説明

複合光学部品及びその製造方法

【課題】 ガラス等の透明な光学素子基板の表面にマイクロフレネルレンズ等の光学機能パターンを樹脂成形によって形成してなる複合光学部品及びその製造方法において、ガラス基板と、その上に光学機能パターンを形成するための樹脂材料との密着性に優れ、繰り返される熱負荷や長年の大気暴露に対しても光学機能樹脂材料が剥離することがなく、しかも大幅なコストダウンを図ることが可能な複合光学部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 透明なガラス基板1の平坦な表面に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる光路変更機能層2を形成した。ガラス基板1の平坦面上に流動性のあるPDMS原材料を流し、その上からパターン成形部5を設けたスタンパ4を圧接してPDMSを硬化させた後、スタンパを剥離して、ガラス基板の上面に光路変更機能層2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合光学部品及びその製造方法に係り、更に詳しくは樹脂成形によって形成するレンズ機能等の光路変更の機能を有する複合光学部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学素子基板の表面に光学機能パターンを転写した光学素子は公知である。例えば、表面が平滑な平面状をなした透明レンズ基板の表面に、透明樹脂によって輪帯状のパターン等からなるマイクロフレネルレンズパターンを形成した光学素子が知られている。このような製法は、2P法(photo-polymerization processの略称)と呼ばれている。通常は、スタンパの上面に形成されたパターン成形部としてのプロファイルに紫外線硬化型(UV)樹脂を吐出させ、その上にガラス、合成樹脂等からなる表面が平滑な透明レンズ基板を押し付けることによって、樹脂をスタンパの表面に押し広げて樹脂をレンズ基板に密着させ、それからレンズ基板を通して紫外線を照射して樹脂を硬化させ、最後にレンズ基板と共に樹脂をスタンパから離型させるのである。
【0003】
しかし、スタンパから離型させる際に、樹脂がスタンパのフレネルレンズパターンに密着しているので、レンズ基板から樹脂が剥離することがある。更に、良好なマイクロフレネルレンズが製造されたとしても、高温又は高湿の環境下で保存又は使用されたり、ヒートサイクル等の環境化で使用された場合、マイクロフレネルレンズパターンとレンズ基板との熱膨張係数の違いによって、マイクロフレネルレンズパターンがレンズ基板から剥離し易くなるという問題を有している。
【0004】
そこで、特許文献1には、光学素子基板の表面に光学機能パターンを転写した光学素子において、光学素子機能基板のパターン転写面に複数の凹凸形状を設け、光学機能パターンをこの凹凸形状に密着させたことを特徴とする光学素子が開示されている。ここで、レンズ基板上に凹凸を設けると、マイクロフレネルレンズの光学特性が悪影響を受ける恐れがある。つまり、基板の上に凹凸が設けられ、更にその上に屈折率の異なる材料でレンズ機能が設けられていると、レンズを通して光線の光路を変化させる際、凹凸のある部分とない部分で変化の状況が異なり、例えば集光の状態が異なるので、集光が難しい、或いはレンズ形状の設計が複雑になる等の問題がある。そこで、特許文献1には、レンズ基板とマイクロフレネルレンズパターン成形用の樹脂の屈折率を同じにすれば、屈折率のギャップが無くなるので凹凸による不都合は回避でき、また凹凸の大きさを使用する光の波長に対して十分小さな寸法にすることでも凹凸による影響を無視できるので、凹凸による不都合を回避できる旨記載されている。
【0005】
尚、特許文献2には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ4メチルペンテン−1等の透明な合成樹脂材料で構成された透光性板材において、光を出射させる出光面に、この透光性板材と異なる透光性の樹脂で構成されて、平面形状が円形状で断面形状が円弧状なった多数の突部を縦,横に所要間隔を介して配列させるように設けた導光板が開示されている。
【0006】
また、従来の太陽光発電システムは、発電機能を有するシリコン半導体で作製した太陽電池パネルを太陽光に曝露して発電を行うのが通常である。この場合、太陽光はガラス等の透明基板を通して、或いは透明保護膜を通して光電素子に照射するようになっているが、該透明基板若しくは透明保護膜に光を集光する機能を付与したものは提供されていない。前述のように、微小な光学素子基板の上に凹凸を設け、該凹凸上にマイクロフレネルレンズを形成した素子は知られている(特許文献1)が、大型のガラス板上に合成樹脂を用いてフレネルレンズ機能を形成して、太陽光を集光して発電を行う装置は知られていなかった。ここで、ガラス基板の表面に樹脂との密着性を高めるために微細な凹凸を形成する場合、該凹凸による光学的な悪影響を排除するために、基板と樹脂材料との屈折率を一致させることは、材料選択が難しく、完全に一致させることは不可能であり、また凹凸の寸法を対象光の波長より十分小さくすることは、100nmオーダーの精細な成形技術を必要とすることを意味し、大幅なコストアップを招くことになり、大きな面積の光学部品として適用するには実用的でなく、何れの回避策も実用性に乏しい。
