説明

複合光学素子用樹脂組成物、複合光学素子、ならびに複合光学素子を備えた撮像装置および光学式記録再生装置

【課題】所望の光学定数を満たしながら、低粘度および低硬化収縮を実現する複合光学素子用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】フルオレン骨格を有する第1の(メタ)アクリレートと、ビフェニル環を有しかつ水酸基を有しない第2の(メタ)アクリレートを含み、前記第1の(メタ)アクリレートの含有率が、4〜42重量%である複合光学素子用樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ基材に樹脂層が積層された複合光学素子、およびその樹脂層に用いられる複合光学素子用樹脂組成物、ならびに当該複合光学素子を備えた撮像装置および光学式記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス等からなるレンズ基材に、樹脂層を積層した構造を複合光学素子と一般的に呼んでいる。この樹脂層は、複合光学素子の用途に応じて様々な化合物により構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、フルオレン環を有する(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物と、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基あるいはビニル基を有しフルオレン環を有さない化合物と、重合開始剤を含む組成物、および光学素子が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示する組成では、樹脂組成物の粘度や硬化収縮が問題となる。複合光学素子は、レンズ基材の上に樹脂組成物を塗布した後、樹脂組成物を硬化させることで形成される。樹脂組成物の粘度が高すぎると、樹脂組成物中に気泡が入っていた場合にこの気泡が抜けにくくなる。そのため、形成された複合光学素子は不良品となってしまう。また、樹脂組成物の硬化収縮が大きすぎると、樹脂組成物を硬化させる際に、レンズ基材上に形成された樹脂層が剥がれてしまう虞がある。
【0005】
また、特許文献1の光学素子は、レンズ基材と樹脂層との界面に回折格子が形成されたものではない。レンズ基材と樹脂層との界面に回折格子が形成された複合光学素子を形成する場合、光が回折格子を通過する際に回折光が発生する。この回折光の回折効率を高めるために、レンズ基材の光学定数と樹脂層の光学定数との組合せが重要になる。そのため、レンズ基材の光学定数に対して最適な光学定数を有する樹脂組成物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−37470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、所望の光学定数を満たしながら、低粘度および低硬化収縮を実現する複合光学素子用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フルオレン骨格を有する第1の(メタ)アクリレートと、ビフェニル環を有しかつ水酸基を有しない第2の(メタ)アクリレートを含み、前記第1の(メタ)アクリレートの含有率が、4〜42重量%である複合光学素子用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の光学定数を満たしながら、低粘度および低硬化収縮を実現する複合光学素子用樹脂組成物を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の複合光学素子の断面図
【図2】第1実施形態の複合光学素子の製造工程の概略を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0012】
[第1実施形態]
1.樹脂組成物
本実施形態の樹脂組成物は、(A)フルオレン骨格を有する第1の(メタ)アクリレートと、(B)ビフェニル環を有しかつ水酸基を有しない第2の(メタ)アクリレートを必須成分として含む。本実施形態の樹脂組成物は、これらの必須成分に加え、他の成分、例えば、(C)多官能イソシアヌレート骨格を有する第3の(メタ)アクリレート、(D)ビフェニル環を有しかつ水酸基を有する第4の(メタ)アクリレート、および(E)重合開始剤を含んでいてもよい。まず、樹脂組成物の各成分について説明する。
【0013】
(A)フルオレン骨格を有する第1の(メタ)アクリレート
第1の(メタ)アクリレートである、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートは、フルオレン化合物と(メタ)アクリル酸が反応してエステル化した構造を有する。フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートは、組成物の硬化収縮を小さくし、屈折率を高くかつアッベ数を小さくする成分である。当該(メタ)アクリレート化合物は、組成物の硬化性の観点から好ましくは、(メタ)アクリロイル基を2個有する(メタ)アクリレート化合物(ジ(メタ)アクリレート化合物)である。また、硬化性の観点から好ましくは、アクリレート化合物である。
【0014】
フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートとして特に好ましくは、式(1)で表される化合物である。
【0015】
【化1】

