粒子を順次形成させ上記共重合体を分解除去することによって、2種類以上の無機微粒子がそのサイズ及び相対的な配置を制御しながら複合化した薄膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はナノメートルスケールで制御された構造を均一に有する無機化合物複合体薄膜とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より無機化合物微粒子を含む薄膜は光線遮蔽膜(例えば特開平11−276992号公報)や帯電防止膜(例えば特開平10−120419号公報)として知られている。これらの文献では、予め別途合成された酸化物微粒子を用いて、前記微粒子の分散液を基板上にキャストすることにより日射遮蔽膜を製造する方法が開示されている。
【0003】また特開平9−302284号公報には、粒径100nm以下のルテニウム酸化物微粒子、イリジウム酸化物微粒子、ロジウム酸化物微粒子などの貴金属酸化物微粒子を基材に塗布することによって、効率のよい日射遮蔽膜を提供する方法が開示されている。
【0004】しかしながら上記のような超微粒子は著しく凝集が起こりやすくなるため、例えば特開平8−269433号公報で指摘されているように、ハンドリングが難しい。また可視領域における透明性を保ちながら有害紫外線のみを遮蔽する目的では、可視光線の波長に対して曇りを生じない程度小さなサイズの上記酸化物微粒子を、目的とする透明基板上へ均一に被覆することが重要となる。
【0005】酸化チタンなどは排気ガス中の窒素酸化物還元、メタノール分解などの触媒や光触媒としての機能が注目されている。このような触媒としての用途に用いられる場合にも、大きな比表面積を有する微粒子の利用は有効と考えられる。また触媒としての利用を考えると、ハンドリングや回収及び再生処理を行うという観点から、操作性のよい適当な基材表面へ触媒微粒子を高密度かつ均一に担持することが課題となる。
【0006】基材表面へ無機化合物を均一に担持する方法としては、スパッタリング法、ゾルゲル法や含浸法などがある。しかしながらスパッタリング法では、高価な設備が必要であり、高真空の雰囲気を必要とするため、高コストでかつ大きなサイズの基板を用いることができない。一方、ゾルゲル法ではゲル乾燥時のひび割れなどの問題があり、やはり大きな面積で均一な膜を得ることが困難である。またこれらの手法で得られるのは、均一な被膜状の無機化合物であり、比表面積の大きい被膜、例えば高密度で微粒子が基材状に担持されたものではない。含浸法では担持する無機化合物の前駆体溶液を多孔性の基材に含浸させた後、焼成することによって担持する方法である。この方法では基材の孔組織のサイズにより、担持した無機粒子のサイズをある程度は制御し得るが、その位置や配置を制御することはできない。
【0007】また光線遮蔽膜や触媒などの用途で、酸化チタンなど無機化合物が単体で用いられることは少なく、多くの場合他の無機化合物、特に貴金属や貴金属酸化物などと複合化して用いられる。例えば特願平11−190669号公報には無機酸化物に平均粒径5〜30nmのイリジウムを含有させることによって、有効に窒素酸化物を還元する触媒を提供する方法が開示されている。
【0008】しかしながら、上記のような貴金属が使用される多くの用途においては、可能な限り金属を有効に活用することが望ましい。この有効活用の点で、担持する貴金属の配置を精密に制御することが重要である。例えば特開平8−2928号公報にも指摘されているように、触媒表面に担持する金属の位置を制御することは、高性能触媒製造における長年の問題であった。
【0009】先にも述べたスパッタリング法やゾルゲル法などでは、上記の無機微粒子の位置を制御することができない。これに対し先に挙げた文献特開平8−2928号公報では、可溶性の金属化合物を、粒子径が10〜15000nmの範囲にあるポリマーに配合した後担体と接触させ、前記ポリマーを除去して複合材料を形成する手法が開示されており、この手法では化学量論的に同一組成を有する化合物からなるドメインの大きさを制御できるとされている。しかしこの手法では、前記ドメインの大きさが製造に用いた条件に敏感に左右され、例えば加熱処理によってドメインの大きさは粗大化する。またこの方法ではナノメートルスケールで、基板上でドメインの位置を制御することや、異種ドメイン間の相対的な配置を制御することまで検討してはいない。
【0010】他に無機微粒子の空間配置を制御する方法として、特開2000−72952号公報ではブロック共重合体のミクロドメイン内で前駆体から微粒子を形成することにより、無機微粒子を包含した樹脂組成物を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では樹脂マトリックス中に列状に分散した微粒子を得るのみであり基材に対して配置が制御された無機微粒子薄膜を形成することまで検討されてはいない。また文献D. Zhao, J. Feng, Q. Huo, N. Melosh, G. H. Fredrickson, B. F. Chmelka, G. D. Stucky, Science 282, 5397 (1998)では樹脂組成物の構造を雛型に無機多孔質体を形成する手法が開示されているが、この方法では多孔質体の構造を制御するのみで、基材に対する位置の制御や本願発明でいうサイズや配置が制御された無機微粒子複合体薄膜を形成させることまで検討してはいない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の無機化合物微粒子と、異なる無機化合物からなる微粒子を、そのそれぞれの微粒子サイズ及び相対的な配置をナノメートルスケールで制御しながら複合化した薄膜を提供するものである。
