説明

複合光学素子

【課題】樹脂材料に分散された無機微粒子の特性、特に屈折率とアッベ数を略同一にることにより、熱による屈折率変化と形状変化特性が優れた複合光学材料
【解決手段】樹脂材料中に無機微粒子が分散された光学素子であって、前記樹脂材料の屈折率と前記無機微粒子の屈折率とが略同一であり、かつ前記樹脂材料のアッベ数と前記無機微粒子のアッベ数とが略同一である複合光学素子である、相互の屈折率差が略同一であるため樹脂材料と無機微粒子界面の反射と散乱が効果的に抑制され、同時に無機微粒子の粒子径が大きくても散乱が生じにくく生産上の容易性が向上すると共に、分散剤の必要性が小さく樹脂材料と無機微粒子で決まる光学定数に分散剤の影響が生じにくい特長も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合光学素子に関し、特に、樹脂材料に分散された無機微粒子の特性、特に屈折率とアッベ数を略同一にすることにより、熱による屈折率変化と形状変化特性が優れた複合光学素子の材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂材料中に向き微粒子を分散させた材料を用いてレンズ形状を形成する方法がある。例えば特許文献1には、紫外線硬化樹脂中に無機微粒子を分散させた光学素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−38481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、樹脂材料の屈折率およびアッベ数と、無機微粒子の屈折率およびアッベ数が異なる値を有している。そのため、樹脂と無機微粒子との界面で屈折率の差による光の反射が起きる。無機微粒子は樹脂中に多数含まれているため、光学素子全体として光の散乱が発生してしまう。このように、特許文献1のような従来の光学素子では、所望の光学特性が得られないというおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光の散乱が少なく所望の光学特性を得ることができる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は樹脂材料中に無機微粒子が分散された光学素子であって、前記樹脂材料の屈折率と前記無機微粒子の屈折率とが略同一であり、かつ前記樹脂材料のアッベ数と前記無機微粒子のアッベ数とが略同一である複合光学素子である。相互の屈折率差が略同一であるため樹脂材料と無機微粒子界面の反射と散乱が効果的に抑制され、同時に無機微粒子の粒子径が大きくても散乱が生じにくく生産状の容易性が向上すると共に、分散剤の必要性が小さく樹脂材料と無機微粒子で決まる光学定数に分散剤の影響が生じにくい特長も得られる。
【0007】
樹脂材料は紫外線硬化樹脂、あるいは熱可塑性樹脂材料中に無機微粒子を分散してなることがのぞましい。面形状の精度向上に必要な材料、型構造、樹脂材料特性が得やすい。
【0008】
樹脂材料は紫外線硬化樹脂、あるいは熱可塑性樹脂材料中に分散してなることがのぞましい。面形状の精度向上に必要な材料、型構造、樹脂材料特性が得やすい。
【0009】
無機微粒子は複数の金属酸化物の化合物であるガラス様材料、または、多結晶化材料であることが望ましい。ガラス材料はガラス化する金属酸化物の組成物及び組成比の範囲が狭いが、結晶化を許容すると組成物、組成比の選択比を大きくすることが容易となり樹脂材料に分散させる材料の屈折率、及びアッベ数を略同一にする材料選択の幅が広くなる。上記樹脂材料と無機材料微粒子を分散させた複合光学素子として、ガラスレンズからなる基板の屈折率やアッベ数をより略同一にさせやすい。
【0010】
無機微粒子の平均粒子径は、樹脂材料と無機微粒子の屈折率が近接している時は大きくても散乱は生じにくく、無機微粒子の創製が容易で産業上の価値が大きい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学素子は、光の散乱が少なく所望の光学特性を得ることができる光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
[構成]
図1は、本実施の形態1に係る複合光学素子10の断面図である。図2は、図1の複合光学素子10の部分拡大断面図である。
【0013】
複合光学素子10は、第1光学素子100と、第2光学素子200とを備える。第1光学素子100は、両凸レンズであり、ガラス材料で形成されている。第2光学素子200は、第1光学素子100の一方の光学機能面上に積層されている。
【0014】
図2に示すように、第2光学素子200は、樹脂材料201中に無機微粒子101が分散された複合材料で形成されている。樹脂材料201は、熱可塑性樹脂材料である。無機微粒子101は、金属酸化物、あるいは複数の金属酸化物からなる化合物、あるいは複数の金属酸化物からなる多結晶無機微が微粒子化されたものである。無機微粒子101の粒径は、10〜100nm程度のいわゆるナノ微粒子である。無機微粒子101は、樹脂材料201中に10〜50体積%の割合で分散されている。
【0015】
本実施形態では、樹脂材料201の屈折率と無機微粒子101の屈折率とが、略同一の値を有している。樹脂材料201の屈折率と無機微粒子101の屈折率との差の絶対値が、0.05程度であれば20体積%の割合で40nmを超える粒子径のナノ微粒子であっても0.8を超える透過率が得られる。また望ましくは樹脂材料201の屈折率と無機微粒子101の屈折率との差の絶対値が、0.03程度であれば50体積%の割合で40nm程度のナノ微粒子でも0.8を超える透過率が得られる。このように樹脂材料201の屈折率と無機微粒子101の屈折率とを略同一にすることで40nmを超える大きな粒子径のナノ微粒子を用いても、樹脂材料201と無機微粒子101との界面で発生する光の反射係数を抑えることができる。その結果、複合光学素子10全体での光の散乱を抑えることができる。