【特許文献1】特開平4−329503号公報
【特許文献2】特開2001−337228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、ガラス等の透明な光学素子基板の表面にマイクロフレネルレンズ等の光学機能パターンを樹脂成形によって形成してなる複合光学部品及びその製造方法において、ガラス基板と、その上に光学機能パターンを形成するための樹脂材料との密着性に優れ、繰り返される熱負荷や長年の大気暴露に対しても光学機能樹脂材料が剥離することがなく、しかも大幅なコストダウンを図ることが可能な複合光学部品及びその製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題解決のために、本発明は、透明なガラス基板の平坦な表面に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる光路変更機能層を形成したことを特徴とする複合光学部品を提供する(請求項1)。
【0009】
ここで、前記光路変更機能層は、複数個のレンズ状物又はプリズム状物を形成したものである(請求項2)。そして、前記レンズ状物の形態がフレネルレンズ形態であることが好ましい(請求項3)。
【0010】
また、前記ガラス基板及び/又は前記光路変更機能層の接合面をプラズマ処理した上で接合してなることが好ましい(請求項4)。この場合、前記プラズマ処理が酸素プラズマ処理であることがより好ましい(請求項5)。
【0011】
また、前記ガラス基板と前記光路変更機能層の間に、薄層の接合剤を介在させてなる(請求項6)。そして、前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤であることが好ましい(請求項7)。更に、前記接合剤が、テトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体であるとより好ましい(請求項8)。
【0012】
また、本発明は、ガラス基板の平坦面上に流動性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)原材料を流し、その上からレンズ状物又はプリズム状物を形成するパターン成形部を設けたスタンパを圧接してPDMSを硬化させた後、スタンパを剥離して、ガラス基板の上面に光路変更機能層を形成することを特徴とする複合光学部品の製造方法を提供する(請求項9)。
【0013】
また、本発明は、上面にレンズ状物又はプリズム状物を形成するパターン成形部を設けたスタンパ上に、流動性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)原材料を流し、その上からガラス基板の平坦面を圧接してPDMSを硬化させた後、スタンパを剥離して、ガラス基板の下面に光路変更機能層を形成することを特徴とする複合光学部品の製造方法を提供する(請求項10)。
【0014】
また、本発明は、光路変更機能層をガラス基板の平坦な表面上に形成するに際し、内面にレンズ状物又はプリズム状物を形成するパターン成形部を設けた金型内に予め設置されたガラス基板上に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)原材料を射出成形して前記レンズ状物又はプリズム状物を有する光路変更機能層を形成してなる複合光学部品の製造方法を提供する(請求項11)。
【0015】
これらの製造方法において、前記レンズ状物の形態がフレネルレンズ形態であることが好ましい(請求項12)。
【0016】
また、これらの製造方法において、前記ガラス基板に前記光路変更機能層を一体化する前に、該ガラス基板の接合面をプラズマ処理した上で接合してなることが好ましい(請求項13)。ここで、前記プラズマ処理が酸素プラズマ処理であるとより好ましい(請求項14)。
【0017】
また、これらの製造方法において、前記ガラス基板に前記光路変更機能層を一体化する前に、該ガラス基板の接合面に、薄層の接合剤を介在させてなることが好ましい(請求項15)。この場合、前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤であるとより好ましい(請求項16)。更に、前記接合剤が、テトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体であるとより好ましい(請求項17)。