【0012】
【発明を解決するための手段】上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ブロック共重合体と複数の無機化合物の前駆体からなる薄膜を形成し、上記前駆体を各々特定のミクロドメインに偏在させた後、各々の微粒子を順次形成させ上記共重合体を分解除去することによって、2種類以上の無機微粒子がそのサイズ及び相対的な配置を制御しながら複合化した薄膜が得られることを見出し本発明をなすに至った。
【0013】本発明は、無機化合物微粒子Aからなる薄膜中及び/または表面に、金属あるいは金属酸化物から構成される無機微粒子Bが共に均一に分散しており、上記微粒子AおよびBの大きさが100nm以下であり、及び薄膜表面の粗さが50nm以下であることを特徴とする無機微粒子複合体薄膜に関する。
【0014】また、本発明は、(1)互いに非相溶な高分子鎖が各々の末端で結合したブロック共重合体Pと無機化合物の前駆体PAからなる均一溶液Sを調整する工程、(2)溶液Sを基板上に展開する工程、(3)前記薄膜中で上記共重合体Pにミクロ相分離を起こさせ特定の配向を持つミクロドメイン構造を形成させると同時に、上記前駆体PAを全部ではない特定のミクロドメイン構造上に偏在させる工程、(4)上記薄膜を気相にある金属あるいは金属酸化物微粒子前駆体PBに接触させ、前駆体PBを特定のミクロドメイン構造へ取り込ませた後、無機微粒子Bを析出させる工程、(5)上記前駆体PAから無機化合物微粒子Aを析出させる工程、(6)上記薄膜中から樹脂組成物を除去させる工程からなることを特徴とする上記の無機微粒子複合体薄膜の製造法に関する。
【0015】また、本発明は、(1)互いに非相溶な高分子鎖が各々の末端で結合したブロック共重合体Pと無機化合物の前駆体PA及び金属あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBからなる均一溶液S’を調製する工程、(2)溶液S’を基板上に展開する工程、(3)前記薄膜中で上記共重合体Pにミクロ相分離を起こさせ特定の配向を持つミクロドメイン構造を形成させると同時に、上記前駆体PA及びPBをおのおの特定のミクロドメイン構造上に偏在させる工程、(4)薄膜中で前駆体PBから無機微粒子Bを析出させる工程、(5)上記前駆体PAから無機化合物微粒子Aを析出させる工程、(6)上記薄膜中から樹脂組成物を除去させる工程からなることを特徴とする上記の無機微粒子複合体薄膜の製造法に関する。
【0016】また、本発明は、無機微粒子前駆体PBから無機微粒子Bを析出させる工程の後で、共重合体Pの熱分解温度以上かつ前駆体PAから無機化合物微粒子Aが形成される温度で薄膜を熱処理することにより、前駆体PAから微粒子Aを形成させると同時に、上記薄膜中から樹脂組成物を除去させることを特徴とする上記の無機微粒子複合体薄膜の製造法に関する。
【0017】また、本発明は、無機微粒子前駆体Bとして金属微粒子前駆体を用い、前駆体PA,PAPBがそれぞれ全部ではない特定のミクロドメイン構造上に偏在した薄膜を形成した後で、共重合体Pの熱分解温度と前駆体PAから無機化合物微粒子Aが形成される温度のうち高い側の温度をTとしたとき、液相あるいは気相にある前駆体Bの還元剤に薄膜を接触させながら温度Tまで昇温させることによってより、無機微粒子Bを析出させるのに連続して、前駆体PAから酸化物微粒子Aを形成させると、これと同時に、平行してあるいは引き続いて上記薄膜中から樹脂組成物を除去させることを特徴とする上記の無機微粒子複合体薄膜の製造法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明における、無機化合物微粒子Aとしては、無機化合物結晶子から構成されるのが好ましい。上記無機化合物微粒子の具体例としては、シリコン酸化物、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物、ロジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化タングステン、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の酸化物微粒子や、硫化銀、硫化カドミウム、カドミウムセレナイド等の金属化合物微粒子、シリコン、パラジウム、金、白金等の金属微粒子アルミニウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン微粒子、酸化セリウム等の金属酸化物などが挙げられる。