(式中、pおよびqはそれぞれ、正の整数を示し、p+qは、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜10である。)
【0016】
式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートの含有率は、樹脂組成物全体を100重量%として4〜42重量%である。含有率が4重量%よりも小さいと、組成物の硬化収縮が大きくなりすぎてしまい、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは6重量%以上、さらに好ましくは7重量%以上である。一方、含有率が42重量%を超えると、組成物の粘度が高くなりすぎてしまい、好ましくは、40重量%以下、より好ましくは38重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。
【0023】
(B)ビフェニル環を有し水酸基を有しない第2の(メタ)アクリレート
第2の(メタ)アクリレートである、ビフェニル環を有し水酸基を有しない(メタ)アクリレートは、屈折率が比較的高く硬化収縮が比較的小さい一方で、粘度が小さい。したがって、上記フルオレン骨格を有する第1の(メタ)アクリレートとビフェニル環を有し水酸基を有しない第2の(メタ)アクリレートとを組み合わせることにより、所望の光学定数を満たしながら、低粘度および低硬化収縮を実現することが可能である。
【0024】
ビフェニル環を有し水酸基を有しない(メタ)アクリレートは、組成物の硬化性の観点からは、(メタ)アクリロイル基を2個有する(メタ)アクリレート化合物(ジ(メタ)アクリレート化合物)が好ましいが、粘度の観点からは(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレート化合物(モノ(メタ)アクリレート化合物)が好ましい。また、硬化性の観点から好ましくは、アクリレート化合物である。
【0025】
ビフェニル環を有し水酸基を有しない(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(7)および(8)で表される化合物が使用可能である。
【0026】
【化7】

(式中、rは正の整数を示し、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10である。)
【0027】
【化8】

(式中、sは正の整数を示し、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10である。)
【0028】
式(8)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
(C)多官能イソシアヌレート骨格を有する第3の(メタ)アクリレート
第3の(メタ)アクリレートである多官能イソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレートは、前記第2の(メタ)アクリレートよりも組成物の硬化収縮を小さくする効果が大きい。硬化性の観点から好ましくは、アクリレート化合物である。多官能イソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(14)で表される化合物が使用可能である。
【0035】
【化14】

(式中、l+m+n=0.7〜2.5である。)
【0036】
その具体例としては、下記式(15)〜(17)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

【0040】
(D)ビフェニル環を有しかつ水酸基を有する第4の(メタ)アクリレート
第4の(メタ)アクリレートであるビフェニル環を有しかつ水酸基を有する(メタ)アクリレートは、前記第2の(メタ)アクリレートよりも、粘度は高いものの組成物の硬化収縮を小さくする効果が大きい。ビフェニル環を有しかつ水酸基を有する(メタ)アクリレートは、組成物の硬化性の観点からは(メタ)アクリロイル基を2個有する(メタ)アクリレート化合物(ジ(メタ)アクリレート化合物)が好ましいが、粘度の観点からは(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレート化合物(モノ(メタ)アクリレート化合物)が好ましい。また、硬化性の観点から好ましくは、アクリレート化合物である。ビフェニル環を有しかつ水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(18)で表される化合物が使用可能である。
【0041】
【化18】

(式中、xおよびyはそれぞれ、正の整数を示し、x+yは、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜10である。)
【0042】
式(18)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
【化21】

【0046】
【化22】

【0047】
【化23】

【0048】
第4の(メタ)アクリレートとしては、式(24)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
【0049】
【化24】