【0018】
また、本発明は、表面にレンズ状物又はプリズム状物の凹凸パターンを有するとともに、裏面が平面である光路変更機能シートをポリジメチルシロキサン(PDMS)で成形した後、該光路変更機能シートの裏面をガラス基板の平坦面上に接合することを特徴とする複合光学部品の製造方法を提供する(請求項18)。
【0019】
この製造方法において、前記レンズ状物の形態がフレネルレンズ形態であることが好ましい(請求項19)。
【0020】
また、前記ガラス基板に前記光路変更機能シートを接合する前に、該ガラス基板及び/又は光路変更機能シートの接合面をプラズマ処理した上で接合してなることが好ましい(請求項20)。ここで、前記プラズマ処理が酸素プラズマ処理であるとより好ましい(請求項21)。
【0021】
また、前記ガラス基板に前記光路変更機能シートを接合する前に、該ガラス基板及び/又は光路変更機能シートの接合面に、薄層の接合剤を介在させてなることも好ましい(請求項22)。この場合、前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤であることが好ましい(請求項23)。更に、前記接合剤が、テトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体であるとより好ましい(請求項24)。
【発明の効果】
【0022】
以上にしてなる本発明の複合光学部品によれば、ガラス基板と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる光路変更機能層との密着性に優れ、繰り返される熱負荷や長年の大気暴露に対しても光路変更機能層が剥離することがなく、しかも平坦な表面を有するガラス基板を使用するので大幅なコストダウンを図ることが可能である。本発明で使用するPDMSは、ゴム弾性を備えているので、ガラス基板とPDMS間の熱的寸法変化の差を吸収することができ、また耐候性や耐熱性、耐寒性にも優れているので、屋外で使用する用途にも適している。
【0023】
また、本発明の複合光学部品の製造方法によれば、ガラス基板の表面に形成する光路変更機能層の原材料としたPDMSは、熱処理する前は流動性が高く、広い面積に薄く層形成することができるので、所望形状に成形することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る複合光学部品及びその製造方法の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る複合光学部品Pを示し、ガラス基板1の表面に、軟弾性を有する透明合成樹脂製の光路変更機能層2を形成したものである。ここで、「透明」とは、対象波長の光に対して十分に透過性を有することを意味している。また、「軟弾性の合成樹脂」とは、伸縮性及び形状復元性を有するゴムとしての特性を備えたものである。光路変更機能層2の代表例としては、フレネルレンズが挙げられる。そして、広い面積のガラス基板1の表面に、微小なフレネルレンズを縦横に並べて多数形成することもある。また、ガラス基板の代わりに耐候性、耐熱性、耐寒性に優れた透明合成樹脂基板を用いることも可能である。
【0025】
[合成樹脂材料の選定]
ガラス基板上にレンズ形状を形成する透明合成樹脂として、ポリジメチルシロキサン(以下「PDMS」と略称する。)を選択した。PDMSは透明性が高く、耐候性にも優れ、且つゴム弾性的であるので、ガラスとPDMS間の熱的寸法変化の差を吸収しやすい点で、また、耐寒性にも優れている点で、屋外で使用する用途に適している。また、PDMSは、最も普及しているシリコーンであり、利用範囲もコンタクトレンズや医療器具からエラストマー等と広範囲である。更に、PDMSの光学的な特性は、重量平均分子量と分子量分布に密接な関係を持っているので、屈折率等の光学的な要求スペックに応じてそれらを調製することができる。
【0026】
PDMSの原料としては、1液性や2液性の液状シリコーンを用いることができる。該原料の成形加工は、低温且つ低粘度の状態で高温の金型内に射出し、該金型内で硬化反応を起こさせて固化させるようにして行う。
【0027】
本発明における合成樹脂材料の成形法として、射出成形法を採用することができるが、PDMSの場合熱可塑性合成樹脂の射出成形と異なり、射出する材であるPDMSの原料材は粘度が低いので、例えば精密且つ微小なレンズやプリズムを形成するために金型キャビティ面に設置した微細構造を転写することに優れている点で、本発明の構想を実現する合成樹脂として適性を有している。本発明は、流動性に優れた材料を用いるので、薄肉のフレネルレンズをガラス基板上に形成するような場合に、特に有効である。
【0028】
[製造方法]