【0019】上記の微粒子と複合化される金属微粒子あるいは金属酸化物微粒子としては、パラジウム、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、タングステン、オスミウムなどの微粒子が挙げられる。あるいはルテニウム酸化物、イリジウム酸化物、ロジウム酸化物、インジウム錫酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン微粒子、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子などが挙げられる。
【0020】膜面内方向にとった各微粒子の大きさは、共に50nm100nm以下であり、好ましくは1〜50nmである。
【0021】微粒子が形成している薄膜表面の粗さは50nm以下であり、好ましくは〜20nm以下である。ここで、薄膜表面の粗さとは、表面の凹凸があったときその凸部と凹部の高さの差をいう。
【0022】本発明に関わる薄膜の製造の態様は、ミクロ相分離状態にあるブロック共重合体Pの薄膜を形成する工程、前記薄膜の形成と同時か薄膜を形成させた後で、1種類あるいは2種類以上の無機化合物前駆体を導入し該前駆体を共重合体Pを構成する高分子鎖成分のうち全部ではない特定の高分子鎖成分からなるミクロドメインに偏在させる工程、前記前駆体から無機化合物微粒子を形成する工程、前記の工程と平行してあるいは前記の工程に引き続いて共重合体Pを分解し無機薄膜を得る工程から概略構成される。
【0023】本発明に用いられるブロック共重合体とは、互いに非相溶な2種類あるいは2種類以上の高分子鎖が各々の末端で結合したものであり、上記ブロック共重合体を構成する各高分子鎖は、それぞれ単一の高分子鎖成分のみから構成されるミクロドメインを形成する。このミクロドメインの形成により、例えば文献F. S. Bates, G.H. Fredrickson, Annu. Rev. Phys. Chem. 41, 525 (1990)などで示される通り、該共重合体を形成する高分子鎖成分の組成や温度などの条件により、ブロック共重合体はその内部にナノメートルスケールで規制されたラメラ状ドメイン構造、シリンダー状ドメイン構造、球状ドメイン構造更にはギロイド構造を始めとする共連続構造など各種の秩序構造を呈する。
【0024】後述する無機微粒子形成工程において熱などによりミクロドメイン構造が崩れることを防ぐ観点から、上記共重合体Pとしては2本の相異なる高分子鎖からなるジブロック共重合体より3本以上の高分子鎖からなるブロック共重合体、例えばトリブロック共重合体などが好適に用いられる。
【0025】上記のブロック共重合体Pはアニオン重合、リビング重合、ラジカル重合などによって合成されるもので、溶液、粉末、ペレットなどの形態で提供される。
【0026】ブロック共重合体の具体例としては、ポリ(スチレン−b−イソプレン)、ポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン)、ポリ(スチレン−b−エチレンプロピレン)、ポリ(スチレン−b−エチレンプロピレン−b−スチレン)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン)、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン−b−スチレン)、ポリ(スチレン−b−メタアクリル酸)、ポリ(スチレン−b−ブチルメタアクリル酸)、ポリ(スチレン−b−ビニルピリジン−b−ブチルメタアクリル酸)、ポリ(スチレン−b−アクリル酸)、ポリ(スチレン−b−アクリル酸−b−メタアクリル酸) ( poly(styrene-b-acrylic acid-b-methacrylate))共重合体、あるいはポリアミドとビニルポリマーとのブロック共重合体、ポリイミドとオレフィンポリマーとのブロック共重合体 などが挙げられる。
【0027】ブロック共重合体を構成する高分子鎖の数平均分子量は、1000以上が好ましく、更に好適には1万〜100万10000〜40000が好ましい用いられる。分子量分布は、2以下のものが好ましい。
【0028】ブロック共重合体Pの薄膜は、共重合体Pの溶液を調整しこの溶液を適当な基板の上に展開することによって得られる。基板材料としては、具体的には、シリコンや自然酸化シリコン(SiOx)、シリカ、石英ガラスや硼酸ガラスなど各種ガラス、グラファイト、アルミナやゼオライト、窒化珪素など各種セラミックス、金属、ポリイミドやポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミドなど各種樹脂材料などが挙げられ、目的に応じて、ブロック状、板状やシート状、繊維状、球状、レンズ状、多孔質体などの形態で基板として供される。基板としては、具体的には、シリコンウェアー(SiO)、珪酸ガラス、ポリイミドシート、などが挙げられる。