(式中、zは、正の整数を示し、好ましくは1〜29であり、より好ましくは1〜19、さらに好ましくは1〜9である。)
【0050】
(E)重合開始剤
(E)重合開始剤の種類は、成分(A)〜成分(D)の種類に応じて適宜選択すればよく、ラジカル光重合開始剤を好適に用いることが出来る。
【0051】
ラジカル光重合開始剤としては、公知のものを使用でき、例えば、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ヒドロキシケトン系等のラジカル光重合開始剤を用いることができる。具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどがある。また、分子量の大きいもの、特にオリゴマータイプのものを使用することで、光学素子の高温信頼性を向上させることができる。具体的には、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}などのヒドロキシケトン化合物が挙げられる。その際の分子量は250以上2000以下が好ましい。重合開始剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
重合開始剤の含有率は、樹脂組成物全体を100重量%として、0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有率がこの範囲を満たす場合、樹脂組成物の特性および信頼性を低下させずに、安定的に重合硬化させて樹脂層を形成することができる。
【0053】
上記成分(A)〜(E)の好適な組み合わせを以下に示す。
<樹脂組成物1>
(A)第1の(メタ)アクリレート
(B)第2の(メタ)アクリレート
(E)重合開始剤
【0054】
このとき、成分(A)の含有率を4〜42重量%、成分(B)の含有率を48〜94.9重量%、成分(E)の含有率を0.1〜10重量%とするのが好ましい。
【0055】
このような構成にすると、所望の光学定数(屈折率・アッベ数)を示しかつ低粘性で、樹脂層形成時の硬化収縮が小さい。
【0056】
<樹脂組成物2>
(A)第1の(メタ)アクリレート
(B)第2の(メタ)アクリレート
(C)第3の(メタ)アクリレート
(E)重合開始剤
【0057】
このとき、成分(A)の含有率を4〜42重量%、成分(B)と(C)の合計含有率を48〜95.9重量%重量%、成分(E)の含有率を0.1〜10重量%とするのが好ましい。
【0058】
このような構成にすると、所望の光学定数(屈折率・アッベ数)を示しかつ低粘性で、樹脂層形成時の硬化収縮が小さい。
【0059】
<樹脂組成物3>
(A)第1の(メタ)アクリレート
(B)第2の(メタ)アクリレート
(D)第4の(メタ)アクリレート
(E)重合開始剤
【0060】
このとき、成分(A)の含有率を4〜42重量%、成分(B)と(D)の合計含有率を48〜95.9重量%、成分(E)の含有率を0.1〜10重量%とするのが好ましい。
【0061】
このような構成にすると、所望の光学定数(屈折率・アッベ数)を示しかつ低粘性で、樹脂層形成時の硬化収縮が小さい。
【0062】
<樹脂組成物4>
(A)第1の(メタ)アクリレート
(B)第2の(メタ)アクリレート
(C)第3の(メタ)アクリレート
(D)第4の(メタ)アクリレート
(E)重合開始剤
【0063】
このとき、成分(A)の含有率を4〜42重量%、成分(B)と(C)と(D)の合計含有率を48〜95.9重量%、成分(E)の含有率を0.1〜10重量%とするのが好ましい。
【0064】
このような構成にすると、所望の光学定数(屈折率・アッベ数)を示しかつ低粘性で、樹脂層形成時の硬化収縮が小さい。
【0065】
樹脂組成物に紫外線を照射することにより、特に任意の重合開始剤によって重合が開始され、(A)第1の(メタ)アクリレートおよび(B)第2の(メタ)アクリレート、並びに場合により(C)第3の(メタ)アクリレートおよび(D)第4の(メタ)アクリレートが重合して樹脂組成物が硬化し、光学素子の樹脂層を形成することができる。
【0066】
樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記成分(A)〜(E)以外の成分を含んでいてもよい。例えば、ビシクロヘキシル環を有する(メタ)アクリレート等の第1〜第4以外の(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。また、カップリング剤、紫外線吸収剤、離型剤等を含んでいてもよい。
【0067】
2.複合光学素子
図1は、第1実施形態の複合光学素子の断面図である。図1の1点鎖線は、複合光学素子10の光軸である。複合光学素子10は、図1の断面図の形状を光軸周りに回転させてできる回転体の形状を有する。図1に示すように、複合光学素子10は、回折格子12を備えたレンズ基材11と、レンズ基材11に積層された樹脂層13とを備える。回折格子12は、レンズ基材11と樹脂層13の界面に位置している。レンズ基材11は、例えばガラス、石英、セラミックス等の材料により形成することができる。これらのうち、樹脂層13の光学特性に最も適合することから、レンズ基材11はガラス製であることが好ましい。樹脂層13は、前記の樹脂組成物の硬化物により形成されている。なお、第1実施形態では、レンズ基材は、片面のみが凸面となっているが、両面が凸面となっていてもよく、一方または両方の面が凹面であってもよい。また、樹脂層13はレンズ基材11の両面に形成してもよい。
【0068】
樹脂層13の屈折率をnd、アッベ数をvdとしたときに、1.600≦nd≦1.615、22≦vd≦28を満たすことが好ましい。このとき、その光学特性がレンズ基材11、特にガラス製のレンズ基材の光学特性と適合する。
【0069】
また、樹脂層13の厚みは、場所によって異ならせてもよい。樹脂層13の厚みを場所によって異ならせることによって、例えば、球面を有するレンズ基材11上に、非球面形状の樹脂層13を設けた非球面レンズを構成することができる。
【0070】
3.製造方法
次に、複合光学素子の製造方法について説明する。ここでは、樹脂組成物の一例として、(A)第1の(メタ)アクリレートと、(B)第2の(メタ)アクリレートと、(E)重合開始剤とを用いた製造方法について説明する。当該製造方法は、上記成分を含む樹脂組成物を調製する工程、および当該樹脂組成物を、レンズ基材の表面で重合硬化させる工程を含む。製造方法の概略を図2に示す。
【0071】
まず、樹脂組成物を調製する工程を行う。具体的に例えば、成分(A)と、成分(B)と、成分(E)とを用意する。そして、これらを混合し、脱泡して樹脂組成物43を調製する。
【0072】