第1製造方法は、図2に示すように、ガラス基板1上に流動性のあるPDMS原材料3を流し、その上から例えば精密且つ微小なレンズやプリズムの型を形成したスタンパ4を圧接してPDMSを熱硬化させた後、スタンパ4を剥離して、ガラス基板1の上面に光路変更機能層2を形成する方法である。また、第2製造方法は、図3に示すように、前記同様なスタンパ4上に流動性のあるPDMS原材料3を流し、その上からガラス基板1を圧接してPDMSを熱硬化させた後、スタンパ4を剥離して、ガラス基板1の下面に光路変更機能層2を形成する方法である。
【0029】
ここで、前記スタンパ4の表面には、光路変更機能を付与するためのパターン成形部5が形成されており、この凹凸パターンによって光路変更機能層2とスタンパ4との接合力が高まり離型性が悪くなるので、この接合力を弱めるためにこの型面に離型剤を塗布するか、或いは表面に離型性を高める複合めっきを施す等の離型処理することもできる。そして、前記スタンパ4のパターン成形部5のプロファイルが前記PDMS原材料3からなる層の表面に転写されて前記光路変更機能層2が形成されるのである。図中符号6は、前記スタンパ4のパターン成形部5の凹凸関係が逆になったプロファイルを有するフレネルレンズを示している。
【0030】
更に、本発明を大量生産するのに適した方法として射出成形法を採用することが可能である。また射出成形するに際して、予めガラス基板を金型内に設置し、所謂インサート成形を行うこともできるが、このような方法は本装置を経済的に作成するのに特に有効である。
【0031】
また、PDMS製の光路変更機能層2に相当する光路変更機能シートを別途作成した後、ガラス基板1に接着することも可能である。前記同様に、前記ガラス基板に前記光路変更機能シートを接合する前に、該ガラス基板及び/又は光路変更機能シートの接合面をプラズマ処理し、具体的には酸素プラズマ処理した上で接合することが好ましい。また、前記ガラス基板に前記光路変更機能シートを接合する前に、該ガラス基板及び/又は光路変更機能シートの接合面に、薄層の接合剤を介在させることも好ましい。
【0032】
[ガラス基板とPDMSの密着性を高める方法]
本発明の複合光学部品Pにおいては、ガラス基板1とPDMS製の光路変更機能層2とが密接に且つ接着していなくてはならない。両材料を密接に且つ接着させるのに、通常の用途向けには特に何らかの処置をしなくても十分であるが、より高度の密着性、より強固な接着性を求めるケースもあり、種々の工夫が加えられる。少なくともガラス基板1とPDMS製の光路変更機能層2との接着力は、PDMS製の光路変更機能層2とスタンパ4との接着力よりも高くなければならない。
【0033】
例えば、ガラス基板1にPDMS原材料3を密着させる前に、PDMS原材料3に接するガラス基板1の表面にプラズマ処理を施すことが有効である。また、PDMS製の光路変更機能層2に相当する光路変更機能シートを別途作成した後、ガラス基板1に接着する場合は、PDMSと接するガラス基板1の表面にプラズマ処理を施すか、或いはガラス基板1の表面と接するPDMS面にプラズマ処理を施す、又はガラス基板1とPDMSの接しようとする両者の面にもプラズマ処理を施すことは、何れも有効な方法である。尚、プラズマ処理に使用するプラズマとしてはいろいろあるが、酸素プラズマが好ましい。また、プラズマ処理は、短時間の処理が好ましい。
【0034】
ガラス基板1とPDMS製の光路変更機能層2の接合面に、接合に先だって、当該複合光学部品Pを使用する際の対象光の波長に対して光線透過率を損なわないような有機接着剤を塗布して接合の強度を高めることも有り得る。また、前記ガラス基板1と前記光路変更機能層2の間に、薄層の接合剤を介在させることも好ましい。ここで、前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤であり、更にはテトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体であることがより好ましい。
【0035】
具体的には、ガラス基板1とPDMS製の光路変更機能層2の接合強度を向上させる方法として、ガラス基板1に光路変更機能層2を一体成形する場合には、ガラス基板1の表面に、またガラス基板1に別途成形したPDMS製の光路変更機能シートを貼り合せる場合にはガラス基板1及び/又は光路変更機能シートの表面に、金属アルコキシドを用いた縮重合化合物、或いは金属アルコキシドに金属塩及び/又は金属有機塩を添加した混合物を用いた縮重合化合物からなる被覆層(以下、「被覆層A」と略称する。)を薄く形成した後に接合を行うことができる。或いは、ガラス基板1の表面に被覆層Aを形成した後、PDMSを射出成形して本発明の一体成形品を作成することもできる。
【0036】