【0029】共重合体溶液の溶媒としては、水、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどケトン類、メタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、フェノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、テトラフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールなどの弗化アルコール類やジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、トルエン、ジオキサン、シクロヘキサンメタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類 などが挙げられる。共重合体Pの溶液は、溶液の均一性を損なわない範囲内で、2種類以上の溶媒を含んでいてもよい。この溶液は難燃剤などの添加剤や無機微粒子前駆体や金属微粒子前駆体の還元剤などを適宜含むことができる。
【0030】ここでいうブロック共重合体Pの薄膜とは、膜の厚みが概略1nm以上1μm以下のものを指し、分子量にも依存するが好ましくは概略10nm以上200nm以下のものを指す。該共重合体のミクロドメイン構造の恒等周期に依存するが、膜厚が1μm程度より大きくなると、後述する表面によって引き起こされるミクロドメイン構造の配向が膜の内部で乱れ易くなり、膜厚が1nm以下になると脱濡れ(dewetting)により部分的に基板が露出した部分が生じるなど膜の欠陥が多くなるため、上記の範囲が好適である。但し最終的に製造される無機化合物薄膜の厚みは、樹脂組成物の薄膜からの除去によって上記の範囲からは膜厚の薄い側へずれたものとなる。この最終的な膜厚は前駆体の導入量により調節可能な範囲で目的に応じ任意に決められる。
【0031】上記の溶液の基板上への展開は、例えばスピンキャスト法、ディッピング法やドクターナイフ法などによって好適に行うことができる。
【0032】溶液の基板上への展開の後、適当な条件で乾燥することによって薄膜内部にミクロ相分離構造が形成される。ここで前記ミクロ相分離構造は、共重合体Pを構成する各高分子鎖成分の表面張力の大きさ及び基板に用いた材料との界面張力の大きさに依存して薄膜表面に対し配向する。この効果は、例えば文献T. P. Russell, G. Coulon, V. R. Deline, D. C. Miller, Macromolecules 22,4600 (1989)などで示される如くである。本願発明でいうナノメートルスケールで制御された無機微粒子の配置は、後に示される如くこの配向組織によって実現される。但し、文献Y. Liu, W. Zhao, X. Zheng, A. King, A. Singh, M. H. Rafailovich, J. Sokolov, K. H. Dai, E. J. Kramer, S. A. Schwarz, O. Gebizlioglu, S. K. Sinha, Macromolecules 27, 4000 (1994)で指摘されるように、上記の効果は膜厚が大きくなると薄れるため、先に述べたとおり膜厚を適切な範囲に調整することが必要である。
【0033】また乾燥後の薄膜に、熱処理や溶媒処理などを行うことにより、上記ミクロ相分離構造中の欠陥や歪みを減少させることができる。例えば溶媒処理として、薄膜を共重合体Pを構成する高分子鎖成分の共通溶媒の蒸気に接触させるなどの方法を好適に用いることができる。例えば文献R. J. Albalak, M. S. Capel, E. L. Thomas, Polymer 39, 1647 (1998)などで示される如くである。
【0034】あるいは乾燥後の薄膜に、適当な溶媒処理を実施することによって上記ミクロ相分離構造の配向の向きを薄膜の面内方向へ揃えることができる。例えば、面内方向で厚みに変化をつけた薄膜を作製し、上記薄膜を該薄膜を形成するブロック共重合体の溶媒蒸気に接触させた後で急激に乾燥させることによって、膜厚の勾配方向に対して配向したミクロドメイン構造が得られることは文献Kenji Fukunaga, Hubert Elbs, Robert Magerle, and Georg Krausch, Macromolecules 33, 947 (2000)に示される如くである。
【0035】上記の配向構造は、望ましくはミクロドメイン界面が基板表面に対して垂直に配向した構造から選択される。ここでミクロドメイン界面が基板表面に対して垂直に配向するとは、上記界面の法線方向が平均すると概略基板表面と平行な面内にあることを意味する。例として基板表面に対して垂直に配向したラメラ状ミクロドメインが挙げられる。このような構造では、後で形成される無機微粒子の配置を基材に対して効果的に制御できる。
【0036】上記のように特定の配向を持つミクロドメイン構造をその内部に有する共重合体Pの薄膜は、無機微粒子複合体薄膜を製造する場合は、適当な手法により前駆体PAとは別の種類の金属や金属酸化物の前駆体PBが共重合体Pを構成する高分子鎖のうち全部ではない特定の高分子鎖からなるミクロドメイン部分へ更に導入される。