【0016】
また、本実施形態では、樹脂材料201のアッベ数と無機微粒子101のアッベ数とが、略同一の値を有している。樹脂材料201の屈折率と無機微粒子101の屈折率との差の絶対値は、30を超えない程度である。樹脂材料201のアッベ数と無機微粒子101のアッベ数とを略同一にすることで、波長による散乱の発生強度変化を抑えることができる。その結果、波長によるフレアの発生量の変化を抑制でき特定の色味がついたフレアを抑えることができる。
【0017】
[製造方法]
次に、複合光学素子10の製造方法について説明する。図3は、複合光学素子10の製造工程を示す図である。
【0018】
まず、樹脂材料201中に無機微粒子101が分散された複合材料20を用意する。そして、図3(a)に示すように、下型31の成形面上にディスペンサー40を用いて複合材料20を塗布する。次に、図2(b)に示すように、塗布された複合材料20上にあらかじめ成形しておいた第1光学素子100を乗せて、複合材料20が所定の厚みになるまで押圧する。複合材料20が所定の厚みになったら、図3(c)に示すように、上型32と下型31とで、第1光学素子100および複合材料20を加熱しながら押圧する。その後、冷却し取り出すことで、図3(d)に示すような複合光学素子10を得ることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例について説明する。
【0020】
(実施例1)
実施例1として以下のような材料を用意した。まず、樹脂材料201は、ポリカーボネイト樹脂で屈折率は1.614、アッベ数は26ある。無機微粒子101は、酸化アルミニウム(Al2O3)で屈折率は1.616、アッベ数は48.7である。樹脂材料201と無機微粒子101との屈折率の差の絶対値は、0.002である。無機微粒子径の粒径は、70nmである。
【0021】
これらの材料を用いて複合材料20を作成し、光の透過率を測定した。複合材料20の厚みは1mmとした。
【0022】
本実施例では、樹脂材料201に対する無機微粒子101の体積比を、10vol%、20vol%、30vol%、40vol%、50vol%と変化させた。また、無機微粒子101の粒径を20nm、40nm、60nm、80nmと変化させた。このようにして作成された実施例1の透過率の測定結果のグラフを図4に示す。図4のグラフは、縦軸が透過率であり、横軸が粒径である。
【0023】
図4に示すとおり、ポリカーボネイト樹脂に対する体積比を50vol%にまで分散させても厚み1mmの複合材料であれば透過率は十分大きいものであった。(アッベ数差は絶対値で22.7あるが、本目的の範囲では十分小さい。)?
(実施例2)
実施例2として以下のような材料を用意した。まず、樹脂材料200は、OKP4HT(大阪ガスケミカル製ポリエステル、屈折率は1.632、アッベ数は23.4ある。無機微粒子201は、酸化アルミニウム(Al2O3)で屈折率は1.616、アッベ数は48.7である。樹脂材料201と無機微粒子101との屈折率の差の絶対値は、0.016である。無機微粒子の粒径は70nmである。複合材料20の厚みは1mmである。
【0024】
本実施例でも、実施例1と同様に、体積比および粒径を変化させて透過率の測定を行った。図5に測定結果を示す。図5に示すとおり、OKP4HT樹脂に対する体積比を50vol%にまで分散させても厚み1mmの複合材料であれば透過率は十分大きいものであった。(アッベ数差は絶対値で25.3あるが、本目的の範囲では十分小さい。)
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る樹脂材料と無機微粒子からなる複合光学素子からなるものは、樹脂材料の有する熱塑性性加工法の適用と、樹脂材料の持つ屈折率の熱変化特性の改善や熱変化による形状安定性を抑制する。これを用いた光学系では温度変化による撮像の乱れを低減可能とし有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1における複合光学素子の断面図
【図2】実施の形態1における複合光学素子の部分拡大断面図
【図3】実施の形態1における複合光学素子の製造工程を示す図
【図4】実施例1における複合材料の透過率を示すグラフ特性図
【図5】実施例2における複合材料の透過率を示すグラフ特性図
【符号の説明】
【0027】
10 複合光学素子
100 第1光学素子
101 無機微粒子
200 第2光学素子
201 樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料中に無機微粒子が分散された複合光学素子であって、前記樹脂材料の屈折率と前記無機微粒子の屈折率とが略同一であり、かつ、前記樹脂材料のアッベ数と前記無機微粒子のアッベ数とが略同一である複合光学素子。
【請求項2】
樹脂材料は熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散してなる請求項1記載の複合光学素子。
【請求項3】
無機材料微粒子はガラスであって、前記樹脂材料の屈折率と略同一であることを特長とする請求項1記載の複合光学素子。
【請求項4】
無機材料微粒子はガラスであって、前記樹脂材料のアッベ数と略同一であることを特長とする請求項1記載の複合光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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