樹脂組成物の粘度は、25℃において、その粘度が2100mPa・s以下であることが好ましく、1500〜2000mPa・sであることがより好ましい。粘度が2100mPa・sより大きいと樹脂組成物の成分を混合する際に発生した気泡を除去しにくく、樹脂層に気泡が残留しやすい。
【0073】
次に、当該樹脂組成物を、レンズ基材の表面で重合硬化させる工程を行う。具体的に例えば、図2(a)のように、複合光学素子の樹脂層の形状に合わせた型21の表面に、ディスペンサ22から樹脂組成物23を滴下する。次に図2(b)のように、樹脂組成物上にレンズ基材11(ここでは両面が凸面のものを使用し、下面側にある回折格子は図では示していない)を載せて、レンズ基材の上から重さをかけて樹脂組成物23を塗り広げる。その後、図2(c)のようにレンズ基材を型21に対して所定の高さに設置した状態で紫外線24を照射して樹脂組成物を重合硬化させる。以上のステップにより、レンズ基材11に樹脂層13を設けた複合光学素子10を得る(図2(d))。
【0074】
[第2実施形態]
第1実施形態の複合光学素子は、公知方法に従い、カメラ、ビデオカメラなどの撮像装置、光学式記録再生装置、プロジェクター等に用いることができる。前記の複合光学素子を備えた撮像装置、前記の複合光学素子を備えた光学式記録再生装置、前記の複合光学素子を備えたプロジェクターについては、これらの装置の光学特性の向上や軽量小型化が可能である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。
【0076】
各実施例および比較例について、樹脂組成物の組成、硬化時の収縮、および粘度、ならびに、樹脂組成物の硬化物の屈折率、アッベ数、および透過率を表1に示す。さらに、85℃500時間高温テスト後の透過率(劣化度)を表2に示す。
【0077】
本実施例では、樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.600以上1.615以下であり、アッベ数が22以上28以下の光学定数を、所望の光学特性として設定した。屈折率とアッベ数は、紫外線照射(3000mJ/cm2)による樹脂組成物の硬化物についてアッベ屈折計を用いて測定した。
【0078】
重合硬化時の収縮率は、紫外線照射(3000mJ/cm2)による重合硬化前後の比重の測定値を用いて算出した。具体的には、収縮率は、重合硬化前を基準にした比重の変化量を%で表わしたものである。
【0079】
樹脂組成物の粘度(mPa・s)は、E型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0080】
透過率は、紫外線照射(3000mJ/cm2)による樹脂組成物の硬化物について分光光度計にて400nmで測定した。さらに、85℃に保持された高温槽中に硬化物を500時間放置した後、透過率測定を行ない、劣化度合いを観察した。
【0081】
(実施例1)
本実施例ではまず、次の(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、8重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、92重量部
(E)光重合開始剤〔Irgacure754(BASF社製)〕、3重量部
【0082】
図2のように、この樹脂組成物上にレンズ基材を配置した。紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)が重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、図1に示す構造の実施例1の複合光学素子を作製した。
【0083】
本実施例では、屈折率が1.606、アッベ数が25.5と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.6%、粘度が250mPa・sと小さく、透過率が85%と高かった。また、表2に示すように、作製した複合光学素子を85℃で500時間放置した後の透過率は83%と2%低下はしたが、劣化は見られなかった。
【0084】
(実施例2)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、35重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、65重量部
【0085】
本実施例では、(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)が重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例2の複合光学素子を作製した。
【0086】
本実施例では、屈折率が1.610、アッベ数が23.8と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.0%と小さく、粘度が1500mPa・sと小さく、透過率が84%と高かった。
【0087】
(比較例1)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、2重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、98重量部
【0088】
本比較例では、(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)とが重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例1の複合光学素子を作製した。
【0089】
本比較例では、屈折率が1.600アッベ数が28と許容範囲であり、粘度が200mPa・sと小さく、透過率は85.5%と高かったが、硬化時の収縮率が4.5%と高かった。
【0090】
(比較例2)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、45重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、55重量部
【0091】
本比較例では、(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)とが重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例2の複合光学素子を作製した。
【0092】
本比較例では、アッベ数が23と許容範囲であり、硬化時の収縮率が3.3%と小さかったが、粘度が2200mPa・sと高く、透過率は80%と低めで屈折率が1.620と高かった。
【0093】