【0037】本発明に用いられる無機化合物前駆体PAに特に制限はないが、塩化ジルコニウム、塩化チタン、塩化ハフニウム、塩化スズ、塩化インジウム、塩化鉄、硫酸ジルコニウムなどの金属塩や、シリケート、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドなどの有機塩が好適に用いられる。また上記前駆体から得られる無機化合物微粒子と複合化される金属微粒子あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBとして、パラジウムアセチルアセトナート、ルテニウムアセチルアセトナート、ロジウムアセチルアセトナートなどの金属錯体、リンタングステン酸などが好適に用いられ、ルテニウムやオスミウムの四酸化物なども用いられる。また上記前駆体PBとして、先に前駆体PAの例として挙げた物質も用いることができる。
【0038】無機化合物前駆体PAを共重合体Pを構成する高分子鎖のうち全部ではない特定の高分子鎖からなるミクロドメイン部分へ導入する方法としては、ガス状または液状にした前駆体PAあるいは該前駆体PAの溶液に薄膜を接触させることで行うことが出来る。後述するように前駆体PAが特定のミクロドメイン部分へ取り込まれるために、共重合体Pを構成する高分子鎖成分は該前駆体PAに対して親和性を有する高分子と親和性を有さない高分子の組み合わせから選択される。例えば、リンタングステン酸の水溶液にpoly(styrene-b-acrylic acid-b-methacrylate)共重合体からなる薄膜を接触させると、前記前駆体はポリアクリル酸部分へ選択的に取り込まれる。
【0039】あるいは、上記前駆体PAを特定のミクロドメイン部分への導入するために、共重合体Pと該前駆体PAを共通の溶媒に共に溶解した均一溶液Sを薄膜の展開溶液に用いる方法を取ることができる。共通の溶媒としては、1種類の溶媒あるいは2種類以上の溶媒からなる混合溶媒を適宜用いることが出来る。上記の溶媒は共重合体Pを構成する各高分子鎖成分に対する共通の良溶媒であってもよいし、全部ではない一部の高分子鎖成分にとって貧溶媒であり他の高分子鎖成分に対しては良溶媒であるところの選択溶媒であってもよい。
【0040】共重合体Pを構成する高分子鎖成分は上記溶液S中で、無機化合物前駆体PAに対して選択性を示す2種類あるいは2種類以上の高分子成分から選択される。ここでいう選択性とは、溶液Sを基板表面に展開し乾燥する際に、該前駆体が共重合体Pを構成する高分子鎖成分のうち全部ではない1種類あるいは1種類以上の特定の高分子鎖成分からなるミクロドメイン部分へ偏在することを意味する。
【0041】前駆体が特定の高分子鎖成分からなるミクロドメイン部分へ偏在するとは、薄膜内部における該前駆体の濃度が該ミクロドメイン内で高くなり、他の部分ではこれに比較して濃度が低いことを意味する。
【0042】前記の偏在は薄膜の乾燥工程で該前駆体が、共重合体Pを構成する高分子鎖成分のうち全部ではない1種類あるいは1種類以上の特定の高分子鎖成分に対して親和性を示すことによって引き起こすことができる。
【0043】例えば塩化鉄や、文献H. Kaczmarek, I. A. Linden, J. F. Rabek,J. Appl. Polym. Sci., 60, 2321 (1996)に開示されているように、チタン、ジルコニウムやハフニウムの塩はポリアクリル酸に配位するため、例えばポリアクリル酸と他の高分子のブロック共重合体、例えばpoly(styrene-b-acrylic acid-b-styrene)と上記前駆体の溶液を用いることによって該前駆体をポリアクリル酸のミクロドメイン部分に偏在させることができる。あるいは特開2000-072952で指摘されているような、ポリビニルピリジンなど特定の高分子鎖が示す金属との親和性や、文献Bruce M. Novak, David Auerbach, Celine Verrier, Chem. Mater., 6, 282 (1994)で指摘されているような、ポリビニルピリジンやポリジメチルアリルアミドなどの高分子鎖が示すガラス前駆体やガラスとの親和性などを利用することもできる。あるいはブロック共重合体Pを構成する高分子鎖の一方の末端をチオールなどで修飾することにより、前駆体との親和性を生じせしめ該前駆体の偏在を引き起こすことが出来る。
【0044】また例えば、ジルコニウムアルコキシドなどを水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒に溶解し、更にpoly(styrene-b-acrylic acid-b-styrene)共重合体を溶解して均一溶液とし該溶液を基板上に展開の後乾燥させると、揮発性のTHFが先に薄膜から蒸発し、最終的に上記前駆体の分布は一様にならず水溶性のポリアクリル酸部分へ偏在する。またパラジウムアセチルアセトナートをベンジルアルコールとTHFの混合溶媒に溶解し、更にpoly(styrene-b-acrylic acid-b-methacrylate)共重合体を溶解して均一溶液とし該溶液を基板上に展開の後乾燥させると、揮発性のTHFが先に薄膜から蒸発し、該前駆体の分布はポリアクリル酸部分への偏在を示した。