同様に、ガラス基板1に光路変更機能層2を一体成形する場合には、ガラス基板1の表面に、またガラス基板1に別途成形したPDMS製の光路変更機能シートを貼り合せる場合にはガラス基板1及び/又は光路変更機能シートの表面に、金属アルコキシドを用いた縮重合化合物の中に、或いは金属アルコキシドに金属塩及び/又は金属有機塩を添加した混合物を用いた縮重合化合物の中に、金属コロイドを分散させた被覆層(以下、「被覆層B」と略称する。)を薄く形成した後に接合を行う。或いは、ガラス基板1の表面に被覆層Bを形成した後、PDMSを射出成形して本発明の一体成形品を作成することもできる。また、このような接合又は射出成形を行うに先立って、被覆層A及び被覆層Bにプラズマ処理を行っても良い。
【0037】
被覆層A及び被覆層Bを形成する際に用いる金属塩を構成する金属としては、珪素、ジルコニウム、チタン、ホウ素、アルミニウム、ニッケル、タンタル、カルシウム、マグネシウム、亜鉛又は燐酸エステル少なくともいずれか1種から選ぶことが好ましい。被覆層A及び被覆層Bの材料が、テトラエチルシリケート、ホウ酸トリメチル、ジルコニウムn−ブトキシド、チタンイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、塩化亜鉛、酸化チタン、エトキシトリメチルシランの内の少なくとも何れか1種であることが好ましい。その他、ガラス基板1の表面及び/又はPDMS面に対し、分子中に複数の官能基を有するシランカプリング剤を用いる処理もできる。
【0038】
[複合光学部品の形態]
本発明は、1枚のガラス基板上に、PDMS層によって1つのレンズやプリズム、例えばフレネルレンズを形成して実施するが、1枚のガラス基板上に2つ以上の複数個のレンズやプリズム、例えばフレネルレンズを形成しても良い。更に、PDMS層に回折格子を形成したり、更にホログラムの干渉縞パターンを形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る複合光学部品を用いることによって、例えば太陽光発電を行うシリコン機能体面に太陽光を効率的に集めることができる。また、ガラス基板上にフレネルレンズを形成した集光装置は、投光器の集光レンズとして使用できる。更に、ガラス基板の上にPDMSを用いたプリズム機能を有する形状を形成することによって、本発明の複合光学部品を、液晶表示パネル等のバックライトを構成する導光板に適用して、導光板出光面の光線処理機能、即ち出光する光線の方向を望ましい方向に転向させる機能を高めることが可能になる。また、本発明に係る複合光学部品は、レンズ的機能或いはプリズム的機能を有しているので、太陽光発電における集光装置や液晶表示パネル等の導光板のみならず、このような機能が求められる用途であれば有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る複合光学部品の代表例として、ガラス基板の表面にフレネルレンズからなる光路変更機能層を形成した光学部品の部分断面図である。
【図2】本発明の複合光学部品の第1製造方法を示し、(a)はガラス基板の表面上にPDMS原材料を流した状態の断面図、(b)はPDMS原材料の上からスタンパを圧接する前の状態の断面図、(c)はスタンパを圧接した後の状態の断面図、(d)はPDMSの熱硬化後、スタンパを剥離した状態の断面図である。
【図3】本発明の複合光学部品の第2製造方法を示し、(a)はスタンパのパターン成形部上にPDMS原材料を流した状態の断面図、(b)はPDMS原材料の上からガラス基板を圧接する前の状態の断面図、(c)はガラス基板を圧接した後の状態の断面図、(d)はPDMSの熱硬化後、スタンパを剥離した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ガラス基板
2 光路変更機能層
3 PDMS原材料
4 スタンパ
5 パターン成形部
P 複合光学部品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なガラス基板の平坦な表面に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる光路変更機能層を形成したことを特徴とする複合光学部品。
【請求項2】
前記光路変更機能層は、複数個のレンズ状物又はプリズム状物を形成したものである請求項1記載の複合光学部品。
【請求項3】
前記レンズ状物の形態がフレネルレンズ形態である請求項2記載の複合光学部品。
【請求項4】
前記ガラス基板及び/又は前記光路変更機能層の接合面をプラズマ処理した上で接合してなる請求項1〜3何れかに記載の複合光学部品。
【請求項5】
前記プラズマ処理が酸素プラズマ処理である請求項4記載の複合光学部品。
【請求項6】
前記ガラス基板と前記光路変更機能層の間に、薄層の接合剤を介在させてなる請求項1〜5何れかに記載の複合光学部品。
【請求項7】
前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤である請求項6記載の複合光学部品。
【請求項8】
前記接合剤が、テトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体である請求項7記載の複合光学部品。