(実施例3)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、5重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、90重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、5重量部
【0094】
本実施例では、(A)、(B)、(C)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例3の複合光学素子を作製した。
【0095】
本実施例では、屈折率が1.605、アッベ数が25と許容範囲であり、硬化時の収縮率は4.0%と小さく、粘度が1000mPa・sと小さく、透過率が85%と高かった。
【0096】
(実施例4)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、40重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、50重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
【0097】
本実施例では、(A)、(B)、(C)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例4の複合光学素子を作製した。
【0098】
本実施例では、屈折率が1.615、アッベ数が23と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.2%と小さく、粘度が2000mPa・sと小さく、透過率が83%と高かった。
【0099】
(比較例3)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、2重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、88重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
【0100】
本比較例では、(A)、(B)、(C)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例3の複合光学素子を作製した。
【0101】
本比較例では、屈折率が1.600、アッベ数が28と許容範囲であり、粘度が500mPa・sと小さく、透過率は85.5%と高かったが、硬化時の収縮率が4.5%と高かった。
【0102】
(比較例4)
実施例1の実施例と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、45重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、45重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
【0103】
本比較例では、(A)、(B)、(C)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例4の複合光学素子を作製した。
【0104】
本比較例では、屈折率が1.615、アッベ数が23と許容範囲であり、硬化時の収縮率が3.8%と低かったが、粘度が2500mPa・sと高く、透過率は80%と低かった。
【0105】
(実施例5)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、8重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、82重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0106】
本実施例では、(A)、(B)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(D)とが重合を開始し、(A)と(B)と(D)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例5の複合光学素子を作製した。
【0107】
本実施例では、屈折率が1.604、アッベ数が26.5と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.5%と小さく、粘度が1500mPa・sと小さく、透過率が85%と高かった。
【0108】
(実施例6)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、35重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、55重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0109】
本実施例では、(A)、(B)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例6の複合光学素子を作製した。
【0110】
本実施例では、屈折率が1.612、アッベ数が25と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.0%と小さく、粘度が2000mPa・sと小さく、透過率が83%と高かった。
【0111】
(比較例5)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、2重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、88重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0112】
本比較例では、(A)、(B)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例5の複合光学素子を作製した。
【0113】
本比較例では、屈折率が1.600、アッベ数が27.8と許容範囲であり、粘度が350mPa・sと小さく、透過率は85.5%と高かったが、硬化時の収縮率が4.6%と高かった。
【0114】
(比較例6)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、45重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、45重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0115】
本比較例では、(A)、(B)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例6の複合光学素子を作製した。
【0116】