【0045】2種類以上の無機微粒子からなる複合体薄膜を製造する場合、上記のように無機化合物前駆体Aを全部ではない特定のミクロドメインに偏在した形で含むブロック共重合体Pの薄膜は、更に前駆体PAとは別の金属あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBが該薄膜中へ導入され複合化される。
【0046】金属あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBを薄膜に導入する方法としては、ガス状または液状にした前駆体PBあるいは該前駆体PBの溶液に薄膜を接触させることで行うことが出来る。前駆体PAの場合と同様に上記前駆体PBが特定のミクロドメイン部分へ取り込まれるために、共重合体Pを構成する高分子鎖成分は該前駆体PBに対して親和性を有する高分子と親和性を有さない高分子の組み合わせから選択される。ここで前駆体PBに対して親和性を示す高分子鎖は、先に述べた前駆体PAに対して選択性を示す高分子鎖と同じであっても構わない。
【0047】あるいは前駆体PBを薄膜に導入する方法としては、共重合体Pと前駆体PA及びPBを共通溶媒に共に溶解した均一溶液S'を薄膜の展開溶液に用い、溶液S'を基板上に展開し乾燥させる方法を取ることができる。この場合でも共通の溶媒としては、1種類の溶媒あるいは2種類以上の溶媒からなる混合溶媒を適宜用いることが出来る。
【0048】共重合体Pを構成する高分子鎖成分は上記溶液S中で、無機化合物前駆体PA及びPBに対して選択性を示す2種類あるいは2種類以上の高分子成分から選択される。ここでも、前駆体PBに対して親和性を示す高分子鎖は、前駆体PAに対して選択性を示す高分子鎖と同じであっても構わない。
【0049】金属あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBを導入された薄膜は、該前駆体PBから金属あるいは金属酸化物の微粒子Bを形成する処理が行われる。この工程は共重合体Pを構成する各々の高分子鎖の熱分解が顕著には起こらない条件において、更に詳しくは薄膜中に形成されているミクロ相分離構造が損なわれない範囲において、熱処理あるいは還元剤など反応助剤への接触などによって行われる。
【0050】例えば上記前駆体PBとして、パラジウムアセチルアセトナートなどの金属錯体を用いる場合、無機微粒子Bを形成するために、該薄膜を昇温雰囲気でアルコール蒸気に接触させてアルコール還元を行うなどの処理が好適に用いられる。あるいは前駆体PBとして金属アルコキシドなど加水分解性の前駆体が用いられた場合、該薄膜を酸性雰囲気で水あるいは水蒸気に接触させるなどの方法を用いて無機微粒子Bを形成させることができる。
【0051】ここで無機微粒子Bの形成は、前駆体PBが偏在している特定のミクロドメイン内で進行するため、生成する無機微粒子の大きさ及び薄膜内部における配置は、該薄膜内に形成されているミクロドメイン構造によって制御される。この方法で形成される無機微粒子Bのサイズ分布は狭く、その大きさは薄膜中に導入した前駆体PBの量や前記前駆体PBが偏在しているミクロドメインの大きさに依存するが、好ましくは50nm以下である。
【0052】無機化合物微粒子の前駆体PAを導入された薄膜あるいは金属あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBを導入された薄膜については無機微粒子Bを形成した後の薄膜は、薄膜内に導入されている前駆体PAから無機化合物微粒子Aを形成する処理が行われる。この工程は熱処理や還元剤などの反応助剤への接触などによって行われるが、好ましくは熱処理によって行われる。この工程においては、共重合体Pを構成する高分子鎖の熱分解などにより薄膜中のミクロ相分離構造が部分的に損なわれても構わない。
【0053】ここで無機化合物薄膜の母材である無機微粒子Aの形成は、前駆体PAが偏在している特定のミクロドメイン内で進行するため、先に述べた無機微粒子Bの形成の場合と同様に、該微粒子の大きさ及び薄膜内部における配置が、該薄膜内に形成されているミクロドメイン構造によって制御される。この方法で形成される無機微粒子Aのサイズ分布は狭く、その大きさは薄膜中に導入した前駆体PAの量や前記前駆体PAが偏在しているミクロドメインの大きさに依存するが、好ましくは50nm以下である。
【0054】上記の無機微粒子Aの形成工程に引き続いて、薄膜から樹脂組成物が除去される。上記樹脂組成物の除去は、好ましくは樹脂組成物の熱分解温度TD以上(例えば、200〜500℃、好ましくは300℃以上)での熱処理による該組成物の分解によって行われる。好ましくは、先に述べた熱処理で無機化合物前駆体PAから無機微粒子Aを形成する場合について、上記TDか無機微粒子Aが形成される温度TAのうち高い方の温度TFまで薄膜を昇温することにより、前駆体PAから微粒子Aを形成させると同時に、上記薄膜中から樹脂組成物を除去させることができる。