【請求項9】
ガラス基板の平坦面上に流動性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)原材料を流し、その上からレンズ状物又はプリズム状物を形成するパターン成形部を設けたスタンパを圧接してPDMSを硬化させた後、スタンパを剥離して、ガラス基板の上面に光路変更機能層を形成することを特徴とする複合光学部品の製造方法。
【請求項10】
上面にレンズ状物又はプリズム状物を形成するパターン成形部を設けたスタンパ上に、流動性のあるポリジメチルシロキサン(PDMS)原材料を流し、その上からガラス基板の平坦面を圧接してPDMSを硬化させた後、スタンパを剥離して、ガラス基板の下面に光路変更機能層を形成することを特徴とする複合光学部品の製造方法。
【請求項11】
光路変更機能層をガラス基板の平坦な表面上に形成するに際し、内面にレンズ状物又はプリズム状物を形成するパターン成形部を設けた金型内に予め設置されたガラス基板上に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)原材料を射出成形して前記レンズ状物又はプリズム状物を有する光路変更機能層を形成してなる複合光学部品の製造方法。
【請求項12】
前記レンズ状物の形態がフレネルレンズ形態である請求項9〜11何れかに記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項13】
前記ガラス基板に前記光路変更機能層を一体化する前に、該ガラス基板の接合面をプラズマ処理した上で接合してなる請求項9〜12何れかに記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項14】
前記プラズマ処理が酸素プラズマ処理である請求項13記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項15】
前記ガラス基板に前記光路変更機能層を一体化する前に、該ガラス基板の接合面に、薄層の接合剤を介在させてなる請求項9〜12何れかに記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項16】
前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤である請求項15記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項17】
前記接合剤が、テトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体である請求項16記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項18】
表面にレンズ状物又はプリズム状物の凹凸パターンを有するとともに、裏面が平面である光路変更機能シートをポリジメチルシロキサン(PDMS)で成形した後、該光路変更機能シートの裏面をガラス基板の平坦面上に接合することを特徴とする複合光学部品の製造方法。
【請求項19】
前記レンズ状物の形態がフレネルレンズ形態である請求項18記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項20】
前記ガラス基板に前記光路変更機能シートを接合する前に、該ガラス基板及び/又は光路変更機能シートの接合面をプラズマ処理した上で接合してなる請求項18又は19記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項21】
前記プラズマ処理が酸素プラズマ処理である請求項20記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項22】
前記ガラス基板に前記光路変更機能シートを接合する前に、該ガラス基板及び/又は光路変更機能シートの接合面に、薄層の接合剤を介在させてなる請求項18又は19記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項23】
前記接合剤が、ゾルゲル法によってシロキサン及び/又はシロキサン誘導体を形成し得る接合剤である請求項22記載の複合光学部品の製造方法。
【請求項24】
前記接合剤が、テトラエチルオルトシロキサン(TEOS)及び/又はTEOSの誘導体である請求項23記載の複合光学部品の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−212607(P2007−212607A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30590(P2006−30590)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)