本比較例では、屈折率が1.616、アッベ数が23と許容範囲であり、硬化時の収縮率が3.0%と低かったが、粘度が2500mPa・sと高く、透過率は80%と低かった。
【0117】
(実施例7)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、5重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、75重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0118】
本実施例では、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例7の複合光学素子を作製した。
【0119】
本実施例では、屈折率が1.605、アッベ数が25と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.9%と小さく、粘度が950mPa・sと小さく、透過率が85%と高かった。
【0120】
(実施例8)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、40重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、40重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0121】
本実施例では、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例8の複合光学素子を作製した。
【0122】
本実施例では、屈折率が1.618、アッベ数が23.3と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.1%と小さく、粘度が2000mPa・sと小さく、透過率が83%と高かった。
【0123】
(比較例7)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、2重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、78重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0124】
本比較例では、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例7の複合光学素子を作製した。
【0125】
本比較例では、屈折率が1.600、アッベ数が27.5と許容範囲であり、粘度が350mPa・sと小さく、透過率は85.5%と高かったが、硬化時の収縮率が4.6%と高かった。
【0126】
(比較例8)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、45重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、35重量部
(C)第3の(メタ)アクリレート〔式(17)〕、10重量部
(D)第4の(メタ)アクリレート〔式(23)〕、10重量部
【0127】
本比較例では、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)と(C)と(D)が重合を開始し、(A)と(B)と(C)と(D)と(E)がレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例8の複合光学素子を作製した。
【0128】
本比較例では、屈折率が1.614、アッベ数が23と許容範囲であり硬化時の収縮率は3.3%と低かったが、粘度が2500mPa・sと高く透過率は80%と低かった。
【0129】
(実施例9)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、5重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、95重量部
(E)光重合開始剤 KIP150(Lamberti社製)
【0130】
本実施例では、(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)が重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例9の複合光学素子を作製した。
【0131】
本実施例では、屈折率が1.605、アッベ数が25と許容範囲であり、硬化時の収縮率は4.0%と小さく、粘度が200mPa・sと小さく、透過率が88%と高かった。また、表2に示すように、作製した複合光学素子を85℃で500時間放置した後の透過率は88%と全く劣化はなかった。
【0132】
(実施例10)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、35重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、65重量部
(E)光重合開始剤 KIP150(Lamberti社製)
【0133】
本実施例では、(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)が重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例10の複合光学素子を作製した。
【0134】
本実施例では、屈折率が1.610、アッベ数が23.8と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.0%と小さく、粘度が1500mPa・sと小さく、透過率が85%と高かった。
【0135】
(実施例11)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、10重量部
(B)第2の(メタ)アクリレート〔式(12)〕、90重量部
【0136】
本実施例では、(A)、(B)、(E)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(B)が重合を開始し、(A)と(B)と(E)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、実施例11の複合光学素子を作製した。
【0137】
本実施例では、屈折率が1.607、アッベ数が25と許容範囲であり、硬化時の収縮率は3.0%と小さく、粘度が300mPa・sと小さく、透過率が85%と高かった。
【0138】
(比較例9)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、20重量部
(F)脂環式ジアクリレート〔式(25)〕、80重量部
【0139】
【化25】