【0055】無機微粒子Aと金属微粒子Bからなる無機微粒子複合体薄膜を製造する場合で、金属微粒子前駆体PBから微粒子Bを形成する場合に昇温雰囲気を用いる場合、更に好ましくは、前駆体PAと前駆体PBがそれぞれ全部ではない特定のミクロドメインへ偏在した薄膜を、液相あるいは気相にある前駆体PBの還元剤に接触させながら上記の温度TFまで昇温し、微粒子Bを形成させるのと平行してあるいは引き続いて無機微粒子Aの形成及び樹脂組成物の除去を行うことが出来る。このとき先に述べた温度TD及びTAより低い温度で、金属微粒子Bが形成されることが必要である。
【0056】
【実施例】以下実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0057】実施例1無機化合物前駆体Aとして四塩化チタン(和光純薬製)を用いた。以下このチタニア前駆体をA1とする。
【0058】ブロック共重合体Pとして、アニオン重合により合成したpoly(styrene-b-acrylic acid-b-methyl-methacrylate)ブロック共重合体で、polystyrene鎖、poly(acrylic acid)鎖、poly methacrylate鎖の数平均分子量Mnがそれぞれ18600、36200、22100のもので、分子量分布が1.02のものを用いた。以下これをP1とする。
【0059】A1をTHFに溶解し、更にP1をこのTHF溶液に概ね7g/lの濃度となるように溶解した。更に、無機微粒子前駆体Bとしてpalladium acetylacetonate(アルドリッチ製、以下B1)を溶解し均一溶液S1を調整した。このとき、A1とP1の重量比が39/61、及びA1とB1の重量比が57/33となるように用いた。
【0060】調整した溶液S1を、表面に自然酸化膜を形成したシリコンウェハー(以下、SiOx基板)上にスピンキャストし、薄膜を形成した。上記薄膜はSiOx基板に対して脱濡れ(dewetting)を生じておらず、濃青色を呈する均一な薄膜が得られた。
【0061】薄膜の表面構造の観察には、走査型電子顕微鏡(日本電子製)と原子間力顕微鏡(Digital Instruments製NanoscopeIII、以下AFM)を用いた。AFMによる観察は、単結晶シリコンカンチレバーを用い上記顕微鏡のtapping modeで行った。
【0062】薄膜の厚みは、AFMを用いてJIS R1636に準じて測定した。
【0063】キャスト直後の薄膜の膜厚は100nmであり、その表面には該共重合体の基板に対する配向を示唆する一定周期の規則的な列状の凹凸が観察され、表面の凹凸の粗さは2nm以下であった。
【0064】薄膜の内部構造観察には、透過型電子顕微鏡(日立製作所製H-7100FA、以下TEM)を用いた。
【0065】キャスト直後の薄膜を基板から剥離し、その内部構造を無染色にてTEMで観察すると、ブロック共重合体P1のラメラ状構造に由来する列状構造が観察された。
【0066】上記薄膜を、ベンジルアルコールを入れた開放容器と共に140℃の温度に保った恒温槽中へ入れ、ベンジルアルコールの140℃における飽和蒸気雰囲気中で1時間ほど熱処理を行った。引き続いてベンジルアルコールの容器を取り除き、上記薄膜に対し温度140℃で2時間の熱処理を大気中において行った。上記処理を行った薄膜の色は少し薄く黒味がかり黒変し、前駆体B1の還元が進行していることを示した。
【0067】上記の薄膜を基板から剥離し、その内部構造を無染色にてTEMで観察すると、チタニア前駆体の偏在によって周囲より暗いコントラストで観察されるpoly(acrylic acid)のミクロドメインと、他のブロック鎖で形成される周囲のドメインとの界面近傍に、暗いコントラストを示す微粒子が多数形成されていた。上記の微粒子のサイズ分布は単分散であり、その大きさは概略10nmであった。
【0068】ガラス基板に支持された薄膜に対し引き続いて、温度400℃で3時間の熱処理を大気中で行った。この処理により薄膜の色は、薄黒色から薄茶色へと変化した。
【0069】熱処理後における薄膜の光透過率の測定は、日本分光(株)製分光光度計を用い、積分球を使用しJIS R1635に準じて行った。上記の薄膜の波長550nmにおける可視光透過率は??61%であるのに対し、UV-A(波長320〜400nm)、UV-B(波長280〜320nm)に対する紫外線透過率はそれぞれ18%、1%であった。
【0070】実施例2基板をポリイミドシートに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリイミドシートに支持された無機微粒子複合体薄膜を得た。薄膜は薄茶色を呈しこの薄膜の断面をTEMで観察すると????、10〜数nmのサイズの明るいコントラストで見える微粒子の集合体中に、暗いコントラストで見える概略10nmのサイズの微粒子が均一に分散した構造が観察された。元素分析の結果、明るいコントラストの部分からTiが、暗いコントラストの部分からPdが検出され、それぞれ酸化チタン微粒子および金属パラジウム微粒子からなると推察された。
【0071】実施例3無機微粒子前駆体Bとしてruthenium acetylacetonate(アルドリッチ製、以下B2)を用いた以外は実施例5と同様にして、ポリイミドシートに支持された無機微粒子複合体薄膜を得た。薄膜は均一な薄黒色を呈し、その内部構造をTEM観察すると????、概略10nmのサイズの明るいコントラストで見える微粒子の集合体中に、暗いコントラストで見える数nmのサイズの微粒子が均一に分散した構造が観察された。元素分析からは、酸化チタン微粒子からなる母材中に酸化ルテニウム微粒子が分散した構造の薄膜であると推察された。。