【0140】
本比較例では、(A)、(E)、(F)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(F)が重合を開始し、(A)と(E)と(F)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例9の複合光学素子を作製した。
【0141】
本比較例では、硬化時の収縮率は3.8%と小さく、粘度が800mPa・sと小さく、透過率が86%と高かったが、屈折率が1.5497と低く、アッベ数が39と高かった。
【0142】
(比較例10)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、20重量部
(G)脂肪族トリアクリレート〔式(26)〕、80重量部
【0143】
【化26】

【0144】
本比較例では、(A)、(E)、(G)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(G)が重合を開始し、(A)と(E)と(G)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例10の複合光学素子を作製した。
【0145】
本比較例では、粘度が600mPa・sと小さく、透過率が85%と高かったが、硬化時の収縮率は5.0%と高く、屈折率が1.5278と低く、アッベ数が44と高かった。
【0146】
(比較例11)
実施例1と異なる点は以下の通りである。
(A)第1の(メタ)アクリレート〔式(2)〕、10重量部
(H)フェニル基を有するアクリレート〔式(27)〕、90重量部
【0147】
【化27】

【0148】
本比較例では、(A)、(E)、(H)の各成分を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物上にレンズ基材を配置し、紫外線を照射すると光重合開始剤によって(A)と(H)が重合を開始し、(A)と(E)と(H)とがレンズ基材上で重合硬化され、樹脂層が形成された。このようにして、比較例11の複合光学素子を作製した。
【0149】
本比較例では、硬化時の収縮率は3.2%と小さく、透過率が85%と高かったが、
粘度が13mPa・sと小さく、屈折率が1.5661と低く、アッベ数が35と高かった。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
上述の実施例および比較例から、以下のことが分かった。
【0153】
(1)実施例1および2のように、(A)第1の(メタ)アクリレートと(B)第2の(メタ)アクリレートを用い、(A)第1の(メタ)アクリレートの含有率を4〜42重量%とすることで、所望の光学定数を満たし、かつ、粘度が小さく、硬化時の収縮率が小さい樹脂組成物を得ることができた。
(2)実施例3および4のように、(A)第1の(メタ)アクリレートと(B)第2の(メタ)アクリレートに加えてさらに(C)第3の(メタ)アクリレートを用い、(A)第1の(メタ)アクリレートの含有率を4〜42重量%とすることで、所望の光学定数を満たし、かつ、粘度が小さく、硬化時の収縮率が小さい樹脂組成物を得ることができた。
(3)実施例5および6のように、(A)第1の(メタ)アクリレートと(B)第2の(メタ)アクリレートに加えてさらに(D)第4の(メタ)アクリレートを用い、(A)第1の(メタ)アクリレートの含有率を4〜42重量%とすることで、所望の光学定数を満たし、かつ、粘度が小さく、硬化時の収縮率が小さい樹脂組成物を得ることができた。
(4)実施例7および8のように、(A)第1の(メタ)アクリレートと(B)第2の(メタ)アクリレートに加えてさらに(C)第3の(メタ)アクリレートと(D)第4の(メタ)アクリレートを用い、(A)第1の(メタ)アクリレートの含有率を4〜42重量%とすることで、所望の光学定数を満たし、かつ、粘度が小さく、硬化時の収縮率が小さい樹脂組成物を得ることができた。
(5)実施例9および10のように、重合開始剤として分子量250以上2000以下のヒドロキシケトン化合物を用いることで、高温信頼性が向上することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の複合光学素子は、カメラ・ビデオカメラ用のレンズ、プロジェクター用のレンズ、光ディスク(CD、DVD)用レンズ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0155】
10 複合光学素子
11 レンズ基材
12 回折格子
13 樹脂層
21 型
22 ディスペンサ
23 樹脂組成物
24 紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオレン骨格を有する第1の(メタ)アクリレートと、ビフェニル環を有しかつ水酸基を有しない第2の(メタ)アクリレートを含み、前記第1の(メタ)アクリレートの含有率が、4〜42重量%である複合光学素子用樹脂組成物。
【請求項2】
多官能イソシアヌレート骨格を有する第3の(メタ)アクリレートをさらに含む請求項1に記載の複合光学素子用樹脂組成物。
【請求項3】
ビフェニル環を有しかつ水酸基を有する第4の(メタ)アクリレートをさらに含む請求項1または2に記載の複合光学素子用樹脂組成物。
【請求項4】
重合開始剤をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合光学素子用樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合開始剤が、分子量が250以上2000以下のヒドロキシケトン化合物である請求項4に記載の複合光学素子用樹脂組成物。
【請求項6】
回折格子を備えたレンズ基材と、前記レンズ基材に積層された樹脂層とを備え、前記樹脂層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物の硬化物により形成されている複合光学素子。
【請求項7】
前記樹脂層の屈折率をnd、アッベ数をvdとしたときに、
1.600≦nd≦1.615、22≦vd≦28を満たす請求項6に記載の複合光学素子。
【請求項8】
レンズ基材がガラス製である請求項6または7に記載の複合光学素子。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合光学素子を備えた撮像装置。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合光学素子を備えた光学式記録再生装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−185477(P2012−185477A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268290(P2011−268290)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】