【0072】比較例1ブロック共重合体の代わりにpoly(acrylic acid)(和光純薬製)で分子量25000のもの(以下H1)を用いた以外は実施例1と同様にして無機化合物薄膜を形成した。熱処理後の試料表面には不均一に分布した概略200nm以上の凝集体が多数観察された。上記凝集物部分を走査型電子顕微鏡付属のEPMAで分析したところチタンが検出されたが、凝集物間には広く基板が露出した部分が観察され、基板露出部分ではチタンは検出されなかった。ここでは本願発明でいう均一に分散した無機微粒子からなる薄膜は得られなかった。またこの薄膜の波長550nmにおける可視光透過率は74%であったが、UV-A(波長320〜400nm)、UV-B(波長280〜320nm)に対する紫外線透過率はそれぞれ51%、17%であった。
【0073】比較例2ブロック共重合体の代わりにホモポリマーH1を用いた以外は実施例2と同様にして無機化合物薄膜を形成した。熱処理後の試料表面には不均一に分布した長さが1μm以上に及ぶ針状の粗大な凝集体が多数観察され、均一に分散した無機微粒子からなる薄膜は得られなかった。
【0074】
【発明の効果】サイズ及び配置がナノメートルスケールで制御された無機化合物微粒子からなる薄膜が溶液の塗布及び熱処理といった従来にない簡便なプロセスで製造でき、超微粒子含有組成物に期待される光線遮蔽や触媒????などの機能が実現できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】無機化合物微粒子Aからなる薄膜中及び/または表面に、金属あるいは金属酸化物から構成される無機微粒子Bが共に均一に分散しており、上記微粒子AおよびBの大きさが100nm以下であり、及び薄膜表面の粗さが50nm以下であることを特徴とする無機微粒子複合体薄膜。
【請求項2】(1)互いに非相溶な高分子鎖が各々の末端で結合したブロック共重合体Pと無機化合物の前駆体PAからなる均一溶液Sを調整する工程、(2)溶液Sを基板上に展開する工程、(3)前記薄膜中で上記共重合体Pにミクロ相分離を起こさせ特定の配向を持つミクロドメイン構造を形成させると同時に、上記前駆体PAを全部ではない特定のミクロドメイン構造上に偏在させる工程、(4)上記薄膜を気相にある金属あるいは金属酸化物微粒子前駆体PBに接触させ、前駆体PBを特定のミクロドメイン構造へ取り込ませた後、無機微粒子Bを析出させる工程、(5)上記前駆体PAから無機化合物微粒子Aを析出させる工程、(6)上記薄膜中から樹脂組成物を除去させる工程からなることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子複合体薄膜の製造法。
【請求項3】(1)互いに非相溶な高分子鎖が各々の末端で結合したブロック共重合体Pと無機化合物の前駆体PA及び金属あるいは金属酸化物微粒子の前駆体PBからなる均一溶液S’を調製する工程、(2)溶液S’を基板上に展開する工程、(3)前記薄膜中で上記共重合体Pにミクロ相分離を起こさせ特定の配向を持つミクロドメイン構造を形成させると同時に、上記前駆体PA及びPBをおのおの特定のミクロドメイン構造上に偏在させる工程、(4)薄膜中で前駆体PBから無機微粒子Bを析出させる工程、(5)上記前駆体PAから無機化合物微粒子Aを析出させる工程、(6)上記薄膜中から樹脂組成物を除去させる工程からなることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子複合体薄膜の製造法。
【請求項4】無機微粒子前駆体PBから無機微粒子Bを析出させる工程の後で、共重合体Pの熱分解温度以上かつ前駆体PAから無機化合物微粒子Aが形成される温度で薄膜を熱処理することにより、前駆体PAから微粒子Aを形成させると同時に、上記薄膜中から樹脂組成物を除去させることを特徴とする請求項2および3記載の無機微粒子複合体薄膜の製造法。
【請求項5】無機微粒子前駆体Bとして金属微粒子前駆体を用い、前駆体PA,PAがそれぞれ全部ではない特定のミクロドメイン構造上に偏在した薄膜を形成した後で、共重合体Pの熱分解温度と前駆体PAから無機化合物微粒子Aが形成される温度のうち高い側の温度をTとしたとき、液相あるいは気相にある前駆体Bの還元剤に薄膜を接触させながら昇温させることによって無機微粒子Bを析出させるのに連続して、前駆体PAから酸化物微粒子Aを形成させると同時に、上記薄膜中から樹脂組成物を除去させることを特徴とする請求項2〜4記載の無機微粒子複合体薄膜の製造法。

【公開番号】特開2002−137321(P2002−137321A)
【公開日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−334544(P2000−334544)
【出願日】平成12年11月1日(2000.11.1)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】